次に、図面を参照して、本発明の第1乃至第6の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る発光体は、所定の波長の光を発する光源1と、この光源1をほぼ完全に覆うバルク型レンズ20とから少なくとも構成されている。そして、このバルク型レンズ20は、外側頂部(出射面)3、底部及び光軸に平行方向の側面からなる外周部を有するバルク型(砲弾型)のレンズ媒体4と、この底部から外側頂部3に向かってレンズ媒体4の内部に設けられた光軸に平行方向の面からなる側壁部を有する井戸型の凹部からなる収納部6とから構成されている。レンズ媒体4の内部に設けられた収納部6を構成する凹部の天井部(凹部天井部)が主入射面(第1のレンズ面の主入射面)2、レンズ媒体4の頂部(外側頂部)が出射面(第2のレンズ面)3として機能する。そして、収納部6の内部に光源1が完全に収納される。
第1のレンズ面(2,5)は、第1の湾曲面からなる主入射面2と第1の湾曲面とは曲率の異なる側壁入射面5とから構成されている。収納部6は、第1の湾曲面からなる凹部天井部2と、凹部を構成すべくこの凹部天井部2に連続して形成された凹部側壁部(側壁入射面)5とから構成されている。主入射面2から入射した光は、第2のレンズ面3、即ち、第2の湾曲面からなる出射面3から出力する。レンズ媒体4の主入射面2と出射面3とを接続する部分は、光伝送部として機能するので、光源から発せられた光の波長に対して透明な材料からなる必要が有る。
図1の光源1は、第1のピン11に一体的に接続された基台の上に配置されたLEDチップ13と、このLEDチップ13を被覆する封止樹脂14と、第1のピン11と対をなす第2のピン12とから少なくとも構成された樹脂モールドされたLEDである。この樹脂モールドされたLED1の主発光部の頂部は、図1に示すように、凸形状の湾曲面を有している。この様に封止樹脂14の頂部近傍が凸形状の湾曲面をなすことにより、LEDチップ13からの光は、所定の発散角で図1の右方向に出力する。
凸形状の湾曲面部を除けば、樹脂モールドされたLED1は、例えば、直径(外径)2rLED=2〜3mmφの円柱形状である。バルク型レンズ20の収納部6の側壁部は、樹脂モールドされたLED1の主発光部を収納出来るように、直径(内径)2ri=2.5〜4mmφの円筒形状となっている。図示を省略しているが、LED1とバルク型レンズ20とを固定するために、LED1とバルク型レンズ20の収納部6との間には、厚さ0.25〜0.5mm程度のスペーサが挿入されている。即ち、LED1の外径2rLEDと、収納部6の内径2riとは、ほぼ同一で且つ僅かに、LED1の外径2rLEDの方が小さく設定されている。スペーサは、LED1の主発光部を除く位置、即ち、図1において、LEDチップ13の底面より左方に配置すれば良い。バルク型レンズ20は、凸形状の第2の湾曲面からなる出射面を有する外側頂部3を除けば、ほぼLED1と同様な円柱形状である。このバルク型レンズ20の円柱形状部分の直径(外径)2reは、10〜30mmφである。バルク型レンズ20の直径(外径)2reは、本発明の第1の実施の形態に係る発光体の使用目的に応じて選択出来る。したがって、10mmφ以下でも、30mmφ以上でも構わない。しかしながら、より集光効率を高くするためには、
10ri > re > 3ri ・・・・・(4)
の関係を満足することが好ましい。バルク型レンズ20の直径(外径)2reが、収納部6の内径2riの10倍以上でも、本発明のバルク型レンズは、機能するが、必要以上に大きくなり、小型化を目的とする場合は好ましくない。
一般には、LED1の封止樹脂14の凸形状の湾曲面以外のところから出る光は、いわゆる迷光成分となり、照明には寄与しない。しかし、(4)式を満足する幾何学的形状を有するバルク型レンズ20においては、凸形状の湾曲面以外のところから出た光からなる迷光成分が、100%に近い集光効率で、有効に照明に寄与出来るようになる。即ち、第1の湾曲面からなる主入射面(凹部天井部)2以外の収納部6の側壁部(凹部側壁部)5も、有効な光の入射面(側壁入射面)として機能し得るのである。又、LED1とバルク型レンズ20の収納部6との間にはそれぞれの界面で反射した光の成分が多重反射し、迷光成分となっている。従来公知のレンズ等の光学系では、これらの迷光成分は、照明に寄与出来るように取り出すことは出来ない。しかし、これらの迷光成分も、本発明の第1の実施の形態においては、収納部6の内部に閉じこめられ、凹部側壁部(側壁入射面)5を介して入射出来るので、最終的には、照明に寄与出来る成分となり得る。(4)式を満足するように、十分厚い側壁部を有して幾何学的構造が設計することにより、外周部に反射鏡を用いなくても、凹部側壁部5から入力した光が、バルク型レンズ20の外周部からそのまま出力(漏洩)するのが防止出来る。勿論、凹部側壁部5に垂直に入射した光は外周部から漏洩するであろう。しかし、凹部側壁部5に、ある入射角で入射した光はスネルの法則で決まる屈折角で屈折する。収納部6の側壁部に位置するレンズ媒体4の厚さが厚くなると、レンズ媒体4の外周部から漏洩する成分は減少する。そして、(4)式を満足する幾何学的形状になると、レンズ媒体4の外周部から漏洩する成分はほとんど無視出来るようになるためと考えられる。特に、樹脂封止されたLEDでは凸形状の湾曲面以外のところから出た光の内、凹部側壁部5に垂直に入射する成分は少ないので、(4)式を満足する幾何学的形状になると、レンズ媒体4の外周部から漏洩する成分はほとんど無視出来るようになるためと考えられる。この結果、封止樹脂14の形状等の光の取り出し効率や、光学系相互の反射成分等に依存せず、ほぼ、内部量子効率に近い効率で、潜在的なLEDチップ13の光エネルギを有効に取り出すことが可能となる。
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20を用いた場合の、光軸方向に対して垂直方向に光強度(照度)分布を測るための測定系を示す模式図である。バルク型レンズ20の出射面からの出力光の強度(照度)を、LED1からの測定距離x=一定とし、照度計102をy軸方向に移動して測定する。測定距離(x)は、光軸方向に測る。一方、図2(b)は、同様な測定を、従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101を用いて行う場合の構成を示す図である。図2(a)及び図2(b)に示す測定においては、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20の外径は30mmφとし、比較に用いた従来の薄型レンズ(両凸レンズ)101の外径は、この2倍強の63mmφとした。以下の説明で分かるように、薄型レンズ101の外径を2倍強の直径にしても、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20と同程度の光学的特性を得ることが出来ない。薄型レンズ101は、焦点距離190mmのものを用い、LED1からx方向に150mmの位置に配置した。又、図2(b)に示した従来の光学系では、図示した器具以外に、レンズホルダー等や駆動装置等の付加的な器具が必要で、調整が煩雑であるが、図2(a)に示す本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20では、簡単な構成で光路の拡大、収束等が実現出来る。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20、薄型レンズ101、及びバルク型レンズを用いない裸のLEDのそれぞれの出力光のy方向に沿った強度(照度)分布を、測定距離x=1mにおいて測定した場合の結果を示す図である。本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20が、薄型レンズ101の2倍の照度が得られることが分かる。
図4は、図3と同様なy方向に沿った強度(照度)分布を、測定距離xを変化させて測定したデータをまとめたものである。図4の横軸は、測定距離xの逆数の2乗、即ち1/x2を示し、縦軸は、測定距離xにおける最大強度(ピーク強度)を示す。図4に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20の場合は、逆2乗則、即ち1/x2を示す線上にきれいに測定点がプロットされる。一方、薄型レンズ101の場合は、逆2乗則からずれていることが示されている。即ち、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20の場合は、出力光のビームの平行性が良好であるが、薄型レンズ101の場合は、ビームが平行でないため、逆2乗則からずれていることが分かる。他の焦点距離の両凸レンズを用い、LED1と薄型レンズ101との間の距離を変えても、同様である。直径無限大の両凸レンズを用いれば可能かも知れないが、現実的ないかなる薄型レンズ101を用いても、図2(a)に示すようなコンパクトな配置で、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20と同様な結果を得ることは不可能である。単純な幾何光学から、従来の薄型レンズ101では、顕微鏡に用いるような極めて焦点距離の小さな凸レンズを用いないと、LED1に薄型レンズ101を近づけることは不可能である。しかし、この様に薄型レンズ101をLED1に近づけると、集光効率が低下する。集光効率を良するために、大きな短焦点レンズを用意すると、レンズが厚く、且つ大きくなるため実質的に、LED1と、薄型レンズ101の中心との距離を短く出来なくなる。結局、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20と同様な結果を得るためには、極めて巨大且つ複雑な光学系が必要であると結論出来る。つまり、従来の「両凸レンズ」、「平凸レンズ」、「メニスカス凸レンズ」、「両凹レンズ」、「平凹レンズ」、「メニスカス凹レンズ」等の薄型レンズでは、直径が無限大の大型レンズを用いなければ、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20と等価な機能を達成出来ない。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20の幾何学的構造と集光率の関係を示す図である。ここで「集光率」とは、「バルク型レンズ20からの±1°以内の発散角における出力光の光量」を、「光源(LED)からの±15°以内の発散角における光量」で除した量で定義している。図5から、第2のレンズ面(第2の湾曲面)3の曲率半径をR、バルク型レンズ20の全長をLとすると、集光率を向上するためには、上述した(1)式及び(2)式を満足することが好ましいことが分かる。ここで、nは、バルク型レンズ20の屈折率である。なお、バルク型レンズ20の円柱形状部分の半径reと、第2の湾曲面の曲率半径をRとは、必ずしも等しい必要はない(一般にはre≦Rとなる。)。
図6は、図5に示した各バルク型レンズ20の幾何学的構造、即ち、それぞれの第2の湾曲面の曲率半径R、バルク型レンズ20の全長L、第1及び第2のレンズ面間の距離D、収納部6の内径ri及び、第1のレンズ面のなす凸部の高さΔを示す表である。ここで、「第1のレンズ面のなす凸部の高さΔ」とは、図7で定義される第1のレンズ面の一部(凹部天井部)2に形成される凸部(第1の湾曲面)の突き出し量Δである。
図1に示すバルク型レンズ20は、スムーズな凹形状の第1のレンズ面(2,5)、及び凸形状の第2のレンズ面3を有していた。しかし、図1は例示であり、第1のレンズ面(2,5)及び第2のレンズ面3は、目的に応じて、種々の形状が採用可能である。そして、第1のレンズ面のなす凸部の高さΔは正の値も負の値も取り得るのである。又、Δ=0でも良い。ここでは、図7に示すように、第1のレンズ面(2,5)の一部(凹部天井部)2が凸形状の場合をΔの正方向に定義する。
図8(a)〜8(c)、図9(a)〜9(c)、及び図10(a)〜10(c)は、図7に示した凸部の高さΔと、ビーム強度プロファイルとの関係を示す図である。測定に用いたバルク型レンズ20の円柱形状部分の外径2reは15mm、バルク型レンズ20の全長Lは、25mm、第1のレンズ面の一部(凹部天井部)2と第2のレンズ面3との間の距離Dは16mm、収納部6の内径2riは5.2mm、バルク型レンズ20の屈折率nは1.54である。このバルク型レンズ20の第2のレンズ面3の曲率半径Rは、8.25mmである。又、測定に用いた樹脂モールドされたLED1の外形は5mmである。そして、図11は、図8(a)〜8(c)、図9(a)〜9(c)、及び図10(a)〜10(c)の結果から求めた凸部の高さΔと、測定距離1mにおける±15cmの範囲内の照射面積における照度の平坦度との関係を示す図である。ここで照度の平坦度は、
((最大値)−(最小値))/(平均値) ・・・・・(5)
で定義される。バルク型レンズ20の外径2re=15mmの場合は、
0.2mm < Δ <0.6mm ・・・・・(6)
が、照度の平坦度を良好にするために好ましいことが分かる。より一般的には、上述した(3)式を満足するように凸部の高さΔと外周部の外径2reとを選定すれば良い。
図12は、本発明のバルク型レンズ20の外径2reを10mmφ、15mmφ、30mmφと変えたときの測定距離x=0.5mにおける照度分布を示す。バルク型レンズ20の外径2reが大きくなるに従い、相対照度が大きくなることが示されている。
図13は、図12の測定を更に詳細に行い、その結果を、バルク型レンズ20の内側壁部と外側壁部の間の厚さを横軸に、相対照度(任意目盛り)を縦軸に示したものである。内側壁部と外側壁部の間の厚さが厚くなるに従い、相対照度が明るくなることを示している。
図14は、バルク型レンズ20の外径/内径比を横軸に、相対照度(任意目盛り)を縦軸に示したものである。外径/内径比が大きくなるに従い、相対照度が明るくなることを示している。特に、外径/内径比が2.5以上で、顕著にその増大効果が認められる。外径/内径比が10以上になると、その増大効果が飽和の傾向にあることが分かる。現実のLEDの外径を考慮すれば、外径/内径比が10以上のバルク型レンズ20は必然的に大口径化する。しかし、大口径化のバルク型レンズ20は、レンズ媒体4に気泡が入りやすくなり、或いはクラックが入りやすくなり、製造技術上困難性を伴う。又、装置の小型化の点からも望ましくない。したがって、図14を考慮すると、外径/内径比が3以上、10以下が、バルク型レンズ20として好ましいことが分かる。
図15は、外径2re=15mmφのバルク型レンズ20の収納部6に、樹脂モールドされたLED1を収納した場合において、バルク型レンズ20の背面部及び外側壁部に背面鏡を付した場合と、背面鏡がない場合のそれぞれの出力光のy方向に沿った強度(照度)分布とを比較する図である。図15では、測定距離x=1mにおいて測定している。樹脂モールドされたLED1を、バルク型レンズ20の収納部6に収納した場合では、背面鏡の有り、無しで、照度がほとんど変わらないことが分かる。即ち、バルク型レンズ20では、内側壁部と外側壁部の間のバルク型レンズ20の厚さを、図13の関係に示すように十分厚く選定することにより、その構造上、レンズ媒体4の外周部及び底部に背面鏡を用いなくても、迷光成分がレンズ媒体4の外周部を透過して外部にリークすることはほとんどない。そして、これらの側壁入射面から入射した光は、最終的に有効な照明成分としてバルク型レンズ20の出射面から出射していることが分かる。つまり、バルク型レンズ20はレンズ媒体4の外周部や底部に反射鏡を用いなくても、LED1の迷光成分をほぼ完全に(100%に近い集光効率で)第2のレンズ面3から効率良く出力する構造であることが分かる。つまり、図15は、本発明の第1の実施の形態に係るバルク型レンズ20では、側壁部を十分厚くすれば、レンズ媒体4の外周部や底部での背面鏡は意味がないということである。「100%に近い集光効率」というのは、凹部側壁部5に垂直に入射した光は外周部から漏洩するであろうからである。しかし、凹部側壁部5に、樹脂封止されたLED1の構造で決まるそれぞれの入射角で入射した光は、レンズ媒体4の内部でスネルの法則で決まる屈折角で屈折する。収納部6の側壁部に位置するレンズ媒体4の厚さが厚くなると、図13及び図14に示すように、レンズ媒体4の外周部から漏洩する成分は減少して、逆に、第2のレンズ面3から効率良く出力する成分が増大してゆく。そして、(4)式を満足する幾何学的形状になると、レンズ媒体4の外周部から漏洩する成分はほとんど無視出来るようになる。特に、樹脂封止されたLED1では、その構造上、凸形状の湾曲面以外のところから出た光の内、凹部側壁部5に垂直に入射する成分は、他の迷光成分に比し相対的に少ないので、(4)式を満足する幾何学的形状になると、レンズ媒体4の外周部から漏洩する成分はほとんど無視出来、100%に近い集光効率で第2のレンズ面3から効率良く出力するようになると推定出来る。このため、図15に示すように、樹脂モールドされたLED1の場合では、背面鏡の有り、無しで、照度がほとんど変わらないという結果が得られたと考えられる。
本発明の第1の実施の形態に係るLED1は、第1の屈折率n1を有したエポキシ樹脂等の透明材料でモールドされている。そして、バルク型レンズ20は、第1の屈折率n1とは異なる第2の屈折率n0を有する空気を介してLED1を収納している。空気以外の流体若しくは流動体を介してLED1を収納部6に収納しても良い。LED1から発せられる光の波長に対して透明な気体若しくは液体であれば、種々の「流体」が使用可能である。収納部6のLED1とバルク型レンズ20との間に、スペーサオイル等の使用も可能である。又、「流動体」としての種々のゾル状、コロイド状若しくはゲル状の透明物質が使用出来る。又、バルク型レンズ20は、第2の屈折率n0とは異なる第3の屈折率n2を有するようにすれば良い。第1の屈折率n1、第2の屈折率n0、及び第3の屈折率n2を、それぞれ最適な値に選定することにより、LEDチップ13からの光を収束させることも分散させることも可能である。又、バルク型レンズ20の光伝送部の有する第3の屈折率n2を次第に大きく、若しくは、次第に小さくするようにして光路設計をしても良い。
この様にして、本発明の第1の実施の形態に係る発光体によれば、樹脂モールドされたLED1の数を多数必要とすることなく、照明に寄与する光ビームとして所望の照射面積の光束を確保し、且つ所望の照度を簡単に得ることが出来る。この照度は従来公知のレンズ等の光学系では達成不可能な照度である。驚くことに、現在市販されているハロゲンランプを用いた細身の懐中電灯と同程度の照度がたった1個のLEDで実現出来たのである。この様に、本発明の第1の実施の形態に係る発光体によれば、従来の技術常識では全く予測出来ない照度を、図1に示すような簡単な構造で、実現出来る。
なお、本発明の第1の実施の形態に係る発光体に用いる樹脂モールドされたLED1としては、種々の色(波長)のLEDが使用可能である。但し、懐中電灯のような携帯用照明器具として用いる目的のためには、白色LEDが人間の目には自然であるので好ましい。白色LEDは種々の構造のものが使用出来る。例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3枚のLEDチップを縦に積層して構成しても良い。赤(R)、緑(G)及び青(B)の3枚のLEDチップを積層せず、同一平面レベルにおいて、点光源と見なせる程度に近接配置しても良い。この場合、封止樹脂14から、それぞれの色のLEDチップに対応し、合計6本のピンが導出されても良く、封止樹脂14の内部配線として、6本のピンを2本にまとめ、外部ピンとしては2本設けられた構造としても構わない。又、一方の電極(接地電極)を共通とすれば、外部ピンは4本で良い。いずれにせよ、赤(R)色、緑(G)色及び青(B)色の3枚のLEDチップの駆動電圧(駆動電流)を互いに独立に制御出来るようにしておけば、あらゆる色の混合(色合成)が可能であるので、白色光を得ることが出来る。更に、白色光以外の任意の色を、RGB各色の発光強度を制御した色合成により得ることも容易で、色合いの変化を楽しむことが可能である。
白色LEDを、図1に示す樹脂モールドされたLED1として用い、この白色LED1に対して所定電圧が印加出来るように電池ケースとこの電池ケースの中の電池(例えば単3電池)を収納すれば、ペンタイプの細身の懐中電灯(ペンライト)が完成する。この照明器具の電池の陽極及び陰極にそれぞれ、白色LED1の電極を接続する構造とすれば良いのである。この結果、簡単な構造で、製造単価の低い懐中電灯(携帯用照明器具)が提供出来る。或いは、RGB各色の発光強度の制御による色合成により得られた特定の色を用いた医療用のライト等の照明器具をも構成出来る。RGB各色の発光強度を制御した色合成により、可視光のスペクトル帯の任意の色を得ることが可能である。これらの照明器具は、長期間に渡る安定性と信頼性に優れ、特に、電力消費量が少ないため、電池の寿命が長いという従来予測出来なかった優れた特性を有する。
本発明の第1の実施の形態に係る発光体に用いるバルク型レンズ20としては、アクリル樹脂等の透明プラスチック材料、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等の種々のガラス材料等が使用可能である。或いは、ZnO、ZnS、SiC等の結晶性材料を用いても構わない。又、可とう性、屈曲性や伸縮性の有るゾル、ゲル、ゾル・ゲル混合物、或いは透明ゴムのような材料でも構わない。又、ゾル、ゲル、ゾル・ゲル混合物等を、透明ゴムやフレキシブルな透明プラスチック材料等に格納して用いても良い。内、アクリル樹脂等の透明プラスチック材料等は、バルク型レンズ20を大量生産するのに好適な材料である。即ち、一度金型を作り、この金型により成形加工すればバルク型レンズ20が簡単に大量生産出来る。
但し、単純な射出成形によれば、図1に示した井戸型の凹部6の天井部2の近傍に気泡の取り込み、巣の発生、スパイクや氷柱形状等の異常形状が発生することが分かった。本発明者の詳細な検討によれば、この様な異常形状の発生は、射出成形において、溶融した透明樹脂が冷却する際に樹脂が収縮し、井戸型の凹部6の天井部2の近傍が減圧状態になるためであることが判明した。例えば、ポリカーボネイトでは、1℃当たり約0.4%収縮するので、天井部2の近傍が減圧状態になる。したがって、良好な幾何学的形状のバルク型レンズ20を製造するためには、以下のようにすれば良い。
(イ)まず、バルク型レンズ20を製造するための成形金型を用意する。成形金型は、大きく分けて上半分の固定金型受け、下半分の可動金型受け、及び離型機構部に分けられる。固定金型受けの内部には、固定金型が嵌め込まれている。この固定金型は、バルク型レンズの外側頂部3及び外周部を成形するために固定金型成形面を有している。固定金型の中央部には、バルク型レンズ20の形成素材である透明樹脂を熱溶融した樹脂液が注入される湯口が設けられている。この湯口は樹脂液の供給機構に接続されており、熱溶融した透明樹脂が断続的に供給される。可動金型受けは、その内部に可動金型が嵌め込まれている。この可動金型は、バルク型レンズ20の収納部6を成形するため、収納部6の形状に対応した頂部が湾曲面からなる円柱形状の収納部成形面を有する雄型が設けられている。離型機構部は、内部に上下動する突出板が褶動自在に設けられ、突出板の端部には突出ピンが固着して、穴を貫通して可動金型内に通じている。この突出板の下部は、上下動機構に連結しており、突出ピンを突出させる時に、上方向に突出板を押し上げる。 そして、可動金型受けを固定金型受けに押し付けられ、完全に密着する。そして、所定の金型温度に加熱する。
(ロ)次に第1射出工程により、溶融した透明樹脂が、湯口から固定金型と可動金型で形成される空間に射出する。透明樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、アクリル、ABS,AB等の樹脂が使用可能である。例えば、ホッパーから投入したペレットを成形金型に隣接して配置したシリンダー内で、加熱及び剪断発熱により溶融させ、油圧モータ等をにより高圧で透明樹脂を湯口へ注入する。シリンダー内には、スクリューを設け、スクリューの回転により、材料を溶かしても良い。この樹脂射出時に、湯口が固定金型の中央部に設けられているため、バルク型レンズ20が成形される金型の空間の端部まで、万遍なく溶融した透明樹脂が充填される。
(ハ)樹脂射出後、第1冷却工程を行い、一定時間放置し、成形金型内で樹脂を冷却する。第1冷却工程は、樹脂が室温まで完全に冷却しない中間的な温度まで冷却する工程である。
(ニ)樹脂が冷却すると樹脂の膨張係数分隙間が出来る。第1冷却工程より、樹脂が途中の温度まで冷却したことによる隙間に対して、第2射出工程により再度溶融した透明樹脂を、再び湯口から射出する。
(ホ)第2射出工程による樹脂射出後、第2冷却工程を行い、一定時間放置し、成形金型内で樹脂を室温まで冷却する。
(ヘ)樹脂が室温まで冷却されると、成形金型内で固化したバルク型レンズ20を取り出す。例えば、固定金型受け側のコンプレッサーに連結された電磁弁を作動させ固定金型の環状スリットから、圧搾空気をバルク型レンズ20方向に噴出する(固定金型エアブロー)。そして、可動金型受けが離型機構部と一体となって下方向に下がる。この圧搾空気噴出により、バルク型レンズ20の収納部6が形成された底部は、固定金型受けの固定金型から容易に離型し、可動金型側に密着した状態で可動金型受けとともに下方向に下がっていく。
(ト)固定金型受けから離された可動金型受けは、可動金型受け側のコンプレッサーに連結された電磁弁が作動し、可動金型の環状スリットから、圧搾空気がバルク型レンズ20方向に噴出する(可動金型エアブロー)。これにより、バルク型レンズ20の収納部6と、可動金型の収納部成形面との間に空気の層ができ、バルク型レンズ20を破損することなく可動金型受けから離型される。又、この可動金型エアブローと同時に、突出板が上方に動き、突出ピンを可動金型の穴からバルク型レンズ20方向に突出させる。これにより、バルク型レンズ20が容易に可動金型21から離型されるのを補助し、且つ、可動金型の円柱形状の雄型からバルク型レンズ20を浮き上がらせて、バルク型レンズ20を成形金型から取り出し易くしている。
上記方法によれば、第1冷却工程により樹脂が室温まで完全に冷却しない中間的な温度まで冷却し、これにより樹脂が収縮して出来た隙間に、第2射出工程により再び透明樹脂を射出するので、井戸型の凹部6の天井部2の近傍が減圧状態になることが防止される。この結果、図1に示した井戸型の凹部6の天井部2の近傍に気泡の取り込みや異常形状の発生するのが防止出来、良好な幾何学的形状のバルク型レンズ20が形成出来る。
(第2の実施の形態)
図16に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る発光体は、所定の波長の光を発する光源1と、この光源1をほぼ完全に覆うバルク型レンズ20とから少なくとも構成されている。そして、このバルク型レンズ20は、外側頂部3、底部及び光軸に平行方向の側面からなる外周部を有するバルク型のレンズ媒体4と、この底部から外側頂部3に向かってレンズ媒体4の内部に設けられた光軸に平行方向の面からなる側壁部を有する井戸型の凹部からなる収納部6とから構成されている。レンズ媒体4の内部に設けられた、収納部6の天井部2と側壁部5とが入射面としての第1のレンズ面(2,5)、レンズ媒体の外側頂部3が出射面となる第2のレンズ面3として機能する。収納部6の内部に光源1が完全に収納される。
光源1は、例えば、最大部の直径(外径)2〜3mmφの沃素(I2)タングステンランプ(ハロゲンランプ)、即ち豆ランプ形状の白熱球である。バルク型レンズ20は、断面が図16に示すような弾丸型の形状である。バルク型レンズ20の収納部6の凹部側壁5の内径2riは、光源(白熱球)1の主発光部を収納出来るように、2ri=2.5〜4mmφの円筒形状となっている。図示を省略しているが、光源1とバルク型レンズ20とを固定するために、光源1のソケット部とバルク型レンズ20の収納部6との間には、厚さ1〜2.5mm程度のスペーサが挿入されている(「ソケット部」とは図16において、光源1の電極リード側(左側)の部位を意味する。)。弾丸型のバルク型レンズ20の円柱形状部の直径(外径)2reは、本発明の第2の実施の形態に係る発光体の使用目的に応じて選択出来る。したがって、10mmφ以下でも、30mmφ以上でも構わない。但し、既に述べた(1)式乃至(3)式、或いは(6)式等を満足するように、バルク型レンズ20の幾何学的構造を選ぶのが好ましいことは勿論である。又、本発明の第2の実施の形態に係るバルク型レンズ20は、空気の屈折率n0とは異なる屈折率n1有する。
白熱球1からの光はほぼ等方的に発光する。図16において、主入射面2(天井部)以外の収納部6の凹部側壁(側壁入射面)5も、有効な光の入射面(第1のレンズ面)として機能し得る。白熱球1からの光の場合はLEDの出力光に比して、主入射面2に対して側壁入射面5からレンズ媒体4に入射する成分が多い。そして、光源1とバルク型レンズ20の収納部6との間にはそれぞれの界面で反射した光の成分が多重反射し、迷光成分となっている。従来公知のレンズ等の光学系では、これらの迷光成分は、照明に寄与出来るように取り出すことは出来ない。しかし、これらの迷光成分も、本発明の第2の実施の形態においては、収納部6の内部に閉じこめられ、側壁入射面5からレンズ媒体4に入射するので、最終的には、照明に寄与出来る成分となり得る。この様に、本発明の第2の実施の形態においては、側壁入射面5から入射する光を有効に集光することが出来るので、光源1から発せられる迷光成分も含めて、等方的に発光するすべての出力光が有効に照明に寄与出来るようになる。
この様にして、本発明の第2の実施の形態に係る発光体によれば、光源1の数を多数必要とすることなく、照明に寄与する光ビームとして所望の照射面積の光束を確保し、且つ所望の照度を簡単に得ることが出来る。この照度は従来公知のレンズ等の光学系では達成不可能な照度である。この様に、本発明の第2の実施の形態に係る発光体によれば、従来の技術常識では全く予測出来ない照度を、図16に示すような簡単な構造で、実現出来る。図2(a)及び図2(b)の比較から明らかなように、本発明と同程度の集光特性を得るためには、従来の薄型レンズ(凸レンズ)を用いた場合は、その直径が、本発明のバルク型レンズ20の円柱部直径の2倍でも不十分であり3倍程度でもビームの平行性は得られない。即ち、1/3を越える小型化が達成されたことになる。
本発明の第2の実施の形態に係る発光体に用いるバルク型レンズ20としては、光源(白熱球)1の発熱を考慮すると、耐熱性光学材料が好ましい。耐熱性光学材料としては、石英ガラス、サファイアガラス等の耐熱ガラスが好ましい。或いは、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂、メタクリル樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、パーフルオロアルキル基を有する高分子材料等の耐熱性樹脂等の耐熱性光学材料が使用可能である。SiC等の結晶性材料でも良い。なお、光源1として、LED等の半導体発光素子を用いる場合は、発熱作用を伴わないので、アクリル樹脂等の、耐熱性が弱い樹脂を使用することが可能である。
(第3の実施の形態)
図17に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る受光体は、所定の波長の光を検出するpinフォト・ダイオードやアバランシェ・フォト・ダイオード等のフォト・ダイオード(光検出器)50と、このフォト・ダイオードをほぼ完全に覆うバルク型レンズ20とから少なくとも構成されている。そして、このバルク型レンズ20は、第2の湾曲面からなる入射面(第2レンズ面)3を有する。レンズ媒体4の底部からは、外側頂部3に向かって、光検出器(フォト・ダイオード)50の受光部を収納するための収納部6が形成されている。この凹部の天井(凹部天井部)2は、第1の湾曲面で構成されている。入射面(第2レンズ面)3から入射した光は、凹部天井部2を主出射面として出射する。正確には、凹部天井部(主出射面)2と凹部側壁部(側壁出射面)5とで出射面となる第1レンズ面が構成される。そして、第1レンズ面(2,5)からの光が、光検出器50の受光部に集光されて、フォト・ダイオードチップ9へ入射する。
図17の光検出器50は、第1のピン51に一体的に接続された基台の上に配置されたフォト・ダイオードチップ9と、第1のピン51と対をなす第2のピン52とから少なくとも構成されている。
バルク型レンズ20の収納部6の凹部側壁部5の内径2riは、光検出器50を収納出来るように、2ri=2.5〜4mmφの円筒形状となっている。図示を省略しているが、光検出器50とバルク型レンズ20とを固定するために、光検出器50とバルク型レンズ20の収納部6との間には、厚さ0.25〜0.5mm程度のスペーサが挿入されている。このスペーサは、光検出器50の主受光部を除く位置、即ち、図17において、フォト・ダイオードチップ9の底面より左方に配置すれば良い。バルク型レンズ20は、凸形状の第2の湾曲面からなる主入射面(第2レンズ面)3を有する外側頂部3を除けば円柱形状である。このバルク型レンズ20の円柱形状部分の直径(外径)2reは10〜30mmφである。バルク型レンズ20の直径(外径)2reは、本発明の第3の実施の形態に係る受光体の使用目的に応じて選択出来る。したがって、10mmφ以下でも、30mmφ以上でも構わない。
(第4の実施の形態)
更に、図1で示した発光体と、本発明の第3の実施の形態に係る受光体とで、光情報通信システムを構成出来る。
[発光体]
本発明の第4の実施の形態に係る発光体は、図18(a)に示すように、バルク型レンズ24と、バルク型レンズ24の第1の収納部6tに収納された所定の波長の光を発する光源1とから構成される。バルク型レンズ24は、第1の外側頂部3t、第1の底部及び第1の光軸に平行方向の側面からなる外周部を有する第1のレンズ媒体4tと、この第1のレンズ媒体4tの内部に設けられた第1の収納部6tとから構成される。第1の収納部6tは、第1のレンズ媒体4tの第1の底部から第1の外側頂部3に向かって形成された井戸型の凹部からなる。この井戸型の凹部は、光軸に平行方向の面からなる側壁部を有する。
光源1は、光源位置制御・駆動手段により、バルク型レンズ24の第1の収納部6tの内部において、外側頂部3方向又は後面方向へ相対的に移動可能なように構成されている。光源位置制御・駆動手段の一部として、バルク型レンズの後面に配置された背面支持体30tが配置されている。背面支持体30tは、バルク型レンズ24の側面の一部にまで延長されて形成されている。又、光源1と背面支持体30tを含むバルク型レンズ24とを相対的に移動させるため、突起40をバルク型レンズ上に形成してある。突起40も光源位置制御・駆動手段の一部として機能する。
図18(a)において、背面支持体30tは、バルク型レンズ24の後面に直接配置された主支持部31tと、LEDホルダー45の中途に配置された小背面鏡32tとから形成されている。この小背面鏡32tは、光源1の直後に配置しても構わない。又、小背面鏡32tを、LEDホルダー45の中途と光源1の直後に2重に配置しても構わないし、図15に示された結果を考慮すれば、全く省いても良い。図18(a)において、背面支持体30tは、バルク型レンズ24の側面の一部を被覆しているが、バルク型レンズ24の側面のほぼ全面を被覆するように形成しても構わない。この場合、突起40は、背面鏡上に形成することになる。背面支持体30tは、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属を旋盤・フライス盤等を用いて研削加工、若しくはプレス加工機等により成型加工し、その後、その表面を研磨して構成すれば良い。更に、これらの表面にニッケル(Ni)鍍金や金(Au)鍍金を施せば反射率が向上するので、反射鏡として機能させることも可能である。安価、且つ簡便な方法としては、Al薄膜等の反射率の高い金属薄膜を接着した構造でも構わない。或いは、熱可塑性樹脂を押出成形若しくは射出成形により図18(a)に示す形状に加工し、この表面にAl箔等の反射率の高い金属薄膜や誘電体多層膜を真空蒸着やスパッタリングで堆積した構造、若しくは高反射性ポリエステル白色フィルム等を接着した構造でも構わない。更に、バルク型レンズ14の後面に反射率の高い金属薄膜や誘電体多層膜を真空蒸着やスパッタリングで直接堆積した構造や、反射率の高い金属薄膜を鍍金により形成した構造やこれらの複合膜でも構わない。
図18(a)の光源1は、第1のピン11に接続されたLEDホルダー45の中空部に嵌め込まれ、その端部を固定されたLEDチップ13と、このLEDチップ13を被覆する封止樹脂14tと、第1のピン11と対をなす第2のピン12とから少なくとも構成された樹脂モールドされたLEDである。小背面鏡31には、第1のピン11及び第2のピン12を貫通させる穴があいており、小背面鏡31に第1のピン11と第2のピン12とを電気的に短絡しないように考慮している。LEDチップ13からの光はLEDチップ13の裏面方向(図18(a)において右方向)からも取り出される両面発光構造をなしている。支持リングは完全に閉じたリングである必要はなく、C字型、コの字型等の閉じないリングでも良い。要は光源1の端面の一部を固定出来る構造であれば良い。
バルク型レンズ24に設けられた突起40は、バルク型レンズ24の側面の円周方向にリング状に配置されており、図示はされないが、バルク型レンズ24の側面を覆うレンズホルダーの窪みに対応して形成されている。又、このリング状の突起40は、光軸方向(図18(a)において水平方向)に複数個配置されていても構わない。更にこの突起40は、連続したリング状でなく、円周方向に放射状に配置された複数の小突起から形成されていても良い。或いは、バルク型レンズ24や背面支持体30tの外面に複数の窪み等を形成しても構わない。簡単な方法としては、バルク型レンズ24の外面に螺旋状の突起からなるネジ山を形成し、雄ねじの形状にしても良い。若しくは螺旋状の溝部を形成し、雄ねじのネジ山を形成しても良い。レンズ媒体4の外周部を反射鏡にする必要がないので、レンズ媒体4の外周部は所望の形状に自由に変形出来る。又、バルク型レンズ24の収納部6tに雌ねじのネジ山を形成し、LEDホルダー45に雄ねじのネジ山を形成し、光源位置制御・駆動手段を構成しても良い。極端な例として、しっかりと保持されていて、且つ焦点調整が可能であれば、何も形成しなくても構わない。
半球状の頭部を除けば、光源1は、例えば、直径(外径)3〜5mmの円柱形状である。バルク型レンズ24の収納部6tの側壁部は、光源1を収納出来るように、直径(内径)4〜6mmの円筒形状となっている。図18(a)に示すように、光源1は頭部がカップ形状のLEDホルダー45に固定され、LEDホルダー45を介して、光源1は保持されている。LEDホルダー45は電気的に絶縁性が高く、光学的に透明な材料で構成すれば良い。
バルク型レンズ24は、ほぼ光源1と相似な円柱形状である。このバルク型レンズ24の円柱形状部分の直径(外径)は、10〜30mmである。バルク型レンズ24の直径(外径)は、本発明の第4の実施の形態に係る発光体の使用目的に応じて選択出来る。したがって、10mm以下でも、30mm以上でも構わない。
突起40の断面は,例えば、幅1〜2mm、高さ1.5〜3mmの半楕円形である。円周方向の長さはいくらでも構わないが、3mm以上が好ましい。材質としては、バルク型レンズ24や背面支持体30tと同材質を用い、同時に形成しても良い。又、全く違う材料で形成したものを接着剤で貼り付けても良い。レンズホルダーから伝わる力をバルク型レンズ24に伝えることが出来れば、どのような形状、材質、配置、そして形成方法を採用しても良い。
一般の樹脂モールドされたLEDにおいては、封止樹脂14tの凸形状の湾曲面以外のところから出る光は、いわゆる迷光成分となり、照明には寄与しない。しかし、本発明の第4の実施の形態においては、光源1がバルク型レンズ24の収納部6tにほぼ完全に閉じこめられ、収納部6tの側壁入射面から入射可能であるので、これらの迷光成分のほとんどが最終的には出射面となる外側頂部3から出力可能である。この結果、封止樹脂14tの形状等の光の取り出し効率や、光学系相互の反射成分等に依存せず、潜在的なLEDチップ13の光エネルギを有効に取り出すことが可能となる。更に、突起40を用いた光源位置制御・駆動手段を介して光源1を相対的に移動し、焦点調整が可能なため、指向性の有る平行な光束や任意の発散角を持った光束を得ることが出来る。つまり、光源1から出る光を極限にまで利用出来る。
図18(a)において、バルク型レンズ24の外側頂部3は、半球状の湾曲面からなる出射面を有している。しかし、図18(a)は例示であり、湾曲面は、目的に応じて、種々の形状が採用可能であり、凹形状の湾曲面からなる出射面を有すバルク型レンズでも良い。
[受光体]
一方、本発明の第4の実施の形態に係る受光体は、図18(b)に示すように、バルク型レンズ25と、このバルク型レンズ25の第2の収納部6rに収納された所定の波長の光を検出する光検出器50とから構成される。バルク型レンズ25は、第2の外側頂部3r、第2の底部及び第2の光軸に平行方向の側面からなる外周部を有する第2のレンズ媒体4rと、第2の底部から第2の外側頂部3に向かって第2のレンズ媒体4rの内部に設けられた光軸に平行方向の面からなる側壁部を有する井戸型の凹部からなる第2の収納部6rとを有している。第2の収納部6rの凹部天井部2rが主出射面2、第2の外側頂部3rが入射面として機能する。
本発明の第4の実施の形態に係る受光体は更に、光検出器50を外側頂部3r方向又は後面方向へ相対的に移動する光検出器位置制御・駆動手段を有している。光検出器位置制御・駆動手段は、バルク型レンズ25の後面に配置された背面支持体30rをその一部として用いている。背面支持体30rは、バルク型レンズ25の側面のほぼ全面にまで延長されて形成されている。光検出器位置制御・駆動手段は、光検出器50と背面支持体30rを含むバルク型レンズ25とを相対的に移動させるため、背面支持体30r上に形成した突起41をその一部として用いている。図18(b)において、背面支持体30rは、バルク型レンズ25の後面に直接配置された主支持部31rと、光検出器50の直後に配置された小背面鏡32rとから形成されている。この小背面鏡32rは、受光素子ホルダー55の中途に配置しても構わない。又、小背面鏡32rを、受光素子ホルダー55の中途と光検出器50の直後に2重に配置しても構わないし、全く省いても良い。図18(b)において、背面支持体30rは、バルク型レンズ25の側面のほぼ全面を被覆しているが、バルク型レンズ25の側面の一部のみを被覆するように形成しても構わない。この場合、突起はバルク型レンズ25上に形成することになる。
図18(b)の光検出器50は、第1のピン51に接続された受光素子ホルダー55の中空部に嵌め込まれ、その端部を固定されて配置されたフォトダイオードチップ9と、このフォトダイオードチップ9を被覆する封止樹脂14rと、第1のピン51と対をなす第2のピン52とから少なくとも構成されている。この光検出器50の、半球状の頭部と円柱形状の胴部の直径(外径)は、例えば、3〜5mmである。
ここで、本発明の第4の実施の形態に係る受光体に関しては、図18(a)の発光体の光源1を、光検出器50に置き換えただけものであり、光源1と光検出器50の形状もほぼ同一であるため、重複する説明は省くことにする。
結論として、本発明の第4の実施の形態においては、光検出器50がバルク型レンズ25の収納部6rにほぼ完全に閉じこめられ、バルク型レンズ25の後面には、背面支持体30rが配置されていて、更に突起41を利用した光検出器位置制御・駆動手段を介して光検出器50の位置を調整することが可能なため、受光面となる外側頂部3から入射した光を極限にまで利用出来る。
本発明の第4の実施の形態に係る受光体によれば、従来の技術常識では全く予測出来ない感度を、図18(b)に示すような簡単な構造で、実現出来る。
[光情報通信システム]
本発明の本発明の第4の実施の形態に係る光情報通信システムにおいては、発光に際して発熱作用が少ないLED等の半導体発光素子を用いれば、バルク型レンズ20の凹部(収納部)6tの内部に、光源1を収納した場合においても、その発熱作用によって、バルク型レンズ20に熱的影響を与えることがなく、長期動作においても、信頼性と安定性を維持出来るので好ましい。又、既に、本発明の第1の実施の形態で述べたように、高効率で、光信号を出すことが出来る。一方、受光体は、発光体と逆過程で光検出器に到達し、極めて高感度な光検出が可能となる。本発明の第4の実施の形態に係る光情報通信システムは、単なる光通信の他に光情報を暗号等として用いて、ドアの開閉、金庫の扉の開閉、或いは机の引き出しの開閉等に採用し、セキュリティシステム等に用いても良い。
(第5の実施の形態)
図19(a)に示すように、本発明の第5の実施の形態に係る発光体は、可とう性若しくは屈曲性を有するフレキシブルバルク型レンズ20fと、フレキシブルバルク型レンズ20fの収納部6fに収納された光源1とから構成されている。フレキシブルバルク型レンズ20fは、出射面となる外側頂部3fと、外側頂部3fに対向した後面と、外側頂部3fと後面とを接続する光伝送部と、後面の一部から外側頂部3f方向に沿って光伝送部の内部に形成された収納部6fを少なくとも有する。フレキシブルバルク型レンズ20fの一部又は全体は、可とう性若しくは屈曲性を有し、容易に変形出来る材料(フレキシブルレンズ媒体)4fにより形成されている。
図19(a)の光源1は、第1のピン11と、その端部を固定されて配置されたLEDチップ13と、このLEDチップ13を被覆する封止樹脂14と、第1のピン11と対をなす第2のピン12とから少なくとも構成された樹脂モールドされたLEDである。この光源1は、半球状の頭部と円柱形状の胴部を有し、胴部の直径(外径)は、例えば3〜5mmである。図19(a)のフレキシブルバルク型レンズ20fは、ほぼ光源1と相似な形状である。このフレキシブルバルク型レンズ20fの円柱形状部分の直径(外径)は、例えば10〜30mmであるが、10mm以下でも30mm以上でも構わない。又、フレキシブルバルク型レンズ20fの内部に形成された収納部6fの形状は、光源1を収納出来るように、直径(内径)3.5〜5.5mmの円筒形状となっている。
光源1は、フレキシブルバルク型レンズ20fの内部に形成された収納部6fに接着剤等により固定されている。しかし、フレキシブルバルク型レンズ20fの内部に形成された収納部6fの直径(内径)を光源1の直径(外径)より幾分小さく設定し、収納部6fの弾性を利用して固定しても良い。又、接着剤等と収納部6fの弾性の双方を利用して固定しても良い。
フレキシブルバルク型レンズ20fの材料としては、シリコーンポリマー、フッ素ポリマー、透明アクリルポリマー等の、光源1の発光波長に対して透明性が高くかつ適度な弾性を示す物質が使用可能である。最近、温度を上げると成形が可能な熱可塑性エラストマー(TPE)に透明なものが製造されているので、これを使用しても良い。又、透明性は劣るが、天然ゴム等を使用しても構わない。
更に、図20に示すように、フレキシブルバルク型レンズ20fを非弾性レンズ媒体4dとフレキシブルレンズ媒体4fとの組み合わせで構成しても良い。非非弾性レンズ媒体4dとの組み合わせにて構成する場合、非弾性材料として、透明ガラス材料、透明プラスチック材料等の光源1の発光波長に対して透明の物質が使用可能である。或いは、非弾性材料として、半導体単結晶、多結晶、アモルファス等の結晶性材料を用いても構わない。又、複数の透明弾性材料からなるフレキシブルレンズ媒体4fと非弾性レンズ媒体4dとを組み合わせても良い。即ち、少なくとも一部に透明弾性材料からなるフレキシブルレンズ媒体4fを使用していれば、目的に応じて、非弾性レンズ媒体4dを含む他の複数の透明材料との組み合わせを採用出来る。図20に示すように、非弾性レンズ媒体4dとフレキシブルレンズ媒体4fとの組み合わせで構成すれば、種々の形状を実現することが出来る。これによりLED等の光源1又は設置される機器、或いはその双方を保護することが出来る。
本発明の第3の特徴に係る発光体は、少なくとも、出射面となる外側頂部3fを含むバルク型レンズ25の一部(半球状のレンズ部)が「容易に変形出来る材料」にて形成されているため、焦点距離の調節がかなりの範囲で可能である。例えば、図19(b)に示すように、発光体をフラットなガラス面等の透明板81に押し付けるように装着した場合、レンズ先端部の曲率半径は大きくなり、装着前に比べると、光は発散する。又、図19(c)に示すように、発光体を、遮光板82に設けられたフレキシブルバルク型レンズ20fの外径より狭い穴83等に押し付けるように装着した場合、フレキシブルバルク型レンズ20fの先端部の曲率半径は小さくなり、装着前に比べると、光は収束する。この様に、本発明の第3の特徴に係る発光体によれば、市販されている光源1をそのまま用いることが可能で、又、焦点調整が可能で、且つ用途や目的を選ばない汎用性の有る発光体が提供出来る。
又、図21に示すように、光ファイバの効果を併せ持った形状も可能である。力F1及びF2を加えることにより、所望の形状に曲げることが可能である。フレキシブルレンズ媒体4fの自身の屈折率と、設置状態に対応したフレキシブルレンズ媒体4fの曲率にもよるが、バックライト照明や間接照明に、そして寝室等のインテリアとしても利用出来る。グレーディッドインデックスファイバーのように、中心線に沿った屈折率を最大とし、表面に近づくにつれ放物線型に屈折率が減少するように屈折率に分布を持たせれば、曲げられた時の光のリークを抑制することが可能である。
(第6の実施の形態)
図22のブロック図に示すように、本発明の第6の実施の形態に係る距離測定システムは、発光ユニットと受光ユニットとから構成されている。この距離測定システムは、簡易な水面計、雪面計等に好適である。発光ユニットは、発光体61、発光体61の出力を変調し発光させる駆動部62、発光体61と駆動部62に電源電圧を供給する第1電源部63とを少なくとも備えている。受光ユニットは、受光体71、受光体71の信号を検出且つ増幅する検出部72、受光位置から距離を計算する演算部73、演算結果を出力する出力部74、更には検出部72と演算部73と出力部74とに電源電圧を供給する第2電源部75とを少なくとも備えている。
図23に簡略化した本発明の第6の実施の形態に係る距離測定方法を示す。
(イ)まず、発光点Aと受光点Bを通過する直線を基準線Xとし、その距離Lを正確に測る。発光点Aには発光体61を、受光点Bには受光体71を設置しておく。更に、発光点Aと受光点Bとが存在する同一平面上に、距離を測定しようとする標点Pを配置する。
(ロ)次に、基準線X上の発光点Aに設置された発光体61の出力方向を標点Pの方向に定める。即ち、発光体61の出力方向を基準線Xから照射角度αの方向に向ける。発光体61からの出力光は光源としてLEDを用いても、レーザ光に近い平行光線となる。そして、この平行光線は標点Pの物体の表面に照射される。標点Pの物体の表面に到達した平行光線は、標点Pの物体の表面で反射及び散乱する。
(ハ)受光点Bに設置された受光体71により、標点Pの物体の表面での反射光(若しくは散乱光)を検出する。そして、受光体71が検出した標点Pの物体の表面での反射光(若しくは散乱光)の検出出力が最大となる基準線Xからの検出角度βを測定する。
(ニ)これにより、三角形の一辺とその両端の角度が決定したので、基準線Xから標点Pまでの距離Hが求められる。
図22の発光体61は、図18(a)に示すバルク型レンズ24を用いた発光体である。図18(a)に示すバルク型レンズ24の外面に螺旋状の突起からなるネジ山を形成し、雄ねじの形状にし、外側のレンズホルダーに雌ねじを形成して光源位置制御・駆動手段を構成しておく。この光源位置制御・駆動手段で、バルク型レンズ24の外側のレンズホルダーを回転させることにより、光源1とバルク型レンズ25とが相対的に移動し、焦点距離を可変出来る。距離測定の場合は、一般的に焦点距離を無限遠にセットする。例えば、その一方法として、2〜3m離れた場所のほぼ垂直な面に向けて発光体61を点灯し、その投光面が最小になるように調整すれば良い。又、その位置がロック出来るような構造が好ましい。光源1としては、太陽光等の影響を避けるため太陽光のスペクトル強度の弱い波長帯域を選ぶ。このため、一般の可視光線LEDよりも、青、紫等の短波長LED、紫外線LED若しくは赤外線LEDを使用するのが好ましい。紫外線LED若しくは赤外線LEDは目視による平行光線の標点Pの物体の表面への照射の確認が出来ないので、青、紫等の可視光LEDの光を重畳させると良い。又、標点の反射率が低い等の理由により、出力を大きくしたい場合には、バルク型レンズ24内の収納部6に複数のLEDを配置しても良い。又、基準線Xから照射角度αを精密に測定出来る構造になっていることは勿論である。
図22の駆動部62は、太陽光等の影響を避けるため、LEDの出力光の発光時間(パルス幅)と発光間隔(繰り返し周波数)を変調発光させる。このため、駆動部62は第1電源部63から供給される電源電圧をパルス幅変調する変調器を備えている。駆動部62はプログラマブル1チップマイコン又は同等品を装備し、その出力を変調器への入力信号とする。必要に応じてパラレル入出力用LSIや増幅器等を付加してその機能を補っても良い。簡便な方法としては、ノートパソコン等を使用し、それに付属するプリンタ用パラレルインターフェースを介して、駆動部62を直接コントロールしても構わない。
図22の第1電源部63と第2電源部75は、装置の小型軽量化とコストダウンのため、市販の乾電池又は再充電可能なニッケル・カドミウム(Ni−Cd)電池等を使用出来る構造が好ましい。又、外部より交流電源を供給し、これを変圧整流して使用する構造でも良い。
図22の受光体71は、図18(b)に示すバルク型レンズ25を用いた受光体をピクセルとし、このピクセルを複数使用したリニアセンサである。即ち、図18(b)に示すバルク型レンズ25からなる受光体(ピクセル)が一直線上に一定の間隔で配置された1次元フォトダイオードアレイを形成している。各々のピクセルは、光検出器位置制御・駆動手段により、光検出器50とバルク型レンズ25とが相対的に移動可能で、焦点距離可変の構造となっている。距離測定の場合は、一般的に焦点距離を無限遠にセットするが、この場合は各々を事前に調整してその位置をロックしておくと良い。当然のことであるが、各ピクセルは、光源1の発光波長に対応したピーク波長を持つ光検出器50を選定する。光検出器50は、光源1のLEDチップ13と全く同一の光学的固有エネルギを持つ半導体材料からなるフォトダイオードチップ9を用いれば良い。ここで、「光学的固有エネルギ」とは、そのLEDチップ13の主なる発光波長を決定する半導体材料としての、それぞれの半導体材料に固有のエネルギの意である。周知のように、LEDチップ13の主なる発光波長を決定する要因としては、半導体材料の禁制帯幅(エネルギギャップ)が最も代表的であろう。したがって、禁制帯幅によりそのLEDチップ13の発光波長が決定されている場合は、光検出器50は、LEDチップ13と全く同一禁制帯幅を持つ半導体材料からなるフォトダイオードチップ9を用いれば良い。即ち、LEDチップ13の光学的固有エネルギ(禁制帯幅)とフォトダイオードチップ9の光学的固有エネルギ(禁制帯幅)を等しくすることで、共鳴効果が利用出来、最も高感度な光検出が可能となる。不純物準位がその発光波長に関与しているので有れば、半導体材料に添加(ドープ)する不純物にも考慮が必要となる。この場合、光検出器50として、LEDチップ13と全く同一のLEDチップを逆バイアスして、使用することも可能であるし、光学的固有エネルギ(禁制帯幅)が同一の半導体材料からなるアバランシェ・フォトダイオード(APD)を用いても良い。更に、LEDチップ13と全く同一の光学的固有エネルギ(禁制帯幅)を有する半導体材料を用いて構成したフォトトランジスタを用いて、光出力を増幅しながら検出しても良い。本発明の第6の実施の形態に係る距離測定システムにおいては、各ピクセルに用いる光検出器50として、LEDチップ13と全く同一のLEDチップを逆バイアスして、使用する。したがって、順バイアスするとLEDとして機能し、各ピクセルは発光体になる。
標点Pに配置される一般の物体からの反射光が必ず受光点Bに届くように、その物体の表面を設定するのは非常に困難で、現実的ではない。標点Pに配置された一般の物体から受光点Bに届くのは、非常に弱い散乱光が届く。散乱光は太陽光より弱いので、昼間にその散乱光を有意な信号として検出するのは不可能である。昼間にその散乱光を有意な信号として検出するためには、標点Pに配置される一般の物体の表面には一定の角度の反射鏡を配置し、反射光が必ず受光点Bに届くように予め設定しておく。水面、雪面等の一定の角度(水平面)で良好な反射率を持つ物体の場合は、反射鏡は省略可能であるが、この場合も反射率90%〜95%の反射鏡を水面等の上に設定するのが好ましい。そこで、1次元フォトダイオードアレイ(リニアセンサ)71の各ピクセルを、標点Pの方向を向くように検出角度βを調整する。水面計等では照射角度αと検出角度βを等しくしておけば、反射鏡は水平面に平行で良いので設定が容易である。
この際、1次元フォトダイオードアレイ71の中心のピクセルのLEDチップ13を順バイアスして、LEDとして機能させ、可視光を標点Pの物体の表面の反射鏡に照射して、目視により検出角度βを調整する。上述したように、各ピクセルに用いる光検出器50として、LEDチップ13と全く同一のLEDチップを用いているので、光検出器50としてもLEDとしても機能するからである。1次元フォトダイオードアレイ71を構成する他のピクセルは、この中心のピクセルと同一の角度となるように設定すれば良い。勿論、1次元フォトダイオードアレイ71を基準線Xの方向にステップモータ等を用いて逐次移動しながら、すべてのピクセルをLEDとして機能させ検出角度βを調整しても良い。この様に、1次元フォトダイオードアレイ71の各ピクセルを標点Pの方向を向くように検出角度βを調整しておけば、対象物が距離ΔH移動すれば、その距離に比例するΔLだけ基準線Xに沿って受光点Bが移動するので、この移動距離ΔLを1次元フォトダイオードアレイ71で測定する。図23から容易に分かるように、
ΔL=ΔH(cotα+cotβ) ・・・・・(7)
で与えられる。このままでは、測定出来る距離は1次元フォトダイオードアレイ71のアレイの長さで決まってしまうので、1次元フォトダイオードアレイ71のアレイの長さの範囲に反射光が届くように、発光体61の照射角度αをステップモータ等を利用してフィードバック制御する。同時に、照射角度αの制御に合わせて、検出角度βもステップモータ等を利用してフィードバック制御する。
具体的には、1次元フォトダイオードアレイ71には、16〜32個のピクセルが、50〜100mmピッチで、ピクセルホールダー上に一直線上に配置されている。各ピクセルは連動して回転し、検出角度βを調整出来るように構成されている。又、1次元フォトダイオードアレイ71に配置されるピクセルの個数やピッチは、物理的に可能な範囲であれば、どのように設定しても構わない。
図22の検出部72は、変調発光しているLEDの発光間隔(繰り返し周波数)に同期してゲートを制御して、一次元フォトダイオードアレイ71上のすべてのピクセルからの出力に対して同期検出を行う。更に、この同期検出された出力を一定の時間間隔で積分しても良い。同時に、検出部72は、照射角度α及び検出角度βを時々刻々検出する。検出された一次元フォトダイオードアレイ71のピクセルの出力及び照射角度α及び検出角度βは、演算部73に逐次伝達される。必要に応じて、パラレル入出力用LSI、増幅器、A/Dコンバータ、加算器、そしてタイマーモジュール等を検出部72に付加してその機能を補うことが出来る。
図22の演算部73としては、ノートパソコン等の演算能力の有る機器を使用出来る。必要に応じてI/Oパラレルインターフェースカード等の周辺機器を介して使用すれば良い。数の限られたデータから精度の高い演算結果を得るためには、例えば、ピクセル間を10mm間隔で補間し、その近似値を求める必要が有る。ラグランジェの補間公式を始め、種々の補間公式や近似式が知られているが、重要なことは、その基となる母関数の選定に有る。発光体61から出た光は、標点に反射されピクセルに届く間に、空気中に浮遊する塵や埃等によりある程度分散されるので、受光される光の強度は正規分布に従うと期待される。したがって、使用する発光体61の平均値μと分散σを事前に調べておくことにより、ピクセル間の任意の位置を、極めて正確に補間して、その近似値を得ることが出来る。簡便な補間方法としては、スプライン関数やベジェ曲線等による3点補間方法を採用しても構わない。更なる精度の距離を求める場合には、1次元フォトダイオードアレイ71上のピクセルの個数を増やすか、補間間隔をもっと小さくすれば良いし、或いはその双方を採用しても良い。又、測定精度を保つために、これら両ユニットの定期的なキャリブレーションを行うことが望ましい。
図22の出力部74としては、ノートパソコン等の液晶画面やフレキシブルディスク等が消費電力が少なくて好ましいが、必要に応じてプリンタやCRTディスプレイをも選択出来る。又、リアルタイムのデータを遠隔地に送る場合などには、モデム等を介した通信回線に出力しても良い。
この様に、本発明の第6の実施の形態に係る距離測定システムによれば、コンパクトで信頼性が高く、且つ高精度で低消費電力の距離測定システムを提供することが出来る。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1乃至第6の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、図24に示すように、本発明のバルク型レンズ28の出射面となる外側頂部3cは、出射方向に対して凹面となる形状でも良い。図24に示す外側頂部3cの構造を採用することにより、外側頂部3cより出力する光は広い発散角で拡散するようになる。図24に示す本発明の他の実施の形態に係る発光体は、光源1としての樹脂モールドされたLEDと、この光源1をほぼ完全に覆うバルク型レンズ28とから少なくとも構成されている。そして、このバルク型レンズ28は、出射方向に対して凹となる外側頂部(出射面)3c、底部及び光軸に平行方向の側面からなる外周部を有するバルク型(砲弾型)のレンズ媒体4と、この底部から外側頂部3cに向かってレンズ媒体4の内部に設けられた光軸に平行方向の面からなる側壁部を有する井戸型の凹部からなる収納部6とから構成されている。レンズ媒体4の内部に設けられた収納部6を構成する凹部の天井部(凹部天井部)が主入射面(第1のレンズ面の主入射面)2、レンズ媒体4の頂部(外側頂部)が出射面(第2のレンズ面)3cとして機能することは第1の実施の形態と同様である。第1のレンズ面(2,5)は、第1の湾曲面からなる主入射面2と第1の湾曲面とは曲率の異なる側壁入射面5とから構成されている。主入射面2から入射した光は、第2のレンズ面3c、即ち、出射方向に対して凹となる第2の湾曲面3cから出力する。凸形状の湾曲面部を除けば、LED1は、例えば、直径(外径)2rLED=2〜3mmφの円柱形状である。バルク型レンズ28の収納部6の側壁部は、樹脂モールドされたLED1の主発光部を収納出来るように、直径(内径)2ri=2.5〜4mmφの円筒形状となっている。バルク型レンズ28は、凹形状の第2の湾曲面からなる出射面を有する外側頂部3cを除けば、ほぼLED1と同様な円柱形状である。このバルク型レンズ28の円柱形状部分の直径(外径)2reは、10〜30mmφである。バルク型レンズ28の直径(外径)2reは、発光体の使用目的に応じて選択出来る。
出射光を拡散させる場合においても、LED1の光をより集光効率を高くするためには、第1の実施の形態で説明した(4)式の関係を満足することが好ましい。バルク型レンズ28の直径(外径)2reが、収納部6の内径2riの10倍以上でも、本発明のバルク型レンズは、機能するが、必要以上に大きくなり、小型化を目的とする場合は好ましくない。(4)式を満足する幾何学的形状を有するバルク型レンズ28においては、LED1の凸形状の湾曲面以外のところから出た迷光成分が、100%に近い集光効率で、有効に照明に寄与出来るようになる。即ち、図24の構造においても、第1の湾曲面からなる主入射面(凹部天井部)2以外の収納部6の側壁部(凹部側壁部)5も、有効な光の入射面(側壁入射面)として機能し得るのである。(4)式を満足するように、十分厚い側壁部を有して幾何学的構造が設計することにより、外周部に反射鏡を用いなくても、凹部側壁部5から入力した光が、バルク型レンズ28の外周部からそのまま出力(漏洩)するのが防止出来る。勿論、凹部側壁部5に垂直に入射した光は外周部から漏洩する。しかし、凹部側壁部5に、ある入射角で入射した光はスネルの法則で決まる屈折角で屈折する。収納部6の側壁部に位置するレンズ媒体4の厚さが厚くなると、レンズ媒体4の外周部から漏洩する成分は減少する。そして、(4)式を満足する幾何学的形状になると、レンズ媒体4の外周部から漏洩する成分はほとんど無視出来るようになるためと考えられる。特に、樹脂封止されたLEDでは凸形状の湾曲面以外のところから出た光の内、凹部側壁部5に垂直に入射する成分は少ないので、(4)式を満足する幾何学的形状になると、レンズ媒体4の外周部から漏洩する成分はほとんど無視出来るようになる。
本発明のバルク型レンズの光軸方向に垂直な断面の形状は、真円、楕円、三角形、四角形、多角形等が可能である。したがって、バルク型のレンズ媒体の光軸に平行方向の側面からなる外周部は、円柱でも角柱でも構わない。第1のレンズ面の主入射面となる第1の湾曲面2cは、図25に示すように、円錐形でも良い。円錐形の頂角は90°〜120°等種々の値が採用可能である。図25に示すバルク型レンズ27の他の構造は、第1の実施形態と同様であり、外側頂部(出射面)3、底部及び光軸に平行方向の側面からなる外周部を有するバルク型(砲弾型)のレンズ媒体4と、この底部から外側頂部3に向かってレンズ媒体4の内部に設けられた光軸に平行方向の面からなる側壁部を有する井戸型の凹部からなる収納部6とを有している。レンズ媒体4の内部に設けられた収納部6を構成する凹部の天井部(凹部天井部)が円錐形の主入射面(第1のレンズ面の主入射面)2c、レンズ媒体4の頂部(外側頂部)が出射面(第2のレンズ面)3として機能する。第1のレンズ面2cは、第1の湾曲面としての円錐形の主入射面2cと円錐形とは曲率の異なる側壁入射面5とから構成されている。収納部6は、円錐形の凹部天井部2cと、凹部を構成すべくこの円錐形の凹部天井部2cに連続して形成された凹部側壁部(側壁入射面)5とから構成されている。円錐形の主入射面2から入射した光は、第2のレンズ面3から出力する。図25の構造も、第1の実施形態で説明した(4)式を満足することが、潜在的なLEDチップ13の光エネルギを有効に取り出すために重要であることは勿論である。
更に、本発明のバルク型レンズ20,22,24,25,27の出射面3は同心円状の湾曲面からなるフレネルレンズでも構わない。或いは、複数の曲率を有した面や魚眼レンズ的な構造でも良い。
又、第1の実施の形態の説明においては、光源1とバルク型レンズ20の収納部6との間にスペーサを挿入して、光源1をバルク型レンズ20に固定する場合について説明したが、接着剤、ネジやクランプ機構等の他の手段を用いて固定しても良いことは勿論である。更に、光源1の外径2rLEDと収納部6の内径2riとをほぼ同一にして、嵌め込むようにしても良い。
更に、バルク型レンズ20,22,24,25,27,28の外側形状は、必ずしも光学的に平坦である必要はなく、クリスタルグラスのように、細かい凹凸を設けたものでも構わない。細かい凹凸を設ければ、出力光は四方八方に発散するので、バックライト照明や間接照明の場合には、好都合である。
第1の実施形態において、照明器具について説明した。照明器具としての十分な明るさが得られるので、表示装置としても応用可能である。特に地下鉄の路線案内等の色わけにより、表示する表示装置には、各色につき、十分な明度が得られるので好適であう。第1の実施形態において説明したように、赤色LEDチップ、黄色LEDチップ、青色LEDチップに印加する電流を独立に制御するように構成すれば、任意の色が合成出来、これを各種の表示装置に用いることが出来る。特に、色合成により、色覚異常者が見やすい色への発光波長の微調整が可能になる。色覚異常は、1色型色覚(全色盲)、2色型色覚(色盲)、異常3色型色覚(色弱)の3つに分類される。又2色型色覚は、第1色盲、第2色盲及び第3色盲とに分別される。すべての色覚異常者に満足出来る色の組み合わせは、現実には困難である。しかし、この場合でも、現場での種々の環境を含めた実験的を行い、可能な限り多くの色覚異常者に満足してもらえる最良な色の選択をし、色覚異常者に優しい表示装置が実現出来る。その他、種々の道路標識、交通標識、行き先案内標識等に用いる表示装置として採用可能である。
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。