発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの主要構成要素として用いられる発光素子には、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子がある。
無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有している。発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能である。さらに、自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
しかしながら、今後の有機EL素子の実用化に際して、さらなる低消費電力で効率よく高輝度に発光する有機EL素子の開発が望まれている。
これまでにも、様々な有機EL素子が報告されている。たとえば、Appl.Phys.Lett.,Vol.51、913頁あるいは特開昭59−194393号に記載の正孔注入層と有機発光体層とを組み合わせたもの、特開昭63−295695号に記載の正孔注入層と電子注入輸送層とを組み合わせたもの、Jpn.Journal of Applied Phisycs,vol.127,No.2 第269〜271頁に記載の正孔移動層と発光層と電子移動層とを組み合わせたものがそれぞれ開示されている。
しかし、関連産業界からは、より高輝度で、エネルギー変換効率、発光量子効率の向上した有機EL素子の出現が期待されており、また、発光寿命が短いという問題点も指摘されている。こうした経時での輝度劣化の要因は完全には解明されていないが、発光中のエレクトロルミネッセンス素子は自ら発する光、及びその時に発生する熱などによって薄膜を構成する有機化合物自体の分解、薄膜中での有機化合物の結晶化等、有機EL素子材料である有機化合物に由来する要因が指摘されている。
上記、有機EL素子の性能向上のために、発光層をホスト化合物および微量の蛍光体で構成することにより、発光効率の向上を達成するという手法が報告されている。例えば、日本特許第3093796号では、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体又はトリススチリルアリーレン誘導体に、微量の蛍光体をドープし、発光輝度の向上、素子の長寿命化を達成している。
又、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これに微量の蛍光体をドープした有機発光層を有する素子(特開昭63−264692号)、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体をホスト化合物として、これにキナクリドン系色素をドープした有機発光層を有する素子(特開平3−255190号)が知られている。以上のように、蛍光量子収率の高い蛍光体をドープすることによって、従来の素子に比べて発光輝度を向上させている。
しかしながら、上記のドープされる微量の蛍光体からの発光は、励起一重項からの発光であり、励起一重項からの発光を用いる場合、一重項励起子と三重項励起子の生成比が1:3であるため発光性励起種の生成確率が25%であることと、光の取り出し効率が約20%であるため、外部取り出し量子効率(ηext)の限界は5%とされている。ところが、プリンストン大から励起三重項からのリン光発光を用いる有機EL素子が報告がされて以来(M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151〜154ページ(1998年))、室温でリン光を示す材料の研究が活発になってきている(例えば、M.A.Baldo et al.,nature、403巻、17号、750〜753ページ(2000年)、米国特許6,097,147号など)。励起三重項を使用すると、内部量子効率の上限が100%となるため、励起一重項の場合に比べて原理的に発光効率が最大4倍となり、冷陰極管とほぼ同等の性能が得られ照明用にも応用可能であり注目されている。
一方、リン光性化合物をドーパントとして用いるときのホストは、リン光性化合物の発光極大波長よりも短波な領域に発光極大波長を有することが必要であることはもちろんであるが、その他にも満たすべき条件があることが分かってきた。
The 10th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL ’00、浜松)では、リン光性化合物についていくつかの報告がなされている。例えば、Ikaiらはホール輸送性の化合物をリン光性化合物のホストとして用いている。また、M.E.Tompsonらは、各種電子輸送性材料をリン光性化合物のホストとして、これらに新規なイリジウム錯体をドープして用いている。さらに、Tsutsuiらは、ホールブロック層の導入により高い発光効率を得ている。
リン光性化合物のホスト化合物については、例えば、C.Adachi et al.,Appl.Phys.Lett.,77巻、904ページ(2000年)等に詳しく記載されているが、高輝度の有機エレクトロルミネッセンス素子を得るためにホスト化合物に必要とされる性質について、より新しい観点からのアプローチが必要であろう。
上記の如く、多くの開発研究がなされ、報告・公開がなされているが、いずれも、素子の発光輝度の向上と素子の耐久性を両立しうる構成は得られていない。
又、リン原子を含む化合物を有機エレクトロルミネッセンス素子材料として用いた例としては、特開平7−53950号および特開平7−109449号において、特定構造を有するリン化合物を発光材料または正孔輸送材料として使用する例がある。しかし、いずれの報告も、リン光性化合物を発光層に含有したときの、本発明で挙げるリン化合物の有効性については全く触れられていない。
以下に本発明を詳細に説明する。
まず、前記一般式(2)で表される化合物と同等の効果を奏する下記一般式(1)表される化合物について説明する。
一般式(1)において、Pはリン原子を表し、R11、R12、R13、R14およびR15は一価の置換基をあらわす。
一価の置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルケニル基(ビニル基、プロペニル基、スチリル基等)、アルキニル基(エチニル基等)、アルキルオキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、複素環基(ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基等)等が挙げられる。隣接する置換基同士は環を形成しても良い。
好ましくは、R11〜R15のうち、少なくとも3個が芳香族基の時であり、より好ましくは、R11〜R15の全てが芳香族基の時である。芳香族基としては上記アリール基およびヘテロアリール基(ピロール基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル等)が挙げられる。
次に、一般式(2)について説明する。Pはリン原子を表し、R21、R22およびR23は一価の置換基をあらわし、Xはカルコゲン原子を表す。
一価の置換基としては一般式(1)中のR11〜R15と同様の置換基が挙げられ、カルコゲン原子として好ましくは酸素原子または硫黄原子であり、最も好ましくは、酸素原子である。
次に一般式(1)の中で好ましい下記一般式(3)について説明する。
式中、Pはリン原子を表し、R31は一価の置換基をあらわし、X31、X32、X33、X34、X35、X36、X37およびX38はそれぞれ窒素原子またはC−R32をあらわす。X31、X32、X33、X34、X35、X36、X37およびX38の複数がC−R32であらわされるとき、それぞれは同じでも異なっていてもよい。R32は一価の置換基をあらわす。
一価の置換基としては一般式(1)中のR11〜R15と同様の置換基が挙げられる。好ましくは、下記一般式(4)で表される時である。
式中、Pはリン原子を表し、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48およびR49は一価の置換基を表す。より好ましくは、一般式(4)中のR41が芳香族基である時である。
本発明の化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子のいずれの層に用いても良いが、固体状態において強い蛍光を持つ化合物であり、電場発光性にも優れており、発光材料として有効に使用できる。また、金属電極からの優れた電子注入性および電子輸送性に非常に優れているため、他の発光材料を用いた素子において、電子輸送材料として使用した場合、優れた発光効率を示す。
以下に一般式(2)の具体的な化合物の例(2−1〜2−11)を挙げるが、本発明は、これらに限定されるものではない。さらに、同等の効果を奏する一般式(1)、(3)、(4)の具体的な化合物の例を挙げる。
更に、本発明者等は、リン光発光用の材料についても鋭意検討を重ねた結果、分子内にリン原子を有する化合物をリン光発光素子のいずれかの層に含有させて有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した場合に、素子の発光輝度および寿命が改善されることを見出した。
又、本発明のホスト化合物とは、2種以上の化合物で構成される発光層中において、混合比(質量)の最も多い化合物であり、それ以外の化合物はドーパント化合物という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成しその混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に、発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。本発明におけるリン光性化合物は、ドーパント化合物の一種である。
本発明のリン光性化合物とは励起三重項からの発光が観測される化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.001以上の化合物である。好ましくは0.01以上である。更に好ましくは0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398ページ(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光性化合物とは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率が達成されれば良い。
好ましくは、元素の周期律表でVIII属の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくは、イリジウム、オウミウム、または白金錯体系化合物である。より好ましくはイリジウム錯体系化合物である。
以下に、本発明で用いられるリン光性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、p.1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
また別の形態では、ホスト化合物とリン光性化合物の他に、リン光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させる場合もある。この場合、ホスト化合物とリン光性化合物からのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物からの発光が得られる。蛍光性化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。
ここで、蛍光量子収率は10%以上、特に30%以上が好ましい。具体的には、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または、希土類錯体系蛍光体などが挙げられる。
ここでの蛍光量子収率も、前記第4版実験化学講座7の分光IIの362ページ(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することが出来る。
以下、さらに本発明と同等の効果を奏する化合物について説明する。かかる化合物は下記一般式(5)〜(7)で示される。
一般式(5)において、Pはリン原子を表し、R51、R52およびR53は一価の置換基をあらわす。一価の置換基としては一般式(1)中のR11〜R15と同様の置換基が挙げられる。好ましくは、R51、R52およびR53がすべて芳香族基である時である。
次に一般式(6)について説明する。Pはリン原子を表し、R61は一価の置換基をあらわし、X61、X62、X63およびX64はそれぞれ窒素原子またはC−R62をあらわす。X61、X62、X63およびX64の複数がC−R62であらわされるとき、それぞれは同じでも異なっていてもよい。R62は一価の置換基をあらわす。一価の置換基としては一般式(1)中のR11〜R15と同様の置換基が挙げられる。好ましくは、一般式(7)で表される時である。
式中、Pはリン原子を表し、R71、R72、R73、R74およびR75は一価の置換基をあらわす。より好ましくは、一般式(7)中のR71が芳香族基である時である。
以下に、一般式(5)〜(7)の具体的化合物例を示すが、これらに限定されるものではない。
以下、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)について説明する。
EL素子における発光層は、広義の意味では、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する層のことを指す。具体的には、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する蛍光性化合物を含有する層のことを指す。通常、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)は一対の電極の間に発光層を挟持した構造をとる。本発明の有機EL素子は、必要に応じ発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、陽極バッファー層および陰極バッファー層等を有し、陰極と陽極で挟持された構造をとる。
具体的には、
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極などで示される構造がある。
上記化合物を用いて発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜を形成する方法があるが、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、上記化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態又は液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、この分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)と、凝集構造、高次構造の相違やそれに起因する機能的な相違により区別することができる。
また、この発光層は、特開昭57−51781号に記載されているように、樹脂などの結着材と共に発光材料として上記化合物を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより塗布して薄膜形成することにより得ることができる。
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
ここで、本発明に記載のリン光性化合物は、具体的には、前述のように、重金属錯体系化合物であり、好ましくは元素の周期律表でVIII属の金属を中心金属とする錯体系化合物であり、さらに好ましくは、オスミウム、イリジウムまたは白金錯体系化合物である。
これらのリン光性化合物としては、前記のようなリン光量子収率が、25℃において0.001以上である他、前記ホストとなる蛍光性化合物の蛍光極大波長よりも長いリン光発光極大波長を有するものであり、これにより、例えば、ホストとなる蛍光性化合物の発光極大波長より長波のリン光性化合物をもちいてリン光性化合物の発光、即ち三重項状態を利用した、ホスト化合物の蛍光極大波長よりも長波において電界発光するEL素子を得ることができる。従って、用いられるリン光性化合物のリン光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には、中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができる。
例えば、350nm〜440nmの領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物をホスト化合物として用い、例えば、緑の領域にリン光をもったイリジウム錯体を用いる事で緑領域に電界発光する有機EL素子を得ることが出来る。
また、別の形態では、前記のように、ホスト化合物としての蛍光性化合物Aとリン光性化合物の他に、リン光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有するもう一つの蛍光性化合物Bを少なくとも1種含有する場合もあり、蛍光性化合物Aとリン光性化合物からのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物Bからの発光を得ることも出来る。
本明細書の蛍光性化合物が発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ社製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
一般式(2)で表されるホスト化合物の分子量は600〜2000であることが好ましく、この分子量範囲にあると、Tg(ガラス転移温度)が上昇し、熱安定性が向上し、素子寿命が改善される。より好ましくは分子量が800〜2000である。又、Tgは100度以上であることが好ましい。又、この範囲内の分子量であると発光層を真空蒸着法により容易に作製することができ、有機EL素子の製造が容易になる。さらに、有機EL素子中における蛍光性化合物の熱安定性もよくなる。
次に正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等発光層と組み合わせてEL素子を構成するその他の層について説明する。
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、そのうえ、発光層に陰極、電子注入層又は電子輸送層より注入された電子は、発光層と正孔注入層もしくは正孔輸送層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど発光性能の優れた素子となる。この正孔注入層、正孔輸送層の材料(以下、正孔注入材料、正孔輸送材料という)については、前記の陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する性質をもつものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
上記正孔注入材料、正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物,無機物のいずれであってもよい。この正孔注入材料、正孔輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体,オキサジアゾール誘導体,イミダゾール誘導体,ポリアリールアルカン誘導体,ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体,フェニレンジアミン誘導体,アリールアミン誘導体,アミノ置換カルコン誘導体,オキサゾール誘導体,スチリルアントラセン誘導体,フルオレノン誘導体,ヒドラゾン誘導体,スチルベン誘導体,シラザン誘導体,アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。正孔注入材料、正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号の明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、p型−Si、p型−SiCなどの無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記正孔注入材料、正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔注入層、正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記材料の一種又は二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
さらに、必要に応じて用いられる電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
この電子輸送層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。電子輸送層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この電子輸送層は、これらの電子輸送材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
又、本発明においては、蛍光性化合物は発光層のみに限定することはなく、発光層に隣接した正孔輸送層、または電子輸送層に前記リン光性化合物のホスト化合物となる蛍光性化合物と同じ領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させてもよく、それにより更にEL素子の発光効率を高めることができる。これらの正孔輸送層や電子輸送層に含有される蛍光性化合物としては、発光層に含有されるものと同様に蛍光極大波長が350nmから440nm、更に好ましくは390nm〜410nmの範囲にある蛍光性化合物が用いられる。
本発明の有機EL素子に好ましく用いられる基盤は、ガラス、プラスチックなどの種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はない。本発明のエレクトロルミネッセンス素子に好ましく用いられる基盤としては例えばガラス、石英、光透過性プラスチックフィルムを挙げることができる。
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
次に、該有機EL素子を作製する好適な例を説明する。例として、前記の陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなるEL素子の作製法について説明する。
まず適当な基板上に、所望の電極用物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させて陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層からなる薄膜を形成させる。
さらに、陽極と発光層または正孔注入層の間、および、陰極と発光層または電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123頁〜第166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
陽極バッファー層は、特開平9−45479号、同9−260062号、同8−288069号等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層は、特開平6−325871号、同9−17574号、同10−74586号等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウム、酸化リチウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
さらに上記基本構成層の他に必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、例えば特開平11−204258号、同11−204359号、および「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層などのような機能層を有していても良い。
バッファー層は、陰極バッファー層または陽極バッファー層の少なくとも何れか1つの層内に本発明の化合物の少なくとも1種が存在して、発光層として機能してもよい。
次に有機EL素子の電極について説明する。有機EL素子の電極は、陰極と陽極からなる。
この有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAuなどの金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
上記陽極は、蒸着やスパッタリングなどの方法により、これらの電極物質の薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が、透明又は半透明であれば発光効率が向上するので好都合である。
次に有機EL素子の作製方法について説明する。
薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、蒸着法などがあるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくいなどの点から、真空蒸着法が好ましい。薄膜化に、真空蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類、分子堆積膜の目的とする結晶構造、会合構造などにより異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6〜10-3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
前記の様に、適当な基板上に、所望の電極用物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させて陽極を作製した後、該陽極上に前記の通り正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層からなる各層薄膜を形成させた後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫してこの様に正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた有機EL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧5〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
実施例1(電子輸送層)
陽極としてガラス板上にITO(インジウムチンオキシド)を150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに、m−MTDATAを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにDPVBiを200mg入れ、また別のモリブデン製抵抗加熱ボートにBCPを200mgを入れ真空蒸着装置に取付けた。
次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、m−MTDATAの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで透明支持基板に膜厚25nmで蒸着し、さらに、DPVBiの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで膜厚20nmで蒸着し、発光層を設けた。蒸着時の基板温度は室温であった。
ついで、BCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで30nmの電子輸送層を設けた。
次に、フッ化リチウム0.5nmおよびアルミニウムを110nm蒸着して陰極を形成し、表1に示す比較用有機EL素子OLED1−1を作製した。
上記有機EL素子OLED1−1のBCPを表1に記載の化合物に替えた以外は有機エレクトロルミネッセンス素子OLED1−1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子OLED1−2〜12を作製した。
これらの素子を温度23度、乾燥窒素ガス雰囲気下で10V直流電圧印可による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m2)、発光効率(ln/W)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度、発光効率は有機エレクトロルミネッセンス素子OLED1−1を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は有機エレクトロルミネッセンス素子OLED1−1の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表1に示す。なお全ての素子において発光色は青色であった。
表1より、本発明の化合物を用いた有機EL素子は、点灯開始時の発光輝度、発光効率及び輝度の半減する時間が改善されているのが分かる。特に、輝度の半減する時間が改善されているのが分かる。
実施例2(リン光ホスト化合物)
エレクトロルミネッセンス素子有機EL素子OLED2−1〜2−17を以下のように作製した。
〈有機EL素子の作製〉
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに、α−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにCBPを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにバソキュプロイン(BCP)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにIr−1(リン光性化合物)を100mg入れ、さらに別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで透明支持基板に蒸着し、膜厚45nmの正孔輸送層を設けた。さらに、CBPとIr−1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/sec、0.01nm/secで前記正孔輸送層上に共蒸着して膜厚20nmの発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。さらに、BCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。その上に、さらに、Alq3の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記電子輸送層の上に蒸着して更に膜厚40nmの電子注入層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
次に、フッ化リチウム0.5nmおよびアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子OLED2−1を作製した。
上記において、発光層のCBPを表2にしめす化合物に置き換えた以外は全く同じ方法で、有機EL素子OLED2−2〜2−17を作製した。
〈有機EL素子OLED2−1〜2−17の発光輝度、発光効率および発光寿命の評価〉
有機EL素子OLED2−1では、初期駆動電圧3Vで電流が流れ始め、発光層のドーパントであるリン光性化合物からの緑色の発光を示した。有機EL素子OLED2−1の温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で9V直流電圧を印加した時の発光輝度(cd/m2)、発光効率(ln/W)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度、発光効率は有機エレクトロルミネッセンス素子OLED2−1を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間も有機エレクトロルミネッセンス素子OLED2−1を100とした時の相対値で表した。発光輝度(cd/m2)については、ミノルタ社製CS−1000を用いて測定した。
表2から明らかなように、本発明の化合物をホストに用いたエレクトロルミネッセンス素子は、発光輝度が高く、発光寿命が長いことから、有機EL素子として非常に有用であることがわかった。
燐光化合物をIr−12またはIr−9に変更した以外は有機EL素子OLED2−1〜2−17と同様にして作製した有機EL素子においても同様の効果が得られた。なお、Ir−12を用いた素子からは青色の発光が、Ir−9を用いた素子からは赤色の発光がえられた。
実施例3(電子輸送層)
実施例2の有機EL素子OLED2−1のBCPを表3に示す化合物に置き換えた以外は全く同じ方法で、有機EL素子OLED3−1〜3−10を作製した。実施例2と同様の方法で発光輝度、発光効率および輝度の半減する時間を測定した。
表3から明らかなように、本発明の化合物を電子輸送層に用いたエレクトロルミネッセンス素子は、発光輝度、発光効率及び輝度の半減する時間が改善されているのが分かる。特に、輝度の半減する時間が改善されているのが分かる。
実施例4(正孔輸送層)
実施例2の有機EL素子OLED2−1のα−NPDを表4に示す化合物に置き換えた以外は全く同じ方法で、有機EL素子OLED4−1〜4−4を作製した。実施例2と同様の方法で発光輝度、発光効率および輝度の半減する時間を測定した。
表4から明らかなように、本発明と同等の効果を奏する化合物を正孔輸送層に用いたエレクトロルミネッセンス素子は、発光輝度、発光効率及び輝度の半減する時間が改善されているのが分かる。
実施例5
実施例2で作製したそれぞれ赤色、緑色、青色発光有機エレクトロルミネッセンス素子を同一基板上に並置し、図1に示すアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製した。
図1には作製したフルカラー表示装置の表示部の模式図のみを示した。即ち同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、それぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
該フルカラー表示装置を駆動することにより、輝度の高い鮮明なフルカラー動画表示が得られた。