JP2007524671A - M−csfムテインおよびその使用 - Google Patents

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Abstract

M−CSFムテインが、M−CSFムテインを含む薬学的組成物、薬学的組成物を含むキット、転移性癌に罹患する被験体における骨転移を防ぐ方法および処置する方法、ならびにM−CSFムテインをスクリーニングする方法と共に提供される。1つの局面において、転移性癌に罹患する被験体に、治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物を投与し、それによってこの転移性癌に関連する骨の減少を防ぐ工程を包含する、骨転移を防ぐ方法が提供される。本発明の別の局面において、被験体に治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物を投与し、それによってこの転移性癌に関連する骨の減少の重症度を減少させる工程を包含する、骨への転移性癌に罹患する患者を処置する方法が提供される。

Description

本願は、2004年1月21日出願の、米国仮出願第60/537,985号の利益を主張する。
(技術分野)
本発明は、M−CSFムテインを被験体に投与することによる、癌転移および癌転移に関連する骨の減少の防止および処置のための方法に関連する。
(発明の背景)
癌転移は、癌患者における手術後または治療後の再発の主要な原因である。処置を開発するための集中的な努力にもかかわらず、癌転移は実質的に治療が難しいままである。骨は、種々の型のヒトの癌(例えば、乳癌、肺癌、前立腺癌、および甲状腺癌)の転移の最も一般的な部位の一つである。骨溶解性の骨転移の発生は、難治性の痛み、高い骨折の罹患性、神経の圧縮、および高カルシウム血症に起因して、重篤な罹患率の原因となる。これらの臨床的な問題の重要性にもかかわらず、癌転移に関連する骨の減少に利用可能な処置はほとんどない。
破骨細胞は、骨の破壊吸収(readsorption)を媒介する。破骨細胞は、造血性細胞から分化する多核細胞である。破骨細胞が、不完全な細胞分裂ではなく、骨髄内の造血幹細胞に由来する単核の前駆体の融合によって形成されることが、一般に認められる(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3、非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。これらは、単球−マクロファージ系統細胞と共通の幹細胞を共有する(非特許文献8、非特許文献9)。破骨細胞前駆体の成熟した多核の破骨細胞への分化は、ホルモン性刺激および局所性刺激を含む異なる因子を必要とし(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献7;非特許文献12)、そして生きた骨および骨細胞が、破骨細胞の発達において重大な役割を果たすことが示されている(非特許文献13)。骨芽細胞または骨髄間質細胞もまた、破骨細胞の分化に必要である。破骨細胞形成を支持する、これらの細胞により産生される因子の1つは、マクロファージ−コロニー刺激因子、M−CSF(非特許文献14;非特許文献15)である。NF−κBリガンドのためのレセプター活性化因子(RANKL、TRANCE、ODF、およびOPGLとしても公知)は別のシグナルであり(非特許文献4)、これを通して、骨芽細胞/間質細胞が破骨細胞の形成、ならびに、破骨細胞および破骨細胞前駆体上に局在するレセプターRANK(TRANCER)を介した再吸収を刺激する(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21)。骨芽細胞はまた、オステオプロテゲリン(OPG、OCIFとしても公知)と呼ばれる破骨細胞の形成を強力に阻害するタンパク質を分泌し、これはRANKLの囮のレセプターとしてはたらいて、従ってRANKおよびRANKLを介する破骨細胞と骨芽細胞との間の陽性のシグナルを阻害する。
破骨細胞は、無機的骨マトリックスおよび有機的骨マトリックス両方の骨マトリックス溶解の原因である(非特許文献22)。破骨細胞は、分化した膜領域を有する独特の極性化した形態、ならびにいくつかの膜マーカーおよび細胞質マーカー(例えば、酒石酸塩耐性酸ホスファターゼ(TRAP)(Andersonら(1979))、炭酸脱水素酵素II(非特許文献23)、カルシトニンレセプター(非特許文献24)、およびビトロネクチンレセプター(非特許文献25))を発現する、最終分化細胞を表す。多核性の破骨細胞は、通常10個未満の核を含むが、直径が10μmと100μmとの間である核を100個まで含み得る(非特許文献2)。このことは、これらを、光学顕微鏡によって比較的容易に同定させる。これらは、活性な状態にある場合、高度に空胞化し、そして多くのミトコンドリアを含み、高い代謝速度を示す(非特許文献26)。破骨細胞は、骨溶解性の骨転移において主要な役割を果たすので、当該分野において、破骨細胞の刺激を防ぐための新たな因子および方法について必要性がある。
従って、当該分野において、骨溶解性の骨転移を含む癌転移を防ぐか、または処置するための新たな因子および方法を同定するための必要が依然存在する。
Chambers、Bone and Mineral Research(1989)6:1−25 Goethlingら、Clin Orthop Relat R.(1976)120:201−228 Kahnら、Nature(1975)258:325−327 Sudaら、Endocr Rev(1992)13:66−80 Walker、Science(1973)180:875 Walker、Science(1975)190:785−787 Walker、Science(1975)190:784−785 Ashら、Nature(1980)283:669−670 Kerbyら、J.Bone Miner Res(1992)7:353−62 Athanasouら、Bone Miner(1988)3:317−333 Feldmanら、Endocrinology(1980)107:1137−1143 Zhengら、Histochem J(1991)23:180−188 Hagenaarsら、Bone Miner(1989)6:179−189 Wiktor−Jedrzejczakら、Proc Natl Acad Sci USA(1990)87:4828−4832 Yoshidaら、Nature(1990)345:442−444 Laceyら、Cell(1998)93:165−176 Tsudaら、Biochem Biophys Res Co(1997)234:137−142 Wongら、J Exp Med(1997)186:2075−2080 Wongら、J Biol.Chem(1997)272:25190−25194 Yasudaら、Endocrinology(1998)139:1329−1337 Yasudaら、Proc Natl Acad Sci US(1998)95:3597−3602 Blairら、J Cell Biol(1986)102:1164−1172 Vaeaenaenenら、Histochemistry(1983)78:481−485 Warshafskyら、Bone(1985)6:179−185 Daviesら、J Cell Biol(1989)109:1817−1826 Mundy、Primer on the metabolic bone diseases and disorders of mineral metabolism(1990)第18〜22頁
(発明の要旨)
骨転移を防ぐ方法が、本発明によって提供される。1つの局面において、転移性癌に罹患する被験体に、治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物を投与し、それによってこの転移性癌に関連する骨の減少を防ぐ工程を包含する、骨転移を防ぐ方法が提供される。本発明の別の局面において、被験体に治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物を投与し、それによってこの転移性癌に関連する骨の減少の重症度を減少させる工程を包含する、骨への転移性癌に罹患する患者を処置する方法が提供される。
本発明の関連する局面において、被験体が哺乳動物またはヒトである、前述の方法が提供される。別の関連する局面において、上記のムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプター(M−CSFR)との間の相互作用を阻害する方法が提供される。さらに別の局面において、上記のM−CSFムテインまたはムテイン産物が、腫瘍細胞により誘導される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する方法が提供される。なお別の関連する局面において、上記の転移性癌が、乳癌、肺癌、腎臓癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、白血病およびリンパ腫を含む血球悪性疾患;頭部癌および頚部癌;胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌を含む胃腸の癌;卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮頸癌を含む、女性の生殖管の悪性疾患;膀胱癌;神経芽細胞種を含む脳腫瘍;肉腫、骨肉種;ならびに悪性黒色腫または扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌である方法が提供される。
M−CSFムテインまたはムテイン産物をスクリーニングする方法が、本発明によって提供される。1つの局面において、転移性腫瘍細胞培地、破骨細胞、および候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物を接触させる工程;破骨細胞の形成、増殖、および/または分化を検出する工程;ならびに、破骨細胞の形成、増殖、および/または分化の減少が検出される場合、上記の候補をM−CSFムテインまたはムテイン産物として同定する工程を包含する、M−CSFムテインまたはムテイン産物をスクリーニングする方法が提供される。関連する局面において、上記の転移性腫瘍細胞培地が腫瘍細胞を含有する方法が提供される。なお別の関連する局面において、接触させる工程(a)はインビボで起き、検出する工程(b)は、骨転移の大きさおよび/または数を検出する工程を包含し、そして上記の候補は、骨転移の大きさおよび/または数の減少が検出される場合に、M−CSFムテインまたはムテイン産物として同定される、方法が提供される。さらに別の関連する実施形態において、上記の候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプターであるM−CSFRとの間の相互作用を阻害するか否かを決定する工程をさらに包含する方法が提供される。
本発明の別の局面において、候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物の、M−CSFRへの結合を検出する工程;および、上記の候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物の、骨への転移性癌を防ぐか、または処置する能力を、インビトロまたはインビボでアッセイする工程を包含する、骨への転移性癌を防ぎ得るか、または処置し得る、M−CSFムテインまたはムテイン産物を同定する方法が提供される。別の局面において、M−CSFとM−CSFRとの間の相互作用を阻害する、候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物を同定する工程;および、上記の候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物の、骨への転移性癌を防ぐか、または処置する能力を、インビトロまたはインビボでアッセイする工程を包含する、骨への転移性癌を防ぎ得るか、または処置し得る、M−CSFムテインまたはムテイン産物を同定する方法が提供される。
別の局面において、転移性癌に罹患する被験体に、治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物および治療剤を投与し、それによって、上記の転移性癌に関連する骨の減少を防ぎ、そして腫瘍の増殖を防ぐ工程を包含する、骨転移および腫瘍の増殖を防ぐ方法が提供される。別の局面において、被験体に治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物および治療剤を投与し、それによって、上記の転移性癌に関連する骨の減少の重症度を減少させ、そして腫瘍の増殖を防ぐ工程を包含する、転移性癌に罹患する患者を処置する方法が提供される。関連する局面において、上記の被験体が哺乳動物またはヒトである方法が提供される。別の関連する局面において、上記のM−CSFムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプターであるM−CSFRとの間の相互作用を阻害する方法が提供される。さらに別の関連する局面において、上記のM−CSFムテインまたはムテイン産物が、腫瘍細胞によって誘導される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する方法が提供される。
なお別の関連する局面において、上記治療剤がビスホネート(bisphonate)である方法が提供される。関連する局面において、上記のビスホスホネートは、ゼレドロネート(zeledronate)、パミドロネート、クロドロネート、エチドロネート、チルンドロネート(tilundronate)、アレンドロネート、またはイバンドロネート(ibandronate)である。なお別の関連する局面において、上記の治療剤が化学療法剤である、前述の方法が提供される。さらに別の関連する局面において、被験体がビスホスホネート処置を受けることから妨げられる、前述の方法が提供される。本発明の関連する局面において、上記のM−CSFムテインまたはムテイン産物が、治療効果を達成するために必要な治療剤の投薬量を減少するために効果的である、前述の方法が提供される。なお別の関連する局面において、非M−CSFコロニー刺激因子(例えば、G−CSF)を投与する工程をさらに包含する方法が提供される。
本発明の1つの局面において、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および癌治療剤を含む薬学的組成物が提供される。本発明の別の局面において、M−CSFムテインまたはムテイン産物を含む医薬、およびこの医薬が手術または放射線治療と組み合わせて用いられるべきであることの使用説明書を含む、パッケージ、バイアル、または容器が提供される。
本発明の別の局面において、M−CSFムテインまたはムテイン産物を被験体に投与する工程、およびこの被験体を手術または放射線治療によって処置する工程を包含する、骨への転移性癌を防ぐか、または処置する方法が提供される。別の局面において、M−CSFムテインまたはムテイン産物を投与する工程を包含する、癌に罹患した被験体を処置する方法であって、ここで、この癌を含む細胞はM−CSFを分泌しない方法が提供される。
多数の使用がまた、本発明によって企図される。例示の目的として、転移性癌に罹患する被験体における骨転移を防ぐための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用が、本発明によって提供される。別の実施形態において、転移性癌に罹患する被験体における、この癌と関連する骨の減少を防ぐための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用が提供される。なお別の実施形態において、骨への転移性癌に罹患する被験体を処置するための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用が本発明によって提供される。さらに別の実施形態において、骨への転移性癌に罹患する被験体における、この癌に関連する骨の減少の重症度を減少させるための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用が提供される。
多くの被験体が、本発明の使用から利益を得ることを企図される。1つの実施形態において、この被験体は哺乳動物である。別の実施形態において、この哺乳動物はヒトである。
本発明の別の実施形態において、上記のムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプター(M−CSFR)との間の相互作用を阻害する、前述の使用が提供される。関連する実施形態において、上記のムテインまたはムテイン産物は、腫瘍細胞によって誘導される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する。別の関連する実施形態において、上記の転移性癌が、乳癌、肺癌、腎臓癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、白血病またはリンパ腫を含む血球悪性疾患;頭部癌または頚部癌;胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌を含む胃腸の癌;卵巣癌、子宮内膜癌、または子宮頸癌を含む、女性の生殖管の悪性疾患;膀胱癌;神経芽細胞種を含む脳腫瘍;肉腫、骨肉種;あるいは悪性黒色腫または扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌である、前述の使用が提供される。
本発明のなお別の実施形態において、転移性癌に罹患する被験体における、骨転移および腫瘍の増殖を防ぐための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療薬の使用が提供される。別の実施形態において、転移性癌に罹患する被験体における、この癌に関連する骨の減少を防ぐための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療剤の使用が提供される。さらに別の実施形態において、骨への転移性癌の処置のための医薬を製造するための、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療剤の使用が提供される。なお別の実施形態において、転移性癌に罹患する被験体における、癌に関連する骨の減少の重症度を減少させ、そして腫瘍の増殖を阻害するための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療剤の使用が提供される。
本発明の1つの実施形態において、合わせられた調製物として、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療剤を含む生産物が、癌の処置における使用のために提供される。別の実施形態において、骨への転移性癌を防ぐか、または処置するための医薬の調製における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用であって、ここでこの医薬は、第二の癌治療剤と同時にか、別々にか、または連続して投与される、使用が提供される。
本発明の別の実施形態において、骨への転移性癌を防ぐか、または処置するための医薬の調製における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用であって、ここでこの医薬は、第二の治療剤を用いた処置と調和される、使用が提供される。なお別の実施形態において、骨への転移性癌に罹患する被験体を処置するための医薬を調製するための、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用であって、ここでこの被験体は、第二の治療剤で前処置される、使用が提供される。さらに別の実施形態において、骨溶解性疾患を有する患者の処置のための医薬の製造における、MCSFムテインまたはムテイン産物の共力作用の組み合わせの使用であって、ここでこの医薬は、抗MCSF抗体、抗RANKL抗体、可溶性RANKLレセプター、またはビスホスホネートを用いる処置と調和される、使用が提供される。
なお別の実施形態において、骨への転移性癌を防ぐか、または処置するための医薬の調製における、第二の治療剤の使用であって、ここでこの医薬は、M−CSFムテインまたはムテイン産物と同時にか、別々にか、または連続して投与される、使用が提供される。
M−CSFムテインまたはムテイン産物を含む医薬、およびこの医薬が手術または放射線治療と組み合わせて用いられるべきであることの使用説明書を含む、パッケージ、バイアル、または容器が、本発明によって企図される。多数の被験体が、前述の本発明の使用の利益を得ることが企図される。1つの実施形態において、上記の被験体は哺乳動物である。別の実施形態において、上記の哺乳動物はヒトである。
本発明の別の実施形態において、上記のムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプターであるM−CSFRとの間の相互作用を阻害する、前述の使用が提供される。関連する実施形態において、上記のムテインまたはムテイン産物は、腫瘍細胞によって誘導される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する。なお別の関連する実施形態において、上記の第二の治療剤はビスホスホネートである。別の関連する実施形態において、上記のビスホネートは、ゼレドロネート、パミドロネート、クロドロネート、エチドロネート、チルンドロネート、アレンドロネート、またはイバンドロネートである。さらに別の関連する実施形態において、上記の第二の治療剤は化学療法剤である。別の関連する実施形態において、上記の被験体は、ビスホスホネート処置を受けることから妨げられる。本発明の別の実施形態において、上記の第二の治療剤が非M−CSFコロニー刺激因子である、前述の使用が提供される。関連する実施形態において、上記の非M−CSFコロニー刺激因子がG−CSFである、前述の使用が提供される。
本発明はまた、骨転移および腫瘍の増殖を処置するか、または防ぐために、被験体に投与される治療剤の用量を減少させるための、医薬の製造におけるM−CSfムテインまたはムテイン産物の使用を企図する。本発明の別の実施形態において、骨転移を防ぐための医薬の製造における、癌細胞によって産生されるM−CSFを中和するために効果的な量より大きな量の、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用が提供される。なお別の実施形態において、癌細胞によって産生されるM−CSFを中和するために効果的な量より大きな量の、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用が、被験体の細胞により産生されるM−CSFを中和するための医薬の製造のために提供される。
本発明はまた、骨への転移性癌に罹患する被験体を処置するための医薬の製造における、癌細胞によって産生されるM−CSFを中和するために効果的な量より大きな量の、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用を企図する。別の実施形態において、癌を処置するための医薬の製造における、癌細胞によって産生されるM−CSFを中和するために効果的な量より大きな量の、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用が提供される。
(詳細な説明)
転移する能力は、癌の決定的な特徴である。転移とは、癌細胞の、体の他の部分への広まり、またはこの広まりにより生じる状態をいう。転移は、細胞の遺伝物質における変化、一次的な腫瘍を形成するための、この変化した細胞の制御されない増殖、この一次的な腫瘍への新たな血液の供給の発達、一次的な腫瘍に由来する細胞による循環系の浸潤、一次的な腫瘍細胞の小さな凝集塊の体の他の部分への分散、およびこれらの部位における二次的な腫瘍の増殖を含む、複合的な多段階のプロセスである。
骨は、ヒトの乳癌、肺癌、前立腺癌、および甲状腺癌、ならびに他の癌における転移の最も普通の部位の一つであり、剖検において60%もの癌患者が、骨転移を有することを示す。骨溶解性の骨転移は、他の器官への転移では見られない、独特の破骨細胞性骨吸収の段階を示す。癌転移に関連する骨の減少は、破骨細胞(無機化された組織を再吸収する能力を有する多核性巨大細胞)によって媒介され、腫瘍の産物によって活性化されるようである。
マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)としても公知であるコロニー刺激因子(CSF1)は、破骨細胞形成に重要であることが分かっている。さらにM−CSFは、成熟した破骨細胞の破骨細胞性機能、他の可溶性因子と連携しての移動および生存、ならびに、骨芽細胞および線維芽細胞により提供される細胞間相互作用を調節することが示されている(FixeおよびPraloran、Cytokine 10:3−7、1998;Martinら、Critical Rev.in Eukaryotic Gene Expression 8:107−23(1998))。
全長ヒトM−CSFmRNAは、554アミノ酸(配列番号4)の前駆体タンパク質をコードする。選択的mRNAスプライシング、および異なる翻訳後のタンパク質分解性プロセシングを通して、M−CSFは糖タンパク質またはコンドロイチン硫酸含有プロテオグリカンとして循環中に分泌されるか、あるいは、M−CSF産生細胞の表面上の膜貫通(membrane spanning)糖タンパク質として発現されるかのいずれかであり得る。ヒトM−CSFの、細菌で発現されたアミノ末端の150アミノ酸(完全なインビトロの生物学的活性に必要な最小の配列)の三次元構造は、このタンパク質がジスルフィド結合された二量体であり、それぞれの単量体が4つのαヘリックス性束および1つの逆平行βシートからなることを示す(Panditら、Science 258:1358−62(1992))。3つの明確なM−CSF種が、選択的mRNAスプライシングを通して産生される。これらの3つのポリペプチド前駆体は、256アミノ酸のM−CFSα(配列番号1および配列番号2においてDNA配列およびアミノ酸配列を示す)、554アミノ酸のM−CSFβ(配列番号3および配列番号4においてDNA配列およびアミノ酸配列を示す)、および438アミノ酸のM−CSFγ(配列番号5および配列番号6においてDNA配列およびアミノ酸配列を示す)である。M−CSFβは、膜結合形態としては存在しない分泌タンパク質である。M−CSFαは、タンパク質分解性切断によって徐放される、完全な膜タンパク質として発現される。M−CSFαは、配列番号2のアミノ酸の191〜197において切断される。M−CSFの膜結合形態は、近隣の細胞上のレセプターと相互作用し得、それゆえ特異的な細胞間接触を媒介する。
M−CSFの様々な形態が、標的細胞上のそのレセプターであるM−CSFRと結合することによって機能する。M−CSFR(配列番号7および配列番号8においてDNA配列およびアミノ酸配列を示す)は、5つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン、1つの膜貫通ドメイン、および1つの細胞内遮断性Src関連チロシンキナーゼドメインを有する膜貫通分子である。M−CSFRは、c−fms癌原遺伝子によってコードされる。M−CSFRの細胞外ドメインへのM−CSFの結合が、このレセプターの二量体化につながり、このことが、細胞質性キナーゼドメインを活性化して、他の細胞性タンパク質の自己リン酸化およびリン酸化につながる(Hamilton J.A.、J Leukoc Biol.62(2):145−55(1997);Hamilton J,A.、Immuno Today.18(7):313−7(1997))。
リン酸化された細胞性タンパク質は、細胞の応答:有糸分裂、サイトカインの分泌、膜の波うち、およびそれ自身のレセプターの転写調節につながる生化学的な事象のカスケードを誘導する(FixeおよびPraloran、Cytokine 10:32−37(1998))。
M−CSFは、間質細胞、骨芽細胞、および他の細胞で発現される。乳房腫瘍細胞、子宮腫瘍細胞、および卵巣腫瘍細胞においても発現される。これらの腫瘍における発現の程度は、高いグレードおよび乏しい予後に相関する(Kacinski Ann.Med.27:79−85(1995);Smithら、Clin.Cancer Res.1:313−25(1995))。乳癌において、M−CSFの発現は、腺管内の(侵襲前の)癌とは対照的に、侵襲性の腫瘍細胞において優勢である(Schollら、J.Natl.Cancer Inst.86:120−6(1994))。さらに、M−CSFは乳房の腫瘍の悪性疾患への進行を促進することが示される(Linら、J.Exp.Med.93:727−39(2001))。乳癌および卵巣癌について、M−CSFの産生は、マクロファージの腫瘍への動員の原因となるようである。
M−CSF中和抗体が、転移型癌細胞によって産生される因子による破骨細胞の誘導を阻害することが見い出されている(米国特許出願第10/713,895号(その全体が参考として援用される)の開示を参照のこと)。リガンド−レセプター相互作用をブロックするような手段を通しての、活性なM−CSF活性の中和を介して、M−CSFムテインが転移性癌細胞による破骨細胞の誘導をブロックすることが期待される。従って、本発明は、癌転移、および癌転移に関連する骨の減少を処置するか、または防ぐための組成物および方法を提供する。
本明細書中で用いられる場合、「腫瘍」は、悪性であろうと良性であろうと、全ての新生物形成細胞の成長および増殖、そして全ての前癌性の細胞および組織ならびに癌性の細胞および組織をいう。
用語「癌」および「癌性の」は、制御されない細胞増殖によって代表的には特徴付けられる、哺乳動物の生理学的状態をいい、または記載する。癌の例としては、癌;リンパ腫、芽細胞種、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより特定の例としては、乳癌、前立腺癌、結腸癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸の癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、ならびに種々の型の頭部癌および頸部癌が挙げられる。
「処置」は、障害の病理の進展または変化を妨げる意図で行われる介入である。従って、「処置」は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)な処置の両方をいう。処置を必要とするものとしては、既に障害を有するもの、およびその障害が防がれるべきものが挙げられる。腫瘍(例えば癌)の処置において、治療剤は直接腫瘍細胞の病理を減少しても、腫瘍細胞を、他の治療剤(例えば、放射線および/または化学療法)による処置に、より感受性にしてもよい。癌の「病理」は、患者の満足のいく状態を損なう全ての現象を含む。この事としては、異常な細胞増殖または制御されない細胞増殖、転移、近隣の細胞の正常な機能の干渉、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌性産物の放出、炎症または免疫学的応答の抑制または悪化などが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で用いられる場合、「転移性癌」という句は、体の他の領域、特に骨へ広がる能力を有する癌として定義される。種々の癌が骨へ転移し得るが、ほとんどの通常の転移性癌は乳癌、肺癌、腎臓癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、および前立腺癌である。例示として、骨へ転移する能力を有する他の癌としては、腺癌、白血病およびリンパ腫を含む血球悪性疾患;頭部癌および頚部癌;胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌を含む胃腸の癌;卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮頸癌を含む、女性の生殖管の悪性疾患;膀胱癌;神経芽細胞種を含む脳腫瘍;肉腫、骨肉種;ならびに悪性黒色腫または扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌が挙げられるが、これらに限定されない。本発明は特に、腫瘍誘導性の骨における骨溶解性病変の予防および処置を企図する。
(M−CSFムテイン)
本発明は、本発明の方法に従ってMCSFアンタゴニストとして使用され得るM−CSFムテインを提供する。
ポリペプチドに関して本明細書中で用いられる場合、「ムテイン」とは、インタクトな天然の分子の改変体、または天然の分子のフラグメントの改変体を意味し、これらは、1つ以上のアミノ酸が置換、挿入または欠失され、そしてM−CSFの破骨細胞刺激活性を阻害する能力を示す。このような置換、挿入または欠失は、その分子のN末端にあっても、C末端にあっても、内部にあってもよい。従って、用語「ムテイン」は、天然の分子のフラグメントをその範囲に含む。挿入性のムテインとしては、N末端またはC末端における融合(例えば、半減期を増加させるための、免疫グロブリンのFc部分への融合)が挙げられる。
本明細書中で用いられる場合、「ムテイン産物」は、所望の活性を保持する、ムテインまたはその改変体を意味する。
本明細書中で用いられる場合、「フラグメント」は、インタクトな天然の分子の一部分を意味し;例えば、フラグメントポリペプチドは、N末端またはC末端のいずれかに由来する1つ以上のアミノ酸が欠失された、天然のポリペプチドのフラグメントである。
本発明における好ましいムテインは、MSPRCHプログラム(Oxford Molecular)において実行されるように、以下の検索パラメーター:12のギャップオープンペナルティー、および1のギャップ伸長ペナルティを用いる、アフィンギャップ検索を使用して、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズム(Meth.Mol.Biol.70:173−187(1997))によって決定される、天然のポリペプチドと少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、またはそれ以上の配列同一性(相同性)を示す。他の周知であり、かつ慣用的に用いられる相同性/同一性走査アルゴリズムプログラムとしては、PearsonおよびLipman、PNAS USA、85:2444−2448(1988);LipmanおよびPearson、Science、222:1435(1985);Devereauxら、Nuc.Acids Res.、12:387−395(1984);あるいは、Altschulら、Mol.Biol.、215:403−410(1990)のBLASTPアルゴリズム、BLASTNアルゴリズムまたはBLASTXアルゴリズムが挙げられる。これらのアルゴリズムを用いるコンピュータープログラムもまた利用可能であり、Genetics Computing Group(GCG)パッケージ、Version 8、Madison Wis.、USAから市販される、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTA;および、Intellegenetics、Mountain View CalifによるPC/Geneプログラム内のCLUSTALが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、配列同一性の百分率は、このプログラムによって決定されるデフォルトのパラメーターを用いることで決定される。
本明細書中で用いられる場合、「改変」とは、所望の活性(アゴニストまたはアンタゴニスト)が保持される限り、例えば、グリコシル化、リン酸化、ポリマーとの(例えば、ポリエチレングリコールとの)結合体化、または外来の部分の他の付加のような、天然のポリペプチド、フラグメントまたはムテインの任意の改変を意味する。
米国特許第6,025,146号およびKoths、Mol.Reprod.Dev.1997 Jan;46(1):31−38(両方が、本明細書中で、その全体が参考として援用される)は、M−CSF単独、およびMCSF−Rと複合体化されたM−CSFの結晶化を記載し、そして、M−CSFの三次元構造、ならびにレセプター結合に関与する残基を特徴付ける。米国特許第6,025,146号はまた、構造情報に基づく、M−CSFにおける候補アミノ酸置換の選択の方法を記載する。図1は、短縮された二量体M−CSFにおけるジスルフィド結合を示すトポロジー図である;図2は、毎10番目の残基が標識され、そして非結晶学対称軸を点線で示した、C−α骨格の立体図である。図1に示されるようなM−CSFのこの形態の全体的なトポロジーは、逆平行の4つのαヘリックス性束のトポロジーであり、ここで、このヘリックスは、ほとんどの4ヘリックス束の最も普通に観察される、上−下−上−下結合性とは異なり、上−上−下−下と走る。長い交差結合が、ヘリックスAをヘリックスBと連結し、そして同様の結合がヘリックスCとヘリックスDとの間に見られる。ジスルフィド結合された二量体形態において、この束が末端−末端で連結され、極度に平らで伸長された構造(おおよその寸法が85’×35’×25’)を形成する。それぞれのモノマーにおいて3つの分子内ジスルフィド結合(Cys7−Cys90、Cys48−Cys139、Cys102−Cys146)が存在し、そのすべてが分子の末端に存在する。1つの鎖間(interchain)ジスルフィド結合(Cys31−−Cys31)が、図2に示されるように、二量体を横切る非結晶学的な2回の対称軸(two−fold symmetry axis)を有する二量体の境界面に位置する。変異実験から、この形態のM−CSFにおける全てのシステイン残基が、完全な生物学的活性に必要であり得ることが示された。本明細書中で記載される構造は、その役割が、レセプター認識に関するよりも、主に構造的であることを示唆する。米国特許第6,025,146号は、配列中のアミノ酸残基のα炭素の位置によって示されるような、短縮された組換えM−CSFα二量体の三次元構造を提供する。
ヘリックスA、ヘリックスC、およびヘリックスDにおける特定の残基が、レセプター結合相互作用の特異性に関与するようである。M−CSFβは、システイン157および/またはシステイン159に関与する鎖内(intrachain)ジスルフィド結合を有するので、M−CSFのC末端領域は、この構造の「後面」から伸びるようであり、M−CSFの膜結合形態についての長さの変わり得る「つなぎ縄」を提供する。従って、M−CSFの「前面」またはレセプター結合領域は、分子の反対側にあり、ヘリックスA、ヘリックスC、およびヘリックスDの中または近くの、溶媒が接近可能な残基(それぞれ、天然のM−CSFの、約6〜26残基、71〜90残基、および110〜130残基を含む)からなる。レセプターとの側鎖相互作用を増加または減少させる位置指定突然変異誘発による、これらの領域内の溶媒接近可能な残基の変化が、M−CSFアゴニストまたはアンタゴニストを産生し得る。トリペプチドであるgly−x−glyにおける場合、接近可能なアミノ酸の表面積の規格化に基づいて、約0.25を越え、好ましくは約0.4を越える溶媒接触表面積(solvent accessible surface area)を有する残基が、好ましい(Kabsch,W.ら、Biopolymers 22:2577(1983))。好ましくは、単量体の相対的な配置を維持し、そしてタンパク質のフォールディングのプロセスへの妨害を避けるために、二量体の境界面のようなタンパク質の他の部分と相互作用しない、残基が選択される。
必要に応じてさらなる考慮が、ヒトM−CSFとマウスM−CSFとの間で保存されない残基を選択する。このマウスM−CSFはヒトM−CSFレセプターを認識しない。MCSF−R残基との水素結合および/または疎水相互作用を破壊するために、候補アミノ酸は好ましくは、非保存的アミノ酸との置換について選択される。例えば、1つ以上のヒスチジンを同じような大きさの非水素ドナーアミノ酸と変換することが、変化されたレセプター結合能力を有するM−CSFを作成し得る。置換に好ましいアミノ酸としては、H15;Q79;R86;E115;E41;K93;D99;L55;S18;Q20;I75;V78;L85;D69;N70;H9;N63;およびT34が挙げられるが、これらに限定されない。レセプターシグナル伝達に重要なM−CSFの残基は、M−CSFの非連続的な領域から構成されると考えられる。潜在的に投与されるM−CSFベースのタンパク質性薬物に対する抗体形成の可能性を最小化するために、可能な場合はいつでも、(天然の分子に似せるために)溶媒に接近可能な親のM−CSF残基を保持することが望ましい。
N末端/Aヘリックス領域におけるアミノ酸H15およびH9の変異誘発は、有意により低い生物学的活性および有意により低いMCSF−R結合能力を有するムテインを生じた。これらの結果は、減少した生物学的活性が、減少したレセプター結合親和性に起因することを示した;したがって、これらのヒスチジンアミノ酸が、M−CSFレセプター結合親和性に重要である接触を説明し、完全なレセプター結合能力が望ましい場合には、変えられないまま残されるべきである。例えばY6およびS13および他のような、すぐ隣の溶媒に接近可能な残基はまた、M−CSFレセプターの接触残基を説明し得る。M−CSFの二重突然変異体(Q20A、V78K)が構築され、ヘリックスAおよびヘリックスCの中央部分にある溶媒に接近可能な残基の重要性を試験した。この二重ムテインは、やや低い(8〜10倍)生物学的活性、および対応してより低いレセプター結合活性を有した。残基Q17、R21、E115、およびE119の変異誘発は、目的の領域における溶媒に接近可能なアミノ酸の側鎖性質を変化させたが、生物学的な特異的活性には影響せず、このことは、これらの残基が、アンタゴニスト活性を有するように設計されるムテインへの変化に必要ないことを示唆した。
1つの実施形態において、本発明は、レセプター結合に関与するヘリックスAおよび/またはヘリックスCおよび/またはヘリックスDの残基(例えば、アミノ酸6〜26、アミノ酸71〜90、および/またはアミノ酸110〜130)が、非保存的に変異されたM−CSFムテインを企図する。好ましくは、これらのムテインは天然の配列とヘリックスA、ヘリックスC、またはヘリックスD内で、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、または90%の類似性を保持する(すなわち、同一であるか、または類似した性質を有するアミノ酸)が、ポリペプチドの残りの部分における天然の配列とより高い類似性(例えば、少なくとも95%、98%、または99%の類似性)を有する。さらに、レセプター結合部位の三次元構造(confirmation)を支持する残基は、非保存的に変異され得る。
別の実施形態において、M−CSFムテインは、M−CSFの単量体形態である。M−CSFの二量体形態は、生物学的に活性な形態であり、そしてM−CSFの単量体形態は、一般に活性でない。単量体のジスルフィド結合は、Cys31−Cys31鎖間連結を通して生じるようである。従って、M−CSFの単量体形態が、アンタゴニストとしての使用に適切であり得ることが企図される。このような形態としては、Cys31および/または他のシステインのシステイン欠失および/またはシステイン置換(例えば、システインのアラニンへの置換)を含むムテイン、あるいはシステイン(特にCys31)が化学的に改変されてジスルフィド結合に利用可能でないムテインが挙げられる。
さらに別の実施形態において、M−CSFムテインは、レセプター結合に関与するヘリックスA、ヘリックスC、またはヘリックスD、あるいはそれらの部分の1つ以上を、単独で、または他のポリペプチドと融合して含み、正しい三次元構造におけるフラグメントの表示を可能にする。
任意の所望の保存的ムテインおよび/または非保存的ムテインを含むムテインは、組換え産生または化学合成を含む、当該分野で周知の技術を用いて、容易に調製される。
保存的な置換、特にリガンド−レセプター結合に直接関与する領域の外側の置換は、M−CSFムテイン(またはM−CSFRムテイン)の結合性質を有意に変化させることは期待されない。物理学的性質ならびに二次タンパク質構造および三次タンパク質構造への寄与に従って、アミノ酸は分類され得る。保存的な置換は、1つのアミノ酸の、類似した性質を有する別のアミノ酸への置換として、当該分野で認識される。例示的な保存的置換がすぐ下の表2に述べられる(WO97/09433、第10頁、1997年3月13日に公開(PCT/GB96/02197、96年9月6日出願))。
(表2)
(保存的置換I)
Figure 2007524671
あるいは、保存的なアミノ酸は、すぐ下の表3に述べられるように、Lehninger(Biochemistry、第2版;Worth Publishers,Inc.NY:NY(1975)、pp.71−77)において記載されるように分類され得る。
(表3)
(保存的置換II)
Figure 2007524671
Figure 2007524671
さらに別の代替として、例示的な保存的置換が、すぐ下の表4に記載される。
(表4)
(保存的置換III)
Figure 2007524671
Figure 2007524671
M−CSFをコードするDNA配列の利用可能性は、所望のポリペプチドを産生するための種々の発現系の使用を可能にする。発現ベクターの構築、および適切なDNA配列からの組換え産生が、当該分野で周知の方法によって実施される。これらの技術および種々の他の技術は、Sambrookら、Molecular Cloning−−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)、およびKriegler,M.、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Manual、Stockton Press、New York(1990)(本明細書中において両方が参考として援用される)に従って、一般に実施される。
M−CSFの一次配列への特定の改変は、周知の組換えDNA技術に従って、所望の構造(例えば、M−CSFのレセプター結合能力)を破壊することなく、DNA配列によってコードされるアミノ酸を欠失、付加、または変更することでなされ得る。さらに、個々のアミノ酸は置換されても、酸化、還元、または他の改変によって改変されてもよく、そして、活性な結合部位および構造情報を保持するフラグメントを得るために、ポリペプチドが切断され得ることを、当業者は認める。このような置換および変更は、「成熟したM−CSFα(配列番号2)ポリペプチド、M−CSFβ(配列番号4)ポリペプチド、およびM−CSFγ(配列番号4)ポリペプチドと実質的に同じアミノ酸配列を有する」ポリペプチドの定義内に含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドを生じる。
ポリペプチドは、当該分野で公知である標準的な溶液相または固相のペプチド合成技術を用いて合成され得る。溶液相合成において、広範囲のカップリング法および保護基が用いられ得る(GrossおよびMeienhofer編、「The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology」、第1巻〜第4巻(Academic Press、1979);BodanskyおよびBodansky、「The Practice of Peptide Synthesis」、第2版(Springer Verlag、1994)を参照のこと)。さらに、中間体の精製および線形のスケールアップが可能である。この溶液合成が、主鎖および側鎖の保護基、ならびに活性化方法、およびラセミ化を最小化するためのセグメントの選択の考慮を必要とすることを、当業者は認める。
固相のペプチド合成は一般に、Merrifieldら、J.Am.Chem.Soc.85:2149、1963の方法に従って実施され得るが、これは、保護されたアミノ酸を用いた、樹脂支持体上の直線状ペプチド鎖の組み立てに関する。固相のペプチド合成は、代表的にはBocストラテジーまたはFmocストラテジーのいずれかを利用する。Bocストラテジーは、1%の架橋されたポリスチレン樹脂を用いる。α−アミノ官能基の標準的な保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)基である。この基は、強酸の希釈溶液(例えば、25%のトリフルオロ酢酸(TFA))によって除かれ得る。次にBoc−アミノ酸は、代表的にはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いてアミノアシル樹脂に連結される。この組み立ての完了に続いて、このペプチド−樹脂は、ベンジルエステル結合を切断し、そして遊離のペプチドを遊離させるために、無水HFによって処理される。側鎖の官能基は、普通はベンジル誘導性のブロック基によって合成の間にブロックされ、これもまたHFによって切断される。次いで、この遊離のペプチドを適切な溶媒を用いて樹脂から抽出し、精製して、特徴付ける。新たに合成されたペプチドは、例えば、ゲル濾過、HPLC、分配クロマトグラフィー、および/またはイオン交換クロマトグラフィーによって精製され得、そして、例えば、質量分析またはアミノ酸配列分析によって特徴付けられ得る。Bocストラテジーにおいて、C末端アミド化ペプチドは、ベンズヒドリルアミン樹脂またはメチルベンズヒドリルアミン樹脂を用いて取得され得るが、これらは、HFによる切断に際してペプチドアミドを直接的に得る。9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)を用いる代わりのアプローチは、側鎖保護基およびペプチド−樹脂連結が、N−α−Fmoc基の切断に用いられる二級アミンに対して完全に安定であり得る、異なる試薬を用いる。側鎖保護およびペプチド−樹脂連結は、穏やかなアシドリシス(acidolysis)によって切断される。塩基と繰り返し接触させることは、Merrifield樹脂をFmoc化学にとって不適切にし;そして樹脂に連結されるp−アルコキシベンジルエステルが一般に用いられる。脱保護および切断は、一般にTFAを用いて達成される。N−末端のアセチル化は、最終のペプチドを、樹脂からの切断の前に無水酢酸で反応することで達成され得る。C−アミド化は、適切な樹脂(例えば、Boc技術を用いるメチルベンズヒドリルアミン樹脂)を用いて達成される。
一般に、M−CSFポリペプチドをコードする遺伝子の改変は、種々の周知の技術(例えば、位置指定変異誘発(GillmanおよびSmith、Gene 8:81−97(1979)、およびRoberts,S.ら、Nature 328:731−734(1987)および米国特許第5,032,676号(これらの全ては、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)によって容易に達成される。ほとんどの改変は、所望の特徴についての適切なアッセイにおけるスクリーニングによって評価される。例えば、ポリペプチドのM−CSFレセプター結合特性における変化は、適切な参照ポリペプチドを用いる競合アッセイによって、または米国特許第4,847,201号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるバイオアッセイによって検出され得る。
本発明の挿入改変体は、M−CSFの予定された部位に1つ以上のアミノ酸が導入される改変体である。例えば、挿入改変体は、異種タンパク質または異種ポリペプチドの、そのサブユニットのアミノ末端またはカルボキシル末端への融合であり得る。置換改変体は、少なくとも1つの残基が除かれ、そしてその部位に異なる残基が挿入される改変体である。非天然のアミノ酸(すなわち、天然のタンパク質には通常見出されないアミノ酸)および等配電子のアナログ(アミノ酸または他)もまた、本発明における使用に適切である。適切な置換の例は当該分野で周知である(例えば、Glu−>Asp、Ser−>Cys、およびCys−>Ser、His−>アラニン)。改変体の他のクラスは欠失改変体であり、これは、M−CSFからの1つ以上のアミノ酸残基の除去によって特徴付けられる。
本発明の他の改変体は、天然のタンパク質のアミノ酸を化学的に改変すること(例えば、ヒスチジン残基を改変するジエチルピロカルボネート処理)によって産生され得る。あるアミノ酸側鎖に特異的な、好ましい、または化学的な改変。特異性はまた、保護されるべき側鎖に関する抗体を用いる他の側鎖のブロックによっても達成され得る。化学的な改変としては、酸化、還元、アミド化、脱アミド化、または巨大な基(例えば、多糖またはポリエチレングリコール(例えば、米国特許第4,179,337号およびWO91/21029号(両方が、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと))の置換のような反応が挙げられる。
例示的な改変としては、コハク酸または他のカルボン酸無水物を用いる反応による、リジン(lysinyl)残基およびアミノ末端残基の改変が挙げられる。これらの薬剤による改変は、リジン残基の電荷を逆転させる効果を有する。アミノ含有残基を改変するための他の適切な試薬としては、イミドエステル(例えば、メチルピコリンイミデート);ピリドキサルホスフェート;ピリドキサルクロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソウレア、2,4−ペンタンジオン;および、グリオキシレートによるトランスアミナーゼ触媒性反応、およびポリエチレングリコールまたは他の巨大な置換のN−ヒドロキシスクシンアミドエステルが挙げられる。
アルギニル残基は、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンを含む多数の試薬を用いる反応によって改変される。アルギニン残基の改変は、グアニンジン官能基の高いpKのために、アルカリ性条件において反応が行われる必要がある。さらに、これらの試薬は、リジン基およびアルギニンε−アミノ基と反応し得る。
チロシル残基もまた、O−アセチルチロシル分子種および3−ニトロ誘導体を形成するために用いられる、それぞれ芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンを用いる反応によって、チロシル残基にスペクトルの標識を導入する特別な目的で改変され得る。チロシル残基はまた、ラジオイムノアッセイにおける使用のための標識されたタンパク質を調製するために、125Iまたは131Iを用いてヨウ素化され得る。
カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R−−N.dbd.C.dbd.N−−R.sup.1)との反応によって選択的に改変され得、ここでRおよびRは異なるアルキル基(例えば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニアー4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミド)である。さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換される。
反対に、グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、穏やかな酸性条件下において、それぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基に脱アミド化され得る。これらの残基のそれぞれの形態は、本発明の範囲内に含まれる。
他の改変としては、プロリンおよびリジンの水酸化、セリル(seryl)残基またはトレオニル残基の水酸基のリン酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖、およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton、Proteins:Structure and Molecular Properties、W.H.Freeman & Co.、San Francisco、pp.79−86(1983))、N末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
システインのキャッピングもまた(alos)、M−CSFポリペプチドの改変のために使用され得る。例えば、スルフヒドリル基(システイン)は、ヨードアセトアミド(アルキルハライドまたはハロアセトアミド)またはマレイミド(N−エチルマレイミド(N−ethyulmaeimide)(NEM)または7−ジエチルアミノ−3−(4’−マレイミジルフェニル)−4−メチルクマリン CPM)との反応により選択的に改変され得る。異なるアルキル基がタンパク質に結合され、改変されたタンパク質の安定なチオエーテル形態を生じる。
M−CSFムテインの、天然のM−CSFタンパク質との類似度を決定するために、多数の方法が用いられ得る。例えば、整列(alignment)を最大化させるために、100アミノ酸長に4つのギャップが導入され得る場合、比較される配列における同一のアミノ酸残基を整列する2つの配列のより小さいほうに含まれるアミノ酸残基の百分率として、相同性百分率が計算される(本明細書中で参考として援用される、Atlas of Protein Sequence and Structure、第5巻におけるDayhoff、p.124、National Biochemical Research Foundation、Washington,D.C.(1972))。配列比較の目的のためのポリペプチドの配列整列もまた、種々の複数整列サーバーを用いて行われ得、これらのサーバーの多くは現在インターネット上で利用可能である(例えば、Clustal W、MAP、PIMA、Block Maker、MSA、MEME、およびMatch−Box)。好ましくは、ポリペプチド(および、ポリヌクレオチドも)の配列整列のために、Clustal W(Higginsら、Gene(1988)73:237−244;Higginsら、Meth.Enzymol.(1996)266:383−402)が利用される。同様に、BLASTPプログラムがタンパク質データベースに対してアミノ酸照会配列を比較し、そしてTBLASTNは、全ての6つのリーディングフレーム(両方の鎖)において動的に翻訳されたヌクレオチド配列データベースに対してタンパク質照会配列を比較し、そして本発明において利用され得る。2つのアミノ酸配列が実質的に相同(すなわち、類似または同一)であるかどうかを決定することはまた、Pearsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444−2448(1988)に基づくFASTA検索にも基づき得る。
特に、同一性および/または類似度を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を与えるように設計される。同一性および類似度を決定する方法は、公共に利用可能なコンピュータープログラム(例えば、先に記載したようなプログラム)に分類される。2つの配列の間の同一性および類似度を決定するための好ましいコンピュータープログラム方法としては、GAP(Devereuxら、Nucleic Acids Research(1984)12(1):387;Genetics Computer Group、University of Wisconsin、Madison、WI)を含むGCGプログラムパッケージ、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschulら、J.Molec.Biol.(1990)215:403−410)が挙げられるが、これらに限定されない。BLAST Xプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)および他の供給源から公共に利用可能である(Altschulら、BLAST Manual、NCB NLM NIH Bethesda、MD 20894;Altschulら、J.Mol.Biol.(1990)215:403−410)。周知のSmith Watermanアルゴリズムもまた、同一性を決定するために利用され得る。GAPプログラムを用いてポリヌクレオチド配列を比較する際に、以下のデフォルトのパラメーターが好ましい:比較マトリックス:一致=+10、不一致=0、ギャップペナルティは50、およびギャップ長ペナルティは3(Needlemanら、J.Mol Biol.(1970)48:443−453)。
タンパク質の関連性はまた、そのコードする核酸の関連性を通して特徴付けられ得る。ポリヌクレオチド配列の同一性および/または類似度を決定する方法は、上記に記載される。さらに、中程度のストリンジェント条件または高いストリンジェント条件の下においてハイブリダイズする能力を試験することを通して、ポリヌクレオチド配列の類似度を決定する方法が、以下のように決定され得る。例示的な中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は以下の通りである:50%ホルムアミド、1%SDS、1M NaCl、10%デキストラン硫酸を含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃でのハイブリダイゼーション、ならびに、0.1×SSCおよび1%SDSを含む洗浄溶液中で60℃で30分間の洗浄工程を2回。高いストリンジェント条件は、0.1×SSCおよび1%SDSを含む洗浄溶液中で68℃での洗浄を包含する。相当するストリンジェンシーの条件は、当該分野(Ausubelら(編)、Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons(1994)、pp.6.0.3〜6.4.10)で記載される種々の温度および緩衝液または塩濃度を通して達成され得ることが、当該分野で理解される。ハイブリダイゼーション条件における改変は、経験的に決定されても、プローブの長さ、およびグアノシン/シトシン(GC)塩基対合の割合に基づいて正確に計算されてもよい。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrookら(編)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、New York(1989)、pp.9.47〜9.51に記載されるように計算され得る。
(遺伝子治療)
適切な細胞への治療用タンパク質の送達は、当該分野で公知である任意の適切なアプローチを用いることによる、エキソビボ、インサイチュ、またはインビボの遺伝子治療を介して果たされ得、これらのアプローチとしては、物理的なDNA移送方法(例えばリポソームまたは化学的処理)の使用、またはウイルスベクター(例えばアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはレトロウイルス)の使用が挙げられる。例えば、インビボでの治療のために、所望のタンパク質をコードする核酸が、単独あるいはベクター、リポソーム、または沈殿物との結合体のいずれかで、被験体に直接注射され得、そしていくつかの実施形態において、タンパク質化合物の発現が望まれる部位に注射され得る。エキソビボでの処置のために、被験体の細胞が取り除かれ、核酸がこれらの細胞に導入され、そして改変された細胞が被験体に直接戻されるか、または、例えば患者に移植される多孔性の膜にカプセル化されるかのいずれかで被験体に戻される。例えば、米国特許第4,892,538号および同第5,283,187号を参照のこと。生細胞に核酸を導入するために利用可能な種々の技術が存在する。これらの技術は、核酸が、培養細胞にインビトロで移送されるか、または意図される宿主の細胞にインビボで移送されるかに依存して変化する。インビトロでの哺乳動物細胞への核酸の移送に適切な技術としては、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、およびリン酸カルシウム沈殿が上げられる。エキソビボでの核酸の送達に一般に用いられるベクターはレトロウイルスである。
他のインビボでの核酸移送の技術としては、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、またはアデノ随伴ウイルス)のトランスフェクトおよび脂質ベースの系が挙げられる。この核酸およびトランスフェクト因子は、必要に応じて微粒子と合わせられる。例示的なトランスフェクト因子としては、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウムとの共沈殿、DEAE−デキストラン媒介性のトランスフェクト、四級アンモニウム両親媒性物質DOTMA((ジオレオイルオキシプロピル)トリメチルアンモニウムブロマイド、LipofectinとしてGIBCO−BRLから市販))(Felgnerら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,7413−7417;Maloneら(1989)Proc.Natl Acad.Sci.USA 86 6077−6081);ぶら下がったトリメチルアンモニウム頭部を有する脂肪親和性グルタミン酸ジエステル(Itoら(1990)Biochem.Biophys.Acta 1023、124−132);代謝可能な親脂質(例えば、陽イオン性脂質ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS、Transfectam、Promega)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)(J.P.Behr(1986)Tetrahedron Lett.27、5861−5864;J.P.Behrら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86、6982−6986);代謝可能な四級アンモニウム塩(DOTB、N−(1−[2,3−ジオレオイルオキシ]プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルサルフェート(DOTAP)(Boehringer Mannheim)、ポリエチレンイミン(PEI)、ジオレオイルエステル、ChoTB、ChoSC、DOSC)(Leventisら(1990)Biochim.Inter.22、235−241);3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)/3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロールDC−Cholの1対1混合(Gaoら、(1991)Biochim.Biophys.Acta 1065、8−14)、スペルミン、スペルミジン、リポポリアミン(Behrら、Bioconjugate Chem、1994、5:382−389)、脂肪親和性ポリリジン(LPLL)(Zhouら、(1991)Biochim.Biophys.Acta 939、8−18)、過剰なホスファチジルコリン/コレステロールを含む[[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)クレ−ソキシ(cre−soxy)]エトキシ]エチル]ジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド(DEBDAヒドロキシド)(Ballasら、(1988)Biochim.Biophys.Acta 939、8−18)、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)/DOPE混合物(Pinnaduwageら、(1989)Biochim.Biophys.Acta 985、33−37)、DOPEを含むグルタミン酸の脂肪親和性ジエステル(TMAG)、CTAB、DEBDA、ジドデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)、およびホスファチジルエタノールアミンとの混合におけるステアリルアミン(Roseら、(1991)Biotechnique 10、520−525)、DDAB/DOPE(TransfectACE、GIBCO BRL)、およびオリゴガラクトースを有する脂質が挙げられる。移送の効率を増加させる、例示的なトランスフェクト亢進因子としては、例えば、DEAE−デキストラン、ポリブレン、リソソーム破壊ペプチド(Ohmori N Iら、Biochem Biophys Res Commun 1997年6月27日;235(3):726−9)、コンドロイタン(chondroitan)ベースのプロテオグリカン、硫酸化プロテオグリカン、ポリエチレンイミン、ポリリジン(Pollard Hら、J Biol Chem、1998 273(13):7507−11)、インテグリン結合ペプチドCYGGRGDTP、直鎖デキストランノナサッカリド、グリセロール、オリゴヌクレオチドの3’末端ヌクレオシド間結合に結合したコレステリル基(Letsinger,R.L.1989 Proc Natl Acad Sci USA 86:(17):6553−6)、リゾホスファチド、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、および1−オレイルリゾホスファチジルコリンが挙げられる。
いくつかの状況において、核酸含有ベクターを標的細胞に配向させる因子と共に核酸を送達することが望ましくあり得る。このような「標的」分子としては、標的細胞の細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体、または標的細胞上のレセプターのリガンドが挙げられる。リポソームが利用される場合、エンドサイトーシスと関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質が、標的のために、および/または取り込みを促進するために用いられ得る。このようなタンパク質の例としては、特定の細胞型に向性を有するキャプシドタンパク質およびそのフラグメント、循環における内部移行(internalization)を起こすタンパク質の抗体、および、細胞内局在を標的とし、細胞内半減期を増加させるタンパク質が挙げられる。他の実施形態において、レセプター媒介性エンドサイトーシスが用いられ得る。このような方法は、例えば、Wuら、1987またはWagnerら、1990に記載される。現在公知である遺伝子マーキングおよび遺伝子治療プロトコルの概観のためには、Anderson 1992を参照のこと。また、WO93/25673およびその中に引用される参考文献も参照のこと。遺伝子治療技術の更なる概観のためには、Friedmann、Science、244:1275−1281(1989);Anderson、Nature、vol.392の補遺、no6679、pp.25−30(1998);Verma、Scientific American:68−84(1990);およびMiller、Nature、357:455460(1992)を参照のこと。
(スクリーニング方法)
効果的な治療は、有意な毒性を欠く、効果的な因子を同定することに依存する。癌転移に関連する骨の減少を防ぐことまたは処置に有用な可能性のある化合物は、種々のアッセイを用いてスクリーニングされ得る。例えば、候補ムテインが、破骨細胞生成(osteoclastogenesis)の誘導におけるM−CSFの中和能力を決定するために、培養細胞系内でまず特徴付けられ得る。このような系としては、マウスの頭蓋冠の骨芽細胞および脾臓細胞の共培養物(Sudaら、Modulation of osteoclast differentiation.Endocr.Rev.13:66 80、1992;MartinおよびUdagawa、Trends Endocrinol.Metab.9:6−12、1998)、マウスの間質細胞株(例えば、MC3T3−G2/PA6およびST2)およびマウス脾臓細胞の共培養物(Udagawaら、Endocrinology 125:1805 13、1989)、ならびにST2細胞および骨髄細胞、末梢血単核細胞、または肺胞マクロファージの共培養物(Udagawaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:7260 4、1990;Sasakiら、Cancer Res.58:462 7、1998;Mancinoら、J.Surg.Res.100:18−24、2001)が挙げられ得る。M−CSFムテインが全く無い場合、このような共培養物に形成される多核細胞が、破骨細胞の主要な判定基準(例えば、酒石酸塩耐性酸ホスファターゼ(TRAP、破骨細胞のマーカー酵素)活性、カルシトニンレセプター、p60C−STC、ビトロネクチンレセプター、ならびに、骨および象牙質切片上の再吸収のくぼみの形成能力)を満たす。効果的なM−CSFムテインの存在は、このような多核細胞の形成を阻害する。
上記の共培養系に加えて、候補M−CSFムテインの破骨細胞生成阻害における能力は、間質細胞を含まないか、または骨芽細胞を含まない系においてアッセイされ得る。破骨細胞生成に必要なM−CSFは、共培養された転移性癌細胞(例えば、MDA231)またはこれらの癌細胞に由来するならし培地(Mancinoら、J.Surg.Res.0:18−24、2001)、あるいは精製されたM−CSFの添加によって提供され得る。
癌転移に関連する骨の減少を防ぐか、または処置する上での所与のM−CSFムテインの効力がまた、当業者に知られた、動物の骨転移モデル系の任意のものにおいて試験され得る。このようなモデル系としては、骨の髄腔(Ingall、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.117:819−22、1964;Falasko、Clin.Orthop.169:20 7、1982)、ラットの腹大動脈(Powlesら、Br.J.Cancer 28:316 21、1973)、マウス側方尾静脈、またはマウス左心室(Auguelloら、Cancer Res.48:6876 81、1988)への腫瘍細胞の直接的な注射を包含する系が挙げられる。効果的なM−CSFムテインが存在しない場合、注射された腫瘍細胞から形成される骨溶解性骨転移が、X線写真(骨溶解性骨病変の領域)または組織化学(骨および軟組織)によって決定され得る。Sasakiら、Cancer Res.55:3551 7、1995;Yonedaら、J.Clin.Invest.99:2509 17、1997。ClohisyおよびRamnaraine、Orthop Res.16:660 6、1998。Yinら、J.Clin.Invest.103:197 206、1999。効果的なM−CSFアンタゴニストが存在する場合、骨溶解性骨転移は防がれ得るか、または阻害され得て、より少ないおよび/またはより小さい転移を生じる。
本発明のM−CSFムテインはまた、癌転移を防ぐか、または処置する上で有用であり得る。癌転移を防ぐか、または処置する上での候補M−CSFムテインの有効性は、Fildermanら、Cancer Res 52:36616、1992に記載されるような、ヒトの羊膜基底膜侵襲モデルを用いてスクリーニングされ得る。さらに、種々の型の癌の転移についての動物モデル系の任意のものも用いられ得る。このようなモデル系としては、Wengerら、Clin.Exp.Metastasis 19:169 73、2002に記載されたモデル系;Yiら、Cancer Res.62:917 23、2002に記載されたモデル系;Tsutsumiら、Cancer Lett 169:77−85、2001に記載されたモデル系;Tsingotjidouら、Anticancer Res.21:971 8、2001に記載されたモデル系;Wakabayashiら、Oncology 59:75 80、2000に記載されたモデル系;CulpおよびKogerman、Front Biosci.3:D672 83、1998に記載されたモデル系;Rungeら、Invest Radiol.32:212 7に記載されたモデル系;Shiodaら、J.Surg.Oncol.64:122 6、1997に記載されたモデル系;Maら、Invest Ophthalmol Vis Sci.37:2293 301、1996に記載されたモデル系;Kuruppuら、J Gastroenterol Hepatol.11:26 32、1996に記載されたモデル系が挙げられるが、これらに限定されない。効果的なM−CSFアンタゴニストが存在する場合、癌転移は防がれ得るか、または阻害され得て、より少ないおよび/またはより小さい転移を生じる。
特定のM−CSFムテインまたはM−CSFアンタゴニストの組み合わせの抗腫瘍活性が、適切な動物モデルを用いてインビボで評価され得る。例えば、ヒトリンパ腫細胞が免疫を損なわれた動物(例えば、ヌードマウスまたはSCIDマウス)に導入される、異種間リンパ腫癌モデル。効力は、腫瘍形成の阻害、腫瘍退行または転移などを測定するアッセイを用いて予測され得る。
インビトロアッセイの1つの変形において、本発明は、
(a)固定化されたM−CSFRポリペプチドを候補M−CSFムテインと接触させる工程、および
(b)候補M−CSFムテインのM−CSFRポリペプチドへの結合を検出する工程
を包含する方法を提供する。別の実施形態において、候補M−CSFムテインが固定化され、そしてM−CSFRポリペプチドの結合が検出される。固定化は、当該分野で周知の方法(例えば、支持体、ビーズ、またはクロマトグラフィー樹脂への共有結合、および非共有性の高親和性相互作用(例えば、抗体結合)、あるいは、固定化された化合物がビオチン部分を含む、ストレプトアビジン/ビオチン結合の使用)の任意のものを用いて達成される。結合の検出は、
(i)固定化されていない化合物上の放射活性標識を用いて、
(ii)固定化されていない化合物上の蛍光標識を用いて、
(iii)固定化されていない化合物に対する免疫特異的な抗体を用いて、
(iv)固定化されていない化合物上の標識であって、固定化された化合物が結合される蛍光支持体を励起させる標識、および当該分野で周知でありかつ慣用的に実施される他の技術を用いて達成され得る。
M−CSFムテインを同定するための本発明の方法としては、上記に記載した方法の任意のものの変形が挙げられ、この変形は、候補M−CSFムテインが存在する場合に、M−CSFポリペプチドとM−CSFRポリペプチドとの間の結合が、候補M−CSFムテインが存在しない場合の結合と比べて変化する場合にM−CSFムテインが同定される技術を含む。M−CSFポリペプチドとM−CSFRポリペプチドとの間の結合を増加させるM−CSFムテインは、エンハンサーまたは活性化因子として記載され、M−CSFポリペプチドとM−CSFRポリペプチドとの間の結合を減少させるM−CSFムテインは、インヒビターとして記載される。
本発明はまた、M−CSFポリペプチドと相互作用するか、またはM−CSFポリペプチドのM−CSFRポリペプチドとの生物学的活性を阻害する(すなわち、酵素活性、結合活性などを阻害する)化合物を同定するための、高スループットスクリーニング(HTS)アッセイを包含する。HTSアッセイは、効率的な様式での大量の化合物のスクリーニングを可能にする。細胞ベースのHTS系は、M−CSFポリペプチドとM−CSFRポリペプチドとの間の相互作用を調査することが企図される。HTSアッセイは、所望の性質を有する「ヒット(hit)」または「リード化合物(lead compound)」を同定するために設計され、そこから所望の性質を改善するように改変が設計され得る。「ヒット」または「リード化合物」の化学的改変は、多くの場合、「ヒット」とM−CSFポリペプチド−M−CSFRポリペプチドとの間の同定可能な構造/活性の関連に基づく。
本発明の別の局面は、M−CSFRポリペプチドと結合するM−CSFムテインを同定する方法に関し、この方法は、M−CSFRポリペプチドをM−CSFムテインと接触させる工程、およびM−CSFムテインがM−CSFRポリペプチドと結合したかどうかを決定する工程を包含する。結合は当業者に周知の結合アッセイによって決定され得、これらの結合アッセイとしては、ゲルシフトアッセイ、ウェスタンブロット、放射標識競合アッセイ、ファージベースの発現クローニング、クロマトグラフィーによる共分画、共沈降、架橋、相互作用トラップ(interaction trap)/ツーハイブリッド分析、サウスウェスタン分析、ELISAなど(これらは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(1999)John Wiley & Sons、NY(本明細書中にその全体が参考として援用される)に記載される)が挙げられるが、これらに限定されない。このような試験に利用されるM−CSFRポリペプチドは、溶液中で遊離であるか、固体の支持体に結合されるか、細胞表面で生じるか、または細胞内に局在するか、あるいは細胞の一部分に付随するかのいずれかであり得る。例えば、M−CSFRポリペプチドと、試験されるM−CSFムテインとの間の複合体の形成を当業者は測定する。あるいは、M−CSFポリペプチドとM−CSFRポリペプチドとの間の複合体形成の、試験されるM−CSFムテインに起因する減少を、当業者は調べ得る。
本発明の別の局面は、M−CSFRポリペプチドの活性を調節する(例えば減少する)化合物を同定する方法に関し、この方法は、M−CSFRポリペプチドをM−CSFムテインと接触させる工程、およびM−CSFRポリペプチドの活性をM−CSFムテインが改変するかどうかを決定する工程を包含する。試験M−CSFムテインの存在下での活性が、試験M−CSFムテインの非存在下での活性と比較される。試験M−CSFムテインを含有するサンプルの活性が、試験M−CSFムテインを欠くサンプルにおける活性よりも高い場合、その化合物は増加した活性を有する。同様に、試験M−CSFムテインを含有するサンプルの活性が、試験M−CSFムテインを欠くサンプルにおける活性よりも低い場合、その化合物は阻害された活性を有する。
本発明は、種々の薬物スクリーニング技術の任意のものにおいて、M−CSFポリペプチドおよび/またはM−CSFRポリペプチドを用いることによるM−CSFムテインのスクリーニングのために、特に有用である。このような試験に利用されるM−CSFRポリペプチドは、溶液中で遊離であるか、固体の支持体に結合されるか、細胞表面で生じるか、または細胞内に局在するか、あるいは細胞の一部分に付随するかのいずれかであり得る。例えば、M−CSFRポリペプチドと、試験されるM−CSFムテインとの間の複合体の形成を当業者は測定する。あるいは、M−CSFポリペプチドとM−CSFRポリペプチドとの間の複合体形成の、試験されるM−CSFムテインに起因する減少を、当業者は調べ得る。
当業者に周知である種々の異種の系が、組換えポリペプチドの機能的な発現に利用可能である。このような系としては、細菌(Strosbergら、Trends in Pharmacological Sciences(1992)13:95−98)、酵母(Pausch、Trends in Biotechnology(1997)15:487−494)、いくつかの種類の昆虫細胞(Vanden Broeck、Int.Rev.Cytology(1996)164:189−268)、両生類の細胞(Jayawickremeら、Current Opinion in Biotechnology(1997)8:629−634)、およびいくつかの哺乳動物の細胞株(CHO、HEK293、COSなど;Gerhardtら、Eur.J.Pharmacology(1997)334:1−23を参照のこと)が挙げられる。これらの例は、線虫から得られる細胞株(PCT出願WO98/37177)を含む、他の可能性のある細胞発現系の使用を除外するものではない。
本発明の好ましい実施形態において、M−CSFRポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法は、試験M−CSFムテインをM−CSFRポリペプチドと接触させる工程、およびM−CSFムテインとM−CSFRポリペプチドとの間の複合体の存在についてアッセイする工程を包含する。このようなアッセイにおいて、M−CSFムテインは代表的には標識される。適切なインキュベートの後、遊離のM−CSFムテインが、結合形態で存在するM−CSFムテインから分離され、そして遊離のまたは複合体化されていない標識の量が、特定のM−CSFムテインのM−CSFRポリペプチドへ結合する能力の測定値である。
本発明の別の実施形態において、M−CSFRポリペプチドへの適切な結合親和性を有するM−CSFムテインについての高スループットスクリーニングが利用される。手短に言うと、大量の異なる試験M−CSFムテインが、固相の基材に固定化される。試験M−CSFムテインはM−CSFRポリペプチドと接触され、そして洗浄される。次いで、結合したM−CSFRポリペプチドは、当該分野で周知の方法によって検出される。本発明の精製されたM−CSFムテインはまた、前述の薬物スクリーニング技術における使用のために、プレート上に直接コーティングされ得る。さらに、中和されていない抗体が使用されて、M−CSFムテインを捕らえ得、そして固体の支持体に固定化し得る。
一般に、当業者に周知の方法によって適切な放射性同位体(125I、H、35S、または32Pが挙げられるが、これらに限定されない)で標識された基質分子、リガンド分子、アダプター分子、またはレセプター分子と併せられるHTS結合アッセイについて、発現されたM−CSFムテインが用いられ得る。あるいは、基質分子、リガンド分子、アダプター分子、またはレセプター分子は、周知の方法によって適切な蛍光誘導体で標識され得る(Baindurら、Drug Dev.Res.(1994)33:373−398;Rogers、Drug Discovery Today(1997)2:156−160)。固定化されたM−CSFムテインに特異的に結合される放射活性なリガンドは、いくつかの標準的な方法(結合していないリガンドから結合されたリガンドを分離するための、M−CSFムテイン−リガンド複合体の濾過(Williams、Med.Res.Rev.(1991)11、147−184;Sweetmanら、J.Natural Products(1993)56、441−455)を含む)の1つにおけるHTSアッセイにおいて検出され得る。別の方法としては、シンチレーション近似アッセイ(scintillation proximity assay)(SPA)、またはこのような分離が不必要であるFlashPlate形式(Nakayama、Cur.Opinion Drug Disc.Dev.(1998)1:85−91 Bosseら、J.Biomolecular Screening(1998)3:285−292)が挙げられる。蛍光リガンドの結合は種々の方法において検出され得、このような方法としては、蛍光エネルギー移動(FRET)、結合したリガンドの直接的な蛍光分光定量(spectrophotofluorometric)分析、または蛍光偏光(Rogers、Drug Discovery Today(1997)2、156−160;Hill、Cur.Opinion Drug Disc.Dev.(1998)1、92−97)が挙げられる。
本発明は、M−CSFRへの基質、リガンド、アダプター、またはレセプターの結合のインヒビターのスクリーニングおよび同定のための多数のアッセイを企図する。1つの例において、M−CSFまたはM−CSFRが固定化され、そして結合相手との相互作用が、候補M−CSFムテインの存在下および非存在下において評価される。別の例において、M−CSFとM−CSFRとの間の相互作用が、候補M−CSFムテインの存在下および非存在下の両方において、溶液アッセイにて評価される。いずれのアッセイにおいても、インヒビターは、M−CSFとM−CSFRとの間の結合を減少させるM−CSFムテインとして同定される。別に企図されるアッセイは、1995年8月3日に公開されたPCT公開番号WO95/20652に記載されるような、タンパク質/タンパク質相互作用のインヒビターが、形質転換された宿主細胞またはトランスフェクトされた宿主細胞における陽性のシグナルの検出によって同定される二因子ハイブリッドアッセイ(dihybrid assay)の変形に関与する。
M−CSFRの特異的なリガンドを同定するために他のアッセイが用いられ得、このようなアッセイとしては、試験M−CSFムテインの標的タンパク質への直接的な結合を測定することによってM−CSFRのリガンドを同定するアッセイ、および、イオンスプレー質量分析/HPLC方法または他の物理的かつ分析的方法を有する親和性限外濾過を通して、標的タンパク質のリガンドを同定するアッセイが挙げられる。あるいは、このような結合相互作用は、Fieldsら、Nature、340:245−246(1989)、およびFieldsら、Trends in Genetics、10:286−292(1994)(この両方は本明細書中に参考として援用される)に記載される酵母ツーハイブリッド系を用いて間接的に評価される。ツーハイブリッド系は、2つのタンパク質またはポリペプチド間の相互作用を検出するための遺伝的アッセイである。これは、目的の公知のタンパク質に結合するタンパク質を同定するために、あるいは相互作用に決定的なドメインまたは残基を明確に叙述するために用いられ得る。この方法論の変形が、DNA結合タンパク質をコードする遺伝子をクローン化するために、タンパク質に結合するペプチドを同定するために、および薬物のスクリーニングのために開発されてきた。ツーハイブリッド系は、相互作用するタンパク質の対が、転写活性化ドメインを、レポーター遺伝子の上流活性化配列(UAS)に結合するDNA結合ドメインの極く近くに連れていく能力を活用し、一般的に酵母で実施される。このアッセイは、
(1)第一のタンパク質と融合されるDNA結合ドメイン、および
(2)第二のタンパク質と融合される活性化ドメイン
をコードする2つのハイブリッドな遺伝子の構築を必要とする。DNA結合ドメインは、レポーター遺伝子のUASを第一のハイブリッドタンパク質の標的とする;しかし、ほとんどのタンパク質は活性化ドメインを欠いているので、このDNA結合ハイブリッドタンパク質は、レポーター遺伝子の転写を活性化しない。第二のハイブリッドタンパク質は活性化ドメインを含むが、UASには結合しないので、それ自身ではレポーター遺伝子の発現を活性化し得ない。しかし、両方のハイブリッドタンパク質が存在する場合、第一のタンパク質と第二のタンパク質との非共有的な相互作用が、UASに活性化ドメインを結合し、レポーター遺伝子の転写を活性化する。例えば、第一のタンパク質がM−CSFまたはM−CSFR、あるいは、もう一方のタンパク質または核酸に相互作用することが公知であるそれらのサブユニットまたはフラグメントである場合、このアッセイは、結合相互作用を妨害する因子を検出するために用いられ得る。異なる試験因子がこの系に加えられる場合、レポーター遺伝子の発現がモニターされる。阻害的因子の存在が、レポーターシグナルの欠失を生じる。
酵母ツーハイブリッドアッセイはまた、M−CSFRに結合するタンパク質の同定に用いられ得る。M−CSFR、あるいはそのサブユニットまたはフラグメントに結合するM−CSFムテインを同定するためのアッセイにおいて、M−CSFR(あるいはサブユニットまたはフラグメント)およびUAS結合ドメインをコードする融合ポリヌクレオチド(すなわち第一のタンパク質)が用いられ得る。さらに、活性化ドメインと融合された、それぞれ異なる第二のタンパク質(すなわちM−CSFムテイン)をコードする多数のハイブリッド遺伝子が産生されて、そしてアッセイにおいてスクリーニングされる。代表的には、第二のタンパク質は、全cDNAまたはゲノムDNA融合ライブラリーの1つ以上のメンバーによってコードされ、それぞれの第二のタンパク質のコードする領域は活性化ドメインと融合される。この系は、広範囲のタンパク質に適用可能であり、そして第二の結合タンパク質の正体または機能を知ることは必要ですらない。この系は高度に感受性であり、そして他の方法では明らかでない相互作用を検出し得る;一過的な相互作用すら、レポータータンパク質を生じるために繰り返し翻訳され得る安定なmRNAを産生するために転写を誘発させ得る。
標的タンパク質に結合する因子を検索するために、他のアッセイが用いられ得る。試験リガンドの標的タンパク質への直接的な結合を同定するための、1つのこのようなスクリーニング方法は、米国特許第5,585,277号(本明細書中に参考として援用される)に記載される。この方法は、タンパク質が一般に折り畳まれた状態と折り畳まれない状態との混合物として存在し、そしてこの2つの状態の間で頻繁に交代するという原則に依存する。試験リガンドが標的タンパク質の折り畳まれた形態に結合する場合(すなわち、試験リガンドが標的タンパク質のリガンドである場合)、リガンドに結合された標的タンパク質分子は折り畳まれた状態であり続ける。従って、折り畳まれた標的タンパク質は、標的タンパク質に結合する試験リガンドの存在下で、リガンドが存在しない場合よりも、より多くの量で存在する。このリガンドの標的タンパク質への結合は、標的タンパク質の折り畳まれた状態と折り畳まれない状態とを区別する任意の方法によって決定され得る。標的タンパク質の機能は、行われるべきこのアッセイのために公知である必要は無い。実質的にいかなる因子も、この方法によって試験リガンドとして評価され得、このような因子としては、金属、ポリペプチド、タンパク質、脂質、多糖、ポリヌクレオチド、および小さな有機分子が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の他の実施形態は、本発明のM−CSFRポリペプチドと結合し得る抗体の中和が、M−CSFRポリペプチドとの結合について試験M−CSFムテインと特異的に競合する、競合的スクリーニングアッセイの使用を包含する。この様式において、M−CSFRと1つ以上の抗原決定基を共有する任意のペプチドの存在を検出するために、抗体が用いられ得る。放射標識された競合結合研究は、A.H.Linら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy(1997)第41巻、no.10、pp.2127−2131に記載され、この開示は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
本発明の別の実施形態において、相互作用する制御タンパク質の同定、特徴づけ、および精製についての研究手段として、本発明のM−CSFムテインが利用される。適切な標識が、当該分野で公知である種々の方法によって本発明のM−CSFムテインに取り込まれ、そしてこのポリペプチドが相互作用する分子を捕らえるために用いられる。例えば、標識されたM−CSFムテインと共に分子がインキュベートされ、結合していないM−CSFムテインを除去するために洗浄され、そしてM−CSFムテイン複合体が定量される。異なる濃度のM−CSFムテインを用いて得られたデータが、タンパク質複合体を有するM−CSFムテインの数、親和性、および会合についての値を計算するために用いられる。
標識されたM−CSFRポリペプチドはまた、ポリペプチドが相互作用する分子の精製のための試薬として有用であり、これらの分子としては、M−CSFムテインが挙げられるがこれに限定されない。アフィニティ精製の1つの実施形態において、ポリペプチドは、クロマトグラフィーカラムに共有結合的に結合される。細胞およびその膜が抽出され、そして種々の細胞性の小成分(subcomponent)がカラムを通過される。分子は、ポリペプチドへの親和性によってカラムに結合する。このポリペプチド複合体がカラムから回収され、分離されて、そして回収された分子がタンパク質配列決定に供される。次いで、捕らえられた分子を同定するために、または適切なcDNAライブラリーから対応する遺伝子をクローニングするために縮重されたオリゴヌクレオチドを設計するために、アミノ酸配列が使用される。
利用可能なM−CSFまたはM−CSFRの情報に基づいて、本発明のM−CSFムテインの推定三次構造を作り出すために、コンピューターモデリングが用いられ得る。従って、M−CSFまたはM−CSFRの予測される構造に基づく新規なリガンドが設計され得る。
本発明の別の局面は、他の動物におけるホモログを同定するための、本明細書中に開示されたM−CSFまたはM−CSFRのヌクレオチド配列の使用である。本明細書に開示されたヌクレオチド配列の任意のもの、またはそれらの任意の部分が、ホモログを同定するために、当業者に周知であるスクリーニング手順を用いて、例えば、データベースまたは核酸ライブラリー(例えば、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー)をスクリーニングするためのプローブとして用いられ得る。従って、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも100%の相同性をM−CSF配列またはM−CSFR配列と有するホモログが同定され得る。
(組み合わせ治療)
動物モデルにおいて効果的である1つ以上のM−CSFムテインが同定された場合、癌転移および/または癌転移に関連する骨の減少に対するなお改善された効力を提供するために、2つ以上のこのようなM−CSFアンタゴニストを混合することが、さらに有利であり得る。1つ以上のM−CSFアンタゴニストを含有する組成物が、癌転移および/または癌転移に関連する骨の減少に罹患するか、または罹患しやすいヒトまたは哺乳動物に投与され得る。
M−CSFアンタゴニスト治療は癌の全てのステージにとって有用であり得るが、M−CSFムテイン治療は、進行した癌または転移性癌に特に適切であり得る。M−CSFムテイン治療方法を化学療法レジメンまたは放射性レジメンと組み合わせることは、化学療法的処置を受けていない患者にとって好ましくあり得、一方で、M−CSFムテイン治療による処置が、1つ以上の化学療法を受けた患者に示され得る。さらに、M−CSFムテイン治療はまた、特に化学療法薬剤の毒性をよく耐えない患者において、同時に行う化学療法の減少された投薬量の使用を可能とし得る。
本発明の方法は、単一のM−CSFムテインの投与、および異なるM−CSFムテインの組み合わせまたは「カクテル」の投与を企図する。このような組み合わせにおけるM−CSFムテインは、相乗的な治療効果を示し得る。さらに、M−CSFムテインの投与は、他の治療因子および/または手順と併せられ得、このような他の治療因子および/または手順としては、種々の化学療法剤、アンドロゲンブロッカー、および免疫調節因子(例えば、IL−2、GM−CSF)、ビスホスホネート(例えば、アレディア(Aredia);ゾメタ(Zometa);クロドロネート)、手術、放射線、化学療法、ホルモン治療(例えば、タモキシフェン;抗アンドロゲン治療)、抗体治療(例えば、RANKL/RANK中和化抗体;PTHrP中和化抗体、抗Her2抗体、VEGF中和化抗体)、治療的タンパク質治療(例えば、可溶性RANKLレセプター;OPG、ならびにPDGFインヒビターおよびMMPインヒビター)、低分子薬物治療(例えば、Src−キナーゼインヒビター)、増殖因子レセプターのキナーゼインヒビター;オリゴヌクレオチド治療(例えば、RANKLまたはRANKまたはPTHrPのアンチセンス)、遺伝子治療(例えば、RANKLインヒビターまたはRANKインヒビター)、ペプチド治療(例えば、RANKLのムテイン)、ならびに本明細書中に記載されるこれらのタンパク質、ペプチド、化合物、および低分子が挙げられるが、これらに限定されない。
癌化学治療剤としては、限定はされないが、アルキル化因子(例えば、カルボプラチンおよびシスプラチン);ナイトロジェンマスタードアルキル化因子;ニトロソ尿素アルキル化因子(例えば、カルムスチン(BCNU));代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート);プリンアナログ代謝拮抗物質、メルカプトプリン;ピリミジンアナログ代謝拮抗物質(例えば、フルオロウラシル(5−FU)およびゲムシタビン);ホルモン性抗新生物薬(例えば、ゴセレリン、ロイプロリド、およびタモキシフェン);天然の抗新生物薬(例えば、アルデスロイキン、インターロイキン−2、ドセタキセル、エトポシド(VP−16)、インターフェロンα、パクリタキセル、およびトレチノイン(ATRA));抗生物質性の天然の抗新生物薬(例えば、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、およびマイトマイシン);およびビンカアルカロイドの天然の抗新生物薬(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン);ヒドロキシウレア;アセグラトン、アドリアマイシン、イフォスファミド、エノシタビン、エピチオスタノール、アクラルビシン、アンシタビン、ニムスチン、プロカルバジン塩酸塩、カルボコン、カルボプラチン、カルモフール、クロモマイシンA3、抗腫瘍多糖、抗腫瘍血小板因子、シクロホスファミド、シゾフィラン、シタラビン、ダカルバジン、チオイノシン、チオテパ、テガフール、ネオカルジノスタチン、OK−432、ブレオマイシン、フルツロン(furtulon)、ブロクスウリジン、ブスルファン、ホンバン(honvan)、ペプロマイシン、ベスタチン(ウベニメクス)、インターフェロン−β、メピチオスタン、ミトブロニトール、メルファラン、ラミニンペプチド、レンチナン、Coriolus多色抽出物、テガフール/ウラシル、エストラムスチン(エストロゲン/メクロレタミン)が挙げられる。
さらに、癌患者に対する治療として使用される付加的な薬剤としては、EPO、G−CSF、ガンシクロビル、抗生物質、ロイプロリド;メペリジン;ジドブジン(AZT);インターロイキン1〜18(変異体およびアナログを含む);インターフェロンまたはサイトカイン(例えば、インターフェロンα、β、およびγ)ホルモン(例えば、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびアナログ、ならびに、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH));増殖因子(例えば、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、神経成長因子(NGF)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子相同因子(FGFHF)、肝細胞増殖因子(HGF)、およびインスリン増殖因子(IGF));腫瘍壊死因子−αおよびβ(TNF−αおよびβ);浸潤阻害因子(invasion inhibiting factor)−2(IIF−2);骨形成タンパク質1〜7(BMP1−7);ソマトスタチン;サイモシン−α−1;γ−グロブリン;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD);補体因子;抗血管新生因子;抗原性物質;およびプロドラッグが挙げられる。
(投与および調製)
本発明は、化合物、この化合物を含有する薬学的処方物、この薬学的処方物を調製する方法、ならびに、この薬学的処方物および化合物を用いて患者を処置する方法を提供する。
このような組成物は、例えば、顆粒、粉末、錠剤、カプセル、シロップ、坐薬、注射、乳濁液、エリキシル、懸濁液または溶液の形態であり得る。本組成物は、種々の投与経路(例えば、経口投与、経鼻投与、直腸投与、皮下注射、静脈注射、筋肉注射、または腹腔内注射による投与)のために処方され得る。以下の投薬形態は例示の目的で与えられ、そして本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
経口投与、口腔内投与、舌下投与のために、粉末、懸濁液、顆粒、錠剤、丸薬、カプセル、ゲルキャップ(gelcap)、およびキャプレット(caplet)が固体投薬形態として許容可能である。これらは、例えば、本発明の1つ以上の化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは互変体を、少なくとも1つの添加物(例えば、デンプンまたは他の添加物)と混合する工程によって調製され得る。適切な添加物は、ショ糖、乳糖、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギン酸塩、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成ポリマーまたは半合成ポリマー、あるいはグリセリドである。必要に応じて、経口投薬形態は投与を助けるために他の成分(例えば、不活性な希釈剤、または潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、または保存剤(例えば、パラベンまたはソルビン酸)、または抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、またはシステイン)、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝液、甘味料、香味料、または芳香剤)を含有し得る。錠剤および丸薬はさらに、当該分野で公知である適切なコーティング物質で処理され得る。
経口投与のための液体投薬形態は、薬学的に受容可能な乳濁液、シロップ、エリキシル、懸濁液、および溶液の形態であり得、これらは不活性な希釈剤(例えば水)を含み得る。薬学的な処方物および医薬は、滅菌された液体(例えば、限定しないが、油、水、アルコール、およびこれらの組み合わせ)を用いて液体懸濁液または溶液として調製され得る。薬学的に適切な界面活性剤、懸濁因子、乳化因子が、経口投与または非経口投与のために添加され得る。
上記に注記されるように、懸濁液は油を含み得る。このような油としては、ピーナッツ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、およびオリーブ油が挙げられるが、これらに限定されない。懸濁液の調製物はまた、脂肪酸のエステル(例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリド、およびアセチル化脂肪酸グリセリド)を含有し得る。懸濁液の処方物は、アルコール(例えば、限定しないが、エタノール、イソピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロール、およびプロピレングリコール)を含有し得る。エーテル(例えば、限定しないが、ポリ(エチレングリコール))、石油炭化水素(例えば、鉱油およびペトロラタム);および水がまた、懸濁液の処方物に用いられ得る。
経鼻投与のために、薬学的な処方物および医薬は、適切な溶媒および必要に応じて他の化合物(例えば、限定しないが、安定剤、抗菌因子、抗酸化物質、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティー調節因子、およびそれらの組み合わせ)を含有するスプレーであってもエアロゾルであってもよい。エアロゾル処方物のための噴霧剤としては、圧縮空気、窒素、二酸化炭素、または炭化水素ベースの低沸点溶媒(low boiling solvent)が挙げられ得る。
注射可能な投薬形態としては一般に、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて調製され得る、水性の懸濁剤または油性の懸濁剤が挙げられる。注射可能な形態は溶液相にあっても懸濁液の形態にあってもよく、これらは溶媒または希釈剤を用いて調製される。受容可能な溶媒またはビヒクルとしては、滅菌水、リンガー溶液、または等張性の生理食塩溶液が挙げられる。あるいは、溶媒または懸濁剤として滅菌油が用いられ得る。好ましくは、この油または脂肪酸は不揮発性であり、これらとしては、天然の油または合成油、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、あるいはトリグリセリドが挙げられる。
注射のために、薬学的な処方物および/または医薬は、上記に記載されるような適切な溶液を用いた再構成に適切な粉末であり得る。これらの例としては、凍結乾燥粉末、回転乾燥(rotary dried)粉末、または噴霧乾燥粉末、非結晶粉末、顆粒、沈殿、あるいは粒子が挙げられるが、これらに限定されない。注射のために、これらの処方物は必要に応じて、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティー調節因子、およびこれらの組み合わせを含有し得る。
直腸投与のために、薬学的な処方物および医薬は、坐薬、軟膏、浣腸、腸内、S状結腸内および/または直腸内で化合物を放出するための錠剤またはクリームの形態であり得る。直腸坐薬は、本発明の1つ以上の化合物、またはこの化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは互変体を、受容可能なビヒクル(例えば、通常の保存温度では固相で存在し、そして体内(例えば直腸内)で薬物を放出するのに適切な温度では液相で存在する、ココアバターまたはポリエチレングリコール)と混合することによって調製される。油もまた、軟らかいゼラチン型および坐薬の処方物の調製に用いられ得る。水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液、ならびにグリセロールが、懸濁剤(例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース)ならびに緩衝液および保存剤も含み得る懸濁処方物の調製において用いられ得る。
上記に記載されるこれらの代表的な投薬形態の他に、薬学的に受容可能な賦形剤およびキャリア(carries)が、一般に当業者に公知であり、従って本発明に含まれる。このような賦形剤およびキャリアは、例えば「Remingtons Pharmaceutical Sciences」Mack Pub.Co.、New Jersey(1991)(本明細書中に参考として援用される)にて記載される。
本発明の処方物は、下記に記載されるように、短時間作用性であり、放出が早く、長時間作用性であり、そして徐放性であるように設計され得る。従って、薬学的な処方物はまた、放出が制御されるか、または放出が遅いように処方され得る。
本発明はまた、例えば、ミセルもしくはリポソーム、または他のいくつかのカプセル化形態であり得るか、あるいは延長された貯蔵および/または送達の効果を提供するために、延長された放出形態で投与され得る。従って、薬学的な処方物および医薬はペレット剤またはシリンダー内に圧縮され得、そして蓄積注射として、またはステントのような移植物として筋肉内または皮下に移植され得る。このような移植物は、公知の不活性な物質(例えばシリコンおよび生分解性ポリマー)を用い得る。
具体的な投薬量は、疾患の状態、被験体の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、および食餌、投薬間隔、投与経路、排出速度、および薬物の組み合わせに依存して調節され得る。効果的な量を含有する上記の投薬形態の任意のものは、十分に慣用的な実験の範囲内であり、従って、十分に本発明の範囲内である。
本方法によって、M−CSFムテインを含有する組成物は、治療的処置のために、非経口的に投与されても、局所的に投与されても、経口的に投与されても、局在的に投与されてもよい。好ましくは、この組成物は経口的または非経口的に(すなわち、静脈内に、腹腔内に、皮内に、または筋肉内に)投与される。従って、本発明は、薬学的に受容可能なキャリア、好ましくは水性のキャリア内に1つ以上のM−CSFアンタゴニストを含む、投与のための組成物を用いる方法を提供する。種々の水性のキャリア(例えば、水、緩衝化された水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなど)が用いられ得、そして、安定性を向上させるために、穏やかな化学的改変などを受けた、他のタンパク質(例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど)を含み得る。
癌転移または癌転移に関連する骨の減少の治療に有用なM−CSFムテインは、多くの場合、他の天然に生じる免疫グロブリンまたは他の生物学的分子を実質的に含まずに調製される。好ましいM−CSFムテインはまた、癌転移および/または癌転移に関連する骨の減少に罹患する、または罹患しやすい哺乳動物に投与される場合、最小の毒性を示す。
本発明の組成物は、通常の、周知である滅菌技術によって滅菌され得る。生じる溶液は使用のために包装されても、無菌的な条件下で濾過され、そして凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は、投与の前に滅菌された溶液と合わせられる。この組成物は、ほぼ生理学的な条件に要求されるような、薬学的に受容可能な補助的物質(例えば、pH調節および緩衝化因子、張度調節因子など(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および安定剤(例えば120%マルトースなど)))を含有し得る。
本発明のM−CSFムテインはまた、リポソームを介して投与され得る。乳濁液、気泡、ミセル、不溶性単層、リン脂質分散、層状の層などを含むリポソームは、M−CSFムテインに特定の組織を目標とさせ、そして組成物の半減期を増加させるためのビヒクルとして役立ち得る。例えば、米国特許第4,837,028号および同第5,019,369号(これらの特許は本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、リポソームを調製するために種々の方法が利用可能である。
これらの組成物におけるM−CSFムテインの濃度は広く、すなわち約10重量%未満、通常は少なくとも約25重量%〜75重量%または90重量%ほどに変化し得、そして選択された投与の特定の様式に合わせて、液体の体積、粘度などによって主に選択される。経口的に、局所的に、および非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者にとって公知であるか明白であり、そして例えば、Remington’s Pharmaceutical Science、第19版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1995)(本明細書中で参考として援用される)に詳細に記載される。
患者における癌転移および/または癌転移に関連する骨の減少を処置するための、本発明の組成物の有効量の決定は、当該分野で周知である標準の経験的な方法を通して達成され得る。例えば、Cenciら、J Clin.Invest.1055:1279−87、2000に記載されるように、所与の投薬量のM−CSFムテインで処置される被験体に由来する血清のインビボでの中和活性が、インビトロにおけるマウスの単球(CD11b+細胞、CD11細胞のサブセット、これはM−CSFに対する高レベルのレセプターを発現する)の、M−CSF誘導性の増殖および生存をブロックする、血清の能力を決定するアッセイを用いて評価され得る。
本発明の組成物は、癌転移および/または癌転移に関連する骨の減少に既に罹患しているか、または罹患しやすい哺乳動物に、癌転移および/または癌転移に関連する骨の減少の発生を防ぐか、または少なくとも部分的に停止させるに十分な量で投与される。このことを達成するに適切な量は、「治療有効用量」として定義される。有効量のM−CSFムテインは変化し、そして疾患の重篤度ならびに処置される患者の体重および一般的な状態に依存するが、一般的には、体重1kgあたり約1.0μg〜約100mgの範囲であり、適用あたり約10μg/kg〜約10mg/kgの投薬量がより一般的に用いられる。投与は、疾患に対する反応および治療に対する患者の耐性に依存する必要性に応じて、毎日、毎週、またはより頻度が少ない。長期間にわたる投薬量の維持が必要であり得、そして投薬量は必要なように調節され得る。
この組成物の単一の投与または複数の投与が、処置する医師によって選択される用量レベルおよびパターンをもって実施され得る。とにかく、この処方物は、癌転移および/または癌転移に関連する骨の減少の重篤度を効果的に防ぐか、または最小化させるに十分なM−CSFムテインの量を提供するべきである。本発明の組成物は、単独で投与されても、癌転移および/または癌転移に関連する骨の減少の処置のための当該分野で公知である他の治療と合わせた補助治療として投与されてもよい。
本発明は以下の実施例によって例示されるが、これらの実施例は決して限定されることは意図されない。
(実施例1)
この実施例は、高レベルのM−CSFを発現する、高度に転移性の乳癌細胞株を示す。マイクロアレイを用いて、高度に転移性の細胞株であるMDA231によるM−CSF遺伝子の発現を、細胞株MCF7およびZR751のM−CSF遺伝子の発現と比較した。MDA231におけるM−CSF発現のレベルをMCF7におけるM−CSF発現のレベルと比較した場合6.9倍の増加があり、そしてMDA231におけるM−CSF発現のレベルをZR751におけるM−CSF発現のレベルと比較した場合5.2倍の増加があった。
(実施例2)
この実施例は、破骨細胞形成のインビトロアッセイにおいて、精製されたM−CSFが、転移性の細胞株であるMDA231に由来するならし培地(CM)と置換され得るが、細胞株MCF7由来のCMとは置換し得ないことを示す(図3)。
ならし培地(CM)の生成:MDA231細胞またはMCF7細胞を、1×ITS(BD Biosciences、Lexington、Ky)、インスリン、ヒトトランスフェリン、および亜セレン酸を含む培養補充を含む50%DMEM/50%HAMs F12 8ml中に、10cm皿あたり1×10細胞の密度でプレートした。5%CO中にて37℃でのインキュベートを48時間行った後、培地を収集し、10分間1500RPMで遠心分離して、あらゆる浮遊細胞を除いた。上清を収集し、0.2nMフィルターを通して濾過し、CMとして用いた。
破骨細胞アッセイ:骨髄CD34細胞を10%FCS、1×Pen/Strepおよび1×ファンギゾン(fungizone)を含むαMEM 100μl中に、96ウェル毎に15,000細胞の密度でプレートした。翌日、それぞれのウェルから50μlの培地を除き、そして25μlのαMEM培地、および75μlのCM、または1×ITSを含む50%DMEM/50%HAMsF12で置換した。それぞれのウェルに最終濃度100ng/mlでRANKLを添加し、そして適切なウェルに30ng/mlのM−CSFを添加した。細胞を5%CO中で37℃にて11日間インキュベートした。この間、6日後に再度新鮮なRANKLを添加した。11日後、細胞を固定し、SigmaからのLeukocyte acid phosphatase kitを用いて、酒石酸塩耐性酸ホスファターゼについて染色した。
結果:図3に示されるように、破骨細胞形成のインビトロアッセイにおいて、精製されたM−CSFは、転移性細胞株であるMDA231に由来するならし培地(CM)によって置換され得るが、細胞株MCF7に由来するCMでは置換され得ない。
(実施例3)
以下の実施例は、M−CSFムテインの設計および生成のための方法を提供する。
米国特許第6,025,146号に記載されるX線結晶学的データは、M−CSFレセプター結合および生物学的活性に重要であるような、タンパク質内のアミノ酸の限定されたサブセットを同定し得る、M−CSFに関する構造的な情報を十分に提供し、従って、変化された生物学的活性を有するM−CSFムテイン(すなわちアゴニストまたはアンタゴニスト)を提供する究極的な目標を有する変異誘発のための、可能性のある候補を表す。この情報に基づき、いくつかの基準が用いられて、置換のための可能性のある標的アミノ酸のリストを作る。
第一の基準は溶媒露出または溶媒の接触性であり、これらは、タンパク質の表面にあるアミン酸残基をいう。トリペプチドgly−x−glyにおける場合、約0.25を越える(好ましくは約0.4を越える)溶媒に接触可能な表面領域を有する残基が、アミノ酸に接触可能な表面領域の中和に基づいて好ましい(Kabsch,W.ら、Biopolymers 22:2577(1983))。単量体の相対的な配向を維持し、そしてタンパク質の折り畳みのプロセスへの妨害を避けるために、タンパク質の他の部分(例えば、二量体の境界面)と相互作用しない残基が選択される。候補アミノ酸物質の選択における特定の例において用いられるなお別の基準は、残基と、マウスM−CSFにおける対応する残基との関係である。別の重要な選択の基準は、M−CSFレセプター残基との可能性のある水素結合または疎水性相互作用の破壊を試みるように、置換が非保存的であることである。
M−CSFムテインの調製は、基本的に米国特許第6,025,146号に記載されるように実施され得る。手短に言うと、M−CSFの成熟したN末端の領域ならびにヘリックスA、ヘリックスCおよびヘリックスD領域に由来する、溶媒に接触可能な変更された残基を有する種々のM−CSFムテインが、当該分野で公知の技術を用いて構築される。例えば、N末端/Aヘリックス領域における2つのヒスチジンが、M−CSFαの切断された形態(pLCSF158Aにコードされる)の位置指定変異誘発を通してアラニンに変換される。1:100のジエチルピロカルボネート(DEPC):ヒスチジンの割合でのM−CSFにおけるヒスチジンのDEPC改変(Enzymol.におけるMeth.47:431(1977)に記載される)が生物活性を有意に減少させた知見により、M−CSFレセプター相互作用における3つのM−CSFヒスチジン残基の1つの関与が関係される。
プラスミドDNA pLCSF158Aが、プラスミドpLCSF158Aを保持するE.coli株HW22(米国特許第4,929,700号、実施例6、「E.coli strain HW22 transformed with pJN653 containing the asp.sub.59 SCSF/N.DELTA.3C.DELTA.158 gene」)から調製される。この株は、50μg/mlのアンピシリンを含むR2培地(1%塩化ナトリウムを含み、グルコースを含まない2×Luria Broth、J.Bact.、74:461(1957))350ml中で、30℃にて一晩振盪されて増殖される。製造業者の指示に従って、Qiagen−tip 100カラムを用いて、細胞からプラスミドDNAを調製する。
20μgのpLCSF158A DNAを、200μlの1×New England Biolabs NEBuffer 2(New England Biolabs、Beverly、Mass.)中で、37℃にて3時間20分間、66ユニットのHindIIIおよび66ユニットのStuIを用いて消化する。DNAをフェノールおよびクロロホルムを用いて抽出し、次いでエタノール沈殿する。DNAを、Boehringer Mannheim(Indianapolis、Ind.)から供給される、1×Dephosphorylation Buffer 100μl中にて、1ユニットの仔ウシ腸アルカリホスファターゼを用いて、37℃にて30分間処理する。さらなるユニットの仔ウシ腸アルカリホスファターゼが反応物に加え、そしてインキュベートを50℃にて1時間続けた。次いで、生じるDNAを、1%のFMC Bioproducts(Rockland、Me.)のSea KEM.RTM.GTG.RTM.アガロースゲル上で泳動する。このゲルから5.7kbのpLCSF158Aフラグメントを切り取り、そして、製造業者の指示に従って、Qiagen(Chatsworth、Calif.)のQiaexビーズ上で精製する。
次いで、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、そして、例えばヒスチジン9およびヒスチジン15(成熟したN末端から数えて)をアラニンに変化させた(H9A、H15A PCRフラグメントを生成する)、変異されたM−CSF配列を含んだPCR産物を生成する。
それぞれの反応物5μlを、3%のアガロースゲル(トリス−ホウ酸緩衝液中に、1.5%のFMC Bioproducts SeaKem.RTM.GTG.RTM.アガロース、1.5%のFMC Bioproducts NuSeive.RTM.GTG.RTM.アガロース)(FMC Bioproducts、Rockland、Me.)上で泳動する。次いで、ゲルを臭化エチジウムで染色する。陽性の反応物をプールし、フェノールおよびクロロホルムを用いて抽出し、エタノールを用いて沈殿し、再懸濁し、そして最終体積が500μlの1×NEBuffer 2中で37℃にて2時間、250ユニットのStuIを用いて消化し、この反応物に500ユニットのHindIIIを添加し、1×NEBuffer 2中で体積を1mlまで増加させ、そして消化を37℃にてさらに2.5時間続けた。このDNAを、3%アガロースゲル上で電気泳動する。消化された生産物をゲルから切り取り、製造業者の指示に従ってQiagen Qiaexビーズ上で精製する。
次いで、PCR産物を、pLCSF158AベクターDNAに、挿入物対ベクターの比が約5:1にてライゲーションする。ライゲーションは、1×ライゲーション緩衝液(製造業者から供給される)の1ユニットのBoehringer Mannheim T4 DNAリガーゼを用いて、20μlの体積で、16℃にて一晩行う。
それぞれの連結混合物の半分が、Molecular Cloning a Laboratory Manual Maniatisら、Cold Spring Harbor Laboratory(1982)に記載される塩化カルシウム手順と同様のプロトコルを用いて、能力のある(competent)E.coli DG116(ATCC番号53606)細胞への形質転換に用いられる。形質転換細胞に、30℃にて選択無しで90分間発現を許容し、この細胞を50μg/mlのアンピシリンを含むR2−4(1l中に、トリプトン10g、酵母抽出物5g、NaCl 5g、消泡剤A 2滴、50%グルコース4ml、および寒天15g)プレートにプレートする。このプレートを、室温にて72時間インキュベートする。それぞれの形質転換体の1/4をプレートする。
次いで形質転換体を培養し、そしてM−CSFムテイン配列を含むプラスミドの存在を確認するために配列決定する。
M−CSFムテインは、基本的に米国特許第4,929,700号、実施例5に記載されるように、発現され、精製され、二量体のタンパク質を形成するために再び折り畳まれ、そしてアッセイされ得るが、DEAE精製工程において変性剤に8Mの尿素を用いる。
(実施例4)
本実施例は、M−CSFムテインのM−CSFRに結合する能力について、M−CSFムテインを試験するための方法を提供する。
インビボでのM−CSFの生物学的機能における重要な段階は、M−CSFレセプター(c−fms遺伝子産物ともいわれる)との結合である。組換えヒト可溶性M−CSFレセプター(rhsM−CSFR)(配列番号8のアミノ酸20〜511を表す(Coussens,Lら、Nature、320:277(1986)))を、M−CSFタンパク質のレセプター結合能力を試験するためのインビトロのアッセイ試薬として用いる。膜貫通レセプターの可溶性形態を生成するために、ヒトM−CSFレセプターの細胞外ドメインを、バキュロウイルス/昆虫細胞組換え発現系にて発現される。三次構造または四次構造に悪く影響することなく可溶性レセプターを精製するために、非変性クロマトグラフィー方法を選択する。組換えレセプターの精製のために、他の選択が存在する。レセプターに適切な抗体またはリガンドのいずれかが利用可能な場合、アフィニティクロマトグラフィーを利用し得る。あるいは、組換えレセプターのC末端に「タグ」(すなわち、KT3抗体認識配列)が付加され得て、アフィニティクロマトグラフィーにおける使用のための抗タグ抗体(すなわちKT3)カラムによって精製され得る。rhsM−CSFRがグリコシル化される発現系において、特異的な糖タンパク質を濃縮するためにレクチンクロマトグラフィーを用い得る。
リガンド/レセプター相互作用およびリガンド誘導性レセプター二量体化を研究するために、rhsM−CSFRを用い得る。リガンド/レセプター結合を検出するために用いるアッセイは、サイズ排除HPLCの使用を、以下の改変:
用いるカラムはSuperose6(Pharmacia LKB Biotechnology,Inc.)、そして移動層は0.5ml/分のPBS、そしてM−CSF対rhsM−CSFRの比は1:2
を伴って、基本的に欧州特許出願WO92/21029、C.Cunninghamらに記載されるように用いる。この比において、M−CSF/rhsM−CSFR複合体をクロマトグラフし、分子量190,00の水力学的半径が予測される。リガンド/レセプター結合またはレセプター二量体化を測定するために、他のアッセイ(例えば、化学的架橋およびSDS−PAGE、または免疫沈降およびSDS−PAGE)が利用され得る。レセプター二量体化を阻害するが、リガンド結合は阻害しない分子は、M−CSFの作用に拮抗する別の方法を提供する。
(実施例5)
以下の実施例は、天然のM−CSFによるM−CSFRの活性化を妨害するM−CSFムテインの能力についてM−CSFムテインを試験するための方法を提供する。
天然のM−CSFと候補M−CSFムテインとの間のM−CSFRとの結合の競合が、実施例4に記載される結合アッセイの改変により達成される。手短に言うと、上記に記載されるサイズ排除HPLC方法が、候補M−CSFムテインの存在下および非存在下で行われる。次いで、M−CSFR/M−CSF相互作用を妨害する能力を有するM−CSFムテインが同定される。
(実施例6)
本実施例は、インビトロ活性についてM−CSFムテインを試験するための方法を提供する。
ヒトM−CSFまたはマウスM NFS 60細胞(American Type Culture Collection登録番号CRL−1838、Rockville、MD、USAにおけるATCCから利用可能、Cas−Br−MuLV野生型マウスエコトロピックレトロウイルスによって誘導される骨髄性白血病から誘導、インターロイキン3およびM−CSFの両方に反応性であり、レトロウイルスの組み込みに起因する、切断されたc−myb癌原遺伝子を含む)の活性に対するM−CSFムテインの中和能力を測定するために、組換えヒトCSF−1(最終濃度10ng/ml)を種々の濃度(1ng/ml〜1mg/ml)の候補M−CSFムテインと共に、インキュベーター内にて、5%CO中で37℃にて1時間プレインキュベートする。インキュベートに続き、この混合物を96ウェルマイクロタイタープレート中のM NFS 60培養物に添加する。1ウェル毎の全アッセイ体積は100μlであり、10ng/mlのrhM−CSFを含み、そして細胞密度は5,000細胞/ウェルである。37℃のCOインキュベーター中での72時間の培養の後、細胞の増殖をCeIITiter Glo Kit(Promega)によってアッセイする。
M−CSFムテインを含む混合物が、M−CSFによって誘導されるM NFS 60細胞の増殖を阻害することが予測される。
(実施例7)
以下の実施例は、インビボの活性についてムテインを試験するための方法を提供する。
実験の設計。骨溶解の処置のための治療薬剤としてのM−CSFムテインの効力を評価するために、高度に転移性であるヒト乳癌細胞株MDA−231(3×10)を、雌のヌードマウスの脛骨骨髄洞(bone marrow cavity)に注射した。このマウスは4週齢〜7週齢であり、平均重量が約20gであった。このマウスを同定のために彫り、そして8週間の研究の開始に先立って少なくとも7日間の順化期間を経験させた。
これらのマウスは、脛骨内注射の30分前に、両方のわき腹に皮下的に、全用量1.5mpk(マウスあたり0.03mg)のブプレノルフィンを受けた。イソフルラン吸入によってマウスを麻酔し、そして70%エタノールで右の後足を消毒した。10μlの生理食塩水に懸濁された腫瘍細胞(MDA−MB−231−luc、3×10)を、50μlまたは100μlのマイクロシリンジを用いて右の頚骨骨髄洞に注射した。
投薬。M−CSFムテインによる処置は、腫瘍細胞の注射の翌日に始まる。投薬は、0.1mg/kg〜50mg/kgの範囲である。最も高い投薬値の例である50mg/kgは、以下の通りである。投薬溶液が、100μLの注射されたIPが、20gのマウスについて目的の用量(=1000μg)を送達するような、前もって希釈された濃度(=10mg/ml)で提供される。重量の調節のために、注射される体積は、相違する重量のg毎に5μlずつ増加または減少される。例えば、23gのマウスは115μlを受け、一方で18gのマウスは90μlを受ける。
測定。骨溶解の重篤度を評価するために、それぞれのマウスは、腫瘍細胞の注射の翌日に撮られるベースラインのFaxitron画像を受ける。さらに、研究の最後(8週)にFaxitron画像を撮る。腫瘍細胞はルシフェラーゼを安定して発現するので、腫瘍の増殖をXenogenシステムを用いて同時に測定する。
平均骨溶解スコア(osteolysis score)が2.5以上である動物の数が、M−CSFムテイン処置を受けた群において最も低いことが企図される。骨溶解性の骨の損傷は0〜4の尺度で評価し、0は骨の損傷が無いことと等値であり;1〜2はいくらかの骨の損傷と等値であり、スコアが2.25またはより高いものは重度の骨の損傷を示す。
本明細書で言及される、そして/または、出願のデータシートに収載される、上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および特許公開で無いものの全ては、本明細書中で、その全体が参考として援用される。
前述から、本発明の特定の実施形態が例示の目的で本明細書中に記載されたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが理解される。従って、本発明は添付の特許請求の範囲により限定される場合を除いて、限定されない。
図1は、短縮された二量体M−CSFにおけるジスルフィド結合を示すトポロジー図である。 図2は、毎10番目の残基を標識され、そして非結晶学対称軸を点線で示した、C−α骨格の立体図である。 図3は、精製M−CSFと、MDA231細胞およびMCF7細胞由来のならし培地(CM)との間の、破骨細胞誘導活性の比較である。 図4は、M−CSFαのアミノ酸配列(配列番号2)である。 図5は、M−CSFβのアミノ酸配列(配列番号4)である。 図6は、M−CSFγのアミノ酸配列(配列番号6)である。

Claims (64)

  1. 骨転移を防ぐ方法であって、該方法は、転移性癌に罹患する被験体に、治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物を投与し、それによって該転移性癌に関連する骨の減少を防ぐ工程を包含する、方法。
  2. 骨への転移性癌に罹患する被験体を処置する方法であって、該方法は、該被験体に治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物を投与し、それによって該転移性癌に関連する骨の減少の重症度を減少させる工程を包含する、方法。
  3. 前記被験体が哺乳動物である、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 前記哺乳動物がヒトである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記ムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプター(M−CSFR)との間の相互作用を阻害する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記M−CSFムテインまたはムテイン産物が、腫瘍細胞によって誘導される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する、請求項5に記載の方法。
  7. 請求項5に記載の方法であって、前記転移性癌が、乳癌、肺癌、腎臓癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、白血病およびリンパ腫を含む血球悪性疾患;頭部癌および頚部癌;胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌を含む胃腸の癌;卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮頸癌を含む、女性の生殖管の悪性疾患;膀胱癌;神経芽細胞種を含む脳腫瘍;肉腫、骨肉種;ならびに悪性黒色腫または扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌である、方法。
  8. M−CSFムテインをスクリーニングする方法であって、該方法は、以下の工程:
    a)転移性腫瘍細胞培地、破骨細胞、および候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物を接触させる工程;
    b)破骨細胞の形成、増殖、および/または分化を検出する工程;ならびに
    c)破骨細胞の形成、増殖、および/または分化の減少が検出される場合、該候補をM−CSFムテインまたはムテイン産物として同定する工程
    を包含する、方法。
  9. 前記転移性腫瘍細胞培地が腫瘍細胞を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 請求項8に記載の方法であって、ここで、前記接触させる工程(a)はインビボで起き、前記検出する工程(b)は、骨転移の大きさおよび/または数を検出する工程を包含し、そして前記候補は、骨転移の大きさおよび/または数の減少が検出される場合に、M−CSFムテインまたはムテイン産物として同定される、方法。
  11. 前記候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプターであるM−CSFRとの間の相互作用を阻害するか否かを決定する工程をさらに包含する、請求項8に記載の方法。
  12. 骨への転移性癌を防ぎ得るか、または処置し得る、M−CSFムテインまたはムテイン産物を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物の、M−CSFRへの結合を検出する工程;および
    (b)該候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物の、骨への転移性癌を防ぐか、または処置する能力を、インビトロまたはインビボでアッセイする工程
    を包含する、方法。
  13. 骨への転移性癌を防ぎ得るか、または処置し得る、M−CSFムテインまたはムテイン産物を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
    (a)M−CSFとM−CSFRとの間の相互作用を阻害する、候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物を同定する工程;および
    (b)該候補のM−CSFムテインまたはムテイン産物の、骨への転移性癌を防ぐか、または処置する能力を、インビトロまたはインビボでアッセイする工程
    を包含する、方法。
  14. 骨転移および腫瘍の増殖を防ぐ方法であって、該方法は、転移性癌に罹患する被験体に、治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物および治療剤を投与し、それによって、該転移性癌に関連する骨の減少を防ぎ、そして腫瘍の増殖を防ぐ工程を包含する、方法。
  15. 転移性癌に罹患する患者を処置する方法であって、該方法は、該被験体に治療有効量のM−CSFムテインまたはムテイン産物および治療剤を投与し、それによって、該転移性癌に関連する骨の減少の重症度を減少させ、そして腫瘍の増殖を阻害する工程を包含する、方法。
  16. 前記被験体が哺乳動物である、請求項14または請求項15に記載の方法。
  17. 前記哺乳動物がヒトである、請求項16に記載の方法。
  18. 前記M−CSFムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプターであるM−CSFRとの間の相互作用を阻害する、請求項17に記載の方法。
  19. 前記M−CSFムテインまたはムテイン産物が、腫瘍細胞によって誘導される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する、請求項18に記載の方法。
  20. 前記治療剤がビスホスホネートである、請求項14または請求項15に記載の方法。
  21. 前記ビスホネートが、ゼレドロネート、パミドロネート、クロドロネート、エチドロネート、チルンドロネート、アレンドロネート、またはイバンドロネートである、請求項20に記載の方法。
  22. 前記治療剤が化学療法剤である、請求項14または請求項15に記載の方法。
  23. 前記被験体が、ビスホスホネート処置を受けることから妨げられる、請求項22に記載の方法。
  24. 前記M−CSFムテインまたはムテイン産物が、治療効果を達成するために必要な治療剤の投薬量を減少するために効果的である、請求項14または請求項15に記載の方法。
  25. 非M−CSFコロニー刺激因子(例えば、G−CSF)を投与する工程をさらに包含する、請求項14または請求項15に記載の方法。
  26. M−CSFムテインまたはムテイン産物、および癌治療剤を含む薬学的組成物。
  27. M−CSFムテインまたはムテイン産物を含む医薬、および該医薬が手術または放射線治療と組み合わせて用いられるべきであることの使用説明書を含む、パッケージ、バイアル、または容器。
  28. M−CSFムテインまたはムテイン産物を被験体に投与する工程、および該被験体を手術または放射線治療によって処置する工程を包含する、骨への転移性癌を防ぐか、または処置する方法。
  29. 癌に罹患した被験体を処置する方法であって、ここで、該癌を含む細胞はM−CSFを分泌せず、該方法は、M−CSFムテインまたはムテイン産物を投与する工程を包含する、方法。
  30. 転移性癌に罹患する被験体における骨転移を防ぐための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用。
  31. 転移性癌に罹患する被験体における、該癌と関連する骨の減少を防ぐための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用。
  32. 骨への転移性癌に罹患する被験体を処置するための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用。
  33. 骨への転移性癌に罹患する被験体における、該癌に関連する骨の減少の重症度を減少させるための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用。
  34. 前記被験体が哺乳動物である、請求項30〜33に記載の使用。
  35. 前記哺乳動物がヒトである、請求項34に記載の使用。
  36. 前記ムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプター(M−CSFR)との間の相互作用を阻害する、請求項35に記載の使用。
  37. 前記ムテインまたはムテイン産物が、腫瘍細胞によって誘導される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する、請求項36に記載の使用。
  38. 請求項30に記載の使用であって、前記転移性癌が、乳癌、肺癌、腎臓癌、多発性骨髄腫、甲状腺癌、前立腺癌、腺癌、白血病およびリンパ腫を含む血球悪性疾患;頭部癌または頚部癌;胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌を含む胃腸の癌;卵巣癌、子宮内膜癌、または子宮頸癌を含む、女性の生殖管の悪性疾患;膀胱癌;神経芽細胞種を含む脳腫瘍;肉腫、骨肉種;あるいは悪性黒色腫または扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌である、使用。
  39. 転移性癌に罹患する被験体における、骨転移および腫瘍の増殖を防ぐための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療剤の使用。
  40. 転移性癌に罹患する被験体における、該癌に関連する骨の減少を防ぐための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療剤の使用。
  41. 骨への転移性癌の処置のための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療剤の使用。
  42. 転移性癌に罹患する被験体における、該癌に関連する骨の減少の重症度を減少させ、そして腫瘍の増殖を阻害するための医薬の製造における、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療剤の使用。
  43. 癌の処置における使用のための合わせられた調製物として、M−CSFムテインまたはムテイン産物、および第二の治療剤を含む生産物。
  44. 骨への転移性癌を防ぐか、または処置するための医薬の調製における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用であって、ここで該医薬は、第二の治療剤と同時にか、別々にか、または連続して投与される、使用。
  45. 骨への転移性癌を防ぐか、または処置するための医薬の調製における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用であって、ここで該医薬は、第二の治療剤を用いた処置と調和される、使用。
  46. 骨への転移性癌に罹患する被験体を処置するための医薬の調製における、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用であって、ここで該被験体は、第二の治療剤で前処置される、使用。
  47. 骨溶解性疾患を有する患者の処置のための医薬の製造における、MCSFムテインまたはムテイン産物の共力作用の組み合わせの使用であって、ここで該医薬は、抗MCSF抗体、抗RANKL抗体、可溶性RANKLレセプター、またはビスホスホネートを用いる処置と調和される、使用。
  48. 骨への転移性癌を防ぐか、または処置するための医薬の調製における、癌治療剤の使用であって、ここで該医薬は、M−CSFムテインまたはムテイン産物と同時にか、別々にか、または連続して投与される、使用。
  49. M−CSFムテインまたはムテイン産物を含む医薬、および該医薬が手術または放射線治療と組み合わせて用いられるべきであることの使用説明書を含む、パッケージ、バイアル、または容器。
  50. 前記被験体が哺乳動物である、請求項39〜48に記載の使用。
  51. 前記哺乳動物がヒトである、請求項47に記載の使用。
  52. 前記ムテインまたはムテイン産物が、M−CSFとそのレセプターであるM−CSFRとの間の相互作用を阻害する、請求項48に記載の使用。
  53. 前記ムテインまたはムテイン産物が、腫瘍細胞によって誘導される破骨細胞の増殖および/または分化を阻害する、請求項39〜48に記載の使用。
  54. 前記第二の治療剤がビスホスホネートである、請求項39〜48に記載の使用。
  55. 前記ビスホネートが、ゼレドロネート、パミドロネート、クロドロネート、エチドロネート、チルンドロネート、アレンドロネート、またはイバンドロネートである、請求項54に記載の使用。
  56. 前記第二の治療剤が化学療法剤である、請求項39〜48に記載の使用。
  57. 前記被験体が、ビスホスホネート処置を受けることから妨げられる、請求項56に記載の使用。
  58. 前記第二の治療剤が非M−CSFコロニー刺激因子である、請求項56に記載の使用。
  59. 前記非M−CSFコロニー刺激因子がG−CSFである、請求項58に記載の使用。
  60. 骨転移および腫瘍の増殖を処置するか、または防ぐために、被験体に投与される第二の治療剤の用量を減少させるための、医薬の製造におけるM−CSFムテインまたはムテイン産物の使用。
  61. 骨転移を防ぐための医薬の製造における、癌細胞によって産生されるM−CSFを中和するために効果的な量より大きな量の、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用。
  62. 被験体の細胞により産生されるM−CSFを中和するための医薬の製造における、癌細胞によって産生されるM−CSFを中和するために効果的な量より大きな量の、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用。
  63. 骨への転移性癌に罹患する被験体を処置するための医薬の製造における、癌細胞によって産生されるM−CSFを中和するために効果的な量より大きな量の、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用。
  64. 癌を処置するための医薬の製造における、癌細胞によって産生されるM−CSFを中和するために効果的な量より大きな量の、M−CSFムテインまたはムテイン産物の使用。
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