JP2007515940A - 関節炎及びその他の炎症性疾患の薬物標的としてのプロテインキナーゼcゼータ - Google Patents
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Abstract
Description
発明の分野
[0002]本発明は、関節炎組織で増加したプロテインキナーゼCゼータ(ζPKC)遺伝子発現に基づいて、患者における関節炎を診断し、予測し、及びその経過を監視する方法に指向する。本発明はさらに、関節炎の治療における治療薬として使用するための、ζPKCの発現を阻害する化合物を提供する。
[0003]プロテインキナーゼCゼータ(ζPKC)は、重要なシグナル伝達成分として発生している。ζPKCは、NF−κB及びAP−1経路に関連することを示唆する文献が増加している。例えば、ζPKCのノックアウトマウスは完全に生存するが、NF−κB依存の転写活性の深刻な損傷とともに、腫瘍壊死因子(TNF)受容体及びリンフォトキシン受容体ノックアウトを想起する表現型を提示する(Leitges et al.(2001)Mol.Cell 8:771−80)。他の研究者(Lallena et al.(1999)Mol.Cell.Biol.19:2180−88)は、IκBを活性化し、それによりNF−κBを活性化することにおけるζPKCについての役割を示している。
[0006]本発明は、ζPKC発現が正常人と比較して、関節炎の患者の組織において増加しているという発見に基づく。本発明は、限定されるわけではないが、阻害性ポリヌクレオチド及びポリペプチド、小分子、そしてペプチド阻害剤を含む、関節炎組織におけるζPKCの発現を阻害する化合物を提供する。本発明はさらに、関節炎組織における異常なζPKC遺伝子発現に基づく関節炎を診断し、予測し、その経過を監視する方法、並びにそのような異常発現の治療薬としての使用のための療法を提供する。加えて、本発明は、そのような治療薬のための医薬製剤及び投与経路を提供し、並びにそのような治療薬の能力を評価するための方法を提供する。
[0024]本出願人は、正常人と比較した場合、関節炎の患者の組織においてζPKCの発現が上方制御されることを発見している。この酵素が関節炎の組織において上方制御されるという発見は、ζPKC発現における増加を検出することによって関節炎を診断するための方法、及びζPKC発現を下方制御することによって関節炎を治療するための方法を可能にする。加えて、この発見は、関節炎の治療に有用な新規なζPKC阻害剤の同定を可能にする。
導入
[0025]本発明は、ζPKCの上方制御を検出することによって関節炎を診断する方法を提供する。「診断」又は「診断すること」は、病理学的な状態の存否を同定することを意味する。診断方法は、患者(ヒト又はヒト以外の哺乳動物)由来の生物学的試料中のζPKC遺伝子産物(例えば、mRNA、cDNA、又はポリペプチド、その断片を含む)の試験量を決定し、そして、ζPKC遺伝子産物について正常量又は範囲(即ち、関節炎を患っているとは知らない個人由来の量又は範囲)とその試験量とを比較することによってζPKCの上方制御を検出することを含む。特別な診断方法が関節炎の決定的な診断を提供しないかもしれないが、その方法が診断において手助けとなる陽性の指示を提供するとすれば、それは十分である。
[0028]ζPKCの発現の増加は、細胞(例えば、細胞全体、細胞分画、及び細胞抽出物)及び組織を含む様々な生物学的試料において検出することができる。生物学的試料はまた、組織学的目的のために採取した生検や凍結切片のような組織切片を含む。好ましい生物学的試料は、関節の軟骨(即ち、軟骨細胞)、滑膜、及び滑液を含む。
[0029]本発明の診断及び予想アッセイにおいて、ζPKC遺伝子産物を検出及び定量し、試験量を生じる。次いで、試験量は、正常な量又は範囲と比較する。正常な量又は範囲(例えば、30%又はそれより大きな増加(p<0.01である)、又は100%又はそれより大きな増加(p<0.05である))は、関節炎の診断において陽性の兆候である。ζPKC遺伝子産物の検出及び定量の具体的な方法は、下記に記載される。
[0032]本発明の診断アッセイ、予想アッセイ、及び監視アッセイは、生物学的試料中のζPKC遺伝子産物を検出し、定量することを含む。ζPKC遺伝子産物は、例えば、ζPKC mRNA及びζPKCポリペプチドを含み、両者は、当業者に周知の方法を用いて測定することができる。
導入
[0043]本発明は、関節炎組織のPKCの発現を阻害する新規な化合物(例えば、小分子)を同定するための方法(また、本明細書では「スクリーニングアッセイ」として言及される)を提供する。一態様では、ζPKC(天然又は組換え的のいずれか)発現する細胞を試験化合物と接触させ、その化合物がζPKC遺伝子産物(例えば、mRNA又はポリペプチド)の発現を阻害するかどうかを決定し、発現(未処理の細胞の試料と比較した場合)の減少は、化合物が関節炎組織中のζPKCを阻害することを示す。ζPKC遺伝子産物の変化は、当該技術分野において既知のいずれかの方法によって、又は上述した方法によって決定することができる。好ましい態様では、NF−κB結合部位の下流にマーカー遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ又はグリーン蛍光タンパク質(GFP))を含むレポーター構築物でトランスフェクトした細胞を試験化合物と接触させ、細胞をサイトカインで処理した場合、化合物がマーカータンパク質の発現を阻害することができるかどうかを決定する。ζPKC又はマーカータンパク質の発現を阻害すると同定された化合物は、関節炎の予防及び治療処置の薬物としての候補となる。
[0045]本発明のスクリーニングアッセイに使用されるべきζPKC(好ましくは、哺乳動物;より好ましくはヒト(例えば、GenBank Acc.No.Q05513;配列番号:2))は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)、Research Diagnostics(Flanders,NJ)、ProQinase(Freibrug,Germany)、及びPanVera(Madison,WI)から商業的に利用可能である。又は、ζPKCは、ゲルろ過及びイオン交換クロマトグラフィーのような既知の精製手法を用いて、脳、胎盤、精巣及び肺を含む多種の組織(好ましくは哺乳動物;より好ましくはヒト)から精製し又は部分的に精製することができる。精製はまた、ζPKCに結合する既知の試薬(例えば、抗ζPKC抗体)を用いたアフィニティークロマトグラフィーを含む。これらの精製手法はまた、組換えの供給源からζPKCを精製するために使用することもできる。
[0052]本発明の試験化合物はいくつかの供給源から入手することができる。例えば、分子のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングのために利用することができる。そのようなライブラリーを用いて、数千の分子を阻害活性についてスクリーニングすることができる。化合物の調製及びスクリーニングは、上述したように又は当業者に周知の他の方法によってスクリーニングされ得る。このように、同定した化合物は、慣用的な「リード化合物」として役立てることができ、又は現在の治療として使用し得る。
導入
[0053]本発明は、ζPKCの発現及び/又は活性の阻害によって関節炎の治療用の予防及び治療方法の両方を提供する。該方法は、ζPKCの発現及び/又は活性を阻害するのに有効な量で試薬と細胞(インビトロ、インビボ、又はエクスビボのいずれかで)接触することに関係する。試薬は、ζPKCの発現及び/又は活性を阻害するいずれかの分子であり得て、限定されないが、阻害性ポリヌクレオチド、小分子、阻害性タンパク質生物工学製品、及びペプチド阻害剤を含む。
[0054]関節炎に悩まされている(又は危険性がある)生物体において、又は、そのような生物体由来の関連した細胞において、ζPKCの発現の減少は、ζPKC遺伝子から転写したmRNAに結合し、及び/又はmRNAを切断する多種の阻害性ポリヌクレオチド、例えば、アンチセンス・ポリヌクレオチド及びリボザイムの使用を通じて達成することができる(例えば、Galderisi et al.(1999)J.Cell Physiol.181:251−57;Sioud(2001)Curr.Mol.Med.1:575−88)。
[0060]関節炎を患っている(又はその危険性にある)生物体における、又はそのような生物体由来の関連する細胞におけるζPKCの発現の減少はまた、ζPKCに結合し、その活性を阻害する小分子(通常、有機的小分子)の使用を介して達成されてもよい。PKC(好ましくは、異性体特異的)の活性を阻害するものとして既知の小分子は、本発明の治療方法に使用することができる。PKCを阻害する無数の小分子は、当該技術分野において既知であり(疾患の治療として承認されたもの、並びに臨床試験の他のものを含む)、そして、天然の化合物(例えば、スタウロスポリン)及び人工の化合物(例えば、LY333531)の両方を含む(Goekjian and Jirousek(2001)Expert.Opin.Investing.Drugs 10:2117−40; Way et al.(2000)Trends Pharmacol.Sci.21:181−87に概要され、両者は、本明細書中に援用される)。これらの分子は、直接使用することができ、又は、改良されたPKC阻害剤(好ましくは、異性体特異的)の開発に向けた出発化合物として役立てることができる。又は、上述されるスクリーニング方法によって同定される新規な小分子(好ましくは、異性体特異的)を使用してもよい。
[0061]関節炎を患っている(又はその危険性にある)生物体における、又はそのような生物体由来の関連する細胞におけるζPKCの発現の減少はまた、タンパク質の生物工学製品を使用して達成されてもよい。阻害性タンパク質の生物工学製品は、細胞又は生物体における阻害性生物学的活性を有するタンパク質分子に言及される。本発明の治療方法において使用するための好ましい阻害性タンパク質の生物工学製品は、ζPKCのPar4及びキナーゼ−欠損優性−陰性(DN)突然変異形体を含む。Par4は、ζPKCに結合する自然発生のタンパク質であり、その酵素的機能を阻害するために役に立つ(Diaz−Meco et al.(1996)Cell 86:777−86)。ζPKCのDN突然変異形体、例えば、リジン281のトリプロファンの点突然変異であるζPKC(Bandyopadhyay et al.(1997)J.Biol.Chem.272:2551−58)は、基質に対して競合させることによって内因性のζPKCの活性を減少し、周知な部位指向的突然変異手法を用いて調製することができる。キナーゼ活性を欠如しているが、まだζPKCを介したシグナル伝達を阻害するζPKCのいずれの変異体もDN突然変異体として使用してもよい。これらの阻害性タンパク質の生物工学製品は、上述した発現手法を用いてインサイチュで細胞(好ましくは、軟骨細胞)において発生してもよい。
[0062]関節炎を患っている(又はその危険性にある)生物体における、又はそのような生物体由来の関連する細胞におけるζPKCの活性の減少はまた、ζPKCに結合し、そしてその活性を阻害するペプチド阻害剤を使用して達成されてもよい。ペプチド阻害剤は、ζPKCの基質との相互作用からζPKCを妨げるペプチド擬似基質、並びにζPKC又はその基質のいずれかに結合し、そして、ζPKCを介したリン酸化を遮断するペプチドを含む。ζPKCを阻害するペプチド阻害剤は、文献に知られ、そして、SIYRRGARRWRKL(配列番号:3)、SIYRRGARRWRKLYRAN(配列番号:4)、及びRRGARRWRK(配列番号:5)を含む(例えば、Dang et al.,上述;Zhou et al.,上述)。好ましくは、これらのペプチド阻害剤は、ミリストイル化され(それぞれ、配列番号:6、7、及び8)、細胞浸透性を改善する(例えば、Standaert et al.,上述;配列番号:6に対して)。ミリストイル化及び非ミリストイル化ζPKCペプチド阻害剤は、化学的に合成され、商業的に、例えば、Quality Controlled Biochemical(Hopkinton,MA)及びBioSource International,Inc.,USA(Camarillo,CA)から入手することができる。誰でも、上述した手法を用いて、インビトロ、インビボ、又はエクスビボでペプチド阻害剤で細胞(好ましくは、軟骨細胞)を提供することができる。
[0063]本明細書に記載される化合物のいずれも(好ましくは、小分子)は、関節炎の治療のための医薬組成物の形体でインビボで投与することができる。医薬組成物は、限定されないが、経口、鼻腔、直腸、局部、舌下、静脈、筋肉、動脈、骨髄、髄膜、心室、腹膜、又は経皮経路を含むいずれかの複数の経路によって投与してもよい。活性成分に加えて、医薬組成物は、当該技術分野において既知の賦形剤、被服剤、及び補助剤を含む薬学的に許容可能な担体を含有してもよい。
[0066]下記は、本発明の理解を手助けするために説明する実施例は、いずれの方法においてもその範囲を限定するためのものではなく、構築されるべきではない。実施例は、慣用的な方法、例えば、ベクター及びプラスミドの構築、そのようなベクター及びプラスミドの宿主細胞への導入、又は宿主細胞においてそのようなベクター及びプラスミドからのポリペプチドの発現において使用される方法の詳細な記載は含まない。そのような方法、及び他の慣用的な方法は、当業者に周知である。
ζPKC発現は関節炎において上方制御される
実施例1.1 実験設計
[0067]関節炎の関節軟骨と正常な関節軟骨との間に示差的に発現する転写物を同定するために、最終的に膝関節の置換をしている関節炎の患者及び非関節炎の切断手術を受けたヒトから組織試料を得た。関節炎の有無は組織学によって確かめた。
[0068]発現プロファイリングには、Human Genome U95Av2(HG−U95Av2)GeneChip(登録商標)アレイ(Affymetrix,Santa Clara,CA)を使用した。ヒトゲノム由来のHG−U95Av2チップは約12,000の本来の全長配列(約16プローブ対/配列)を表す25マーのオリゴヌクレオチドプローブを含有する。標的配列に完全に相補的になるように設計した各プローブについては、中心において単一の塩基ミスマッチを除いて同一であるパートナープローブを生じる。これらのプローブ対は、シグナルの定量と非特異的なノイズの控除を可能にする。
[0070]各転写物の生の蛍光強度値をHewlett−Packard Gene Array Scannerを用いて6mmの分解度で測定した。GeneChip(登録商標)ソフトウェア3.2(Affymetrix)は、遺伝子が「存在」又は「不在」であるかを決定するために、並びにアレイ上の各遺伝子の特異的ハイブリダイゼーション強度値又は「平均差」を決定するためにアルゴリズムを使用し、蛍光データを評価するために使用した。各遺伝子の平均差は、Hillら((2000)Science 290:809−12)の手法に従って、各ハイブリダイゼーション混合物にスパイクした既知存在量の11個の対照転写物の平均差を参照して頻度値に標準化した。各遺伝子の頻度を計算し、その頻度は、106の全転写物あたりの個々の遺伝子転写物の全体数に等しい値を表す。
ζPKC活性の阻害は細胞外マトリックス(ECM)の減少を阻害する
実施泳2.1 初代ウシ軟骨細胞の単離と培養
[0073]十分に太いウシの関節軟骨スライスを無菌状態で切り出し、PBSで4回リンスし、そして、プロナーゼ及びコラゲナーゼ消化(血清なしでDME中、37℃で、1mg/mlプロナーゼ(Calbiochem,San Diego,CA)30分間、及び1mg/mlコラゲナーゼP(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis,IN)一晩)に供して、軟骨の細胞外マトリックスに包埋した軟骨細胞を単離した。消化物を70ミクロンのFalcon(商標)細胞ろ過器(BD Biosciences,San Jose,CA)を通してろ過し、10%FBSを含有するDMEで2回洗浄した。典型的には、2−4×108細胞をウシ中手指節関節表面から得た。細胞を単層で6ウェルプレートに2×106細胞/ウェルの密度で播種した。ペレット培養については、細胞を1×106細胞/mlで増殖培地[HL−1培地(Cambrex Corporation,East Rutherford,NJ)、ペニシリン+ストレプトマイシン、グルタミン、50μg/mlアルコルビン酸、及び10%FBS]中に再懸濁し、そして、細胞1mlのアリコートを15mlの無菌のFalcon遠心管に移した。細胞を4℃で5分間、200×gで遠心し、得られた細胞ペレットを前述したように培養した(Xu et al.(1996)Endocrinology 137:3557−65)。細胞培養液を回収し、コラーゲン及びプロテオグリカンアッセイ用に保存し、そして、細胞を3−4日毎に新鮮な培地(3ml/ウェル、1ml/管)で再供給した。ペレット培養は、3週間維持し、その時にペレットを集め、ジメチルメチレンブルー(DMMB)染色アッセイ用に0.5mlの300μg/mlパパインで消化するか、又は組織学のために調製した。
[0074]NF−κB活性を遮断することが、出願人の培養系においてプロテオグリカン分解を阻害できることを示すために、初代ウシ軟骨細胞を10ng/mlのTNF又は1ng/mlのIL−1の存在若しくは不存在において、300μg/mlの濃度で4日間、NF−κB遮断剤SN50とともに培養した。細胞をTNF又はIL−1のいずれかの添加前に3時間、阻害剤とともにインキュベートした。SN50は、脂質二重層を横切る輸送を促進するための一続きの疎水性アミノ酸に結合したNF−κBの核局在シグナルを含有するペプチドである(例えば、Lin et al.(1995)J.Biol.Chem.270:14255−58)。SN50Mは、陰性対照として使用され、NF−κBを遮断する活性を止めるアミノ酸変化を有する同じペプチドである。SN50及びSN50Mは、例えば、Biomol Research Laboratories,Inc.(Plymouth Meeting,PA)から利用することができる。
[0076]ζPKC阻害剤がTNFを介したプロテオグリカン分解を阻害することができるかどうかを決定するために、初代ウシ軟骨細胞を、(1)ミリストイル化ζPKCペプチド擬似基質[本明細書では「2089」と称する;組織内での合成;配列番号:6に均等;例えば、BioSource International,Inc.,USA(Camarillo,CA)]、又は(2)小分子阻害剤Ro−31−8220(Sigma−RBI,Natick,MA)と伴に、又は伴わずに5日間、TNFの様々な濃度で培養した。阻害剤はTNFを添加する前に3時間添加した。
[0078]ミリストイル化ζPKCペプチド擬似基質2089が投与量に依存する方法でサイトカインを介したプロテオグリカン分解を阻害するかどうかを決定するために、初代ウシ軟骨細胞を様々な濃度の2089を添加した後、10ng/mlのTNF又は1ng/mlのIL−1のいずれかで4日間培養した。
ζPKC mRNAはヒト骨関節炎(OA)の軟骨において上方制御される
[0080]骨関節炎(OA)患者由来のヒト関節の軟骨に関する転写プロファイリングデータが、ヒト非OA軟骨と比較して、ζPKC mRNAにおいて統計的に有意な増加を示した。図5のパネルAでは、RNAは、臨床試料の凍結粉砕した関節軟骨から抽出し、HG−U95Av2チップを用いてプロファイリング解析を表すようにした。これらのグループを解析した:正常(非OA)軟骨[13試料];重症OA軟骨(非障害領域)[29試料];及び重症OA軟骨(障害領域)[26試料]。ζPKC mRNAレベルは、正常な試料と比較して、重症のOA試料において評価した。図5のパネルBでは、同じ一連の試料のTaqMan(登録商標)Q−PCR(Applied Biosystems,Foster City,CA)解析は、正常な試料と比較して、重症のOA試料におけるζPKC mRNAの非常に高いζPKC mRNAレベルを示した;TaqMan(登録商標)プロトコールは製品取扱説明書に従って行った。
ζPKCタンパク質は軟骨細胞において発現する
[0081]抗ζPKC抗体(nPKCζ(C−20);Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Cruz,CA)を使用して、軟骨細胞及びJurkat細胞におけるζPKCタンパク質の産生を比較した。ウシ軟骨細胞とJurkat細胞(ヒト細胞株)の溶解物を同様の方法によって調製した:細胞を冷却したリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、すぐにホスファターゼ阻害剤を含有する細胞溶解緩衝液(Cell Signaling Technology,Inc.,Beverly,MA)に置いた。細胞を氷上で5分間インキュベートし、次いで、4℃で10分間、12,000rpmで遠心した。試料を還元条件下で12%SDS−ポリアクリルアミドゲルの電気泳動におって分析した。ウェスタンブロットは、軟骨細胞が十分量のζPKCタンパク質を発現したことを示した;同じブロットは、Jurkat細胞におけるζPKCタンパク質の明確に感知できる発現は示さなかった。
アデノウイルスを介したζPKCの発現はプロテオグリカン分解を増加する
[0082]初代ウシ軟骨細胞を単離して、実施例2.1において上述したように(ペレット形式で)培養した。アデノウイルスの添加前に(15ml Falcon管で)2%FBSを含有する増殖培地(HL−1)0.5ml中で細胞を培養した。ζPKC又はGFP(グリーン蛍光タンパク質)を含有するアデノウイルスベクターを調製し(Alden et al.(1999)Hum.Gene Ther.10:2245−53)、そして、軟骨細胞の培養物に単離後ペレットにする前にすぐに感染させた。GFP又はζPKCを発現するアデノウイルスは、5000の感染の多重度(MOI)で培養物中に直接加えた。図6のパネルAに見られるように、培養物(サイトカインを添加していない)中の初代ウシ軟骨細胞における全長のζPKCの過剰発現は、GFPの過剰発現と比較した場合、プロテオグリカンの分解(軟骨細胞のペレットアッセイにおける培養液中に放出されるプロテオグリカンにより測定されるように)において、中くらいであるが統計学的に有意な増加に帰着した。10%FBSを含有する培養液を37℃で(5%CO2の湿気雰囲気下で)2時間インキュベーション後に培養物に添加した。血清組成物は、3日毎に徐々に減少させ(軟骨細胞ペレットを毎回供給して連続的に5%、2.5%にし、そして最終的には0%(血清なし)にする)、血清から細胞を遠ざけた。培養液中に放出されたプロテオグリカンは、25日に渡って放出された全プロテオグリカンを表す。
ζPKCは軟骨細胞におけるTNFαを介したプロテオグリカン放出に原因する
[0084]関節炎のウシ軟骨細胞は、ペレットアッセイのために前述したように調製した。図7に示すように、軟骨細胞ペレットアッセイにおける同じ培養物にTNFαを添加した(100ng/ml;*で標識したバー)。2つの阻害剤は、異なる投与量で添加した。1つの阻害剤、ビスインドリルマレミド(BIS)は、pan−PKC阻害剤であり、ζPKCを含む、PKCの全ての異性体の活性を遮断すると報告されている(例えば、Toullec et al.(1991)J.Biol.Chem.266:15771−81)。他の阻害剤、塩化ケレリスリン(CC)は、ホルボールエステル結合部位の競合阻害剤である。CCは、伝統的な及び新規なPKCファミリーのメンバーのホルボールエステル結合ドメインに対して競合し、それらを阻害する;しかしながら、典型的でないPKC(例えば、ζPKC;Ca++依存性であり、しかもジアクリルグリセロール非依存性であるPKC)はこの結合ドメインを欠如しているので、CCによっては阻害されない(例えば、Herbert et al.(1990)Biochem.Biophys.Res.Commun.172:993−99)。軟骨細胞ペレットアッセイにおける培養液中へのサイトカイン(TNFα)を介したプロテオグリカンの放出は、BIS(20−40μMで)によって遮断されたが、CCによっては遮断されず(図7)、ζPKCの選択的阻害がサイトカインを介したプロテオグリカン減少を遮断することを示した。
ζPKCは軟骨細胞におけるNF−κBのTNFα誘導の活性の原因となる
[0085]NF−κB応答エレメントの制御下でルシフェラーゼレポート遺伝子を導入した不死化ヒト軟骨細胞株(C28/I2;例えば、Finger et al.(2003)Arthritis Rheum.48:3395−403;Goldring(1994)J.Clin.Invest.94:2307−16)におけるNF−κBの活性を測定した。10%FBSを添加したDMEM/Ham’s F12で細胞を培養した;細胞を96ウェルに撒き(1×105細胞/ウェル)、アッセイ前に24時間、NF−κBルシフェラーゼ構築物(100MOI)を発現するアデノウイルスで感染した。軟骨細胞をTNFの添加前2時間、無血清培地で阻害剤とともにインキュベートした。図8に示すように、TNFαを軟骨細胞ペレットアッセイにおけるいくつかの培養物に添加した(1ng/ml又は10ng/ml)。BIS(20μM)、pan−PKC阻害剤をいくつかの培養物に添加し、そして、CC(8μM)、PKCのいくつかの形体でのホルボールエステル結合部位の競合阻害剤(しかし、典型的でないPKC、例えばζPKC)を他の培養物に添加した。サイトカイン(TNFα)を介したNF−κBの活性はBISによって遮断されたが、CCによっては遮断されず、ζPKCの選択的阻害がサイトカインを介したNF−κBの活性を遮断することを示す。
Claims (44)
- 患者における関節炎の診断に使用する方法であって、下記の工程:
患者の試料中のζPKC遺伝子産物の試験量を検出し;そして
前記試験量と対照試料中のζPKC遺伝子産物の正常量とを比較する
ことを含み、
それにより、試験量が正常量よりも大きいという所見が、関節炎の診断に陽性の指示を与える、前記方法。 - 試料が軟骨細胞を含む、請求項1に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物がRNA又はcDNAを含む、請求項1に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物がζPKCポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
- 患者における関節炎の予測に使用する方法であって、下記の工程:
患者の試料中のζPKC遺伝子産物の試験量を検出し;そして
前記試験量と対照試料中のζPKC遺伝子産物の正常量とを比較する
ことを含み、
それにより、試験量と予測量との比較が関節炎の予測の指示を与える、前記方法。 - 試料が軟骨細胞を含む、請求項5に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物がRNA又はcDNAを含む、請求項5に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物がζPKCポリペプチドである、請求項5に記載の方法。
- 患者における関節炎の経過の監視に使用する方法であって、下記の工程:
一回目に患者の試料中のζPKC遺伝子産物の第一試験量を検出し;
二回目以降に、患者からの試料中のζPKC遺伝子産物の第二試験量を検出し;そして
第一試験量と第二試験量とを比較する
ことを含み、
それにより、第一試験量と比較した場合、第二試験量におけるζPKC遺伝子産物量の増加が関節炎の進行を指示し、及び
それにより、第一試験量と比較した場合、第二試験量におけるζPKC遺伝子産物量の減少が関節炎の鎮静を指示する、前記方法。 - 試料が軟骨細胞を含む、請求項9に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物がRNA又はcDNAを含む、請求項9に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物がζPKCポリペプチドである、請求項9に記載の方法。
- 患者における関節炎の治療の効果を評価する方法であって、下記の工程:
治療前の患者の試料中のζPKC遺伝子産物の第一試験量を検出し;
治療後の患者の試料中のζPKC遺伝子産物の第二試験量を検出し;そして
第一試験量と第二試験量とを比較する
ことを含み、
それにより、第一試験量と比較した場合、第二試験量におけるζPKC遺伝子産物量の減少が、関節炎の治療に効果的であることを示す、前記方法。 - 試料が軟骨細胞を含む、請求項13に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物がRNA又はcDNAを含む、請求項13に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物がζPKCポリペプチドである、請求項13に記載の方法。
- 患者における関節炎を阻害することができる化合物をスクリーニングする方法であって、下記の工程:
等量のζPKCを含有する第一試料及び第二試料を提供し;
第一試料と該化合物を接触させ;そして
第一試料中のζPKCの活性が化合物と接触していない第二試料中のζPKCの活性に関連して減少するかどうかを決定する
ことを含み、
それにより、第二試料と比較した場合、第一試料中のζPKCの活性の減少が、化合物が患者における関節炎を阻害することを示す、前記方法。 - 化合物が軟骨細胞におけるζPKCの活性を阻害する、請求項17に記載の方法。
- 化合物が小分子である、請求項17に記載の方法。
- ζPKCの活性が酵素プロテインキナーゼアッセイの使用によって決定される、請求項17に記載の方法。
- ζPKCの活性が軟骨細胞ペレットアッセイの使用によって決定される、請求項17に記載の方法。
- ζPKCの活性がプロテオグリカンの分解を測定するアッセイの使用によって決定される、請求項17に記載の方法。
- ζPKCの活性がNF−κB活性を測定するアッセイの使用によって決定される、請求項17に記載の方法。
- 患者における関節炎を阻害することができる化合物をスクリーニングする方法であって、下記の工程:
ζPKCを発現する細胞を等量含有する第一試料及び第二試料を提供し;
第一試料を化合物と接触し;そして
第一試料中のζPKC遺伝子産物の発現が、化合物と接触していない第二試料中のζPKC遺伝子産物の発現に関連して減少するかを決定する
ことを含み、
それにより、第二試料と比較した場合、第一試料中のζPKC遺伝子の発現の減少が、化合物が患者における関節炎を阻害することを示す、前記方法。 - 化合物が軟骨細胞におけるζPKC遺伝子産物の発現を阻害する、請求項24に記載の方法。
- 化合物が小分子である、請求項24に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物の発現が酵素プロテインキナーゼアッセイの使用によって決定される、請求項24に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物の発現が軟骨細胞ペレットアッセイの使用によって決定される、請求項24に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物の発現がプロテオグリカンの分解を測定するアッセイの使用によって決定される、請求項24に記載の方法。
- ζPKC遺伝子産物の発現がNF−κB活性を測定するアッセイの使用によって決定される、請求項24に記載の方法。
- 患者におけるζPKCの活性を阻害する化合物を患者に投与することを含む、患者における関節炎を治療する方法。
- 化合物が軟骨細胞におけるζPKCの活性を阻害する、請求項31に記載の方法。
- 化合物がアンチセンス・ポリヌクレオチドである、請求項31に記載の方法。
- 化合物が小分子量である、請求項31に記載の方法。
- 化合物がsiRNA分子である、請求項31に記載の方法。
- siRNA分子が図1に示されるsiRNA分子群からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
- 患者におけるζPKCの発現を阻害する化合物を患者に投与することを含む、患者における関節炎を治療する方法。
- 化合物が軟骨細胞におけるζPKCの発現を阻害する、請求項37に記載の方法。
- 化合物がアンチセンス・ポリヌクレオチドである、請求項37に記載の方法。
- 化合物が小分子である、請求項37に記載の方法。
- 化合物がsiRNA分子である、請求項37に記載の方法。
- siRNA分子が図1に示されるsiRNA分子群からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
- ζPKCの発現又は活性を阻害するsiRNA分子。
- siRNA分子が図1に示されるsiRNA分子群からなる群から選択される、請求項43に記載のsiRNA分子。
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