JP2007313333A - 再構成皮膚の構築方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒト培養細胞を用いて、メラノサイトを有し、組織学的及び機能的にヒト皮膚に類似し且つ的数量的及び利便性に優れたヒト再構成皮膚を構築する方法を提供する。
【解決手段】ヒト皮膚組織を非ヒト動物の体表面で再構成する方法であって、(a)細胞注入が可能な筒型のチャンバーを免疫不全非ヒト動物の背部皮膚に埋植し、(b)チャンバー内にヒト培養線維芽細胞、ヒト培養ケラチノサイト及びヒト培養メラノサイトを含有する細胞懸濁液を注入し、(c)細胞移植後7日以上経過後に、当該チャンバーの上底部を切断することにより筒部を全面開口せしめ、次いで、(d)チャンバーを脱離することを特徴とするヒト皮膚組織の構築方法により得られるヒト皮膚組織。
【選択図】なし

Description

本発明は実験動物を用いたヒト皮膚組織の構築方法に関する。
近年、再生医学、再生医療に注目が集まっている。再生医療は、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞を利用することにより、その機能再生をはかる医療である。再生医学の分野ではほとんどの臓器・組織が研究対象となっており、すでに実用化に至っている領域もある。その中で、自己複製する組織、器官を再構成するテクノロジーが最初に確立された器官は皮膚である。
従来、研究分野において、皮膚モデルとして最も広く使われているのはin vitro系における再構成皮膚である(例えば、非特許文献1〜3参照)。この皮膚モデルはハンドリングの良さから広く使用されている反面、短期間でしかその形質を維持できず、また、薬剤に対しての耐性も弱いという欠点がある。そのような問題を解決できる利用可能なヒト皮膚モデルとして、ヒト皮膚片を免疫不全動物に直接移植する技術(例えば、非特許文献4参照)が存在するが、この方法は、生体のヒト皮膚にかなり近い皮膚モデルである反面、新鮮なヒト皮膚の入手が重要なファクターであり、数量的な問題を抱えているのが現状である。
このような状況を打開するために開発されてきたものが、ヒトの培養細胞を免疫不全動物の皮膚中に移植し、再構成皮膚を構築する方法である。その手法としては複数の方法が存在するが、中でも近年注目されている方法にspontaneoussorting法(例えば、特許文献1、非特許文献5参照)がある。この手法は、新鮮なヒト皮膚から単離した初代培養のケラチノサイト及び線維芽細胞を混合して、実験動物の皮膚状で再構成皮膚を構築するものである。このため、細胞が自由に動くことができ、細胞間相互作用が起こりやすく、より生体皮膚に近い構造をとりうるという利点がある。
しかしながら、これまでの報告では、移植後最長でも4週間という短い期間でしか評価を行っておらず、この時点では少なくとも表面状態はヒト皮膚に類似した滑らかな状態には至っていない。しかも、再構成皮膚構築における一般的でかつ大きな問題点の一つである時間経過に伴う再構成皮膚面積の縮小という点が解決されていない(例えば、非特許文献6参照)。
本発明は、ヒト培養細胞を用いて、メラノサイトを有し、組織学的及び機能的にヒト皮膚に類似し且つ数量的及び利便性に優れたヒト再構成皮膚を構築する方法を提供することを目的とする。
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本発明者らは、実験動物の皮膚上で、ヒト皮膚を再構成する方法について検討したところ、下記に示す(a)〜(c)の工程を行うことにより、表皮基底層にメラノサイトを含み、ヒト皮膚に類似した滑らかなツヤを有し、一定以上の大きさをもつヒト再構成皮膚を構築できることを見出した。
すなわち本発明は、ヒト皮膚組織を非ヒト動物の体表面で再構成する方法であって、(a)細胞注入が可能な筒型のチャンバーを免疫不全非ヒト動物の背部皮膚に埋植し、(b)チャンバー内にヒト培養線維芽細胞、ヒト培養ケラチノサイト及びヒト培養メラノサイトを含有する細胞懸濁液を注入し、(c)細胞移植後7日以上経過後に、当該チャンバーの上底部を切断することにより筒部を全面開口せしめ、次いで、(d)チャンバーを脱離することを特徴とするヒト皮膚組織の構築方法を提供するものである。
また本発明は、上記方法により得られるヒト皮膚組織及びヒト皮膚組織を保持する実験動物を提供するものである。
また本発明は、上記動物を用いてメラノサイトに作用する物質をスクリーニングする方法を提供するものである。
本発明によれば、ヒト皮膚の遺伝子発現を研究するため、或いはヒト皮膚、特にメラノサイトに対して作用する薬剤等を評価するための数量的及び利便性に優れたヒト再構成皮膚を提供することができる。
本発明方法を施行する免疫不全非ヒト動物としては、例えばSCIDマウス、BALB cA−nu/scid、B−17/Icr−Scid等の免疫不全マウス、F344 Jc1−rnu等の免疫不全ラット等が挙げられ、特に用いる細胞数とチャンバーの大きさとの兼ね合い、またチャンバー縫合埋植の簡便性の点から、上記の免疫不全マウスを用いることが好ましい。
これらの動物は、SPFの環境下で1匹/1ケージの条件下で飼育することが好ましい。斯かる動物は、日本クレア株式会社より入手可能である。
本発明において用いられるチャンバーは、動物皮膚に埋植できる構造であれば制限がないが、例えば、下部にツバ部を有し、細胞注入が可能な構造を有する筒型形状を有するものが挙げられ、中でも帽子型形状を有するものが好ましい。細胞注入が可能な構造としては、注入可能な小孔を有する構造、チャンバー自体がシリコンでできているような注射針が貫通しうる材質でできた構造が挙げられる。以下、本発明の再構成皮膚構築方法の最も好ましい一実施形態を詳細に説明する。
図1は下部にツバ部を有し、細胞注入が可能な構造を有する帽子型チャンバーの平面図、図2に断面図を示す。本発明のチャンバーは、図3に示すように、同様の形状を有する上側チャンバーaと下側チャンバーbを組み合わせる(図3c)ことが好ましい。この場合には、チャンバーのずれ防止、チャンバー内からの細胞の漏洩の防止という利点がある。
図1及び図2において、1はツバ部、2は筒部、3は上底部、4は頂上部を示す。頂上部には、細胞懸濁液を注入するための直径2〜4mmの小孔5が開けられている。
斯かるチャンバーの材質は、特に制限されるものではなく、例えばシリコン、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン製のものが使用できる。また、チャンバーの大きさは、移植する動物の大きさによっても異なるが、通常内径7〜12mm、外径16〜24mmのものを使用するのが好ましい。
市販のチャンバーとしては、上記図3で示す上側チャンバーa(内径12mm,外径24mm)と下側チャンバーb(内径11mm,外径24mm)(RennerGMBH社)が挙げられ、これらを嵌合して使用することができる。
チャンバーの動物皮膚への埋植(工程(a))は、例えば、動物の背部の皮膚を円状に切除し、上記のチャンバーを挿入し、接着剤を用いて又はチャンバーの周辺部の皮膚を巾着の口のように縫合して、チャンバーを固定すればよいが、脱離が容易である点から縫合埋植するのが好ましい。
本発明方法において移植される皮膚細胞は、ヒト培養線維芽細胞、ヒト培養ケラチノサイト及びヒト培養メラノサイトの混合物が用いられる。
ヒト培養繊維芽細胞としては、例えば成人皮膚(乳房)由来、新生児皮膚(包皮)由来のものを用いることができ、以下のような方法により得ることができる。例えば、包皮の表皮と真皮を物理的に分離し、真皮を細かくばらばらにして、10%fetal bovine serum (Invitrogen Corporation)を含むDulbecco's modified Eagle'smedium (Invitrogen)で培養する。真皮組織から成長してくる細胞が繊維芽細胞である。斯かるヒト培養繊維芽細胞は、市販品、例えば正常ヒト新生児包皮皮膚繊維芽細胞を購入し、培養、継代して用いることもできる。
ヒト培養ケラチノサイトとしては、例えばヒト新生児包皮由来のものが用いられ、例えば、包皮の真皮と表皮を物理的に分離し、表皮を細かくばらばらにして0.3%のトリプシン内で30分放置する(37℃)。その後トリプシンを中和し、表皮組織を外科用ピンセットでさらに細かくし、金属製メッシュでろ過して残骸を除去する。ばらばらになったケラチノサイトを遠心して回収し、ペレットをkeratinocyte-SFM(invitrogen)に懸濁し、同培地で培養することにより得ることができる。斯かるヒト培養ケラチノサイトは、市販品、例えば正常ヒト表皮角化細胞(倉敷紡績株式会社)を購入し培養、継代して用いることもできる。
ヒト培養メラノサイトとしては、例えばヒト新生児包皮由来のものが用いられ、例えば、包皮の真皮と表皮を物理的に分離し、表皮を細かくばらばらにして培地による制限で単離することができるが、現実的には市販されている細胞を用いる方が望ましい。斯かるヒト培養メラノサイトは、市販品、例えば正常ヒト表皮色素細胞(倉敷紡績株式会社)を購入し培養、継代して用いることもできる。
上記のようにして得られたヒト培養繊維芽細胞、ヒト培養ケラチノサイト及びヒト培養メラノサイトは、混合して細胞懸濁液とし、遠心分離を行い、培地を除去して細胞だけにすることにより、チャンバー頂上部4に設けられた小孔5を通してピペットマン等によりチャンバー内へ注入される(工程(b))。細胞の量は400−600μL/cm2とするのが望ましい。
細胞移植開始後、表面状態がヒト皮膚に類似した組織が再構築するまでには通常8〜12週間を要する。本発明の方法では、チャンバーを脱離させるまでの間、すなわち細胞移植後7日以上経過後、好ましくは7〜20日までに、該チャンバーの上底部を切断することにより筒部を全面開口せしめることが好ましい(工程(c)、図4参照)。
チャンバー筒部の開口は、切断を何回かに分けて徐々に行うことが好ましく、これにより急速な乾燥を妨げることとなり再構成皮膚の収縮を抑制することができる。切断の回数は、作業性及び急速な乾燥を考慮すると2回が好ましく、移植後7〜10日間、好ましくは7日後に、チャンバー筒部の断面積の6〜8割、好ましくは7割程度が開口するように筒部を切断し、更に7〜10日間放置した後に全面開口するように切断するのが好ましい(図4a参照)。
チャンバーとして、上記の上側チャンバー(内径12mm,外径24mm)と下側チャンバー(内径11mm,外径24mm)の組合せを用いた場合は、初回の切断では頂上部から約5mm程度のところで切断し、一定期間経過後に、筒部を全面開口させるように(頂上部から約8mmのところで)切断すればよい(図4b参照)。
また、チャンバー上底部の一部を切断して筒部を開口した場合は、当該開口部位には、気体が通過可能な部材を装着して当該開口部を覆うことが、床敷混合防止、急速な乾燥防止の点から好ましい。当該部材は、気体が通過可能であれば特に制限されないが、例えばガーゼ、不織布、布、網等が挙げられる。当該網は、金属製、樹脂製、綿製の何れでもよく、その孔径は0.1〜0.5mm、特に0.2〜0.3mmのものが好ましい。
チャンバーの脱離は、チャンバー筒部を全面開口させた後、約28〜56日間、好ましくは28〜35日間で行うのが好ましく(工程(d))、全面開口させた後は、再構成されている皮膚の急激な乾燥を避けるために、適当な水分補給を行うことが好ましい。この場合の水分補給は、例えば生理食塩水を2〜4日に一度、400μL/cm2の量でシリンジ等を用いて、再構成皮膚上に滴下する程度が好ましい。
チャンバーの取り外しは、縫合埋植した場合には、チャンバーを固定するために動物の皮膚を縫合していた縫合糸を切断することにより、また接着剤を用いてチャンバーを埋植した場合にも、チャンバーが皮膚から自発的に脱離するようにして行うのが好ましい。このようにチャンバーを皮膚から自発的に脱離させることが再構成皮膚とマウス皮膚との融合、再構成皮膚の収縮抑制の点から好ましい。通常、縫合糸を切断後、約2週間でチャンバーは外れる。
斯くして、ヒト培養線維芽細胞、ヒト培養ケラチノサイト及びヒト培養メラノサイトからヒト皮膚組織を構築することができるが、(a)〜(d)のいずれかの工程において、皮膚組織の再生を促進するための因子、例えばWnt、ソニックヘッジホッグ等を適宜添加することができ、また、毛包、メラノサイト等の皮膚組織構成細胞を添加することもできる。
本発明の方法により再構成された皮膚組織は、図5に示すように、瘡蓋がなく均一な表面を有し、ヒト皮膚に極めて類似したツヤを呈する。また、縮小することなく一定以上の大きさを維持している。そして、図7〜9に示すように、メラノサイトが配置されたヒト皮膚に極めて類似した基底膜構造を有する。これまでに、非ヒト動物の体表面においてメラノサイトを有するヒト再構成皮膚が構築されたという知見はなく、この技術は全世界の人種に対応しうる人工皮膚を提供できるものであり、尋常性白斑などの色素異常症の治療に応用できる可能性も秘めている。
従って、本発明方法によって得られた再構成皮膚は、しみ、そばかす、炎症後の色素沈着、老人性色素斑等の皮膚組織モデルとなり得る。また、当該皮膚組織を保持する動物は、ヒト皮膚の遺伝子発現等を研究するための研究用動物となる他、皮膚、特にメラノサイトに対して作用する薬剤、例えば皮膚黒化を予防又は治療するための薬剤や美白剤、あるいはタンニング剤等の化粧料の素材となる物質を評価するためのモデル動物として有用である。すなわち、経皮、注射、経口等の投与経路で被検物質の適量を、本発明動物に投与し、その経時的作用及び効果を一般的な手段により観察、評価することにより、メラノサイトに作用する物質のスクリーニングや薬効試験を行うことができる。
例えば、美白剤のスクリーニングに使用する場合は、被験物質を本発明の再構成皮膚に濃度を変えて塗布し、色差計を用いて皮膚色を評価することにより、被験物質の美白剤としての適否をスクリーニングすることができる。また、UV吸収剤のスクリーニングに使用する場合は、OpticalCoherence Tomography(ISIS optronics GmbH)とImage pro 4.0画像解析ソフトを組み合わせて表皮肥厚を測定することにより、被験物質のUV吸収剤としての適否をスクリーニングすることができる。
実施例1 ヒト再構成皮膚の構築
(1)細胞の培養
ヒト培養線維芽細胞(大日本製薬株式会社)を10% fetal bovine serum (Invitrogen Corporation)を含むDulbecco'smodified Eagle's medium (Invitrogen)で、37℃、CO2 5%のインキュベーター内で培養した。T175フラスコ(FALCONCorporation)でコンフルエントの状態になるまで培養した。
ヒト培養ケラチノサイトは、クラボウ社より購入したヒト新生児包皮由来表皮角化細胞を使用した。凍結細胞を37℃で解凍した後、T25フラスコ(FALCON)にkeratinocyte-SFM (Invitrogen)培地を用いて播種し、37℃、CO2 5%のインキュベーター内で培養した。サブコンフルエントの状態で継代を行い、T175フラスコに移して同条件でサブコンフルエントの状態まで培養を行った。
ヒト培養メラノサイトは、クラボウ社より購入したヒト新生児包皮由来表皮色素細胞を使用した。凍結細胞を37℃で解凍した後、T25フラスコ(FALCON)にMedium 154培地(Cascade Biologics Corporation)を用いて播種し、37℃、CO2 5%のインキュベーター内で培養した。サブコンフルエントの状態で継代を行い、T175フラスコに移して同条件でサブコンフルエントの状態まで培養を行った。
(2)マウスへのチャンバーの挿入
マウスの背部の皮膚を円状に切除し、上部に直径2〜4mmの穴を開けたチャンバー(upper part-内径12mm,外径24mmとlower part-内径11mm,外径24mmを組み合わせたもの)(RennerGMBH)を挿入した。チャンバーの周辺部のマウス皮膚を巾着の口のように縫合して、チャンバーを固定した。
(3)細胞の注入
トリプシンではがした(6-8)×106個のヒト培養線維芽細胞と6×106個のヒト培養ケラチノサイト、それから2×105〜2×106個のヒト培養メラノサイトを同一チューブ内で遠心して回収し、上清を捨てた。これをチャンバー内に上部の穴から注入した。
(4)チャンバーの取り外し
移植(graft)してから1週間後、チャンバーの上部を上から5mm程度のところで切り取り、その上に金網を取り付けた。さらに1〜2週間後に金網を外し、チャンバーの上部を完全にカットした。この時点から生理食塩水を2〜4日に一度、再構成皮膚上に滴下し、急激な乾燥を避けるようにした。graftして約4〜5週間後にチャンバーをマウス皮膚に縫合した糸にはさみを入れ、自発的にチャンバーが外れるのを待った。一般的にはgraftしてから6〜7週間後にチャンバーは外れる。
(5)再構成皮膚の所見
図5は、構築された再構成皮膚の外観写真である。当該再構成皮膚は一定以上の大きさが維持され、皮膚表面には瘡蓋がなく、均一であり、ヒト皮膚に極めて類似したツヤを呈していた(図5(A)及び(B))。また、メラノサイトを含むことから再構成皮膚の表面は全体的に茶色を帯びていた(図5(B))。
(6)再構成皮膚への紫外線照射によるメラニン合成の促進
SCIDマウスに移植してから 週間経過した再構成皮膚に対する紫外線の照射は東芝FL20SEランプのUVB光源のみを用いて実施した。再構成皮膚の構築に用いた表皮ケラチノサイトとメラノサイトはcaucasian由来のものを用いたので、caucasianの最小紅斑量の約2倍量に相当する150mJ/cm2のUVBを1回照射した。黒化度を測定する目的で再構成皮膚中心部の明度(L値)をUVB照射前、UVB照射から1日後、2日後、14日後に色彩色差計(日本電色工業300A)を用いて測定したところ、図6に示したようにUVBを照射してから14日経過した時点では顕著にL値が減少しており、メラニン合成が促進していることが示唆された。実際にこの黒化度の促進がメラニン合成の促進によるものであることを検証するために、14日後の測色を終了した時点で、パラフィン切片を作成し組織学的解析を試みた。なお、免疫組織化学染色試薬としてOMNITAGPLUS/HRPAEC kit(Thermo Shandon Corporation)を使用したため、陽性所見は赤色で示している。
まず、再構成皮膚の表皮基底層にメラノサイトが配置されているかについて、メラノサイト特異的な膜蛋白であるc-kitに対する抗体(免疫生物研究所)を用いて免疫組織学的解析を試みた。図7に示したように対照抗体として用いたnon-specificIgGによる染色像と比較し、表皮基底層に顕著な陽性所見が認められた。
次に、活性化メラノサイトのマーカーであるHMB45抗体(DAKO Corporation)を用いて、再構成皮膚内のメラノサイトがメラニンを合成しているかどうかについて検討した。図8に示したように表皮基底層に陽性所見が認められた。さらに、同切片をフォンタナ・マッソン染色することにより、表皮基底層からその上側の有棘層にかけて顕著なメラニン色素を観察することができた(図9)。
(7)再構成皮膚への紫外線照射による表皮肥厚
ヒトの皮膚は紫外線を浴びると肥厚するため、再構成皮膚においても同様な変化が認められるかどうか検討した。表皮肥厚の測定については無侵襲での解析が可能なOpticalCoherence Tomography(ISIS optronics GmbH)とImage pro 4.0画像解析ソフトを組み合わせて測定した。経時的に解析したところ、UVBを照射してから1日後において顕著に表皮が肥厚していることを確認できた(図10、図11)。その肥厚は紫外線を照射してから14日経過した時点でも確保されていた。
本発明チャンバーの外観図(正面図)である。 本発明チャンバーの外観図(断面図)である。 上側チャンバーaと下側チャンバーbを用いる場合の概念図である。 チャンバー上底部の切断を示す概念図(4a:正面図、4b:断面図)で ある。 マウス(移植後18週)において構築された再構成皮膚の外観写真である。(A)はメラノサイトを含まない再構成皮膚、(B)はメラノサイトを含む再構成皮膚。 UVB照射後の再構成皮膚におけるL値の変化を示したグラフである。 再構成皮膚の組織学的所見(c−kit)である。(A)はc-kitに対する抗体を用いた組織染色像、(B)はnon-specific IgGを用いた組織染色像。 再構成皮膚の組織学的所見(活性化メラノサイト)である。(A)はHMB45抗体を用いた組織染色像、(B)はnon-specific IgGを用いた組織染色像。 再構成皮膚の組織学的所見(メラニン色素(フォンタナ・マッソン染色))である。 UVB照射後の再構成皮膚における表皮肥厚を示したOCTの技術を用いて取りこんだ図である。矢印で挟まれた部分が表皮厚を示す。(A)はUVB照射前、(B)は1日後、(C)は2日後、(D)は14日後。 UVB照射後の再構成皮膚における表皮肥厚を示したグラフである。
符号の説明
1:ツバ部
2:筒部
3:上底部
4:頂上部
5:小孔(細胞注入口)
a:上側チャンバー
b:下側チャンバー

Claims (8)

  1. ヒト皮膚組織を非ヒト動物の体表面で再構成する方法であって、(a)細胞注入が可能な筒型のチャンバーを免疫不全非ヒト動物の背部皮膚に埋植し、(b)チャンバー内にヒト培養線維芽細胞、ヒト培養ケラチノサイト及びヒト培養メラノサイトを含有する細胞懸濁液を注入し、(c)細胞移植後7日以上経過後に、当該チャンバーの上底部を切断することにより筒部を全面開口せしめ、次いで、(d)チャンバーを脱離することを特徴とするヒト皮膚組織の構築方法により得られるヒト皮膚組織。
  2. チャンバーの上底部を少なくとも2回に分けて切断することにより筒部を全面開口せしめて再構成するものである、請求項1記載のヒト皮膚組織。
  3. 細胞移植後7〜10日目に、チャンバー筒部の断面積の6〜8割が開口するように上底部を切断し、それから7〜10日間放置した後、更に切断して、筒部を全面開口せしめて再構成するものである、請求項2記載のヒト皮膚組織。
  4. 上底部の一部を切断した後、当該切断部位に気体が通過可能な部材を取り付けて再構成するものである、請求項2又は3記載のヒト皮膚組織。
  5. チャンバーの免疫不全非ヒト動物の背部皮膚への埋植が縫合埋植であって、該チャンバー筒部を全面開口せしめた後、水分補給を行って再構成するものである、請求項1乃至4のいずれか1項記載のヒト皮膚組織。
  6. 14〜21日経過後にチャンバーを固定する縫合糸を切断し、当該チャンバーを自発的に脱離させるものである、請求項5記載のヒト皮膚組織。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項記載のヒト皮膚組織を保持する実験動物。
  8. 請求項7記載の動物を用いてメラノサイトに作用する物質をスクリーニングする方法。
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