JP2007333083A - 車輪用軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決した車輪用軸受装置装置を提供する。
【解決手段】複列の円錐ころ軸受で構成される第3世代構造の車輪用軸受装置において、インナー側の円錐ころ4のピッチ円直径PCDiがアウター側の円錐ころ3のピッチ円直径PCDoよりも小径に設定され、ハブ輪5のアウター側の端部にすり鉢状の凹所15が形成され、この深さがハブ輪5の内側転走面5aの溝底部を越えて軸状部8付近とされて内側転走面5aの肉厚が所定の範囲に設定されると共に、ハブ輪5aの軸状部8と内輪6が突き合わされる肩部8aとの間の角部Aが、所定の円弧面を有し、その繋ぎ部が滑らかに形成されているので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決すると共に、組立時等における円錐ころ3の傷の発生を防止し、長寿命化を図ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車等の車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、軽量・コンパクト化を図ると共に、剛性を増大させて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置に関するものである。
従来から自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪を取り付けるためのハブ輪を転がり軸受を介して回転自在に支承するもので、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転方式が、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両方式が一般的に採用されている。この車輪用軸受装置には、所望の軸受剛性を有し、ミスアライメントに対しても耐久性を発揮すると共に、燃費向上の観点から回転トルクが小さい複列アンギュラ玉軸受が多用されている。一方、オフロードカーやトラック等、車体重量が嵩む車両には複列円錐ころ軸受が使用されている。
また、車輪用軸受装置には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受等からなる車輪用軸受を嵌合させた第1世代と称される構造から、外方部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第2世代構造、また、ハブ輪の外周に一方の内側転走面が直接形成された第3世代構造、あるいは、ハブ輪と等速自在継手の外側継手部材の外周にそれぞれ内側転走面が直接形成された第4世代構造とに大別されている。
こうした車輪用軸受装置において、従来は両列の軸受が同一仕様のため、静止時には充分な剛性を有するが、車両の旋回時には必ずしも最適な剛性が得られていない。すなわち、静止時の車重は複列の転がり軸受の略中央に作用するように車輪との位置関係が決められているが、旋回時には、旋回方向の反対側(右旋回の場合は車両の左側)の車軸により大きなラジアル荷重やアキシアル荷重が負荷される。したがって、旋回時には、インナー側の軸受列よりもアウター側の軸受列の剛性を高めることが有効とされている。そこで、装置を大型化させることなく旋回時の剛性を向上させた車輪用軸受装置として、図6に示すものが知られている。
この車輪用軸受装置50は、外周にナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ51cを一体に有し、内周に複列の外側転走面51a、51bが形成された外方部材51と、一端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ53を一体に有し、外周に複列の外側転走面51a、51bに対向する一方の内側転走面52aと、この内側転走面52aから軸方向に延びる小径段部52bが形成されたハブ輪52、およびこのハブ輪52の小径段部52bに外嵌され、複列の外側転走面51a、51bに対向する他方の内側転走面54aが形成された内輪54からなる内方部材55と、これら両転走面間に収容された複列のボール56、57と、これら複列のボール56、57を転動自在に保持する保持器58、59とを備えた複列アンギュラ玉軸受で構成されている。
内輪54は、ハブ輪52の小径段部52bを径方向外方に塑性変形させて形成した加締部52cによって軸方向に固定されている。そして、外方部材51と内方部材55との間に形成される環状空間の開口部にシール60、61が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
ここで、アウター側のボール56のピッチ円直径D1が、インナー側のボール57のピッチ円直径D2よりも大径に設定されている。これに伴い、ハブ輪52の内側転走面52aが内輪54の内側転走面54aよりも拡径され、あわせて外方部材51のアウター側の外側転走面51aがインナー側の外側転走面51bよりも拡径されている。そして、アウター側のボール56がインナー側のボール57よりも多数収容されている。このように、各ピッチ円直径D1、D2をD1>D2に設定することにより、車両の静止時だけでなく旋回時においても剛性が向上し、車輪用軸受装置50の長寿命化を図ることができる。
特開2004−108449号公報
こうした従来の車輪用軸受装置50では、アウター側のボール56のピッチ円直径D1がインナー側のボール57のピッチ円直径D2よりも大径に設定され、これに伴い、ハブ輪52の内側転走面52aが内輪54の内側転走面54aよりも拡径されていることによりアウター側の軸受列の剛性が向上し、車輪用軸受装置50の長寿命化を図ることができる。然しながら、アウター側の軸受列の剛性に対し、インナー側の軸受列の剛性が不足すると共に、ハブ輪52のアウター側が拡径されて形成されているため、少なくともこの拡径分の重量アップは避けることができず、装置の軽量化には限界があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決した車輪用軸受装置を提供することを目的としている。
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸状部を介して軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の円錐ころとを備えた車輪用軸受装置において、前記複列の円錐ころにおけるインナー側の円錐ころのピッチ円直径がアウター側の円錐ころのピッチ円直径よりも小径に設定されると共に、前記ハブ輪の外周面の角部が所定の円弧面を有し、その繋ぎ部が滑らかに形成されている。
このように、外周に車体取付フランジを有する外方部材と、一端部に車輪取付フランジを有するハブ輪、およびこのハブ輪に圧入された内輪からなる内方部材と、この内方部材と外方部材間に収容された複列の円錐ころとを備えた第3世代構造の車輪用軸受装置において、複列の円錐ころにおけるインナー側の円錐ころのピッチ円直径がアウター側の円錐ころのピッチ円直径よりも小径に設定されると共に、ハブ輪の外周面の角部が所定の円弧面を有し、その繋ぎ部が滑らかに形成されているので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決すると共に、組立時等における円錐ころの傷の発生を防止し、長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記ハブ輪のアウター側の端部にすり鉢状の凹所が形成され、この凹所の深さが前記ハブ輪の内側転走面の溝底部を越えて前記軸状部付近とされ、前記内側転走面の肉厚が所定の範囲に設定されていれば、使用条件に対応したハブ輪の強度・剛性を確保しつつ、軽量化を達成することができる。
また、請求項3に記載の発明のように、前記ハブ輪の内側転走面の大径側に前記円錐ころを案内する大鍔が形成されておらず、この大鍔が前記外方部材の外側転走面の大径側に設けられていれば、円錐ころを介して負荷される荷重に対してハブ輪への応力集中が緩和され、車輪取付フランジに大きなモーメント荷重が負荷されてもハブ輪に疲労が生じ難く、強度・耐久性を確保することができる。また、車輪取付フランジの基部となるシールランド部と内側転走面とを総型砥石によって同時に研削加工ができて滑らかに繋げることができ、ハブ輪の加工性が向上すると共に、重量アップを一層抑えることができる。
また、請求項4に記載の発明のように、前記インナー側の円錐ころの直径がアウター側の円錐ころの直径よりも小さく設定されていれば、ナックルサイズを小さくでき、装置の軽量・コンパクト化を図ると共に、各転動体列の基本定格荷重を増大させることができる。
また、請求項5に記載の発明のように、前記角部が熱処理後に総型砥石によって前記内側転走面と同時研削により形成されていれば、繋ぎ部を一層滑らかに形成することができる。
本発明に係る車輪用軸受装置は、外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸状部を介して軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の円錐ころとを備えた車輪用軸受装置において、前記複列の円錐ころにおけるインナー側の円錐ころのピッチ円直径がアウター側の円錐ころのピッチ円直径よりも小径に設定されると共に、前記ハブ輪の外周面の角部が所定の円弧面を有し、その繋ぎ部が滑らかに形成されているので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決すると共に、組立時等における円錐ころの傷の発生を防止し、長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸状部を介して軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の円錐ころとを備え、前記ハブ輪の内側転走面をはじめ、前記車輪取付フランジのインナー側の基部から前記小径段部に亙って高周波焼入れによって所定の硬化層が形成されると共に、前記ハブ輪の小径段部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部によって前記内輪が軸方向に固定された車輪用軸受装置において、前記複列の円錐ころにおけるインナー側の円錐ころのピッチ円直径がアウター側の円錐ころのピッチ円直径よりも小径に設定され、前記ハブ輪のアウター側の端部にすり鉢状の凹所が形成され、この凹所の深さが前記ハブ輪の内側転走面の溝底部を越えて前記軸状部付近とされて前記内側転走面の肉厚が所定の範囲に設定されると共に、前記ハブ輪の軸状部と前記内輪が突き合わされる肩部との間の角部が、所定の円弧面を有し、その繋ぎ部が滑らかに形成されている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)の要部拡大図、図2(a)、(b)は、図1のハブ輪の研削方法を示す説明図、図3は、図1のハブ輪の組立状態を示す説明図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図面左側)、中央寄り側をインナー側(図面右側)という。
この車輪用軸受装置は第3世代と呼称される従動輪用であって、内方部材1と外方部材2、および両部材1、2間に転動自在に収容された複列円錐ころ3、4を備えている。内方部材1は、ハブ輪5と、このハブ輪5に所定のシメシロを介して圧入された内輪6とからなる。
ハブ輪5は、一端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ7を一体に有し、外周に一方(アウター側)のテーパ状の内側転走面5aと、この内側転走面5aから軸方向に延びる軸状部8を介して小径段部5bが形成されている。ハブ輪5における内側転走面5aの大径側には円錐ころ3を案内する大鍔が形成されておらず、後述する外方部材2に大鍔14が設けられている。さらに、内側転走面5aの小径側には円錐ころ3を保持するための小鍔は形成されておらず、内側転走面5aの小径側からストレートに軸方向に延びる軸状部8が形成されている。
また、ハブ輪5の車輪取付フランジ7にはハブボルト7aが周方向等配に植設されると共に、これらハブボルト7a間には円孔7bが形成されている。この円孔7bは軽量化に寄与できるだけでなく、装置の組立・分解工程において、レンチ等の締結治具をこの円孔7bから挿入することができ作業を簡便化することができる。
内輪6は、外周に他方(インナー側)のテーパ状の内側転走面6aが形成され、この内側転走面6aの大径側に円錐ころ4を案内するための大鍔6bと、小径側に円錐ころ4の脱落を防止するための小鍔6cがそれぞれ形成されている。そして、この内輪6はハブ輪5の小径段部5bに所定のシメシロを介して圧入されると共に、この小径段部5bの端部を塑性変形させて形成した加締部9によって所定の軸受予圧が付与された状態で軸方向に固定されている。これにより、軽量・コンパクト化を図ると共に、初期に設定した予圧を長期間に亘って維持するセルフリテイン構造を提供することができる。
外方部材2は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ2cを一体に有し、内周にハブ輪5の内側転走面5aに対向するアウター側のテーパ状の外側転走面2aと、内輪6の内側転走面6aに対向するインナー側のテーパ状の外側転走面2bが一体に形成されている。本実施形態では、アウター側の円錐ころ3を案内する大鍔14が外方部材2に設けられている。すなわち、外方部材2におけるアウター側の外側転走面2aの大径側に円錐ころ3の大端面に当接してこの円錐ころ3を案内する大鍔14が一体に設けられている。これにより、円錐ころ3を介して負荷される荷重に対してハブ輪5への応力集中が緩和され、車輪取付フランジ7に大きなモーメント荷重が負荷されてもハブ輪5に疲労が生じ難く、強度・耐久性を確保することができる。
外方部材2はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、大鍔14および複列の外側転走面2a、2bが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。そして、両転走面2a、5aおよび2b、6a間に保持器10、11を介して複列の円錐ころ3、4が転動自在にそれぞれ収容されている。また、外方部材2と内方部材1との間に形成された環状空間の開口部にはシール12および磁気エンコーダ13が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
本実施形態は、インナー側の円錐ころ4のピッチ円直径PCDiがアウター側の円錐ころ3のピッチ円直径PCDoよりも小径に設定されると共に、インナー側の円錐ころ4の直径がアウター側の円錐ころ3の直径よりも小さく設定されている。これにより、外方部材2におけるインナー側の外径Dを小径に設定することができる。このように、複列の転動体として円錐ころ3、4を使用し、アウター側とインナー側の円錐ころ3、4のピッチ円直径およびの直径を異ならせることによりナックルサイズを小さくでき、装置の軽量・コンパクト化を図ると共に、各転動体列の基本定格荷重を増大させ、また、転動体列部分の剛性を高くすることができる。
ハブ輪5の軸状部8と内輪6が突き合わされる肩部8aとの間の段部に段付部8bが形成されている。そして、ハブ輪5のアウター側端部にすり鉢状の凹所15が鍛造加工によって形成されている。この凹所15の深さは、内側転走面5aの溝底部から軸状部8を越えて段付部8b付近までとされ、ハブ輪5のアウター側端部が略均一な肉厚に形成されている。
また、ハブ輪5はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、アウター側のシール12が摺接する車輪取付フランジ7のインナー側の基部7cから内側転走面5a、軸状部8を介して小径段部5bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、加締部9は鍛造加工後の表面硬さのままとされている。これにより、車輪取付フランジ7に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、内輪6の嵌合部となる小径段部5bの耐フレッティング性が向上すると共に、加締加工時に微小なクラック等の発生がなく加締部9の塑性加工をスムーズに行うことができる。なお、内輪6および円錐ころ3、4はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
車両の走行中、車輪取付フランジ7にモーメント荷重が負荷された場合、アウター側の内側転走面5aを起点としてハブ輪5が変形すると考えられるため、本実施形態では、この内側転走面5aよりもアウター側の肉厚に着目した。すなわち、内側転走面5aの大径側の肉厚t1が、内側転走面5aの中央部の肉厚t2よりも厚く形成されている。また、ハブ輪5の剛性をFEM解析により求めた結果、これらの肉厚t1、t2と、それぞれの部位の直径d1、d2との関係が0.2≦t1/d1≦0.3、および0.2≦t2/d2≦0.3の範囲になるように設定されている。何故なら、内側転走面5aにおける大径側の肉厚t1および中央部の肉厚t2が、それぞれの部位の直径d1、d2の20%未満になると変形が大きくなり所望の剛性が得られない。一方、30%を超えて厚肉に形成しても余り剛性の増加が認められず、反って重量アップを招来して好ましくないからである。これにより、高周波焼入れによる焼割れを防止すると共に、使用条件に対応したハブ輪5の強度・剛性を確保しつつ、軽量化を達成することができる。
ここで、本実施形態では、軸状部8と段付部8bとの角部Aは、図1(b)に拡大して示すように、円弧面を有する滑らかな面取り部として形成されている。すなわち、面取りの軸方向寸法Laおよび径方向寸法Lrが0.5〜5mm、そして、角アールRが1.0〜10Rに設定されて各繋ぎ部が滑らかに形成されている。
図2は、ハブ輪5の研削方法を示す説明図であるが、(a)に示すように、熱処理後、軸状部8の角部Aは総型砥石16によって円弧状の基部7cおよび内側転走面5aと同時に研削加工されても良いし、また、(b)に示すように、角部Aはバイト等によって切削され、その後、基部7cと内側転走面5aのみが総型砥石17によって同時に研削加工されても良い。この場合、角部Aの表面粗さは6.3Ra以下に規制されるのが好ましい。ここで、Raは、JISの粗さ形状パラメータの一つで(JIS B0601−1994)、算術平均粗さのことで、平均線から絶対値偏差の平均値を言う。これにより、ハブ輪5の組立時に角部Aが円錐ころ3に接触してもこの円錐ころ3に傷が生じるのを抑制することができ、ころ傷による異音の発生あるいはころ傷を起点とした短寿命を防止することができる。
図3は、ハブ輪5の組立状態を示しているが、本実施形態における車輪用軸受装置では、アウター側の円錐ころ3を案内する大鍔14が外方部材2に形成されているため、予め外方部材2にシール12と、保持器10に保持された円錐ころ3が組み込まれた後、ハブ輪5を矢印に示すように外方部材2に内挿して組み立てる方法が採用される。この時、少なくとも径方向上部に位置する円錐ころ3は自重にて垂れ下がった状態で保持されているため、角部Aが円錐ころ3に接触しながらハブ輪5が組み立てられることになる。本実施形態では、角部Aが円弧面を有する滑らかな面取り部として形成されているため、角部Aが円錐ころ3に接触し、角部Aの表面が円錐ころ3に転写することになっても円錐ころ3に重大な傷を発生させることはない。
こうした構成の車輪用軸受装置では、ハブ輪5のアウター側端部が略均一な肉厚に形成され、内側転走面5a部分の肉厚t1、t2が所定の範囲に設定されると共に、ハブ輪5の角部Aが滑らかな面取り部として形成されているので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を同時に解決すると共に、組立時における円錐ころ3の傷の発生を防止し、長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
図4は、本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図、図5(a)、(b)は、図4のハブ輪の角部を示す要部拡大図である。なお、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
この車輪用軸受装置は第3世代と呼称される従動輪用であって、内方部材18と外方部材19、および両部材18、19間に転動自在に収容された複列円錐ころ3、4を備えている。内方部材18は、ハブ輪20と、このハブ輪20に所定のシメシロを介して圧入された内輪6とからなる。
ハブ輪20は、外周に一方(アウター側)のテーパ状の内側転走面20aと、この内側転走面20aから軸方向に延びる軸状部8を介して小径段部5bが形成されている。ハブ輪20における内側転走面20aの大径側に円錐ころ3の大径端部に接触して円錐ころ3を案内する大鍔20bが形成されている。なお、内側転走面20aの小径側には円錐ころ3を保持するための小鍔は形成されておらず、内側転走面20aの小径側からストレートに軸方向に延びる軸状部8が形成されている。
外方部材19は、内周にハブ輪20の内側転走面20aに対向するアウター側のテーパ状の外側転走面19aと、内輪6の内側転走面6aに対向するインナー側のテーパ状の外側転走面2bが一体に形成されている。外方部材19はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、複列の外側転走面19a、2bが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
本実施形態は、前述した実施形態と同様、インナー側の円錐ころ4のピッチ円直径PCDiがアウター側の円錐ころ3のピッチ円直径PCDoよりも小径に設定されると共に、インナー側の円錐ころ4の直径がアウター側の円錐ころ3の直径よりも小さく設定されている。これにより、装置の軽量・コンパクト化を図ると共に、各転動体列の基本定格荷重を増大させ、また、転動体列部分の剛性を高くすることができる。
ここで、軸状部8と面取り部8cとの角部Bは、図5(a)に拡大して示すように、面潰しにより滑らかに丸められている。また、大鍔20bの角部Cは、(b)に示すように、角アールRを有する所定の面取り形状・寸法に形成されている。すなわち、面取りの軸方向寸法Laおよび径方向寸法Lrが0.15〜0.8mmに形成されると共に、角アールRが0.15〜2.0Rに設定され、各繋ぎ部が滑らかに形成されている。
これらの角部B、Cは、予め旋削加工等で切削加工されていても良いし、また、熱処理後、総型砥石によって基部7cおよび内側転走面5aと同時に研削加工されても良い。同時研削すれば、繋ぎ部が一層滑らかに形成できると共に、その表面粗さを向上させることができる。
こうした構成の車輪用軸受装置では、ハブ輪20のアウター側端部が略均一な肉厚に形成され、内側転走面20a部分の肉厚t1、t2が所定の範囲に設定されると共に、ハブ輪20の角部B、Cが滑らかに丸められているので、前述した実施形態と同様、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を同時に解決すると共に、組立時における円錐ころ3の傷の発生を防止すると共に、大鍔20bと円錐ころ3との接触状態を良好ならしめ、長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る車輪用軸受装置は、複列の円錐ころ軸受で構成された従動輪用の第3世代構造の車輪用軸受装置に適用することができる。
(a)は、本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。 (b)は、(a)の要部拡大図である。 (a)は、図1のハブ輪の角部を同時研削する方法を示す説明図である。 (b)は、(a)の角部を予め切削加工したものを示す。 図1のハブ輪の組立状態を示す説明図である。 本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。 図4の要部拡大図で、(a)は角部Bを示し、(b)は角部Cを示している。 従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
符号の説明
1、18・・・・・・・・・・・・・内方部材
2、19・・・・・・・・・・・・・外方部材
3、4・・・・・・・・・・・・・・円錐ころ
5、20・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
5a、6a、20a・・・・・・・・内側転走面
5b・・・・・・・・・・・・・・・小径段部
6・・・・・・・・・・・・・・・・内輪
6b、14、20b・・・・・・・・大鍔
6c・・・・・・・・・・・・・・・小鍔
7・・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
7a・・・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
7b・・・・・・・・・・・・・・・円孔
7c・・・・・・・・・・・・・・・基部
8・・・・・・・・・・・・・・・・軸状部
8a・・・・・・・・・・・・・・・肩部
8b・・・・・・・・・・・・・・・段付部
8c・・・・・・・・・・・・・・・面取り部
9・・・・・・・・・・・・・・・・加締部
10、11・・・・・・・・・・・・保持器
12・・・・・・・・・・・・・・・シール
13・・・・・・・・・・・・・・・磁気エンコーダ
15・・・・・・・・・・・・・・・凹所
16、17・・・・・・・・・・・・総型砥石
50・・・・・・・・・・・・・・・車輪用軸受装置
51・・・・・・・・・・・・・・・外方部材
51a・・・・・・・・・・・・・・アウター側の外側転走面
51b・・・・・・・・・・・・・・インナー側の外側転走面
51c・・・・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
52・・・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
52a、54a・・・・・・・・・・内側転走面
52b・・・・・・・・・・・・・・小径段部
52c・・・・・・・・・・・・・・加締部
53・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
54・・・・・・・・・・・・・・・内輪
55・・・・・・・・・・・・・・・内方部材
56、57・・・・・・・・・・・・ボール
58、59・・・・・・・・・・・・保持器
60、61・・・・・・・・・・・・シール
A、B、C・・・・・・・・・・・・角部
d1・・・・・・・・・・・・・・・内側転走面の大径側の直径
d2・・・・・・・・・・・・・・・内側転走面の中央部の直径
D1・・・・・・・・・・・・・・・アウター側のボールのピッチ円直径
D2・・・・・・・・・・・・・・・インナー側のボールのピッチ円直径
La・・・・・・・・・・・・・・・面取りの軸方向寸法
Lr・・・・・・・・・・・・・・・面取りの径方向寸法
PCDi・・・・・・・・・・・・・インナー側の円錐ころのピッチ円直径
PCDo・・・・・・・・・・・・・アウター側の円錐ころのピッチ円直径
R・・・・・・・・・・・・・・・・面取りの角アール
t1・・・・・・・・・・・・・・・内側転走面の大径側の肉厚
t2・・・・・・・・・・・・・・・内側転走面の中央部の肉厚

Claims (5)

  1. 外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、
    一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸状部を介して軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、
    この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の円錐ころとを備えた車輪用軸受装置において、
    前記複列の円錐ころにおけるインナー側の円錐ころのピッチ円直径がアウター側の円錐ころのピッチ円直径よりも小径に設定されると共に、前記ハブ輪の外周面の角部が所定の円弧面を有し、その繋ぎ部が滑らかに形成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
  2. 前記ハブ輪のアウター側の端部にすり鉢状の凹所が形成され、この凹所の深さが前記ハブ輪の内側転走面の溝底部を越えて前記軸状部付近とされ、前記内側転走面の肉厚が所定の範囲に設定されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
  3. 前記ハブ輪の内側転走面の大径側に前記円錐ころを案内する大鍔が形成されておらず、この大鍔が前記外方部材の外側転走面の大径側に設けられている請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
  4. 前記複列の円錐ころにおけるインナー側の円錐ころの直径がアウター側の円錐ころの直径よりも小さく設定されている請求項1乃至3いずれかに記載の車輪用軸受装置。
  5. 前記角部が熱処理後に総型砥石によって前記内側転走面と同時研削により形成されている請求項1乃至4いずれかに記載の車輪用軸受装置。
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