JP2007325566A - 旨味調味料およびその製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】節類または節類と昆布の出汁取り後の残渣を、5〜25重量%の塩濃度にて、醤油麹または味噌麹で自然発酵させて得られる旨味調味料。
【選択図】なし
Description
特許文献1には、節類の出汁取り後の残渣の有効利用を図るために、残渣を醤油麹で所定条件下、短時間発酵させ、さらに紅麹由来のリボ核酸分解酵素で処理する旨味調味料の製造法が開示されている。
(1)節類または節類と昆布の出汁取り後の残渣を、5〜25重量%の塩濃度にて醤油麹または味噌麹で自然発酵させて得られる旨味調味料、
(2)麹が、大豆、米、小麦および大麦から選ばれる少なくとも1種の穀類を基質として製麹した麹である上記(1)記載の旨味調味料、
(3)基質が、大豆と、他の少なくとも1種の穀類とを含む上記(3)記載の旨味調味料、
(4)節類の出汁取り後の残渣を自然発酵させて得られる上記(1)〜(3)項いずれか1項記載の旨味調味料、
(5)節類の出汁取り後の残渣と、昆布の出汁取り後の残渣の混合物を自然発酵させて得られる上記(1)〜(3)いずれか1項記載の旨味調味料、
(6)発酵醪(諸味)を固液分離して得られる液体調味料である上記(1)〜(5)いずれか1項記載の旨味調味料、
(7)発酵醪を固液分離して得られるペースト状〜固体の調味料である上記(1)〜(5)いずれか1項記載の旨味調味料、
(8)節類または節類の出汁取り後の残渣を、5〜25重量%の塩濃度にて醤油麹または味噌麹で自然発酵させることを特徴とする旨味調味料の製造法、
(9)発酵醪が、少なくとも外観上液となじむまで発酵を続ける上記(8)記載の製造法、
(10)3〜6ヶ月間発酵を続ける上記(8)記載の製造法、
(11)発酵後に、固液分離する上記(8)記載の製造法、
(12)固液分離した液体を火入れする上記(11)記載の製造法などを提供するものである。
節類残渣と昆布残渣を使用する場合の両者の比率は特に特定するものではないが、通常、湿潤重量として昆布残渣を節類残渣の30重量%以下、好ましくは20〜10%程度使用する。
出汁取り後の残渣は、そのまま、または破砕、細刻等により適宜の大きさとして使用することができる。
固液分離は、濾過、圧搾、遠心分離等、常法に従って行うことができる。
液体調味料は、常法により、例えば、黴、酵母、雑菌の殺菌ができる程度、例えば、中心温度が75〜90℃に達するまで加熱して火入れをして保存性を高めてもよい。
また、ペースト状〜固体の調味料は、要すれば、均質化して使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中の%は、特に断らない限り重量%を意味する。
実施例中の分析は、以下の方法で行った。
日本醤油検査協会が定めた醤油標準色と比色し測定した。色の薄い試料は醤油標準色(No.40)を希釈して比較した。
(2)pHの測定
ガラス電極pHメーターで測定した。
(3)塩分量の測定
ホルファルト法(日本薬学会編、衛生試験法・注解、金原出版株式会社(1990))で行った。試料200μlに0.2N硝酸銀水溶液20mlおよび硝酸20mlを加えた。15分加熱後冷却し指示薬として硫酸アンモニウム鉄水溶液2mlを加えて0.2Nアンモニウムチオシアネート溶液で滴定し算出した。
(4)糖度(Brix)
手持ち屈折計(ATAGO製)で測定した。
(5)無塩可溶性固形分の測定
屈折計示度(Brix)から食塩分を差し引いて求めた。
ケルダール法で行った。試料1mlに分解促進剤、硫酸10mlおよび過酸化水素5mlを加え加熱分解した。蒸留後、1/14N水酸化ナトリウムで滴定し総窒素量を算出した。
(7)酸度IおよびIIの測定
試料10mlに水40mlを加えpH7.0に中和した。用いた1/10N水酸化ナトリウム溶液の液量から酸度Iを求めた。さらに続けて滴下しpH7.0〜8.3までに用いた液量から酸度IIを算出した。酸度Iおよび酸度IIの合計を滴定酸度とした。
(8)水分および灰分の測定(前田安彦編著、初学者のための食品分析法(2001)弘学出版)
水分は常圧加熱乾燥法(105℃)で、灰分は直接灰化法(600℃)で一夜加熱し、それぞれ測定した。
(9)脂肪の測定
試料10gにクロロホルム・メタノール(2:1)15mlを加え、混合後吸引濾過した。分液ロートで一夜放置後、下層のクロロホルムを回収し無水硫酸ナトリウムを加え脱水した。クロロホルムを気化させ脂質を濃縮し、窒素ガスでクロロホルムを完全除去し脂肪量を算出した。
試料800μlにエタノール3.2mlを加え撹拌した。12,000rpmで3分間遠心分離後、上澄み2mlを遠心濃縮し0.02N塩酸4mlを加え1日静置した。その後、12,000rpmで3分間遠心分離しフィルター濾過後に自動アミノ酸分析器で測定した。アミノ酸組成は、アミノ酸総量と甘味系、苦味系および旨味・酸味系アミノ酸量に分類した(藤井建夫、魚の発酵食品、ベルソーブックス003、成山堂書店2002)。
(11)アンモニア・アミン類分析
遊離アミノ酸の数値から算出した。
(12)有機酸分析(舩津保浩ら、日水誌、66:1026−1035(2000))
魚醤油を水で10倍に希釈し,セルロースアセテートフィルター(0.45μm)で濾過した液を島津製HPLC有機酸分析システムで分析した。カラム:Shimpack SCR-102H (8mmI.D.×300mmL.)、移動層:p−トルエンスルホン酸(5mM)、液量:0.8ml/min、カラム温度:40℃とした。
(13)糖分析
魚醤油を水で20倍に希釈した液をセルロースアセテートフィルター(0.45μm)で濾過し、Dionex製イオンクロマトグラフで分析した。カラム:Carbopac PA-1(Dionex製)、緩衝液:A=50mM NaOH,B=50mM NaOH−0.5M CH3COONaのリニアグラディエント方式、検出機:電気化学検出器(Dionex製)で行った。
1)揮発性成分の補集
テフロン製バイアル瓶に各試料を正確に1ml取り、Carboxen/ポリジメチルシロキサン(75μm部分架橋型)を吸着剤とした固層マイクロ抽出(SPME)ファイバーをバイアル内に挿入し、ヘッドスペースの揮発性成分を40℃で1時間かけて補集後直ちに吸着した成分をガスクロマトグラフ分析に供した。
2)ガスクロマトグラフフィー/マススペクトロメトリー(GC−MS)分析
固相マイクロ抽出SPME法により40℃で吸着した揮発性成分をGC−MSで分析した。分析条件は以下の通りである。装置:ガスクロマトグラフHewlett Packard社製6890型、質量分析計:Hewlett Packard社製5973型、カラム:PTA-5 Supelco社製、直径:0.32mm、長さ:30mおよび膜厚:1.5μm、カラム温度:40(2min)‐250℃(23min)、キャリアガス:He、注入口温度:250℃、注入法:スプリットレス(流速:1.5mL/min)、昇温速度:10℃/分、GC/MSインターフェース:ダイレクトカップリング(280℃)、イオン源温度:230℃、イオン化電圧:70eV。
揮発性成分は、標準マスライブラリデータ(NISTマススペクトルデータベース)、化学物質総合情報提供システム(独立行政法人製品評価基盤技術機構)のCAS番号検索および文献から推定した。
(15)官能検査
濾過前に醪形状を確認した。濾過後に味および香りを検査した。常温で香りを嗅ぎ強弱を評価した。また、甘味、旨味、酸味、苦味、えぐみ、渋みおよび塩味を検査した。製品段階である3ヶ月と6ヶ月目の試料は、上記の他に評点法による官能検査も行った。近畿大学農学部水産学科学生と、ある企業の社員計15名で構成されたパネルにより調味料の官能検査を行った。評価方法は、SD法を用いた(古川秀子、おいしさを測る 食品官能検査の実際:41、42、61〜64(1994)幸書房)。反対語を両端に位置づけた6段階の評価尺度により、試料に対する印象を各尺度上に評定した。平均値から各試料の特性を読み取った。また、調味料にとって、最も大切だと考えられる項目(香りの良悪および旨味の強弱)を軸にし、散布図にした。評点法による2元配置法を用いて解析を行った。さらに、各麹の評価尺度の3と6ヶ月目でt−検定による有意差検定を行った。
米、大麦および大豆を水に浸漬、吸水させた後、高温蒸気で蒸し、冷却後に麹菌(Aspergillus oryzae)を植菌し30〜42℃で48時間の培養を行い、それぞれ米麹(Rice Koji:RK)、大麦麹(Barley Koji:BK)および大豆麹(Soybean Koji:SK)として用いた。小麦と大豆麹(Wheat-Soybean Koji:WSK)は、小麦と大豆とを水に浸漬、吸水後、高温蒸気で蒸し冷却後に麹菌(Aspergillus oryzae)を植菌し、30〜42℃で48時間の培養を行い作成した.また、米と大麦麹(Rice-Barley Koji:RBK)は、米麹と大麦麹を半分ずつ混ぜたものを用いた。
上記残渣、残渣の15%の麹、残渣と麹の重さと等量の水に、それぞれ終濃度が15%になるように塩を加え混合し発酵させた。発酵を円滑に行うため1回/10日毎に混合し、空気に接触させるため1回/1ヶ月毎に封を開け混合した。
発酵直後から1カ月毎に6ヶ月まで試料を採材し、吸引濾過後の液体調味料(以下、魚醤油と称する)を分析に供した。魚醤油は最低3ヶ月で発酵するため、3ヶ月目以降の濾過後の残渣は発酵残渣として、さらに6ヶ月目の試料は製品として火入れ後にも分析に供した。
(1)色度
魚醤油色度の結果を表2に示す。
(2)pH
魚醤油pHの経時変化を図1に示す。
図1に示すごとく、SKは3ヶ月目まで漸次低下した後上昇した。RBKは変化しなかった。その他は3ヶ月目まで低下し、4.7〜5.0の範囲で推移した。
(3)塩分量
魚醤油塩分量は、全麹で17〜18%の範囲で推移した。
(4)糖度(Brix)
魚醤油糖度の経時変化を図2に示す。
図2に示すごとく、SKとWSKは1ヶ月目まで増加後29〜30%で推移した。他は1ヶ月目まで増加後26〜27%で推移した。
(5)無塩可溶性固形分
魚醤油の無塩可溶性固形分量の経時変化を図3に示す。
図3に示すごとく、BKおよびWSKは1ヶ月目まで増加後11〜13%で推移した。他は1ヶ月目まで増加後8〜9%で推移した。
魚醤油の総窒素量の経時変化を図4に示す。
図4に示すごとく、SKおよびWSKは漸次増加した。他は3ヶ月目まで増加後0.6g前後で推移した。
(7)酸度
魚醤油の酸度Iの経時変化を図5に示す。
図5に示すごとく、SKは3ヶ月目まで増加した後減少し6ヶ月目で2.08mlとなった。WSKは2ヶ月目まで増加し、その後漸次減少し6ヶ月目で7.24mlとなった。BKは2ヶ月目まで増加し、その後ほぼ一定だった。RKは4ヶ月目まで増加した後減少した。RBKは3ヶ月目まで増加後4ml前後で推移した。
魚醤油の酸度IIの経時変化を図6に示す。
図6に示すごとく、SKは発酵開始時から2ヶ月目まで増加後13〜14mlで推移した。WSKは3ヶ月目まで増加後12〜13mlで推移した。RKおよびRBKは、2ヶ月目まで増加後一定だった。BKは3ヶ月目まで増加後7〜8mlで推移した。
(8)滴定酸度
魚醤油の滴定酸度の経時変化を図7に示す。SKは3ヶ月目まで漸次増加しその後減少した。WSKは2ヶ月目まで増加し6ヶ月目で減少した。他は2ヶ月目まで増加しその後変化がなかった。
魚醤油の遊離アミノ酸総量の経時変化を図8に示す。SK、WSKおよびRBKは5ヶ月目まで増加後6ヶ月目で減少した。RKおよびBKは3ヶ月目まで増加後一定だった。
Gly、Hypro、Ala、Thr、Pro、Ser、LysおよびGlnの総計を甘味系アミノ酸量とし、その経時変化を測定したところ、SKとWSKは5ヶ月目まで漸次増加後6ヶ月目で減少した。他も同様に推移したが、SKおよびWSKより低い値で推移した。
Phe、Trp、Arg、Ile、Leu、Val、MetおよびHisの総計を苦味系アミノ酸量とし、その経時変化を測定したところ、SKおよびWSKは5ヶ月目で急に増加しその後減少した。RKおよびBKは3ヶ月目まで増加後減少し、5ヶ月目で再び増加した。RBKは5ヶ月目まで増加し6ヶ月目で減少した。
Glu、AspおよびAsnの総量を旨味・酸味系アミノ酸量とし、その経時変化を測定したところ、全麹で6ヶ月まで漸次増加した。
味に関するアミノ酸の量の経時変化は、SKおよびSWKは、RK、BK、RBKに比べてアミノ酸総量が多かった。全麹で、甘味系および苦味系アミノ酸量が同じくらいであり、旨味・酸味系アミノ酸量は少なかった。
アミノ酸組成の変化は、全麹で甘味系アミノ酸はAlaとLysが、苦味系アミノ酸はIle、LeuおよびValが多かった。旨味・酸味系アミノ酸はGluが6ヶ月目まで増加した。
(10)アンモニア・アミン類量
魚醤油のアンモニア、尿素(UREA)、ホスホエタノールアミンおよびエタノールアミンの経時変化を図9〜図12に示す。
図9に示すごとく、アンモニアは全麹で6ヶ月目まで増加した。
図10に示すごとく、UREAは全麹で発酵開始時には検出しなかった。SKとWSKは増減を繰り返し減少した。RKは4ヶ月目で発生し増減を繰り返し減少した。BKは2、4および6ヶ月目で検出した。RBKは2ヶ月目から検出し、増減を繰り返しながら減少した。
図11に示すごとく、ホスホエタノールアミンは、SKおよびWSKは開始時に多量に検出し、2ヶ月目で減少した後10mg以下で推移した。RKは1ヶ月目で検出した後検出されなかった。BKは1、2ヶ月目で検出した後検出されず、6ヶ月目で再度検出した。RBKは1ヶ月目から検出し2ヶ月目で増加した後検出されず、4ヶ月目から再度検出したが減少した。
図12 に示すごとく、エタノールアミンは、SKは3ヶ月目まで増加した後減少し、6ヶ月目では検出されなかった。他の麹は、3ヶ月目まで増加後5ヶ月目で減少したが6ヶ月目で再び増加した。
(11)有機酸
魚醤油の有機酸は、全麹でリン酸、乳酸と酢酸が多く検出された。RBK以外はクエン酸が減少し乳酸が増加した。
(12)糖量
発酵開始1ヶ月目の魚醤油において、全麹でグルコースが検出された。基質として大豆を用いたものにフルクトースが、大麦を用いたものにスクロースがそれぞれ検出された。
揮発性成分の分析の結果、81のピークが検出され、合計45種類の揮発性成分(酸類6、アルデヒド類6、含窒素化合物2、アルコール類15、炭化水素類4、ケトン類4、エステル類2およびフェノール類6)が同定された。
アルコール類はRK、BKおよびRBKが大豆を用いた麹に比べて多く検出した。酸類はSKとWSKで多く検出された。SKはイソ吉草酸と酢酸が1、3ヶ月目で多く検出された。WSKはイソ吉草酸が1、3ヶ月目で増加した。フェノール類はBKを除いて検出され発酵により減少した。フェノールは全麹で検出された。エステル類のうち乳酸エチルは、6ヶ月目でBKとWSKで検出された。アルデヒド類は、2−フランカルボキシアルデヒドとベンズアルデヒドが全麹で検出された。
(14)官能検査
官能検査の結果、全麹で発酵により節の形状が変化(液化)した。
RKは香りが発酵により最も強くなり、6ヶ月目ではフルーティーですっきりした香りとなった。BKは3ヶ月目でRKに次いで香りが強かったがその後香りが弱くなり、6ヶ月目ではRKより香りは弱いもののフルーティーですっきりした香りとなった。RBKはフルーティーな香りとアルコール臭を混ぜたような香りがあり、6ヶ月目でフルーティーな香りとなった。SKは香りが強いものの発酵により渋みが強く淡白な香りとなり、6ヶ月目では苦味が強く香りは劣った。WSKは発酵により香りが強くなり醤油特有の香りとなった。
味は、RKおよびBKは塩味、苦味と渋みが強くあっさりとしていた。RBKは塩味と苦味がやや強くすっきりとした。SKは1ヶ月目から旨味が最も強く、6ヵ月目には旨味が強く味に「こく」があった。WSKは1ヵ月目に旨味がSKに次いで強くなり6ヶ月目には醤油感が強く大豆よりすっきりしたが旨味が強かった。
官能検査の結果、特に、大豆と他の穀類を組み合わせた基質で製麹すると旨味調味料として望ましい魚醤油が得られることが判明した。
発酵6ヶ月目の魚醤油を、中心温度が90℃に達するまで加熱して火入れしたところ、全麹で火入れ前後の化学成分、アミノ酸組成および官能検査とも変化なかった。
(1)一般成分
6ヶ月目の発酵残渣一般成分の結果を表3に示す。
水分は全麹で50〜54%だった。灰分は13〜14%、また、脂肪はSKで10%と多かったが、他の麹は6〜7%であった。
発酵残渣の塩分量は、発酵期間を通して全麹で12〜13%で推移した。
(3)総窒素量
発酵残渣の総窒素量は、発酵期間を通して全麹で3〜4g/100gで推移した。
(4)遊離アミノ酸
発酵残渣の遊離アミノ酸総量の経時変化を図13に示す。
図13に示すごとく、全麹で5ヶ月目までほぼ変化がなく、6ヶ月目で減少した。
甘味系アミノ酸量は、SKおよびWSKで3、4ヶ月目は変化なく、5ヶ月目に増加し6ヶ月目に減少した。他は5ヶ月目まで一定で、6ヶ月目でやや減少した。苦味系アミノ酸量は、SK、WSK、RKおよびRBKは、3、4ヶ月目であまり変化がなく、5ヶ月目に増加し6ヶ月目で減少した。BKは5ヶ月目まで漸次増加後6ヶ月目で減少した。旨味・酸味系アミノ酸量は、SKおよびWSKは5ヶ月目まで増加し6ヶ月目で減少した。他は変化がなかった。
発酵残渣は、発酵を続けると味に関係するアミノ酸が生じる。遊離アミノ酸は、SK、WSKで多く、次いでRK、BKおよびRBK同様に含まれていた。量的には魚醤油に含まれる遊離アミノ酸総量に比べて低いもの、旨味・酸味系アミノ酸は、RK、BKおよびRBKで魚醤油より若干低かったが、SKおよびWSKでは、魚醤油よりも多い。甘味系および苦味系アミノ酸量が魚醤油に比べて若干低いものの、上記の魚醤油で、例えば4倍程度に希釈して、ホモゲナイザー等で均質化すれば、旨味・酸味に関しては、魚醤油以上であり、魚醤(魚味噌)のような、旨味調味料となる。
また、発酵残渣を水で洗浄して脱塩すれば、飼料としても利用でき、脱塩水は、節類の残渣と混合して発酵に供することにより再利用できる。
発酵
節類残渣と節類残渣の20%または10%の重さの昆布残渣、これらの残渣の15%の重さのRSK、これらの残渣と麹の重さと等量の水、終濃度が15%になるように食塩を加え、よく混合した後ペースト状にし発酵を開始した。対照として、昆布残渣を加えないものも作成した。発酵を円滑に行うために、実施例1と同様に混合した。
濾過
発酵開始直後から1ヶ月毎に3ヶ月まで試料を取り出し、濾過した液体(以下、魚醤油と称する)と濾過後残渣(以下、醤と称する)を分析に供した。
(1)色度
魚醤油の色度は、全魚醤油で3ヶ月目にNo.40−8となった。
(2)pH
魚醤油のpHの経時変化を図14に示す。
図14に示すごとく、昆布残渣無添加、添加共に発酵開始時からpHが低下し、3ヶ月目で4.7以下となった。
(3)塩分量
魚醤油の塩分量は、全魚醤油で変化はなく、17〜18%で推移した。
(4)糖度(Brix)
魚醤油の糖度の経時変化を図15に示す。
図15に示すごとく、昆布残渣無添加は1ヶ月目で増加し、その後ほぼ一定で変化がなかった。昆布残渣2割添加は、1ヶ月目で増加し2ヶ月目で減少し、昆布残渣s1割添加は、1ヶ月目で減少後2ヶ月目で増加したが3ヶ月目で一定となった。
(5)無塩可溶性固形分
魚醤油の無塩可溶性固形分の経時変化を図16に示す。
図16に示すごとく、昆布残渣無添加は3ヶ月目まで漸次増加した。昆布残渣2割添加は1ヶ月目で増加後減少し、昆布残渣1割添加は2ヶ月目まで増加した。
魚醤油の総窒素量の経時変化を図17に示す。
図17に示すごとく、昆布残渣無添加および昆布残渣1割添加は、2ヶ月目まで増加後3ヶ月目で減少した。昆布残渣2割添加は、3ヶ月目まで増加した。
(7)酸度
魚醤油の酸度Iの経時変化を図18に示す。
図18に示すごとく、昆布残渣無添加は、3ヵ月目で急激に増加した。昆布残渣1割添加は3ヶ月目まで漸次増加した。昆布残渣2割添加は、1ヶ月目から増加した。
魚醤油の酸度IIの経時変化を図19に示す。
図19に示すごとく、発酵開始時から1ヶ月目で増加し、3ヶ月目まで漸次増加した。
(8)滴定酸度
魚醤油の滴定酸度の経時変化を図20に示す。
図20に示すごとく、昆布残渣無添加は、3ヶ月目で急激に増加した。昆布残渣2割添加および1割添加は、3ヶ月目まで漸次増加した。
魚醤油の遊離アミノ酸総量は図21に示すごとく、全魚醤油で3ヶ月目まで漸次増加した。このうち、甘味系アミノ酸量および旨味・酸味系アミノ酸量は、全魚醤油で3ヶ月目まで漸次増加し、苦味系アミノ酸量は、全魚醤油で2ヶ月目まで増加した。
味に関するアミノ酸は、昆布残渣1割添加で若干アミノ酸量が多いものの、1から3ヶ月目でアミノ酸量は増加した。甘味系、苦味系および旨味・酸味系の割合は、昆布添加の有無に関わらず同じであった。
(10)アンモニア・アミン類量
魚醤油のアンモニア、尿素(UREA)、ホスホエタノールアミンおよびエタノールアミンの経時変化を図22〜図25に示す。
図22に示すごとく、アンモニア量は全魚醤油で3ヶ月目まで漸次増加後、昆布残渣無添加で50mg/100ml、2割添加で70mg、1割添加で78mgとなった。
図23に示すごとく、UREA量は無添加では1と3ヶ月目で検出された。2割添加では3ヶ月目まで検出しなかった。1割添加は、2ヶ月目で検出後3ヶ月目で減少し19mgとなった。
図24に示すごとく、ホスホエタノールアミン量は、無添加では1ヶ月目で減少後2ヶ月目で増加、3ヶ月目で減少し4mgとなった。2割添加は発酵開始時に検出されたがその後検出されなかった。1割添加は、1ヶ月目で検出されなかったが、その他は2〜3mgで推移した。
図25に示すごとく、エタノーアミン量は、全魚醤油で3ヶ月目まで増加し、無添加では10mg、2割添加では9mg、1割添加では10mgとなった。
(11)官能検査
官能検査の結果、昆布残渣無添加は2ヶ月目で淡白な大豆の香りとなった。昆布残渣を添加したものは、1ヶ月目で香りが強くなり(磯の香り)、2ヶ月目ではすっきりとした昆布の香りとなった。魚醤油の味は昆布残渣無添加では、2ヶ月目で甘味と苦味が感じられ、旨味は非常に強かった。昆布残渣を添加したものは、2ヶ月目で塩味と旨味が強く、昆布残渣添加量が多い程旨味が強く、苦味と渋みも感じられた。
魚醤油の香りと味は、昆布残渣を添加する程旨味が増し、香りも良く、すっきりとした昆布の香りとなった。昆布残渣の添加なしに、RSKで発酵させると、実施例1のWSKと同様な良好な発酵が進むが、昆布残渣を添加することでさらに味が良くなる傾向が示された。
(1)一般成分
醤の水分は、各発酵残渣ともに50〜56%で推移した。
灰分は、各発酵残渣ともに13〜14%で推移した。
脂肪は、昆布無添加は、10%で推移し、昆布残渣添加では8〜9%で推移した。
(2)総窒素量
醤の総窒素量は、全発酵残渣とも3〜4g/100gで推移した。
(3)塩分量
醤の塩分量は、全発酵残渣が12〜13%で推移した。
(4)遊離アミノ酸
醤のアミノ酸総量の経時変化を図26に示す。
図26に示すごとく、全ての醤の遊離アミノ酸は、発酵開始時から2ヶ月目まで増加後、3ヶ月目で少し減少し、昆布残渣無添加では1974.8mg/100ml、昆布残渣2割添加では2059.3mg/100ml、昆布残渣1割添加では2082.2mg/100mlとなった。
甘味系アミノ酸量は、全ての醤で3ヶ月目まで増加した。苦味系アミノ酸量は、全ての醤で、2ヶ月目まで増加し、3ヶ月目で減少した。旨味・酸味系アミノ酸量は、全ての醤で3ヶ月目まで増加した。
官能検査の結果、昆布残渣無添加および1割添加では塩味が非常に強く、2割添加では、塩味が強いが、旨味が最もあった。
昆布残渣添加、無添加に関わらず、発酵を続けると、発酵残渣から味に関与するアミノ酸が溶出する。昆布残渣添加で無添加に比べて旨味が増加し、魚醤油と同様な官能検査結果となり、醤(魚味噌)として十分利用できる。
Claims (12)
- 節類または節類と昆布の出汁取り後の残渣を、5〜25重量%の塩濃度にて醤油麹または味噌麹で自然発酵させて得られる旨味調味料。
- 麹が、大豆、米、小麦および大麦から選ばれる少なくとも1種の穀類を基質として製麹した麹である請求項1記載の旨味調味料。
- 基質が、大豆と、他の少なくとも1種の穀類とを含む請求項3記載の旨味調味料。
- 節類の出汁取り後の残渣を自然発酵させて得られる請求項1〜3項いずれか1項記載の旨味調味料。
- 節類の出汁取り後の残渣と、昆布の出汁取り後の残渣の混合物を自然発酵させて得られる請求項1〜3いずれか1項記載の旨味調味料。
- 発酵醪を固液分離して得られる液体調味料である請求項1〜5いずれか1項記載の旨味調味料。
- 発酵醪を固液分離して得られるペースト状〜固体の調味料である請求項1〜5いずれか1項記載の旨味調味料。
- 節類または節類の出汁取り後の残渣を、5〜25重量%の塩濃度にて醤油麹または味噌麹で自然発酵させることを特徴とする旨味調味料の製造法。
- 発酵醪が、少なくとも外観上液となじむまで発酵を続ける請求項8記載の製造法。
- 3〜6ヶ月間発酵を続ける請求項8記載の製造法。
- 発酵後に、固液分離する請求項8記載の製造法。
- 固液分離した液体を火入れする請求項11記載の製造法。
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JPH01300872A (ja) * | 1988-05-26 | 1989-12-05 | Osaka Gas Co Ltd | だしの製造方法 |
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