JP2007321221A - 複合マルクエンチ装置及びその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温に加熱されたワークを油冷によって危険領域を脱出させ、その後ホットガス装置によって完全等温保持し、その後最終焼入れを行って塩浴を用いない等温保持による低歪焼入れを行う。
【解決手段】加熱炉又は及び浸炭炉と、油槽と、オイルスプレー装置と、前記油槽上部に配置されたホットガス装置とを有して成り、高温に加熱された浸炭又は非浸炭のワークを油冷によって危険領域を脱出させ、その後マルテンサイト変態点温度直上の目標温度に調節されたホットガスと呼ばれるガスで等温保持し、その後常温以下の温度へ焼入れ処理できる複合マルクエンチ装置及びその制御方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、浸炭処理した高温ワークをマルテンサイト変態点温度直上に定めた目標温度で一定時間等温(恒温)保持し、その後常温以下の温度へ急冷し最終焼入れ処理するようにした複合マルクエンチ装置及びその制御方法に関する。
従来の金属焼入れ方式としては、マルテンサイト変態点温度直上に定めた温度に一定時間等温保持することにより低歪にて焼入れ処理できることが知られている。
また、等温保持の方式としては、特開2005−320593号公報に示されるように、塩浴法に代えて不活性ガスで等温保持するホットガス(登録商標)方式が知られている。
特開2005−320593号公報のホットガス装置は、ガス炉の一部から吸引したガスを再度内部へ出力する循環路が付属され、該循環路は2分岐され、一方の分岐管はそのままで他の分岐管には常温冷媒を用いたクーラが配置され、両分岐管の分岐点の手間又は合流点の後にはガス循環用のファンが配置され、両分岐管の一方又は両方には各分岐管を流れるガスの流量制御のための弁が介在され、少なくとも等温保持の折には、前記合流点以後の温度が前記等温保持のための前記目標温度となるよう前記ファンの風量及び前記弁の開度等を調節するコントローラが設けられて成る。
このホットガス装置は、ガスのみでの等温保持が可能で、任意の時間高精度(±3〜5℃)で金属を等温保持することができ、各種金属の等温保持への期待が高まっている。
前記ホットガス装置による等温保持は例えば1000℃程度に加熱されたワークを変態点温度(例えば300℃)直上の目標温度(例えば320℃)へ向けて急冷できるが、ワークの厚みが大なる場合には目標温度までへの冷却速度が遅く、焼入れ品質を劣化する恐れがあった。このため、特開2005−320593号公報に示されるように、等温保持室の前部に予備冷却室を設けることで対処していた。しかし、予備冷却室をガスで構成する場合、厚さや材質に限界があった。
焼入れ開始温度から危険領域を脱出する温度(脱出温度)までの所要時間は予備冷却方式とワーク厚みとの関数であり、厚みのあるワークや焼入性に劣るワークでは、相応の冷却方式の研究がされねばならなかった。
一方で、従来より各種鉱油を用いて油冷により焼入れすることが行われていた。特開2000−45018号公報に示される熱処理油組成物等もこのためのものである。また、実開平6−39950号に示されるように、超音波発振器を用いての高冷却速度で急冷することが行われている。ただし、鉱油は焼入れ油としては用いることができるが、蒸発温度が300℃以上のものはなく、300℃を超える等温保持のために油を用いた例はない。
さらに、近年、浸炭処理したワークを等温保持した上で焼き入れすると、歯車類の機械的性質が格別向上することが知られており、これが塩浴を用いて実施されていた。しかしながら、塩浴は禁止の方向にあり、これを実施できるホットガス装置の実現が期待されていた。
特開2005−320593号公報、第1頁、図1 特開2000−45018号公報、第1頁 実開平6−39950号公報、第1頁、図1
本発明は、等温保持を加えた焼入れにおいて、高温に加熱されたワークを油冷によって危険領域を脱出させ、次いでホットガス装置を用いて完全等温保持し、焼入れ品質を大幅に向上することを目的とする。
また、本発明は、浸炭処理したワークをマルテンサイト変態点温度より上の脱出温度まで油で急冷し、その後ガスにより変態点温度直上に定めた目標温度まで冷却すると共に、一定時間目標温度で等温保持し、等温保持したワークをその後常温以下の温度へ急冷して常温以下の温度へ焼入れ(以下、最終焼入れとも呼ぶ)できる複合マルクエンチ装置及びその制御方法を提供することにある。
さらに、前記油冷は油槽への浸漬と油のシャワーリングの合成により、蒸発温度に制限のある油をうまく使い分けて効率よく油冷却することを目的とする。
また、さらに、ガス室にホットガス装置を組込んで、油槽との関連をうまく整合することにより、高精度等温保持を可能とすることを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の複合マルクエンチ装置は、ワークを高温に加熱し浸炭処理する浸炭炉と、浸炭処理された高温ワークを受入れて加圧された不活性ガス下で冷却又は等温保持するガス炉と、このガス炉の下方に連通配置され、前記ワークを油の蒸発温度近くの温度まで昇温した温度の油で油冷処理する油槽と、前記ガス炉に受入れたワークを前記油槽に対して供給すると共に再度引上げ処理するワーク昇降装置と、前記ガス炉のワークに前記油をシャワーリングするオイルスプレー装置と、前記ガス炉に付随され、前記油によって冷却曲線の危険領域を超える領域まで冷却されたワークをマルテンサイト変態点温度直上に定めた目標温度でガス冷却し、その後一定時間等温保持するガス等温保持装置を備えたことを特徴とする。
油温は蒸発温度以下の温度であるが、マルテンサイト変態点温度以下でもある。マルテンサイト変態点温度は通常鋼(SCM420)では400℃近いが、浸炭部では120〜150℃であり、表面浸炭処理品では深層部と表面で大きく相違する。これらの関係から、油温は、ワークに応じて微妙に調節されねばならない。
前記ガス等温保持装置は、前記ガス炉の一部から吸引したガスを一度外へ出し再度内部へ出力する循環路が付属され、該循環路は2分岐され、一方の分岐管はそのままで他の分岐管には常温冷媒を用いたクーラが配置され、両分岐管の分岐点の手前又は合流点の後にはガス循環用のファンが配置され、両分岐管の一方又は両方には各分岐管を流れるガスの流量制御のための弁が介在され、少なくとも等温保持の折には、前記合流点以後の温度が前記等温保持のための前記目標温度となるよう前記ファンの風量及び前記弁の開度等を調節するコントローラが設けられて成るホットガス装置が組み込まれていることを特徴とする。このホットガス装置の等温保持性能は、現段階で±5℃をクリアし、±3℃の精度向上が図られている。
また本発明は、上記複合マルクエンチ装置で浸炭焼入れする制御方法であって、次の工程(1)〜(7)から成ることを特徴とする。
(1) 記浸炭炉で前記ワークを高温域まで加熱し浸炭処理する工程。
(2) 浸炭処理された高温ワークを前記ガス炉に受入れる工程。
(3) ガス炉に受入れたワークを油槽に対して下降し次いで速やかに引き上げる工程。
(4) 前記ガス炉中に引上げたワークに一定間隔を置いて油のシャワーリングをし、冷却曲線の危険領域に到達しないよう管理しながら、前記ワークの平均温度を前記ワークのマルテンサイト変態点温度近くの温度まで急冷する工程。
(5) (3)又は及び(4)のいずれをどの程度行うかをワークの種別や量に応じて予め定める工程。
(6) 脱出温度まで冷却したワークを前記ホットガス装置を用いて前記等温保持の目標温度まで冷却し、次いで一定時間等温保持する工程。
(7) 等温保持後のワークを常温以下の温度で最終焼入れする工程。
(5)の予めの工程は、(3)又は(4)の工程の作業手順をシーケンス設定する作業から成る。例えば、比較的厚みの薄いワークでは、1回のシャワーリングのみで済ませることもできる。逆に、厚みの大きなワークでは、油槽への漬け込み作業を複数回行うこともある。これら工程は、冷却曲線の危険領域を速やかに脱出し、脱出し切った温度までの冷却を確実に行うものであるため、ワークに応じた予めの実験値(図4で詳述する)を参照しながら適切に定めなければならない。
本発明は請求項1に示した浸炭炉を請求項4に示した通常の加熱炉に代えても実施できる。通常の加熱炉であっても浸炭終了したワークを加熱すれば同じであるし、また、非浸炭ワークを加熱しても、非浸炭ワークに対して等温保持を加えての焼入れ処理を行うことができ、装置、構成及びその作用については同様である。
本発明の複合マルクエンチ装置及びその制御方法では、浸炭処理されたワークを蒸発温度近くまで昇温した油へ漬け込み又はその油のシャワーリングで冷却し、冷却曲線の危険領域を脱出させることができる。
本発明の複合マルクエンチ装置は、ガス浸炭炉に高精度等温保持可能のホットガス装置及び油冷装置を追加構成した形であるが、この簡易構成によって浸炭ワークの完全等温保持焼入れが塩浴を用いずして可能となった。
油は、一般には120〜180℃で調節するが、ワークに応じて160〜230℃位まで昇温することもある。冷却油の100℃以上への昇温により、誤ってマルテンサイト変態点温度以下に過冷却してしまう可能性を低くすることができる。
油槽への浸漬とシャワーリングを共に実施できるように構成しているので、ワークの種別及び量或いは形状により夫々の利用を異ならしめることができる。これにより、各種ワークを危険領域をうまく脱出させることができる。
脱出温度まで急冷した温度のワークを高精度等温保持可能のホットガス装置でその目標温度まで冷却し、次いで任意の一定時間高精度に等温保持できる。マルテンサイト変態点温度の直上温度で保持することにより、過冷オーステナイトは不安定であるため、フェライトとセメンタイトから成る相変換を生じ、ノーズの下で下部ベイナイトを多く生成する。即ち、ベイナイトは等温保持に至る初期段階から等温保持にかけて生成する。この結果、低歪に加えて浸炭硬化層による靭性化が進み、歯車類において高品質化が図られる。
しかも、本発明のホットガス装置は等温保持の目標温度を自由に変化できるので、目下熱処理分野において研究が進んでいる所の下部ベイナイトの生成理論等において、これらのことを詳しく研究し、ひいてはこれらを自由に制御し、高品質の等温保持焼入れができることになる。
本発明の装置は、浸炭炉を通常加熱炉に変えても同様に適用できる。浸炭ワークを加熱処理すれば同じである。非浸炭ワークに対しても同様の等温保持を加えた焼入れを行うことができる。
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る複合マルクエンチ装置の側面図、図2はガス炉の部分の断面図である。
図1に示すように、本発明の複合マルクエンチ装置CMQは、ガス浸炭を行う浸炭炉1と、これに対し中間扉2、3を介して接続されるガス炉4と、この炉4の直下に配置される油槽5を備えて成る。油槽5とガス炉4の底部は、エレベータEVを昇降可能として、少なくともガス炉4の内部を密封可能な形で構成される。ガス炉4の前方(図において左方)には前扉6が設けられている。従って、浸炭炉1に対し、ワークWは前扉6、中間扉2、3を介して導入される形となる。浸炭炉1の図において右方にワーク投入用の扉(図示せず)が設けられることもある。
浸炭炉1は外周を断熱材7で覆って構成してある。浸炭炉1の炉内には加熱源8が配置され、その下方は加熱室9とされている。浸炭温度は吸熱型変成ガスを用いて950℃程度で行うことが多いが、900℃前後とすることもある。これら温度は通常のガス浸炭方法に従うとする。以下の説明では、この温度を900〜1000℃とする。
前記浸炭炉1の上部には、Nガスの導入を行うためのNガス導入管10、記録用熱電対11、制御用熱電対12、酸素濃度計13、添加エアーやプロパンガス等の添加ガス導入管14、キャリアガス排気管15等が設けられている。また、炉内には雰囲気攪拌のためのファン16が配置され、このファン16の軸17を回転駆動するためのモータ18が設けられている。浸炭炉1の台19は高さを合わせるためであるが、油槽5を一部地中に埋設するような場合は、その高さを低くすることができる。
以上の構成により、浸炭炉1は、扉6、3、2を開き、ワークWが導入されると加熱源8を駆動し、ワークを900〜1000℃に加熱し、添加剤導入によりガス浸炭できる。
ガス炉4はガス温及び流れ制御のためのベスチブルVEを備えて成り、その上部には雰囲気攪拌のためのファン20とそれを駆動するためのモータ21が設けられている。このガス炉4は図2に示すホットガス装置HGSの機構が組込まれて成る。Nガスは、 Nガスタンク22、ベーパーライザ23を介し、ホットガス装置HGSの管路を介して導入される。ガス炉4には制御用熱電対24の他、圧力センサ、安全弁、その他諸要の計器類が設けられる。
図2にホットガス装置HGSの具体的構成例を示した。このホットガス装置HGSは、あくまで機構を示すもので、ガス炉4と一体的なものである。ホットガス装置HGSは圧力0.1〜1MPSの圧力仕様であるため、断熱材7内の炉体24は円形に構成されている。
ホットガス装置HGSは、内部ガスの吸入口25と、吸入管26と、分岐管27、28と、吹出管29を有し、炉体24内のワークWに対し均一に風を与えるべくラッパ状の吹出口30を設けている。ラッパ状でなく、細管を分散配置したディストリビュータとすることもある。
前記吸入管26にはガスの温度がマルテンサイト変態点温度以下に低下するのを防止し、常時定めた目標温度のホットガスとなるよう温度補償するためのヒータ31が設けられている。分岐管27、28の入口には、各分岐管27、28に流入するガス量を制御するバタフライ弁等の弁32が設けられている。両分岐管27、28の合流位置には、ガスの循環風を形成するためのファン33が設けられている。一方の分岐管28には、管路を流れるガスの温度を低下させる水冷式クーラ34が設けられている。このクーラ34は、水冷で良く、空冷等とすることもできる。制御温度域は300℃以上と高く、かつ冷却熱量が比較的大であるため、水冷が最も経済的である。また、制御容易で高精度が可能となる。現状±3〜5℃程度の制御が可能である。図示しないが、吸入管26と吹出管29を交差させて、それを切り換えることにより、ガスの流れを逆転させることもできる。
以上の構成のホットガス装置HGSでは、ワークWに変態点温度(例えば300℃)直上に定めた目標温度(例えば320℃)に調節されたガス(ここでは、これをホットガスと呼ぶ)HGをワークWに吹き付け、ワークWを目標温度まで冷却し、また等温保持できる。ワークWに吹き付けられたガスはより高温となって分岐管27、28に入るが、弁32によって各分岐管27、28への流入量が制御されるので、出力ガスを目標温度とすることができる。目標温度θは任意に変更可能である。
図1に戻り、前記ガス炉4の底部には、前記油槽5に対してエレベータEVを昇降可能とすべく開口部35が設けられている。この開口部35とエレベータEVとは密閉状態で接合できるようになっている。ただし、この接合は、必ずしも密閉構造とする必要はない。ガス炉4と油槽5の全体が密閉構造とされていれば良い。
前記油槽5は、ワークWに対し十分大量の油36が収納されている。油量は、ワーク浸漬によって蒸発温度に達しない温度計算により定められ、例えばワークWの重量(kg)に対し、その10倍程度の量(リットル)として定められる。油槽5の回りは断熱材7で覆われており、その一側面には油温度調節器37が設けられている。また、内部には一対の振動板38が設けられている。さらに、油槽5の内部の油36をガス炉4に収納したワークWに対してシャワーリング可能のオイルスプレー装置39が設けられている。油槽5の油36をスプレーするのでなく、温度調節器37を通して、油36の温度(例えば200℃)をこれより冷たい温度(例えば150℃)とすることもできる。油槽5内の油を整流化するため、プロペラ40が設けられている。このプロペラ40は一対設けられ、流れ方向41で示すように、油36を底部へ向けて送り、中央から上方へ向かう流れを作っている。
図3〜図5を用いて複合マルクエンチ装置CMQの作用を説明する。図3は全体的な温度変化のタイムチャート、図4は油冷部分の温度変化のタイムチャート、図5は等温保持部分の温度変化のタイムチャートである。
図3に示すように、浸炭炉1に投入されたワークWは、時刻t1で加熱開始され、時刻t2〜t3の間900〜1000℃の温度で浸炭処理される。参考的に時間(h)を付けて示すが、この値は目安である。時刻t3〜t4の間が油冷時間であり、時刻t4〜t5の間が等温保持の時間であり、時刻t5〜t6の間が不活性ガスを用いての最終焼入れ処理である。
図3のタイムチャートにおいて、時刻t3で浸炭処理が終了すると、中間扉2、3が開かれてワークWはガス炉4に移行する。この時点での温度は900℃であるとして示すが、焼入れ開始前に約100℃低下させる処理を行って、実際には800℃前後まで低下させることができる。
図4において、時刻t3から油冷を開始するが、それまでの数十秒間の間、ガス炉4に不活性ガスの冷風を浴びせ、ワークWの表面温度をここで800℃以下に低下させておくこともできる。
時刻t3でエレベータEVを下降させ、ワークWを油36内に浸漬すると、振動板38を振動させ、油の流れ方向41に整流して冷却を促進することができる。油36の温度は、ワークWの浸漬によって蒸発しないだけの温度に昇温してある。ワークWには急冷が必要であるが、冷却度合いを適切にして、誤ってマルテンサイト変態点温度M以下に低下させてしまうことがないようにするための配慮である。
ワークWを油槽5内の油36に浸漬するとワークWの表面温度W(out)は曲線C1のように冷却し、内部温度W(in)はそれより遅れて曲線C2のように冷却する。タイムチャートは秒単位で示している。短時間での冷却であり、冷却効果を高めるため、振動板38は油を振動させるより、ワークWを振動させる方が効率的である。このとき、表面温度W(out)がワークWのマルテンサイト変態点温度M、例えば300℃まで冷却することがない時点でエレベータEVを上げ、ワークWを油槽5内から引き上げる。図示の例では、このときの温度は500℃である。引上げが遅れ、表面温度W(out)がマルテンサイト変態点温度M以下にならぬよう、十分安全を見て引き上げ時間が設定される。図示の例では15秒間である。これら値は油温、ワークWの形状、寸法、重量等ワーク性状によって異なる。
時刻t3−1でワークWが引き上げられると、ワークWの表面温度W(out)は再上昇し、内部温度W(in)に近づこうとする。そこで、一定時間、例えば15秒経ってから時刻t3−2でオイルスプレー装置39を駆動し、シャワーリングを行う。シャワーリングのための油36は、油槽5内のものをそのまま用いることもできるが、これはワークWの浸漬によって230℃程度まで昇温されているため、油温度調節器37を介してより低温、例えば150℃とし、冷却効果及び蒸発防止を図ることができる。
シャワーリングの時間は図4の関係から定める。即ち、時刻t3−2からシャワーリングを開始すると、ワークの表面温度W(out)は曲線C3に従って冷却し、内部温度W(in)は曲線C4に従って冷却されるので、表面温度W(out)がマルテンサイト変態点温度Mに到達することのない時間幅、例えば15秒間とする。時刻t3−4からt3−5にかけて休み、時刻t3−5から再度シャワーリングした例を示している。このように、シャワーリングの回数は複数回に分けて行うのが好ましい。
図4に示す例示にて、ワークWの表面温度W(out)を360℃、内部温度W(in)を470℃、平均温度を415℃とできる。この値は、冷却曲線(CCT線図)の危険領域Danに届いていない。ここでは、この温度を脱出温度T(out)と呼ぶ。脱出温度T(out)を超えたワークWは、マルテンサイト変態点温度Mより低下することのないよう、(図5以下で示すように)所要の目標温度で時間をかけて等温保持できる。
上記の油冷却では1回の油浸漬と、2回のシャワーリングを行ったが、これらは図4の関係を見ながらシャワーリングのみとすることも可能である。また、2回の浸漬をすることも可能である。2者を組み合わせて活用すればよく、要するに、危険領域Danをうまく脱出できれば良い。ただ、図4の工程中の各部の実測はほとんど不可能であるので、ワーク性状に応じて図4の関係を正確に定めておき、予測制御せねばならない。図4の例では、油冷却時間は合計75秒で、前後の予備的時間を含めても2分以内で処理できる。移動の準備的時間等を含めても3分あれば十分である。
図5はガス炉4の機能部分であるホットガス装置HGSを用いての等温保持の工程を示している。時刻t4以下で目標温度Tに向けて数分間をかけて均一に冷却し、以後目標温度Tで完全等温保持PEQできる。
図2及び図4を用いて等温保持の作用を示すと、ホットガスHGの温度が常時目標温度Tに保たれる。温度偏差に対しては弁32が制御され、出力ガスの温度を一定に保つ仕組みであるので、±3〜5℃の高精度の温度制御が可能である。しかも、等温保持の途中でマルテンサイト変態点温度M以上の温度で目標温度を自由に変えられる。図5には、等温保持の最終段階で目標温度を20℃程度上昇させた例を参考例として示した。10〜20℃を目安に目標温度を波状に変化させることもできる。これは、次の完全焼入れ時の表面での均一冷却が期待できることの目論見である。このような温度微調節は従来塩浴では為し得なかった事項である。
図5において、等温保持は時刻t5で終了し、最終焼入れとして次の工程へ移行する。最終焼入れはガス炉4に常温以下の不活性ガスを導入することにより行うことができる。別の冷却専用炉に移行させても構わない。
上記実施形態では、1つの浸炭炉1と、1つのガス炉4と、1つの油槽5とを図1の関係で接続して示したが、レイアウトはこれに限定されない。例えばガス炉とホットガス装置HGSを別体とすることができる。また、ガス炉4に最終焼入れ専用のガス冷却炉を接続することもできる。さらにエレベータEVをワークを載せる台座が昇降駆動する例を示したが、その駆動方式はパンタグラフであってもホイストであっても同様である。不活性ガスをNガスの例で示したが、ArやHe等他の不活性ガスであってもよく、さらには冷却能力向上のためにHガス等のガスを組合わせて用いることも可能である。
以上の説明は浸炭炉1の例で示したが、浸炭炉1を通常加熱炉として浸炭処理したワーク、又は浸炭処理していないワークについても適用できる。また、これら炉を適宜組み合わせて構成できる。浸炭品と非浸炭品では、油冷開始の温度、脱出温度、等温保持の温度が異なるが、加熱、油冷、等温保持、常温以下の温度への焼入れ工程について同一に作用する。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計的変更を行うことにより、各種態様で実施できる。
本発明の一実施形態に係る複合マルクエンチ装置の側面図である。 図1の複合マルクエンチ装置の一部であるガス炉の断面図である。 全体的な温度変化を示すタイムチャートである。 油冷部分の温度変化の詳細を示すタイムチャートである。 等温保持部分の温度変化の詳細を示すタイムチャートである。
符号の説明
1 浸炭炉
2、3 中間扉
4 ガス炉
5 油槽
6 前扉
7 断熱材
8 加熱源
9 加熱室
10 Nガス導入管
11 記録用熱電対
12、24 制御用熱電対
13 酸素濃度計
14 添加ガス導入管
15 CRX排気管
16、20、33、40 ファン
17 軸
18、21 モータ
19 台
22 Nガスタンク
23 ベーパーライザ
25 吸入口
26 吸入管
27、28 分岐管
29 吸出管
30 吹出口
31 ヒータ
32 弁
34 クーラ
35 開口部
36 油
37 油温度調節器
38 振動板
39 オイルスプレー装置
40 プロペラ
41 流れ方向
CMQ 複合マルクエンチ装置
HGS ホットガス装置
EV エレベータ
目標温度
VE ベスチブル
PEQ 完全等温保持区間
Dan 危険領域
W(out) ワークの表面温度
W(in) ワークの内部温度

Claims (4)

  1. ワークを高温に加熱し浸炭処理する浸炭炉と、浸炭処理された高温ワークを受入れて加圧された不活性ガス下で冷却又は等温保持するガス炉と、このガス炉の下方に連通配置され、油の蒸発温度近くの温度まで昇温した温度の油で油冷処理する油槽と、
    前記ガス炉に受入れたワークを前記油槽に対して供給すると共に再度引上げ処理するワーク昇降装置と、
    前記ガス炉のワークに前記油をシャワーリングするオイルスプレー装置と、
    前記ガス炉に付随され、前記油によって冷却曲線の危険領域を超える領域まで冷却されたワークをマルテンサイト変態点温度直上に定めた目標温度でガス冷却し、その後一定時間等温保持するガス等温保持装置を備えたことを特徴とする複合マルクエンチ装置。
  2. 前記ガス等温保持装置は、前記ガス炉の一部から吸引したガスを外へ出し再度内部へ出力する循環路が付属され、該循環路は2分岐され、一方の分岐管はそのままで他の分岐管には常温冷媒を用いたクーラが配置され、両分岐管の分岐点の手前又は合流点の後にはガス循環用のファンが配置され、両分岐管の一方又は両方には各分岐管を流れるガスの流量制御のための弁が介在され、
    少なくとも等温保持の折には、前記合流点以後の温度が前記等温保持のための前記目標温度となるよう前記ファンの風量及び前記弁の開度等を調節するコントローラが設けられて成るホットガス装置が組み込まれていることを特徴とする請求項1記載の複合マルクエンチ装置。
  3. 請求項1に記載の複合マルクエンチ装置を用いて浸炭焼入れする制御方法であって、次の工程(1)〜(7)から成ることを特徴とする複合マルクエンチ装置の制御方法。
    (1) 前記浸炭炉で前記ワークを高温域まで加熱し浸炭処理する工程。
    (2) 浸炭処理された高温ワークを前記ガス炉に受入れる工程。
    (3) ガス炉に受入れたワークを油槽に対して下降し次いで速やかに引き上げる工程。
    (4) 前記ガス炉中に引上げたワークに一定間隔を置いて油のシャワーリングをし、冷却曲線の危険領域に到達しないよう管理しながら、前記ワークの平均温度を前記ワークのマルテンサイト変態点温度近くの温度まで急冷する工程。
    (5) (3)又は及び(4)のいずれをどの程度行うかをワークの種別や量に応じて予め定める工程。
    (6) 脱出温度まで冷却したワークを前記ホットガス装置を用いて前記等温保持の目標温度まで冷却し、次いで一定時間等温保持する工程。
    (7) 等温保持後のワークを常温以下の温度で最終焼入れする工程。
  4. ワークを高温に加熱する加熱炉と、加熱された高温ワークを受入れて加圧された不活性ガス下で冷却又は等温保持するガス炉と、このガス炉の下方に連通配置され、油の蒸発温度近くの温度まで昇温した温度の油で油冷処理する油槽と、
    前記ガス炉に受入れたワークを前記油槽に対して供給すると共に再度引上げ処理するワーク昇降装置と、
    前記ガス炉のワークに前記油をシャワーリングするオイルスプレー装置と、
    前記ガス炉に付随され、前記油によって冷却曲線の危険領域を超える領域まで冷却されたワークをマルテンサイト変態点温度直上に定めた目標温度でガス冷却し、その後一定時間等温保持するガス等温保持装置を備えたことを特徴とする複合マルクエンチ装置。

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