以下、図を参照しながら、この発明による装置、方法、プログラムの一実施の形態について説明する。
[リップシンクのずれが発生する可能性のある映像音響再生システムについて]
[各構成機器の概要について]
まず、この発明による装置、方法、プログラムの一実施の形態について具体的に説明する前に、リップシンクのずれ(映像と音声との同期ずれ)が発生する可能性のある映像音響再生システムの接続結線態様の具体例について説明する。
ここでは、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu-ray Disc)などの記録媒体に記録されて提供されるコンテンツであって、同期を取って再生すべき映像信号(映像データ)とマルチチャンネルの音声信号(音声データ)とを再生する場合に、これらの間でリップシンクのずれが発生する場合について説明する。
図1、図2は、リップシンクのずれが発生する可能性のある映像音響再生システムの具体例を説明するためのブロック図である。図1、図2に示す映像音響再生システムは、いずれも、ソース信号再生機器1と、AVコントロール機器(以下、コントロール機器という。)2と、テレビ受像機3と、コントロール機器2に接続される外部スピーカとからなるものである。ここで、図1、図2に示した映像音響再生システムを構成する各機器の概要について説明する。
ソース信号再生器1は、DVDプレイヤーやBDプレイヤー等に代表される映像音声再生機器である。近年、音声は5.1チャンネル、7.1チャンネル、9.1チャンネルなどといったマルチチャンネル化が進み、音声圧縮技術の種類もニーズに合わせ多様化している。一方で、映像表示が主であるテレビ受像機はマルチチャンネルの音声信号を受けるのに適しているとは言えず、一般的には音声信号をAVアンプ等のコントロール機器へデジタルインターフェイスを通じて供給し、コントロール機器内のデコーダで各チャンネル音声成分に分解(デコード)し、スピーカや後段機器へ接続するのが通例となっている。
なお、用いられるデジタルインターフェイスとしては、SPDIF(Sony Philips Digital Interface(IEC958))、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Inc)1394、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)などの種々のものが用いられている。
コントロール機器2は、音声信号(Audio Data)と映像信号(Visual Data)とについてのコントロール機能を備えるものであり、AVアンプなどがその代表例である。そして、圧縮/非圧縮のデジタル音声信号やアナログ音声信号の供給を受けることができ、デジタル音声信号については、デコード処理を行ったり、また、供給を受けた音声信号に対して種々の音声信号処理を行ったりすることができるものである。なお、音声信号の他、映像信号も扱うことができるものが一般的である。
なお、上述もしたように、現在では、音声信号についてはマルチチャンネル化(多チャンネル化)が進んでおり、この発明も、5.1チャンネル、7.1チャンネル、9.1チャンネルなどマルチチャンネルの音声信号を再生する場合において適用可能である。しかし、以下に説明する実施の形態の映像音響再生システムにおいては、説明を簡単にするため、例えば、ドルビーデジタル等の圧縮された5.0チャンネルのマルチチャンネルの音声信号を処理する機能を有する場合を例にして説明する。
すなわち、5.0チャンネルとは、L(左)チャンネル、R(右)チャンネル、SL(左後方)チャンネル、SR(右後方)チャンネル、C(センター)チャンネルの5チャンネルであり、SL(左後方)チャンネルとSR(右後方)チャンネルの文字「S」は、「サラウンド」を意味するものである。
また、コントロール機器2は、一般に、複数の映像信号や音声信号の入力端子を持ち、ユーザーが任意選択できる機能を持つが、以下に説明する実施の形態のコントロール機器2においては、説明を簡単にするため、主にソース信号再生機器1と接続されるデジタル映像入力端子Vin、デジタル音声入力端子Ain、及び、アナログ音声信号のライン入力を受け付ける音声入力端子IA1以外の入力端子については省略する。
そして、以下に説明する実施の形態のコントロール機器2は、選択された入力信号を、DAC(Digital Analog Converter)及びアンプ部を通して外部スピーカに供給することができるものである。なお、近年においては、DAC及びアンプ部分が一体化されたデジタルアンプが用いられているものもある。
また、上述のように、内蔵のアンプ部分を介して外部スピーカで音声信号を再生する以外に、以下に説明する実施の形態の映像音響再生システムのコントロール機器2においても実現されているように、後段の機器に対してDACの出力をラインレベルの音声信号として伝送することもできるようにされている。これらは一般的にプリアウトと呼ばれるものである。
テレビ受像機3は、表示素子やスピーカを備え、映像信号や音声信号の供給を受けて、これらを再生し、映像や音声を出力することができるものである。また、テレビ受像機3は、480p(有効走査線数480本のプログレッシブ走査方式(順次走査方式))、720p(有効走査線数720本のプログレッシブ走査方式)、1080i(有効走査線数1080本のインターレース走査方式(飛び越し走査方式))などの種々の走査線数/走査方法の映像信号の供給を受けて処理することができるものである。
また、テレビ受像機3は、例えば、高画質モード、中画質モード、通常画質モードといった信号処理モードを備え、これらの中から適切なものを使用者が選択することができるものである。ここで、高画質モードは、480pや720pの映像信号が供給された場合であっても、自機において最も高画質の映像信号(例えば、1080iの映像信号)を形成するものであり、1080iよりも低画質の映像信号が供給された場合に、不足する走査線を補間するなどの高画質化処理を伴うモードである。
また、中画質モードは、例えば、480pの映像信号が供給された場合であっても、自機において中程度の画質の映像信号(例えば、720pの映像信号)を形成するものであり、720pよりも低画質の映像信号が供給された場合には、上述した高画質モードの場合よりは高くは無いが、不足する走査線を補間するなどの高画質化処理を伴うモードである。
また、通常画質モードは、高画質モード時や中画質モード時における高画質化処理をパスして、供給される映像信号をそのまま処理して通常通りの映像信号を形成し、これを表示素子に供給するものである。この通常画質モードは、例えば、ゲーム機が接続されている場合などにおいて用いられ、高画質化処理を行うことにより、ユーザーからの操作に応じて変化すべきゲームの映像が、操作に遅れて変化するなどといったことが発生しないようにしている。
以下においては、テレビ受像機3に取り付けられているスピーカをテレビ受像機3の内蔵スピーカ、コントロール機器2に対して直接接続されたスピーカを(テレビ受像機3を基準として)外部スピーカと示すことにする。また、テレビ受像機3の内蔵のスピーカを図2のように、外部スピーカと併用して使う場合には、テレビ受像機3の内蔵スピーカはミュート状態ではなく通常再生ができるような音量にセットアップされていることが必要である。同様に外部スピーカにおいても接続及びスピーカ配置がセットアップ済みであるとする。
[映像音響再生システムの接続結線態様の具体例1]
次に、図1、図2に示したリップシンクのずれが発生する可能性のある映像音響再生システムの接続結線態様について具体的に説明する。まず、図1に示した映像音響再生システムの接続結線態様を具体例1として説明する。
図1に示す映像音響再生システムは、DVDプレイヤーやBDプレイヤーなどのソース信号再生機器1と、AVアンプなどのAVコントロール機器(以下、コントロール機器という。)2と、テレビ受像機3と、コントロール機器2に接続される外部スピーカoL、oR、oC、oSL、oSRとからなっている。
ソース信号再生機器1は、上述もしたように、DVDプレイヤーやBDプレイヤーなどの映像音声再生機器であり、記録媒体に記録されているコンテンツデータであって、同期を取って再生すべき映像信号(映像データ)とマルチチャンネル(この実施の形態においては、5.0チャンネル)の音声信号(音声データ)とを出力する。
コントロール機器2は、図1に示したように、映像入力端子Vinと、音声入力端子Ainと、これらの入力端子を通じて供給される入力信号を受け付けるインターフェイス(以下、I/Fと略称する。)21と、マルチチャンネルの音声信号のデコード機能を備えた信号処理部22と、DAC(Digital Analog Converter)23と、プリアウト端子群OA−Mと、DAC/AMP(Digital Analog Converter/Amplifier)24と、マルチチャンネルのアナログ音声信号のスピーカ出力端子群OAS−Mと、左右2チャンネルのアナログ音声信号の入力端子IA1とからなるものである。
プリアウト端子群OA−Mは、図1に示すように、デジタル映像出力端子Vとマルチチャンネルのそれぞれに対応するアナログ音声信号のプリアウト端子L、R、SL、SR、Cを備えたものである。スピーカ出力端子群OAS−Mもまた、マルチチャンネルのそれぞれのアナログ音声信号に対応するスピーカ出力端子L、R、SL、SR、Cを備えたものである。
そして、コントロール機器2においては、音声入力端子Ainを通じて受け付けた音声信号が、I/F21を通じて信号処理部22に供給される。信号処理部22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などにより構成されたものであり、これに供給されたマルチチャンネルの音声信号をデコードしてデータ圧縮前の音声信号を復元すると共に、L(左)チャンネル、R(右)チャンネル、SL(左後方)チャンネル、SR(右後方)チャンネル、C(センター)チャンネルの各チャンネルの音声信号に分離し、これらのそれぞれをDAC23と、DAC/AMP24とに供給する。
DAC23は、信号処理部22からの各チャンネルの音声信号(デジタル信号)をアナログ信号に変換し、変換して得た各チャンネルのアナログ音声信号をプリアウト端子群OA−Mの対応するプリアウト端子に供給する。これにより、プリアウト端子群OA−Mの各プリアウト端子を通じて、各チャンネルのアナログ音声信号を出力し、外部機器などに供給することができるようにしている。
また、DAC/AMP24は、信号処理部22からのデコードされた各チャンネルの音声信号(デジタル信号)をアナログ信号に変換すると共に、これら各チャンネルのアナログ音声信号を、例えば、信号処理部22の制御に応じて増幅処理して、スピーカ出力端子群OAS−Mの対応するチャンネルのスピーカ出力端子に供給する。
これにより、スピーカ出力端子群OAS−Mの各スピーカ出力端子を通じて、各チャンネルのアナログ音声信号を出力し、コントロール機器2に接続するようにされている外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれに供給して、コントロール機器2に供給されたマルチチャンネルの音声信号に応じた音声を、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれから放音することができるようにしている。
また、テレビ受像機3は、デジタル映像信号の入力端子(映像入力端子)Vと左右2チャンネルのアナログ音声信号の入力端子(音声入力端子)L、Rを有する入力端子群31と、画像デコーダ32と、画像表示部33と、音声信号に対して遅延処理を施す遅延部34L、34Rと、音声信号の増幅を行うAMP(Amplifier)35L、35Rと、内蔵スピーカTVL、TVRと、アナログ音声信号の左右の2チャンネルの出力端子(音声出力端子)L、Rを有する出力端子群36とを備えたものである。
そして、入力端子群31の映像入力端子Vを通じて受け付けた映像信号(デジタル信号)は、画像デコーダ32に供給される。また、入力端子群31の音声入力端子Lを通じて供給された音声信号(アナログ信号)は、遅延部34Lに供給され、また、入力端子群31の音声入力端子Rを通じて供給された音声信号(アナログ信号)は、遅延部34Rに供給される。
画像デコーダ32は、これに供給された映像信号から、画像表示部33に供給するアナログ映像信号を形成し、これを画像表示部33に供給する。画像表示部33は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、PDP(Plasma Display Panel)、CRT(Cathode Ray Tube)などの表示素子とそのコントロール回路とを備え、画像デコーダ32からのアナログ映像信号の供給を受けて、これに応じた画像を表示素子の表示画面に表示する。
そして、上述もしたように、テレビ受像機3は、例えば、高画質モード、中画質モード、通常画質モード等のいくつかの画質モードを備えており、画像デコーダ32は、供給された映像信号のフォーマットと、選択された画質モードとに応じて、適切に指示された画質の映像信号を形成することができるものである。
このため、指示された画質の映像信号を形成するために、画像デコーダ32における処理に時間がかかる場合があり、画像表示部33の表示素子に表示される画像と、後述するように、内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声との間においてずれ(いわゆるリップシンクのずれ)が生じる場合がある。
そこで、画像デコーダ32は、自己においての映像信号処理にかかる時間に応じて、音声信号を遅延させるようにするために、遅延部34L、34Rを制御することができるようにしている。そして、遅延部34L、34Rに供給された音声信号は、画像デコーダ32からの制御に応じて遅延処理された後に、AMP35L、35Rに供給されると共に、アナログ音声信号の出力端子群26の音声出力端子L、Rのそれぞれに供給される。
そして、遅延処理されたL(左)チャンネルの音声信号は、AMP35Lにおいて増幅された後にL(左)チャンネルの内蔵スピーカTVLに供給され、遅延処理されたR(右)チャンネルの音声信号は、AMP35Rにおいて増幅された後にR(右)チャンネルの内蔵スピーカTVRに供給されされて、内蔵スピーカTVL、TVRから左右それぞれのチャンネルの音声信号に応じた音声が放音される。また、同時に、音声信号の出力端子群36の音声出力端子L、Rのそれぞれから遅延処理後の左右のチャンネルの音声信号が出力される。
そして、図1に示した映像音響再生システムの場合には、ソース信号再生機器1の映像出力端子と、テレビ受像機3の入力端子群31の映像入力端子Vとが直接に接続されており、ソース信号再生機器1からの映像信号は、直接にテレビ受像機3に供給するようにされている。
これにより、ソース信号再生機器1からの映像信号は、テレビ受像機3の入力端子群31の映像入力端子Vを通じて受け付けられ、画像デコーダ32で処理された後に、画像表示部33に供給されて、ソース信号再生機器1からの映像信号に応じた映像(画像)が、テレビ受像機3の画像表示部33の表示素子に表示するようにされる。
また、ソース信号再生機器1の音声出力端子と、コントロール機器2の音声入力端子Ainとが接続されており、ソース信号再生機器1からのマルチチャンネルの音声信号は、コントロール機器2の音声入力端子Ainを通じて受け付けられ、信号処理部22でデコードされ、各チャンネルの音声信号に分離された後に、DAC23とDAC/AMP24とに供給される。
DAC23に供給された各チャンネルの音声信号(デジタル信号)は、ここでアナログ音声信号に変換された後に、プリアウト端子群OA−Mの音声信号の各プリアウト端子L、R、SL、SR、Cを通じて出力するようにされる。
また、DAC/AMP24に供給された各チャンネルの音声信号(デジタル信号)は、ここでアナログ音声信号に変換されると共に、増幅処理され、スピーカ出力端子群OAS−Mの各スピーカ端子L、R、SL、SR、Cを通じて、コントロール機器2に接続されている各外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれに供給される。これにより、ソース信号再生機器1からの音声信号に応じた音声が、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれから放音される。
このように、図1に示した映像音響再生システムの場合には、ソース信号再生装置1からの映像信号は、直接にテレビ受像機3に供給され、ソース信号再生装置1からの音声信号は、コントロール機器2を介して外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれに供給されるように接続結線されて構成されたものである。
このため、テレビ受像機3の画像デコーダ32において、映像信号処理に時間がかかっても、コントロール機器2においてはテレビ受像機3における映像信号処理に時間がかかっていることを知ることができないので、音声信号に対して遅延処理を施すことはできず、再生される映像と音声との同期のずれ、所謂リップシンクのずれが発生する。
すなわち、図1に示した映像音響再生システムの場合、テレビ受像機3の内部の画像デコーダ32において行われる画像デコード処理等の種々の画像処理によって発生する遅延量は、自動的、もしくはユーザー選択により、様々な値をとる可能性があり、また、コントロール機器2自体、ユーザーが手動で値を入力する以外に、自動的にテレビ受像機3の画像信号処理に関わる遅延量を知る手段を持たない。したがって多くの場合、コントロール機器2は音声信号に対して遅延(ディレイ)処理を施すことなく、そのまま各外部スピーカへの信号再生を行う。
この状況において、ユーザー(視聴者)位置においては、ソース再生時、マルチチャンネルの音声が到来した後、遅延した再生映像が到達することになり、結果的にリップシンクの問題が生じることになる。特に、前述したように数百ms(ミリ秒)の遅延がある場合は、リップシンクに対しての違和感が大きく、ユーザーは不快さを感じることとなる。
なお、実際にはリップシンクの問題以前にマルチチャンネルスピーカの配置により、各スピーカからユーザー(視聴者)位置までの距離差が生じることで、厳密には各音声自体も到達時間は既にずれている。しかしながら例えば2つのスピーカを考えたとき、ユーザーまでの距離の差が1mあるとしても、それは3ms(ミリ秒)程度の時間ずれであり、前述のリップシンクのずれに比べるとはるかに小さい。
また、図1に示した映像音響再生システムにおいては、音声信号については、コントロール機器2に接続された外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCからのみ出力し、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRはミュートなどを掛けて使用しないようにしているものとしている。
[映像音響再生システムの接続結線態様の具体例2]
次に、図2に示した映像音響再生システムの接続結線態様を具体例2として説明する。図2に示した映像音響再生システムにおいて、ソース信号再生機器1、コントロール機器2、テレビ受像機3のそれぞれは、図1に示した映像音響再生システムのソース信号再生機器1、コントロール機器2、テレビ受像機3のそれぞれと同様に構成されたものである。このため、図2に示した映像音響再生システムにおいては、図1に示した映像音響再生システムと同様に構成される部分には、図1に示した映像音響再生システムの場合と同じ参照を符号を付し、それらの詳細な説明については省略することとする。
図2に示す映像音響再生システムと、図1を用いて説明した映像音響再生システムとで異なる点は、図2に示す映像音響再生システムが、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRと、コントロール機器2に接続された外部スピーカoSL、oSR、oCとを併用している点である。
具体的には、図2に示した映像音響再生システムの場合、ソース信号再生機器1の映像出力端子とコントロール機器の映像入力端子Vinとが接続され、また、コントロール機器2のプリアウト端子群OA−Mの映像出力端子Vとテレビ受像機3の入力端子群31の映像有力端子Vとが接続されており、ソース信号再生機器1からの映像信号は、コントロール機器2を経由してテレビ受像機3に供給するようにされている。
これにより、ソース信号再生機器1からの映像信号は、テレビ受像機3の入力端子群31の映像入力端子Vを通じて受け付けられ、画像デコーダ32で処理された後に、画像表示部33に供給されて、ソース信号再生機器1からの映像信号に応じた映像(画像)が、テレビ受像機3の画像表示部33の表示素子に表示するようにされる。
また、ソース信号再生機器1の音声出力端子と、コントロール機器2の音声入力端子Ainとが接続されており、ソース信号再生機器1からのマルチチャンネルの音声信号は、コントロール機器2の音声入力端子Ainを通じて受け付けられ、信号処理部22でデコードされ、各チャンネルの音声信号に分離された後に、DAC23とDAC/AMP24とに供給される。
DAC23に供給された各チャンネルの音声信号(デジタル信号)は、ここでアナログ音声信号に変換された後に、プリアウト端子群OA−Mの音声信号の各プリアウト端子L、R、SL、SR、Cを通じて出力するようにされる。そして、図2に示した映像音響再生システムの場合には、コントロール機器2のプリアウト端子群OA−Mの音声信号のプリアウト端子L、Rと、テレビ受像機3の入力端子群31の音声入力端子L、Rとが接続されている。
したがって、5.0チャンネルのマルチチャンネルの音声信号の内、L(左)チャンネルの音声信号と、R(右)チャンネルの音声信号とは、コントロール機器2を通じてテレビ受像機3に供給され、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRを通じて再生することができるようにしている。
また、DAC/AMP24に供給された各チャンネルの音声信号(デジタル信号)は、ここでアナログ音声信号に変換されると共に、増幅処理され、スピーカ出力端子群OAS−Mの各スピーカ端子L、R、SL、SR、Cを通じて出力するようにされる。そして、図2に示した映像音響再生システムの場合には、コントロール機器2に接続されている外部スピーカoSL、oSR、oCのそれぞれに供給される。
これにより、5.0チャンネルのマルチチャンネルの音声信号の内、SL(左後方)チャンネルの音声信号と、SR(右後方)チャンネルの音声信号と、C(センター)チャンネルの音声信号とは、コントロール機器2を通じてこれに接続された外部スピーカoSL、oSR、oCを通じて再生することができるようにしている。
このように、図2に示した映像音響再生システムの場合には、ソース信号再生装置1からの映像信号は、コントロール機器2を介してテレビ受像機3に供給し、ソース信号再生装置1からのマルチチャンネルの音声信号の内、L(左)チャンネルの音声信号とR(右)チャンネルの音声信号とは、コントロール機器2を介してテレビ受像機3に供給し、さらに、ソース信号再生装置1からのマルチチャンネルの音声信号の内、SL(左後方)チャンネルの音声信号と、SR(右後方)チャンネルの音声信号と、C(センター)チャンネルの音声信号とは、コントロール機器2を介して外部スピーカoSL、oSR、oCのそれぞれに供給するように接続結線して構成しものである。
そして、この図2に示した映像音響再生システムにおいて、テレビ受像機3の画像表示部33の表示素子に表示される映像(画像)と、コントロール機器2に接続された外部スピーカoSL、oSR、oCから放音される音声との間においては、図1に示した映像音響再生システムの場合と同様に、再生同期の大きなずれが生じる。その一方で、テレビ受像機3の画像表示部33の表示素子に表示される映像(画像)と、内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声との間においては、上述もしたように、テレビ受像機3単体としては、画像デコーダ32に制御される遅延部34L、34Rの機能により、音声と映像間の同期の問題は解決されているため、リップシンクの問題が生じない。
しかしながら、図2に示した映像音響再生システムの場合には、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声と、外部スピーカoSL、oSR、oCから放音される音声との間においても、再生同期のずれが生じるため、単に再生される映像と音声の同期がずれているという問題に止まらず、テレビ受像機3の内蔵スピーカから放音される音声と、外部スピーカから放音される音声との間においても、同期のずれが生じるという現象が起こる。
このため、特に音楽など各音声チャンネルの信号の相関が大きい音声信号を再生する場合においては、音の干渉による周波数ディップ・ピークやエコー感、明瞭度の低下などの問題を生じさせ、リップシンクの問題に加え、聴取環境が大きく劣化する場合があると考えられる。
なお、ソース信号再生機器1から出力される映像信号が、図1では直接テレビ受像機3に供給されていたのに対し、図2ではコントロール機器2を経由してテレビ受像機3に供給するように接続している。ここで、ユーザーから見た場合、ソース信号再生機器1からの音声信号と映像信号との両方がコントロール機器2に入力されていることで、リップシンク問題が解決しているという誤解がある。
しかしながら、図2のテレビ受像機3の構成を見ればわかる通り、リップシンク問題に関する一番大きな遅延は、終段であるテレビ受像機3内で生じているため、映像信号をコントロール機器2を経由させてテレビ受像機3に供給するように接続結線しても、根源的にリップシンクの問題を解決することはできない。
[リップシンクのずれが発生しない映像音響再生システムについて]
図3は、リップシンクのずれが発生しない映像音響再生システムの接続結線態様の一例を説明するためのブロック図である。図3の映像音響再生システムにおいて、ソース信号再生機器1、テレビ受像機3は、図1、図2に示した映像音響再生システムで用いたものと同様に構成されたものである。
そして、この図3に示す映像音響再生システムの場合には、ソース信号再生機器1の映像出力端子とテレビ受像機3の入力端子群31の映像入力端子Vとが接続され、また、ソース信号再生機器1の左右2チャンネルの音声出力端子とテレビ受像機3の入力端子群31の左右2チャンネルの音声入力端子L、Rとが接続されている。
これにより、ソース信号再生機器1からのデジタル映像信号Vdが、テレビ受像機3の入力端子群31の映像入力端子Vを通じてテレビ受像機3に供給され、また、アナログ信号である左右2チャンネルの音声信号が、テレビ受像機3の入力端子群31の音声入力端子L、Rを通じて、テレビ受像機3に供給するようにされている。
さらに、テレビ受像機3の左右2チャンネルの音声出力端子群36の音声出力端子L、Rと、オーディオアンプ装置4の音声入力端子群41の音声入力端子L、Rとが接続されている。オーディオアンプ装置4は、L(左)チャンネル用のAMP(Amplifier)42Lと、R(右)チャンネル用のAMP(Amplifier)42Rとを備え、音声入力端子群41を通じて受け付けた左右2チャンネルのそれぞれの音声信号を増幅処理して、音声出力端子群43の音声出力端子L、Rを通じて出力される。
音声出力端子群43の音声出力端子L、Rのそれぞれには、対応する外部スピーカoL、oRが接続される。これにより、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRと、オーディオアンプ装置4に接続された外部スピーカoL、oRとを通じて、ソース信号再生機器1からの音声信号を再生することができる。
図3に示した映像音響再生システムは、例えば、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRが小さく音が貧弱な場合などにおいて、これを補償するために、外部のオーディオアンプ装置や外部スピーカを用いるようにした場合である。そして、図3に示した映像音響再生システムの場合には、テレビ受像機3の内部において、画像デコーダ32の制御に応じて、遅延部34L、34Rで遅延処理された左右2チャンネルの音声信号が出力されるので、外部スピーカoL、oRから放音される音声が、テレビ受像機3の画像表示部33の表示素子に表示される映像(画像)との間で再生同期がずれることも無い。
[映像音響再生システムの接続結線態様のまとめ]
図1〜図3に示した映像音響再生システムのテレビ受像機3の内部構造例に示したように、テレビ受像機3に映像信号が入力された場合、当該映像信号に応じたテレビ画像(再生映像)が画像表示部33の表示素子に表示されるまでに、上述もしたように、映像信号のデコード及び種々の画像処理に時間がかかり、音声信号の再生に対して映像信号の再生が遅延する場合がある。特に最近の高精細化に伴う画像情報量の増大や、画像圧縮フォーマットの進化、画質表現のための情報処理複雑化によって遅延量は大きくなっており、音声信号の再生に対して、映像信号の再生が実際に数十ms〜数百ms程度遅延する場合ある。
このような場合にあるときに、テレビ受像機3において、映像信号と共に入力された音声信号をそのまま再生してしまうと、当然ながら、音声信号に対する処理のほうが短くて済むので、供給された音声信号に応じた音声が先に再生され、その後に映像が再生されることとなる。一般に、音声は映像に対して−25ms〜+100msの範囲以上ずれると、違和感を生じるといわれており、これがいわゆる「リップシンク」の問題になる。
したがってテレビ受像機3内では通常、音声出力をディレイ装置(遅延部34L、34R)を介して再生する。映像信号の画像表示までにかかる時間(音声信号に対する映像信号の遅延量)はテレビ受像機3内では既知であるため、その時間をディレイ装置(遅延部34L、34R)における遅延量として設定し、これに応じて遅延制御することで、テレビ受像機3単体としては映像と音声が同期とって再生することが可能な仕組みとなっている。
なお、この遅延量はテレビ受像機によって固定的なものではなく、例えば入力される映像画質をテレビ受像機内部で自動解析することによって自動的に画像処理手法を選択する場合、や、ユーザーの指定(例えば画質よりスピードを優先するモードを選択するなど)により、遅延量自体が変わることもある。
そして、このように、リップシンクのずれの発生原因を有するテレビ受像機3を用いる場合であって、図1、図2に示したように、少なくとも、同期を取って再生すべき映像信号と音声信号とのそれぞれが、異なる外部機器(図1、図2の場合にはテレビ受像機3と、外部スピーカoSL、oSRなど)に供給されるように接続結線されている映像音響再生システムにおいて、リップシンクのずれの問題が生じる。
また、図2に示した映像音響システムのように、異なる音声チャンネルの音声信号が、音声信号に対して遅延処理を施す機器と遅延処理を施さない機器とに供給するように接続結線されている場合には、これらの音声信号間においても、再生同期のずれが発生し、上述もしたように、音の干渉による周波数ディップ・ピークやエコー感、明瞭度の低下などの問題をも生じさせる場合がある。
しかし、図3に示したように、映像信号と音声信号との供給先が常に一致している映像音響再生システムの場合には、映像信号の処理にかかる時間に応じて、音声信号に対しても適切に遅延処理を施すことができ、この遅延処理された音声信号に応じた音声を再生することができるので、リップシンクのずれの問題は生じないのである。
以下に説明する実施の形態の映像音響再生システムは、図1、図2を用いて説明したように、同期を取って再生すべき映像信号と音声信号とが、異なる外部機器に供給するように接続結線されている映像音響システムにおいて、リップシンクのずれを簡単かつ確実に補正することができるようにしているものであり、主に、コントロール機器内の機能として実現するようにしている。
[リップシンクのずれの補正(同期補正)を行う機器、方法、プログラムについて]
以下に、この発明による装置、方法、プログラムの一実施の形態について詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は、図1、図2を用いて説明した映像音響再生システムと同様に、ソース信号再生機器1と、コントロール機器2と、テレビ受像機3とが接続されて構成される映像音響再生システムの場合を例にして説明する。
そして、以下に説明する実施の形態においては、上述もしたように、映像信号の処理に時間がかかるために、テレビ受像機3において音声信号に対して施される遅延量を、コントロール機器2において検出する場合であって、その検出方式が異なる3つの実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
以下に説明する第1の実施の形態の映像音響再生システムは、以下に詳述するように、リスニングポイントに設置される測定用マイクロホンMICを用い、空間での信号測定に基づいて、音声信号についての遅延量を測定するものである。
図4は、第1の実施の形態の映像音響再生システムを説明するためのブロック図である。この第1の実施の形態の映像音響再生システムにおいて、コントロール機器2及びテレビ受像機3は、図1、図2に示した映像音響システムのコントロール機器2及びテレビ受像機3とほぼ同様に構成されたものである。このため、図4に示すこの第1の実施の形態の映像音響再生システムにおいて、図1、図2に示した映像音響再生システムを構成する各機器と同様に構成される部分には、同じ参照符号を付し、その部分の詳細な説明については省略する。
そして、図4に示した映像音響再生システムにおいては、コントロール機器2は、制御信号の出力端2oと制御信号の入力端2iとを備えている。これら制御信号の出力端2oと制御信号の入力端2iとは、信号処理部22に接続されている。信号処理部22は、上述もしたように、DSPやCPUによって構成されたものであり、必要に応じて制御信号を、出力端2oを通じて出力したり、また、外部機器からの制御信号を、入力端2iを通じて受け付けたりすることができるようにしている。
同様に、テレビ受像機3もまた、制御信号の出力端3oと制御信号の入力端3iとを備えている。これら制御信号の出力端3oと制御信号の入力端3iとは、コントローラ37に接続されている。コントローラ37は、例えば、CPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などから構成されるマイクロコンピュータであり、後述もするように、例えば、AMP35L、35Rの利得を制御したり、画像デコーダ32に画像モードを指示したりするなど、テレビ受像機の各部を制御することができるものである。そして、テレビ受像機3のコントローラ37は、必要に応じて制御信号を、出力端3oを通じて出力したり、また、外部機器からの制御信号を、入力端3iを通じて受け付けたりすることができるようにしている。
そして、図4に示すように、コントロール機器2の制御信号の出力端2oとテレビ受像機3の制御信号の入力端3iとが接続され、コントロール機器2の制御信号の入力端2iとテレビ受像機3の制御信号の出力端3oとが接続され、これらコントロール機器2とテレビ受像機3との間で、種々の制御信号の送受を行うことができるように、制御信号線路を接続するようにしている。
なお、コントロール機器2とテレビ受像機3との間の制御信号線路の接続は、図4に示したように、専用の制御信号線路を接続するようにしてもよいし、また、AVマウスなどと呼ばれる赤外線リモコン信号の送出部と、相手機器の赤外線リモコン信号の受光部とにより相互に接続したり、あるいは、近距離無線通信により接続したり、あるいは、IEEE1394やHDMIなどの制御信号線路を有するデジタルインターフェイスで接続したりするなど、種々の態様で接続することが可能である。
また、コントロール機器2は、マイクロホンの接続端子Minと、マイクアンプ(図においてはMIC−AMPと記載。)26と、ADC(Analog Digital Converter)25とを備えている。そして、コントロール機器2は、詳しくは後述もするが、聴取位置(リスニングポイント)に設置されるマイクロホンMICによって受音(集音)された音声信号を、マイクロホンの接続端子Minを通じて受け付けて、これをマイクアンプ26で増幅した後に、ADC25でデジタル音声信号に変換し、これを信号処理部22に供給して解析するなどのことができるようにしている。
このようにしてマイクロホンMICを接続できるようにしておくのは、後述もするように、各スピーカから放音される音声を受音してこれを解析する系を備えることにより、例えば、テレビ受像機3において、映像信号処理に係る時間を考慮して音声信号に施される遅延処理の遅延量を測定できるようにするためである。また、コントロール機器2は、詳しくは後述もするが、音声信号についての測定した遅延量などの情報を記憶保持する設定値保存メモリ27をも備えたものである。
そして、この図4に示した第1の実施の形態の映像音響再生システムは、コントロール機器2のプリアウト端子群OA−MのL(左)チャンネルとR(右)チャンネルのプリアウト端子L、Rと、テレビ受像機3の入力端子群31の左右2チャンネルのそれぞれの音声入力端子L、Rとが接続されている点は、図2に示した映像音響再生システムの場合と同様である。
また、コントロール機器2のスピーカ出力端子群OAS−Mの各スピーカ出力端子L、R、SL、SR、Cのそれぞれが、対応する外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCに接続されている点は、図1に示した映像音響再生システムの場合と同様である。
そして、この第1の実施の形態の映像音響再生システムのコントロール機器2は、測定信号を生成して、これをテレビ受像機3に供給し、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される当該測定信号に応じた音声を、測定用マイクロホンMICで受音して当該測定信号についての応答信号を得て、測定信号の出力タイミングと、応答信号の受付タイミング(入力タイミング)とから、テレビ受像機3における音声信号についての遅延量(遅延時間)を測定することができるようにしている。
同様にして、この第1の実施の形態の映像音響再生システムのコントロール機器2は、測定信号を生成して、これを外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCに供給し、これら外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから放音される当該測定信号に応じた音声を、測定用マイクロホンMICで受音して当該測定信号についての応答信号を得て、測定信号の出力タイミングと、応答信号の受付タイミング(入力タイミング)とから、外部スピーカから放音される音声信号についての遅延量(遅延時間)をも測定することができるようにしている。
そして、コントロール機器2は、上述したように測定した遅延量に基づいて、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれに供給する音声信号について、上述もしたようにテレビ受像機3において施すようにしている音声信号についての遅延に応じて遅延させることにより、リップシンクのずれを生じさせないようにすることができるようにしている。
なお、このような処理は、ユーザーが映像視聴中にリップシンクに関して違和感を覚えた場合、又は映像を見る際の準備段階などの任意タイミングで、コントロール機器2に対しリモコンもしくは本体に設けられたキー操作部に対する操作によって開始することができるようにしている。
そして、この第1の実施の形態において、コントロール機器2が、音声信号の遅延量を測定する測定プロセスを実行する際には、以下において、条件(1A)、条件(1B)として示す2つの接続・設定条件が最低限必要である。
まず、条件(1A)は、音声信号の遅延量を測定する機能を内蔵するコントロール機器2から、音声信号についての遅延が発生するテレビ受像機3に対して、いずれかのチャンネルを通じて音声信号をデジタル又はアナログにて供給できることが必要である。
条件(1B)は、リップシンクを合わせる目的の映像信号がテレビ受像機3に入力され、表示されていることが必要である。この時、映像信号がコントロール機器2を経由しているかどうかは問わない。また、上述したテレビ受像機3のように、複数の画質モードを備え、ユーザーが画質モードを選択できる時は、任意に選択済みであることが必要である。
条件(1A)の目的は、コントロール機器2からテレビ受像機3に対して任意の音声信号(測定信号)を出力するためである。コントロール機器2内部で生成した測定信号をテレビ受像機3に送ることにより、テレビ受像機3内部で発生する画像処理遅延に同期した音声信号、つまり測定信号の応答を得ることができる。この応答信号には遅延情報が含まれている。
条件(1B)の目的は、最終目的であるリップシンク(特に映像と外部スピーカ音声の同期)を合わせるため、実際のテレビ受像機3で映像処理に時間がかかり遅延が発生している状態、つまり現在リップシンクを合わせる必要のある状況をつくるため、映像は流しておく必要がある。ユーザーがリップシンクを合わせたい状況を作るという同様な理由で、テレビ受像機3にモード設定も必要となる。なぜなら、大抵の場合モード設定により、遅延時間も異なるためである。
さらに、この第1の実施の形態においては、以下に詳述するが、条件(1C)として、音声信号の遅延時間の測定機能を有するコントロール機器2から、テレビ受像機3に対して、ボリュームを制御できる手段(音量を制御できる手段)を有することが必要である。音量を制御できる具体的な手段としては、各種の電子機器において遠隔制御に用いられるリモコンと同等の赤外線や電波による無線コントロールや、IEEE1394、HDMIといった制御信号線路を有するデジタルインターフェイスや、その他、各社独自規格のアナログ・デジタル制御信号線路などを用いることが可能である。
なお、コントロール機器2からテレビ受像機3の音量の制御ができない場合には、後述もするが、ユーザーが手動で制御することで、機能補償することが可能である。
また、この第1の実施の形態においては、条件(1D)として、ユーザーの視聴位置(リスニングポイント)に置かれた測定用マイクロホンMICで受音した音声信号をコントロール機器2に供給し、これをデジタル信号に変換し、DSPやCPUによって構成される信号処理部22において扱えることが必要である。
そして、図1〜図3を用いて説明したように、テレビ受像機3においては、入力された映像信号に対して種々の処理が必要になるために画像遅延が発生する。それと同期するようにテレビ受像機3において、音声信号についても遅延処理を施すために、コントロール機器2により、テレビ受像機3での音声遅延状況を測定・記録し、再生時に音声信号に対する時軸補正をするための基準情報として使っている。
また、映像信号の供給経路としては、ソース信号再生機器1から直接にテレビ受像機3に供給する経路と、ソース信号再生機器1からコントロール機器2を経由してテレビ受像機3に供給する経路とがあるが、コントロール機器2自体では、映像信号に対してほとんど遅延が発生することは無いので、いずれの経路でテレビ受像機3に供給してもよい。
[コントロール機器2の構成例について]
次に、音声信号についての遅延量を測定する機能を有するコントロール機器2の測定モジュールの構成例について説明する。図5は、図4に示した映像音響再生システムのコントロール機器2において、音声信号の遅延量を測定するための測定モジュールの構成例について説明するためのブロック図である。
図5において、シーケンスコントローラ22A、測定信号生成部22B、出力切換部22C、応答信号解析部22Dのそれぞれは、DSPやCPU等によって構成される信号処理部22によって、その機能が実現されるものである。すなわち、信号処理部22は、測定プロセスを実行するために、シーケンスコントローラ22A、測定信号生成部22B、出力切換部22C、応答信号解析部22Dの各機能を実現する。また、DAC23とDAC/AMP24とは、各音声チャンネル毎にDACやDAC/AMPが設けられたものであることを示している。
コントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aは、コントロール機器2の各部を制御することができると共に、制御信号の入力端2iと制御信号の出力端2oとを通じてテレビ受像機3に対して接続され、テレビ受像機3に対して制御信号を供給したり、テレビ受像機3からの制御信号を受信して、これを用いて目的とする処理を実行したりするなどのことができるようにしている。
測定信号生成部22Bは、シーケンスコントローラ22Aの制御に応じて、予め決められた測定信号を生成し、これを出力切換部22Cに供給する。測定信号生成部22Bで生成される測定信号しては、周波数特性が既知の広帯域のノイズまたは信号であれば特段規定はない。例えば、上述したTSP信号でも良いし、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、M系列ノイズなどの広帯域ノイズであってもよいし、また、一般的な音声・音楽信号であってもよい。また、測定信号の生成方式としては、予め決められたロジックにしたがって演算により生成したり、測定信号生成部22Bに接続されたメモリから読み出すことにより生成するようにしたりすることができる。
出力切換部22Cは、シーケンスコントローラ22Aの制御に応じて、測定信号の供給先を切り換える。例えば、DAC23だけに供給するようにしたり、DAC/AMP24だけに供給するようにしたり、DAC23とDAC/AMP24の両方に供給したりすることができるものである。もちろん、DAC23内の選択した1つ以上のチャンネルに測定信号を供給するようにしたり、DAC/AMP24内の選択した1つ以上のチャンネルに測定信号を供給したりすることもできるものである。
応答信号解析部22Dは、後述もするように、測定用マイクロホンMICによって受音され、マイク入力端子Minを通じて供給を受けて、マイクアンプ26で増幅され、ADC25でデジタル信号に変換された測定信号についての応答信号の供給を受けて、当該応答信号の受信タイミングと、シーケンスコントローラ22Aによって把握される測定信号生成部22Bからの測定信号の出力タイミングとに基づいて、音声信号についての遅延量を把握することができるものである。
この第1の実施の形態においては、詳しくは後述もするが、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから測定信号に応じた音声を放音し、これを測定用マイクロホンMICで受音し、上述したように、コントロール機器2の応答信号解析部22Dの機能により解析するようにして、テレビ受像機3における音声信号についての遅延量を測定する。
また、外部スピーカoL、oS、oSL、oSR、oCから測定信号に応じた音声を放音し、これを測定用マイクロホンMICで受音し、上述したように、コントロール機器2の応答信号解析部22Dの機能により解析するようにして、外部スピーカから放音される音声についての遅延量を測定する。
そして、テレビ受像機3における音声信号についての遅延量と、外部スピーカから放音される音声信号についての遅延量との両方に基づいて、外部スピーカに供給する音声信号についての遅延量を適切に把握し、この把握した遅延量に応じて、外部スピーカoL、oS、oSL、oSR、oCのそれぞれに供給する音声信号に対して適切に遅延処理を施すことができるようにしている。
[第1の実施の形態における音声信号の遅延量の把握処理(測定処理)について]
以下に、この第1の実施の形態の映像音響再生システムにおいて、主にコントロール機器2によって行われる再生される音声信号の遅延量を把握する処理について、図6、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
図6、図7は、主にコントロール機器2によって行われる再生される音声信号の遅延量を把握する処理について説明するためのフローチャートである。この第1の実施の形態の映像音響再生システムにおいて行われ音声信号の遅延量の把握処理は、上述もしたように、測定用マイクロホンMICを用い、空間での信号測定をメインとする測定プロセスからなるものである。なお、図6、図7に示すフローチャートにおいて、記載を簡略化するために、テレビ受像機3はTVと略称し、また、コントロール機器2はAVアンプと記載している。
この図6、図7に示すフローチャートの処理は、図5に示したコントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aの機能によって進められる。最初に、シーケンスコントローラ22Aは、コントロール機器2からテレビ受像機3のボリューム制御(音量制御)が可能か否かを判断(検証)する(ステップS101)。このステップS101の判断処理(検証処理)は種々の手法を用いることが可能である。例えば、詳しくは後述する「複数機器間の音量制御可否判定方法」を用いることが可能である。
ステップS101の判断処理において、コントロール機器2からテレビ受像機3のボリューム制御が可能あると判断したときには、シーケンスコントローラ22Aは、テレビ受像機3の現在のボリューム値(音量値)を取得して、これを所定のメモリに記憶保持する(ステップS102)。
この後、シーケンスコントローラ22Aは、テレビ受像機3のボリュームを適宜制御して、測定信号の応答が聴取位置に設置された測定用マイクロホンMICによって、必要な音圧の応答信号として得られるように設定する(ステップS103)。このため、この図6、図7に示す処理を開始する前に、おおまかな音圧を測定するための準備信号を再生して計測・計算しておいく方法や、測定信号の再生ボリュームを徐々上げて、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声が適正なレベルになるように調整するような手法をとっても良い。
また、詳しくは後述する「複数機器間の音量同期方法」を用い、予めコントロール機器2からの制御ボリューム値と、テレビ受像機3における対応する音量レベル(音圧)の対応関係を例えば数値テーブル化して把握しておき、この対応関係を示す数値テーブルを参照して、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声のレベル(音圧)が適正なレベルとなるように、コントロール機器2がテレビ受像機3のボリュームレベルを設定しても良い。
また、ステップS101の判断処理において、コントロール機器2からテレビ受像機3のボリューム制御が可能ではない(不能である)と判断したときには、シーケンスコントローラ22Aは、手動でテレビ受像機3のボリューム値を上げておくように指示するメッセージを、図示しないが、例えばコントロール機器2が備えるLCD(Liquid Crystal Display)に表示するなどして、ユーザーに対して、テレビ受像機3のボリューム値(音量値)を手動で調整することを指示する(ステップS104)。
なお、ユーザーに対するメッセージは、例えば、コントロール機器2内において形成し、これをプリアウト端子群OA−Mを通じてテレビ受像機3に供給し、テレビ受像機3の画像表示部33の表示画面に表示するようにしてもよい。もちろん、表示メッセージに限るものではなく、音声メッセージを用いるようにすることも可能である。音声メッセージを用いる場合には、コントロール機器2内で形成した音声メッセージをテレビ受像機3に供給して、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音したり、コントロール機器2に接続されている外部スピーカoL、oRなどから放音したりすることが可能である。
ステップS103またはステップS104の処理の後、コントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号を生成すると共に、出力切換部22Cを制御して、生成した測定信号をテレビ受像機3に供給し、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから測定信号に応じた音声を放音するようにする(ステップS105)。なお、この例においては、測定信号としてTSP信号を用いるようにしている。
この第1の実施の形態においては、図4を用いて説明したように、コントロール機器2のプリアウト端子群OA−MのL(左)チャンネルの出力端子がテレビ受像機3の入力端子群31のL(左)チャンネルの入力端子に接続され、コントロール機器2のプリアウト端子群OA−MのR(右)チャンネルの出力端子がテレビ受像機3の入力端子群31のR(右)チャンネルの入力端子に接続されているので、コントロール機器2からの測定信号は、確実にテレビ受像機3に供給されている。
したがって、コントロール機器2からの想定信号は、確実にテレビ受像機3に供給され、測定信号に応じた音声がテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される。しかも、テレビ受像機3のボリューム値はコントロール機器2側から制御されているので、測定信号に応じた音声が適切な再生音量で放音され、測定信号についての応答信号を適切に得て、コントロール機器2にフィードバックすることができるようにしている。
なお、上述のように、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから測定信号に応じた音声を放音し、これを集音して測定を行う場合には、コントロール機器2に接続されている外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCからは音声が再生されないよう、コントロール機器2内の出力切換部22Cを適切に切り換え制御する必要がある。
そして、図4、図5を用いて説明したように、想定用マイクロホンMICで集音した測定信号についての応答信号は、マイク入力端子Minを通じてコントロール機器2に供給され、マイクアンプ26で増幅され、ADCでデジタル信号に変換された後に、応答信号解析部22Dに供給される。応答信号解析部22Dは、これに供給された測定信号についての応答信号を受け付けて、インパルス応答を測定する(ステップS106)。
上述もしたように、この第1の実施の形態においては、測定信号としてTSP信号を用いているので、応答信号解析部22Dは、再生スピーカであるテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRからリスニング位置(聴取位置)にある測定用マイクロホンMICまでのインパルス応答を測定・算出することができる。
そして、応答信号解析部22Dは、測定したインパルス応答を解析し、音速を考慮することで測定信号の再生を始めた時間を基準とする音声信号についての遅延時間(遅延量)を算出し、算出した遅延時間を設定値保存メモリ27の遅延時間テーブルに記憶保持する(ステップS107)。なお、この遅延時間の求め方については、本願発明者による先の出願(特願2005−067413号、「測定装置、測定方法、プログラム」)に詳細に説明されている。
この第1の実施の形態において、上述したように求められる音声信号についての遅延時間は、図4に示したこの第1の実施の形態の映像音響再生システムの構成からも分かるとおり、テレビ受像機3内での画像処理(映像処理)による遅延と同期する音声遅延と、音の空間伝播による遅延の両方が含まれている。この第1の実施の形態の映像音響再生システムにおいては、コントロール機器2のプリアウト端子群OA−Mの左右2チャンネルの音声信号がテレビ受像機3に供給され、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRを通じて放音されるため、テレビ受像機3側の再生スピーカのチャンネル情報と合わせて、遅延量の数値を設定値保存メモリ27上のデータベースに記録しておく。
また、図6の説明ではコントロール機器2のプリアウトのL(左)チャンネルとR(右)チャンネルの音声信号をテレビ受像機3に供給するようにしたが、必ずしもこれは一般的ではない。例えば、コントロール機器のプリアウトのC(センター)チャンネルの音声信号をテレビ受像機に供給し、テレビ受像機3の左右のチャンネルに分配するなどして利用する場合もある。
本来的には、コントロール機器2のプリアウト端子群OA−Mの各出力端子とテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRのチャンネルの関係性を調べてから、このインパルス応答測定を実行する必要がある。なお、この接続チャンネルの関係性を調べる手法については、例えば、後述する「複数機器間の接続解析方法」などがある。
そして、上述したように、ステップS101〜ステップS107の処理により、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRに関する測定が終了したら、図7に示すステップS108からステップS114の処理により、コントロール機器2に直接繋がっている外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCについての測定に移る。
すなわち、システムコントローラ22Aは、図7に示す処理に進み、図6に示したステップS101の処理と同様にして、コントロール機器2からテレビ受像機3のボリューム制御(音量制御)が可能か否かを判断(検証)する(ステップS108)。ステップS108の判断処理において、コントロール機器2からテレビ受像機3のボリューム制御(音量制御)が可能であると判断したときには、コントロール機器2からテレビ受像機3を制御して、そのときのテレビ受像機3のボリューム値を記憶保持した後に、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから音声を放音することがないように、ミュートするようにする(ステップS109)。
ステップS108の判断処理において、コントロール機器2からテレビ受像機3のボリューム制御(音量制御)が可能ではない(不能である)と判断したときには、シーケンスコントローラ22Aは、手動でテレビ受像機3のボリューム値を下げておくように指示するメッセージを、図示しないが、例えばコントロール機器2が備えるLCD(Liquid Crystal Display)に表示するなどして、ユーザーに対して、テレビ受像機3のボリューム値(音量値)を手動で調整することを指示する(ステップS110)。
なお、このステップS110の処理は、上述したステップS104の処理と同様に、ユーザーに対するメッセージを、例えば、コントロール機器2内において形成し、これをプリアウト端子群OA−Mを通じてテレビ受像機3に供給し、テレビ受像機3の画像表示部33の表示画面に表示するようにしてもよい。また、表示メッセージに限るものではなく、音声メッセージを用いるようにすることも可能である。音声メッセージを用いる場合には、コントロール機器2内で形成した音声メッセージをテレビ受像機3に供給して、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音したり、コントロール機器2に接続されている外部スピーカoL、oRなどから放音したりすることが可能である。
このように、必ずしもテレビ受像機3の音量制御をコントロール機器2側から自動的に行うことができなければならないわけではなく、コントロール機器2がテレビ受像機3の音量を制御不能と判定した場合には、ユーザーへのメッセージを出力することで、測定の前と後にテレビ受像機3側の音量設定を促し、意図した音量やミューティング状態を確保することもできる。
ステップS109またはステップS110の処理の後、コントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号(TSP信号)を生成すると共に、出力切換部22Cを制御して、生成した測定信号を外部スピーカ(図7においては外部SPと記載)oL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれに供給するようにし、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれから測定信号に応じた音声を放音するようにする(ステップS111)。
この第1の実施の形態においては、図4を用いて説明したように、コントロール機器2のスピーカ出力端子群OAS−Mの各スピーカ出力端子のそれぞれには、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCが接続されているので、コントロール機器2からの測定信号は、確実に各外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCに供給され、測定信号に応じた音声が各外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから放音される。
なお、上述のように、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRからは音声が放音されないようにミュートされているが、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから音声が放音されないように、コントロール機器2内の出力切換部22Cを適切に切り換え制御するようにしてもよい。
そして、図4、図5を用いて説明したように、想定用マイクロホンMICで集音された測定信号についての応答信号は、マイク入力端子Minを通じてコントロール機器2に供給され、マイクアンプ26で増幅されてADCでデジタル信号に変換された後に、応答信号解析部22Dに供給されて、インパルス応答が測定される(ステップS112)。
そして、この第1の実施の形態においては、測定信号としてTSP信号を用いているので、応答信号解析部22Dは、再生スピーカである外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCからリスニング位置(聴取位置)にある測定用マイクロホンMICまでのインパルス応答を測定・算出することができる。
応答信号解析部22Dは、測定したインパルス応答を解析し、音速を考慮することで測定信号の再生を始めた時間を基準とする音声信号についての遅延時間(遅延量)を算出し、算出した遅延時間を設定値保存メモリ27の遅延時間テーブルに記憶保持する(ステップS113)。このステップS113の処理は、ステップS107の処理と同様の処理である。外部スピーカの場合には、システムディレイなどを除けば、音の空間伝播遅延がそのまま遅延として現れる。
そして、シーケンスコントローラ22Aは、自機がテレビ受像機3のボリューム制御可能なものである場合には、ステップS109の処理において、テレビ受像機3のボリュームをミュートする前に記憶保持したボリューム値を読み出して、テレビ受像機3のボリューム値をミュート前の値に戻し(ステップS114)、この図6、図7に示す処理を終了する。
なお、ステップS114において、ボリューム値をミュート前の値に戻すようにしておくことにより、映像音響再生システムがユーザーの意図しない音声出力を行うことを防止することができる。すなわち、この第1の実施の形態の映像音響再生システムは、図4に示したように、テレビ受像機3の内蔵スピーカと外部スピーカとの両方を用いるものである。
しかし、実際には、図2に示したように、音声信号の再生は、テレビ受像機3の内蔵スピーカを用いることなく、外部スピーカのみを用いるようにしている場合もあると考えられる。しかし、図6、図7に示した処理の主たる目的は、テレビ受像機3における画像処理にかかる時間に起因して音声信号に対して施す遅延処理の遅延量(遅延時間)を測定することである。
したがって、テレビ受像機3の内蔵スピーカを用いていない場合であっても、当該に像スピーカから放音される音声の測定をS/N良く行う必要がある。このため、内蔵スピーカから音声を放音して測定するようにした後において、内蔵スピーカからの音声の放音状態(ボリューム値の状態)を元に戻しておくことにより、内蔵スピーカを使用しないシステムにおいて、内蔵スピーカから音声が放音されることを防止することができる。
もちろん、テレビ受像機3の内蔵スピーカを用いる態様の音声再生システムの場合にも、図6、図7に示した処理を実行したために、テレビ受像機3の内蔵スピーカから放音される音声が、小さくなってしまったり、逆に大きくなってしまったりするなどの不都合をも防止することができる。
そして、図6、図7を用いて説明した音声信号の遅延量の測定処理により測定された、テレビ受像機3の内蔵スピーカから放音される音声の遅延量と、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから出力される音声の遅延量とに基づいて、音声再生時おけるコントロール機器2の各音声チャンネルの遅延量を適切に制御することによって、いわゆるリップシンクのずれを生じさることがないようにすることができる。
すなわち、再生時は基本的に、テレビ受像機3の内蔵スピーカ、外部スピーカを合わせ、すべてのスピーカから放音される音声の遅延量が同じになるように、再生時にコントロール機器2内において、各音声チャンネルについての遅延(ディレイ)を調整する。この場合、一般的なスピーカタイムアライメントを合わせるのと同様に調整が可能である。
図8は、この第1の実施の形態の映像音響再生システムにおける映像の再生タイミングと、各音声チャンネルの音声信号の再生タイミングとを説明するための図である。この内、図8Aは遅延補正前の状態を、図8Bは遅延補正後の状態を示している。なお、測定した遅延時間に応じた遅延補正処理を含むコントロール機器2における音声信号の再生プロセスの詳細については後述する。
図8Aに示すように、音声信号についての遅延補正前においては、上述もしたように、テレビ受像機3の内部においてだけ、画像処理部32における画像処理にかかる時間に応じて、各音声チャンネルの音声信号に対してのみ遅延処理を施すことができる。このため、テレビ受像機3の内蔵スピーカから放音される音声の応答、すなわち、TVL応答とTVR応答だけが再生される映像の同期と一致しており、外部スピーカoL、oRなどから放音される音声の応答は、再生される映像の同期とはずれることになる。
しかし、図6、図7を用いて説明した音声信号の遅延量の測定処理を実行することにより、各スピーカから放音される音声信号についての遅延量を正確に測定することができるので、これに応じて、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声と同期が合うように、外部スピーカoL、oS、oSL、oSR、oCから放音される音声の音声信号に対して遅延処理を施すようにする。
図8AではTVL応答、TVR応答のインパルス応答からわかるように、両者はマイクまでの距離差のために、正確に同じ遅延時間ではない。しかしながら前述したTV機器内部の時間調整により、ほぼ映像出力タイミングと一致している。図8Aのデータでは、TVR応答に比べTVL応答の方が、遅延量がやや大きいため、ここではTVL応答の遅延時間を基準遅延時間とする。
なお、基準遅延時間の決め方は、テレビ受像機3内蔵スピーカの結果のうち、両者の平均や、特定の片側を使う、遅延の少ない方を使う、など多々手法が考えられるが、映像によって起こる遅延量から比べれば、極めて小さい問題であり、これはどの方法でも問題がない。
そして、詳しくは後述するが、コントロール機器2において、外部スピーカoL、oS、oSL、oSR、oCに供給する音声信号に対して、当該基準遅延時間と、外部スピーカoL、oS、oSL、oSR、oCから放音される音声の遅延時間をも考慮して適切に遅延量を定め、遅延処理を施すことによって、図8Bに示すように、外部スピーカから放音される音声についても、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声に対して同期を合わせるようにすることができる。
ただし、図8Aにおいては、何らかの原因で外部スピーカoCから放音される音声信号についての遅延量が、基準遅延時間より大きくなっている。映像による遅延時間は音の空間伝播に比べて相当大きいため、図8Aに示した外部スピーカoCから放音される音声信号についての遅延量が特別大きくなるということは、通常は発生しにくい事象である。
このような場合には、因果律から見てディレイを調整して基準遅延時間に近づけることはできないので、何も操作をしていない。従来からあるタイムアライメントの概念から言えば、一番遅延量の大きい外部スピーカoCを基準として、他の信号すべてをディレイ処理するが、ここでは行わない。理由としては、図8においてリップシンクの概念から映像信号と最も良く同期がとれているものは、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声信号であることは明らかなためである。
このように、音声信号の遅延量を補正する場合において重要なことは、到達が一番遅いものにすべての応答時間を合わせるようにディレイ装置を働かせるのではない。TV内蔵スピーカから放音される音声の再生タイミングに、他の音声チャンネルの音声の再生タイミングを合わせるようにすることである。
また、第1の実施の形態で用いた手法は、主としてリスニング位置における測定用マイクホン(コントロール機器2に接続される)が必須であり、音の伝播空間とテレビ受像機3の画像遅延相当の遅れを含めた遅延時間を測定解析し、再生時にこれらの時間関係を補正することができるものである。
なお、この第1の実施の形態においては、上述もしたように、まず、第1段階としてテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから測定信号に応じた音声を放音させ、これを測定用マイクロホンMICで受音し、受音して得た測定信号についての応答信号を解析することにより、テレビ受像機3において発生する音声信号についての遅延量を正確に測定して、設定値保存メモリ27に格納する。
そして、第2段階として、コントロール機器2に接続された外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから測定信号に応じた音声を放音させ、これを測定用マイクロホンMICで受音し、受音して得た測定信号についての応答信号を解析することにより、外部スピーカから放音される音声信号についての空間伝播遅延量を正確に測定して、設定値保存メモリ27に格納する。
この後、設定値保存メモリ27に記憶保持された第1段階の処理で測定された遅延量(テレビ受像機3で発生する音声信号についての遅延量)と、第2段階の処理で測定された遅延量(外部スピーカから放音される音声の空間伝播遅延量)とに基づいて、少なくとも外部スピーカに供給する音声信号に対して、リップシンクを生じさせることが無いように、適切な遅延量を設定し、これに応じて外部スピーカに供給する音声信号に対して遅延処理を施すようにしている。
しかし、これに限るものではない。第2段階の処理で測定される遅延量(外部スピーカから放音される音声の空間伝播遅延量)は比較的に小さなものである場合が多いと考えられるので、例えば、上述した第1段階の測定処理だけを行って、テレビ受像機3で発生する音声信号についての遅延量だけを正確に測定し、これに基づいて、コントロール機器2において再生する音声信号に対する遅延処理を施すようにしてもよい。
また、上述したように、第1段階の測定と、第2段階の測定との両方を行うようにした場合であって、図8Cの外部スピーカoCに示したように、テレビ受像機3の内蔵スピーカから放音される音声よりも遅延した音声が放音するようにされている場合には、最も遅延した音声信号を基準として、コントロール機器2を通じて再生する音声信号に対する遅延量を設定するようにしてもよい。
また、図6、図7のフローチャートを用いて説明した処理は、この発明による方法が適用されたものである。また、図6、図7のフローチャートを用いて説明した処理を実行するプログラムが、この発明によるプログラムである。したがって、図6、図7に示したフローチャートの各ステップを実行するプログラムを形成し、これをコントロール機器に搭載して実行できるようにしておくことによって、種々のコントロール機器に、第1の実施の形態として説明した発明を適用することができる。
[複数機器間の音量制御可否判定方法、音量同期方法、接続解析方法について]
次に、上述もしたように、この第1の実施の形態の音声信号の遅延時間の測定処理において、あるいは、当該遅延時間の測定処理を実行する前に行う、複数機器間の音量制御可否判定方法、音量同期方法、接続解析方法のそれぞれについて説明する。
[複数機器間の音量制御可否判定方法について]
まず、複数機器間の音量制御可否判定方法について説明する。図9〜図13は、第1の実施の形態で用いることが可能な複数機器間の音量制御可否判定方法について説明するための図である。
図9は、上述した第1の実施の形態のコントロール機器2において実行可能な複数機器間の音量制御可否判定方法における判定プロセスの具体的なシーケンスを説明するためのフローチャートである。また、図10は、例えば、上述した第1の実施の形態のコントロール機器2とテレビ受像機3との間において使用が想定されるインターフェイスの具体例と判定の優先順位とについて説明するための図である。
第1の実施の形態のコントロール機器2は、図9に示す処理を実行することにより、テレビ受像機3の音量制御が可能か否かを判定するが、自機が実装しており、かつ、外部機器の音量制御(外部ボリューム制御)が可能と思われるインターフェイスのうち、信頼性や精度などを考えて、図10に示したような、予め優先順位をもつ測定順番のリストに従い、インターフェイスの試行を進めるものである。
図10に示した測定順番のリストのように、先に測定するもの程、信頼性や精度が高いような順番にしておけば、外部ボリューム制御可能と判定した時点でこの測定・判定を終了することができ、効率的である。しかも、信頼性や精度が高いインターフェイスで制御可能であるのに、信頼性や精度が低いインターフェイスでも制御可能であったために、この信頼性や精度が低いインターフェイスを用いるようにしてしまうなどの不都合をも防止することができる。
なお、この実施の形態のコントロール機器2においては、図10に示したように、信頼性や精度の高い、デジタルインターフェイス(HDMI、IEEE1394)について判定した後に、リモコンインターフェイスについて判定を実行するようにしている。
また、赤外線のリモコン信号の送信フォーマットは、メーカー毎に異なっているため、すべてのコード(送信フォーマット)の試行が準備される。すなわち、第1の実施の形態のコントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aにおいては、想定される送信フォーマットの異なる全てのリモコン信号を形成して送出するようにすることができるものである。
以下に詳述する図9に示すシーケンスでは、送信フォーマットの異なるリモコン信号を用いる複数のリモコンインターフェイスをも含め、それぞれの該当インターフェイス毎に、音量制御を試行し、その応答を解析する。通常、これらのリモコン設定は、ユーザーが自ら機器のメーカー名を調べた後に、コントロール機器2に対して入力設定する必要がある。
しかし、リモコンインターフェイスで音量制御が可能である場合には、どの送信フォーマットのリモコン信号によって制御が可能であるかが判定できるので、コントロール機器2がどの送信フォーマットを用いるかの設定をユーザーの手を煩わせることなく自動で行うことが可能となり、ここで示すリモコンのメーカー自動設定機能はユーザーの利便性を向上させることができる。
以下、判定プロセスの詳細なシーケンスについて説明する。判定プロセスを実行するための所定の操作をコントロール機器2に対して直接に、あるいは、コントロール機器2の図示しないリモコンを通じて行うことにより、コントロール機器2の信号処理部22においては、図9に示す処理を開始する。
上述もしたように、信号処理部22は、シーケンスコントローラ22A、測定信号生成部22B、出力切換部22C、応答信号解析部22Dの各機能を実現し、まず、シーケンスコントローラ22Aの機能を用いて、テレビ受像機3の音量制御が可能か否かの判定の対象となる制御I/Fを1つ進めて特定する(ステップS201)。スタート直後のステップS201の処理においては、最初の制御I/FであるHDMIの制御信号線路を通じてテレビ受像機の音量制御を行うようにされる。
そして、HDMIやIEEE1394などの最近のデジタルインターフェイスでは、双方向の機器制御信号を持っており、物理的に接続した時点で機器制御信号の送受を行い相互に通信が可能か否かを確認するいわゆるハンドシェイク(Hand Shake)を確立したかどうかの確認を行うものも増えている。
そこで、この実施の形態のコントロール機器2において、判定対象の制御I/Fは、HDMIやIEEE1394などの制御信号線路を有する双方向通信のデジタルインターフェイスの場合には、ハンドシェイクが確認できたか否かを判断する(ステップS202)。ステップS202の判断処理において、ハンドシェイクが確認できなかったと判断したときには、当該デジタルインターフェイスを通じてテレビ受像機3の音量制御を行っても無駄であるので、ステップS201からの処理を繰り返すようにし、次の制御I/Fを選択するようにしている。
ただし、リモコンインターフェイスの場合には、当然単方向であるため、実際にコントロール機器2がリモコン信号の制御信号を送信しても、それが効果を持って働くかどうかはテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRの応答を解析するまでわからない。このため、判定対象の制御I/Fがリモコンインターフェイスなどの単方向インターフェイスの場合には、ステップS202の判断処理はバイパスするようにされる。すなわち、判定対象の制御I/Fがリモコンインターフェイスなどの単方向インターフェイスの場合には、ステップS202の判断処理は行われない。
そして、ステップS202の判断処理において、ハンドシェイクの確立が確認できた場合、あるいは、判定対象の制御I/Fが単方向インターフェイスであるためにステップS202の判断処理がバイパスされた場合には、シーケンスコントローラ22Aは、音量制御信号を形成して、これを現在選択している制御I/Fを通じてテレビ受像機3に送信し、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音する音声の音量(ボリューム)を最小(ミュート状態)に設定する(ステップS203)。
次に、信号処理部22内のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号(テスト信号)を生成すると共に、出力切換部22Cを制御して、測定信号生成部22Bからの測定信号を、DAC23および映像音声プリアウト端子群のLチャンネルの出力端子とRチャンネルの出力端子とを通じてテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRに供給するようにする(ステップS204)。
なお、測定信号の生成は、所定の信号処理によって自動生成してもよいし、例えば信号処理部内等のメモリに予め用意されている測定信号を読み出して出力するようにしてもよい。また、特別に測定信号を用いるのではなく、再生機器1から供給を受ける音声信号を用いるようにしてもよい。この場合、再生機器1からの音声信号を目的とするチャンネルに送出するように選択してもよい。
信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号を再生するようにしながら(テレビ受像機3に供給しながら)、音量制御信号を形成し、これをテレビ受像機3に供給することにより、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音する音声の音量を予め決められたステップ分上げるようにする(ステップS205)。ここで音量のステップは、各インターフェイスでの制御単位とする。
なお、1ステップ増加を制御すると、実際の音圧がどれぐらい上がるかは、デジタルインターフェイス系では、それぞれの規格で定められている場合もある。またリモコンは各メーカーによって基準がまちまちであるが、各社統一がとれていないにしろ、ヒューマンインターフェイスの概念から、1ステップに対しての音量の増減に関して極端に違いがないと考えられる。
このため、インターフェイスごとに全く実際の増減量が異なる「1ステップ」毎に制御して測定信号再生・応答信号受音をしていくよりは、実質的に約+3dB〜+6dBづつ単調増加していくようなステップ数を予め換算しておき、この換算したステップ数に応じて試行を行うようにした方が効率的で好ましい。
そして、例えばユーザー(視聴者)のリスニング位置には、図4に示したように測定用マイクロホンMICが設置されており、これはコントロール機器2に接続されているので、後述もするように、コントロール機器2の内部にて測定信号の応答音(応答信号)を、その空間における種々の影響をも含めた形で受音し、これを信号処理部22の応答信号解析部22Dにおいて周波数解析し、得られた結果を規定値保存メモリ27に記録する(ステップS206)。
次に、信号処理部22は、シーケンスコントローラ22Aの機能により、制御I/Fを通じてテレビ受像機3に供給した音量制御信号のボリュームの制御値である制御音量値(制御VOL値)が閾値を超えたか否かを判断する(ステップS207)。このステップS207の判断処理は、放音される音声の音量が異常に増大することを防ぐための処理である。
ステップS207の判断処理において、制御音量値が閾値を超えていないと判断したときには、信号処理部22は、応答信号解析部22Dの機能により、受音した応答信号の受音音圧の換算レベル(音圧相当値)が規定の閾値を超えたか否かを判断する(ステップS208)。このステップS208の判断処理は、スピーカ破損、騒音曝露を防ぐための処理である。
ステップS208の判断処理において、受音した応答信号の音圧相当値が規定の閾値を超えていないと判断したときには、シーケンスコントローラ22Aの機能によって、ステップS205からの処理を繰り返すようにする。すなわち、制御音量値を上げて、そのときに測定用マイクロホンMICで受音した応答信号を周波数解析して音圧相当値を得て、その結果をデータベースに記録する処理を繰り返す。
ステップS208の判断処理において、受音した応答信号の音圧相当値が規定の閾値を超えたと判断した場合、あるいは、ステップS207の判断処理において、制御音量値が閾値を超えたと判断したときには、応答信号解析部22Dの機能を用い、ステップS206の処理において設定値保存メモリ27に記録したデータに基づいて、現在選択している制御I/Fを通じて、テレビ受像機3の音量制御が可能か否かを判断する(ステップS209)。
ステップS209の判断処理において、現在選択している制御I/Fを通じて、テレビ受像機3の音量制御が可能ではないと判断したときには、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、ステップS201からの処理を繰り返し、次の制御I/Fについて、上述したステップS202からステップS209の処理を行うようにする。
ステップS209の判断処理において、現在選択している制御I/Fを通じて、テレビ受像機3の音量制御が可能であると判断したときには、テレビ受像機3の音量制御が可能な制御I/Fを特定(判定)することができたので、この図9に示す処理を終了する。
このように、使用が想定される複数の制御I/Fのそれぞれ毎に、音量制御信号によってテレビ受像機3の音量制御を行うようにしながら、測定信号をテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音し、この測定信号に応じた音声を測定用マイクロホンMICで受音することにより得た応答信号の変化と、音量制御信号のボリューム制御値(制御音量値)の変化との関係から、音量制御が可能な制御I/Fを特定することができる。
なお、信号処理部22の測定信号生成部22Bにおいて生成する測定信号は、周波数特性が既知の広帯域のノイズまたは信号であれば特段規定はない。例えば、TSP(Time Stretched Pulse)信号でも良いし、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、M系列ノイズなどの広帯域ノイズであってもよい。
図11は、測定信号としてのTSP信号に応じた音声をテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音し、これを測定用マイクロホンMICで受音することにより得た応答信号を周波数解析(この実施の形態においてはFFT(Fast Fourier Transform))した結果を示すグラフである。図11に示したような測定結果が得られた場合、例えば300Hz〜3kHzにおけるレベル平均値を、音量制御が可能か否かの判定に用いる測定結果とする。
図12A、Bは、コントロール機器2側からはリモコンインターフェイスを通じて音量制御信号を送信してテレビ受像機3の音量制御を行うようにした場合の測定結果を示しており、制御音量値(制御VOL値)をX軸とし、図11に示した300Hz〜3kHzにおけるレベル平均値を音圧換算した値(音圧相当値)をY軸として表した測定結果のグラフである。
この図12A、Bは、音量制御のステップ数を「3」とし、0、3、6、…、のように、制御音量値を順次に上げて送信するようにした場合において、各制御音量値に対応するようにに、応答信号のレベル平均値を音圧換算することにより得た音圧相当値をプロットしたものである。また、制御音量値の最大限界閾値は30、音圧相当値の最大限界閾値は82dBとしている。
なお、ここでは、制御音量値を3ステップづつと言うように、一定ステップで増加させるようにしたが、これに限るものではない。音量制御のステップ数自体を徐々に大きくするなど、変化させるようにしてももちろんよい。
そして、図12Aは、制御音量値が「30」という最大限界閾値に達したので、これ以上の測定を行わず終了した場合の例であり、図12Bの場合には、測定結果としての音圧相当値が「82dB」という最大限界閾値以上になったので、この時点で測定を終了した場合の例である。
この図12A、Bに示したように得られる測定結果に基づいて、コントロール機器2がテレビ受像機3の音量制御が可能か否かの判定を行うことになる。この判定は、応答信号の測定シーケンスとは逆の順番、つまり、有効な測定が行われた最後(一番大きい制御音量値)時点の音圧相当値をスタートとする。
これはS/Nの大きな部分の測定結果の方が、信頼性が高いためである。この値を基準として、制御音量値(図12A、図12Bの横軸)を逆方向(制御音量値が減少していく方向)に見て、連続した「単調減少」が認められる範囲が何ステップ相当分に及ぶかを計算し、この計算結果と閾値と比較することで判定を行う。
一番大きな制御音量値を基準として、単調減少が認められるステップ数をカウントすると、図12Aの場合には、制御音量値が「30」〜「27」までの3ステップであり、図12Bの場合には、制御音量値が「27」〜「9」までの18ステップであることが分かる。このようにして計算された単調現象の区間のステップ数と比較する閾値を例えば10ステップとする。
したがって、10ステップ以上の単調現象の区間が認められれば制御可能であると判定するものとすれば、図12Aに示した例の場合には、単調減少の区間のステップ数は3ステップであるので、制御不能であると判定し、図12Bに示した例の場合には、単調減少の区間のステップ数は18ステップであるので、制御可能であると判定することができる。
また、上述した制御可否の判定処理において、予め制御音量値ゼロ近辺で測定した音圧相当値を暗騒音とみなして、この値をすべての測定値から減算することで精度を高めることもできる。
図13は、この第1の実施の形態のコントロール機器2の信号処理部22において行われる、テレビ受像機3の音量制御が可能か否かの判定処理を説明するためのフローチャートである。この図13に示す処理は、図9に示した判定プロセスのステップS209において行われる処理に相当するものである。
そして、コントロール機器2の信号処理部22は、応答信号解析部22Dの機能を用いて、図13に示す処理を実行する。まず、応答信号解析部は、図9に示した処理のステップS206が繰り返し実行されることにより、設定値保存データベース29に記録された測定結果に基づいて、図12A、Bに示したように、X軸を制御音量値、Y軸を音圧相当値とする測定結果のグラフを作成して、一番制御音量値の大きいときの音圧相当値を基準として特定する(ステップS301)。
次に、応答信号解析部22Dは、特定した音圧相当値からX軸を逆方向にたどるようにして、連続した単調減少の区間が何ステップあったかを計算する(ステップS302)。そして、ステップS302で計算した単調現象区間のステップ数が、予め決められた閾値(例えば10ステップ)以上か否かを判断する(ステップS303)。
ステップS303の判断処理において、単調現象区間のステップ数が、予め決められた閾値以上であると判断したときには、コントロール機器2はテレビ受像機3の音量制御が可能であると判定し(ステップS304)、この図13に示す処理を終了する。また、ステップS303の判断処理において、単調現象区間のステップ数が、予め決められた閾値以上ではないと判断したときには、コントロール機器2はテレビ受像機3の音量制御は不能であると判定し(ステップS305)、この図13に示す処理を終了する。
なお、ステップS304において、テレビ受像機3の音量制御が可能であると判定したときには、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、制御に用いているインターフェイスは何かを把握しているので、シーケンスコントローラ22Aの機能を用いることにより、テレビ受像機3の音量制御が可能なインターフェイスも特定することができる。
そして、テレビ受像機3の音量制御を行うようにしているインターフェイスが、リモコンインターフェイスである場合には、用いるリモコン信号のフォーマットも特定できるので、コントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aに対して、以後用いるリモコン信号のフォーマットの設定(メーカ−の設定)を自動的に行うようにすることもできる。
このようにして、コントロール機器2は、テレビ受像機3の音量制御が可能か否か、可能な場合にはどのインターフェイスを用いて制御可能なのかを適切に判定することができる。そして、コントロール機器2がテレビ受像機3の音量制御が可能な場合には、コントロール機器2の例えばリモコンを通じて音量調整指示が入力された場合に、コントロール機器2において、外部スピーカoSL、oSR、oCから放音する音声の音量を調整すると共に、特定したインターフェイスを通じて、コントロール機器2がテレビ受像機3の音量を制御することができるようにされる。
なお、音量の調整単位は、メーカー間においては、あるいは、機器間においても統一されておらず、ばらばらであるために、従来は、各機器に対して音量調整を個別に行う必要があった。また、ボリューム値(リモコンのレベル)と音量の関係も一般的にはリニアでない場合が多い。例えば、機器の操作利便性を高めるために、同じボリューム値変化であっても小さい音では小さく、大きい音では大きく刻まれる場合や、ラウドネスを考えて独自のカーブが設定されている場合もある。
このため、例えば、コントロール機器2に対して、リモコンのボリュームアップキーを1回だけ操作して、音量を上げた場合であっても、テレビ受像機3に対しては、ボリュームアップキーを3回操作しないと、テレビ受像機の内蔵スピーカからの放音音声と、外部スピーカからの放音音声とのつり合いが取れないといったことが発生する可能性がある。
そこで、上述したコントロール機器2がテレビ受像機3の音量制御を行うことができるか否かを判定する処理の場合と同様に、音量制御が可能であると判定されたインターフェイスを通じてテレビ受像機3に音量制御を行いながら、所定の測定信号をテレビ受像機3に供給して内蔵スピーカTVL、TVRから放音するようにする。そして、聴取位置(リスニングポイント)に設置した測定用マイクロホンMICで測定信号に応じた音声を受音することにより測定信号の応答信号を得て、この応答信号の音圧レベルと、そのときの制御音量値とを対応付けて記録し、制御音量値と応答信号の音圧レベルとの対応付けテーブルを作成しておく。
このように、制御音量値と音圧レベルとの対応付けテーブルを作成しておけば、コントロール機器2がリモコン100からのリモコン信号に応じて、外部スピーカから放音する音声の音量を調整した場合に、対応付けテーブルを参照して、同じ音量となる制御音量値を特定して、これを用いてテレビ受像機3の音量を制御することにより、外部スピーカの音量に追従するように、テレビ受像機3の音量制御をコントロール機器2を通じて行うことができるようにされる。
そして、コントロール機器2がテレビ受像機3の音量制御が可能か否かの判定と、音量制御が可能な場合のインターフェイスの特定とを、自動的にしかも適切に行うことができるようにしておくことは、図4に示したように、テレビ受像機などのスピーカ内蔵機器を用いて、マルチチャンネルの映像音響再生システム(聴取システム)を構築する場合において重要な技術である。
なお、上述した実施の形態においては、コントロール機器2に接続されたスピーカ内蔵機器は、テレビ受像機3だけであったが、これに限るものではない。コントロール機器2に対して、複数のテレビ受像機などのスピーカ内蔵機器が接続されたり、あるいは、パワーアンプ等のスピーカが接続されるスピーカ接続機器が複数接続されたりする場合であっても、また、1以上のスピーカ内蔵機器や1以上のスピーカ接続機器が接続されている場合であって、接続されたスピーカ内蔵機器やスピーカ接続機器毎に、図9に示した処理を実行することにより、音量制御が可能か否か、可能である場合にはそのインターフェイスはどれかを適切に判定することが可能である。
また、上述した実施の形態において、測定用MICは、聴取位置(リスニングポイント)に設置するものとして説明したが、これに限るものではない。測定用マイクロホンMICは、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声を受音することが可能な任意の位置に設置することができる。
また、測定信号としては、測定用に生成するTSP信号、各種ノイズ信号の他、再生装置から供給される再生音声信号を測定信号として用いるようにしてもよい。
また、上述した実施の形態において、重要なポイントとして、以下に示す(1)〜(4)の4つのポイントをあげることができる。すなわち、
(1)1つ以上の外部機器音量制御インターフェイスを持つコントロール機器に関して、外部機器と制御線及び信号線を接続(無線接続を含む)した上で、測定信号を再生しながら、小さい制御音量値から単調増加させ、既定音量値または受音場所にて既定音圧値までの音量制御を試す。外部機器が内蔵するスピーカから再生された測定信号は測定用マイクで受音し、コントロール機器内でそれぞれの制御音量値ごとに周波数解析し、当該帯域の平均レベルをメモリに記録するなどし、この測定結果に基づいて音量制御可能か否かの判定を行う。
(2)(1)の測定に続く解析において、有効測定を行った最大制御音量値を基準値として、制御音量値が小さくなる方向に見て、連続単調減少を示す相当ステップ数が既定閾値よりも小さければコントロール機器2からの音量制御不能、大きければ音量制御可能と判定する。
(3)複数の外部機器音量制御インターフェイスを持っていた場合、決められた優先順位に基づいて、各インターフェイスを順次選択して上記(1)の測定処理を行うことで、最も信頼度の高い音量制御インターフェイスを特定する。
(4)各機器メーカーの対応するリモコン信号コードをコントロール機器2内に記憶しておき、これを順次(1)(2)の要領で音量制御可否判定を行い、ユーザーが自分でコントロール機器2に対してメーカー名等を設定するまでもなく、自動的に対応外部機器のメーカーを検出し、リモコン信号のフォーマットを特定するコード設定を行うことを可能にする。
そして、(1)のポイントを実現することにより、また、(1)のポイントに対して、(2)〜(4)のポイントを組み合わせて用いることにより、コントロール機器がテレビ受像機等のスピーカ内蔵機器やパワーアンプ等のスピーカ接続機器であるスピーカ機器の音量を制御可能か否かを適切に判定することができると共に、制御可能である場合には、どのインターフェイスを通じて制御可能であるかも正確に判定することが可能となる。
また、図9に示した処理では、音量制御が可能な制御インターフェイスが見つかった段階で当該処理を終了しているが、これに限るものではない。想定された制御インターフェイスの全てについて、図9に示した処理を実行し、その結果、音量可能な制御インターフェイスであって、音量制御に用いるべき制御インターフェイスを特定するようにしてもよい。
このようにした場合には、音量制御が可能な複数の制御インターフェイスが存在していた場合には、制御対象の機器などをも考慮して、最適な制御インターフェイスを選択することが可能となる。
このように、この第1の実施の形態の映像音響再生システムにおいては、コントロール機器2が、テレビ受像機3に対して、音量制御を適切に行うことができるか否かを適切に判定することが可能である。また、ここで説明した複数機器間の音量制御可否判定方法については、本願発明者による先の出願である特願2006−128173においても詳細に説明されている。
[複数機器間の音量同期方法について]
次に、複数機器間の音量制御可否判定方法について説明する。図14〜図19は、第1の実施の形態で用いることが可能な複数機器間の音量同期方法について説明するための図である。
図14、図15は、この実施の形態の映像音響再生システムにおいて行われる測定プロセスのシーケンス(処理順序)を説明するためのフローチャートであり、主に、コントロール機器2の信号処理部22において実行される処理である。なお、以下に説明するように、図14に示す処理が、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声についての測定プロセスであり、図15に示す処理が、外部スピーカoSL、oSR、oCから放音される音声についての測定プロセスである。
測定プロセスを実行するための所定の操作をコントロール機器2に対して直接に、あるいは、コントロール機器2の図示しないリモコンを通じて行うことにより、コントロール機器2の信号処理部22においては、図14、図15に示す処理を開始する。信号処理部22は、上述もしたように、シーケンスコントローラ22A、測定信号生成部22B、出力切換部22C、応答信号解析部22Dの各機能を実現し、まず、シーケンスコントローラ22Aの機能を用いて、音量制御信号を形成し、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音する音声の音量(ボリューム)を最小に設定する(ステップS401)。
上述した第1の実施の形態の映像音響再生システムにおいては、図4にも示したように、コントロール機器2の制御信号の出力端2oとテレビ受像機3の制御信号の入力端3iとが接続され、コントロール機器2の制御信号の入力端2iとテレビ受像機3の制御信号の出力端3oとが接続されて、相互に制御信号の送受を行うことができるようにされている。
このため、音量制御信号が接続された制御信号線路を通じてコントロール機器2からテレビ受像機3に供給される。これにより、テレビ受像機3においては、音量コントローラ34によってAMP33L、AMP33Rが制御され、内蔵スピーカTVL、TVRから放音する音声の音量が最小となるようにされる。
そして、信号処理部22内のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号(テスト信号)を生成すると共に、出力切換部22Cを制御して、測定信号生成部22Bからの測定信号を、DAC23および映像音声プリアウト端子群のLチャンネルの出力端子とRチャンネルの出力端子とを通じてテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRに供給するようにする(ステップS402)。なお、測定信号の生成は、所定の信号処理によって自動生成してもよいし、例えば信号処理部内等のメモリに予め用意されている測定信号を読み出して出力するようにしてもよい。
信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号を再生するようにしながら(テレビ受像機3に供給しながら)、音量制御信号を形成し、これをテレビ受像機3に供給することにより、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音する音声の音量を上げるようにする(ステップS403)。
そして、ユーザー(視聴者)のリスニング位置には、図4に示したように測定用マイクロホンMICが設置されており、これはコントロール機器2に接続されているので、後述もするように、コントロール機器2の内部にて測定信号の応答音(応答信号)を、その空間における種々の影響をも含めた形で測定することが可能となる。
そして、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、音量制御信号によって制御するテレビ受像機3に対する制御音量値(ボリューム設定)等が予め定められた閾値以上になったか否かを判断する(ステップS404)。このステップS404の判断処理において、テレビ受像機3に対する制御音量値(ボリューム設定)が予め定められた閾値以上になったと判断したときには、接続に何らかのトラブルがあると推定されるため、ワーニングメッセージをユーザーに提示して(ステップS405)、この図14、図15に示す処理を終了する。
また、ステップS404においては、測定用マイクロホンMICで測定した応答信号の音量レベルが、予め決められた閾値以上になった場合においても、スピーカ破損の危険性があるので、ワーニングメッセージをユーザーに提示して(ステップS405)、この図14、図15に示す処理を終了する。
ワーニングメッセージの提示態様としては、コントロール機器2が備えるLCD(Liquid Crystal Display)などの表示素子に、「接続状態に異常の可能性あり。確認してください。」などのメッセージを表示すると共に、コントロール機器2から警告音を放音したり、あるいは、メッセージ表示と警告音との内の何れか一方を行うようにしたりすればよい。この場合、信号処理部22の制御下にLCDや警告音の発生部を設けるようにしておけばよい。
また、LED(Light Emitting Diode)を点等させたり、点滅させたりすることによって警告を行うようにしたり、音声により警告メッセージを放音することも可能である。また、テレビ受像機3に供給する映像信号に警告メッセージを合成して提供し、警告メッセージをテレビ受像機3の画像表示部に表示してユーザーに提供するようにしてもよい。
そして、ステップS404の判断処理において、テレビ受像機3に対する制御音量値(ボリューム設定)等が予め定められた閾値以上になっていないと判断したときには、応答信号解析部22Dの機能を用いて、測定用マイクロホンMICを通じて、測定信号の安定した応答を測定できたか否かを判断する(ステップS406)。
ステップS406の判断処理において、安定した応答が測定できていないと判断したときには、シーケンスコントローラ22Aの機能により、ステップS403からの処理を繰り返し、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音する音声の音量を上げて、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される測定信号に応じた音声を測定用マイクロホンMICで受音する処理を続行する。
ステップS406の判断処理において、安定した応答が測定できたと判断したときには、まず、信号処理部22が実現する応答信号解析部22Dの機能により、測定用マイクロホンMICからの応答信号を解析して、その特徴を例えばAVコントロール機器内に設けられたメモリ27に形成される設定値保存データベースのテレビ制御−リスニング位置音量テーブルに記憶する(ステップS407)。具体的には、シーケンスコントローラ22Aの機能により音量制御信号によって制御するテレビ受像機3に対する制御音量値(ボリューム設定)と、そのときの音量レベル(応答信号についての実測値)とを関連付けて、これをテーブルとしてメモリに記録する。
そして、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、測定上の音圧が閾値より大きくなったか否かを判断する(ステップS408)。ステップS408の判断処理において、測定上の音圧が閾値より大きくなっていないと判断したときには、ステップS403からの処理を繰り返し、規定の音圧が計測できるまで、制御音量値(ボリューム設定)を上げていき、応答信号の測定及び解析を繰り返すようにする。
ステップS408の判断処理において、測定上の音圧が閾値より大きくなったと判断したときには、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRからの測定信号の放音と、この測定信号を測定用マイクロホンMICを通じて受音することにより得られる応答信号の測定及び解析処理を終了し、ステップS407の処理により形成したテレビ制御−リスニング位置音量テーブルのテーブル情報に対して、必要に応じて、テーブル情報についてのカーブや直線の推定処理を行い、これに応じてテーブルの値を修正する処理を行う(ステップS409)。
なお、ステップS402において再生される測定信号は、特定のものに限られるものではなく、広い帯域を持つ信号であり、S/N良く測定が完了できれば、信号の種類を問わないものとする。例えば、TSP(Time Stretched Pulse)信号でも良いし、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、M系列ノイズなどの広帯域ノイズであってもよい。TSP信号を使用すれば、解析ルーチンにてインパルス応答を導出することが可能であり、音量以外の情報(時間遅延など)も計測できるため、この実施の形態においては、TSP信号を測定信号として用いるものとする。
応答信号から計測される音量レベルの定義も、特定のものに規定されるものではない。図16、図17は、音量レベルの定義の具体例を説明するためのフローチャートである。応答信号解析部22Dにおいて、例えば、図16に示すように、応答信号をFFT(Fast Fourier Transform)して(ステップS501)、その周波数振幅レベルのうち対象となる帯域(例えば、300Hz〜3kHzの帯域)のレベル平均値を算出し(ステップS502)、このレベル平均値を音量レベルとして用いてもよい。
また、応答信号解析部22Dにおいて、例えば、図17に示すように、ノイズやTSP信号等の応答信号に対し、帯域フィルタを掛け(ステップS601)、帯域フィルタを掛けた時間信号の自乗をとるなどしてエネルギー値を求め(ステップS602)、この求めたエネルギー値を音量レベルとして用いても良い。
この実施の形態の映像音響再生システムにおいては、図16に示した方式で求められる音量レベルを用いるものであり、図11にも示したように、300Hz〜3kHzの帯域におけるレベル平均値を、ここでは音量レベルとしてデータベースに記録するものとする。なお、図11は、制御音量値が「24」である場合における全帯域フラットのTSP測定信号の応答信号についての周波数特性に対応している。
図19は、設定値保存データベース29の記録例を示す図である。図19に示すように、制御音量値に対応する数値として、マイクアンプのゲイン及びADCの性能などから、リスニング位置での音量レベルを換算して記録している。具体的には、コントロール機器2においては、図19に示すように、制御音量値と、測定応答信号リニア応答計算値と、測定応答信号音圧相当値とからなるテーブルを設定値保存データベースに形成する。
なお、図19において、測定応答信号リニア応答計算値は、応答信号の波形から求められる値(リニア値)であり、測定応答信号音圧相当値は、応答信号をdB換算した値である。
また、図14を用いて説明したように、テレビ受像機3の音量を徐々に上げながら、応答信号の計測を行うようにしているが、必ずしも全ての制御音量値の全てにおいて、測定応答信号リニア応答計算値や測定応答信号音圧相当値を測定し記録する必要はない。図19に示した例のテーブルは、制御音量値を3づつ上げて測定したものである。
しかし、実際には、固定的な数値間隔で、測定応答信号リニア応答計算値や測定応答信号音圧相当値を測定し記録する必要もない。ここでの目的は、例えば、図18に示すような対応グラフを得ることである。すなわち、制御音量値(制御VOL値)の変化に対応する測定応答信号音圧相当値、あるいは、測定応答信号リニア応答計算値を求めることであるので、もっとおおまかな制御VOL値で測定を行い、グラフ作成のために必要な部分を適宜測定していく手法を用いてもよい。
また、図18からも分かるように、制御音量値(制御VOL値)が小さい時には、グラフが不連続になることが予想される。これは、実空間を経て音量測定をしているため、測定信号応答だけでなく、暗騒音も合わせて測定用マイクロホンMICに入力されるためである。したがって、図18に示した点線のように、S/Nが確保されていると思われるデータの部分から、正しい直線・カーブを推定し、適宜テーブルの値を書き直す必要がある。この処理が図14に示したステップS409の処理である。
このようにして、ステップS401からステップS409の処理により、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声を対象とする測定を行い、測定信号の応答がある程度より大きくなる場合は、TVボリューム制御をそれ以上大きくすることはせず、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRを使った測定を終了して、図15に示す外部スピーカoSL、oSR、oCから放音される音声を対象とする測定プロセスを実行する。
まず、シーケンスコントローラ22Aの機能を用いて、信号処理部22内の機能として設けられるゲイン制御部を制御して、外部スピーカoSL、oSR、oCから放音する音声の音量(ボリューム)を最小に設定し、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号(テスト信号)を生成すると共に、出力切換部22Cを制御して、測定信号生成部22Bからの測定信号を、DAC/AMP25およびスピーカ出力端子群26のSLチャンネルの出力端子とSRチャンネルの出力端子と、Cチャンネルの出力端子とを通じて外部スピーカoSL、oSR、oCに供給するようにする(ステップS410)。
信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号を再生するようにしながら(外部スピーカのそれぞれに供給しながら)、信号処理部22の機能として設けられるゲイン制御部を制御して、アンプゲインを上げ、外部スピーカoSL、oSR、oCから放音する音声の音量を上げるようにする(ステップS411)。
そして、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、アンプゲインは等が予め定められた閾値以上になったか否かを判断する(ステップS412)。このステップS412の判断処理において、アンプゲインが予め定められた閾値以上になったと判断したときには、接続に何らかのトラブルがあると推定されるため、ワーニングメッセージをユーザーに提示して(ステップS413)、この図14、図15に示す処理を終了する。
また、ステップS412においては、測定用マイクロホンMICで測定した応答信号の音量レベルが、予め決められた閾値以上になった場合においても、スピーカ破損の危険性があるので、ワーニングメッセージをユーザーに提示して(ステップS413)、この図14、図15に示す処理を終了する。なお、ワーニングメッセージの提示態様は、図14に示した処理のステップS405において説明したものと同様である。
そして、ステップS412の判断処理において、アンプゲイン等が予め定められた閾値以上になっていないと判断したときには、応答信号解析部22Dの機能を用いて、測定用マイクロホンMICを通じて、測定信号の安定した応答を測定できたか否かを判断する(ステップS414)。
ステップS414の判断処理において、安定した応答が測定できていないと判断したときには、シーケンスコントローラ22Aの機能により、ステップS411からの処理を繰り返し、外部スピーカoSL、oSR、oCから放音する音声の音量を上げて、外部スピーカoSL、oSR、oCから放音される測定信号に応じた音声を測定用マイクロホンMICで受音する処理を続行する。
ステップS414の判断処理において、安定した応答が測定できたと判断したときには、まず、信号処理部22が実現する応答信号解析部22Dの機能により、測定用マイクロホンMICからの応答信号を解析して、その特徴を例えばAVコントロール機器内に設けられたメモリに形成される設定値保存データベースにアンプゲイン−リスニング位置音量テーブルに記憶する(ステップS415)。具体的には、シーケンスコントローラ22Aの機能により信号処理部22が実現するゲイン制御部におけるアンプゲインと、そのときの音量レベル(応答信号についての実測値)とを関連付けて、これをテーブルとしてメモリに記録する。
そして、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、測定上の音圧が閾値より大きくなったか否かを判断する(ステップS416)。ステップS416の判断処理において、測定上の音圧が閾値より大きくなっていないと判断したときには、ステップS411からの処理を繰り返し、規定の音圧が計測できるまで、信号処理部22が実現するゲイン制御部におけるアンプゲインを上げていき、応答信号の測定及び解析を繰り返すようにする。
ステップS416の判断処理において、測定上の音圧が閾値より大きくなったと判断したときには、外部スピーカoSL、oSR、oCからの測定信号の放音と、この測定信号を測定用マイクロホンMICを通じて受音することにより得られる応答信号の測定及び解析処理を終了し、ステップS415の処理により形成したアンプゲイン−リスニング位置音量テーブルのテーブル情報に対して、必要に応じて、テーブル情報についてのカーブや直線の推定処理を行い、これに応じてテーブルの値を修正する処理を行い(ステップS417)、この図14、図15に示す測定プロセスを終了する。
なお、この図15に示した処理においても、ステップS410における測定信号の生成は、所定の信号処理によって自動生成してもよいし、例えば信号処理部内等のメモリに予め用意されている測定信号を読み出して出力するようにしてもよい。
また、ステップS410において再生される測定信号は、ステップS402において再生される測定信号と同じものであり、例えば、TSP(Time Stretched Pulse)信号であり、その他、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、M系列ノイズなどの広帯域ノイズなどを用いることも可能である。
また、ステップS415における音量レベルも、図16に示した処理を用い、応答信号をFFTして、その周波数振幅レベルのうち対象となる帯域のレベル平均値を算出を音量レベルとして用いたり、測定信号の応答信号に対し、帯域フィルタを掛け、この帯域フィルタを掛けた時間信号の自乗をとるなどしてエネルギー値を求め、これを音量レベルとして用いたりすることができるが、ステップS407の処理と同様に、ステップS415においても、FFTを用いた手法により、音量レベルを把握するようにしている。
そして、ステップS415においては、図19に示したテレビ制御−リスニング位置音量テーブルの制御音量値がアンプゲインに変えられたアンプゲイン−リスニングポイント音量テーブルが形成されるのである。
なお、図15に示したステップS410〜ステップS417の処理において制御するのはコントロール機器2に内蔵されるアンプゲイン値であり、当然ながらコントロール機器2内部の信号処理部22はアンプゲイン値と音量レベルの関係を事前に知ることができる。したがって、ある程度S/Nが保証されている音圧で測定を行えば、そのテーブルは既に内部にて推定可能となり、図15に示した部分のループは簡略化、または省略が可能である。
このように、この第1の実施の形態の映像音響再生システムにおいては、コントロール機器2が能動的に機能して実現する図14、図15に示した測定プロセスにより、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRについての制御音量値と測定信号に対する応答信号の音量レベルとを対応付けたテレビ制御(TV制御)−リスニング位置音量テーブル(図19に示したもの)を作成すると共に、外部スピーカoSL、oSR、oCについてのアンプゲインと測定信号に対する応答信号の音量レベルとを対応付けたアンプゲイン−リスニング位置音量テーブル(図19において制御音量値をアンプゲインに変えたもの)を作成することができるものである。
そして、作成したテレビ制御(TV制御)−リスニング位置音量テーブルあるいはアンプゲイン−リスニング位置音量テーブルに基づいて、コントロール機器2に対してユーザーが音量調整操作を行った場合であっても、コントロール機器の機能により、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音する音声についての音量調整をも適切に自動調整することができる。また、ここで説明した複数機器間の音量同期方法については、本願発明者による先の出願である特願2006−134652においても詳細に説明されている。
[複数機器間の接続解析方法について]
次に、複数機器間の接続解析方法について説明する。図20、図21は、第1の実施の形態で用いることが可能な複数機器間の接続解析方法(機器間のルーティング状態を把握するための方法)について説明するための図である。ここでは、例えば、図4に示したように、コントロール機器2とテレビ受像機3とを有する映像音響再生システムにおいて、コントロール機器2がルーティング状態を把握する場合を例にして説明する。
また、ここでは、コントロール機器2は、例えば、図21Aに示すように、音声信号を出力するための複数の出力インターフェイス(出力端)を備えると共に、図21Bに示すように、音声信号の入力を受け付ける複数の入力インターフェイス(入力端)を備え、これらの内の何れかを通じて、テレビ受像機3との間で双方向に音声信号の送受を行うことができるように接続されるものとする。
なお、図21Aに示した例は、出力インターフェイスとして、左右2チャンネル(L(左)チャンネルとR(右)チャンネル)のアナログ音声出力端子OA1と、左右2チャンネルの音声信号を出力するデジタル音声出力端子OD1と、例えば、L(左)チャンネル、R(右)チャンネル、SL(左後方)チャンネル、SR(右後方)チャンネル、C(センター)チャンネルの5つの出力端を備えたマルチチャンネルのアナログ出力端子群OA−Multiを備えたものであることを示している。
また、図21Bに示した例は、入力インターフェイスとして、左右2チャンネル(L(左)チャンネルとR(右)チャンネル)のアナログ音声入力端子IA1、IA2と、左右2チャンネルの音声信号を出力するデジタル音声入力端子ID1、ID2と、例えば、L(左)チャンネル、R(右)チャンネル、SL(左後方)チャンネル、SR(右後方)チャンネル、C(センター)チャンネルの5つの入力端を備えたマルチチャンネルのアナログ入力端子群IA−Multiを備えたものであることを示している。
図20は、図4、図5に示したコントロール機器2の主に信号処理部22において実行される複数機器間の接続解析処理(機器間のルーティング状態を把握する処理)を説明するためのフローチャートである。図4、図5に示したコントロール機器2は、ユーザーからの指示入力を受け付けるキー操作部を備えており、当該キー操作部を通じて、ルーティング状態を把握するための処理の実行指示を受け付けると、コントロール機器2のDSPやCPUなどによって構成される信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、図20に示す処理を実行する。
まず、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、出力切換部22Cなどの機能により、1つ以上の出力インターフェイスチャンネル(以下、出力I/Fチャンネルと略称する。)の中から、検証対象の出力I/Fチャンネルを1つ特定する(ステップS701)。このステップS701は、図21Aに示す出力I/Fチャンネルシーケンスにしたがって、検証対象の出力I/Fチャンネルを1つ特定する処理である。したがって、スタート直後のステップS701の処理においては、アナログ出力端子群OA1のL(左)チャンネルが選択される。
そして、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して測定信号を生成するようにし、これをステップS701において特定した出力I/Fチャンネルを通じて出力する(ステップS702)。なお、ステップS702においては、測定信号生成部22Bにおいて、所定のロジックにしたがって生成した測定信号を出力するようにしてもよいし、また、信号処理部22内の図示しないメモリに予め蓄積されている測定信号を用いるようにしてもよいし、また、いずれかの入力端子を通じて供給される信号を選択して、これを測定信号として用いるようにしてもよい。
次に、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、図示しなかったが、応答信号解析部22Dの前段に設けられ、各入力インターフェイスを通じて受け付けた音声信号の供給を受けて、どの入力インターフェイスからの音声信号を応答信号解析部22Dに供給するかを切り換える入力切換部の機能により、1つ以上の入力インターフェイスチャンネル(以下、入力I/Fチャンネルと略称する。)の中から、検証対象の入力I/Fチャンネルを1つ特定する(ステップS703)。
このステップS703は、図21Bに示す入力I/Fチャンネルシーケンスにしたがって、検証対象の入力I/Fチャンネルを1つ特定する処理である。したがって、スタート直後のステップS701の処理においては、アナログ入力端子群IA1のL(左)チャンネルが選択される。
そして、信号処理部22の応答信号解析部22Dの機能により、対象出力、すなわち出力した測定信号と、入力信号、すなわち入力された応答信号との相関係数を算出し、最大値の閾値との比較結果を設定値保存メモリ27に格納する(ステップS704)。
このステップS704の処理において、算出した相関値が閾値以上であれば、今回特定した出力から入力にいたる経路が通っている(ルートが通っている)と判別することができ、また、算出した相関値が閾値未満であれば、今回特定した出力から入力にいたる経路は通っていない(ルートが通っていない)と判別することができる。
そして、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、入力I/Fチャンネルは最後までいったか否かを判断する(ステップS705)。ステップS705の判断処理において、入力I/Fチャンネルは最後までいっていない、すなわち、図21Bに示した入力I/Fチャンネルシーケンスにおいて、マルチチャンネルのアナログ入力端子群IA−MのC(センター)チャンネルにまで至っていないと判断したときには、ステップS703からの処理を繰り返し、次の入力I/Fチャンネルを対象とする処理を行うようにする。
また、ステップS705において、入力I/Fチャンネルは最後まで検証したと判断したときには、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、出力I/Fチャンネルは、最後までいったか否かを判断する(ステップS706)。ステップS706の判断処理において、出力I/Fチャンネルは最後までいっていない、すなわち、図21Aに示した出力I/Fチャンネルシーケンスにおいて、マルチチャンネルのアナログ出力端子群OA−MのC(センター)チャンネルにまで至っていないと判断したときには、ステップS701からの処理を繰り返し、次の出力I/Fチャンネルを対象とする処理を行うようにする。
また、ステップS706において、最後の出力I/Fチャンネルまで検証したと判断したときには、信号処理部22のシーケンスコントローラ22Aは、ルーティング状態の把握処理は終了したと判断し、この図20に示す処理を終了する。このように、コントロール機器2は、図21Aに示した出力I/Fチャンネル毎に、図21Bに示した入力I/Fチャンネルシーケンスの最初の入力I/Fチャンネルから最後の入力I/Fチャンネルまでについて検証を行うようにしている。つまり、1つ1つ入力出力をつき合わせて検証する方式である。
このようにして、コントロール機器2は、自機のどの出力端と入力端とを通じて外部機器2と接続されているのかをユーザーの手を煩わせることなく把握することができる。これにより、実際の接続経路を自動的にかつ正確に把握することができるので、測定信号をどの出力端に供給すればよいかをコントロール機器2が判別することができるので、音声信号に遅延量の測定処理を迅速かつ確実に行うようにすることができる。
このように、この第1の実施の形態においては、図9〜図21を用いて説明したように、複数機器間の音量制御可否判定方法、音量同期方法、接続解析方法を用いることによって、ユーザーの手を煩わせることなく、コントロール機器2が、テレビ受像機3の音量制御を行うことが可能か否かを判定し、可能な場合には、コントロール機器2から適切にテレビ受像機3の内部スピーカTVL、TVRから放音する音声の音量を調整することができ、また、どの経路を通じてテレビ受像機3と接続されているか(ルーティングの状態)を解析することができる。
これにより、コントロール機器2は、自機とテレビ受像機3との接続関係等を自発的に把握し、これに応じて、音声信号についての遅延量を適切に測定することができるようにされる。また、ここで説明した複数機器間の接続解析方法については、本願発明者による先の出願である特願2006−136020においても詳細に説明されている。
なお、複数機器間の音量制御可否判定方法、音量同期方法、接続解析方法を用いることができない場合であっても、ユーザーが手動でテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声の音量を調整したり、また、コントロール機器2とテレビ受像機3とのルーティングの状態を適切に把握しておくことにより、図6、図7を用いて説明した処理を適切に行って、音声信号についての遅延量を正確に測定することも可能である。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態の映像音響再生システムは、以下に詳述するように、ライン信号測定に基づいて、音声信号についての遅延量を測定するものである。
この第2の実施の形態においても、第1の実施の形態の場合と同様に、条件(2A)として、音声信号の遅延量を測定する機能を内蔵するコントロール機器2から、音声信号についての遅延が発生するテレビ受像機3に対して、いずれかのチャンネルを通じて音声信号をデジタル又はアナログにて供給できること、条件(2B)として、リップシンクを合わせる目的の映像信号がテレビ受像機3に入力され、表示されていること、さらに、条件(2C)として、テレビ受像機3の音声出力端子から、コントロール機器2の音声入力端子へ向けて、デジタルまたはアナログの音声信号の送信手段を有することが必要である。
図22は、第2の実施の形態の映像音響再生システムを説明するためのブロック図である。この第2の実施の形態の映像音響再生システムにおいて、コントロール機器2及びテレビ受像機3は、図4に示した第1の実施の形態の映像音響システムのコントロール機器2及びテレビ受像機3とほぼ同様に構成されたものである。このため、図22に示すこの第2の実施の形態の映像音響再生システムにおいて、図4に示した映像音響再生システムを構成する各機器と同様に構成される部分には、同じ参照符号を付し、その部分の詳細な説明については省略する。
そして、図22に示した第2の実施の形態の映像音響再生システムと、図4に示した第1の実施の形態の映像音響再生システムとを比較すると分かるように、図22に示した第2の実施の形態の映像音響再生システムの場合には、コントロール機器2に対して、測定用マイクロホンMICは接続されておらず、代わりに、テレビ受像機3の音声出力端子36と、コントロール機器2の音声入力端子IA1とが接続されている。
すなわち、コントロール機器2とテレビ受像機3とは、相互にライン接続(ライン入力)されていることになる。そして、テレビ受像機3の音声出力端子36と、コントロール機器2の音声入力端子IA1とが接続されていることによって、テレビ受像機3の音声出力端子から、コントロール機器2の音声入力端子へ向けて、デジタルまたはアナログの音声信号の送信手段を有するという上述した条件(2C)を満たすようにしているのである。なお、この第2の実施の形態において、テレビ受像機3の音声出力端子36と、コントロール機器2の音声入力端子IA1とは、いずれもアナログ信号用のものである。
図23は、この第2の実施の形態のコントロール機器2の測定モジュールの構成例を説明するためのブロック図である。図23に示す第2の実施の形態のコントロール機器2と、図5に示した第1の実施の形態のコントロール機器2とを比較すると分かるように、その構成は同一のものである。
すなわち、この第2の実施の形態のコントロール機器2もまた、シーケンスコントローラ22A、測定信号生成部22B、出力切換部22C、応答信号解析部22Dのそれぞれは、DSPやCPU等によって構成される信号処理部22によって、その機能が実現されるものである。すなわち、信号処理部22は、測定プロセスを実行するために、シーケンスコントローラ22A、測定信号生成部22B、出力切換部22C、応答信号解析部22Dの各機能を実現する。また、DAC23とDAC/AMP24とは、各音声チャンネル毎にDACやDAC/AMPが設けられたものであることを示している。
そして、この第2の実施の形態のコントロール機器2の場合には、図22に示したように、プリアウト端子群OA−MのL(左)チャンネルの出力端子とR(右)チャンネルの出力端子とが、テレビ受像機3の入力端子群31のL(左)チャンネルの入力端子とR(右)チャンネルの入力端子とに接続されると共に、音声入力端子IA1とテレビ受像機3の音声出力端子36とが接続されている。
これにより、シーケンスコントローラ22Aの制御により、測定信号生成部22Aにおいて生成され、出力切換部22C、DAC23、プリアウト端子群OA−MのL(左)チャンネルの出力端子とR(右)チャンネルの出力端子とを通じて出力された測定信号が、テレビ受像機3の入力端子群31のL(左)チャンネルの入力端子とR(右)チャンネルの入力端子とを通じて供給される。
テレビ受像機3の入力端子群31のL(左)チャンネルの入力端子とR(右)チャンネルの入力端子とを通じて供給された測定信号は、遅延部34L、34Rに供給され、ここで画像デコーダ32の制御により、映像信号の処理にかかる時間に応じて遅延処理された後に、音声出力端子36に供給されると共に、AMP35L、35Rを通じて内蔵スピーカTVL、TVRに供給される。
これにより、テレビ受像機3の遅延部34L、34Rにおいて、画像デコーダ32の制御により適切に遅延処理された測定信号が、コントロール機器2にフィードバックされると共に、遅延処理された測定信号に応じた音声がテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される。
そして、コントロール機器2においては、音声入力端子IA1を通じて供給された測定信号についての応答信号は、ADC25においてデジタル信号に変換された後に、応答信号解析部25に供給され、解析処理され、テレビ受像機3における音声信号についての遅延量が求められる。
[第2の実施の形態における音声信号の遅延量の把握処理について]
以下に、この第2の実施の形態の映像音響再生システムにおいて、主にコントロール機器2によって行われる再生される音声信号の遅延量を把握する処理について、図24のフローチャートを参照しながら説明する。
図24は、主にコントロール機器2によって行われる再生される音声信号の遅延量を把握する処理について説明するためのフローチャートである。この第2の実施の形態の映像音響再生システムにおいて行われ音声信号の遅延量の把握処理は、上述もしたように、ライン信号測定をメインとする測定プロセスからなるものである。なお、図24に示すフローチャートにおいて、記載を簡略化するために、テレビ受像機3はTVと略称し、また、コントロール機器2はAVアンプと記載している。
この図24に示すフローチャートの処理は、図23に示したコントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aの機能によって進められる。最初に、シーケンスコントローラ22Aは、コントロール機器(AVアンプ)2からTV(テレビ受像機)3に入力した音声が、テレビ受像機3の内部ブロック及び音声出力を通過して、コントロール機器2に再び戻るよう接続されているかどうかを確認する(ステップS801)。
ステップS801の確認処理に関しては、種々の手法を用いて確認することが可能であるが、図20、図21を用いて上述した複数機器間の接続解析方法を用いて確認することが可能である。なお、上述もしたように、この第2の実施の形態においては、接続に関してアナログのライン出力・ライン入力を意図した例を示しているが、実際には、コントロール機器2を起点とした信号のループ系統ができていれば、デジタルによる出入力であってもよい。
ステップS801の確認処理において、コントロール機器2とテレビ受像機3との間にライン接続によりループが形成されていないと判断したときには、シーケンスコントローラ22Aは、ユーザーに手動でテレビ受像機3の音声出力をコントロール機器2に接続することを促すメッセージを出力する(ステップS802)。
このステップS802の処理は、コントロール機器2が備える図示しないLCDなどの表示素子に例えばシーケンスコントローラ22Aの制御により形成された表示メッセージを表示するようにしたり、あるいは、コントロール機器2内で形成した表示メッセージを、テレビ受像機3に供給して、テレビ受像機3の画像表示部33の表示画面に表示するようにしたりしてもよい。
また、コントロール機器2において、音声メッセージを形成し、これをテレビ受像機3に供給してテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音したり、あるいは、自機に接続されている外部スピーカに供給して、外部スピーカから音声メッセージを放音するようにしたりしてもよい。
もちろん、表示メッセージと音声メッセージの両方を用いるようにしてもよいし、また、LED(Light Emitting Diode)の点灯、点滅、アラーム音の放音などにより、コントロール機器2とテレビ受像機3との間に想定した接続が成立していないことを通知するようにしてもよい。
そして、シーケンスコントローラ22Aは、第1の実施の形態のコントロール機器2の場合と同様に、コントロール機器2の信号処理部22の機能として実現される測定信号生成部22Bにより、測定信号を生成し、これを出力切換部22C、DAC23、プリアウト端子群OA−MのL(左)チャンネルのプリアウト端子とR(右)チャンネルのプリアウト端子とを通じて出力し、テレビ受像機3に供給する(ステップS803)。
テレビ受像機3においては、上述もしたように、画像デコーダ32の制御に応じて、遅延部34L、34Rで遅延処理された音声信号が、音声出力端子(TVライン出力)36から出力され、これが、コントロール機器2の音声入力端子IA2を通じて受け付けられ、ADC25においてデジタル信号に変換されて、応答信号解析部22Dに供給される。
したがって、コントロール機器2は、上述したように、測定信号としてTSP信号を生成して出力し、コントロール機器2→テレビ受像機3→コントロール機器2に至る系のインパルス応答を得ることができる。
コントロール機器2の応答信号解析部22Dは、これに供給された測定信号についての応答信号を受け付けて、インパルス応答を測定する(ステップS804)。そして、応答信号解析部22Dは、測定したインパルス応答を解析し、測定信号の再生を始めた時間を基準とする音声信号についての遅延時間(遅延量)を算出し、算出した遅延時間を設定値保存メモリ27の遅延時間テーブルに記憶保持する(ステップS805)。なお、この遅延時間の求め方については、上述した第1の実施の形態の場合と同様に、本願発明者による先の出願(特願2005−067413号、「測定装置、測定方法、プログラム」)に説明されている技術を用いることができる。
そして、この第2の実施の形態の映像音響再生システムにおいては、第1の実施の形態の映像音響再生システムのように、空間を経由した測定ではない。このため、ステップS805において求めた音声信号についての遅延時間(遅延量)が、そのままテレビ受像機3内で発生した音声遅延量と一致する。
図25は、この第2の実施の形態の映像音響再生システムにおける映像の再生タイミングと、各音声チャンネルの音声信号の再生タイミングとを説明するための図である。この内、図25Aは遅延補正前の状態を、図25Bは遅延補正後の状態を示している。なお、測定した遅延時間に応じた遅延補正処理を含むコントロール機器2における音声信号の再生プロセスの詳細については後述する。
この第2の実施の形態の場合には、図23、図24を用いて説明したように、テレビ受像機3からコントロール機器2へのライン入力(ラインL、ラインR)の応答だけを用い、他の外部スピーカなど空間を使った測定は行っておらず、データベース上にデータも存在しない。
したがって、図25Aに示すように、ラインL応答とラインR応答とに基づいて、テレビ受像機3において発生する音声信号についての遅延の遅延時間を測定し、この測定した遅延時間を基準遅延時間として決定した後、図25Bにおいて、各外部スピーカの点線で示した応答のように、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから放音される音声についてディレイを補正することで、リップシンク状況を改善することができる。
なお、この第2の実施の形態の映像音響再生システムにおいては、空間要因を含まないため、例えば各スピーカの位置によるリスニング位置までの距離差などは、補正することはできない。しかし、前述のように、テレビ受像機3における映像信号の処理に時間がかかるために生じる映像の再生タイミングの遅延は、音の空間伝播遅延よりも格段に大きいため、このような処理だけでも、リップシンクを合わせる効果は大きい。
なお、この第2の実施の形態において、リスニングポイントに測定用マイクロホンを設置し、この測定用マイクロホンMICを第1の実施の形態の映像音響再生システムの場合と同様に、コントロール機器2のマイク入力端子Minに接続して、コントロール機器2のスピーカ出力端子群OAS−Mに接続された外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから放音される測定信号に応じた音声を集音し、測定信号についてのインパルス応答を測定して、これを考慮するようにしてもよい。
このようにする場合には、図24に示した処理の後に、AVアンプに直接接続された外部スピーカに関して、インパルス応答測定を行うようにすればよい。より具体的には、図24に示した処理の後に、図7に示したステップS108からステップS114の処理を行うようにすればよい。
これにより、上述したようにライン入力を用いて測定したテレビ受像機3での音声遅延量が記録されているデータベースに対して、外部スピーカ応答として空間を経由した遅延量を追加して記録し、これらを考慮して、コントロール機器2に接続された外部スピーカに供給する音声信号についての遅延量を適切に補正し、テレビ受像機3の画像表示部33に表示される画像と同期が合うようにして、外部スピーカのそれぞれから再生音声を放音することができる。
図26は、第2の実施の形態で用いた音声信号についての遅延量の測定手法(ライン入出力によるリップシンク遅延解析の手法)を使いつつ、測定用マイクロホンMICを用いて、外部スピーカから放音される音声の音声信号についての遅延量をも測定するようにした場合の、映像音響再生システムにおける映像の再生タイミングと、各音声チャンネルの音声信号の再生タイミングとを説明するための図である。この内、図25Aは遅延補正前の状態を、図25Bは遅延補正後の状態を示している。
この図26Aに示す場合も、基準信号は図25Aに示した場合と同様に、コントロール機器2は、ラインL応答とラインR応答とに基づいて、テレビ受像機3において発生する映像信号の処理に時間がかかることに起因して音声信号に対して施される遅延量が測定されると共に、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから放音される音声についての遅延量(空間伝播遅延分)を測定し、これらに基づいて、外部スピーカに供給する音声信号に対して、適切に遅延処理を施すことができるようにされる。
したがって、この例の場合、ラインL応答とラインR応答とには、純粋にテレビ受像機3における映像遅延分のみが含まれ、また、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから放音される音声には、空間伝播遅延分のみが含まれることになる。本来は、第1の実施の形態において説明したように、リスニング位置で、その空間における応答信号の実測値に基づいて音声信号についての実際の遅延量を測定し、これに応じて補正処理を行うことが理想的である。
しかし、この例においても、映像による遅延は、音の空間遅延よりも格段に大きいことを考えると、リップシンクの調整として改善を見込むことができ、かつ、外部スピーカ間においてはそれぞれのタイムアライメントを揃えることも同時に可能となり、全体的な音質改善に貢献することができる。
このように、この第2の実施の形態で用いた手法は、測定用マイクは必ずしも必要ではなく、ラインで繋がれる信号をコントロール機器2とテレビ受像機3との間で相互接続するだけで満たされるものである。なお、この第2の実施の形態で用いた手法の場合であっても、上述したように、測定用マイクロホンをさらに用いた測定を行うことによって、さらに高精度な時間軸補正が可能となる。
また、この第2の実施の形態においても、測定用マイクロホンMICを用いて、外部スピーカから放音される音声の空間伝播遅延量をも測定した場合であって、テレビ受像機3の内蔵スピーカから放音される音声よりも遅延した音声が放音するようにされている場合には、最も遅延した音声信号を基準として、コントロール機器2を通じて再生する音声信号に対する遅延量を設定するようにしてもよい。
また、図24のフローチャートを用いて説明した処理は、この発明による方法が適用されたものである。また、図24のフローチャートを用いて説明した処理を実行するプログラムが、この発明によるプログラムである。したがって、図24に示したフローチャートの各ステップを実行するプログラムを形成し、これをコントロール機器に搭載して実行できるようにしておくことによって、種々のコントロール機器に、第2の実施の形態として説明した発明を適用することができる。
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。上述した第1の実施の形態で用いた音声信号についての遅延時間の測定方式と、上述した第2の実施の形態の映像音響再生システムで用いた遅延時間の測定方式とを比べて見ると、実際には、第1の実施の形態で用いた、空間での信号測定に基づいて、音声信号についての遅延量を測定する方式の方が、実際の音声の聴取空間における実測値に基づいて、音声信号についての遅延量を測定することができるので、より理想的な補正が可能である。
しかし、第2の実施の形態で用いた、ライン信号測定に基づいて、音声信号についての遅延量を測定する方式の場合には、テレビ受像機3のボリューム制御が不要な点や、必ずしも測定用マイクロホンが必要ない、というメリットが上げられる。したがってユーザーの利便性を考えた場合、ユーザー環境から自動的に接続・設定状況を判定し、好適な手法を自動選択するようにすれば利便性が大きい。また、この場合、図6、図7に示した第1の実施の形態の遅延量の測定シーケンスにおいて、ユーザーにメッセージを表示しユーザーの介入を促すような必要がなくなる。
そこで、この第3の実施の形態の映像音響再生システムにおいては、上述した第1の実施の形態の映像音響再生システムで用いた音声信号についての遅延時間の測定方式と、上述した第2の実施の形態の映像音響再生システムで用いた音声信号についての遅延時間の測定方式との内から、最適な方式を自動選択して利用することができるようにしたものである。
なお、この第3の実施の形態の映像音響再生システムは、図4、図5を用いて説明した第1の実施の形態の映像音響再生システムと、あるいは、図22、図23を用いて説明した第2の実施の形態の映像音響再生システムと同様の構成を有するものである。このため、この第3の実施の形態においては、映像音声再生システムの構成の説明については省略し、測定用マイクロホンを用いる部分は図4、図5を参照しながら、また、ライン入力を用いる部分は図22、図23を参照しながら説明する。
但し、この第3の実施の形態の映像音響再生システムにおいては、コントロール機器2に対して、測定用マイクロホンMICが接続されており、かつ、テレビ受像機3からの音声信号がライン入力するように接続されているものとする。
[第3の実施の形態における音声信号の遅延量の把握処理について]
以下に、この第3の実施の形態の映像音響再生システムにおいて、主にコントロール機器2によって行われる再生される音声信号の遅延量を把握する処理について、図27、図28のフローチャートを参照しながら説明する。
図27、図28は、主にコントロール機器2によって行われる再生される音声信号の遅延量を把握する処理について説明するためのフローチャートである。なお、図27、図28に示すフローチャートにおいて、記載を簡略化するために、テレビ受像機3はTVと略称し、また、スピーカはSPと省略し、コントロール機器2はAVアンプと記載している。
この図27、図28に示すフローチャートの処理は、図4、図23に示したコントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aの機能によって進められる。最初に、シーケンスコントローラ22Aは、コントロール機器2からテレビ受像機3のボリューム制御(音量制御)が可能か否かを判断(検証)する(ステップS901)。このステップS901の判断処理(検証処理)は種々の手法を用いることが可能であるが、上述した第1の実施の形態の場合と同様に、図9〜図13を用いて説明した「複数機器間の音量制御可否判定方法」を用いることが可能である。
ステップS901の判断処理において、コントロール機器2からテレビ受像機3のボリューム制御が可能あると判断したときには、シーケンスコントローラ22Aは、テレビ受像機3のボリュームを適宜制御して、測定信号の応答が聴取位置に設置された測定用マイクロホンMICによって、必要な音圧の応答信号として得られるように設定する(ステップS902)。
このため、上述した第1の実施の形態の場合と同様に、図14〜図17を用いて説明した「複数機器間の音量同期方法」を用い、予めコントロール機器2からの制御ボリューム値と、テレビ受像機3における対応する音量レベル(音圧)の対応関係を例えば数値テーブル化して把握しておき、この対応関係を示す数値テーブルを参照して、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声のレベル(音圧)が適正なレベルとなるように、コントロール機器2がテレビ受像機3のボリュームレベルを設定するなどのことが可能である。
もちろん、第1の実施の形態の映像音響再生システムの場合と同様に、その他の手法を用いて、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声が適正なレベルになるように調整するような手法をとっても良い。
また、ステップS901の判断処理において、コントロール機器2からテレビ受像機3のボリューム制御が可能ではない(不能である)と判断したときには、シーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22B、出力切換部22C、応答信号解析部22Dを制御して、測定信号をテスト出力し、測定用マイクロホンMICを通じて安定した応答が得られるか否かを判断する(ステップS903)。
ステップS902の処理の後、あるいは、ステップS903の判断処理において、測定用マイクロホンMICを通じて安定した応答が得られると判断した場合には、コントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号を生成すると共に、出力切換部22Cを制御して、生成した測定信号をテレビ受像機3に供給し、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから測定信号に応じた音声を放音するようにする(ステップS904)。なお、この例においては、測定信号としてTSP信号を用いるようにしている。
そして、図4、図5を用いて説明したように、想定用マイクロホンMICで集音した測定信号についての応答信号は、マイク入力端子Minを通じてコントロール機器2に供給され、マイクアンプ26で増幅され、ADCでデジタル信号に変換された後に、応答信号解析部22Dに供給される。応答信号解析部22Dは、これに供給された測定信号についての応答信号を受け付けて、インパルス応答を測定する(ステップS905)。
上述もしたように、この第3の実施の形態においても、測定信号としてTSP信号を用いているので、応答信号解析部22Dは、再生スピーカであるテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRからリスニング位置(聴取位置)にある測定用マイクロホンMICまでのインパルス応答を測定・算出することができる。
そして、応答信号解析部22Dは、測定したインパルス応答を解析し、音速を考慮することで測定信号の再生を始めた時間を基準とする音声信号についての遅延時間(遅延量)を算出し、算出した遅延時間を設定値保存メモリ27の遅延時間テーブルに記憶保持する(ステップS906)。なお、この遅延時間の求め方については、第1、第2の実施の形態の場合と同様に、本願発明者による先の出願(特願2005−067413号、「測定装置、測定方法、プログラム」)に詳細に説明されている。
次に、シーケンスコントローラ22Aは、コントロール機器2からテレビ受像機3を制御して、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから音声を放音することがないように、ミュートするようにし(ステップS907)、図28のステップS908の処理に進む。
そして、コントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aは、測定信号生成部22Bを制御して、測定信号(TSP信号)を生成すると共に、出力切換部22Cを制御して、生成した測定信号を外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれに供給するようにし、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCのそれぞれから測定信号に応じた音声を放音するようにする(ステップS908)。
この第3の実施の形態においても、図4を用いて説明した第1の実施の形態の映像音響再生システムの場合と同様に、コントロール機器2のスピーカ出力端子群OAS−Mの各スピーカ出力端子のそれぞれには、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCが接続されているので、コントロール機器2からの測定信号は、確実に各外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCに供給され、測定信号に応じた音声が各外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから放音される。
なお、上述のように、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRからは音声が放音されないようにミュートされているが、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから音声が放音されないように、コントロール機器2内の出力切換部22Cを適切に切り換え制御するようにしてもよい。
そして、想定用マイクロホンMICで集音された測定信号についての応答信号は、マイク入力端子Minを通じてコントロール機器2に供給され、マイクアンプ26で増幅されてADCでデジタル信号に変換された後に、応答信号解析部22Dに供給されて、インパルス応答が測定される(ステップS909)。
そして、この第3の実施の形態においても、第1の実施の形態の場合と同様に、測定信号としてTSP信号を用いているので、応答信号解析部22Dは、再生スピーカである外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCからリスニング位置(聴取位置)にある測定用マイクロホンMICまでのインパルス応答を測定・算出することができる。
応答信号解析部22Dは、測定したインパルス応答を解析し、音速を考慮することで測定信号の再生を始めた時間を基準とする音声信号についての遅延時間(遅延量)を算出し、算出した遅延時間を設定値保存メモリ27の遅延時間テーブルに記憶保持して(ステップS910)、この図27、282示す処理を終了する。
なお、図27に示したステップS907の処理において、ミュート前のテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声の音量値を記憶保持しておき、図28のステップS910の処理の後に、テレビ受像機3の音量値を元に戻すようにしてもよい。
このように、コントロール機器2からテレビ受像機3の音量制御が可能である場合には、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音される音声の音量を適切に制御して、空間での再生音声の信号測定を適切に行うようにし、空間での信号測定に基づいて、音声信号についての遅延量を測定することができるようにされる。
一方、図27に示したステップS903の判断処理において、測定用マイクロホンMICを通じて安定した応答が得られないと判断した場合、すなわち、コントロール機器2からテレビ受像機3の音量制御を行うことができず、かつ、テレビ受像機3の内蔵スピーカから放音される音声について安定した応答が得られない場合には、空間での信号測定を適切に行うことはできないので、コントロール機器2のシーケンスコントローラ22Aは、図28に示すステップS911からの処理を実行する。
まず、シーケンスコントローラ22Aは、コントロール機器(AVアンプ)2からTV(テレビ受像機)3に入力した音声が、テレビ受像機3の内部ブロック及び音声出力を通過して、コントロール機器2に再び戻るよう接続されているかどうかを確認する(ステップS911)。
ステップS911の確認処理に関しては、種々の手法を用いて確認することが可能であるが、図20、図21を用いて上述した複数機器間の接続解析方法を用いて確認することが可能である。なお、この第3の実施の形態の映像音響再生システムの場合にも、第2の実施の形態の場合と同様に、接続に関してアナログのライン出力・ライン入力を用いているが、実際には、コントロール機器2を起点とした信号のループ系統ができていれば、デジタルによる出入力であってもよい。
ステップS911の判断処理において、コントロール機器(AVアンプ)2から出力されたの音声が、テレビ受像機3を経由してコントロール機器2に戻るよう接続されていると判断したときには、シーケンスコントローラ22Aは、第1の実施の形態のコントロール機器2の場合と同様に、コントロール機器2の信号処理部22の機能として実現される測定信号生成部22Bにより、測定信号を生成し、これを出力切換部22C、DAC23、プリアウト端子群OA−MのL(左)チャンネルのプリアウト端子とR(右)チャンネルのプリアウト端子とを通じて出力し、テレビ受像機3に供給する(ステップS912)。
テレビ受像機3においては、上述もしたように、画像デコーダ32の制御に応じて、遅延部34L、34Rで遅延処理された音声信号が、音声出力端子(TVライン出力)36から出力され、これが、コントロール機器2の音声入力端子IA2を通じて受け付けられ、ADC25においてデジタル信号に変換されて、応答信号解析部22Dに供給される。
したがって、コントロール機器2は、上述したように、測定信号としてTSP信号を生成して出力し、コントロール機器2→テレビ受像機3→コントロール機器2に至る系のインパルス応答を得ることができる。
コントロール機器2の応答信号解析部22Dは、これに供給された測定信号についての応答信号を受け付けて、インパルス応答を測定する(ステップS913)。そして、応答信号解析部22Dは、測定したインパルス応答を解析し、測定信号の再生を始めた時間を基準とする音声信号についての遅延時間(遅延量)を算出し、算出した遅延時間を設定値保存メモリ27の遅延時間テーブルに記憶保持する(ステップS914)。なお、この遅延時間の求め方については、ステップS906、ステップS910と同様に行う。
このように、ステップS911からステップS914の処理により、ライン接続により、テレビ受像機3からコントロール機器2に供給される測定信号についての応答信号に基づいて、テレビ受像機3における映像信号処理にかかる時間に応じて音声信号に対して施される遅延処理の遅延量を正確に把握することができるようにされる。
そして、ステップS914の処理の後、上述したステップS908からステップS910の処理を行うことにより、コントロール機器2に接続された外部スピーカから放音される音声信号についての空間遅延(空間伝播遅延)を正確に把握することができる。そして、ステップS914で算出したテレビ受像機3において発生する音声信号についての遅延量と、ステップS910において求めた、外部スピーカから放音される音声の空間伝播遅延とに基づいて、コントロール機器2から外部スピーカに供給する音声信号に対して施すべき遅延量を特定し、遅延処理を適切に施すことができるようにされる。
なお、ステップS911の確認処理において、コントロール機器2とテレビ受像機3との間にライン接続によりループが形成されていないと判断したときには、シーケンスコントローラ22Aは、機器間の接続や設定などを見直すことを促すメッセージを表示し(ステップS915)、この図27、図28に示す処理を終了する。
このステップS915の処理は、コントロール機器2が備える図示しないLCDなどの表示素子に例えばシーケンスコントローラ22Aの制御により形成された表示メッセージを表示するようにしたり、あるいは、コントロール機器2内で形成した表示メッセージを、テレビ受像機3に供給して、テレビ受像機3の画像表示部33の表示画面に表示するようにしたりしてもよい。
また、コントロール機器2において、音声メッセージを形成し、これをテレビ受像機3に供給してテレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから放音したり、あるいは、自機に接続されている外部スピーカに供給して、外部スピーカから音声メッセージを放音するようにしたりしてもよい。
もちろん、表示メッセージと音声メッセージの両方を用いるようにしてもよいし、また、LED(Light Emitting Diode)の点灯、点滅、アラーム音の放音などにより、コントロール機器2とテレビ受像機3との間に想定した接続が成立していないことを通知するようにしてもよい。
このように、この第3の実施の形態の映像音響再生システムにおいて行われ音声信号の遅延量の把握処理は、上述した第1の実施の形態の映像音響再生システムで用いた音声信号についての遅延時間の測定方式と、上述した第2の実施の形態の映像音響再生システムで用いた音声信号についての遅延時間の測定方式との内から、最適な方式を自動選択することができるものである。
なお、上述したように、この第3の実施の形態においては、第1段階として、第1の実施の形態の場合のように、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから測定信号に応じた音声を放音させ、これを測定用マイクロホンMICで受音して解析することにより、テレビ受像機3において発生する音声信号についての遅延量を測定するか、あるいは、第2の実施の形態の場合のように、ライン入力されたテレビ受像機3からの音声信号を受信して解析することにより、テレビ受像機3において発生する音声信号についての遅延量を測定するかを選択することができるものである。
この第1段階の後においては、第2段階として、コントロール機器2に接続された外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCから測定信号に応じた音声を放音させ、これを測定用マイクロホンMICで受音し、受音して得た測定信号についての応答信号を解析することにより、外部スピーカから放音される音声信号についての空間伝播遅延量を正確に測定する。
しかし、この第3の実施の形態においても、第2段階は必ずしも必須の処理ではなく、第1段階の測定結果に基づいて、コントロール機器2における再生する音声信号に対する遅延処理を施すようにしてもよい。
また、この第3の実施の形態においても、測定用マイクロホンMICを用いて、外部スピーカから放音される音声の空間伝播遅延量をも測定した場合であって、テレビ受像機3の内蔵スピーカから放音される音声よりも遅延した音声が放音するようにされている場合には、最も遅延した音声信号を基準として、コントロール機器2を通じて再生する音声信号に対する遅延量を設定するようにしてもよい。
また、図27、図28のフローチャートを用いて説明した処理は、この発明による方法が適用されたものである。また、図27、図28のフローチャートを用いて説明した処理を実行するプログラムが、この発明によるプログラムである。したがって、図27、図28に示したフローチャートの各ステップを実行するプログラムを形成し、これをコントロール機器に搭載して実行できるようにしておくことによって、種々のコントロール機器に、第3の実施の形態として説明した発明を適用することができる。
[再生プロセスについて]
上述した第1〜第3の実施の形態で説明したようにして把握される音声信号に対する遅延時間(遅延量)に基づいて、出力する音声信号に対して遅延処理を施すコントロール機器2における再生プロセスについて説明する。図29は、コントロール機器2の再生モジュールの構成例を説明するためのブロック図である。
図29に示すように、コントロール機器2の再生モジュールとしては、映像入力端子Vin、音声入力端子Ain、I/F21、信号処理部22、DAC23、DAC/AMP24、設定値保存メモリ27、システムコントローラ28、マルチチャンネルのプリアウト端子群OA−M、マルチチャンネルのスピーカ出力端子群OAS−Mからなっている。
そして、図29に示すように、CPUやDSPによって構成される信号処理部22が、マルチチャンネルの音声信号の供給を受けて、これをデコードし、各チャンネルの音声信号に分離するオーディオデコーダ22Eとしての機能と、DAC23に供給する各チャンネルの音声信号を遅延させる遅延部と、DAC/AMP24に供給する各チャンネルの音声信号を遅延させる遅延部とからなる遅延部22Fとしての機能を実現するようにしている。
これらオーディオデコーダ22E、遅延部22Fは、システムコントローラ28によって制御するようにされる。システムコントローラ28は、CPUやDSPによって構成される信号処理部22によってその機能を実現するようにしてもよいし、図29に示したように、信号処理部22とは独立して、CPUやメモリからなるマイクロコンピュータなどによって実現するようにしてもよい。
そして、DVDプレイヤーやBDプレイヤーなどのソース信号再生機器1からの映像信号は、コントロール機器2の映像入力端子Vinを通じて受け付けられ、I/F21を通じてプリアウト端子群OA−Mの映像出力端子を通じて出力され、テレビ受像機3に供給するようにされる。
一方、ソース信号再生機器1からの音声信号は、コントロール機器2の音声入力端子Ainを通じて受け付けられ、I/F21を通じて信号処理部22が実現するオーディオデコーダ22Eに供給される。オーディオデコーダ22は、上述もしたように、これに供給されたマルチチャンネルの音声信号をデコード処理し、各チャンネルの音声信号に分離して、各チャンネルに対応して設けられたDAC23側の各遅延部と、各チャンネルに対応して設けられたDCA/AMP24側の各遅延部とに供給する。
遅延部22Fを構成する各チャンネルに対応する遅延部は、システムコントローラ28の制御に応じて、自機に供給される音声信号に対して遅延処理を施す。すなわち、設定値保存メモリ27には、第1〜第3の実施の形態において説明したように、音声信号についての遅延量が測定されて記憶保持されている。システムコントローラ28は、設定値保存メモリ27に記憶保持されている音声信号についての遅延量を参照し、これに応じて、実際に音声信号をどれだけ遅延させるかを定め、遅延部22Fを構成する各遅延部を制御する。
なお、音声信号についての遅延処理が必要になるのは、主に、外部スピーカoL、oR、oSL、oSR、oCに供給すべき音声信号に対してであり、DAC/AMP24の前段に設けられた遅延部において遅延処理が行われ、DACV23の前段に設けられた遅延部においては、大きく遅延処理を行うことは無く、例えば微調整などのための遅延処理(補正処理)が行われる。
このように、遅延処理部22Fにおいては、システムコントローラ28の制御により、再生される音声信号の各チャンネルの時間軸が調整される。そして、上述もしたように、
ソースの音声信号がDAC23を通ってプリアウト端子群OA−Mに繋がる系統と、DAC/AMP24を通過してスピーカ出力端子群OAS−Mに繋がる系統で、異なるディレイ値を設定可能なものとしている。
また、例えば、図2を用いて説明した映像音響再生システムのように、L(左)チャンネルの音声信号とR(右)チャンネルの音声信号とは、テレビ受像機3の内蔵スピーカTVL、TVRから再生し、SL(左後方)チャンネルの音声信号とSR(右後方)チャンネルの音声信号とC(センター)チャンネルの音声信号とは、コントロール機器2に接続される外部スピーカoSL、oSR、oCから放音するというように、マルチチャンネルの各チャンネルの音声信号を異なる機器を通じて再生する場合には、コントロール機器2の再生モジュールの構成を図30のように構成することができる。
図30は、コントロール機器2の再生モジュールの他の構成例を説明するためのブロック図である。図30に示したコントロール機器2の再生モジュールの場合には、DAC23とDAC/AMP24との前段に、これらにおいて共用される遅延部(チャンネル毎の遅延部からなるもの)22Gを設けるようにしたものである。
すなわち、遅延部22Gは、上から順に、L(左)チャンネル用遅延部、R(右)チャンネル用遅延部、SL(左後方)チャンネル用チャンネル部、SR(右後方)チャンネル用遅延部、C(センター)チャンネル用遅延部の5つの遅延部からなり、各チャンネルの遅延部毎に制御が可能とされている。また、遅延部22Gの前段に置かれたオーディオデコーダ22Eは、図29に示したオーディオデコーダ22Eと同様に構成されるものである。
そして、上述もしたように、L(左)チャンネルの音声信号とR(右)チャンネルの音声信号とは、プリアウト端子を通じてテレビ受像機3に供給し、SL(左後方)チャンネルの音声信号とSR(右後方)チャンネルの音声信号とC(センター)チャンネルの音声信号とは、スピーカ出力端子を通じて外部スピーカoSL、oSR、oCに供給する場合を考える。
この場合には、遅延部22Gにおいて、上側2つの遅延部、すなわち、L(左)チャンネル用遅延部とR(右)チャンネル用遅延部とにおいては、遅延処理を行うことなく、オーディオデコーダ22Eからの音声信号をそのままL(左)チャンネル用DACとR(右)チャンネル用DAC、及び、プリアウト端子群OA−MのL(左)チャンネルの出力端子とR(右)チャンネルの出力端子とを通じてテレビ受像機3に供給するようにされる。
一方、システムコントローラ28は、設定値保存メモリ27に記憶保持されている音声信号についての遅延量を参照し、これに応じて、実際に、SL(左後方)チャンネルの音声信号とSR(右後方)チャンネルの音声信号とC(センター)チャンネルの音声信号とをどれだけ遅延させるかを定め、下側3つの遅延部、すなわち、SL(左後方)チャンネル用遅延部とSR(右後方)チャンネル用遅延部とC(センター)チャンネル用遅延部とを制御して、SL(左後方)チャンネルの音声信号とSR(右後方)チャンネルの音声信号とC(センター)チャンネルの音声信号とに対して、適切に遅延処理を施す。
遅延処理されたSL(左後方)チャンネルの音声信号とSR(右後方)チャンネルの音声信号とC(センター)チャンネルの音声信号とは、対応するチャンネルのDAC/AMPと、スピーカ出力端子群OAS−MのSL(左後方)チャンネルの出力端子とSR(右後方)チャンネルの出力端子とC(センター)チャンネルの出力端子とを通じて、L(左)チャンネルスピーカoL、R(右)チャンネルスピーカoR、C(センター)チャンネルスピーカに供給される。
これにより、L(左)チャンネルの音声信号とR(右)チャンネルの音声信号とは、テレビ受像機3に供給され、テレビ受像機3が備える音声信号に対する遅延処理機能により、再生される映像と同期が和せられるようにされた音声信号に応じた音声が、内蔵スピーカTVL、TVRから放音される。
また、SL(左後方)チャンネルの音声信号とSR(右後方)チャンネルの音声信号とC(センター)チャンネルの音声信号とは、上述したように、予め測定され設定値保存メモリに記憶保持された音声信号の遅延量に応じてコントロール機器2の遅延部22Gにいて遅延処理されて、対応するチャンネルの外部スピーカに供給されるので、テレビ受像機3において再生される映像や音声に対して、同期が合うようにされる。
このように、コントロール機器2の再生モジュールの構成は、テレビ受像機の内蔵スピーカを用いるか用いないか、外部スピーカはどのように用いるかなど、映像音響再生システムの構成に応じたものとすることができる。
[まとめ]
上述した第1の実施の形態の映像音響再生システムにおける、音声信号の遅延量の把握処理(測定処理)の概要をまとめると、以下のようになる。すなわち、
AVコントロール機器2内部のDSPやCPUからなる信号処理部22から、テレビ受像機3などの映像音声再生機器に対して、任意の映像信号及びTSP信号あるいは広帯域ノイズなどの測定信号を入力し、映像音声再生機器に接続されたスピーカから再生する。リスニング位置に置かれた測定用マイクロホンにより、応答信号を受音し遅延時間を求めデータベースに記録する。次に、AVコントロール機器2に直接、または間接的に接続されたスピーカにおいても、同様の測定を行い、遅延時間をデータベースに記録する。この遅延時間データベースを参照し、映像音声再生機器のスピーカに関する遅延時間を基準として、他のスピーカに対応するチャンネルに遅延処理(ディレイ処理)を設定することができるようにしたものである。
また、上述した第2の実施の形態の映像音響再生システムにおける、音声信号の遅延量の把握処理(測定処理)の概要をまとめると、以下のようになる。すなわち、
AVコントロール機器内部のDSPやCPUからなる信号処理部から、テレビ受像機3などの映像音声再生機器に対して、任意の映像信号及びTSP信号あるいは広帯域ノイズなどの測定信号を入力し、映像音声再生機器内で映像と同期させるために遅延処理させられた音声応答信号をAVコントロール機器2に再入力し、これにより遅延時間を求めデータベースに記録する。この遅延時間を用いて基準として、他のスピーカに対応するチャンネルに遅延処理(ディレイ処理)を設定することができるようにしたものである。
また、上述した第2の実施の形態の映像音響再生システムにおいては、さらに、
AVコントロール機器2内部のDSPやCPUからなる信号処理部22から、テレビ受像機3などの映像音声再生機器に対して、任意の映像信号及びTSP信号あるいは広帯域ノイズなどの測定信号を入力し、映像音声再生機器内で映像と同期させるために遅延処理させられた音声応答信号をAVコントロール機器に再入力し、これにより遅延時間を求めデータベースに記録する。そして、AVコントロール機器2に直接、または間接的に接続されたスピーカにおいても、同様の測定を行い、遅延時間をデータベースに記録する。この遅延時間データベースを参照し、映像音声再生機器のスピーカに関する遅延時間を基準として、他のスピーカに対応するチャンネルに遅延処理(ディレイ処理)をすることもできる。
また、上述した第3の実施の形態の映像音響再生システムは、AVコントロール機器2からテレビ受像機3の内蔵スピーカから放音する音声の音量制御が可能な場合には、第1の実施の形態の音声信号の遅延量の把握処理(測定処理)を行うようにし、AVコントロール機器2からテレビ受像機3の内蔵スピーカから放音する音声の音量制御が不能な場合であって、測定用マイクロホンによってテレビ受像機3の内蔵スピーカから放音される測定信号に応じた音声を適切に受音できない場合には、第2の実施の形態の音声信号の遅延量の把握処理(測定処理)を行うようにするというように、適切な音声信号の遅延量の把握処理(測定処理)を自動選択することができるようにしたものである。
また、第1の実施の形態と第3の実施の形態の場合には、AVコントロール機器2からテレビ受像機3などの映像音声再生機器の音量を最適なものに自動調整できるようにする手段を備えることにより、ユーザーの手を煩わせることなく、音声信号についての遅延量を適切に測定することができる。
また、測定して設定値保存メモリに記憶保持するようにした音声信号についての遅延量(遅延時間)に基づいて、AVコントロール機器2において遅延補正を行う場合に、テレビ受像機3などの映像音声再生機器を基準とするのではなく、設定値保存メモリのデータベースに記録した音声信号についての遅延時間のうち、最も大きなものを基準として、AVコントロール機器2から出力する音声信号に対して遅延処理を施すようにしてもよい。
この場合には、テレビ受像機3などの映像音声再生機機に供給する音声信号と、AVコントロール機器2に接続された外部スピーカに供給する音声信号とでは、遅延量は異なるものとなる。すなわち、テレビ受像機3などの映像音声再生機機では、映像信号処理にかかる時間に応じて、音声信号に対して遅延処理が施されるためである。
また、測定して設定値保存メモリに記憶保持するようにした音声信号についての遅延量(遅延時間)に基づいて、AVコントロール機器2において遅延補正を行う場合に、例えば、テレビ受像機3などの映像音響再生装置において、ユーザーからの入力操作に応じて急に画質モードが変更されるなどしたために、音声信号についての遅延量が変わってしまう場合もある。
そこで、各画質モードに応じて、予め音声信号についての遅延量を測定して、各画質モードに応じた遅延量についてのデータベースを持つようにし、適切に音声信号についての遅延処理が行われていない場合において、ユーザーからの指示入力に応じて用いるデータベースを変更できるようにしておくことにより、画質モードの急な変更などについても対処することができる。
なお、ここでは画質モードが変更される場合を例にして説明したが、予め用意しておくべき複数種類のデータベースは、処理する映像信号のフォーマットと選択される画質モードとの組み合わせに応じて、予め測定処理を行って設定値保存メモリに作成しておけばよい。また、音声信号についての遅延量を記憶保持した複数のデータベースの一覧リストを作成しておけば、当該一覧リストを介して、適切な遅延量が記憶保持されているデータベースを用いるように容易に選択することも可能となる。
また、音声信号についての遅延量が記憶保持されるデータベースを、ユーザーからの情報入力に応じて、追加、変更、削除などのいわゆる保守作業を行うようにすることも可能である。
[その他]
実用面を考えれば、データベースは1つである必要はなく、上述もしたように、再生時ユーザーが任意に呼び出せるプリセットを複数格納しても良いし、AVアンプ等のコントロール機器自身が再生時に入力選択機器・出力選択機器に応じて呼び出しを対応するようにしても良い。
また、上述した実施の形態で用いたAVコントロール機器2には、測定用マイク入力端子Minがついているものとして説明した。しかし、通常の自動音場補正機能(イコライザ、レベル合わせ等)と兼用のものであっても良い。つまり発明の機能は独立した測定でも良いが、リップシンクを補正するという意味で、自動音場補正の一種と解釈でき、その意味で他の機能を持つ自動音場補正測定シーケンスの一部として、組み込まれる場合もある。
なお、上述した実施の形態においては、コントロール機器2は、例えばAVアンプであるものとして説明したが、コントロール機器2はAVアンプに限るものではない。例えば、パーソナルコンピュータ、オーディオアンプ等、測定信号を出力し、その応答信号の入力を受け付けて解析することが可能な種々の電子機器にこの発明を適用することができる。
また、上述した実施の形態においては、テレビ受像機3は内蔵スピーカを有するものとして説明したが、必ずしも内蔵スピーカを備えていなくてもよい。スピーカを内蔵していなくても、映像信号処理にかかる時間に応じて遅延処理された音声信号を出力する出力端子を備えたものであればよい。したがって、テレビ受像機3についても、一般的なテレビ受像機のほか、パーソナルコンピュータ、モニタ受像機などの映像信号と音声信号の処理が可能な種々の機器を用いることが可能である。
また、上述した実施の形態においては、外部スピーカはコントロール機器2に直接に接続されるものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、パワーアンプ装置などを介在させてコントロール機器2に接続させるような場合であってもこの発明を適用することができる。
また、上述した実施の形態においては、測定信号としてTSP信号を用いるようにしたが、これに限るものではない。上述もしたように、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、M系列ノイズなどの広帯域ノイズであってもよいし、また、一般的な音声・音楽信号であってもよい。また、測定信号の生成方式としては、予め決められたロジックにしたがって演算により生成したり、測定信号生成部22Bに接続されたメモリから読み出すことにより生成するようにしたりすることができる。
また、再生モジュールにおいて、遅延部は、いわゆる遅延線を用いるようにしてもよいし、メモリを用いるようにしてもよい。
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