本特許開示は、E. Chinchoyによって以前に発明された2件の米国特許本出願、すなわち、「Method and Apparatus for Assessing Left Ventricular Function and Optimizing Cardiac Pacing Intervals Based on Left Ventricular Wall Motion」という名称の2003年2月28日に出願された出願第10/376,981号(代理人書類番号P−10805.00)、及び、「Method and Apparatus for Optimizing Cardiac Resynchronization Therapy Based on Left Ventricular Acceleration」という名称の2003年2月28日に出願された出願第10/377,207号(代理人書類番号P−11229.00)に関連し、また、この2件を参照により本明細書に援用する。
本発明は、心臓治療の分野に関する。特に、本発明は、心臓組織の変位を測定する方法及び装置を提供し、その測定値を、心臓再同期化治療(CRT)等の、一定の形態の2心室心臓治療を最適化するのに使用することができる。
一定の患者、特に、心不全(HF)の患者は、左右の心室の心筋脱分極及び収縮が同時に起こらないという非協調的な(uncoordinated)機械的活動を受けることを、心臓病を診断する当該技術分野の専門家は長い間理解してきた。こうした非協調的な運動は、有害な影響の中でもとりわけ、心拍出量(CO)の減少を引き起こす。最近、こうした非協調的な運動を最小化してCOを増加させるための種々の技法が提案され、実施されている。
心室の非協調的な運動を最小にするこれらの従来技術の技法は、CRTを含む。或る形態のCRTでは、一方又は両方の心室における圧力ベースの測定が知られており、時々使用されている。こうした方法では、圧力変換器は、通常、経心室圧力変動を測定するのに使用される医療電気リード線の遠位端に結合される。こうして測定された変動(最大、最小、計算された圧力の1次微分等)は、CRTを送出するようにプログラムされた埋め込み可能パルス発生器(IPG)へフィードバックを提供する。こうしたIPGは、通常、心臓組織に結合した、少なくとも3つの医療電気リード線を含む。第1リード線は、通常、右心房に結合され、第2リード線は、通常、右心室に結合され、第3リード線は、通常、(しばしば冠状静脈洞又は大静脈を介して)左心室に結合される。すなわち、第3リード線は、左心室の自由壁上のロケーションに結合されることが多い。そのため、当該技術分野で知られているように、圧力ベース測定に少なくとも部分的に基づいて、IPGは、測定される圧力(複数可)及び/又は圧力の1次微分を適切に増加させようとして、左心室(LV)及び右心室(RV)に電気心臓ペーシング刺激を提供する。
首尾よく送出されると、CRTは、COを増加させることが知られており、所定期間にわたって、患者の心臓に対するLV及びRVの(及び/又は他の有益な)生理的変化の「リバースリモデリング(reverse remodeling)」として当該技術分野で知られる現象を生じる。本発明者等は、HF患者用のCRTについての別の技法、すなわち、右心室の先端部分の心内膜加速度を測定するための、右心室の尖部に配設された加速度計を使用した技法も知っている。右心室におけるこの測定値から、左心室活動が推測される。しかしながら、本発明者等が知る限りでは、こうした技法は、非協調的心室運動等に苦しむ患者の心室又は心房中隔壁の変位を直接測定するのに使用されてこなかった。
本発明は、非協調的な心室運動を検出し、心室の非協調的な運動による中隔壁の変位を監視又は測定し、且つ/又は、両心室腔に結合した、適切にタイミングを調整された電気刺激によって上記非協調的な運動を減少させて、上記非協調的な運動を減少させて心拍出量を増加させることによって、上述したニーズに対処する。
すなわち、本発明は、利点の中でもとりわけ、IPGを含む閉ループシステム内で中隔壁の変位を測定し、それによって、心房間(A−A)ペーシング間隔及び/又は心室間(V−V)ペーシング間隔の自動的な最適化を提供して、非協調的な心臓運動を最小にし、COを改善する、新規な方法及び装置を提供する。そのため、本発明は、心房間の非協調的運動及び心室間の非協調的運動(それぞれ、A−A非協調的運動及びV−V非協調的運動)並びに心房−心室の非協調的運動(すなわち、A−V非協調的運動及びV−A非協調的運動)を低減する手段を提供する。
A−A非協調的運動を低減することを対象とする本発明の実施形態では、付加的なリード線が、左心房(LA)に電気結合されるべきである。本発明の一実施態様では、所望であれば、LV脱分極が、RV脱分極にわずかに先行するように(又は、その逆に)タイミング調整されるように、種々のそれぞれの心室間タイミングを実施することができる。すなわち、特定の患者についての、生理的心臓特性又は他の紛らわしい要因のために、LVに対する離散的な心臓ペーシングパルスのタイミングは、心室中隔壁の変位を最小にするために、RVへ送出される対応する心臓ペーシングパルスからわずかにずれる必要がある場合がある。この最適化モダリティは、特にHF患者にとって、有益な、同期化された心臓脱分極事象を促進するのに非常に有効であると考えられている。
本発明の一形態では、中隔壁変位は、中隔壁組織の或る部分に結合した加速度計によって測定される。加速度計は、単一軸又は多軸加速度計を備えてもよい。単一軸加速度計が使用される場合、その軸は、細長い心臓センス/ペース(又は、専用の)医療電気リード線の長手軸を横切らなければならない。結果として、リード線がRV流出路(RVOT)に沿って配設されると、加速度計の単一軸は、隣接する中隔壁組織の平面に実質的に垂直になり、中隔組織運動のより信頼性の高い測定値を提供することになる。しかしながら、多軸加速度計は、隣接する中隔壁組織に対して任意の好都合な斜めの角度で加速度計を中隔壁に動作可能に固着するように適合された細長い医療リード線の中間部分に結合することができる。いずれにしても、変換器の選択は、リード線が固着される中隔壁の組織に関して加速度計の場所及び構成に影響を与える。加速度計に関してリード線の任意の遠位部分は、中隔壁から加速度計へ変位力を正確に伝達するために、長手軸において十分な弾性を有するべきである。
有益な信号をその間に得ることができる、時間窓が規定されなければならない。窓が正確に規定される場合、変換器のデューティサイクル及び付随する計算オーバヘッド(及び関連するエネルギードレイン)を最小にすることができる。別法として、絶え間のない測定、信号フィルタリング、数学的積分(適用可能である場合)、及び結果として得られる信号を比較して最適なペーシング間隔を選択することを採用してもよい。しかしながら、時間窓を規定する1つの信頼性のある技法は、心周期活動の検出により運動測定を単にトリガすることである。心房又は心室の電位図或いは他の検知ベクトル(複数可)が使用されてもよい。たとえば、トリガ事象は、検知された、内因性の又は誘発された心房事象又は心室事象を含んでもよく、プログラム可能な又は所定の運動検知遅延間隔が付加されて、中隔壁運動が問題となる可能性が最も高い時に、運動検知の時間窓が開始し、終了することができる。時間窓を規定する別の技法は、最大運動信号によりトリガし、オプションで、中隔壁組織の運動に関連する信号に追従し始める前に、運動検知遅延を付加することである。本発明は、中隔壁運動を最小にすることを対象にするため、基準点又は参照点は、最大マグニチュード加速度信号を有効に含み得る。
本発明の一形態では、加速度計は、圧力センサ等の少なくとも1つの付加的な生理的センサが配設又は結合されている単一検知セル内に組み合わされてもよい。本発明のこの形態では、圧力センサは、加速度計に近接する中隔壁から離間して配置されることができるが、こうした構成は必須ではない。本発明の代替の形態では、センサ(複数可)は、IPG用の加速度計及び/又はキャニスタ、或いは、IPGに結合した他の医療リード線の1つに電気的に、且つ/又は、機械的に結合してもよい。こうしたセンサは、静脈又は動脈の直接温度測定、及び/又は、流体流量、速度等の心機能の間接測定を提供することができる。
本発明の別の形態では、主要な加速度計は、心房又は心室の中隔壁の或る部分に結合してもよく、付加的な加速度計(複数可)が、心臓組織の別の部分に結合してもよい。たとえば、付加的な加速度計は、主要な加速度計に対向して、RV心内膜組織の或る部分に結合してもよい。こうした付加的な加速度計ユニットからの出力信号は、直接にか、又は、加速度計又は他の生理的センサからの出力信号の他の信号と組み合わされて提供されてもよい。すなわち、制限された「運動」と組み合わされた中隔壁の比較的過度の運動(すなわち、加速度、速度、又は変位)、すなわち、中隔壁から離間したRV組織又はLV組織の機能に関連する測定可能な出力信号は、非協調的なV−V運動を指示し、LV及びRVのそれぞれの脱分極中に不十分な機能をもたらす場合がある。圧力信号が、加速度計に隣接して測定される場合、機械的な非協調的運動の付加的な成分が現れる場合がある。
本発明によれば、単一軸加速度計と共に、又は、その代わりに多軸加速度計が使用されてもよい。3軸加速度計が、中隔壁組織に対向する組織に結合する場合、実質的に3次元(3D)表現又は運動モデルを決定することができる。たとえば、中隔壁組織に結合する単一軸加速度計が、比較的制限された変位を指示し、一方、LV自由壁に結合する3軸加速度計が、中隔壁組織の非線形の「ループ運動」変位を指示する場合、こうした機械的な非協調的運動は、より正確に決定されることができる。付加的な実験的調査によれば、こうした運動は、1つ又は複数のニューヨーク心臓協会(NYHA)HF分類(たとえば、クラスI、II、III、IV、及び/又は、いわゆる「最終段階心不全」)に対して強い相関を提供することができる。
閉ループCRT最適化方法及び装置に関して、心臓機械的機能不全を検出すること(診断すること)、及び/又は、患者の中隔壁の検知された線形又は非線形加速度(すなわち、変位による運動)と上記患者のNYHAクラスとの相関を提供することに加えて、本発明はまた、自動的に最適化され、動的に調整可能なCRTペーシングモダリティを提供する。本質的に、本発明の1つの基本実施形態は、心房及び/又は心室中隔壁変位を最小にするために、A−A間隔タイミング、A−V間隔タイミング及び/又はV−V間隔タイミングを提供する。この間隔タイミングは、患者の心臓の1つ又は複数の腔の初期の内因性脱分極、又は誘発された脱分極に関する「遅延間隔」とみなすことができる。1つ又は複数の加速度計によって検知された変位は、適したCRT(又は、他のペーシングモダリティ)タイミング回路機構及び/又は変位から計算された、1次、2次、又は他の微分(又は積分)結果に直接提供されてもよい。
先に示したように、本発明は、中隔壁運動を監視することに基づいて正常な心室同期性を回復するために、心室機能を最適化し、心臓ペーシング間隔を選択する方法及び装置を対象とする。本発明は、心不全を処置するのに使用される心臓再同期化治療(CRT)中に、心房−心室、心房間、及び心室間ペーシング間隔を最適化する時に有益である。本発明はまた、術後の非協調的心腔(たとえば、心房及び/又は心室)運動を処置するために適用される一時的なペーシング中に使用されるペーシングパラメータを選択する時に有益である。したがって、本発明は、2腔又は多腔ペースメーカ及び医療電気リード線の関連するセットを含む埋め込み可能心臓ペーシングシステムにおいて具体化されてもよい。別法として、本発明は、関連する一時的ペーシングリード線を有する外部ペーシングデバイスを含む一時的ペーシングシステムにおいて具体化されてもよい。
図1は、本発明を実施することができる、例示的な埋め込み可能な多腔心臓ペースメーカ14を示す。心臓活性化シーケンスを制御するために必要である場合に、1つ又は複数の心腔にペーシングパルスを送出することによって、心室同期性を回復する多腔ペースメーカ14が提供される。ペースメーカ14は、3つのリード線16、32、及び52によって患者の心臓10とつながっているのが示される。心臓10は、上部心腔すなわち右心房(RA)と左心房(LA)とそれら両者の間に配設された中隔壁(SW)、及び、下部心腔すなわち右心室(RL)と左心室(LV)とそれら両者の間に配設された中隔壁(SW)、及び、右心房内の開口から、横方向に、心房の周囲に延びて、大心臓静脈48を形成し、中心静脈を形成するように分岐する冠状静脈洞(CS)を示す部分切り取り図で示される。
本明細書で、時々、埋め込み可能パルス発生器(IPG)又は埋め込み可能カーディオバータ−ディフィブリレータ(ICD)とも呼ばれる、ペースメーカ14は、皮膚と肋骨の間の患者の体内の皮下に埋め込まれる。3つの経静脈的心内膜リード線16、32、及び52は、それぞれ、IPG14をRA、RV、及びLVに接続する。各リード線は、少なくとも1つの導電体及びペース/センス電極を有する。遠隔不関筐体(can)電極20は、IPG14のハウジングの外部表面の一部として形成される。ペース/センス電極及び遠隔不関筐体電極20は、ペーシング機能及び検知機能のために、複数の単極及び双極ペース/センス電極の組み合わせを提供するために選択的に採用されることができる。
図示する双極心内膜RAリード線16は、静脈を通って心臓10のRA腔内に通され、RAリード線16の遠位端は、取り付け機構17によってRA壁に取り付けられる。取り付け機構は、当該技術分野で知られているように、また、後日開発されるように、能動型又は受動型であってもよい。当該技術分野で知られているように、らせん状又は歯のある(tined)リード線を使用して、中隔壁組織へ比較的永続的に固定するように、加速度計搭載リード線の遠位端を構成してもよい。双極心内膜RAリード線16は、インラインコネクタ13がIPGコネクタブロック12の双極穴内に嵌合した状態で形成され、双極穴は、リード線本体15内にあって、RAペーシング及びRA電位図(EGM)信号の検知を達成するために、遠位先端RAペース/センス電極17及び近位リングRAペース/センス電極21に接続された、一対の電気絶縁した導体に結合する。本発明の或る実施形態では、単一軸加速度計又は多軸加速度計等の運動センサ11は、取り付け機構17に近接してリード線16に結合する。こうした実施形態では、取り付け機構17は、運動センサ11が心房中隔壁運動に関連する信号を提供するようにRA壁の中隔組織の或る部分に結合するようになっている。軸外(又は、半径方向)加速度計データは、軸上(又は、長手方向)データに比べて、壁運動を評価し、ペーシング間隔を最適化する時に有用でない場合があり、したがって、単一軸又は多軸加速度計は、本発明に従って適切に働く。
本発明の3腔の実施形態によれば、左心室を刺激することが可能な冠状静脈洞リード線52は、冠状静脈洞を通過し、大心臓静脈から分岐する血管に入って、左心室ペーシング部位へ方向制御することができるように、サイズ及び直径が比較的小さいことが望ましい。
センサ60は、別法として、光、音響、又はホール効果センサ、或いは、中隔壁の運動又は加速度に比例する可変信号を生成する、圧電型、誘導型、容量型、抵抗型、又は他の素子を有するセンサ等の、別の型のセンサとして設けられてもよい。センサ60は、好ましくはリード線32上に位置しており、それにより、リード線がペーシング及び検知のために位置決めされた時に、比較的大きな流体流量が有害な線維性成長を減少させるのに役立つように、センサ60がほぼRV流出路(RVOT)の近くに位置している。
右心腔及び左心腔内又はその周りの、図1に示されたリード線及び電極の位置は、おおよそであり、且つ、例示に過ぎない。たとえば、別法として、運動センサ11、60は、運動センサ11、60が専用リード線の唯一の部品であるように、専用リード線(図示せず)上に位置してもよい。さらに、運動センサ11、60は、1つ又は複数のディフィブリレーション電極(たとえば、高電圧コイル)に結合されてもよく、或いは、運動センサ11、60と離間した関係で、又は、任意のアクセス可能な心内膜ロケーションに位置決めされた付加的なセンサカプセル(たとえば、圧力センサ、pHセンサ等)に結合されてもよい。さらに、RA、LA、RV、及びLVの上又は内部、又はそれに関連するペーシング部位又は検知部位に設置するようになっている、代替のリード線及びペース/センス電極が、本発明に関連して使用されてもよいことが認識される。
運動センサ11からの心房中隔壁運動信号は、単独で、又は、運動センサ60からの心室中隔壁運動信号(以下で述べる)と共に、それぞれの壁運動信号(複数可)の少なくとも一部を最小化するペーシング刺激が提供されるように、IPG14のペーシング刺激タイミング回路機構に提供される。たとえば、本発明によれば、心周期の等容性収縮相に対応する中隔壁運動信号、全周期信号、P波脱分極、R波脱分極、及び/又は、これら信号のフィルタリング及び/又は整流された部分が、ペーシング刺激を適切に施行するのに使用されてもよい。
双極心内膜RVリード線32は、RAを通ってRV内に通され、RVにおいて、その遠位リングRVペース/センス電極38及び遠位先端RVペース/センス電極40が、遠位取り付け機構41によって心室中隔壁組織の或る部分に固定されるようになされる。RVリード線32は、インラインコネクタ34がIPGコネクタブロック12の双極穴内に嵌合した状態で形成され、双極穴は、リード線本体36内にあって、RVペーシング及びRV EGM信号を検知するために設けられた遠位先端RVペース/センス電極41及び近位リングRVペース/センス電極38に接続された、一対の電気絶縁した導体に結合する。RVリード線32は、オプションで、RV中隔壁運動センサ60を含む。RV中隔壁運動センサ60は、心室中隔組織の運動又は加速度を検出するために心室中隔の或る部分内に、又は、そこに近接して位置決めされてもよい。右心室内(RVの先端部分内ではあるが)の加速度センサの埋め込みは、Plicchi他に発行された、先に引用した米国特許第5,693,075号に全体が開示される。
CRTを送出することが可能な3腔IPGの図示された実施形態では、単極、双極、又は、多極の心内膜LV CSリード線52は、RAを通ってCS内に、さらに、心臓静脈内に通されて、遠位LV CSペース/センス電極50をLV腔に沿って延ばし、LVペーシング及びLV EGM信号の検知を達成する。LV CSリード線52は、IPGコネクタブロック12の穴内に嵌合する近位端コネクタ54で結合する。遠位LV CSペース/センス電極50を、大心臓静脈48から分岐する心臓静脈内の深いところに入れるために、直径の小さい単極リード線本体56が選択される。
4腔の一実施形態では、LV CSリード線52は、LAをペーシングするか、又は、LA EGM信号を検知する時に使用するために、LAに隣接する大きな直径の冠状静脈洞内にあるように、リード線本体に沿って位置決めされた近位LA CSペース/センス電極を搭載してもよい。その場合、リード線本体56は、より近位のLA CSペース/センス電極(複数可)から近位に延び、双極コネクタ54で終端する絶縁リード線導体を収納するであろう。
図2は、再同期化治療の送出を提供し、心房及び/又は心室中隔壁運動センサ信号入力を処理することが可能な、図1に示すIPG14等の例示的な多腔IPG14の概略ブロック図である。IPG14は、マイクロプロセッサベースのデバイスであることが望ましい。それに応じて、型及び組み込まれる機能的特徴に応じて精巧さ及び複雑さが変わる、マイクロプロセッサベースの制御及びタイミングシステム102は、関連するRAM及びROMに記憶される、ファームウェア及びプログラム式のソフトウェアアルゴリズムを実行することによって、IPG14の機能を制御する。制御及びタイミングシステム102はまた、ウォッチドッグ回路、DMAコントローラ、ブロックムーバ/リーダ、CRC計算器、及び、当該技術分野で知られる方法でパス又はツリーにおいてオン−チップデータバス、アドレスバス、電力、クロック、及び制御信号線によって結合される他の特定ロジック回路機構を含んでもよい。IPG14の制御及びタイミング機能は、プログラム式マイクロコンピュータではなく、専用回路ハードウェア又は状態機械ロジックによって達成することができることも理解されるであろう。
IPG14は、患者の心腔の特定の部位に位置するセンサ及びペース/センス電極から信号を受け取るとともに、患者の心調律を制御して患者の心臓の腔の脱分極を再同期させるために心臓ペーシングを送出するインタフェース回路機構104を含む。インタフェース回路機構104は、したがって、制御及びタイミングシステム102の制御下で心臓ペーシングインパルスを送出することを目的とする治療送出システム106を含む。2つ以上の心腔へのペーシングパルスの送出は、心房−心房(A−A)間隔、心房−心室(A−V)間隔、及び心室−心室(V−V)間隔を含み得るプログラム可能なペーシング間隔の選択によって部分的に制御される。
生理的入力信号処理回路108は、患者の心調律を決定するために心臓電位図(EGM)信号を受け取るために設けられる。生理的入力信号処理回路108は、さらに、少なくとも1つの中隔壁運動センサ11、60からの信号を受け取り、これらの信号を処理して、さらなる信号解析のために、信号データを制御及びタイミングシステム102に提供する。本発明の可能性のある使用を具体的に示すために、治療送出システム106と、入力信号処理回路108と、ペース/センス電極、壁運動センサ、及びRA、LA、RV、及びLVと動作可能に位置する任意の他の生理的センサのセットとの間で電気接続するためのリード線の接続部のセットが示される。
制御及びタイミングシステム102は、心腔同期性を改善することを目的とした選択された間隔で、2心房、2心室、又は多腔心臓ペーシングパルスの送出を制御する。IPG14によるペーシングパルスの送出は、Struble他に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第6,070,101号に全体が開示されるプログラム可能な伝導遅延窓時間、又は、Levineに発行された、先に引用した米国特許第6,473,645号に全体が開示されるプログラム可能な結合間隔等の、プログラム可能なペーシング間隔に従って提供されてもよい。プログラム可能なペーシング間隔の選択は、好ましくは、以下でより詳細に述べられるように、センサ62の信号から導出される右心室中隔壁運動の決定に基づく。
治療送出システム106は、オプションで、患者の心調律を制御するための心臓ペーシングパルスに加えて、カーディオバージョン/ディフィブリレーション治療を送出する回路機構を含むように構成され得る。それに応じて、先に述べたように、患者の心臓とつながる医療電気リード線はまた、有利には、高電圧カーディオバージョン又はディフィブリレーションショック電極を含むであろう。
電池136は、IPG14の電力部品及び回路機構に電気エネルギー源を提供し、電気インパルスを心臓に送出するための電気刺激エネルギーを提供する。通常のエネルギー源は、パワー−オン−リセット(POR)能力を有する電源/POR回路126と結合する、高エネルギー密度の低電圧電池136である。電源/POR回路126は、1つ又は複数の低電圧電力(Vlo)、POR信号、1つ又は複数の基準電圧(VREF)源、電流源、選択交換インジケータ(ERI)信号、及び、カーディオバージョン/ディフィブリレーション能力の場合における治療送出システム106への高電圧電力(Vhi)を提供する。これらの電圧及び信号の従来の相互接続の全てが図2に示されているわけではない。
最新の電子多腔ペースメーカ回路機構は、通常、圧電結晶132及び圧電結晶132に結合したシステムクロック122によって提供されるクロック信号CLKを必要とするクロック駆動式CMOSデジタルロジックIC、並びに、1つ又は複数の基板すなわちプリント回路板にICと共に搭載されるディスクリート部品、たとえば、インダクタ、コンデンサ、変圧器、高電圧保護ダイオード等を採用する。図2では、システムクロック122によって生成される各CLK信号は、クロックツリーを介して全ての適用可能なクロック駆動式ロジックに送られる。システムクロック122は、システムタイミング及び制御機能のために、また、テレメトリI/O回路124におけるアップリンクテレメトリ信号伝送をフォーマットする時に、動作電池電圧範囲にわたって電池電圧と無関係である1つ又は複数の固定周波数CLK信号を提供する。
マイクロプロセッサベースの制御及びタイミングシステム102内に含まれるRAMレジスタは、ダウンリンクテレメトリ伝送による取り出し命令又は呼び掛け命令を受信するとすぐアップリンクテレメトリ伝送するために、検知されたEGM信号、壁運動信号から編集されたデータ、且つ/又は、デバイス動作履歴又は他の検知された生理的パラメータに関係するデータを記憶するのに使用されてもよい。データ記憶をトリガする基準は、ダウンリンクされる命令及びパラメータ値によってプログラムすることができる。中隔壁運動データを含む生理的データは、トリガに応じて、定期的に、又は、生理的入力信号処理回路108内の検出ロジックによって記憶されてもよい。場合によっては、IPG14は、磁界に応答して閉じる磁界感知スイッチ130を含み、閉じることによって、磁気スイッチ回路120が、磁石モードで応答する制御及びタイミングシステム102にスイッチ閉鎖(SC)信号を出す。たとえば、スイッチ130を閉じて、制御及びタイミングシステムが、治療を送出する、且つ/又は、生理的データを記憶するよう指示するように、皮下に埋め込まれたIPG14の上で適用することができる磁石116を患者が備えてもよい。事象関連データ、たとえば、日時及びその時のペーシングパラメータは、後の呼び掛けセッションにおけるアップリンクテレメトリのために、記憶される生理的データと共に記憶されてもよい。
アップリンクテレメトリ能力及びダウンリンクテレメトリ能力は、遠くに位置する外部医療デバイス、又は患者の体の表面又は体内で、より近位にある医療デバイスのいずれかとの通信を可能にするために設けられる。記憶されるEGM又は中隔壁運動データ、並びに、リアルタイムに生成される生理的データ及び非生理的データは、ダウンリンクテレメトリ送信された呼び掛けコマンドに応答して、アップリンクRFテレメトリによって、IPG14から外部プログラマ又は他の遠隔医療デバイス26に送信されることができる。したがって、アンテナ128は、アップリンク/ダウンリンクテレメトリ動作のために、無線周波数(RF)送受信機回路124に接続される。アンテナ128と、アンテナ118を同様に装備する外部デバイス26との間でアナログとデジタルの両方のデータをテレメトリ送信することは、埋め込み可能デバイスで使用するための当該技術分野で知られている多くの型のテレメトリシステムを使用して達成されてもよい。
生理的入力信号処理回路108は、増幅し、処理し、場合によっては、電気センス信号又はセンサ出力信号の特性から検知事象を検出する、少なくとも1つの電気信号増幅器回路を含む。そのため、生理的入力信号処理回路108は、心腔を基準にして位置するセンス電極からの心臓信号を検知し、処理するための複数の心臓信号センスチャネルを含んでもよい。こうしたそれぞれのチャネルは、通常、特定の心臓事象を検出するセンス増幅器回路、及び、サンプリングし、デジタル化し、記憶するか、又は、アップリンク伝送において送信するために、EGM信号を制御及びタイミングシステム102に提供するEGM増幅器回路を含む。心房及び心室センス増幅器は、それぞれ、P波又はR波の発生を検出するとともに、心房センス又は心室センス事象信号を制御及びタイミングシステム102に提供するための、信号処理段を含む。タイミング及び制御システム102は、特定の動作システムに従って応答して、ペーシング治療を送出するか、又は、適切である場合には、ペーシング治療を修正し、或いは、当該技術分野で知られている種々の方法でアップリンクテレメトリ伝送のためのデータを蓄積する。そのため、ペーシングパルス送出の必要性は、作動中の特定の動作モードに従って、EGM信号入力に基づいて決定される。ペーシングパルスが送出される間隔は、好ましくは、中隔壁運動データの評価に基づいて決定される。
したがって、入力信号処理回路108は、壁運動センサ信号を、受け取り、増幅し、フィルタリングし、平均化し、デジタル化し、又は、その他の方法で処理する信号処理回路機構をさらに含む。さらなる壁運動センサ11、60、たとえば、RV又はLV壁運動センサが、関連するリード線システムに含まれる場合、さらなる壁運動信号処理回路機構が、必要である場合に設けられてもよい。最大及び最小ピーク振幅、傾斜、積分、又は、壁運動の指数として使用することができるか、又は、血行力学的性能に関連する、他の時間又は周波数領域信号特性等の1つ又は複数の壁運動信号特性の検出及び/又は決定のための、壁運動信号処理回路機構がさらに設けられる。心室中隔壁運動センサ信号から決定された、こうした壁運動信号特性値は、最適な心室−中隔壁運動を生成するペーシング間隔を識別するために実施されるアルゴリズムにおいて使用するために、図2の心室−中隔運動信号線(「VS MOTION」で表す)を介して制御及びタイミングシステム102に利用可能にされる。心房壁運動センサが存在する場合、付加的な心房−中隔運動信号線(「AS MOTION」で表す)は、心房−中隔壁運動信号データを制御及びタイミングシステム102に提供する。
図3は、中隔壁運動を監視することに基づいて、心臓ペーシング間隔を最適化する方法の概要を提供するフローチャートである。方法200は、中隔壁運動を監視することによって、ステップ205にて始まる。好ましくは、壁運動センサは、上述したように、中隔自由壁内か、又は、自由壁に近接して埋め込まれる。
ステップ210にて、ペーシングモードが、心房−心室か、心房−2心室か、又は、2心房−2心室モードである場合に、最適なA−V間隔が決定される。使用される2腔又は多腔ペーシングシステムに応じて、右A−V間隔か、左A−V間隔か、その両方が決定されてもよい。図1Aに示す実施形態について、最適な右心房−右心室間隔が決定される。しかしながら、他の実施形態では、LVの最適な充満を確実にするために、中隔壁運動に基づいて、左心房−左心室間隔が最適化される。中隔壁運動に基づいて最適なA−V間隔を決定する方法は、図5に関連して述べられるであろう。ステップ215にて、A−V間隔は、ステップ210にて決定された最適A−V間隔に自動的に調整される。
ステップ220にて、2心室ペーシングモード又は心房−2心室ペーシングモードについて、最適なV−V間隔が決定される。中隔壁運動に基づいてV−V間隔を最適化する方法は、図6に関連して述べられるであろう。ステップ225にて、V−V間隔は、ステップ220にて決定された最適V−V間隔に自動的に調整される。V−V間隔を調整した後、A−V間隔を再び最適化するために、オプションのステップ230が実施されてもよい。新しく最適化されたV−V間隔における2心室ペーシング中に最適なA−V間隔を再決定することによって、以前に決定した最適なA−V間隔の検証が行われる。それに応じて、A−V間隔は、最適なV−V間隔におけるペーシング中に異なるA−V間隔が最適であると識別される場合、再調整されてもよい。
図4は、図3の方法200で使用するための、中隔運動に基づいて最適なA−V間隔を決定する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。方法300は、所望のペーシング間隔(たとえば、A−A、A−V、V−A、又はV−V間隔)を基準設定に設定することによって、ステップ305にて始まる。たとえば、後続の心周期中に加速度計信号を測定しながら、左右の心室が同時にペーシングされるよう、ゼロmsの基準V−V間隔設定が使用されてもよい。生理的に関連する間隔が最適化される限り、心房活動に関連する任意の間隔を、心室活動に関連する任意の間隔の前に最適化することができる。しかしながら、本発明は、そのように限定されるとみなされるべきではない。図4において、また、ステップ310にて示すように、A−V間隔の最適化が設定されてもよい。それに応じて、複数の所定の試験A−V間隔が、繰り返しプログラムされ、結果として得られる加速度計信号が測定され、収集され、比較される。
健全な房室伝導を有する患者において、試験されるA−V間隔は、内因性A−V間隔を含んでもよい。内因性A−V伝導を可能にするために、A−V間隔は、最大設定又は内因性A−V伝導時間より長い設定に設定される。内因性A−V伝導時間は、心房ペーシングパルスからその後検知されるR波までの間隔を測定することによって決定されてもよい。残りの試験A−V間隔は、内因性A−V間隔から徐々に減るように適用されてもよい。別法として、試験A−V間隔は、0ms〜内因性A−V間隔の範囲でランダムに適用されてもよい。房室伝導が健全でない場合、予め決めた範囲、たとえば、0ms〜約250msの範囲にわたって、試験A−V間隔のセットが選択されてもよい。
ステップ315にて、データ収集窓が設定される。壁運動センサがその上に位置決めされる中隔壁の加速度又は運動が測定されるように、中隔壁運動データは、好ましくは、心収縮期収縮中に収集される。しかしながら、中隔壁運動データは、等容性収縮相、駆出期相、等容性弛緩、早期拡張期充満、及び/又は末期拡張期充満中に、心機能を評価するか、又は、治療を最適化する時に使用するために取得されてもよい。データ収集窓は、送出される心室又は心房ペーシングパルス(内因性A−V伝導が、AVブロックの無い患者において試験される場合には検知されたR波)に続く一定時間間隔であってもよい。データ収集窓は、たとえば約30〜180msの持続期間を有する、心室ペーシングパルスの送出で始まる時間間隔として設定されてもよい。
ステップ320にて、所定の時間間隔中の各心周期にわたって、又は、所定数の心周期中にわたって、データ収集窓の間に、中隔壁運動信号がサンプリングされる。代替の一実施形態では、中隔壁運動信号は、所定の時間間隔又は所定数の心周期の間に連続して取得され、その後、収縮期収縮の最大加速段階に関連する成分を分離するために処理されてもよい。時間間隔又は心周期数は、好ましくは、呼吸による中隔壁運動測定の変動をなくすために、1呼吸周期にわたる中隔壁運動信号の平均が実施されるよう、少なくとも1呼吸周期にわたって延びてもよい。一実施形態では、壁運動データ取得の開始及び停止は、呼吸周期を検知することによってトリガされてもよい。呼吸は、インピーダンス測定又は当該技術分野で知られている他の方法に基づいて検出されてもよい。
決定ステップ325にて、データ取得間隔中の心拍数安定性の検証が実施される。異所性心拍動又は他の不規則性の存在等の心拍数不安定性は、変則的な中隔壁運動データを生成するであろう。したがって、心拍数は、指定された範囲内にとどまることが望ましい。一実施形態では、心拍数安定性は、データ取得期間中の心周期長の平均又は標準偏差を決定することによって検証される。心周期長は、心室ペーシングパルス及び任意の検知されたR波を含む連続する心室事象間の間隔として決定されてもよい。平均心周期長又はその標準偏差が所定の範囲からはずれる場合、データは信頼性がないと考えられる。データ取得は、現在の試験間隔設定について信頼性のあるデータが収集されるまで、ステップ315に戻ることによって繰り返すことができる。
ステップ330にて、呼吸関連ノイズ又は他のノイズの影響を最小にするために信号平均が実施される。データ収集間隔にわたって各心周期中に取得される信号は、全体の平均中隔壁運動信号を得るために平均される。ステップ340にて、中隔壁運動の測定値として、1つ又は複数の信号特徴部が平均した信号から決定され、対応する試験間隔情報と共にデバイスメモリに記憶される。好ましくは、加速度計信号の最大振幅、又は、本明細書で、「ピーク−ピーク差」とも呼ばれる、最大ピーク振幅と最小ピーク振幅の差として決定される最大可動域が、収縮期中の中隔壁セグメントの最大加速度の尺度として決定される。一実施形態では、等容性収縮中の加速度計信号の最大ピーク振幅又はピーク−ピーク差が、心機能のメトリックとして使用される。他の中隔壁運動信号の特徴部は、付加的に、又は、別法として、LVの機械的機能又は血行力学的相関物の指数として決定されてもよい。導出することができる他の中隔壁運動信号の特徴部は、傾斜、積分、周波数成分、或いは、他の時間又は周波数領域特性を含むが、それに限定されない。
全ての試験A−V間隔がまだ適用されていないと決定ステップ345にて判定される場合、方法300は、ステップ310に戻って、A−V間隔を次の試験設定に調整する。全ての試験A−V間隔が適用されると、ステップ350にて、記憶された中隔壁運動データから、最適なA−V間隔が識別される。
図5は、いろいろなA−V間隔における心房−2心室ペーシング並びに同時左右心室ペーシング(V−V間隔は0msに設定される)中の、加速度計信号出力を示す中隔壁(SW)運動を表すグラフである。A−V間隔が90msから200msへ増加するにつれて、最大中隔壁加速度及びピーク−ピーク加速度は、極小点又は参照点(又は、130msの「鞍点」)まで減少し、その後、再び増加する。一実施形態では、最適なA−V間隔は、A−V間隔に応じた中隔壁運動パラメータ(たとえば、加速度、速度、又は変位)をプロットすることによって見出される極小(参照点によって示す)に対応するA−V間隔として選択される。図5に示す例では、導出されるパラメータは、中隔壁組織の或る部分に結合する加速度計によって生成される加速度信号である。このパラメータ及び上述した基準に基づいて、最適なA−V間隔が130msであることが識別され得る。本発明によれば、最適なA−V間隔は、中隔壁の最小の運動に対応する間隔である。
方法300が外部ペーシングシステムによって実行される時、中隔壁運動データは、リアルタイムに表示されるか、又は、最適化プロシジャに続いて、記憶され、提示されてもよい。最適なA−V間隔を識別する方法300が、埋め込み式デバイスによって実行される時、表示及び医師による再調査のために後で外部デバイスへアップリンクするために、中隔壁運動データは記憶されてもよい。最適なA−V間隔を識別した後、A−V間隔設定は、上述した方法200に従って自動的に調整されてもよい。
図6は、図3の方法200で使用するための、左心室壁運動に基づいて最適なV−V間隔を決定する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。ステップ405にて、A−V間隔は、図3の方法300に従って決定された最適設定にプログラムされる。ステップ410にて、V−V間隔は、試験間隔に設定される。試験間隔の範囲は、予め決められており、ランダムに、全体が増加するように、又は、全体が減少するように送出されてもよい。試験間隔の範囲は、右心室が左心室の前にペーシングされることをもたらす間隔及び左心室が右心室の前にペーシングされることをもたらす間隔を含んでもよい。例示的な試験間隔のセットは、左心室ペーシングの前の20ms及び40msにおける右心室ペーシングと、同時左右心室ペーシング(V−V間隔は0msに設定される)と、右心室の前の20ms及び40msにおける左心室ペーシングとを含む。
方法400は、上述した最適なA−V間隔を決定する方法300と同じ方法で最適なV−V間隔を決定することに進む。ステップ415にてデータ収集窓が設定され、ステップ420にて、中隔壁運動データは、各心周期に適用されたデータ収集窓中の、所定の時間間隔又は所定数の心周期にわたって収集される。ステップ425にて安定した心拍数を検証した後に、ステップ430にて信号平均が実施され、ステップ435にて、平均ピーク振幅又は平均ピーク−ピーク差又は他の信号特性が決定されることが可能になる。全ての試験V−V間隔が適用されたと決定ステップ440にて判定される場合、ステップ445にて、最適なV−V間隔が識別される。
図7は、いろいろなV−V間隔(及び、図5に示すように、先に130msに最適化されたA−V間隔)における心房−2心室ペーシング中の、加速度計信号出力を示す中隔壁運動を表すグラフである。当該技術分野で知られているように、同時RV及びLVペーシングは、0msのV−V間隔において起こる。任意の規則によって、負のV−V間隔は、RVペーシング前のLVペーシングを示し、正のV−V間隔は、LVペーシング前のRVペーシングを示す。本発明によれば、最適なV−V間隔は、V−V間隔値の所定の範囲にわたって、最小ピーク振幅に基づいて、ピーク−ピーク差に基づいて、又は、加速度計信号の極小(又は、参照点)に基づいて、最小中隔壁運動(たとえば、加速度、速度、又は変位)を生成する間隔として選択される。示された例では、最適なV−V間隔は、最小中隔加速度に基づいて、負の20(−20)ms間隔として識別することができる(規則によれば、RVの前の20msにおいてペーシングされるLVを有するRV)。図7(又は図5)には示されないが、本発明は、もちろん、4腔ペーシングモダリティを含む種々の多腔ペーシングモダリティについてA−A間隔及びV−A間隔を最適化するのに使用されてもよい。
方法400が、外部ペーシングシステムによって実行される時、中隔壁運動データは、リアルタイムに表示されるか、又は、最適化プロシジャに続いて、記憶され、提示されてもよい。最適なV−V間隔を識別する方法400が、埋め込み式デバイスによって実行される時、中隔壁運動データは、表示及び医師による再調査のために後で外部デバイスへアップリンクするために、記憶されてもよい。最適なV−V間隔を識別した後、V−V間隔設定は、上述した方法200に従って自動的に調整されてもよい。
先に述べたように、V−V間隔を最適な設定に調整した後、A−V間隔が依然として最適であることを検証することが望まれる場合がある(ステップ230、図3)。A−V間隔を再び最適化するために、方法300は、上述したように実施され、V−V間隔は、基準設定ではなく、方法400によって識別された最適設定にプログラムされる。別のA−V間隔が最適であるとわかった場合、A−V間隔設定を適切に調整することができる。
上記方法による、中隔壁運動に基づくA−V間隔及びV−V間隔の最適化が、RV尖部等の他の壁セグメント運動の評価と共に実施されてもよいことが考えられる。特に、中隔壁運動の最適化によって、他の壁セグメント運動が低下していないことを検証することが望ましい場合がある。中隔壁運動に基づいて1つ又は複数のペーシング間隔を最適化し、RV尖部壁運動又は他の壁セグメントの運動に基づいて他のペーシング間隔を最適化することが望ましい場合もある。
図8は、側方壁運動に基づいて左心室機能を監視する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。先に示したように、左心室機能の評価は、診断と治療の両方のアプリケーションについて問題となる。すなわち、本発明の態様は、治療送出の最適化をすることなく、監視目的で採用されてもよいことが認識される。したがって、図8で要約された方法500は、検知された中隔壁運動信号から中隔壁運動パラメータを導出し、且つ記憶することによって心機能を監視する埋め込み可能デバイス又は外部デバイスで実施されてもよい。こうしたデバイスの治療送出機能は、選択的に使用不能にされてもよく、又は、使用可能にされる場合、中隔壁運動に基づく心臓ペーシング間隔の最適化が、選択的に使用可能にされるか、又は、使用不能にされてもよい。方法500は、別法として、治療送出能力を含まないデバイスであって、壁運動センサを装備したRAリード線又はRVリード線と連携して、中隔壁運動データを処理し、記憶することが可能な内部デバイス又は外部デバイスで実施されてもよい。
中隔壁運動は、連続して、周期的に、又は、トリガごとに、心周期の選択された相の間に検知されることができ、壁運動信号特性は、それぞれの所定の時間間隔、或いは、それぞれの所定数の心周期又は呼吸周期後に、決定され、記憶される。たとえば、心機能は、毎時間、毎日、毎週、又はその他の頻度で等、周期的に評価されてもよい。付加的に、又は、別法として、心機能は、手動トリガ又は自動トリガであってもよいトリガごとに評価されてもよい。自動トリガは、特定の心拍数範囲、活動、又は他の条件等の、心機能評価がその間にあるのが望まれる所定の条件が検出されると、起こるように設計されることができる。
一実施形態では、中隔壁運動は、連続して監視され、中隔壁運動データの記憶は、限定はしないが、心拍数、活動、又は中隔壁運動に関連する条件等の、所定のデータ記憶条件が検出されるとトリガされる。たとえば、中隔壁運動は、連続して検知されてもよく、中隔壁運動パラメータが閾値を交差するか、又は、他の所定のデータ記憶基準を満たす場合に、中隔壁運動パラメータ(複数可)が記憶される。
中隔壁運動検知及び/又はデータ記憶のための手動トリガは、たとえば、患者が徴候を感じる時に、臨床医又は患者によって送出されてもよい。埋め込み可能デバイスにおいて生理的データの記憶を手動でトリガする方法は、Klein他に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,987,352号に全体が記載される。
方法500は、たった今述べたように、連続した、周期的な、自動的にトリガされた、且つ/又は、手動でトリガされた監視であってもよい、監視デバイスの動作モードに従って、中隔壁運動検知が使用可能にされる時にステップ501にて始まる。ステップ505にて、先に述べたように、中隔壁運動データ収集窓が設定される。ステップ510にて、中隔壁運動データは、所定の時間間隔、或いは、所定数の心周期又は呼吸周期にわたって取得される。ステップ515にて、心拍数の安定性が、先に述べたように検証される。ステップ520にて、収集される心周期の数にわたって壁運動信号が平均され、呼吸ノイズ又は他のノイズが最小化される。ステップ525にて、平均された信号の特性が決定され、心機能の指示として記憶される。他の生理的データ又はパラメータデータは、心拍数、日付と時刻、ペーシングモダリティとパラメータ、及び/又は、患者の活動、血圧等のような、監視デバイスによって検知することができる任意の他の生理的データ等の心機能データと共に記憶されてもよい。
運動信号は、当該技術分野で知られている種々の方法で処理することができる。たとえば、信号は、フィルタリングされ、整流され、数学的に積分される(又は、導出される)等であってもよい。中隔加速度信号をフィルタリングすることに関して、約5〜約100Hzのバンドパスフィルタは、ピークがそこから容易に抜き取られる比較的明瞭な信号を提供する。加速度計信号の最初の積分は速度信号を生じ、2回目の積分はセンサの変位の信号を生じる。そのため、本発明によれば、加速度、速度、及び/又は変位測定値のそれぞれの1つ又は別々の対が、最適なペーシング間隔を決定するのに使用されてもよい。たとえば、非常に短い持続期間の比較的高い加速度信号は、比較的長い持続期間の少し低いマグニチュードの加速度信号に比べて、全体の中隔「運動」をあまり指示しない可能性がある。
そのため、本発明の一実施形態は、中隔壁組織に結合するようになされた加速度計から、数学的に積分された中隔壁組織の変位メトリックを利用する。この実施形態によれば、問題となるペーシング間隔は、或る値域にわたって変動され(slewed)、得られた加速度信号の2回目の数学的積分の全ての個々の値は、上記値域の所与の1つの値によって生成される最小変位を識別するために比較される。その後、この最小変位値は、心臓ペーシング治療の送出中に使用するためにプログラムされる。
選択された最小値を検証するクロスチェックプロセスは、変位がそこから得られた加速度信号の比較を含む。基礎になる加速度信号の選択された1つの信号が、マグニチュードが大きく、持続期間が短く、一方、別の信号が、選択された1つの信号に対してマグニチュードが近いが、持続期間がずっと長い場合、クロスチェック処理技法が設定されて、好ましい値が表される可能性がある。こうした技法は、第1、第2、及び第3信号に対する優先順位付けが使用されるようにプログラム可能である。本発明のこの実施形態の一形態では、変位は、第1の最も重く重み付けされた信号であり、加速度は、第2の重みの信号であり、速度は、第3の重みの信号であることになる。本発明は、3つの信号のそれぞれの代替の形態を包含することを意図される。
たった今述べたクロスチェックプロセスに密接に関連する本発明の一態様は、付加的な変換器によって選択されたペーシング間隔(複数可)を確認することに関する。たとえば、圧力センサ又は流量センサ又は心臓活動を検知するために結合された他の機械的ベースの変換器は、(加速度、速度、及び変位のうちの1つ又は複数に基づいて)本発明による最適化されたペーシング間隔を確認するのに使用することができる。
本発明の方法が、埋め込み可能デバイスで実施される時、アップリンクテレメトリによって外部デバイスに対して利用可能な記憶されたデータは、表示され、且つ/又は、医師によって再調査されることができる。こうした方法が、外部デバイスで実施される時、心機能データの表示は、中隔壁運動信号特性が決定されるたびに更新されてもよい。
こうして、中隔壁運動を監視するとともに、加速度センサを装備した医療電気リード線を使用して測定された最小中隔壁加速度に基づいて心臓治療を最適化する方法及び装置が述べられた。本明細書に述べる方法は、有利には、埋め込み可能デバイス又は外部デバイスに関連する、長期継続的又は短期的なアプリケーションを含む多くの心臓監視モダリティ又は治療モダリティで適用されてもよい。
当該技術分野で知られているように、先に述べた変換器以外に、他の型の変換器が使用されてもよい。ただし、一般に、変換器が密封され、実質的に生体適合材料で(少なくとも外側表面に関して)作製され、所与のアプリケーションのために適切な大きさに作られている場合に限られる。適切な寸法に関して、経皮的配置を意図された変換器は、カテーテル又はオーバザワイヤ(over-the-wire)送出が可能であるべきである。そのため、半径方向寸法は、約11フレンチ未満、好ましくは、約8フレンチ未満台であるべきである。同様に、変換器は、安全に、静脈系を進行し、冠状静脈洞を通過し、冠状静脈洞から分岐する血管(たとえば、大心臓静脈等)に入ることができるように、或る程度柔軟であるが、長手方向寸法が長過ぎてはならない。これらの寸法は、壁組織に機械的に結合されるようになっている固着機構によって、胸部の或る部分を通して(たとえば、開胸術)配置されることを意図される変換器については緩和することができる。
センサ及び変換器に関連する技術分野で同様に知られているように、加速度計は、2つの変換器、すなわち、1次変換器(加速度を変位に変換する、通常、単一自由度振動質量)、及び(サイズモ質量の)変位を電気信号に変換する2次変換器として述べることができる。ほとんどの加速度計は、2次変換器として圧電素子を使用する。圧電デバイスは、ひずみを受けると、ひずみに比例する電圧を出力するが、圧電素子は、静的(たとえば、一定加速度)状態下では信号を提供することができない。加速度計の重要な特性は、加速度の範囲、周波数応答、横方向感度(すなわち、非作動方向の運動に対する感度)、取り付け誤差、温度及び音響ノイズ感度、及び質量を含む。
加速度計の内部機構を述べる、1つの型の1次変換器は、ばね保持されたサイズモ質量を含む。ほとんどの加速度計では、加速度は、ばねで保持された減衰式サイズモ質量を、サイズモ質量が単一軸に沿ってケーシングを基準にして移動するようにする。2次変換器は、その後、サイズモ質量に関連する変位及び/又は力に応答する。質量の変位及びばねの伸張は、発振が自然周波数より小さい時のみ加速度に比例する。別の加速度計の型は、1次変換器として、ばね−質量−ダシュポットとしてモデル化することができる2重片持ち梁を使用するが、サイズモ質量1次変換器のみについて説明する。
電気信号が機械的変位から生成される方法を述べる2次変換器の種別には、圧電型、電位差型、磁気抵抗型(reluctive)、サーボ型、ストレンゲージ型、容量型、振動素子型等を含む。初心者への紹介として、これらを簡単に説明する。
圧電型変換器は、しばしば、振動検知加速度計で使用され、時々、ショック検知デバイスで使用される。圧電結晶(たとえば、しばしば、石英又はセラミック)は、或る加速度下でサイズモ質量によって力が加えられると電荷を生成する。結晶に対する正又は負の加わった力の変化が電荷の変化をもたらすように、石英板(2つ以上)がプレロードされる。圧電加速度計の感度は、他の型の加速度計と比較して低いが、圧電加速度計は、最も高い範囲(100,000gまで)と周波数応答(20kHzを超える)を有する。
電位差型加速度計は、電位差計に沿って運動するワイパアームに機械的に連結したばね−質量系の変位を利用する。質量系は、気体、粘性、磁性流体、又は磁気減衰を使用することによって、ワイパアームの接触抵抗によって生じる音響ノイズを最小にすることができる。電位差型加速度計は、通常、ばねの剛性に応じて、ゼロから20〜60Hzの周波数範囲を有し、高レベルの出力信号を有する。電位差型加速度計はまた、ほとんどの他の加速度計より低い周波数応答、通常、15〜30Hzを有する。
磁気抵抗型加速度計は、サイズモ質量の運動に比例する出力電圧を生成する、線形可変差動変換器のブリッジと同じインダクタンスブリッジを使用する。インダクタンスブリッジ加速度計におけるサイズモ質量の変位によって、2つのコイルのインダクタンスが反対方向に変わる。コイルは、インダクタンスブリッジの2つのアームの役目を果たし、抵抗器は他の2つのアームの役目を果たす。ブリッジのAC出力電圧は、印加された加速度と共に変わる。AC信号をDCに変換するのに、復調器を使用することができる。AC信号の周波数が、加速度の周波数よりかなり大きい限りにおいて、DC電源が使用される時、必要とされるAC電流を生成するのに、発振器を使用することができる。
サーボ型加速度計では、加速度によって、サイズモ質量「振り子」が運動する。位置検知デバイスによって運動が検出されると、閉ループサーボ系の誤差信号の役目を果たす信号が生成される。信号が復調され、定常状態成分を除去するために増幅された後、信号は、受動減衰網を通過し、質量の回転軸に位置するトルクコイルに印加される。トルクコイルによって生じるトルクは、印加された電流に比例し、加速度によってサイズモ質量に作用するトルクに反対に働き、質量のさらなる運動を妨げる。したがって、トルクコイルを流れる電流は、加速度に比例する。このデバイスはまた、サイズモ質量が平衡している限り、角加速度を測定するのに使用することができる。サーボ型加速度計は、比較的高いコストで高い精度と高いレベルの出力を提供し、非常に低い測定範囲(1gよりかなり下)について使用することができる。
「圧電抵抗型」加速度計と呼ばれることが多い、ストレンゲージ型加速度計は、機械的ひずみをDC出力電圧に変換するホイートストンブリッジのアームの役目を果たすストレンゲージを利用する。ゲージは、ばねに取り付けられるか、或いは、サイズモ質量と固定フレームとの間に取り付けられる。ストレンゲージ巻線は、ばね作用に寄与し、応力(すなわち、張力が2つ、圧縮が2つ)が加えられ、ブリッジの4つのアームによって、加えた加速度に比例するDC出力電圧が生じる。
これらの加速度計は、半導体ゲージ及びより剛性のあるばねの使用によって、感度を高めることができ、より高い周波数応答及び出力信号振幅をもたらす。他の型の加速度計と違って、ストレンゲージ型加速度計は、定常状態の加速度に応答する。
容量型加速度計では、加速度の変化によって、容量型加速度計の移動電極と固定電極間の空間の変化をもたらす。移動電極は、通常、ダイアフラムで支持されたサイズモ質量か、又は、湾曲部で支持された円板形状サイズモ質量である。素子は、発振回路のLC部分又はRC部分のコンデンサの役目を果たすことができる。結果として得られる出力周波数は、加えた加速度に比例する。
振動素子型加速度計では、サイズモ質量の非常に小さな変位が、永久磁界内でタングステンワイヤの張力を変える。磁界の存在下でワイヤに流れる電流によって、ワイヤがその共振周波数で振動する(ギター弦のように)。回路機構は、その後、加えた加速度に比例する周波数変調(中心周波数からの偏差)を出力する。こうしたデバイスの精度は高いが、デバイスは、温度変動にかなり敏感であり、比較的費用がかかる。
そのため、本発明は、本明細書において、特定の実施形態の状況で述べられたが、これらの実施形態の多くの変形が、本発明の範囲から逸脱することなく採用されてもよいことが認識されることを、当業者は認識するであろう。そのため、本明細書で提供される説明は、添付の特許請求の範囲に関して、例示的であり、制限的でないことが意図される。たとえば、本発明による方法は、プログラム可能なIPG又はICDによって自動的に実施されてもよいし、又は、臨床環境で短期的に実施されてもよい。方法は、本質的に、マイクロプロセッサ制御式装置による実施態様が可能であり、したがって、コンピュータ読み取り可能媒体等に記憶される実行可能命令を含んでもよい。本明細書に開示される運動センサ11、60の使用に加えて、当該運動センサ11、60は、不整脈検出、心臓の任意のペーシングされた腔についての捕捉検出、及び/又は、患者についての活動信号を導出することによるIPG又はICDに対するレート応答能力の提供に使用されてもよい。
本発明の一形態では、CRT又は他の心不全ペーシング治療が提供されない期間(たとえば、AAI、ADI、AAI/R、ADI/R等のような心房ベースのペーシング治療療法の送出の期間、ただし、A−V伝導の喪失等の場合にバックアップモード切り換えを含む)に、中隔壁運動に関する長期傾向情報が導出されてもよい。結果として、こうした治療の可能性としての治癒的効果を測定することができる。本発明のこの形態の1つの例は、中隔壁運動の機械的に導出された態様を利用して、以前に心不全を起こした心臓(たとえば、拡張型心筋症の患者)のリバースモデリングが、CRTが止まるか、又は、CRTが周期的にだけ適用されるレベルに達したかどうか判定する。本発明のこの形態の1つの利点は、CRTペーシングエンジンのデューティサイクルの低減(たとえば、3腔ペーシング療法から単腔、又は2腔ペーシング療法への)のみに関する。本発明のこの形態によれば、CRT又は他の2心室ペーシングが送出されていない時ごとに、中隔壁データが収集され、記憶される。その後、中隔運動の過去の傾向が、現在の中隔壁運動活動と比較されて、リバースリモデリングの肯定的な効果が発生しているか否かについての指示が導出される。本発明のこの実施形態の非常に単純な形態では、2心室ペーシング治療が、周期的に、心房ベースのペーシング治療に切り換えられ、中隔の自然な、又は、内因性の壁運動が測定される。当該壁運動が、プリセットされた閾値を超える場合、2心室治療が再び適用される。閾値を超えない場合、2心室治療は、非協調的心室運動が再び検出される時まで終了することができる。
不整脈検出の場合、心房粗動/細動(AF)及び心室細動(VF)は、運動センサ11、60からの出力についての手作業の検査又は機械的な検査によって容易に区別できる。同様に、捕捉検出の場合、本発明による運動センサ11、60からの出力は、ペーシング治療の送出が誘発反応を可能にするかどうかを確認する信頼性のある手段を提供する。すなわち、心臓の腔に対するペーシング治療の送出に続く非常に短い期間内(たとえば、約5〜50ms以内)に、運動センサ11、60からの出力信号は、誘発された脱分極波面がセンサ11、60を通過する時か、心筋細胞の実際の物理的収縮が起こる時のいずれかに、対応する変位(deflection)を提供するであろう。この点において、同一腔及び相互腔(cross-chamber)捕捉検出は、ペーシング治療からの適切な量のエネルギーが、心臓の腔に送出されているかどうかを、容易に、且つ、正確に反映する。したがって、本発明は、ペーシング(エネルギー)閾値試験を可能とし、おそらくは、より直接的に、心房と心室の両方ついて、ペーシング治療の送出と、心周期の不応部分/非不応部分の間のそれぞれの時間的配置を可能にする。本発明と共に使用可能な運動センサ11、60は、たとえペーシング(又は、カーディオバージョン/ディフィブリレーション)電極と同じ場所に配置されても、連続して運動信号を提供する。そのため、本発明のこの態様は、CRTを最適化する、すなわち、種々のペーシングモードにおいて有害な中隔壁運動を最小にしながらポンピング効率を最大にするために、中隔壁運動が閾値より低下する場合にCRT(又は、他の2心室ペーシング治療)の送出を停止する他のモダリティに比べて利益を提供する。