JP2007326732A - 炭素ナノ構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明に係る炭素ナノ構造体の製造方法は、ゼオライト細孔内部を鋳型として用い、該ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成する工程と、該ゼオライトを酸で溶解除去する工程と、該溶解除去工程により得られた炭素構造体をホットプレスすることにより、該炭素構造体の細孔径を縮小させ炭素ナノ構造体を得る工程と、からなることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
また、自動車業界においては、ハイブリッド車、あるいは燃料電池自動車等にも、二次電池が用いられているが、自動車では、大電流の瞬間的な放電が必要であり、かつ長寿命化も重要な課題となっているのが現状である。更に、自動車の場合には、短時間での充電も重要である。
しかし、これらの課題に対して、従来の二次電池では、未だ充分に応えられていないのが現状である。
ここで、EDLCについて説明すると、一般のコンデンサは(図示せず)、誘電体(絶縁物)を挟んだ電極に電圧を印加すると双極子が配向することによって電荷が貯えられるが、EDLC(図示せず)は、固体電極として活性炭、液体として電解液(希硫酸水溶液)を用いて、それらを接触させるとその界面にプラス、マイナスの電極が極めて短い距離を隔てて相対的に分布する現象(電気2重層)を利用し、電荷を貯えることとなる。
また、EDLCでは、イオン性溶液中に一対の電極を浸して電気分解が起こらない程度の電圧をかけると(電気分解が起こるとコンデンサとして働かなくなる)、それぞれの電極の表面にイオンが吸着され、プラスとマイナスの電気が蓄えられ(充電)、また、外部に電気を放出すると正負のイオンは電極から離れて中和状態に戻る(放電)という特徴を有している。
更に、電池では充放電は化学反応の繰り返しとして行われるので、1000回も充放電を行うと電極や電解液が劣化して使用できなくなるのに対し、EDLCは、物理的な吸着・離脱で充放電を行うため、特に劣化するところがなく、原理的に寿命は半永久的であるという特徴を有している。
また、イオンの移動は、化学反応より物理的な吸着・離脱の方がはるかに早いため、EDLCは電池には真似のできない、急速充放電が行えるという特徴を有している。
更に、EDLCの場合、ユニットセル間の集電体を共通にする構造を採用し、内部抵抗を下げることにより、数十kWの大電流の充放電が秒単位で可能となるという特徴もある。
また、EDLCの場合、化学反応は低温下では能率が大きく低下するが、物理的な吸着は低温でもその働きが低下することが少なく、さらに電極や電解液の最適化により、電池が動作不能となる極低温(−25℃まで)でも問題なく動作するようにできる。
その他、電池では電極に鉛など環境負荷の大きい金属材料が使われているが、EDLCの電極には、従来、活性炭粉末と樹脂を焼き固めた固体活性炭が用いられてきており、重金属を使用しておらず、屋外の設置にも安心して使用でき、廃棄時も環境負荷が少ないという利点を有している。
以上のように、EDLCは電池に無い多くの特徴を有することから、燃料電池から一定の電流を取り出し、一旦EDLCに貯めてバッファとして使うことにより負荷変動を吸収する検討が進められている。
また、ハイブリッド自動車や燃料電池車では、加速時や発進時にEDLCがアシストを行い、減速時にはエネルギーを回生して充電するシステムが検討されている。また、位置エネルギーの回生などにも有効であり、EDLCは短時間のエネルギー交換に有効なデバイスとして注目されている。
また、EDLCは、2枚の電極の間に電解液等を挟んだ通常のキャパシタ構造に似ているが、大きな容量を得るため、大きな表面積の電極を使用する。通常は、フェノール樹脂等を炭化して、作った活性炭を用いている。その表面積は、2000m2/g程度であるが、EDLCで実際に電解液が入り込んで容量を形成している表面積はその1/3程度の700m2/g程度と言われている。
その一例として、新規な炭素素材として、ナノポーラスカーボン、およびさらに特異的にテンプレートされたナノポーラスカーボンが検討されている。
ここで、ポーラスカーボンは、例えば、非特許文献1にあるように、通常、天然または合成起源の前駆物質の炭化と、それに続く活性化により得られるものである。
これに関し、本発明者らは、例えば、非特許文献2にあるように、ポーラスカーボンを調製するためのテンプレートとして、3次元の多孔性構造をもつゼオライトを初めて採用することに成功している。
上記テンプレート炭素の調製には、一般にいくつかの段階を踏んでいく必要がある。
即ち、ゼオライトの乾燥、前駆物質の導入、当該前駆物質の重合、重合体の炭化、さらにゼオライト上のもう一つの炭素供給源である化学蒸着(CVD)と、最後にテンプレートの溶解などを含んでいる。
上記製法で用いられる前駆物質(アクリロニトリルまたはフルフリルアルコール)は、容易にはゼオライトチャンネルに含浸しないため、接触時間は長く、例えば、フルフリルアルコールでは5日を越えて接触を行い、前記長時間の接触を行っても、浸透または次に続く重合は容易に完了しないこともあり、次の段階におけるCVD工程には十分制御されなければならない。例えば、該CVD工程では、ゼオライトの表面上にいくつかのグラフェン層が形成され易く、そのため有効な孔がブロックされる可能性があることが指摘されている。
さらに、上記前駆物質の重合には、前駆物質アクリロニトリルへのγ線照射などの特殊な技術を必要とすることがある。
しかしながら、シングルウォールカーボンナノチューブの形成は、結晶ゼオライトのテンプレートの品質に大いに依存しており、良好なゼオライト結晶は非常に取得しにくいため、炭素−ゼオライト複合材の大量製造は非常に困難なものとなっている。
更に、得られたシングルウォールカーボンナノチューブのサイズ(0.4nm程度)は、テンプレートからの解放の後に安定であるためには小さすぎ、さらに当該チューブの孔径(0.1nm程度)もまた水素の取り込みには小さすぎるという課題を有している。
また、上記単層カーボンナノチューブをEDLCに利用する手法としては、カーボンナノチューブ(以下「CNT」と称することがある。)をCVD法で金属基板の上に直接、垂直に育成したり、あるいは、電着法で、金属に平行に積層したりと手法は種々提案されているが、CNTの内径が、1〜2nmであるため、CNTをEDLC電極に応用するときの問題点としては、有機系の電解液(主にプロピレンカーボネート)では、イオンが、細孔内に入り難いため、イオンの脱着できる有効表面積は、上記の窒素ガスの吸着法によって得られる巨大な単位重量あたりの表面積の割には、小さいものになってしまうという点にある。
しかし、EDLCには、単位重量あたりの表面積だけでなく、単位体積あたりの表面積も大きくなければ、嵩高いデバイスとなってしまう。活性炭の場合、比重が0.3程度であるため、800m2/cm3程度しか示さないというのが大きな問題となっている。
また、活性炭の場合、ミクロ孔(直径が2nm以下)、メソ孔(2nmから50nm)、マクロ孔(50nm以上)に分類される中で、ほとんどがイオンの入れないミクロ孔であることが多く、EDLCの電極として利用できるのは、全表面積のうち1/3程度であることも問題となっていた。
更に、先にも述べたように、EDLC電極の実効的表面積が1000〜1500m2/gとなり、単位体積あたりの表面積も1000m2/cm3程度まで大きくなれば、現在のニッケル水素二次電池並みの容量となり、2000〜3000m2/g、2000m2/cm3となれば、リチウムイオン電池を追い抜くことになる。
また、本発明に係る第2の発明の炭素ナノ構造体の製造方法は、前記ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成する工程が、炭素前駆体となるフルフリルアルコールを該ゼオライト細孔内部に含浸させ、該ゼオライトを窒素雰囲気中で熱処理して該フルフリルアルコールを重合させ、次いで、プロピレンガス中で熱CVD法によって該ゼオライト細孔内に炭素を積層させる工程であることを特徴とするものである。
更に、本発明に係る第3の発明の炭素ナノ構造体の製造方法は、前記ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成する工程が、炭素前駆体となるアセチレンガスを該ゼオライト細孔内部に流し、熱CVD法によって該ゼオライト細孔内に炭素を積層させる工程であることを特徴とするものである。
更にまた、本発明に係る第4の発明の炭素ナノ構造体の製造方法は、前記ホットプレスの圧力が、49.03MPa(500kgf/cm2)以上であることを特徴とするものである。
また、本発明に係る第5の発明の炭素ナノ構造体の製造方法は、前記ゼオライトが、Y型ゼオライトであることを特徴とするものである。
更に、本発明に係る第6の発明の炭素ナノ構造体は、第1〜5の発明のいずれかに記載の炭素ナノ構造体の製造方法で得られたものであることを特徴とするものである。
更にまた、本発明に係る第7の発明の炭素ナノ構造体は、前記炭素ナノ構造体の細孔径が3nm以下であり、且つ前記炭素ナノ構造体の密度が0.7g/cm3以上であることを特徴とするものである。
本発明に係る炭素ナノ構造体は、ゼオライトを鋳型とし、該ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成させる工程、その後、該鋳型材料を酸で溶解除去する工程、得られた炭素構造体をホットプレスして、該炭素構造体の細孔径を縮小させ炭素ナノ構造体を得る工程、からなる製造方法を用いて得ることができる。
ここで、本発明に係るゼオライトとしては、三次元細孔をもつ構造や直線状細孔がさらに小さい孔でつながっている構造を有していれば良く、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、ZSM−5、UTD−1、ITQ−7、ITQ−4、MCM−22などがあるが、その中でも、細孔径が2nm程度とイオンが入りやすいサイズであり、細孔構造がイオンの流れやすい構造をしているY型ゼオライトを用いることが好ましい。
尚、本発明においては、数nm程度の細孔径を有する代表的な材料であり、その表面積の大きさ故に、触媒等の担持材料として活用されているゼオライトを鋳型として使用する。該ゼオライトの細孔内に、炭素を積層させて炭素構造体を形成させ、その後、ゼオライトを酸等で溶解除去して、適切な細孔径を有する炭素材料を得るものである。
ここで、鋳型としたゼオライトが微粉体であるため、当該のナノ細孔を有する炭素構造体も微粉体である。このため粒子間隙が多いので、体積あたりの比表面積を大きくするためには、粒子間隙を減少させる必要性がある。
本発明に係る炭素ナノ構造体の製造方法によれば、得られた該粉体状の炭素構造体をホットプレスすることによって、炭素粒子間隙が大きく減少するだけでなく、通常よりも炭素ナノ構造体の細孔を収縮させることができる。これらの結果、密度を1近くまで高めることができる。ホットプレスしても細孔が完全につぶれてしまわない限り炭素構造体重量あたりの細孔の数は変わらないので、細孔が収縮する結果、重量あたりの比表面積は減る。しかしながら上記した密度の増加が該比表面積減少の程度を上回り、体積当たりでは比表面積が増え、ホットプレス以前の2倍以上に向上させることができるのである。これは、ゼオライトを鋳型としたカーボンの大きな特徴である。
尚、活性炭では粒子間隙をある程度減少させることはできるものの、細孔を収縮させることはできない。その結果、密度もわずかにしか大きくならない。これは、活性炭においては炭素のフレーム構造が強固であって、個々の粒子、細孔が変形しにくく、粒子間隙の減少や細孔の収縮が起こりにくいためであると考えられる。つまり、ゼオライトを鋳型として調製した炭素の構造は比較的柔軟であると考えられる。
本発明においては、該ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成させる工程として、炭素前駆体となるフルフリルアルコールを、該ゼオライトに含浸させ、窒素雰囲気中で熱処理を施し(150℃)重合させ、その後、プロピレンガス中で熱CVD法(700℃)によって、該ゼオライト細孔内に炭素を積層させる工程が提案されている。
より具体的には、炭素前駆体となるフルフリルアルコール(FA)を鋳型であるゼオライトに含浸し、熱処理することで該ゼオライト細孔内でFAを熱重合させる。次に、窒素ガス雰囲気下で昇温して細孔内に存在するポリフルフリルアルコール(以下「PFA」と略記することがある)を炭素化し、さらにプロピレンガスの熱分解により炭素をゼオライト細孔内に堆積させ、700〜1100℃で熱処理を行う。
ここで、本発明に係るゼオライトの上記前段の熱処理は、150〜200℃であることが好ましい。150℃よりも低温であると、重合が不十分であるため好ましくない。また、200℃を超えると、熱重合の前にFAが蒸発し、細孔内に十分な量のPFAが残存しないため好ましくない。
更に、本発明に係るゼオライトの上記後段の熱処理は、700〜1100℃であることが好ましい。700℃よりも低温であると、炭素化が不十分で好ましくない。また、1100℃を超えると、ゼオライトと炭素が反応する可能性があり、好ましくない。
また、その後、炭素構造体を有するゼオライトのゼオライト部分を酸で溶解除去する。この時、酸としては、フッ酸を用いることができるが、硫安などの他の強酸であっても良い。これによって、ゼオライトのみを溶解除去して、単独の炭素構造体を得る。このようにして得られた炭素構造体をPFA−P−Cと表す(以下「実施例1」と称することがある。)。
尚、炭素構造体を有するゼオライトのゼオライト部分は、例えば、高温(100°C以上)、高濃度(数mol/L)アルカリ(NaOH)水溶液等のアルカリであっても溶解除去することが可能である。
本発明においては、もう一つの該ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成させる工程として、炭素前駆体となるアセチレンガスを該ゼオライトの細孔内部に流し、熱CVD法によって、該ゼオライト細孔内に炭素を積層させる工程が提案されている。
より具体的には、炭素前駆体となるアセチレンを該ゼオライト細孔内部に流し、熱CVD法によって、炭素を堆積させる。その後、600〜1100℃で熱処理を行い、その後、上記と同様にフッ酸でゼオライトのみを除去する。
ここで、本発明に係るゼオライトの熱処理は、600〜1100℃であることが好ましい。600℃よりも低温であると、炭素化が不十分で好ましくない。また、1100℃を超えるとゼオライトと炭素が反応する可能性があり、好ましくない。この様にして得られた炭素構造体をA−Cと表す(以下「実施例2」と称することがある。)。
上記本発明の製造方法A)B)の様にして作製された炭素構造体PFA−P−C(実施例1)、A−C(実施例2)については、ラマンスペクトル測定を行うことにより評価することができる。一例として、測定結果を図1に示す。
尚、比較評価のため、PFAとゼオライトの複合体でCVD法によって炭素構造体を作製をせず、直接、酸処理によって、ゼオライト除去を行い得られた炭素構造体(PFA−Cと表す)を準備し、ラマンスペクトル測定(装置名:Seishin社製)を行った。同様に測定結果を図1に示す。また、参考のためにゼオライトのみも用意し、測定を行っている。
鋳型として用いたゼオライトは、300〜500cm−1に3つのゼオライト特有のピークを示す。
一方、炭素構造体PFA−P−C(実施例1)とPFA−Cは、炭素材料の特徴である1598cm−1のピーク(Gバンド)と1345cm−1のピーク(Dバンド)を示す。
両者とも、鋭いGバンドを示すことからグラフェンシート構造を有していることが判る。また、PFA−P−C(実施例1)においては、500cm−1以下の領域に、ブロードなピークが検出された。この領域は、単層、もしくは、2層カーボンナノチューブのラジアンブリージング(RBM)によるピークが検出される領域と一致する。
同様に、X線回折パターンを見ることにより評価することができる。一例として、上記3サンプルについてX線回折結果を図2に示す。図2によれば、PFA−P−C(実施例1)においては、2θ=約6度付近にゼオライト類似のピークが見られる。すなわち、鋳型であるゼオライトの構造に由来する長周期構造ができていることがわかる。また、PFA−P−C(実施例1)においては、2θ=約26度のピークが見えない。このピークは、グラッフェンシートが重なっている時に見えるものであるので、PFA−P−C(実施例1)では、ほとんど単層構造であることがわかる。つまり、ゼオライトの細孔内に、ほぼ炭素の1原子層からなる層ができており、その構造は、SWNT構造に類似した構造である可能性を示している。
本発明においては、得られた炭素構造体をホットプレスして炭素ナノ構造体を得る。前記ホットプレスする時の圧力が、49.03MPa(500kgf/cm2)以上であることが該炭素ナノ構造体の細孔径を小さくすることができるため好ましい。さらに、78.45MPa(800kgf/cm2)以上であれば更に好ましい。上記ホットプレス圧力の範囲で、得られた該粉体状の炭素構造体をホットプレスすることによって、密度を0.7以上、好ましくは、密度を1近くまで高めることができる。また、この密度変化により、体積あたりの比表面積を従来の2倍以上にすることができる。
さらに、ホットプレスすることによって、該炭素ナノ構造体の細孔径を、ゼオライト細孔径よりも小さくでき、3nm以下とすることが可能である。但し、ホットプレスする時の圧力が、得られた炭素構造体の構造を完全に破壊する程の高い圧力では好ましくないことは言うまでもない。
ここで、該炭素ナノ構造体の細孔径を3nm以下としたのは、該細孔径が3nmを超えると、ホットプレスが施されていない通常の炭素ナノ構造体が持つ特性とあまり差が無くなってしまうからである。
尚、該炭素ナノ構造体の細孔径が0nmでは、体積あたりの比表面積が著しく低減されてしまうため、好ましくないことは言うまでもない。
この時、ホットプレスする温度は、室温から200℃未満で加重したときは、密度の変化は見られなかったが、200℃以上で加重すると、上記のような密度変化が確認された。したがって、200℃以上の温度で加重することが好ましい。
以下に一例として、上記のように作製した炭素構造体PFA−P−C、アセチレンガスを原料ガスとして、ゼオライト細孔内に直接CVD法で炭素膜を作り酸処理でゼオライトを除去した炭素構造体A−C、比較のため、高重量比表面積を示す活性炭(M−30:大阪ガス製)について、ホットプレスを行った結果を示し、その特性を説明する。
直径13mmのコイン状セル内に上記炭素材料粉末をそれぞれ30〜80mg充填し、加重せずに50℃で真空乾燥を行い、次に、上下から1.7tで加重し、加重が安定した後、300℃まで昇温した。昇温後、2tの加重となっている(=147.69MPa(1506kgf/cm2))。この状態で、約6時間放置後、降温し、炭素を取り出した。ホットプレス前後での密度を計測した。その結果を表1に示す。
また、A−Cサンプル(実施例2)に対して、85.32MPa(870kgf/cm2)でも測定したが、その場合、ホットプレス後の密度は、0.5g/cm3となり、ホットプレス前に比べて、2.5倍の密度が得られている。このように、78.45MPa(800kgf/cm2)以上の力でホットプレスすることにより、プレス前の密度の2倍以上とすることができるのである。
ホットプレスすると、PFA−P−C(実施例1)とA−C(実施例2)のいずれにおいても、X線回折の2θ=約6度付近のピーク強度が著しく低下する(図3参照)。ホットプレスすることにより、ゼオライトの構造に由来する長周期構造がある程度壊れたことを意味すると考えられる。また、ホットプレス後に、2θ=20度付近に、緩やかなピーク(肩)が現れる。これは、グラファイトの積層構造(002)に対応していると判断される。
これより、ホットプレスにより、単層構造だった炭素の層にある程度の重なりができたことを意味していることがわかる。
上記のように、本発明に係る炭素ナノ構造体は、ゼオライトを鋳型とし、該ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成させる工程、その後、ゼオライトを酸で溶解除去する工程、得られた炭素構造体をホットプレスして、該炭素構造体の細孔径を縮小させ炭素ナノ構造体を得る工程、を有する方法によって得られ、大きな重量比表面積と同時に、体積比表面積を有する炭素ナノ構造体を得ることができる。
さらに、該炭素ナノ構造体の細孔径を自在に制御できることにより、EDLC用電極として有用な炭素ナノ構造体を製造することができることとなり、工業的に有用である。
通常の活性炭は表面積が大きいが、細孔が小さすぎることや、細孔径が不均一であることが多い。このような場合、イオンが細孔中に入るのが困難であることや、細孔内で拡散しにくいために、全ての細孔を有効に活用することはできないといわれている。
これに対して、本発明に係る炭素ナノ構造体は、ほとんどすべての細孔が有効利用できて、かつ表面積が大きい構造は、細孔径がほぼ揃って、電解液の入り得る細孔径の範囲にある構造である。
また、本発明に係る炭素ナノ構造体では、ゼオライトを鋳型とすることにより細孔径はほぼ揃い、そして、使用する目的に最も沿う細孔径に調整できる。EDLC用途においては、体積あたりの容量を従来の活性炭の3倍程度に大きくできる可能性があるというメリットがある。
以下、本発明の実施例を、比較例とともに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
この試料をN2雰囲気中で5℃/分で700℃まで昇温し、温度が700℃に到達すると同時に2.0vol%のプロピレンガスを導入して、700℃で1時間、熱CVD法処理を施し、ゼオライト細孔内にさらに炭素膜を積層した。その後、プロピレンガスの導入を止めて、N2雰囲気中で5℃/分で900℃まで昇温し、3時間保持した後、放冷し、フッ酸に浸漬してゼオライトを溶解除去した。この試料を、今までと同じく、PFA−P−Cと表す。
実施例1,2と比較するために、高重量比表面積を示す活性炭(M−30:大阪ガス製)を準備した。
上記実施例1、2及び比較例1の3サンプルについて、窒素ガス吸着による吸着等温線を求めた(図4参照)。吸着等温線の解析結果を表2に示す。
活性炭(比較例1)の場合(M−30)、ホットプレスの前後で、吸着されたN2の量(表面積に比例する量)は、さほど変わらなかった。(図4)
一方、A−Cサンプル(実施例2)の場合、ホットプレスすると、重量あたりの表面積が小さくなっていることがわかる。
また、PFA−P−C(実施例1)においてもホットプレスの前後で、同様に大きく表面積が変化した。(図4)
次に、ホットプレスの前後での細孔径の変化を見るため、A−Cサンプル(実施例2)と、活性炭(比較例1)の場合について、P/P0の小さい部分を対数スケールで拡大して示す(図5参照)。
A−Cサンプル(実施例2)においてはホットプレスによって吸着量が著しく増大した(図5)。これは細孔径が小さくなったことによるものと考えられる。
PFA−P−C(実施例1)は図に示していないが、A−C(実施例2)と同様に低P/P0での吸着量は著しく増大し、細孔径が小さくなっていることが分かった。しかしながら活性炭(比較例1)(M−30)では変化は無く、細孔径も変化していないと考えられる。
また、DFT法(Density Functional Theory; 密度汎関数法)により、細孔径分布を調べた。得られた細孔径分布曲線を図6に示す。
活性炭(比較例1)の場合、ホットプレスの前後で、細孔分布にさほどの変化は見られなかった。
しかし、ゼオライト鋳型を使用して得た炭素ナノ構造体の場合、PFA−P−C(実施例1)、A−C(実施例2)いずれにおいても、大きい細孔が減り、小さい細孔が増えていることがわかる。
以上の表面積と、ミクロ孔容積をあわせて表2に示す。
PFA−P−C(実施例1)、A−C(実施例2)は、ホットプレス後、重量当たりでは減少するものの、体積あたりの比表面積と体積当たりのミクロ孔容積がともに大きくなっていることがわかる。これは著しい密度増加のためと考えられる。
Claims (7)
- ゼオライト細孔内部を鋳型として用い、該ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成する工程と、該ゼオライトを酸で溶解除去する工程と、該溶解除去工程により得られた炭素構造体をホットプレスすることにより、該炭素構造体の細孔径を縮小させ炭素ナノ構造体を得る工程と、からなることを特徴とする炭素ナノ構造体の製造方法。
- 前記ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成する工程が、炭素前駆体となるフルフリルアルコールを該ゼオライト細孔内部に含浸させ、該ゼオライトを窒素雰囲気中で熱処理して該フルフリルアルコールを重合させ、次いで、プロピレンガス中で熱CVD法によって該ゼオライト細孔内に炭素を積層させる工程であることを特徴とする請求項1記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
- 前記ゼオライト細孔内部に炭素を積層させて炭素構造体を形成する工程が、炭素前駆体となるアセチレンガスを該ゼオライト細孔内部に流し、熱CVD法によって該ゼオライト細孔内に炭素を積層させる工程であることを特徴とする請求項1記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
- 前記ホットプレスの圧力が、49.03MPa(500kgf/cm2)以上であることを特徴とする請求項1記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
- 前記ゼオライトが、Y型ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の炭素ナノ構造体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭素ナノ構造体の製造方法で得られた炭素ナノ構造体。
- 前記炭素ナノ構造体の細孔径が3nm以下であり、且つ前記炭素ナノ構造体の密度が0.7g/cm3以上であることを特徴とする請求項6記載の炭素ナノ構造体。
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