JP2007310053A - 有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物、有機系反射防止層及び防汚層を有する物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機系反射防止層及び有機系反射防止層上に形成される防汚層の耐擦傷性、拭き取り性、耐薬品性等の耐久品質を向上したコーティング組成物、及びそのコーティング組成物を用い、有機反射防止層および防汚層の耐擦傷性、耐薬品性等の耐久品質を向上した物品を提供する。
【解決手段】物品としてのプラスチック眼鏡レンズは、レンズ基材上に、少なくともフッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子およびアルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有する反射防止処理液(コーティング組成物)から形成された有機系反射防止層と、有機系反射防止層上にフッ素含有シラン組成物を含有する防汚性処理液(コーティング組成物)から形成された防汚層を有する。
【選択図】なし
【解決手段】物品としてのプラスチック眼鏡レンズは、レンズ基材上に、少なくともフッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子およびアルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有する反射防止処理液(コーティング組成物)から形成された有機系反射防止層と、有機系反射防止層上にフッ素含有シラン組成物を含有する防汚性処理液(コーティング組成物)から形成された防汚層を有する。
【選択図】なし
Description
有機系反射防止層及び有機系反射防止層上に防汚層を形成するコーティング組成物、そのコーティング組成物を用いた有機系反射防止層及び防汚層を有する物品に関する。
レンズ、ミラーなどの光学物品及びCD(Compact Disc)などの記録媒体は、一般的に、表面反射を防止する目的で反射防止層を形成したり、さらに表面の撥水撥油性能を向上させたりする目的で、反射防止層上にフッ素を含有する有機ケイ素化合物などからなる防汚層が成膜されている。
こうした反射防止層は、真空蒸着法、スパッタ法あるいは化学的気相成長法などの乾式法や、ディッピング法、スピンコート法などの湿式法を用いて形成される。このうち、湿式法による成膜方法は、生産性が高く、しかも装置が簡便で低コストなことから、各種物品に多用されている。
こうした反射防止層は、真空蒸着法、スパッタ法あるいは化学的気相成長法などの乾式法や、ディッピング法、スピンコート法などの湿式法を用いて形成される。このうち、湿式法による成膜方法は、生産性が高く、しかも装置が簡便で低コストなことから、各種物品に多用されている。
しかしながら、湿式法により形成される有機反射防止層は、膜の十分な密着性、あるいは均一性を得るのが難しかった。
こうした課題のうち、膜の均一性を得るために、透明基板上に、湿式法により、所定の平均粒径の内部空洞を有するシリカ系微粒子と、有機ケイ素化合物とからなる反射防止層(すなわち、有機系反射防止層)を形成した光学部品。さらに、その反射防止層の最表面にフッ素系撥水膜(すなわち、防汚層)を形成した光学部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
こうした課題のうち、膜の均一性を得るために、透明基板上に、湿式法により、所定の平均粒径の内部空洞を有するシリカ系微粒子と、有機ケイ素化合物とからなる反射防止層(すなわち、有機系反射防止層)を形成した光学部品。さらに、その反射防止層の最表面にフッ素系撥水膜(すなわち、防汚層)を形成した光学部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に示される光学部品は、湿式法を用いて、内部空洞を有するシリカ系微粒子を含む有機系反射防止層が形成され、その表面にフッ素含有シランからなる防汚層が形成されている。したがって、有機系反射防止層に内部空洞を有するシリカ系微粒子を含むことにより、屈折率が低い有機系反射防止層を形成することができる。しかしながら、この有機系反射防止層の上層に防汚層を成膜した際、十分な密着性が得られない課題があった。すなわち、有機系反射防止層は膜厚の均一性は高いものの、その最表面は表面粗さが大きい状態であると考えられ、また防汚層を形成するフッ素含有シランは一般に高分子量体であることから、防汚層を形成するフッ素含有シランが有機系反射防止層を形成する有機ケイ素化合物に対して密着力を発現するのに十分な分子間距離まで近づくことが難しくなり、密着性が得られ難いと考えられる。
さらに、有機系反射防止層の屈折率をより低減する目的で、有機反射防止層を形成するコーティング組成物中に、有機ケイ素化合物に代えてフッ素を含有するシラン化合物(フッ素含有シラン化合物)を含む場合には、その表面に形成される防汚層に含まれるフッ素含有シラン化合物との間の結合力(密着性)が弱く、耐擦傷性、拭き取り性、耐薬品性などの耐久品質が、より一層得られ難い。加えて、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物にフッ素含有シラン化合物を含む場合には、有機系反射防止層自体の耐擦傷性、耐薬品性が得られ難い傾向があった。すなわち、有機系反射防止層中においてフッ素原子が結合形成反応を阻害し、アルコキシシラン等のフッ素を含まないシラン化合物に比べて、三次元的なマトリックスが形成し難いことにより、耐久品質が得られ難いと考えられる。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、有機系反射防止層及び有機系反射防止層上に形成される防汚層の耐擦傷性、拭き取り性、耐薬品性等の耐久品質を向上したコーティング組成物を提供することを目的とする。さらに、そのコーティング組成物を用い、耐擦傷性、拭き取り性、耐薬品性等の耐久品質を向上した有機系反射防止層及び防汚層を有する物品を提供することを第2の目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物は、基材上に設けられる有機系反射防止層及び前記有機系反射防止層上に設けられる防汚層を形成するコーティング組成物であって、前記有機系反射防止層を形成するコーティング組成物が、少なくとも、フッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子およびアルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有し、前記防汚層を形成するコーティング組成物が、フッ素含有シラン化合物を含有することを特徴とする。
これによれば、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物が、少なくとも、フッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子およびアルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有し、さらに、有機系反射防止層上に防汚層を形成するコーティング組成物が、フッ素含有シラン組成物を含有することにより、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれるアルミニウムを中心金属とする金属錯塩が、シラノール基の縮合反応を促進し、有機系反射防止層内のフッ素含有シラン化合物間、および防汚層内のフッ素含有シラン組成物との間で、フッ素シラン同士の三次元的なマトリックスの縮合反応が促進され、耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質が向上したコーティング組成物が得られる。また、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に内部空洞を有するシリカ微粒子が含まれることで、屈折率が低減した有機系反射防止層が得られる。
また、本発明の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物は、前記有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれる前記アルミニウムを中心金属とする金属錯塩が、アルミニウムのアセチルアセトネート(Al(acac)3)であることを特徴とする。
これによれば、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれるアルミニウムを中心金属とする金属錯塩が、アルミニウムのアセチルアセトネート(Al(acac)3)であることにより、シラノール基が形成され易くなり、有機系反射防止層内のフッ素含有シラン化合物間、および防汚層内のフッ素含有シラン組成物との間で、フッ素シラン同士の三次元的なマトリックスの縮合反応を促進することができる。
これによれば、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれるアルミニウムを中心金属とする金属錯塩が、アルミニウムのアセチルアセトネート(Al(acac)3)であることにより、シラノール基が形成され易くなり、有機系反射防止層内のフッ素含有シラン化合物間、および防汚層内のフッ素含有シラン組成物との間で、フッ素シラン同士の三次元的なマトリックスの縮合反応を促進することができる。
また、本発明の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物は、前記有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれる前記アルミニウムを中心金属とする金属錯塩の固形分比率が、前記有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれるフッ素含有シラン化合物と前記シリカ微粒子との混合固形分に対して、0.1重量%〜20重量%であることを特徴とする。
これによれば、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれるアルミニウムを中心金属とする金属錯塩の固形分比率が、フッ素含有シラン化合物とシリカ微粒子との混合固形分に対して、0.1重量%〜20重量%であることにより、有機系反射防止層の架橋反応が促進され過ぎて膜応力が強くなることにより、耐熱性が低下することを防止し、しかも有機系反射防止層内のフッ素含有シラン化合物間、および有機系反射防止層上に形成される防汚層内のフッ素含有シラン組成物との間で、フッ素シラン同士の三次元的なマトリックスの縮合反応が促進され、耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質が向上したコーティング組成物が得られる。
また、本発明の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物は、前記防汚層を形成するコーティング組成物に含まれる前記フッ素含有シラン化合物は、分子量が1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Aと、分子量が100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Bと、を含むことを特徴とする。
これによれば、防汚層を形成するコーティング組成物に、分子量が1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Aと、分子量が100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Bが含まれることにより、十分な耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質を備えたコーティング組成物が得られる。すなわち、防汚層の下層に形成された有機系反射防止層の最表面は、表面状態が粗い状態であるのに対し、特に低分子量体であるフッ素含有シラン化合物Bを併用することで、高分子量体で高い防汚性能を発現するフッ素含有シラン化合物Aが空隙なく(ムラなく)結合し、十分な耐久品質が得られると考えられる。
また、本発明の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物は、前記フッ素含有シラン化合物Aと前記フッ素含有シラン化合物Bの固形分重量比が、90/10〜70/30であることを特徴とする。
これによれば、防汚層を形成するコーティング組成物に含まれるフッ素含有シラン化合物Aとフッ素含有シラン化合物Bの固形分重量比が、90/10〜70/30であることにより、防汚層の下層に形成された表面状態の粗い有機系反射防止層上に空隙なく(ムラなく)結合し、十分な耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質を備えたコーティング組成物が得られる。
また、本発明の有機系反射防止層及び防汚層を有する物品は、前記基材上に前記有機系反射防止層及び前記有機系反射防止層上に防汚層が形成され、前記有機系反射防止層を形成するコーティング組成物が、少なくとも、フッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子およびアルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有し、前記防汚層を形成するコーティング組成物が、分子量1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Aと、分子量100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Bと、を含むことを特徴とする。
これによれば、基材上に形成された有機系反射防止層が、少なくとも、フッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子およびアルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有するコーティング組成物から形成され、さらに、有機系反射防止層上に形成される撥水性能や撥油性能を有する防汚層が、分子量が1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Aと、分子量が100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Bとを含むコーティング組成物から形成される。これにより、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれるアルミニウムを中心金属とする金属錯塩が、シラノール基の縮合反応を促進し、有機系反射防止層内のフッ素含有シラン化合物間、および防汚層内のフッ素含有シラン組成物との間で、フッ素シラン同士の三次元的なマトリックスの縮合反応が促進され、耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質が向上した防汚層を備えた物品が得られる。また、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に内部空洞を有するシリカ微粒子が含まれることで、屈折率が低減した有機系反射防止層を備えた、有機系反射防止層及び防汚層を有する物品が得られる。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の有機系反射防止層及び防汚層を有する物品としては、眼鏡レンズ、光学機器用のレンズおよびハイブリットレンズ、携帯電話の表示板、CDなどの記録媒体、各種ディスプレイのカバー、腕時計のカバーガラス、その他の光学素子、例えば、プリズムなどが挙げられる。また、基材の材質は、特に限定されず、ガラス、プラスチックの何れであっても良い。
なお、本実施形態は、物品として、成形性、加工性に優れかつ軽量で、しかも割れ難いことから、近年、急速に普及している、プラスチック眼鏡レンズの場合を例示する。
本発明の有機系反射防止層及び防汚層を有する物品としては、眼鏡レンズ、光学機器用のレンズおよびハイブリットレンズ、携帯電話の表示板、CDなどの記録媒体、各種ディスプレイのカバー、腕時計のカバーガラス、その他の光学素子、例えば、プリズムなどが挙げられる。また、基材の材質は、特に限定されず、ガラス、プラスチックの何れであっても良い。
なお、本実施形態は、物品として、成形性、加工性に優れかつ軽量で、しかも割れ難いことから、近年、急速に普及している、プラスチック眼鏡レンズの場合を例示する。
有機系反射防止層及び防汚層が形成されるプラスチック眼鏡レンズ(以後、眼鏡レンズと表す)は、基材としてのレンズ基材の表面にハードコート層が設けられている。このハードコート層の表面に、湿式法を用いて有機系反射防止層が設けられ、さらに有機系反射防止層の表面、すなわち眼鏡レンズの最表面に、撥水性能や撥油性能を有する防汚層が設けられる。
レンズ基材は、重合性組成物を硬化した透明プラスチックからなり、例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)樹脂、ポリウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
このうち、屈折率が1.6以上の素材を使用することが好ましい。例えば、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチック、あるいは、エピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを重合硬化して製造されるエピスルフィド系プラスチックが例示できる。
このうち、屈折率が1.6以上の素材を使用することが好ましい。例えば、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるポリチオウレタン系プラスチック、あるいは、エピスルフィド基を持つ化合物を含む原料モノマーを重合硬化して製造されるエピスルフィド系プラスチックが例示できる。
ポリチオウレタン系プラスチックの主成分となるイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物としては、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。
イソシアネート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
イソシアネート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
ハードコート層は、レンズ基材の表面に、シリコーン系またはアクリル系材料などにより、例えば1〜5μm程度の厚さで形成されている。ハードコート層は、レンズ基材に耐擦傷性を付与すると共に、レンズ基材と後述する有機系反射防止層の間に介在させることで、有機系反射防止層の密着性を良好にし、剥離を防止する機能を有する。
このハードコート層は、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、フロー法、ドクターブレード法などの塗布方法を用いて塗膜を形成した後に、熱、紫外線等の電磁波、電子ビームなどで硬化して形成されている。
このハードコート層は、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、フロー法、ドクターブレード法などの塗布方法を用いて塗膜を形成した後に、熱、紫外線等の電磁波、電子ビームなどで硬化して形成されている。
ハードコート層をレンズ基材上に直に形成する場合は、レンズ基材の表面に予めアルカリ処理、酸処理、微粒子による研磨処理、プラズマ処理等を行うことが好ましい。これにより、レンズ基材とハードコート層との密着性がより向上する。
また、レンズ基材とハードコート層との間にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂などで形成され、レンズ基材とハードコート層との密着性をより高める必要がある場合や、熱的な影響でレンズ基材が膨張する変形を緩和して上層の有機系反射防止層のクラック発生を防止して耐熱性を向上させる必要がある場合、さらに耐衝撃性を向上させる必要がある場合などに設けられる。
また、レンズ基材とハードコート層との間にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂などで形成され、レンズ基材とハードコート層との密着性をより高める必要がある場合や、熱的な影響でレンズ基材が膨張する変形を緩和して上層の有機系反射防止層のクラック発生を防止して耐熱性を向上させる必要がある場合、さらに耐衝撃性を向上させる必要がある場合などに設けられる。
このように、レンズ基材の表面にハードコート層が設けられた眼鏡レンズ上に、有機系反射防止層が形成され、さらに、有機系反射防止層の表面に防汚層が形成される。
先ず、有機系反射防止層について説明する。
先ず、有機系反射防止層について説明する。
有機系反射防止層は、眼鏡レンズの表面反射を防止するために、これより下層に形成されたハードコート層、およびレンズ基材よりも低屈折率の層として形成される。有機系反射防止層の屈折率は、反射防止膜として機能するためには、ハードコート層との屈折率差が0.10〜0.20以上あるのが好ましい。
有機系反射防止層を形成するコーティング組成物としての反射防止処理液は、フッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子、アルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有する組成物などを含み、湿式法を用いて塗膜される。
有機系反射防止層を形成するコーティング組成物としての反射防止処理液は、フッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子、アルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有する組成物などを含み、湿式法を用いて塗膜される。
フッ素含有シラン化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
XmR2 3-mSi−Y−SiR2 3-mXm…(1)
上記一般式(1)中、Yはフッ素原子を1個以上有する二価有機基であり、フッ素原子の個数は好ましくは4〜50個、より好ましくは4〜24個である。
XmR2 3-mSi−Y−SiR2 3-mXm…(1)
上記一般式(1)中、Yはフッ素原子を1個以上有する二価有機基であり、フッ素原子の個数は好ましくは4〜50個、より好ましくは4〜24個である。
特に、反射防止機能を良好に発現させるためには、フッ素原子を多量に含有していることが好ましいが、少な過ぎたり、多過ぎたりすると不具合を生ずる。したがって、Yとしては下記の構造のものが好ましい。
「−CH2CH2(CF2)nCH2CH2−」、あるいは「−C2H4−CF(CF3)−(CF2)n−CF(CF3)−C2H4−」。
但し、nは2〜20の整数であり、好ましくは2〜12、より好ましくは4〜10である。nが2未満であると、反射防止性能、および耐薬品性能を十分に得ることができない場合がある。一方、nが20を超えると、架橋密度が低下するため十分な耐擦傷性が得られないことがある。
「−CH2CH2(CF2)nCH2CH2−」、あるいは「−C2H4−CF(CF3)−(CF2)n−CF(CF3)−C2H4−」。
但し、nは2〜20の整数であり、好ましくは2〜12、より好ましくは4〜10である。nが2未満であると、反射防止性能、および耐薬品性能を十分に得ることができない場合がある。一方、nが20を超えると、架橋密度が低下するため十分な耐擦傷性が得られないことがある。
また、上記一般式(1)中、R2は炭素数1〜6の一価炭化水素基を表す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等を例示することができる。このうち、良好な耐擦傷性を得るには、メチル基を用いるのが好ましい。
上記一般式(1)中、mは、1〜3の整数である。好ましくは2または3であり、より好ましくは3である。mが3の場合には、高硬度な被膜を得ることができる。
上記一般式(1)中、mは、1〜3の整数である。好ましくは2または3であり、より好ましくは3である。mが3の場合には、高硬度な被膜を得ることができる。
また、上記一般式(1)中、Xは加水分解性基を表す。具体例としては、Clなどのハロゲン原子、ORX(RXは炭素数1〜6の一価炭化水素基)で示されるオルガノオキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、イソプロペノキシ基などのアルケノキシ基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、メチルエチルケトキシム基等のケトオキシム基、メトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基などを挙げることができる。
このようなフッ素含有シラン化合物の具体例としては、例えば、「(CH3O)3Si−C2H4−C6F12−C2H4−Si(OCH3)3」で表される構造の化合物が例示できる。
内部空洞を有するシリカ微粒子は、公知のものを用いることができる。例えば、平均粒子径10〜100nmのシリカ微粒子の被膜層の内部に空洞、あるいは空隙が形成されているものを用いることができる。この被膜層の内部の空洞内にシリカよりも屈折率が低い気体または溶媒が包含されることによって、空洞のないシリカ系微粒子に比べて屈折率が低減し、形成される有機系反射防止層の低屈折率化が達成される。
この内部空洞を有するシリカ微粒子は、例えば水、アルコール系の分散媒、あるいはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたシリカゾルが用いられる。内部に空洞を有するシリカ微粒子の固形分比率は、10〜30重量%が好ましい。
この内部空洞を有するシリカ微粒子は、例えば水、アルコール系の分散媒、あるいはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたシリカゾルが用いられる。内部に空洞を有するシリカ微粒子の固形分比率は、10〜30重量%が好ましい。
アルミニウム(Al(III))を中心金属とする金属錯塩は、アルミニウムのアセチルアセトン(Al(acac)3)等を用いることができる。
アルミニウムを中心金属とする金属錯塩は1種の硬化触媒であり、シラノール基の縮合反応を促進する作用を有し、形成される有機系反射防止層内のフッ素含有シラン化合物間、および有機系反射防止層の表面に形成される防汚層内のフッ素含有シラン組成物との間で、フッ素シラン同士の三次元的なマトリックスの形成を促進する機能を有する。
アルミニウムを中心金属とする金属錯塩は1種の硬化触媒であり、シラノール基の縮合反応を促進する作用を有し、形成される有機系反射防止層内のフッ素含有シラン化合物間、および有機系反射防止層の表面に形成される防汚層内のフッ素含有シラン組成物との間で、フッ素シラン同士の三次元的なマトリックスの形成を促進する機能を有する。
なお、有機系反射防止層を形成する反射防止処理液の組成物は、フッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子、アルミニウムを中心金属とする金属錯塩の他に、フッ素を含有しないシラン化合物(有機ケイ素化合物)を含むことができる。また、必要に応じて、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、分散染料等を添加し、硬化後の被膜性能を改良することもできる。
これらの組成物は、以下の様な手順で有機系反射防止層を形成する反射防止処理液が調合される。
先ず、前記フッ素含有シラン化合物をアルコール系溶媒などの有機溶剤で希釈し、さらに、必要に応じて水または薄い塩酸、酢酸等を添加して加水分解を行い、十分に撹拌した後に、固形分比率が5〜15重量%程度のシリコーンレジンを得る。
先ず、前記フッ素含有シラン化合物をアルコール系溶媒などの有機溶剤で希釈し、さらに、必要に応じて水または薄い塩酸、酢酸等を添加して加水分解を行い、十分に撹拌した後に、固形分比率が5〜15重量%程度のシリコーンレジンを得る。
そして、そのシリコーンレジンに、内部に空洞を有するシリカ微粒子が有機溶剤中にコロイド状に分散したシリカゾルを配合する。シリコーンレジンとシリカゾルの配合比率は、固形分比率で50/50〜100/0の範囲が好ましい。そして、さらに有機溶剤を加えて希釈し、フッ素含有シラン化合物とシリカゾルを含む組成物の固形分比率が0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%の調合液が配合される。
調合液の固形分比率が0.5重量%未満の場合には、ディピング法における引き上げ速度を遅くしたり、スピンナー法における回転数を高くしたりしても、膜厚が必要よりも薄くなってしまい、所定の膜厚を得ることが困難である。一方、固形分比率が15重量%を越えた場合には、ディピング法における引き上げ速度を早くしたり、スピンナー法における回転数を遅くしたりしても、膜厚が必要以上に厚くなり、所定の膜厚を得ることが困難である。また、引き上げ速度を速くし過ぎたり、回転数を遅くし過ぎたりすると、眼鏡レンズ上での塗りムラが大きくなり易い。
そして、この調合液に、アルミニウム(Al(III))を中心金属とする金属錯塩を、調合液の固形分(フッ素含有シラン化合物とシリカゾルの混合固形分)に対する固形分比率が0.1〜20重量%、より好ましくは1〜5重量%となるように加える。金属錯塩の量が0.1重量%未満の場合には、フッ素シラン同士の三次元的なマトリックスの結合が得られない。一方、20重量%を超える場合には、アルミニウムの高い屈折率により、形成される有機系反射防止層の屈折率が高くなる。また、形成される有機系反射防止層の架橋反応が進行し過ぎて膜応力が高くなり、耐熱性が低下する。
そして、十分に撹拌した後に、有機系反射防止層を形成する反射防止処理液が得られる。
そして、十分に撹拌した後に、有機系反射防止層を形成する反射防止処理液が得られる。
得られた反射防止処理液は、湿式法により有機系反射防止層が形成される。
有機系反射防止層の形成は、ハードコート層が設けられた眼鏡レンズの表面に、反射防止処理液を塗布した後、加熱処理して成膜される。湿式法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法、フロー法などの公知の方法が使用可能である。これらの内、眼鏡レンズのような曲面形状にムラなく塗布することを考慮すると、ディッピング法、またはスピンナー法が好ましい。
有機系反射防止層の形成は、ハードコート層が設けられた眼鏡レンズの表面に、反射防止処理液を塗布した後、加熱処理して成膜される。湿式法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法、フロー法などの公知の方法が使用可能である。これらの内、眼鏡レンズのような曲面形状にムラなく塗布することを考慮すると、ディッピング法、またはスピンナー法が好ましい。
湿式法により形成される有機系反射防止層は、蒸着法やスパッタリング法などの乾式法で形成される無機膜が、下層の有機被膜からなるハードコート層との大きな熱膨張率差により耐熱性が低いのに対して、ハードコート層との熱膨張率差が小さいことから加熱によるクラックの発生が起こり難くなり、耐熱性に優れる。また、湿式法は、真空装置や大型の設備は不要となり、簡便に成膜することが可能となる。
なお、反射防止処理液を塗布処理する前に、レンズ基材の表面に設けられたハードコート層の表面処理を行うことが好ましい。この表面処理の具体例としては、酸処理,アルカリ処理,紫外線照射処理,アルゴンもしくは酸素雰囲気中での高周波放電によるプラズマ処理,アルゴンや酸素もしくは窒素などのイオンビーム照射処理などが挙げられる。
反射防止処理液をハードコート層が設けられた眼鏡レンズ表面に塗布後、熱または紫外線などで硬化させることによって有機系反射防止層が形成される。このうち、加熱処理によって硬化させることが好ましい。加熱処理の際の加熱温度は、反射防止処理液の組成、レンズ基材の耐熱性等を考慮して決定されるが、50℃〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは80℃〜140℃の範囲である。
また、形成される有機系反射防止層の膜厚は、50nm〜150nmの範囲が好ましい。この範囲より厚すぎても薄すぎても十分な反射防止効果が得られない。
また、形成される有機系反射防止層の膜厚は、50nm〜150nmの範囲が好ましい。この範囲より厚すぎても薄すぎても十分な反射防止効果が得られない。
そして、有機系反射防止層が形成された眼鏡レンズの表面に、フッ素含有シラン組成物からなる防汚層が形成される。防汚層は、眼鏡レンズを使用するに際し、レンズ面に手垢、汗、化粧料等による汚れが付着し難く、しかも汚れを拭き取りやすくするために、防汚性能(撥水撥油性能)を付与する。
次に、この防汚層について説明する。
次に、この防汚層について説明する。
防汚層を形成するコーティング組成物としての防汚性処理液は、分子量が1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Aと、分子量が100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Bを含み、湿式法を用いて塗膜される。
一般的に、無機系反射防止層は、真空蒸着法などにより成膜されることから緻密な酸化物被膜が形成されるのに対して、有機系反射防止層の表面状態は粗く、その表面に形成される防汚層は、耐擦傷性や耐薬品性などの十分な耐久品質が得られ難い。それは、無機系反射防止層表面ではシラノール基が相対的に多く存在することにより活性水素基の密度が高いのに対し、有機系反射防止層表面では活性水素基の密度が低く、防汚層の成分との間で結合が形成され難いと考えられる。
このような状況に対して、本実施形態の防汚性処理液は、高分子量、すなわち分子量が1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Aと、低分子量、すなわち分子量が100〜700の範囲のフッ素シラン含有化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Bが、所定の比率で含まれる。これにより、有機系反射防止層に対して十分な耐擦傷性や耐薬品性などを備えた防汚層を形成することができる。
このような分子量の異なる複数のフッ素含有シラン化合物を含む組成物により、耐擦傷性や耐薬品性が向上する要因の一つは、以下のようなものであると推察される。
このような分子量の異なる複数のフッ素含有シラン化合物を含む組成物により、耐擦傷性や耐薬品性が向上する要因の一つは、以下のようなものであると推察される。
有機系反射防止層の表面状態が粗い場合、高分子量化合物だけでは表面の山面には結合するが、谷面には浸入できないと考えられる。あるいは、結合した高分子量化合物間に空隙が存在し、十分な防汚性能が得られないと考えられる。また、低分子量化合物だけでは表面の山面および谷面共に結合できるが、防汚性能が十分ではないと考えられる。したがって、高分子量化合物と低分子量化合物を組み合わせることによって有機系反射防止層の表面に防汚層がムラなく形成することができる。
また、低分子量化合物の分子量が700を超える化合物であれば表面の谷面には浸入し難くなると考えられ、低分子量のフッ素含有シラン化合物Bとして期待される効果が得られない。一方、高分子量化合物の分子量が1000未満の化合物であれば防汚性能が不十分であり、高分子量のフッ素含有シラン化合物Aとして期待される効果が得られない。
高分子量のフッ素含有シラン化合物Aの1つは、下記一般式(2)により表されるフッ素含有シラン化合物である。この具体例としては、オプツールDSX(商品名、ダイキン工業(株)製)が挙げられる。
前記一般式(2)中のRf1としては、通常、有機含有フッ素ポリマーを構成するパーフルオロアルキル基であれば、特に限定されず、例えば、炭素数1〜16の直鎖状または分岐状のものを挙げることができる。好ましくは、「CF3−」、「C2F5−」、「C3F7−」である。
前記一般式(2)中のZは、フッ素でも良いし、トリフルオロメチル基でも良い。
前記一般式(2)中のZは、フッ素でも良いし、トリフルオロメチル基でも良い。
前記一般式(2)中のa、b、c、d、eは、フッ素含有シラン化合物の主骨格を構成するパーフルオロポリエーテル鎖の繰り返し単位数を表し、0または1以上の整数であり、a+b+c+d+eが1以上であれば特に限定されないが、それぞれ独立して0〜200が好ましい。さらに、フッ素含有シラン化合物の分子量を考慮すれば、より好ましくは、それぞれ独立して、0〜50である。a+b+c+d+eは、好ましくは、1〜100である。
なお、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、一般式(2)中においてはこの順に記載したが、通常のパーフルオロポリエーテル鎖の構成によって、これらの各繰り返し単位の結合順序は、この順に限定されるものではない。
なお、a、b、c、d、eで括られた各繰り返し単位の存在順序は、一般式(2)中においてはこの順に記載したが、通常のパーフルオロポリエーテル鎖の構成によって、これらの各繰り返し単位の結合順序は、この順に限定されるものではない。
前記一般式(2)中のYは、上記炭素数1〜4のアルキル基であり、特に限定されず、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等を挙げることができ、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
前記一般式(2)中のX1は、水素、臭素またはヨウ素を表す。X1が臭素またはヨウ素である場合には、フッ素含有シラン化合物Aは、ラジカル反応性が高くなるので、化学結合により他の化合物と結合させるのには好都合である。
前記一般式(2)中のX1は、水素、臭素またはヨウ素を表す。X1が臭素またはヨウ素である場合には、フッ素含有シラン化合物Aは、ラジカル反応性が高くなるので、化学結合により他の化合物と結合させるのには好都合である。
前記一般式(2)中の1は、パーフルオロポリエーテル鎖を構成する炭素とこれに結合するケイ素との間に存在するアルキレン基の炭素数を表し、0、1または2であるが、より好ましくは、0である。
前記一般式(2)中のmは、ケイ素に結合する置換基R1の結合数を表し、1、2または3である。置換基R1が結合していない部分の当該ケイ素にはR2が結合する。
R1は、加水分解可能な置換基としては特に限定されず、好ましいものとしては、例えば、ハロゲン、「−OR11」、「−OCOR11」、「−OC(R11)=C(R12)2」、「−ON=C(R11)2」、「−ON=CR13」等を挙げることができる。但し、R11は、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、R12は、水素または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R13は、炭素数3〜6の2価の脂肪族炭化水素基を表す。より好ましくは、塩素、「−OCH3」、「−OC2H5」である。
R1は、加水分解可能な置換基としては特に限定されず、好ましいものとしては、例えば、ハロゲン、「−OR11」、「−OCOR11」、「−OC(R11)=C(R12)2」、「−ON=C(R11)2」、「−ON=CR13」等を挙げることができる。但し、R11は、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、R12は、水素または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R13は、炭素数3〜6の2価の脂肪族炭化水素基を表す。より好ましくは、塩素、「−OCH3」、「−OC2H5」である。
R2は、水素または1価の炭化水素基を表す。1価の炭化水素基としては特に限定されず、好ましいものとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等を挙げることができ、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
また、前記一般式(2)中のnは、1以上の整数を表し、特に上限はないが、1〜10の整数であることが好ましい。
また、前記一般式(2)中のnは、1以上の整数を表し、特に上限はないが、1〜10の整数であることが好ましい。
高分子量のフッ素含有シラン化合物Aの1つは、下記一般式(3)で表されるフッ素含有シラン化合物(パーフルオロポリアルキレンエーテル変性シラン)である。この具体例としては、「KY−130」(商品名、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
前記一般式(3)中のRf2基は、上記のとおり、式:「−(CkF2kO)−」(式中、kは1〜6、好ましくは1〜4の整数である)で表わされる単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造からなる2価の基であるが、一般式(3)中のsが各々0である場合、一般式(3)中の酸素原子に結合するRf2基の末端は、酸素原子ではない。
このRf2基としては、例えば、下記一般式で示されるものが挙げられる。
「−CF2CF2O(CF2CF2CF2O)jCF2CF2−」(式中、jは1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数である)。
「−CF2(OC2F4)p´−(OCF2)q´−」(式中、p´およびq´は、それぞれ、1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数であり、かつp´+q´の和は、10〜100、好ましくは20〜90、より好ましくは40〜80の整数であり、上記の一般式中の繰り返し単位の(OC2F4)、および(OCF2)の配列はランダムである)。
「−CF2CF2O(CF2CF2CF2O)jCF2CF2−」(式中、jは1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数である)。
「−CF2(OC2F4)p´−(OCF2)q´−」(式中、p´およびq´は、それぞれ、1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数であり、かつp´+q´の和は、10〜100、好ましくは20〜90、より好ましくは40〜80の整数であり、上記の一般式中の繰り返し単位の(OC2F4)、および(OCF2)の配列はランダムである)。
前記一般式(3)中のX2が加水分解性基である場合としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基またはアリロキシ基、イソプロペノキシ等のアルケニルオキシ基またはアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基またはジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンノキシム基、シクロヘキサノキシム基等のケトオキシム基またはN−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基またはN−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基またはN,N−ジメチルアミノオキシ基、N,N−ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基。また、X2がハロゲン原子である場合としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
これらのX2の内、メトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基および塩素原子が好適である。
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基またはアリロキシ基、イソプロペノキシ等のアルケニルオキシ基またはアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基またはジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンノキシム基、シクロヘキサノキシム基等のケトオキシム基またはN−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基またはN−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基またはN,N−ジメチルアミノオキシ基、N,N−ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基。また、X2がハロゲン原子である場合としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
これらのX2の内、メトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基および塩素原子が好適である。
前記一般式(3)中のR3は、炭素原子数1〜8、好ましくは1〜3の一価炭化水素基であり、例えば、以下のようなものが挙げられる。
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基またはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基またはフェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基またはベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基またはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基。これらの内、メチル基が好適である。
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基またはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基またはフェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基またはベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基またはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基。これらの内、メチル基が好適である。
また、前記一般式(3)中のsは、0〜2の整数であり、好ましくは1である。また、tは1〜5の整数であり、3であることが好ましい。hおよびiは各々2または3であり、加水分解及び縮合反応性および被膜の密着性の観点から、3であることが好ましい。
一方、低分子量のフッ素含有シラン化合物B(分子量が100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物)としては、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、n−トリフルオロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)プロピルシラザン、n−ヘプタフルオロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ペンチルシラザン、n−ノナフルオロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)ヘキシルシラザン、n−トリデカフルオロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)オクチルシラザン、n−ヘプタデカフルオロ(1,1,2,2−テトラヒドロ)デシルシラザン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘプチルメチルジクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジメトシキシラン、ヘキサメチルジシラザンを挙げることができる。
この具体例としては、「KP−801」(商品名、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
この具体例としては、「KP−801」(商品名、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
前記一般式(2)、または一般式(3)で表される高分子量のフッ素含有シラン化合物Aと、低分子量のフッ素含有シラン化合物Bは、固形分重量比が90/10〜70/30に混合した調整組成物を、有機溶剤に溶解して、防汚性処理液が得られる。フッ素含有シラン化合物Aと低分子量のフッ素含有シラン化合物Bの固形分重量比が前記範囲(90/10〜70/30)の範囲から外れる場合には、防汚性能が不十分で、期待される効果が得られない。
有機溶剤としては、フッ素含有シラン化合物の溶解性に優れるパーフルオロ基を有し、炭素数が4以上の有機化合物が好ましく、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロデカン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−4−メトキシブタン、パーフルオロ−4−エトキシブタン、メタキシレンヘキサフロライドを挙げることができる。また、パーフルオロエーテル油、クロロトリフルオロエチレンオリゴマー油を使用することもできる。これらの有機溶剤の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
有機溶剤で希釈するときの濃度は、0.03〜1重量%の範囲が好ましい。濃度が低すぎると十分な厚さの防汚層の形成が困難であり、十分な防汚性能が得られない場合がある。一方、濃すぎると防汚層が厚くなり過ぎるおそれがあり、塗布後塗りムラをなくすためのリンス作業の負担が増すおそれがある。
そして、調合された防汚性処理液は、有機系反射防止層が設けられた眼鏡レンズの表面に塗布された後、アニール処理されて防汚性能を備えた防汚層が形成される。
防汚層の塗布方法として、例えば、前述の有機系反射防止膜の場合と同様に、湿式法を用いることができる。湿式法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法、フロー法などの公知の方法が使用可能である。
防汚層の塗布方法として、例えば、前述の有機系反射防止膜の場合と同様に、湿式法を用いることができる。湿式法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法、フロー法などの公知の方法が使用可能である。
この内、ディッピング法を用いた場合の塗布方法は、有機溶剤を用いて所定濃度に調整した防汚性処理液中に、表面に有機系反射防止層が形成された眼鏡レンズを浸漬し、所定時間経過後、所定速度で引き上げて、防汚性処理液が塗布される。浸漬時間としては0.5分〜3分程度が望ましい。0.5分以下であると、眼鏡レンズ表面への防汚性成分(フッ素含有シラン)の吸着が充分でないため、所定の防汚性能を得ることができない。3分以上の場合は、サイクルタイムの増加を招き好ましくない。
引き上げ速度は、100mm/分〜300mm/分程度が好ましい。引き上げ速度は、防汚性処理液の濃度との兼ね合いで決めるものであるが、100mm/分以下では、防汚層が薄くなりすぎて所定の防汚性能が得られず、300mm/分以上では、防汚層が厚くなり過ぎ、塗布後に塗りムラを取り除くためのリンス作業の負担が増すおそれがある。
そして、防汚性処理液が表面全体に塗布された眼鏡レンズは、防汚性成分(フッ素含有シラン)を眼鏡レンズ(有機系反射防止層)に固定するアニール処理を行うことが好ましい。アニール処理は、防汚性処理液に含まれるフッ素含有シランと、防汚層の下層に形成された有機系反射防止層との化学結合を促進することにより、防汚性能(撥水撥油性能)の耐久性を増加させることを目的とする。
アニール処理は、常温環境下に8時間以上放置することで行われる。
より好ましくは、温度が40℃〜90℃、相対湿度が40%〜90%の範囲に設定された恒温恒湿槽内に、1時間〜2時間程度投入して行われる。これにより、眼鏡レンズの表面に塗布された防汚性処理液中の有機溶剤が徐々に蒸発し、眼鏡レンズの表面には、撥水成分や撥油成分のフッ素含有シラン組成物が残留し、防汚性能を備えた防汚層が形成される。
より好ましくは、温度が40℃〜90℃、相対湿度が40%〜90%の範囲に設定された恒温恒湿槽内に、1時間〜2時間程度投入して行われる。これにより、眼鏡レンズの表面に塗布された防汚性処理液中の有機溶剤が徐々に蒸発し、眼鏡レンズの表面には、撥水成分や撥油成分のフッ素含有シラン組成物が残留し、防汚性能を備えた防汚層が形成される。
形成される防汚層の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜0.5μmが好ましい。より好ましくは0.001〜0.03μmである。
防汚層の膜厚が薄すぎると防汚性能が乏しくなり、厚すぎると表面がべたつくので好ましくない。また、防汚層の厚さが0.03μmより厚くなると反射防止効果が低下するため好ましくない。
防汚層の膜厚が薄すぎると防汚性能が乏しくなり、厚すぎると表面がべたつくので好ましくない。また、防汚層の厚さが0.03μmより厚くなると反射防止効果が低下するため好ましくない。
以下、本実施形態に基づく具体的な実施例及び比較例を説明する。
(実施例1)
物品として、屈折率1.67のプラスチック眼鏡レンズ(セイコーエプソン(株)製、商品名:セイコースーパーソブリン(SSV))の表面に、予めプライマー層が形成され、そのプライマー層の表面にハードコート層が成膜されたものを準備した。
物品として、屈折率1.67のプラスチック眼鏡レンズ(セイコーエプソン(株)製、商品名:セイコースーパーソブリン(SSV))の表面に、予めプライマー層が形成され、そのプライマー層の表面にハードコート層が成膜されたものを準備した。
(1)有機系反射防止層の形成
「(CH3O)3Si−C2H4−C6F12−C2H4−Si(OCH3)3」で表される構造のフッ素含有シラン化合物47.8重量部(0.08モル)に、有機溶剤としてメタノール312.4重量部、フッ素を含有しないシラン化合物のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4.7重量部(0.02モル)加え、さらに0.1規定の塩酸水溶液36重量部を加えて混合した後、設定温度が25℃の恒温槽内で2時間攪拌して、固形分比率が10重量%のシリコーンレジンを得た。
「(CH3O)3Si−C2H4−C6F12−C2H4−Si(OCH3)3」で表される構造のフッ素含有シラン化合物47.8重量部(0.08モル)に、有機溶剤としてメタノール312.4重量部、フッ素を含有しないシラン化合物のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4.7重量部(0.02モル)加え、さらに0.1規定の塩酸水溶液36重量部を加えて混合した後、設定温度が25℃の恒温槽内で2時間攪拌して、固形分比率が10重量%のシリコーンレジンを得た。
このシリコーンレジンに、内部に空洞を有するシリカ微粒子としての中空シリカ−イソプロパノール分散ゾル(触媒化成工業(株)製、固形分比率:20重量%、平均粒子径:35nm、外殻厚み:8nm)を、シリコーンレジンと中空シリカの固形分比率が70:30となるように配合し、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル935重量部を加えて希釈し、固形分が3重量%の組成物を得た。
そして、この組成物に、アルミニウム(Al(III))を中心金属とする金属錯塩として、アルミニウムのアセチルアセトン(Al(acac)3)を、コーティング組成物に対する固形分比率が3重量%となるように加えた後、4時間攪拌した。これにより、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物としての反射防止処理液を得た。
そして、予め準備したプラスチック眼鏡レンズ(以後、眼鏡レンズと表す)を、大気プラズマによるプラズマ処理を行った後、得られた反射防止処理液を、眼鏡レンズの表面に乾燥膜厚が100nmとなるように、スピナー法を用いて塗布した。
そして、温度125℃に保たれた恒温槽内に2時間投入して、塗布された反射防止処理液の硬化を行い、有機反射防止層が形成された眼鏡レンズを得た。
そして、温度125℃に保たれた恒温槽内に2時間投入して、塗布された反射防止処理液の硬化を行い、有機反射防止層が形成された眼鏡レンズを得た。
(2)防汚層の形成
フッ素含有シラン化合物A(高分子量、すなわち、分子量が1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物)として、「KY−130」(商品名、信越化学工業(株)製)と、フッ素含有シラン化合物B(低分子量、すなわち、分子量が100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物)として、「KP−801」(商品名、信越化学工業(株)製)を、固形分重量比で80/20となるように配合した。そして、その調整組成物の固形分比率が0.3重量%となるように、有機溶剤としてのフッ素溶剤「HFE−7200」(商品名、住友スリーエム(株)製)に希釈し、防汚層を形成するコーティング組成物としての防汚性処理液を得た。
フッ素含有シラン化合物A(高分子量、すなわち、分子量が1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物)として、「KY−130」(商品名、信越化学工業(株)製)と、フッ素含有シラン化合物B(低分子量、すなわち、分子量が100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物)として、「KP−801」(商品名、信越化学工業(株)製)を、固形分重量比で80/20となるように配合した。そして、その調整組成物の固形分比率が0.3重量%となるように、有機溶剤としてのフッ素溶剤「HFE−7200」(商品名、住友スリーエム(株)製)に希釈し、防汚層を形成するコーティング組成物としての防汚性処理液を得た。
そして、得られた防汚性処理液を、有機系反射防止層が形成された眼鏡レンズの表面に、ディッピング法を用いて塗布した。防汚性処理液の塗布は、処理槽に収容された防汚性処理液中に、眼鏡レンズを2分間浸漬した後、200mm/分の引き上げ速度で処理槽から引き上げた。
そして、温度90℃、相対湿度90%に保たれた恒温恒湿槽内に1時間投入してアニール処理を行い、有機系反射防止層上に防汚層が形成された眼鏡レンズを得た。
そして、温度90℃、相対湿度90%に保たれた恒温恒湿槽内に1時間投入してアニール処理を行い、有機系反射防止層上に防汚層が形成された眼鏡レンズを得た。
(比較例1)
実施例1において、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物としての反射防止処理液に、アルミニウムを中心金属とする金属錯塩(例えば、アルミニウムのアセチルアセトン(Al(acac)3)を配合せずに、有機系反射防止層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の防汚層を形成するコーティング組成物としての防汚性処理液を用い、実施例1と同様の成膜方法で、有機系反射防止層、および防汚層を形成し、有機系反射防止層上に防汚層が形成された眼鏡レンズを得た。
実施例1において、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物としての反射防止処理液に、アルミニウムを中心金属とする金属錯塩(例えば、アルミニウムのアセチルアセトン(Al(acac)3)を配合せずに、有機系反射防止層を形成した。これ以外は、実施例1と同様の防汚層を形成するコーティング組成物としての防汚性処理液を用い、実施例1と同様の成膜方法で、有機系反射防止層、および防汚層を形成し、有機系反射防止層上に防汚層が形成された眼鏡レンズを得た。
(比較例2)
実施例1において、防汚層を形成するコーティング組成物としての防汚性処理液に、フッ素含有シラン組成物として、低分子量化合物のフッ素含有シラン化合物Bを配合せずに、高分子量化合物のフッ素含有シラン化合物A(商品名:KY−130、信越化学工業(株)製)のみを用いた以外は、実施例1と同様の防汚性処理液を用い、実施例1と同様の成膜方法で有機系反射防止層、防汚層を形成し、有機系反射防止層上に防汚層が形成された眼鏡レンズを得た。
実施例1において、防汚層を形成するコーティング組成物としての防汚性処理液に、フッ素含有シラン組成物として、低分子量化合物のフッ素含有シラン化合物Bを配合せずに、高分子量化合物のフッ素含有シラン化合物A(商品名:KY−130、信越化学工業(株)製)のみを用いた以外は、実施例1と同様の防汚性処理液を用い、実施例1と同様の成膜方法で有機系反射防止層、防汚層を形成し、有機系反射防止層上に防汚層が形成された眼鏡レンズを得た。
以上の実施例1、比較例1および比較例2で得られた眼鏡レンズを、耐擦傷性、拭き取り性、耐薬品性の3項目で評価した。
各評価項目の評価方法を以下に説明する。
各評価項目の評価方法を以下に説明する。
(1)耐擦傷性
耐擦傷性の評価は、眼鏡レンズの表面に、スチールウール、木綿布の2種類の擦りを行い、発生した傷の状態を目視にて、下記に示すA〜Dの4水準の基準で行った。
なお、スチールウールによる評価は、スチールウール#0000に荷重1kgで印加しながら3〜4cmの距離を10往復擦って行った。また、木綿布による評価は、木綿布に荷重200gを印加しながら3〜4cmの距離を3000往復擦って行った。
A:全く傷がない。
B:細い傷が数本見える。
C:部分的に面積を伴って傷が見える。
D:擦傷面全体に傷が見える。
耐擦傷性の評価は、眼鏡レンズの表面に、スチールウール、木綿布の2種類の擦りを行い、発生した傷の状態を目視にて、下記に示すA〜Dの4水準の基準で行った。
なお、スチールウールによる評価は、スチールウール#0000に荷重1kgで印加しながら3〜4cmの距離を10往復擦って行った。また、木綿布による評価は、木綿布に荷重200gを印加しながら3〜4cmの距離を3000往復擦って行った。
A:全く傷がない。
B:細い傷が数本見える。
C:部分的に面積を伴って傷が見える。
D:擦傷面全体に傷が見える。
(2)拭き取り性
拭き取り性は、インクの拭き取り性により評価した。
拭き取り性の評価は、前述の耐擦傷性の木綿布による評価を行った眼鏡レンズの擦傷面(レンズ面)に、黒色油性マーカー(商品名:ハイマッキーケア、ゼブラ(株)製)を用いて、略4cmの直線を描いた後、5分間放置した。そして、黒色油性マーカーで描いた部分をワイプ紙(商品名:ケイドライ、(株)クレシア製)によって拭き取り、その拭き取り具合を、下記に示すA〜Cの3水準の基準で行った。
A:10回以下の拭き取りで完全に除去できる。
B:11〜20回の拭き取りで完全に除去できる。
C:20回以上の拭き取り後も除去できない部分が残存する。
拭き取り性は、インクの拭き取り性により評価した。
拭き取り性の評価は、前述の耐擦傷性の木綿布による評価を行った眼鏡レンズの擦傷面(レンズ面)に、黒色油性マーカー(商品名:ハイマッキーケア、ゼブラ(株)製)を用いて、略4cmの直線を描いた後、5分間放置した。そして、黒色油性マーカーで描いた部分をワイプ紙(商品名:ケイドライ、(株)クレシア製)によって拭き取り、その拭き取り具合を、下記に示すA〜Cの3水準の基準で行った。
A:10回以下の拭き取りで完全に除去できる。
B:11〜20回の拭き取りで完全に除去できる。
C:20回以上の拭き取り後も除去できない部分が残存する。
(3)耐薬品性(耐アルカリ性)
耐薬品性の評価は、0.1規定に調整した水酸化ナトリウム水溶液中に眼鏡レンズを3時間浸漬し、眼鏡レンズを取り出して水洗浄した後、眼鏡レンズ表面に発生した外観変化を目視にて、下記に示すA〜Cの3水準の基準で行った。
A:外観変化なし。
B:干渉色変化が発生した。
C:有機系反射防止層の剥がれが発生した。
耐薬品性の評価は、0.1規定に調整した水酸化ナトリウム水溶液中に眼鏡レンズを3時間浸漬し、眼鏡レンズを取り出して水洗浄した後、眼鏡レンズ表面に発生した外観変化を目視にて、下記に示すA〜Cの3水準の基準で行った。
A:外観変化なし。
B:干渉色変化が発生した。
C:有機系反射防止層の剥がれが発生した。
こうした評価方法で得られた、実施例1、比較例1および比較例2におけるプラスチック眼鏡レンズの評価結果を、表1に示す。
これに対して、比較例1では、有機系反射防止層を形成する反射防止処理液にアルミニウムを中心金属とする金属錯塩が含まれないことで、耐擦傷性および耐薬品性がやや不足しており、拭き取り性に劣っている。また比較例2では、有機系反射防止層上に防汚性処理液を用いて形成された防汚層が、フッ素含有シラン化合物として、低分子量のフッ素含有シラン化合物Bを配合せずに、高分子量のフッ素含有シラン化合物Aのみを含むために、耐擦傷性および耐薬品性に劣り、拭き取り性がやや不足している。特に、耐薬品性においては、有機系反射防止層の剥がれが発生した。
以上の実施形態において、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物(反射防止処理液)にアルミニウム(Al(III))を中心金属とする金属錯塩、例えば、アルミニウムのアセチルアセトン(Al(acac)3を含む場合で説明したが、アルミニウムを中心金属とする金属錯塩に代えて、アルミニウムアルコキシド類を用いることができる。この場合であっても、アルミニウムを中心金属とする金属錯塩を用いた場合と同様な効果が得られる。
アルミニウムアルコキシド類としては、下記の一般式(4)で表される化合物を用いることができる。
アルミニウムアルコキシド類としては、下記の一般式(4)で表される化合物を用いることができる。
前記一般式(4)で表されるアルミニウムアルコキシド類としては、トリ−iso−プロポキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシドアルミニウムなどが挙げられる。
また、本実施形態において、防汚層の形成(塗布)に湿式法を用いた場合で説明したが、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学気相成長(CVD)法等の乾式法を用いることもできる。
例えば、真空蒸着法を用いる場合には、フッ素含有シラン化合物Aとフッ素含有シラン化合物Bを配合した防汚層を形成するコーティング組成物としての防汚層処理液を、多孔質セラミックス製のペレットに含浸し、乾燥させたものを蒸着源とする。
例えば、真空蒸着法を用いる場合には、フッ素含有シラン化合物Aとフッ素含有シラン化合物Bを配合した防汚層を形成するコーティング組成物としての防汚層処理液を、多孔質セラミックス製のペレットに含浸し、乾燥させたものを蒸着源とする。
そして、この乾燥したペレットを真空蒸着装置のチャンバー内にセットし、到達圧力が1.0〜4.0×10-2Paの範囲になるまで排気を行い、それと共に、ペレットを400℃〜500℃程度の温度に加熱することによって、フッ素含有シラン化合物を蒸発させ、チャンバー内のドームに載置された眼鏡レンズの表面に、防汚層を成膜することができる。そして、チャンバー内を徐々に大気圧に戻した後、チャンバー内から取り出された眼鏡レンズは、アニール処理される。これにより有機系反射防止層の表面に防汚層が形成された眼鏡レンズが得られる。
以上の本実施形態の物品としての眼鏡レンズは、レンズ基材上に形成された有機系反射防止層が、少なくとも、フッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子およびアルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有するコーティング組成物(反射防止処理液)から形成され、さらに、有機系反射防止層上に形成される撥水性能や撥油性能を有する防汚層が、フッ素含有シラン組成物を含有するコーティング組成物(防汚性処理液)から形成されている。これにより、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれるアルミニウムを中心金属とする金属錯塩が、シラノール基の縮合反応を促進し、有機系反射防止層内のフッ素含有シラン化合物間、および防汚層内のフッ素含有シラン組成物との間で、フッ素含有シラン同士の三次元的なマトリックスの縮合反応が促進され、耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質が向上したコーティング組成物が得られると共に、耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質が向上した防汚層を備えたプラスチック眼鏡レンズが得られる。また、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に内部空洞を有するシリカ微粒子が含まれることで、屈折率が低減した有機系反射防止層を備えた、有機系反射防止層及び防汚層を有する眼鏡レンズが得られる。
また、有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれるアルミニウムを中心金属とする金属錯塩が、アルミニウムのアセチルアセトネート(Al(acac)3)であり、その固形分比率が、フッ素含有シラン化合物とシリカ微粒子との混合固形分に対して、0.1重量%〜20重量%であることにより、有機系反射防止層の架橋が進み過ぎて膜応力が強くなり耐熱性が低下することなく、耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質が向上したコーティング組成物が得られると共に、耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質が向上した防汚層を備えた、有機系反射防止層及び防汚層を有する眼鏡レンズが得られる。
また、防汚層を形成するコーティング組成物に、分子量が1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Aと、分子量が100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも1つのフッ素含有シラン化合物Bが含まれ、フッ素含有シラン化合物Aとフッ素含有シラン化合物Bの固形分重量比が、90/10〜70/30であることにより、防汚層の下層に形成された有機系反射防止層の粗い表面状態の山面および谷面において、フッ素含有シラン化合物が空隙なく(ムラなく)結合し、十分な耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質を備えたコーティング組成物が得られると共に、耐擦傷性や耐薬品性などの耐久品質が向上した防汚層を備えた眼鏡レンズが得られる。
Claims (6)
- 基材上に設けられる有機系反射防止層及び前記有機系反射防止層上に設けられる防汚層を形成するコーティング組成物であって、
前記有機系反射防止層を形成するコーティング組成物が、少なくとも、フッ素含有シラン化合物、内部空洞を有するシリカ微粒子およびアルミニウムを中心金属とする金属錯塩を含有し、
前記防汚層を形成するコーティング組成物が、フッ素含有シラン化合物を含有することを特徴とする有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物。 - 請求項1に記載の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物において、
前記有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれる前記アルミニウムを中心金属とする金属錯塩が、アルミニウムのアセチルアセトネート(Al(acac)3)であることを特徴とする有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物。 - 請求項1又は2に記載の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物において、
前記有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれる前記アルミニウムを中心金属とする金属錯塩の固形分比率が、前記有機系反射防止層を形成するコーティング組成物に含まれるフッ素含有シラン化合物と前記シリカ微粒子との混合固形分に対して、0.1重量%〜20重量%であることを特徴とする有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物。 - 請求項1乃至3の何れか一項に記載の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物において、
前記防汚層を形成するコーティング組成物に含まれる前記フッ素含有シラン化合物は、分子量が1000〜10000の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも一つのフッ素含有シラン化合物Aと、分子量が100〜700の範囲のフッ素含有シラン化合物から選ばれた少なくとも一つのフッ素含有シラン化合物Bと、
を含むことを特徴とする有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物。 - 請求項4に記載の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物において、
前記フッ素含有シラン化合物Aと前記フッ素含有シラン化合物Bの固形分重量比が、90/10〜70/30であることを特徴とする有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物。 - 請求項1乃至5の何れか一項に記載の有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物を用いて、
前記基材上に有機系反射防止層及び前記有機系反射防止層上に防汚層が形成されたことを特徴とする有機系反射防止層及び防汚層を有する物品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006137453A JP2007310053A (ja) | 2006-05-17 | 2006-05-17 | 有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物、有機系反射防止層及び防汚層を有する物品 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2006137453A Withdrawn JP2007310053A (ja) | 2006-05-17 | 2006-05-17 | 有機系反射防止層及び防汚層を形成するコーティング組成物、有機系反射防止層及び防汚層を有する物品 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009157233A (ja) * | 2007-12-27 | 2009-07-16 | Riken Technos Corp | 反射防止フィルム |
JP2018060137A (ja) * | 2016-10-07 | 2018-04-12 | 富士フイルム株式会社 | レンズ |
-
2006
- 2006-05-17 JP JP2006137453A patent/JP2007310053A/ja not_active Withdrawn
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