JP2007318008A - 太陽電池モジュール用充填材、太陽電池モジュール用充填材層、および太陽電池モジュール - Google Patents

太陽電池モジュール用充填材、太陽電池モジュール用充填材層、および太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】ホットスポット現象が発生したときに充填材用樹脂の白濁を抑制することができ、かつ太陽電池モジュールの生産性に優れた太陽電池モジュール用充填材を提供することを主目的とする。
【解決手段】エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂を有する充填材用樹脂を含む太陽電池モジュール用充填材であって、Si(珪素)含有量が重合Siとして8ppm〜3500ppmの範囲内であり、ゲル分率が1%〜30%の範囲内であり、かつ、縮合反応を促進する触媒を含むことを特徴とする太陽電池モジュール用充填材を提供することにより、上記課題を達成するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池モジュールの充填材層に用いられる、太陽電池モジュール用充填材に関するものである。
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。
太陽電池素子は単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いて作製することが多い。このため太陽電池素子は物理的衝撃に弱く、また屋外に太陽電池を取り付けた場合に雨などからこれを保護する必要がある。また、太陽電池素子1枚では発生する電気出力が小さいため、複数の太陽電池素子を直並列に接続して、実用的な電気出力が取り出せるようにする必要がある。このため複数の太陽電池素子を接続し透明基板および充填材で封入して太陽電池モジュールを作製することが通常行われている。一般に太陽電池モジュールは、透明前面基板、充填材、太陽電池素子、充填材および裏面保護シート等を順次積層し、これらを真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を利用して製造される。
現在、充填材としては、その加工性、施工性、製造コスト、その他等の観点から、厚さ100μm〜1500μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)が、最も一般的なものとして使用されている。しかしながら、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる充填材は、太陽電池素子との接着強度が必ずしも十分ではなく、長時間使用により剥離を生じる等の問題があった。そこで、充填材に接着性を付与する方法として、樹脂にシラン化合物を重合させる方法が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
屋外に設置された太陽電池モジュールでは、発電中の太陽電池モジュールの複数の太陽電池素子のうち、ある1つの太陽電池素子が何かの影になって発電が不十分になった場合、この太陽電池素子は抵抗となる。このときこの太陽電池素子の両電極にはその抵抗値と流れる電流との積の電位差が発生する。すなわち、太陽電池素子に逆方向のバイアス電圧がかかることとなり、この太陽電池素子は発熱するようになる。このような現象はホットスポットと呼ばれている。
そして、ホットスポット現象が発生して太陽電池素子の温度が上昇すると、これに伴い充填材の温度も上昇する。外気温が下がると太陽電池モジュールの温度、すなわち太陽電池素子や充填材の温度が下降するが、外気温は徐々に下がるため、ホットスポット現象の発生により温度が上昇した充填材は徐々に冷却される、すなわち徐冷される。充填材として上述した樹脂にシラン化合物を重合させた重合体樹脂を用いた場合には、徐冷されると充填材中で結晶が成長し、充填材の一部が白濁して、外観が著しく損なわれる。
ホットスポット現象が発生したときの太陽電池モジュールの温度上昇を抑制する方法としては、例えば太陽電池モジュールの裏面側に表面が凹凸状の熱放射率の高いフィルムを設けることや太陽電池モジュールの周囲に配設されるモジュール枠に通風口を設けることが提案されている(例えば特許文献3参照)。また、裏面側充填材にアルミナやジルコニアなどの熱伝導率を大きくする粒子を含有させることで、ホットスポット現象が発生したときでも太陽電池モジュール内部の熱伝導率を向上させて太陽電池素子の温度上昇を抑制する方法が提案されている(例えば特許文献4参照)。太陽電池モジュールや太陽電池素子の温度上昇を抑えることができれば、結果的に充填材の温度上昇も抑えられるので、充填材の白濁を抑制することが可能であると考えられる。しかしながら、いずれの特許文献においてもホットスポット現象の発生に伴う充填材の白濁を防止することについては述べられていない。
また、従来の充填材としては上述したようにエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が中心であり、接着性のよい、樹脂にシラン化合物を重合させた共重合体樹脂を用いた充填材の白濁防止についての提案は全く行われていないのが現状である。
特公昭62−14111号公報 特開2004−214641号公報 特開平6−181333号公報 特開2004−327630号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ホットスポット現象が発生したときに充填材用樹脂の白濁を抑制することができ、かつ太陽電池モジュールの生産性に優れた太陽電池モジュール用充填材を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂を有する充填材用樹脂を含む太陽電池モジュール用充填材であって、Si(珪素)含有量が重合Siとして8ppm〜3500ppmの範囲内であり、ゲル分率が1%〜30%の範囲内であり、かつ、縮合反応を促進する触媒を含むことを特徴とする太陽電池モジュール用充填材を提供する。
本発明によれば、Si量が上記範囲内であることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを形成した場合に、充填材層が透明前面基板および裏面保護シートと優れた密着性を発現することができる。したがって、本発明の太陽電池モジュール用充填材によれば、密着性の経時安定性に優れた太陽電池モジュールを作製することができる。
また、本発明によれば、ゲル分率が上記範囲内であることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを作製した際に、ホットスポット現象等により、充填材層が白濁することを抑制することができ、かつ優れたリサイクル性を発現することができる。また、ホットスポット現象が発生したときに、モジュールが高温になっても樹脂の流動が抑えられるという効果もある。
また、本発明によれば、縮合反応を促進する触媒を含むことにより、上記充填材用樹脂が有するシラン変性樹脂のシラノール縮合反応を制御することが可能になる。したがって、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを作製した際に、充填材層のゲル分率を所望の範囲に制御することが可能になるため、ホットスポット等による白濁の発生のない優れた外観を有し、かつ優れたリサイクル性も備える太陽電池モジュールを得ることができる。
本発明においては、上記縮合反応を促進する触媒の含有量が、0.0002質量%〜0.09質量%の範囲内であることが好ましい。縮合反応を促進する触媒の含有量が上記範囲よりも少ないと、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを作製した際に、充填材層のゲル分率が低くなり、ホットスポット等に伴う白濁が生じてしまう場合があるからである。また、含有量が上記範囲よりも多いと、太陽電池モジュール用充填材から上記触媒がブリードアウトし、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを作製した後に、太陽電池モジュールの品質を損なう可能性があるからである。
また本発明においては、上記縮合反応を促進する触媒が、錫系のシラノール縮合触媒であることが好ましい。錫系のシラノール触媒を用いることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材に含まれるシラン変性樹脂のシラノール縮合反応の反応速度をより向上できることから、太陽電池モジュールの生産性を向上することができるからである。
本発明は、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂を有する充填材用樹脂を含む太陽電池モジュール用充填材層であって、Si(珪素)含有量が重合Si量として8ppm〜3500ppmの範囲内であり、ゲル分率が1%〜30%の範囲内であり、かつ、縮合反応を促進する触媒を含むことを特徴とする太陽電池モジュール用充填材層を提供する。
本発明によれば、Si量が上記範囲内であることにより、透明前面基板および裏面保護シートと優れた密着性を発現することができる。したがって、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を有する太陽電池モジュールは、密着性の経時安定性を有することができる。
また、ゲル分率が上記範囲内であることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を有する太陽電池モジュールは、ホットスポット等による充填材層の白濁を抑制することができる。また、ホットスポット現象が発生したときに、モジュールが高温になっても樹脂の流動が抑えられるという効果もある。
また、ゲル分率が上記範囲内であることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材層は、熱溶融性および溶媒溶解性を有するため、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を有する太陽電池モジュールは、リサイクル性を備えることができる。
さらに、本発明の太陽電池モジュール用充填材層は、縮合反応を促進する触媒を含むことにより、ゲル分率を所望の範囲に制御することが可能になるため、ホットスポット等による白濁の発生のない優れた外観を有し、かつ優れたリサイクル性をも備える太陽電池モジュールを得ることができる。
本発明においては、上記縮合反応を促進する触媒の含有量が、0.0002質量%〜0.09質量%の範囲内であることが好ましい。縮合反応を促進する触媒の含有量が上記範囲よりも少ないと、ゲル分率が低くなりすぎてしまい、ホットスポット等に伴う白濁が生じてしまうからである。また、含有量が上記範囲よりも多いと、充填材層から上記触媒がブリードアウトし、太陽電池モジュールの品質を損なう可能性があるからである。
本発明は、上記太陽電池モジュール用充填材層を有することを特徴とする太陽電池モジュールを提供する。
本発明によれば、上記太陽電池モジュール用充填材層を有することにより、ホットスポット等による白濁の発生のない優れた外観を有し、かつ優れたリサイクル性をも備える太陽電池モジュールを得ることができる。
本発明の太陽電池モジュール用充填材は、ホットスポット等による白濁の発生のない優れた外観を有し、かつ優れたリサイクル性をも備える太陽電池モジュールを得ることができるという効果を奏する。
以下、本発明の太陽電池モジュール用充填材、太陽電池モジュール用充填材層、および太陽電池モジュールについて説明する。
A.太陽電池モジュール用充填材
まず、本発明の太陽電池モジュール用充填材について説明する。本発明の太陽電池モジュール用充填材は、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂を含む太陽電池モジュール用充填材であって、Si(珪素)含有量が重合Siとして8ppm〜3500ppmの範囲内であり、ゲル分率が1%〜30%の範囲内であり、かつ、縮合反応を促進する触媒を含むことを特徴とするものである。
本発明の太陽電池モジュール用充填材に含まれるSiは、主として太陽電池モジュールを作製した際に、透明前面基板および裏面保護シートとの密着性を発現する機能を有するため、Si量が少ないと十分な密着性を発現することができず、太陽電池モジュールの密着安定性を損なってしまう。一方、Si量が多い場合は、十分な密着性を発現することが可能である反面、コスト高となってしまい工業的生産性に欠けてしまう。したがって、優れた密着性を備え、かつ生産コストの低い太陽電池モジュールを得るには、太陽電池モジュール用充填材中のSi量を一定の範囲に制御することが必要である。
本発明によれば、Si量が上記範囲内であることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを形成した場合に、充填材層が透明前面基板および裏面保護シートと優れた密着性を発現することが可能である。また、Si量が上記範囲内であることにより、このような密着安定性に優れた太陽電池モジュールを低コストで得ることができる。
また、本発明の太陽電池モジュール用充填材中のSiは、太陽電池モジュール作製後の充填材層において架橋の起点となる性質を有する。したがって、Si量が上記範囲内であることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて、太陽電池モジュールを作成した場合に、充填材層のゲル分率が高くなりすぎることを防止することができる。したがって、充填材層に所望の熱溶融性や溶媒溶解性を付与することができるため、リサイクル性に優れた太陽電池モジュールを得ることができる。
また、太陽電池モジュールを構成する充填材層が、ホットスポット現象等により白濁してしまう問題は、充填材層を構成する充填材用樹脂が部分的に結晶化することに起因することが知られている。このような充填材用樹脂の結晶化を防止する方法としては、充填材用樹脂を架橋して固定化する方法を挙げることができる。本発明の太陽電池モジュール用充填材のゲル分率はこのような充填材用樹脂の架橋による固定化と相関を示し、ゲル分率が低いほど充填用樹脂の固定化が弱い。したがって、本発明によればゲル分率が上記範囲内であることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを作製した際に、充填材用樹脂が結晶化することを抑制できるため、ホットスポット等による白濁の発生を抑制することができる。
なお、本発明の太陽電池モジュール用充填材は、ホットスポット現象が発生したときに、モジュールが高温になっても樹脂の流動が抑えられるという効果もある。
一方、ゲル分率が高いと充填材用樹脂は熱溶融性や各種溶媒に対する溶解性を失うため、一度作製した太陽電池モジュールから充填材層を除去することが困難となる。このため、ゲル分率が一定値以上になると太陽電池モジュールのリサイクル性が損なわれてしまう。しかしながら、本発明によればゲル分率が上記範囲内であることにより、充填材用樹脂の熱溶融性もしくは各種溶媒に対する溶解性を保持することができるため、リサイクル性に優れた太陽電池モジュールを得ることができる。
さらに、本発明によれば、縮合反応を促進する触媒を含むことにより、シラン変性樹脂のシラノール縮合反応を促進することができる。すなわち、上記ゲル分率に寄与する充填材用樹脂の架橋構造は、本発明の太陽電池モジュール用充填材中のシラン変性樹脂のシラノール縮合反応が進行することによって形成される。このようなシラノール縮合反応の進行度合は、触媒の存在により任意の範囲に制御することが可能である。したがって、本発明によれば、縮合反応を促進する触媒を含むことにより、太陽電池モジュールを作製する際に、充填材層のゲル分率を所望の範囲内に制御することができる。
以下、本発明の太陽電池モジュール用充填材の各構成について説明する。
1.縮合反応を促進する触媒
まず、本発明の太陽電池モジュール用充填材(以下、単に充填材と称する場合もある。)に用いられる縮合反応を促進する触媒(以下、単に触媒と称する場合もある。)について説明する。本発明に用いられる縮合反応を促進する触媒は、シラノール基等の反応性に富む官能基の縮合反応を促す機能を有するものである。本発明においては、このような触媒を含有することにより、太陽電池モジュールを作製する際に、充填材層のゲル分率を所望の範囲内に制御することができ、その結果として、ホットスポット現象等に伴う充填材層の白濁が生じることのない優れた外観を備え、かつリサイクル性を有する太陽電池モジュールを得ることができる。
本発明に用いられる触媒は、縮合反応を促進できるものであれば特に限定されず、例えば、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジクロリド、ジラウリン酸ジブチル錫、ジブチル錫硫酸、ジブチル錫二酢酸、ジブチル錫マレイン酸、ジ−n−オクチル錫ジラウリン酸塩、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、酢酸第1錫、オクタン酸第1錫(カブリル酸第1錫)、ナフテン酸鉛、カブリル酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉄、ナフテン酸コバルトのような、カルボン酸塩、また、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジーイソプロピルチタネート等、チタン酸エステルおよびキレート化物のような有機金属化合物、また、エチルアミン、ヘキシルアミン、ジブチルアミン、ピリジン等の有機塩基、さらに、無機酸および脂肪酸等の酸などを挙げることができる。
本発明においては、上記触媒としてカルボン酸塩を用いることが好ましく、なかでも、錫系のシラノール触媒であることが好ましい。錫系のシラノール触媒を用いることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材に含まれるシラン変性樹脂のシラノール縮合反応をより促進できることから、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いることにより、太陽電池モジュールの生産性をより向上させることができるからである。
本発明においては、上記錫系のシラノール縮合触媒の中でも、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジクロリド、ジラウリン酸ジブチル錫、ジブチル錫硫酸、ジブチル錫二酢酸、ジブチル錫マレイン酸、ジ−n−オクチル錫ジラウリン酸塩を用いることが好ましく、なかでもジラウリン酸ジブチル錫、ジ−n−オクチル錫ジラウリン酸塩を用いることが最も好ましい。
本発明の太陽電池モジュール用充填材中の上記触媒の含有量は、シラノール縮合反応を所望の程度まで促進できる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明においては、上記触媒の含有量が0.0002質量%〜0.09質量%の範囲内であること好ましく、特に0.002質量%〜0.06質量%の範囲内であることが好ましい。縮合反応を促進する触媒の含有量が上記範囲よりも少ないと、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを作製した際に、充填材層のゲル分率が低くなりすぎてしまい、ホットスポット現象等に伴う白濁が生じてしまう場合があるからである。また、含有量が上記範囲よりも多いと充填材から上記触媒がブリードアウトし、太陽電池モジュールを作製した際に、太陽電池モジュールの品質を損なう可能性があるからである。
本発明における上記触媒の含有量は、例えば、島津製作所製ガスクロマトグラフGC−17A、卓上型質量分析計GCMS−QP5050A、および、オートインジェクターから構成されるGC−MS装置を用い、J&W社製キャピラリーカラムDB−1を使用して測定することができる。
2.充填材用樹脂
次に、本発明に用いられる充填材用樹脂について説明する。本発明に用いられる充填材用樹脂は、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂を含有するものであれば特に限定されるものではないが、さらに添加用ポリエチレンを含有することが好ましい。すなわち、充填材用樹脂がシラン変性樹脂と添加用ポリエチレンとを含有することが好ましい。上記シラン変性樹脂はコストが高いため、添加用ポリエチレンを併用することによりコストダウンを図ることができるからである。
以下、本発明に用いられる充填材用樹脂について説明する。
(1)シラン変性樹脂
本発明における充填材用樹脂に含まれるシラン変性樹脂は、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなり、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとラジカル発生剤とを混合し、高温で溶融、混練し、エチレン性不飽和シラン化合物を重合用ポリエチレンにグラフト重合させることにより得ることができる。
上記シラン変性樹脂に用いられる重合用ポリエチレンとしては、ポリエチレン系のポリマーであれば特に限定されるものではなく、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、極超低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。これらのポリエチレンは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記の中でも、超低密度ポリエチレン、極超低密度ポリエチレン、および直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく用いられる。重合用ポリエチレンが低密度のものであれば、充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンの平均密度が低くなるので、温度変化によるポリエチレンの結晶化を妨げることができ、充填材用樹脂の白濁をさらに効果的に抑制することができるからである。
また、上記重合用ポリエチレンは、側鎖の多いポリエチレンであることが好ましい。通常、側鎖の多いポリエチレンは密度が低く、側鎖の少ないポリエチレンは密度が高い。したがって、密度の低いポリエチレンが好ましい。重合用ポリエチレンが側鎖の多いポリエチレン、すなわち密度の低いポリエチレンであれば、エチレン性不飽和シラン化合物が重合用ポリエチレンにグラフト重合しやすくなるからである。
上記重合用ポリエチレンの密度は、上述した理由から、0.890g/cm〜0.930g/cmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.890g/cm〜0.928g/cmの範囲内である。
一方、上記シラン変性樹脂に用いられるエチレン性不飽和シラン化合物としては、上記重合用ポリエチレンとグラフト重合するものであれば特に限定されるものではなく、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、および、ビニルトリカルボキシシランからなる群から選択される少なくとも1種類のものを用いることができる。中でも、ビニルトリメトキシシランが好適に用いられる。
太陽電池モジュール用充填材中のエチレン性不飽和シラン化合物の含有量は、10ppm以上が好ましく、より好ましくは20ppm以上である。本発明においては、上述した重合用ポリエチレンと重合させたエチレン性不飽和シラン化合物を用いることにより、太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールとした場合に透明前面基板や裏面シート、例えばガラス等との密着性が実現するものである。上記エチレン性不飽和シラン化合物の含有量が上記範囲に満たない場合は、ガラス等との密着性が不足する。
一方、エチレン性不飽和シラン化合物の含有量は、4000ppm以下が好ましく、より好ましくは3000ppm以下である。上限値は、ガラス等との密着性の観点からは限定されるものではないが、上記範囲を超えるとガラス等との密着性は変わらずコストが高くなる。
上記シラン変性樹脂は、太陽電池モジュール用充填材中に好ましくは1〜80質量%の範囲内、さらに5〜70質量%の範囲内で含有されることが好ましい。本発明の太陽電池モジュール用充填材は、上記シラン変性樹脂を含有することによりガラス等との密着性が高くなる。したがって、ガラス等との密着性、かつコストの点から、上記範囲内が好適である。
また、上記シラン変性樹脂は、190℃でのメルトマスフローレートが0.5〜10g/10分であるものが好ましく、1〜8g/10分であるものがより好ましい。本発明の太陽電池モジュール用充填材の成形性、および透明前面基板や裏面保護シートとの接着性等に優れるからである。
さらに、上記シラン変性樹脂の融点は、110℃以下であることが好ましい。本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いた太陽電池モジュールの製造時において、加工性等の面から上記範囲が好適である。
上記シラン変性樹脂に添加するラジカル発生剤としては、例えばジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−パーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシオクトエート。t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、または、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
上記ラジカル発生剤は、上記シラン変性樹脂中に0.001質量%以上含まれることが好ましい。上記範囲未満では、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとのラジカル重合が起こりにくいからである。
なお、本発明に用いられるシラン変性樹脂は、合わせガラス用途にも使用できるものである。合わせガラスは、ガラスとガラスとの間に柔軟で強靭な樹脂等をはさんで加熱圧着して作製されるものであるので、ガラスとの密着性の点から、上記シラン変性樹脂を用いることができる。
(2)添加用ポリエチレン
本発明における充填材用樹脂に含まれる添加用ポリエチレンとしては、上記シラン変性樹脂に用いられる重合用ポリエチレンと同様なものを挙げることができる。本発明においては、添加用ポリエチレンが上記重合用ポリエチレンと同一のポリエチレンであることが特に好ましい。上記シラン変性樹脂はコストが高いため、シラン変性樹脂のみを含む充填材用樹脂で太陽電池モジュール用充填材を構成するよりも、シラン変性樹脂と添加用ポリエチレンとを含む充填材用樹脂で太陽電池モジュール用充填材を構成する方が、コスト的に有利であるからである。
添加用ポリエチレンの含有量は、上記シラン変性樹脂100重量部に対し、0.01重量部〜9900重量部が好ましく、90重量部〜9,900重量部がより好ましい。また、上記シラン変性樹脂を2種以上用いる場合には、その合計量100重量部に対し、添加用ポリエチレンの含有量が上記範囲となることが好ましい。
また、上記添加用ポリエチレンは、190℃でのメルトマスフローレートが0.5〜10g/10分であるものが好ましく、1〜8g/10分であるものがより好ましい。本発明の太陽電池モジュール用充填材の成形性等に優れるからである。
さらに、上記添加用ポリエチレンの融点は、130℃以下であることが好ましい。本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いた太陽電池モジュールの製造時における加工性等の面から上記範囲が好適である。
なお、上記融点は、プラスチックの転移温度測定方法(JIS K 7121)に準拠し、示差走査熱量分析(DSC)により測定した値とする。この際、融点ピークが2つ以上存在する場合は高い温度の方を融点とする。
(3)密度
本発明においては、充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンの平均密度が、0.890g/cm〜0.935g/cmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.890g/cm〜0.930g/cmの範囲内であり、最も好ましくは0.890g/cm〜0.920g/cmの範囲内である。充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンの平均密度が上記範囲のように比較的低いものであれば、ホットスポット現象が生じたときなどの温度変化によりポリエチレンが結晶化するのを妨げることができるからである。したがって、温度変化による充填材用樹脂の白濁を効果的に抑制することが可能である。
ここで、充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンとは、シラン変性樹脂に用いられる重合用ポリエチレン、および添加用ポリエチレンをいう。上述したように、例えば重合用ポリエチレンとして複数種のポリエチレンが用いられ、添加用ポリエチレンとして複数種のポリエチレンが用いられている場合は、これらの複数種のポリエチレンの平均密度が充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンの平均密度となる。
なお、上記平均密度は、充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンのそれぞれの密度にそれぞれの含有量比を乗じて平均した値とする。
また、充填材用樹脂は、密度が0.890g/cm〜0.930g/cmの範囲内であるポリエチレンを含有することが好ましく、より好ましくは密度が0.890g/cm〜0.928g/cmの範囲内であるポリエチレンを含有することが好ましい。充填材用樹脂中に比較的密度の低いポリエチレンが含有されていれば、充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンの平均密度を低くすることができるので、温度変化によるポリエチレンの結晶化を妨げることができ、充填材用樹脂の白濁を効果的に抑制することができるからである。
ここで、密度が所定の範囲であるポリエチレンとは、上記の場合と同様に、シラン変性樹脂に用いられる重合用ポリエチレン、および添加用ポリエチレンのうち、密度が所定の範囲であるポリエチレンをいう。例えば重合用ポリエチレンとして複数種のポリエチレンが用いられ、添加用ポリエチレンとして複数種のポリエチレンが用いられている場合は、これらの複数種のポリエチレンのうち、いずれか一つのポリエチレンの密度が上記範囲内であればよい。
このように本発明においては、充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンの平均密度が所定の範囲であり、充填材用樹脂が上記の密度が所定の範囲であるポリエチレンを含有することが好ましいのであるが、この充填材用樹脂は、好ましいポリエチレンの平均密度を超えない範囲で比較的密度が高いポリエチレンを含有することができる。
ここで、本発明の太陽電池モジュール用充填材を作製する際、触媒等の添加剤を充填材用樹脂に分散させるが、この添加剤を分散させる際には分散性を良くするためにポリエチレンを粉砕する場合がある。高密度のポリエチレンは、低密度のポリエチレンよりも粉砕しやすく加工性に優れることから、低コスト化が図れる。したがって、充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンの平均密度が所定の範囲であり、充填材用樹脂が例えば上記の密度が所定の範囲であるポリエチレンと、さらに比較的密度が高いポリエチレンとを含有する場合は、低コストで太陽電池モジュール用充填材を提供することができる。
さらに、添加用ポリエチレンとして複数種のポリエチレンが用いられている場合、上記充填材用樹脂は、添加用ポリエチレンとして、密度が0.890g/cm〜0.935g/cmの範囲内である、少なくとも2種類のポリエチレンを含有することが好ましい。本発明の太陽電池モジュール用充填材は、例えば触媒または添加剤、およびポリエチレンを含有するマスターバッチと、樹脂主剤とを加熱溶融することにより作製することができる。この際、例えば上記マスターバッチおよび樹脂主剤の両方に所定の密度のポリエチレンを用いることにより、得られる太陽電池モジュール用充填材の充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンの平均密度をより一層低くすることができるので、温度変化によるポリエチレンの結晶化を妨げることができ、充填材用樹脂の白濁をさらに効果的に抑制することが可能である。
(4)その他
本発明における充填材用樹脂は、190℃でのメルトマスフローレートが0.5〜10g/10分であるものが好ましく、1〜8g/10分であるものがより好ましい。太陽電池モジュール用充填材の成形性、透明前面基板および裏面保護シートとの接着性等に優れるからである。
また、充填材用樹脂の融点は130℃以下であることが好ましい。本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いた太陽電池モジュールの製造時において、加工性等の面から上記範囲が好適である。また、太陽電池モジュールの構成部材、例えば太陽電池素子や透明前面基板を再利用する場合に、融点がこの程度であれば容易に再利用することができるからである。
なお、上記融点は、上述した方法により測定した値とする。
さらに本発明における充填材用樹脂は、シラン変性樹脂の他に、従来より充填材として用いられている一般的な樹脂を含有していてもよい。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などを用いることができる。このような樹脂をシラン変性樹脂と併用することにより、コスト的に有利になるからである。
3.添加剤
本発明の太陽電池モジュール用充填材は、上記充填材用樹脂以外に添加剤を含有していても良い。本発明に用いられる添加剤としては、例えば、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤等の添加剤等を挙げることができる。本発明の太陽電池モジュール用充填材が、上述したシラン変性樹脂を含有し、これに光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤を添加することで長期にわたり安定した機械強度、接着強度、黄変防止、ひび割れ防止、優れた加工適性を得ることができる。
光安定化剤は、充填材用樹脂中の光劣化開始の活性種を捕捉し、光酸化を防止するものである。具体的には、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードピペリジン系化合物などの光安定化剤が挙げられる。
紫外線吸収剤は、太陽光中の有害な紫外線を吸収して、分子内で無害な熱エネルギーへと変換し、充填材用樹脂中の光劣化開始の活性種が励起されるのを防止するものである。具体的には、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サルチレート系、アクリルニトリル系、金属錯塩系、ヒンダードアミン系、あるいは、超微粒子酸化チタン(粒子径:0.01μm〜0.06μm)および超微粒子酸化亜鉛(粒子径:0.01μm〜0.04μm)等の無機系などの紫外線吸収剤が挙げられる。
熱安定化剤は、充填材用樹脂の酸化劣化を防止するものである。具体的には、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4´−ジイルビスホスフォナイト、および、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等のリン系熱安定化剤;8−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物等のラクトン系熱安定化剤;フェノール系熱安定化剤;アミン系熱安定化剤;硫黄系熱安定化剤などを挙げることができる。また、これらを1種または2種以上を用いることもできる。中でも、リン系熱安定化剤およびラクトン系熱安定化剤を併用して用いることが好ましい。
上記の光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤等の含有量としては、その粒子形状、密度等によって異なるが、太陽電池モジュール用充填材中、0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
4.太陽電池モジュール用充填材
本発明においては、太陽電池モジュール用充填材中に、Si(珪素)含有量が、重合Si量として8ppm〜3500ppmの範囲内で含有されていることを特徴とする。このようにSi量を規定するのは、Si量が上記範囲よりも少ないと、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを形成した場合に、充填材層と透明前面基板および裏面保護シートとの密着性が不十分になり、密着性の経時安定性に優れた太陽電池モジュールを作製することができないからである。また、Si量が上記範囲よりも多いと、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを作製する際に、コストが高くなってしまうからである。本発明におけるSi量は、20ppm〜2000ppmの範囲内がより好ましく、100ppm〜1000ppmの範囲内がさらに好ましい。
ここで、太陽電池モジュール用充填材のみを加熱し燃焼させ灰化することによって重合SiがSiOに変換される。よって、上記重合Si量は、灰分をアルカリ融解して純水に溶解後定容し、高周波プラズマ発光分析装置((株)島津製作所製 ICPS8100)を用いてICP発光分析法により重合Si量の定量を行うことにより測定した値とする。
また、本発明の太陽電池モジュール用充填材はゲル分率が、1%〜30%の範囲内
であることを特徴とする。ゲル分率をこのように規定するのは、ゲル分率が上記範囲よりも高いと、本発明の太陽電池モジュール用充填材を用いて太陽電池モジュールを作製した際に、充填材層の熱溶融性や溶媒溶解性が不十分となるため、充分なリサイクル性が得られないからである。また上記範囲よりも低いと、同じく太陽電池モジュールを作製した際に、ホットスポット現象等に伴って充填材層が白濁してしまうからである。本発明におけるゲル分率は、より好ましくは3%〜20%の範囲内であり、さらに好ましくは5%〜10%である。
なお、上記ゲル分率は、(1)表側充填材を1g秤量し、80メッシュの金網袋に入れる(2)ソックスレー抽出器内に金網ごとサンプル投入し、キシレンを沸点下において還流させる(3)10時間連続抽出したのち、金網ごとサンプルごと取出し乾燥処理後秤量し、抽出前後の重量比較を行い残留不溶分の質量%を測定する、ことにより得られた値とする。
本発明の太陽電池モジュール用充填材の密度は、0.890g/cm〜0.935g/cm程度であることが好ましく、より好ましくは0.890g/cm〜0.930g/cm程度であり、最も好ましくは0.890g/cm〜0.920g/cmの範囲内である。上述したように、充填材用樹脂中に含まれるポリエチレンの平均密度が所定の範囲であることが好ましいことから、太陽電池モジュール用充填材全体の密度としては上記範囲内であることが好ましいのである。
なお、上記密度は、JIS K 7112に規定の密度勾配管法により測定した値とする。具体的には、比重の異なる液体を入れた試験管の中へサンプルを投入し、止まった位置を読み取ることにより密度を測定した値とする。
さらに、本発明の太陽電池モジュール用充填材は光線透過性が高いことが好ましい。具体的には、全光線透過率が、70%〜100%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは80%〜100%、最も好ましくは90%〜100%の範囲内である。
なお、上記全光線透過率は、通常の方法により測定することができ、例えばカラーコンピュータにより測定することができる。
また、太陽電池モジュール用充填材がシート状に成形されたものである場合、その厚みは、50μm〜2000μmの範囲内であることが好ましく、特に100〜1250μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より薄い場合はセルを支持することができずセルの破損が生じやすくなり、上記範囲より厚い場合はモジュール重量が重くなり設置時などの作業性が悪いばかりでなく、コスト面でも不利となる場合もあるからである。
5.太陽電池モジュール用充填材の製造方法
次に、本発明の太陽電池モジュール用充填材の製造方法について説明する。
本発明の太陽電池モジュール用充填材の作製方法は、本発明が規定する太陽電池モジュール用充填材の諸性能を具備できる方法であれば特に限定されない。なかでも本発明においては、上述したように充填材用樹脂が、エチレン性不飽和シラン化合物および重合用ポリエチレンを重合させてなるシラン変性樹脂、添加用ポリエチレン、および、触媒を含有することが好ましいため、シラン変性樹脂、添加用ポリエチレン、触媒、さらに必要に応じて添加剤を混合して加熱溶融することにより太陽電池モジュール用充填材を作製することが好ましい。この際、これらの混合方法については特に限定されるものではないが、触媒および添加剤については、これらの化合物とポリエチレンと混合させたマスターバッチが用いることが好ましい。
以下、本発明に用いられるマスターバッチ、および本発明の太陽電池モジュール用充填材の製造方法におけるその他の点について説明する。
(1)マスターバッチ
本発明に用いられるマスターバッチは、触媒または添加剤と、ポリエチレンとを含有するものであれば特に限定されるものではない。したがって、本発明においては後述する各マスターバッチにシラン変性樹脂が含まれていてもよく、また各マスターバッチに添加用ポリエチレンが含まれていてもよい。
以下、触媒とポリエチレンとを含有するマスターバッチを触媒マスターバッチ、添加剤とポリエチレンとを含有するマスターバッチを耐候剤マスターバッチと称する。
上記いずれのマスターバッチにおいても、マスターバッチに用いられるポリエチレンは、密度が0.890g/cm〜0.930g/cmの範囲内であるポリエチレンが好ましく、密度が0.890g/cm〜0.928g/cmの範囲内であるポリエチレンがより好ましい。上記範囲のように比較的低い密度のポリエチレンが含まれているマスターバッチを用いることにより、得られる太陽電池モジュール用充填材中に含まれるポリエチレンの平均密度を低くすることができ、ホットスポット現象が生じたときなど温度変化が生じても白濁しにくい太陽電池モジュール用充填材を得ることができるからである。
また、マスターバッチに含まれるポリエチレンの平均密度としては、0.890g/cm〜0.935g/cmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.890g/cm〜0.930g/cmの範囲内、最も好ましくは0.890g/cm〜0.920g/cmの範囲内である。ポリエチレンの平均密度が上記範囲のように比較的低ければ、白濁しにくい太陽電池モジュール用充填材が得られるからである。
本発明においては、マスターバッチが密度が上記範囲内であるポリエチレンを含むことが好ましく、また、マスターバッチに含まれるポリエチレンの平均密度が上記範囲内であることが好ましいのであるが、このマスターバッチは、好ましいポリエチレンの平均密度を超えない範囲で比較的密度が高いポリエチレンを含有することができる。
高密度のポリエチレンの方が粉砕しやすく加工性に優れており、低コスト化が図れるからである。よって、比較的密度の高いポリエチレンを粉砕してパウダーとし、この比較的密度の高いポリエチレンのパウダーと、上記の密度が所定の範囲であるポリエチレンと、添加剤とを混合してマスターバッチを作製することにより、マスターバッチの製造コストを抑えることができる。
なお、上記平均密度は、マスターバッチに含まれるポリエチレンのそれぞれの密度にそれぞれの含有量比を乗じて平均した値とする。
a.触媒マスターバッチ
触媒マスターバッチに用いられる触媒は、上記「1.縮合反応を促進する触媒」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記触媒マスターバッチ中の触媒の含有量としては、シラノール縮合を所望の程度まで促進できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、このマスターバッチを用いて作製される太陽電池モジュール用充填材中の触媒の含有量が上記「1.縮合反応を促進する触媒」の欄に記載した所定の範囲となる量であることが好ましい。具体的には触媒マスターバッチ中0.5質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1質量%〜5質量%の範囲内、最も好ましくは1質量%〜3質量%の範囲内である。
b.耐候剤マスターバッチ
耐候剤マスターバッチに用いられる添加剤は、上記「3.添加剤」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
耐侯剤マスターバッチ中の添加剤の含有量としては、種々の特性を付与することができる量であれば特に限定されるものではない。
(2)シラン変性樹脂の調製方法
次に、本発明に用いられるシラン変性樹脂の調製方法について説明する。シラン変性樹脂は、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとラジカル発生剤との混合物を、加熱溶融混合し、エチレン性不飽和シラン化合物を重合用ポリエチレンにグラフト重合させることにより得ることができる。
加熱温度は300℃以下が好ましく、さらには270℃以下が好ましく、特に好ましい加熱温度は230℃以下である。シラン変性樹脂は、加熱によりシラノール基部分が架橋しゲル化しやすいので、上記範囲で溶融混合するのが好適である。
また、得られたシラン変性樹脂をペレット化してもよい。
なお、エチレン性不飽和シラン化合物、重合用ポリエチレン、ラジカル発生剤、およびシラン変性樹脂については、上記「2.充填材用樹脂」の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)太陽電池モジュール用充填材の作製方法
次に、本発明の太陽電池モジュール用充填材の作製方法について説明する。本発明においては、例えば上記各マスターバッチとシラン変性樹脂と添加用ポリエチレンとを加熱溶融することにより太陽電池モジュール用充填材を作製することができる。また、上記マスターバッチのいずれかにシラン変性樹脂が含まれている場合は、上記各マスターバッチと添加用ポリエチレンとを加熱溶融することにより太陽電池モジュール用充填材を作製することもできる。さらに、上記各マスターバッチのいずれかに添加用ポリエチレンが含まれている場合は、マスターバッチとシラン変性樹脂とを加熱溶融することにより太陽電池モジュール用充填材を作製することもできる。
この際、上述したようにシラン変性樹脂をペレット化し、再度加熱溶融して押出し加工することも可能であるが、押出し機のホッパー内にシラン変性樹脂と添加用ポリエチレンとマスターバッチとを混合して投入し、シリンダ内で加熱溶融することも可能であり、コストの点では後者が優れている。
これらを加熱溶融混合する際の上記各マスターバッチ添加量としては、このマスターバッチを用いて作製される太陽電池モジュール用充填材中の触媒および添加剤の含有量が上記「1.縮合反応を促進する触媒」および「3.添加剤」の欄に記載した所定の範囲となる量であれば特に限定されない。
マスターバッチやシラン変性樹脂等の加熱溶融混合方法としては、特に限定されるものではない。
また、加熱温度は300℃以下が好ましく、さらには270℃以下が好ましく、特に好ましい加熱温度は230℃以下である。上記シラン変性樹脂は、加熱によりシラノール基部分が架橋しゲル化しやすいので、上記範囲で溶融混合するのが好適である。
再度加熱溶融する際の加熱温度は、300℃以下が好ましく、より好ましくは270℃以下であり、特に好ましい加熱温度は230℃以下である。上述したように、シラン変性樹脂は加熱によりシラノール基部分が架橋しゲル化しやすいので、上記範囲で加熱溶融して押出すことが好ましい。
本発明において、太陽電池モジュール用充填材を作製する際には、加熱溶融した後にシート状に成形してもよい。この場合には、加熱溶融後にTダイ、インフレなどの既存の方法により、50μm〜2000μmの厚みのシート状に成形し、太陽電池モジュール用充填材とすることができる。
B.太陽電池モジュール用充填材層
次に本発明の太陽電池モジュール用充填材層について説明する。本発明の太陽電池モジュール用充填材層は、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂を有する充填材用樹脂を含み、Si(珪素)含有量が重合Si量として8ppm〜3500ppmの範囲内であり、ゲル分率が1%〜30%の範囲内であり、かつ、縮合反応を促進する触媒を含むことを特徴とするものである。
本発明の太陽電池モジュール用充填材層は、Si量が上記範囲内であることにより、透明前面基板および裏面保護シートと優れた密着性を発現することができる。したがって、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を有する太陽電池モジュールの密着性安定性を優れたものにできる。
また、ゲル分率が上記範囲内であることにより、ホットスポット等による白濁を抑制することができるため、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を有する太陽電池モジュールの外観を良化することができる。また、ゲル分率が上記範囲内であることにより、本発明の太陽電池モジュール用充填材は、熱溶融性や溶媒溶解性を示すため、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を有する太陽電池モジュールにリサイクル性を付与することができる。
さらに本発明は、縮合反応を促進する触媒を含むことにより、ゲル分率を所望の範囲に制御することが可能になるため、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を有する太陽電池モジュールを、ホットスポット等による白濁の発生のない優れた外観を有し、かつ優れたリサイクル性をも備えるものにすることがきる。
以下、本発明の太陽電池モジュール用充填材層について詳細に説明する。なお、上記充填材層を構成する充填材用樹脂および添加物は、上記「A.太陽電池モジュール用充填材」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる縮合反応を促進する触媒は、上記「A.太陽電池モジュール用充填材」の、「1.縮合反応を促進する触媒」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明の太陽電池モジュール用充填材層中の上記触媒の含有量は、シラノール縮合反応を所望の程度まで促進できる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明においては、上記触媒の含有量が0.0002質量%〜0.09質量%の範囲内であることが好ましく、特に0.002質量%〜0.06質量%の範囲内であることが好ましい。縮合反応を促進する触媒の含有量が上記範囲よりも少ないと、ゲル分率が低くなりすぎてしまい、ホットスポット等に伴う白濁が生じてしまう場合があるからである。また、含有量が上記範囲よりも多いと、上記触媒がブリードアウトし、太陽電池モジュールの品質を損なう可能性があるからである。
なお、本発明の充填材層中における触媒量の測定方法は、上記「A.太陽電池モジュール用充填材」の「1.縮合反応を促進する触媒」の項に記載した方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における充填材層中のSi量は、8ppm〜3500ppmの範囲内であることを特徴とする。このようにSi量を規定するのは、Si量が上記範囲よりも少ないと、透明前面基板および裏面保護シートとの密着性が不十分になり、密着性の経時安定性に優れた太陽電池モジュールを作製することができないからである。また、Si量が上記範囲よりも多いと、コストが高くなってしまうからである。本発明においては、上記充填材層中のSi量が、20ppm〜2000ppmの範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは100ppm〜1000ppmの範囲内である。
ここで、太陽電池モジュール用充填材層のみを加熱し燃焼させ灰化することによって重合SiがSiOに変換される。よって、上記重合Si量は、灰分をアルカリ融解して純水に溶解後定容し、高周波プラズマ発光分析装置((株)島津製作所製 ICPS8100)を用いてICP発光分析法により重合Si量の定量を行うことにより測定した値とする。
また、本発明における太陽電池モジュール用充填材層はゲル分率が、1%〜30%の範囲内であることを特徴とする。このようにゲル分率を規定するのは、ゲル分率が上記範囲よりも高いと、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を有する太陽電池モジュールのリサイクル性を損なってしまうからである。また上記範囲よりも低いと、ホットスポット現象等に伴って白濁してしまうからである。本発明の太陽電池モジュール用充填材層は、ゲル分率が3%〜20%の範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは5%〜10%である。
なお、上記ゲル分率は、(1)本発明の太陽電池モジュール用充填材層を1g秤量し、80メッシュの金網袋に入れる(2)ソックスレー抽出器内に金網ごとサンプル投入し、キシレンを沸点下において還流させる(3)10時間連続抽出したのち、金網ごとサンプルごと取出し乾燥処理後秤量し、抽出前後の重量比較を行い残留不溶分の質量%を測定する、ことにより得られた値とする。
本発明の太陽電池モジュール用充填材層は、後述する太陽電池素子と透明前面基板、および太陽電池素子と裏面保護シートを接着させる役割をもつものであるため、透明前面基板および裏面保護シートとの密着性が高いことが好ましい。具体的には、本発明の太陽電池モジュール用充填材層の25℃雰囲気下における180°剥離試験において測定された透明前面基板および裏面保護シートとの剥離強度が、1N/15mm幅〜150N/15mm幅の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3N/15mm幅〜150N/15mm幅、最も好ましくは10N/15mm幅〜150N/15mm幅の範囲内である。
なお、上記剥離強度は以下の試験方法により得た値とする。
試験機:エー・アンド・ディー(A&D)株式会社製の引っ張り試験機〔機種名:テンシロン〕
測定角度:180°剥離
剥離速度:50mm/min
また、本発明の太陽電池モジュール用充填材層は上記密着性を長期間保持していることが好ましく。具体的には、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を用いて太陽電池モジュールを作成した場合に、太陽電池モジュールを温度85℃、湿度85%の高温多湿状態にて1000時間放置した後の25℃雰囲気下における180°剥離試験において測定された透明前面基板および裏面保護シートとの剥離強度が、0.5N/15mm幅〜140N/15mm幅の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3N/15mm幅〜140N/15mm幅、さらに好ましくは10N/15mm幅〜140N/15mm幅の範囲内である。
なお、測定方法は上述した方法と同様の方法が用いられる。
また、本発明の太陽電池モジュール用充填材層の厚みは、50〜2000μmの範囲内であることが好ましく、特に100〜1250μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より薄い場合はセルを支持することができずセルの破損が生じやすくなる場合がるからである。また、上記範囲より厚い場合は、本発明の太陽電池モジュール用充填材層を用いて太陽電池モジュールを作製した場合に、モジュール重量が重くなり設置時などの作業性が悪いばかりでなく、コスト面でも不利となる場合もあるからである。
さらに、太陽電池モジュール用充填材層は光線透過性が高いことが好ましい。具体的には、太陽電池モジュール用充填材層の全光線透過率が、70%〜100%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは80%〜100%、最も好ましくは90%〜100%の範囲内である。
本発明の太陽電池モジュール用充填材層の製造方法は、後述する「D.太陽電池モジュール用充填材層、および太陽電池モジュールの製造方法」の項において説明するため、ここでの説明は省略する。
C.太陽電池モジュール
次に、本発明の太陽電池モジュールについて説明する。本発明の太陽電池モジュールは、上記太陽電池モジュール用充填材層を有することを特徴とするものである。
次に、本発明の太陽電池モジュールについて図を参照しながら説明する。図1は、本発明の太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、複数個の太陽電池素子1が同一平面状に並べられており、太陽電池素子1間には配線2および取り出し電極3が配置されている。太陽電池素子1は、その両面が表側充填材層4aと裏側充填材層4bにより狭持されており、表側充填材層4aの外側には透明前面基板5が積層され、裏側充填材層4bの外側には裏面保護シート6が積層されている。この太陽電池モジュールTはアルミニウムなどの外枠7で固定されていてもよい。本発明においては、表側充填材層4a、裏側充填材層4bに上述した太陽電池モジュール用充填材層が用いられる。
本発明の太陽電池モジュールは、例えば、上記太陽電池モジュール用充填材層を表側充填材層に有することにより、ホットスポット現象に伴う充填材層の白濁等が生じることのない、外観に優れた太陽電池モジュールを得ることができる。また、ホットスポット現象が発生したときに、モジュールが高温になっても樹脂の流動が抑えられるという効果もある。
また、上記太陽電池モジュール用充填材層を裏面充填材層に有することにより、熱膨張によって裏面充填材層の体積変化が生じることに起因して発生する、裏面保護シートの変形を防止することができる。さらに、上記太陽電池モジュール用充填材層は触媒を含むことから、本発明の太陽電池モジュールを生産性に優れたものにできる。
以下、本発明の太陽電池モジュールの各構成について詳細に説明する。
1.充填材層
本発明の太陽電池モジュールに用いられる充填材層は、上記「B.太陽電池モジュール用充填材層」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.透明前面基板
本発明に用いられる透明前面基板としては、例えばガラス、フッ素系樹脂シート、耐候性フィルムとバリアフィルムとをラミネート積層した透明複合シート等を用いることができる。
3.裏面保護シート
また、本発明に用いられる裏面保護シートとしては、例えばアルミニウム等の金属、フッ素系樹脂シート、耐候性フィルムとバリアフィルムとをラミネート積層した複合シート等を用いることができる。
4.太陽電池素子
本発明に用いられる太陽電池素子としては、特に限定されず一般的な太陽電池素子を用いることができる。
5.その他
本発明の太陽電池モジュールにおいては、太陽光の吸収性、補強、その他等の目的のもとに、さらに、他の層を任意に加えて積層することができるものである。
6.太陽電池モジュールの製造方法
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、後述する「D.太陽電池モジュール用充填材層、および太陽電池モジュールの製造方法」の項において説明するため、ここでの説明は省略する。
D.太陽電池モジュール用充填材層、および太陽電池モジュールの製造方法
次に、本発明の太陽電池モジュール用充填材層および太陽電池モジュールの製造方法について説明する。
本発明の太陽電池モジュール用充填材層および太陽電池モジュールの製造方法は、特に限定されず、一般的な方法を用いることができる。このような方法としては、例えば透明前面基板、太陽電池モジュール用充填材、太陽電池素子、太陽電池モジュール用充填材、および裏面保護シート等を順次に積層し、次いで、これらを一体として、真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等の通常の成形法を利用することができる。このような方法により各層を一体成形体として太陽電池モジュールが得られる。また、このような方法を用いた場合、太陽電池モジュールの製造と同時に太陽電池モジュール用充填材層が形成される。
上記ラミネーション法を用いた際のラミネート温度は、90℃〜230℃の範囲内であることが好ましく、特に110℃〜190℃の範囲内とすることが好ましい。ラミネート温度が低すぎると十分に溶融せず透明前面基板、補助電極、太陽電池素子、裏面保護シートなどとの密着性が悪くなる可能性があり、ラミネート温度が高すぎると大気中の水蒸気による水架橋が進行しやすくなりゲル分率が大きくなる可能性があるからである。
ラミネート時間は、5〜60分の範囲内が好ましく、特に8〜40分の範囲内が好ましい。ラミネート時間が短すぎると十分に溶融せず同上の部材との密着性が悪くなる可能性があり、ラミネート時間が長すぎると工程上の問題となる場合があり、特に温度や湿度条件次第ではゲル分率の増加の要因となるからである。
また、湿度に関しては、高すぎるとゲル分率の増加につながり、低すぎると各種部材との密着性を低下させる可能性があるが、通常の大気環境下における湿度であれば特に問題は生じない。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を示すことにより本発明についてより具体的に説明する。
[実施例1]
(1)シラン変性樹脂の調整
密度0.898g/cmのメタロセン直鎖低密度ポリエチレン100重量部に対し、ビニルトリメトキシシラン0.5重量部、ラジカル発生剤(反応触媒)としてジクミルパーオキサイド0.1重量部を混合し、200℃で溶融、混練し、シラン変性樹脂を得た。
(2)マスターバッチの調整
a.耐候剤マスターバッチ
マスターバッチベース密度0.920g/cmのメタロセン直鎖低密度ポリエチレン100重量部に対して、光安定化剤(ヒンダードアミン系光安定化剤)10重量部、紫外線吸収剤3.75重量部、および熱安定剤0.5重量部を混合して溶融加工し、耐候剤マスターバッチを得た。
b.触媒マスターバッチ
また、マスターバッチベース密度0.920g/cmのメタロセン直鎖低密度ポリエチレンと触媒とを混合して溶融加工し、ペレット化した触媒マスターバッチを予め作製した。この際、触媒マスターバッチ中の触媒添加量は5質量%とした。
(3)充填材の製造
上記シラン変性樹脂20重量部に対し、密度0.900g/cm、190℃でのメルトマスフローレート3.5g/10分のメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(添加用ポリエチレン)80重量部、および上記耐候剤マスターバッチ5重量部、触媒マスターバッチ1重量部を加え混合し、150mmφ押出し機、1000幅のTダイスを有するフィルム成形機を使用し、樹脂温度230℃、引き取り速度4m/minで厚み400μmのフィルムを成膜化した。
成膜化は支障なく実施することができた。また、得られたフィルムの外観および全光線透過率は良好であった。得られたフィルム中の重合Si量は700ppmであった。
(4)太陽電池モジュールの製造
得られたフィルムを充填材層として使用し、厚み3mmのガラス板(透明前面基板)、厚み400μmの充填材層、多結晶シリコンからなる太陽電池素子、厚み400μmの充填材層、および裏面保護シートとして、厚み38μmのポリフッ化ビニル系樹脂シート(PVF)と、厚み30μmのアルミニウム箔と、厚み38μmのポリフッ化ビニル系樹脂シート(PVF)とからなる積層シートをこの順に積層し、太陽電池素子面を上に向けて、太陽電池モジュールの製造用の真空ラミネーターにて150℃で15分間圧着して、本発明の太陽電池モジュールを製造した。得られた太陽電池モジュールから充填材層を切り出してゲル分率を測定した結果、9%であった。
[実施例2〜6および比較例1]
実施例2〜6および比較例1は、組成を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを作製した。組成を表1に示す。
Figure 2007318008
(特性の評価)
上記実施例1〜4および比較例1、2により得られた太陽電池モジュールに使用している充填材層について、下記の試験を行った。各試験の測定結果を下記表2に示す。
(1)密着性の測定
太陽電池モジュールの製造直後と、温度85℃、湿度85%の高温多湿状態にて1000時間放置した後の、太陽電池モジュール用充填材層と透明前面基板との室温(25℃)下での剥離強度(N/15mm幅)を測定した。
(2)ホットスポット試験
太陽電池モジュールについてJIS規格C8917に基づいてホットスポット試験を行い、試験後の外観を評価した。
(3)平均赤外線透過率の測定
FT−IR610(日本分光株式会社製)を用いて、赤外分光法により透過法によって赤外吸収スペクトルを測定し、得られた赤外吸収スペクトルの波長15000nm〜25000nmにおける1nm毎の透過率を加算し、平均した値を平均赤外線透過率とした。
Figure 2007318008
表2から明らかなように、実施例1〜6における太陽電池モジュール用充填材層は比較例1に比べてホットスポット試験後に白濁が生じにくかった。また、実施例1〜6の太陽電池モジュール用充填材層は、室温(25℃)下における透明前面基板との密着性に優れていた。
これに対し、比較例1における太陽電池モジュールでは、ホットスポット試験後に白濁した。
本発明の太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 … 太陽電池素子
2 … 配線
3 … 取り出し線
4a … 表面充填材層
4b … 裏面充填材層
5 … 透明前面基板
6 … 裏面保護シート
7 … 外枠
T … 太陽電池モジュール

Claims (6)

  1. エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂を有する充填材用樹脂を含む太陽電池モジュール用充填材であって、Si(珪素)含有量が重合Siとして8ppm〜3500ppmの範囲内であり、ゲル分率が1%〜30%の範囲内であり、かつ、縮合反応を促進する触媒を含むことを特徴とする太陽電池モジュール用充填材。
  2. 前記縮合反応を促進する触媒の含有量が、0.0002質量%〜0.09質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池モジュール用充填材。
  3. 前記縮合反応を促進する触媒が、錫系のシラノール縮合触媒であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール用充填材。
  4. エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂を有する充填材用樹脂を含む太陽電池モジュール用充填材層であって、
    Si(珪素)含有量が重合Si量として8ppm〜3500ppmの範囲内であり、ゲル分率が1%〜30%の範囲内であり、かつ、縮合反応を促進する触媒を含むことを特徴とする太陽電池モジュール用充填材層。
  5. 上記縮合反応を促進する触媒の含有量が、0.0002質量%〜0.09質量%の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池モジュール用充填材層。
  6. 請求項4または請求項5に記載の太陽電池モジュール用充填材層を有することを特徴とする太陽電池モジュール。
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