JP2007311553A - 電気二重層キャパシタ用電解液及びそれを備えた電気二重層キャパシタ - Google Patents

電気二重層キャパシタ用電解液及びそれを備えた電気二重層キャパシタ Download PDF

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Abstract

【課題】燃焼の危険性が低く、電気二重層キャパシタの低温特性及び高率放電でのキャパシタ特性を改善することが可能な電気二重層キャパシタ用電解液、並びに該電解液を備えた電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】リン及び窒素を含有するカチオン部並びにアニオン部からなるイオン液体と、該イオン液体以外のリン化合物とを含有する電気二重層キャパシタ用電解液、並びに、該電解液と、正極と、負極とを備えた電気二重層キャパシタである。該電気二重層キャパシタ用電解液は、更に、非プロトン性有機溶媒及び/又は支持電解質を含有してもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、電気二重層キャパシタ用電解液及びそれを備えた電気二重層キャパシタに関し、特にカチオン部にリン及び窒素を含むイオン液体を含有し、発火・引火の危険性がなく安全な電気二重層キャパシタ用電解液に関するものである。
電気二重層キャパシタは、電極と電解質との間に形成される電気二重層を利用したコンデンサであり、電極表面において電解質から電気的にイオンを吸着するサイクルが充放電サイクルである点で、物質移動を伴う酸化還元反応のサイクルが充放電サイクルである電池とは異なる。このため、電気二重層キャパシタは、電池と比較して瞬間充放電特性に優れることに加え、化学反応を伴わないため、充放電を繰り返しても瞬間充放電特性が殆ど劣化しないこと、充放電時に充放電過電圧がないため、簡単で且つ安価な電気回路で足りること、更には、残存容量が分かり易いこと、-30〜90℃の広範囲の温度条件下に渡って耐久温度特性を有すること、無公害性であること等、電池に比較して優れた点が多い。そのため、電気二重層キャパシタは、メモリーバックアップ用等の小容量タイプから、電気自動車のパワーアシスト用等の中容量タイプ及び電力貯蔵用蓄電池の代替等の大容量タイプまで幅広く検討されている。
上記電気二重層キャパシタの電極と電解質との接触界面では、極めて短い距離を隔てて正・負の電荷が対向して配列し、電気二重層を形成している。従って、電解質は、電気二重層を形成するためのイオン源としての役割を担うため、電極と同様に、電気二重層キャパシタの基本特性を左右する重要な物質である。そして、該電解質としては、従来、水系電解液、非水電解液及び固体電解質等が知られている。
一方、1992年のWilkesらの報告以来、常温で液体であり、イオン伝導性に優れた物質として、イオン液体が注目を集めている。該イオン液体は、陽イオンと陰イオンが静電気的引力で結合しており、イオンキャリア数が非常に多く、更には粘度も比較的低いため、イオンの移動度が常温でも高く、従って、イオン伝導性が非常に高いという特性を有する。また、イオン液体は、陽イオンと陰イオンのみで構成されているため、沸点が高く、液体状態を保持できる温度範囲が非常に広い。更に、該イオン液体は、蒸気圧が殆どないため、引火性が低く、熱的安定性も非常に優れている(非特許文献1及び2参照)。これら様々な利点を有するため、イオン液体は、昨今、非水電解液2次電池や上記の電気二重層キャパシタの電解液への適用が検討されており(特許文献1及び2参照)、特に、電気二重層キャパシタの電解液にイオン液体を用いた場合には、イオン液体が電気二重層を形成するためのイオン源としても機能するため、別途支持電解質を添加する必要がないという利点もある。
特開2004−111294号公報 特開2004−146346号公報 J. Electrochem. Soc., 144 (1997) 3881 「イオン性液体の機能創成と応用」,エヌ. ティー. エス,(2004)
しかしながら、本発明者らが検討したところ、イオン液体は、常温で液体であるために通常有機基を含んでおり、燃焼の危険性があることが分った。また、粘度に関しても、電気二重層キャパシタの電解液としては比較的高く、イオン液体を電解液とした電気二重層キャパシタは、低温特性が不十分であったり、高率放電でのキャパシタ特性が不十分である等の問題があることが分った。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、燃焼の危険性が低く、電気二重層キャパシタの低温特性及び高率放電でのキャパシタ特性を改善することが可能な電気二重層キャパシタ用電解液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる電解液を備え、安全性が高く、低温特性及び高率放電特性に優れた電気二重層キャパシタを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、カチオン部にリン及び窒素を含むイオン液体を電解液に添加し、更に、該イオン液体の他に別途リン化合物を電解液に添加することで、電解液の燃焼の危険性を大幅に低減でき、更に、該電解液を電気二重層キャパシタに適用することで、電気二重層キャパシタの低温特性及び高率放電でのキャパシタ特性が大幅に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、リン及び窒素を含有するカチオン部並びにアニオン部からなるイオン液体と、該イオン液体以外のリン化合物とを含有することを特徴とする。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、更に、非プロトン性有機溶媒を含有することが好ましい。ここで、電解液中の非プロトン性有機溶媒の含有量は、10〜80体積%の範囲が好ましい。また、前記非プロトン性有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、アセトニトリル(AN)及びγ-ブチロラクトン(GBL)が好ましい。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、更に、支持電解質を含有することができる。ここで、電解液中の支持電解質の濃度は、1M(mol/L)以下であることが好ましい。また、前記支持電解質としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート[(C25)4N・BF4]及びトリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート[CH3(C25)3N・BF4]が好ましい。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液の好適例においては、前記イオン液体の含有量が10〜90体積%である。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液の他の好適例においては、前記リン化合物の含有量が5〜60体積%である。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液の他の好適例においては、前記イオン液体のカチオン部がリン−窒素間二重結合を有する。ここで、カチオン部にリン−窒素間二重結合を有するイオン液体としては、下記一般式(I):
(NPR1 2)n ・・・ (I)
[式中、R1は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR1は、下記一般式(II):
−N+2 3- ・・・ (II)
(式中、R2は、それぞれ独立して一価の置換基又は水素で、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、R2は互いに結合して環を形成してもよく;X-は一価のアニオンを表す)で表されるイオン性置換基であり;nは3〜15を表す]で表されるイオン液体が特に好ましい。また、前記一般式(I)中のnは、3又は4であることが好ましく、前記一般式(I)中のR1は、少なくとも一つが前記一般式(II)で表されるイオン性置換基で、その他がフッ素であることが好ましい。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液において、前記イオン液体以外のリン化合物は、下記一般式(III):
3 3P=O ・・・ (III)
[式中、R3はそれぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表す]で表されるリン酸エステル及びその誘導体、下記一般式(IV):
(NPR4 2)m ・・・ (IV)
[式中、R4はそれぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;mは3〜15を表す]で表される環状ホスファゼン化合物、並びに、下記一般式(V):
Figure 2007311553
[式中、R5は、それぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Y5は、それぞれ独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表し;Aは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を表す]で表される鎖状ホスファゼン化合物からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
また、本発明の電気二重層キャパシタは、上記電気二重層キャパシタ用電解液と、正極と、負極とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、カチオン部にリン及び窒素を含むイオン液体と、該イオン液体以外のリン化合物とを含有し、燃焼の危険性が低く、電気二重層キャパシタの低温特性及び高率放電でのキャパシタ特性を改善することが可能な電気二重層キャパシタ用電解液を提供することができる。また、かかる電解液を備え、安全性が高く、低温特性及び高率放電特性に優れた電気二重層キャパシタを提供することができる。
<電気二重層キャパシタ用電解液>
以下に、本発明の電気二重層キャパシタ用電解液を詳細に説明する。本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、リン及び窒素を含有するカチオン部並びにアニオン部からなるイオン液体と、該イオン液体以外のリン化合物とを含有することを特徴とする。本発明の電気二重層キャパシタ用電解液においては、イオン液体が、電気二重層を形成するためのイオン源として機能するため、別途支持電解質を添加する必要がない。また、本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、粘度が比較的低いため、キャパシタの低温特性を向上させることができ、更に、電解液中のイオンキャリア数が非常に多く、イオンの移動度が常温でも高く、イオン伝導性が非常に高いため、キャパシタの高率放電特性を向上させることもできる。また更に、本発明の電気二重層キャパシタ用電解液に含まれるイオン液体のカチオン部は、分解して、窒素ガスやリン酸エステル等を発生し、また、上記リン化合物は、分解して、リン酸エステル等を発生する。そのため、発生した窒素ガスの作用によって、電解液が燃焼する危険性が低減されると共に、発生したリン酸エステル等の作用によって、キャパシタを構成する高分子材料の連鎖分解が抑制されるため、キャパシタの発火・引火の危険性を効果的に低減することができる。更に、上記イオン液体のカチオン部及び/又は上記リン化合物がハロゲンを含む場合、万が一の燃焼時にはハロゲンが活性ラジカルの捕捉剤として機能し、電解液の燃焼の危険性を低減する。また更に、上記イオン液体のカチオン部及び/又は上記リン化合物が有機置換基を含む場合、燃焼時にセパレーター上に炭化物(チャー)を生成するため酸素の遮断効果もある。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液に用いるイオン液体は、少なくとも融点が50℃以下であり、融点が20℃以下であることが好ましい。また、該イオン液体は、カチオン部及びアニオン部からなり、該カチオン部及びアニオン部が静電気的引力で結合している。ここで、該イオン液体としては、カチオン部にリン−窒素間二重結合を有するイオン性化合物が好ましく、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物が更に好ましい。
上記一般式(I)の化合物は、リン−窒素間二重結合を複数有する環状ホスファゼン化合物の一種であるため、高い燃焼抑制効果を有すると共に、R1の少なくとも一つが上記式(II)のイオン性置換基であるため、イオン性を有する。
上記一般式(I)中のR1は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基であり、但し、少なくとも一つのR1は、上記一般式(II)で表されるイオン性置換基である。ここで、R1におけるハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられ、これらの中でも、フッ素が特に好ましい。また、R1における一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、アリールオキシ基、アリール基、カルボキシル基、アシル基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、プロポキシ基等や、二重結合を含むアリルオキシ基やビニルオキシ基等、更にはメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基等が挙げられ、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基等が挙げられ、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられる。なお、上記一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されていることが好ましく、該ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。
上記一般式(I)のnは、3〜15であり、原料物質の入手容易性の観点から、3〜4が好ましく、3が特に好ましい。
上記一般式(II)で表される置換基は、−NR2 3とXとが主として静電気的引力によって結合してなる。そのため、式(II)のイオン性置換基を有する式(I)の化合物は、イオン性を有する。
上記一般式(II)中のR2は、それぞれ独立して一価の置換基又は水素であり、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、R2は互いに結合して環を形成してもよい。ここで、R2における一価の置換基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、複数のR2が互いに結合して環を形成する場合において、3つのR2のいずれか2つが結合して形成する環としては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等のアザシクロアルカン環や、該アザシクロアルカン環のメチレン基がカルボニル基に置き換わった構造のアザシクロアルカノン環等が挙げられ、3つのR2が結合して形成する環としては、ピリジン環等が挙げられる。なお、上記一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素等で置換されていてもよい。
上記一般式(II)中のX-は一価のアニオンを表す。式(II)のX-における一価のアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -、(CF3SO2)2-、(C25SO2)2-、(C37SO2)2-、(CF3SO2)(C25SO2)N-、(CF3SO2)(C37SO2)N-、(C25SO2)(C37SO2)N-等が挙げられる。
上記式(I)のイオン性化合物において、R1は、少なくとも一つが上記式(II)のイオン性置換基であるが、イオン性化合物の不燃性の観点から、その他の少なくとも一つがフッ素であることが好ましく、その他の総てがフッ素であることが更に好ましい。
上記イオン性化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、下記一般式(VI):
(NPR6 2)n ・・・ (VI)
[式中、R6は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR6は塩素であり;nは3〜15を表す]で表される環状ホスファゼン化合物と、下記一般式(VII):
NR2 3 ・・・ (VII)
[式中、R2は、上記と同義である]で表される1級、2級又は3級のアミンとを反応させることで、下記一般式(VIII):
(NPR7 2)n ・・・ (VIII)
[式中、R7は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR7は、下記一般式(IX):
−N+2 3Cl- ・・・ (IX)
(式中、R2は上記と同義である)で表されるイオン性置換基であり;nは上記と同義である]で表されるイオン性化合物(即ち、上記一般式(I)で表され、上記一般式(II)中のX-がCl-であるイオン性化合物)を生成させることができる。
更に、上記一般式(VIII)で表されるイオン性化合物の塩素イオンは、適宜他の一価のアニオンと置換することができ、例えば、上記一般式(VIII)で表されるイオン性化合物と下記一般式(X):
+- ・・・ (X)
[式中、A+は一価の陽イオンを表し、X-は一価のアニオンを表す]で表される塩(イオン交換剤)とを反応(イオン交換反応)させることで、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物を生成させることができる。
なお、上記一般式(VI)で表される環状ホスファゼン化合物と上記一般式(VII)で表されるアミンとを単に混合するだけでも、上記一般式(VIII)で表されるイオン性化合物を生成させることができるが、生成した式(VIII)のイオン性化合物が不安定で単離が難しいことがあるため、水相及び有機相からなる二相系に、上記一般式(VI)で表される環状ホスファゼン化合物と、上記一般式(VII)で表されるアミンとを加え、反応させて、上記一般式(VIII)で表されるイオン性化合物を生成させることが好ましい。この方法では、式(VI)の環状ホスファゼン化合物及び式(VII)のアミンは有機相に主として存在し、一方、生成する式(VIII)の化合物はイオン性を有するため主として水相に存在する。そのため、水相と有機相とを分離した後、水相の水を公知の方法で乾燥させることで、式(VIII)のイオン性化合物を単離することができ、単離された式(VIII)のイオン性化合物は、大気下でも安定に存在する。なお、水系電解液に使用する場合は、式(VIII)のイオン性化合物を単離することなく、式(VIII)のイオン性化合物を含む水相をそのまま水系電解液として使用することもできる。
上記一般式(VI)において、R6は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR6は塩素である。ここで、式(VI)中のR6が塩素である部分に式(VII)のアミンが付加するため、出発物質である式(VI)の環状ホスファゼン化合物の骨格のリンに結合する塩素の数を調整することで、式(VIII)のイオン性化合物中の式(IX)で表されるイオン性置換基の導入数をコントロールすることができる。
上記一般式(VI)のR6において、ハロゲン元素としては、塩素の他に、フッ素、臭素等が好適に挙げられ、これらの中でも、塩素及びフッ素が好ましい。一方、R6における一価の置換基としては、R1における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができる。また、式(VI)において、nは3〜15であり、入手容易性の観点から、3〜4が好ましく、3が特に好ましい。
上記一般式(VI)で表される環状ホスファゼン化合物は、例えば、式(VI)中のR6が総て塩素である市販のホスファゼン化合物を出発物質として、総ての塩素をフッ素化剤によりフッ素化した後、目的とする塩素置換部位にアルコキシ基やアミン基等を導入した後、HClやホスゲン等の塩素化剤により再び塩素化を行う方法や、使用する式(VI)中のR6が総て塩素である市販のホスファゼン化合物に対して導入するフッ素の当量を計算した上で、必要量のフッ素化剤を添加する方法等で合成することができる。ここで、再塩素化における塩素化剤やフッ素化におけるフッ素化剤の使用量や反応条件を変えることで、式(VI)のR6における塩素数をコントロールすることができる。
上記一般式(VII)において、R2は、上記一般式(II)中のR2と同義で、それぞれ独立して一価の置換基又は水素であり、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、該R2は互いに結合して環を形成してもよい。式(VII)のR2における一価の置換基としては、式(II)のR2における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができ、また、式(VII)の3つのR2のいずれか2つが結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環としては、式(II)の3つのR2のいずれか2つが互いに結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環の項で例示したものを同様に挙げることができる。式(VII)で表されるアミンとして、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等の環状3級アミン、ジメチルアニリン等のジアルキル置換アニリンやピリジン等の芳香族3級アミン、アニリン等の芳香族1級アミン等が挙げられ、これらの中でも、3級アミンが好ましい。
上記一般式(VIII)において、R7は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR7は、上記一般式(IX)で表されるイオン性置換基である。R7におけるハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。なお、式(VII)のアミンの使用量等を調整することで、R7の一部を塩素とすることができる。一方、R7における一価の置換基としては、R1における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができる。また、式(VIII)中のnは3〜15であり、原料の入手容易性の観点から、3〜4が好ましく、3が特に好ましい。
上記一般式(IX)において、R2は、上記一般式(II)中のR2と同義で、それぞれ独立して一価の置換基又は水素であり、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、該R2は互いに結合して環を形成してもよい。式(IX)のR2における一価の置換基としては、式(II)のR2における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができ、また、式(IX)の3つのR2のいずれか2つが結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環としては、式(II)の3つのR2のいずれか2つが互いに結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環の項で例示したものを同様に挙げることができる。
式(VIII)のイオン性化合物の製造にあたって、式(VII)のアミンの使用量は、目的とするアミンの導入量に応じて適宜選択でき、例えば、式(VI)の環状ホスファゼン化合物中のR6における塩素1molあたり、1〜2.4molの範囲が好ましい。
また、式(VI)の環状ホスファゼン化合物と式(VII)のアミンとの反応における反応温度は、特に制限されるものではないが、20℃〜80℃の範囲が好ましく、室温でも十分に反応が進行する。また、反応圧力も特に限定されず、大気圧下で実施することができる。
上記水相及び有機相からなる二相系において、有機相に使用する有機溶媒としては、水に対して混和性が無く、式(VI)の環状ホスファゼン化合物と式(VII)のアミンを溶解できるものが好ましく、具体的には、クロロホルム、トルエン等の極性の低い溶媒が好ましい。また、上記水相及び有機相の使用量は、特に限定されるものではなく、水相の体積は、式(VI)の環状ホスファゼン化合物1mLに対して0.2〜5mLの範囲が好ましく、有機相の体積は、式(VI)の環状ホスファゼン化合物1mLに対して2〜5mLの範囲が好ましい。
上記一般式(X)において、A+は一価の陽イオンを表し、X-は一価の陰イオンを表す。式(X)のA+における一価の陽イオンとしては、Ag+、Li+等が挙げられる。また、式(X)のX-における一価の陰イオンとしては、Cl-以外の一価の陰イオン、具体的には、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -の他、(CF3SO2)2-、(C25SO2)2-、(C37SO2)2-、(CF3SO2)(C25SO2)N-、(CF3SO2)(C37SO2)N-、(C25SO2)(C37SO2)N-等のイミドイオンが挙げられる。ここで、A+がLi+である場合、X-としてはイミドイオンが好ましい。小さなイオン半径を有するLi+とは対照的に、上記イミドイオンは大きなイオン半径を有するため、陽イオンと陰イオンとのイオン半径の違いによる影響(ソフト・ハード塩基・酸の関係)で良好に反応し、置換反応が進むからである。一方、A+がAg+である場合は、ほぼ総ての陰イオンを使用することができる。式(X)の塩としてAg+-を使用した場合、AgClが沈降するため、不純物の除去も簡単に行うことができる。
式(I)のイオン性化合物の製造にあたって、式(X)の塩の使用量は、式(VIII)のイオン性化合物の塩素イオンの量に応じて適宜選択でき、例えば、式(VIII)のイオン性化合物の塩素イオン1molあたり、1〜1.5molの範囲が好ましい。
また、式(VIII)のイオン性化合物と式(X)の塩との反応における反応温度は、特に制限されるものではないが、室温〜50℃の範囲が好ましく、室温でも十分に反応が進行する。また、反応圧力も特に限定されず、大気圧下で実施することができる。
上記式(VIII)のイオン性化合物と式(X)の塩との反応は、水相で行うことが好ましい。なお、上記式(VIII)のイオン性化合物と、式(X)で表され且つA+がAg+である銀塩との反応では、副生成物として塩化銀が生成するが、該塩化銀は、水に対する溶解度が非常に低いため、反応を水相で行う場合、副生成物の分離が容易となる。上記水相の体積は、特に限定されるものではないが、式(VIII)のイオン性化合物1mLに対して2〜5mLの範囲が好ましい。
上記式(I)のイオン性化合物の製造方法は、通常水相で行われ、式(I)のイオン性化合物を水相から単離する場合は、水相の水を公知の方法で蒸発させればよい。なお、水系電解液に使用する場合は、式(I)のイオン性化合物を単離することなく、式(I)のイオン性化合物を含む水相をそのまま水系電解液として使用することもできる。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液に用いる上記イオン液体以外のリン化合物としては、上記一般式(III)で表されるリン酸エステル及びその誘導体、上記一般式(IV)で表される環状ホスファゼン化合物、並びに、上記一般式(V)で表される鎖状ホスファゼン化合物が好ましい。これらリン化合物は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。
上記一般式(III)で表されるリン酸エステル及びその誘導体において、R3は一価の置換基又はハロゲン元素である。該R3は、同一でも、異なってもよく、互いに結合して環を形成してもよい。ここで、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好ましく、これらの中でも、低粘度である点で、フッ素が最も好ましい。一方、一価の置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
式(III)のR3におけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等や、二重結合を含むアリルオキシ基等や、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基等が挙げられる。これらアルコキシ基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されていてもよく、フッ素で置換されていることが好ましい。これらの中でも、難燃性に優れ且つ低粘度である点で、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロエトキシ基、プロポキシ基が更に好ましい。
式(III)のR3におけるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基等が挙げられる。これらアリールオキシ基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されていてもよく、フッ素で置換されていることが好ましい。これらの中でも、難燃性に優れ且つ低粘度である点で、フェノキシ基、フルオロフェノキシ基が更に好ましい。
上記一般式(III)で表されるリン酸エステル及びその誘導体の中でも、式(III)中のR3の少なくとも一つがフッ素であるリン酸エステル誘導体が好ましい。ここで、式(III)中のR3の一つがフッ素であるリン酸エステル誘導体としては、フルオロリン酸ジメチル、フルオロリン酸ジエチル、フルオロリン酸エチレン、フルオロリン酸プロピレン、フルオロリン酸ジプロピル、フルオロリン酸ジブチル、フルオロリン酸ジフェニル、フルオロリン酸ジフルオロフェニル、フルオロリン酸メチル(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸エチル(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸プロピル(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸アリル(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸ブチル(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸フェニル(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸ビス(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸メチル(テトラフルオロプロピル)、フルオロリン酸エチル(テトラフルオロプロピル)、フルオロリン酸テトラフルオロプロピル(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸フェニル(テトラフルオロプロピル)、フルオロリン酸ビス(テトラフルオロプロピル)、フルオロリン酸メチル(フルオロフェニル)、フルオロリン酸エチル(フルオロフェニル)、フルオロリン酸フルオロフェニル(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸ジフルオロフェニル、フルオロリン酸フルオロフェニル(テトラフルオロプロピル)、フルオロリン酸メチル(ジフルオロフェニル)、フルオロリン酸エチル(ジフルオロフェニル)、フルオロリン酸ジフルオロフェニル(トリフルオロエチル)、フルオロリン酸ビス(ジフルオロフェニル)、フルオロリン酸ジフルオロフェニル(テトラフルオロプロピル)、フルオロリン酸フルオロエチレン、フルオロリン酸ジフルオロエチレン、フルオロリン酸フルオロプロピレン、フルオロリン酸ジフルオロプロピレン、フルオロリン酸トリフルオロプロピレン等が挙げられる。また、上記一般式(III)中のR3の二つがフッ素であるリン酸エステル誘導体としては、ジフルオロリン酸メチル、ジフルオロリン酸エチル、ジフルオロリン酸プロピル、ジフルオロリン酸ブチル、ジフルオロリン酸シクロへキシル、ジフルオロリン酸メトキシエチル、ジフルオロリン酸メトキシエトキシエチル、ジフルオロリン酸フェニル、ジフルオロリン酸フルオロエチル、ジフルオロリン酸ジフルオロエチル、ジフルオロリン酸トリフルオロエチル、ジフルオロリン酸フルオロプロピル、ジフルオロリン酸ジフルオロプロピル、ジフルオロリン酸トリフルオロプロピル、ジフルオロリン酸テトラフルオロプロピル、ジフルオロリン酸ペンタフルオロプロピル、ジフルオロリン酸フルオロイソプロピル、ジフルオロリン酸ジフルオロイソプロピル、ジフルオロリン酸トリフルオロイソプロピル、ジフルオロリン酸テトラフルオロイソプロピル、ジフルオロリン酸ペンタフルオロイソプロピル、ジフルオロリン酸ヘキサフルオロイソプロピル、ジフルオロリン酸ヘプタフルオロブチル、ジフルオロリン酸ヘキサフルオロブチル、ジフルオロリン酸オクタフルオロブチル、ジフルオロリン酸パーフルオロ-t-ブチル、ジフルオロリン酸へキサフルオロイソブチル、ジフルオロリン酸フルオロフェニル、ジフルオロリン酸ジフルオロフェニル、ジフルオロリン酸2-フルオロ-4-メチルフェニル、ジフルオロリン酸トリフルオロフェニル、ジフルオロリン酸テトラフルオロフェニル、ジフルオロリン酸ペンタフルオロフェニル、ジフルオロリン酸2-フルオロメチルフェニル、ジフルオロリン酸4-フルオロメチルフェニル、ジフルオロリン酸2-ジフルオロメチルフェニル、ジフルオロリン酸3-ジフルオロメチルフェニル、ジフルオロリン酸4-ジフルオロメチルフェニル、ジフルオロリン酸2-トリフルオロメチルフェニル、ジフルオロリン酸3-トリフルオロメチルフェニル、ジフルオロリン酸4-トリフルオロメチルフェニル、ジフルオロリン酸2-フルオロ-4-メトキシフェニル等が挙げられる。
上記一般式(IV)で表される環状ホスファゼン化合物において、R4は、一価の置換基又はハロゲン元素である限り特に制限はない。ここで、一価の置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げられ、これらの中でも、ホスファゼン化合物が低粘度となる点で、アルコキシ基及びアリールオキシ基が好ましい。一方、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられ、これらの中でも、フッ素が特に好ましい。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、また、上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基等が挙げられ、これらアルコキシ基及びアリールオキシ基の中でも、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシ基が特に好ましい。また、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ;上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられ;上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。これら一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されていることが好ましく、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられ、フッ素原子で置換された置換基としては、トリフルオロエトキシ基等が挙げられる。
式(IV)のmは、3〜15であり、電解液の低粘度化が可能で、電解液に優れた低温特性を付与することができる点で、3〜4が好ましく、3が更に好ましい。
上記一般式(V)で表される鎖状ホスファゼン化合物において、R5は、一価の置換基又はハロゲン元素である限り特に制限はなく、各R5は、同一でも、異なってもよい。ここで、一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げられ、これらの中でも、ホスファゼン化合物が低粘度となる点で、アルコキシ基が好ましい。一方、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等や、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基等が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基及びメトキシエトキシエトキシ基が好ましく、低粘度・高誘電率の観点から、メトキシ基及びエトキシ基が更に好ましい。また、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられ、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。これら一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されていることが好ましく、該ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素が好適であり、フッ素が最も好ましく、次いで塩素が好ましい。
式(V)のY5は、2価の連結基、2価の元素又は単結合である限り特に制限はなく、各Y5は、同一でも、異なってもよい。ここで、2価の連結基としては、CH2基の他、酸素、硫黄、セレン、窒素、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ランタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の連結基が挙げられ、電解液の発火・引火の危険性を効果的に低減する観点から、硫黄及び/又はセレンの元素を含む2価の連結基が好ましい。また、上記2価の元素としては、酸素、硫黄、セレン等が挙げられる。これらの中でも、式(V)のY5としては、単結合が好ましい。
式(V)のAは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基である限り特に制限はない。有害性、環境等への配慮の観点から、式(V)のAとしては、炭素、ケイ素、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基が好ましく、下記式(XI)、式(XII)又は式(XIII):
Figure 2007311553
Figure 2007311553
Figure 2007311553
[式(XI)、式(XII)及び式(XIII)中、R8、R9及びR10は、それぞれ独立に一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Y8、Y9及びY10は、それぞれ独立に2価の連結基、2価の元素又は単結合を表し;Zは2価の基又は2価の元素を表す]で表される置換基が更に好ましい。
式(XI)のR8、式(XII)のR9及び式(XIII)のR10としては、式(V)のR5で述べたのと同様の一価の置換基又はハロゲン元素がいずれも好適に挙げられる。また、式(XI)の2つのR8、並びに式(XIII)の2つのR10は、それぞれ同一でも、異なってもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(XI)のY8、式(XII)のY9及び式(XIII)のY10としては、式(V)のY5で述べたのと同様の2価の連結基又は2価の元素がいずれも好適に挙げられる。同様に、硫黄及び/又はセレンの元素を含む2価の連結基の場合には、電解液の発火・引火の危険性が大きく低減するため特に好ましい。また、Y8、Y9及びY10としては、単結合も好ましい。式(XI)の2つのY8、並びに式(XIII)の2つのY10は、それぞれ同一でも、異なってもよい。
式(XI)のZは、2価の基又は2価の元素である限り特に制限はない。ここで、2価の基としては、CH2基、CHR基(ここで、Rは、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基等を表す)、NR基の他、酸素、硫黄、セレン、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ランタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の基等が挙げられ;2価の元素としては、酸素、硫黄、セレン等が挙げられる。これらの中でも、式(XI)のZとしては、CH2基、CHR基、NR基の他、酸素、硫黄、セレンからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の基が好ましい。特に、硫黄及び/又はセレンの元素を含む2価の基の場合には、電解液の発火・引火の危険性が大幅に低減するため好ましい。
これら置換基としては、特に効果的に発火・引火の危険性を低減し得る点で、式(XI)で表されるようなリンを含む置換基が特に好ましい。また、置換基が式(XII)で表されるような硫黄を含む置換基である場合には、電解液の小界面抵抗化の点で特に好ましい。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、更に、非プロトン性有機溶媒を含有することができる。電解液に非プロトン性有機溶媒を含ませることで、電解液を低粘度化することができ、容易に電気二重層キャパシタとしての最適なイオン導電性を達成して、電気二重層キャパシタの低温特性及び高率放電特性を向上させることができる。ここで、該非プロトン性有機溶媒の含有量は、10〜80体積%の範囲が好ましい。非プロトン性有機溶媒の含有量が10体積%以上であれば、電解液を十分に低粘度化することができ、また、80体積%以下であれば、電解液の安全性を十分に確保することができる。
上記非プロトン性有機溶媒としては、アセトニトリル(AN)、プロピオノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物;1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル化合物;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジフェニルカーボネート、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン等のエステル化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン及びアセトニトリルが好ましい。なお、環状のエステル化合物は、比誘電率が高く、後述する支持電解質の溶解能に優れる点で好適であり、また、鎖状のエステル化合物及びエーテル化合物は、低粘度であるため電解液の低粘度化の点で好適である。これら有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液においては、上述のイオン液体が電気二重層を形成するためのイオン源として機能するため、別途支持電解質を添加する必要がないが、本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、更に支持電解質を含んでもよい。電解液に支持電解質を添加することで、電解液の導電率を向上させることができる。ここで、該支持電解質の濃度は、1.0M(mol/L)以下であることが好ましく、0.5M以下であることが更に好ましい。支持電解質の濃度が1.0Mを超えると、電解液の粘度が上昇し、電気伝導性等の電気特性が低下することがある。
上記支持電解質は、従来公知のものから選択することができ、該支持電解質として、具体的には、四級アンモニウム塩及び四級ホスホニウム塩等の四級オニウム塩を例示することができ、これら支持電解質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、電解液における電気伝導性等が良好な点で、四級アンモニウム塩が好ましい。上記四級オニウム塩は、電解液において、電気二重層を形成するためのイオン源としての役割を担う溶質であり、電解液の電気伝導性等の電気特性を効果的に向上させることが可能な点で、多価イオンを形成し得る四級オニウム塩が好ましい。
上記四級アンモニウム塩としては、例えば、(CH3)4N・BF4、(CH3)325N・BF4、(CH3)2(C25)2N・BF4、CH3(C25)3N・BF4、(C25)4N・BF4、(C37)4N・BF4、CH3(C49)3N・BF4、(C49)4N・BF4、(C613)4N・BF4、(C25)4N・ClO4、(C25)4N・AsF6、(C25)4N・SbF6、(C25)4N・CF3SO3、(C25)4N・C49SO3、(C25)4N・(CF3SO2)2N、(C25)4N・BCH3(C25)3、(C25)4N・B(C25)4、(C25)4N・B(C49)4、(C25)4N・B(C65)4等が好適に挙げられる。また、これらの四級アンモニウム塩の陰イオン部(例えば、・BF4、・ClO4、・AsF6等)を、・PF6で置き換えたヘキサフルオロリン酸塩も好ましい。これらの中でも、分極率を大きくすることで溶解度を向上させることができる点で、異なるアルキル基がN原子に結合した四級アンモニウム塩が好ましい。更に、上記四級アンモニウム塩としては、例えば、以下の化学式(a)〜(j):
Figure 2007311553
[式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を表わす]で表わされる化合物等も好ましい。これらの四級アンモニウム塩の中でも、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート[(C25)4N・BF4]及びトリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート[CH3(C25)3N・BF4]が特に好ましい。
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液において、上記イオン液体の含有量は、10〜90体積%の範囲が好ましい。電解液中の上記イオン液体の含有量が10体積%以上であれば、キャパシタの低温特性及び高率放電特性を十分に向上させつつ、電解液の安全性を十分に向上させることができる。また、本発明の電気二重層キャパシタ用電解液において、上記リン化合物の含有量は、5〜60体積%の範囲が好ましい。電解液中の上記リン化合物の含有量が5体積%以上であれば、電解液の安全性を十分に向上させることができる。
<電気二重層キャパシタ>
本発明の電気二重層キャパシタは、上記電解液と、正極と、負極とを備え、必要に応じて、セパレーター等の電気二重層キャパシタの技術分野で通常使用されている他の部材を備える。本発明の電気二重層キャパシタは、上述したイオン液体を含有する電解液を備えるため、安全性が高く、低温特性及び高率放電特性に優れる。
本発明の電気二重層キャパシタの正極及び負極としては、特に制限はないが、通常、多孔性炭素系の分極性電極が好ましい。該電極としては、通常、比表面積及びかさ比重が大きく、電気化学的に不活性で、抵抗が小さい等の特性を有するものが好ましい。上記多孔性炭素としては、活性炭等が好適に挙げられる。なお、本発明の電気二重層キャパシタの正極及び負極としては、上記多孔性炭素の他に、黒鉛を用いることもできる。
上記電極は、一般的には、活性炭等の多孔性炭素を含有し、必要に応じて導電剤や結着剤等のその他の成分を含有する。上記電極に好適に用いることができる活性炭の原料としては、特に制限はなく、例えば、フェノール樹脂の他、各種の耐熱性樹脂、ピッチ等が好適に挙げられる。耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ビスマレイミドトリアジン、アラミド、フッ素樹脂、ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂が好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記活性炭の形体としては、より比表面積を高くして、電気二重層キャパシタの静電容量を大きくする点から、粉末状、繊維布状等の形体が好ましい。また、これらの活性炭は、電気二重層キャパシタの静電容量をより高くする目的で、熱処理、延伸成形、真空高温処理、圧延等の処理がなされていてもよい。
上記電極に用いる導電剤としては、特に制限はないが、黒鉛、アセチレンブラック等が挙げられる。また、上記電極に用いる結着剤としては、特に制限はないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
本発明の電気二重層キャパシタは、上述した正極、負極、電解液の他に、セパレーター、集電体、容器等を備えるのが好ましく、更に通常電気二重層キャパシタに使用されている公知の各部材を備えることができる。ここで、セパレーターは、電気二重層キャパシタの短絡防止等を目的として、正負電極間に介在される。該セパレーターとしては、特に制限はなく、通常、電気二重層キャパシタのセパレーターとして用いられる公知のセパレーターが好適に用いられる。セパレーターの材質としては、例えば、微多孔性フィルム、不織布、紙等が好適に挙げられる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の不織布、薄層フィルム等が好適に挙げられる。これらの中でも、厚さ20〜50μm程度のポリプロピレン又はポリエチレン製の微孔性フィルムが特に好適である。
前記集電体としては、特に制限はなく、通常電気二重層キャパシタの集電体として用いられる公知のものが好適に用いられる。該集電体としては、電気化学的耐食性、化学的耐食性、加工性、機械的強度に優れ、低コストであるものが好ましく、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、導電性樹脂等の集電体層等が好ましい。
前記容器としては、特に制限はなく、通常電気二重層キャパシタの容器として用いられる公知のものが好適に挙げられる。該容器の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、導電性樹脂等が好適である。
本発明の電気二重層キャパシタの形態としては、特に制限はなく、シリンダ型(円筒型、角型)、フラット型(コイン型)等の公知の形態が、好適に挙げられる。これらの電気二重層キャパシタは、例えば、電気自動車や燃料電池自動車の主電源若しくは補助電源や、種々の電子機器、産業用機器、航空用機器等のメモリーバックアップ用や、玩具、コードレス用機器、ガス機器、瞬間湯沸し機器等の電磁ホールド用や、腕時計、柱時計、ソーラ時計、AGS腕時計等の時計用の電源等として用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(イオン液体合成例1)
水 5gとクロロホルム 5gからなる二相系を調製し、該二相系にトリエチルアミン 5mLと、上記一般式(VI)で表され、式中のnが3であって、6つのR6のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。該二相系をスターラーで撹拌すると、反応に伴って発熱が観測された。3分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ白色結晶が生成し、更に減圧乾燥して白色結晶 5.2g(収率 53%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgBF4 1.1gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体A 1.65g(収率 78.9%)を得た。得られたイオン液体Aを、重水に溶解させて1H-NMRで分析し、更にDMSOに溶解させて31P-NMRで分析したところ、該イオン液体Aは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ1つが−N+(CH2CH2)3BF4 -であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図1に、31P-NMRの結果を図2に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2007311553
(イオン液体合成例2)
水 5gとクロロホルム 5gからなる二相系を調製し、該二相系にN-メチル-2-ピロリドン 5mLと、上記一般式(VI)で表され、式中のnが3であって、6つのR6のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。該二相系をスターラーで撹拌すると、反応に伴って発熱が観測された。3分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ白色結晶が生成し、更に減圧乾燥して白色結晶 3.6g(収率 35.7%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgBF4 2.3gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体B 1.21g(収率 53.3%)を得た。得られたイオン液体Bを、重水に溶解させて1H-NMRで分析し、更にDMSOに溶解させて31P-NMRで分析したところ、該イオン液体Bは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ1つが上記一般式(II)で表されるイオン性置換基で、式(II)中のX-がBF4 -で、R2の一つがメチル基で、他の二つのR2が互いに結合して窒素原子と共に2-アザシクロペンタノン環を形成しているイオン性化合物であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図3に、31P-NMRの結果を図4に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2007311553
(イオン液体合成例3)
AgBF4の代わりにAgPF6を用いる以外は上記イオン液体合成例1と同様にして、イオン液体Cを得た。得られたイオン液体Cを1H-NMR及び31P-NMRで分析し、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ1つが−N+(CH2CH2)3PF6 -である化合物であることを確認した。
(イオン液体合成例4)
水 15mLとクロロホルム 15mLからなる二相系を調製し、該二相系にアニリン5mLと、上記一般式(VI)で表され、式中のnが3であって、6つのR6のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。その後、該二相系を冷却しながら撹拌すると、クロロホルム相に白色結晶が沈殿した。常温に戻して撹拌すると該白色結晶は消えた。なお、クロロホルム相は、反応前は無色であったが、反応後は白濁した。ピペットを用いて水相を採取し、エバポレートした後、真空ポンプを用いて水を留去したところ、白色結晶 4.8g(収率 54%)を得た。次に、得られた白色結晶 2.8g及びAgPF6 2.0gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体D 1.8g(収率 70%)を得た。得られたイオン液体Dを、重水に溶解させて1H-NMRで分析し、更にDMSOに溶解させて31P-NMRで分析したところ、該イオン液体Dは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ一つが−N+265PF6 -であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図5に、31P-NMRの結果を図6に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2007311553
(イオン液体合成例5)
水 15mLとクロロホルム 15mLからなる二相系を調製し、該二相系にジメチルアニリン5mLと、上記一般式(VI)で表され、式中のnが3であって、6つのR6のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。その後、該二相系を冷却しながら撹拌すると、クロロホルム相に白色結晶が沈殿した。常温に戻して撹拌すると該白色結晶は消えた。なお、クロロホルム相は、反応前は無色であったが、反応後は白濁した。ピペットを用いて水相を採取し、エバポレートした後、真空ポンプを用いて水を留去したところ、白色結晶 5.1g(収率 52%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgPF6 2.8gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体E 1.6g(収率 63%)を得た。得られたイオン液体Eを、重水に溶解させて1H-NMRで分析し、更にDMSOに溶解させて31P-NMRで分析したところ、該イオン液体Eは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ一つが−N+(CH3)265PF6 -であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図7に、31P-NMRの結果を図8に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2007311553
(実施例1〜32及び比較例6)
表1及び表2に示す配合の非水電解液を調製した。なお、表1及び表2中、イオン液体FはN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート[関東化学社製]であり、ホスファゼンAは、上記式(IV)において、nが3であって、6つのR4のうち1つがエトキシ基で、残りの5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物であり、ホスファゼンBは、上記式(IV)において、nが3であって、6つのR4のうち1つがフェノキシ基で、残りの5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物であり、ホスファゼンCは、上記式(IV)において、nが3であって、6つのR4のうち1つが塩素で、残りの5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物であり、ホスファゼンDは、上記式(IV)において、nが3であって、6つのR4のうち2つが塩素で、残りの4つがフッ素である環状ホスファゼン化合物であり、ホスファゼンEは、上記式(V)において、Aが上記式(XI)で表される置換基であり、3つのY55及び2つのY88のうち1つがエトキシ基で、残りの4つがフッ素である鎖状ホスファゼン化合物であり、TEABF4はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート[Et4N・BF4]を示し、TEMABF4はトリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート[MeEt3N・BF4]を示し、PCはプロピレンカーボネートを示し、ANはアセトニトリルを示し、GBLはγ-ブチロラクトンを示し、リン酸エステルAはフルオロリン酸ビス(トリフルオロエチル)[(C223O)2FP=O]であり、リン酸エステルBはジフルオロリン酸テトラフルオロプロピル[(C334O)F2P=O]である。次に、得られた電解液に対して、下記の方法で安全性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
(1)電解液の安全性
UL(アンダーライティングラボラトリー)規格のUL94HB法をアレンジした方法で、大気環境下において着火した炎の燃焼挙動から電解液の安全性を評価した。その際、着火性、燃焼性、炭化物の生成、二次着火時の現象についても観察した。具体的には、UL試験基準に基づき、不燃性石英ファイバーに電解液 1.0mLを染み込ませて、127mm×12.7mmの試験片を作製して行った。ここで、試験炎が試験片に着火しない場合(燃焼長:0mm)を「不燃性」、着火した炎が25mmラインまで到達せず且つ落下物にも着火が認められない場合を「難燃性」、着火した炎が25〜100mmラインで消火し且つ落下物にも着火が認められない場合を「自己消火性」、着火した炎が100mmラインを超えた場合を「燃焼性」と評価した。
<電気二重層キャパシタの作製>
次に、活性炭[AC, 商品名:Kuractive-1500、クラレケミカル社製]、アセチレンブラック(導電剤)及びポリフッ化ビニリデン(結着剤)を、それぞれ、質量比(活性炭:導電剤:結着剤)で8:1:1となるように混合して、混合物を得た。得られた混合物の100mgを採取し、これを20mmφの耐圧カーボン製容器に入れて、圧力150kgf/cm2、常温の条件下で圧粉成形し、正極及び負極(電極)を作製した。得られた電極(正極及び負極)と、アルミニウム金属板(集電体, 厚み=0.5mm)と、ポリプロピレン/ポリエチレン板(セパレーター, 厚み=25μm)とを用いてセルを組み立て、真空乾燥によって十分に乾燥させた。該セルを上記電解液で含浸し、電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタの低温特性及び高率放電特性を下記の方法で測定した。結果を表1及び表2に示す。
(2)電気二重層キャパシタの低温特性
得られた電気二重層キャパシタについて、20℃及び-10℃のそれぞれの環境下でキャパシタ放電容量を測定し、その容量の比、即ち:
(-10℃での容量)/(20℃での容量)×100(%)
の値で評価した。この値が大きい程、低温特性が良好といえる。
(3)電気二重層キャパシタの高率放電特性
得られた電気二重層キャパシタについて、1C及び5Cのそれぞれの時間率下でのキャパシタ放電容量を測定し、その容量の比、即ち:
(5C容量)/(1C容量)×100(%)
の値で評価した。つまり、この値が大きい程、高率放電特性が良好といえる。ここで、1Cとは、作製したキャパシタの満容量を1/1時間(60分)で放電する条件を示し、5Cとは、作製したキャパシタの満容量を1/5時間(12分)で放電する条件を示す。
Figure 2007311553
Figure 2007311553
表1及び表2から明らかなように、カチオン部にリン及び窒素を含むイオン液体と、該イオン液体以外のリン化合物を含有する電解液は、安全性が非常に高く、更に、該電解液を電気二重層キャパシタに用いることで、キャパシタの低温特性及び高率放電特性を改善できることが分る。
イオン液体合成例1で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例1で得られた生成物の31P-NMRの結果である。 イオン液体合成例2で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例2で得られた生成物の31P-NMRの結果である。 イオン液体合成例4で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例4で得られた生成物の31P-NMRの結果である。 イオン液体合成例5で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例5で得られた生成物の31P-NMRの結果である。

Claims (15)

  1. リン及び窒素を含有するカチオン部並びにアニオン部からなるイオン液体と、該イオン液体以外のリン化合物とを含有する電気二重層キャパシタ用電解液。
  2. 更に、非プロトン性有機溶媒を含有することを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  3. 更に、支持電解質を含有することを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  4. 前記イオン液体の含有量が10〜90体積%であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  5. 前記リン化合物の含有量が5〜60体積%であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  6. 前記非プロトン性有機溶媒の含有量が10〜80体積%であることを特徴とする請求項2に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  7. 前記支持電解質の濃度が1M以下であることを特徴とする請求項3に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  8. 前記イオン液体のカチオン部がリン−窒素間二重結合を有することを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  9. 前記イオン液体が、下記一般式(I):
    (NPR1 2)n ・・・ (I)
    [式中、R1は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR1は、下記一般式(II):
    −N+2 3- ・・・ (II)
    (式中、R2は、それぞれ独立して一価の置換基又は水素で、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、R2は互いに結合して環を形成してもよく;X-は一価のアニオンを表す)で表されるイオン性置換基であり;nは3〜15を表す]で表されることを特徴とする請求項8に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  10. 前記一般式(I)中のnが3又は4であることを特徴とする請求項9に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  11. 前記一般式(I)中のR1は、少なくとも一つが前記一般式(II)で表されるイオン性置換基で、その他がフッ素であることを特徴とする請求項9に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  12. 前記リン化合物が、下記一般式(III):
    3 3P=O ・・・ (III)
    [式中、R3はそれぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表す]で表されるリン酸エステル及びその誘導体、下記一般式(IV):
    (NPR4 2)m ・・・ (IV)
    [式中、R4はそれぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;mは3〜15を表す]で表される環状ホスファゼン化合物、並びに、下記一般式(V):
    Figure 2007311553
    [式中、R5は、それぞれ独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Y5は、それぞれ独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表し;Aは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、硫黄、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を表す]で表される鎖状ホスファゼン化合物からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  13. 前記非プロトン性有機溶媒が、プロピレンカーボネート、アセトニトリル及びγ-ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  14. 前記支持電解質が、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート及びトリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレートからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項3に記載の電気二重層キャパシタ用電解液。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ用電解液と、正極と、負極とを備えた電気二重層キャパシタ。
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