JP2007309195A - エンジンの制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】第1の補機の作動に伴う点火時期リタードを不要とするエンジンの制御方法を提供する。
【解決手段】エンジン(1)により駆動される発電機(4)と、この発電機(4)の発電した電力を蓄えるバッテリ(8)と、このバッテリ(8)からの電力供給を受けて所定の点火時期に火花点火を行う点火装置とを備えるエンジンの制御方法において、前記バッテリ(8)の電圧または前記発電機(4)の起電力に基づいて前記点火時期をトルクが相対的に低下する遅角させた状態になるように遅角補正を行うか否かを判定する判定処理手順と、この判定結果に基づき遅角補正を行わないときにはトルクが相対的に低下しない状態となるように、遅角補正を行わない点火時期に火花点火を行わせる火花点火実行処理手順とをエンジンコントロールユニット(11)が含む。
【選択図】図1

Description

この発明はエンジンの制御方法、特に補機との強調制御を行うものに関する。
エンジンにより機械的に駆動される発電機と、この発電機の発電した電力を蓄えるバッテリとを備え、エンジンの運転状態を表すパラメータであるエンジン回転速度、冷却水温、吸入空気量、バッテリ電圧、車速などに基づいて、エンジンの運転パラメータ(燃料供給量、点火時期、アイドル回転速度補助空気量など)を制御しつつ、エンジンの運転状態に対応して目標発電電圧を設定し、その設定した目標発電電圧が得られるように発電電圧を制御する、いわゆる発電電圧可変制御を行うものがある(特許文献1参照)。
特開平9−308298号公報
ところで、電気駆動式補機はバッテリを電圧源として作動(駆動)される。本発明では、バッテリを電圧源として作動する電気駆動式補機しか扱わないので、この電気駆動式補機を単に「補機」という。この補機(車両の電気負荷)には、ドライバーの操作に応じ即座に作動(駆動)させる必要があるものと、ドライバーの操作に応じ即座には作動(駆動)させる必要のないものとがある。ここでは、ドライバーの操作に応じ即座に動作させる必要があるものを「第1の補機」、ドライバーの操作に応じ即座には動作させる必要のないものを「第2の補機」として区別すると、これら補機の性格上の相違により、アイドル時における第1の補機と第2の補機とで扱いが異なっている。すなわち、ドライバーが第2の補機を作動する指令を出したときには、アイドル空気量の負荷補正(応答に時間が掛かる)を行うためにディレイ時間を設け、このディレイ時間の間でアイドル空気量の負荷補正を行い、ディレイ時間が経過したタイミング(アイドル空気量の負荷補正が完了したタイミング)で第2の補機を実際に作動させる制御手法が一般的に行われている。
一方、第1の補機に対してはディレイ時間を設けることができないため、ドライバーが第1の補機を作動する指令を出したときには即座に第1の補機を作動させている。このとき、発電機に大きな負荷が作用すると共に、バッテリからも第1の補機に対して電力が供給される。すなわち、エンジン駆動の発電機に大きな負荷が作用するということは、エンジンへの突入負荷が大きくなることと等価であり、これにより、アイドル回転速度に回転落ちなどの問題が生じ得る。
こうした対策として現状の制御では、アイドル時に点火時期をMBT(最大トルクの得られる最小進角値のこと)から外してリタード側で待機させた状態とし、第1の補機が作動したとき点火時期をMBTまで進めることにより、その点火時期進角分だけエンジン出力を増加させることとし、このエンジン出力の増加で第1の補機の作動に伴うアイドル回転速度の回転落ちを防止している。
しかしながら、アイドル時における第1の補機の作動に備えるためとはいえ、アイドル点火時期をMBTよりリタードさせておくことは、燃費の悪化につながらざるを得ない。
そこで本発明は、第1の補機の作動に伴う点火時期リタードを不要とするエンジンの制御方法を提供することを目的とする。
本発明は、エンジンにより機械的に駆動される発電機と、この発電機の発電した電力を蓄えるバッテリと、このバッテリからの電力供給を受けて所定の点火時期に火花点火を行う点火装置とを備えるエンジンの制御方法において、前記バッテリ電圧または前記発電機の起電力に基づいて前記点火時期をトルクが相対的に低下する遅角させた状態になるように遅角補正を行うか否かを判定し、この判定結果に基づき遅角補正を行わないときにはトルクが相対的に低下しない状態となるように、遅角補正を行わない点火時期に火花点火を行わせ、また遅角補正を行うときには遅角補正後の点火時期に火花点火を行わせるように構成する。
第1の補機は、予告無く突然に作動される。そのため、現状の制御では、吸入空気による負荷補正が間に合わない期間(ディレイ時間)におけるエンジン出力不足を賄うべく、トルクが相対的に低下するように遅角補正させた点火時期でエンジンを運転させており、第1の補機が作動されない場合にこの点火時期を遅角補正させている分だけ燃費(特にアイドル燃費)を悪化させていた。
この場合に、本発明は、電動パワーステアリングなどの第1の補機が標準装備になりつつある現在、吸入空気量の負荷補正を行うにしても、第1の補機負荷に対して、バッテリからの持ち出し電流(電力)で賄うことが可能になってきていることに着目してなされたものである。すなわち、本発明によれば、バッテリ電圧(発電機の起電力)に基づいて点火時期をトルクが相対的に低下する遅角させた状態になるように遅角補正を行うか否か、つまりバッテリの充電状態が良好であるか否かを判定し、遅角補正を行わないとき(バッテリの充電状態が良好であるとき)にはトルクが相対的に低下しない状態となるように、遅角補正を行わない点火時期に火花点火を行わせることとしたので、第1の補機の駆動に備えて点火時期を予めリタードさせておくことが不要となり、特にアイドル燃費を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はエンジンの制御方法の実施に直接使用するエンジンの制御装置の概略構成図を示している。
図1において、発電機(オルタネータ)4のプーリ5とクランクプーリ2とにベルト3が掛け回されることにより、エンジン1と発電機4とが機械的に連結され、発電機4はエンジン1により機械的に駆動されて発電する。発電機4のC端子7とバッテリ8のプラス端子とが接続されており、この発電した電力はバッテリ8に蓄えられる。
エンジン1の運転状態を表すパラメータであるエンジン回転速度、冷却水温、吸入空気量、バッテリ電圧、車速などが入力されるエンジンコントロールユニット(ECU)11では、エンジンの運転パラメータ(燃料供給量、点火時期、アイドル回転速度補助空気量など)を制御しつつ、エンジン1の運転状態に対応して目標発電電圧を設定し、その設定した目標発電電圧を発電指令値に変換し、その変換した発電指令値を発電機4に内蔵されているICレギュレータ6に出力する。ICレギュレータ6では、エンジンコントロールユニット11から送られてきた電圧指令値に相当する発電電圧となるように、ICレギュレータ6の調整電圧とバッテリ8の電圧(または発電電圧)との比較を行いながら発電電圧を目標発電電圧へとフィードバック制御する。このように、目標発電電圧を可変設定し、その値に基づいて発電電圧を制御するものが、いわゆる「発電電圧可変制御」である(特開平9−308298号公報参照)。
実際には、ICレギュレータ6はエンジンコントロールユニット11により直接的に制御されるのではなく、アンダーフードスイッチングモジュール12からの電圧指令値(デューティ指令値)によって制御されている。アンダーフードスイッチングモジュール12もコントロールユニットであり、エンジンコントロールユニット11とはCAN通信で結ばれている。
エンジンの吸気通路21には、スロットルモータ23で駆動されるスロットル弁22が設けられ、エンジンコントロールユニット11ではこのスロットルモータ23を介して、実際のスロットル弁開度が目標スロットル弁開度と一致するようにスロットル弁開度を制御している。
補機(車両の電気負荷)には、電動パワーステアリング、ヘッドライト、ワイパーのようにドライバーの操作に応じ即座に作動(駆動)させる必要がある「第1の補機」と、リアデフォッガー、ラジエータファン、ブロアファン、エアコンディショナーなどのようにドライバーの操作に応じ即座には作動させる必要のない「第2の補機」とがあるのであるが、以下では、「第1の補機」として電動パワーステアリングを、また「第2の補機」としてエアコンディショナーを採り上げ、具体的に説明する。これら電動パワーステアリング15、エアコンディショナー16は発電機のC端子7とバッテリ8のプラス端子との接続線の途中に接続されており、バッテリ8を電圧源として駆動(作動)される。
ここで、ドライバーがエアコンディショナー16を駆動する指令を出したときには、アイドル空気量の負荷補正を行うためにディレイ時間(ディレイ期間)を設け、このディレイ時間の間でアイドル空気量の負荷補正(増加補正)を行い、ディレイ時間が経過したタイミング(アイドル空気量の負荷補正が完了したタイミング)でエアコンディショナー16を実際に駆動させる。
一方、電動パワーステアリング15に対してはディレイ時間を設けることができないため、ドライバーが電動パワーステアリング15を駆動する指令を出した(つまりドライバーが左折や右折のためにハンドルを回転させた)ときには即座に電動パワーステアリング15を駆動させている。このとき、発電機4に大きな負荷が作用すると共に、バッテリ7からも電動パワーステアリング15に対して電力が供給される。すなわち、エンジン駆動の発電機4に大きな負荷が作用するということは、エンジンへの突入負荷が大きくなることと等価であり、これにより、アイドル回転速度に回転落ちなどの問題が生じ得る。
こうした対策として現状の制御では、アイドル時に点火時期をMBTから外してリタード側で待機させた状態とし、電動パワーステアリング15が駆動されたとき点火時期をMBTまで進めることにより、その点火時期進角分だけエンジン出力を増加させることとし、このエンジン出力の増加で電動パワーステアリング15の駆動に伴うアイドル回転速度の回転落ちを防止している。
しかしながら、アイドル時における電動パワーステアリング15の駆動に備えるためとはいえ、アイドル点火時期をMBTより予めリタードさせておくことは、燃費の悪化につながる。
そこで本発明では、アイドル状態で一律に点火時期をMBTよりリタードさせて待機させるのではなく、アイドル時における電動パワーステアリング15の駆動に対しても、アイドル空気量の負荷補正(増量補正)を行うと共に、バッテリ8の充電状態が良好であるときには、電動パワーステアリング15の駆動開始からアイドル空気量の負荷補正の完了までの間、バッテリ8により電動パワーステアリング15の駆動のための電力を賄うこととする。
これを図2を用いてさらに説明すると、図2はアイドル状態でのエンジン1と電動パワーステアリング15の強調制御をモデルとして示したものである。
アイドル状態においてt1のタイミングで電動パワーステアリングスイッチがOFFよりONへと切換えられたとき、即座に電動パワーステアリング15を駆動させる(図2第4段目のように非駆動状態から実駆動状態に切換える)。
一方、電動パワーステアリング15が実駆動するt1のタイミングで、図2最下段に示したようにアイドル空気量負荷補正フラグ=1として、アイドル空気量負荷補正を開始し、スロットル弁開度を電動パワーステアリング15の駆動前の値である所定値Aより、一定値だけ大きい所定値Bへと所定の速度で大きくする。スロットル弁開度が所定値Bに到達するt2のタイミングで、図2最下段に示したようにアイドル空気量負荷補正フラグ=0として、アイドル空気量負荷補正を終了する。発電電圧可変制御によれば、電動パワーステアリングスイッチのOFFよりONへの切換に合わせて目標発電電圧が上昇し、その分エンジンへの負荷が増す。所定値Bでの吸入空気量は、このエンジンへの負荷増大分を相殺してエンジン出力を、電動パワーステアリングの実駆動前と同じに保たせるためのもので、適合により予め定めておく。
この吸入空気量の負荷補正(増量補正)と並行して、バッテリ8からは、t1より電動パワーステアリング15に対して電力が供給される(図2下から2段目参照)。
ただし、アイドル状態でエンジン1と電動パワーステアリング15の強調制御を行う前提としては、バッテリ8の電力に余裕があることである。ここで、アイドル状態でバッテリ電力に余裕がある場合とは、車両の減速時(エンジンの燃料カット時)である。すなわち、発電電圧可変制御によれば、エンジン出力の要求されない車両の減速時には、目標発電電圧を高めて電力として回生することとしており、この回生電力がバッテリの余裕電力となるわけである。
発電電圧可変制御において目標発電電圧がどのように設定されてゆくのかを図3のモデルを参照して説明すると、減速開始タイミングであるt11で目標発電電圧を13.0Vより14.5V(最大の発電電圧)に切換えている。この目標発電電圧の最大値への切換によってバッテリ8のSOC(State of Charge)が上昇してゆく。車両の減速が終了するt12のタイミングになると発電機4が回生できなくなるので、t12からは目標発電電圧を14.5Vより12.5Vへと切換える。12.5Vは、発電機4が発電を行わない状態(つまり無発電状態)とする電圧であり、12.5Vのとき、エンジンに対して発電機は空回りするだけで負荷としては作用しない。しかも、回生により稼いだ電力がt12より電動パワーステアリング15の駆動用電力に振り向けられるため、SOCが低下してゆく。SOCが90%に戻るt13のタイミングで、回生に伴うバッテリ電力の余裕分を使い切ったと判断し、t13で目標発電電圧を12.5Vより13.0Vに戻す。13.0Vは、SOCが90%以下になったときに設定される目標発電電圧である。t14以降も同様である。ただし、t16のタイミングでは回生に伴うバッテリ電力の余裕分を使い切ることなく減速時となっているため、t16のタイミングでは目標発電電圧が12.5Vから一気に14.5Vに切換えられている。
なお、図3では減速終了後のアイドル状態でだけ(t12〜t13、t15〜t16、t17〜)、電動パワーステアリング15が駆動するように描いている(図3最上段参照)。これは、バッテリ電力の余裕分がどのように消費されるのかを示すためであり、実際の電動パワーステアリング15の動きを示すものではない。
次に、アイドル状態で点火時期をMBTに維持できるのは、バッテリ8の充電状態が良好であるときだけ(回生により稼いだ余分の電力を使い切るまでの間だけ)であり、電動パワーステアリング15の駆動のために回生による余裕電力を使い切ったタイミングのあとには、アイドル時の点火時期をリタード側に移し、このタイイミング以降での電動パワーステアリング15の駆動に備えて待機させておく必要がある。これについて、図4を参照して説明する。図4においてt21のタイミングでドライバーがアクセルペダルを離すと、アイドルスイッチがOFFよりONへと切換わり、車両が減速状態となり、発電機4が最大の発電能力(目標発電で圧=14.5V)で発電(回生)を開始する。このとき、発電機4の起電力は、図4第3段目に示したように、減速中ずっと14.5Vを保ち、車両の減速を終了するt22のタイミングで12.5Vに戻る。一方、バッテリ電圧VBは、図4第4段目に示したように、t22で14.5Vよりステップ的に少し低下したあと、所定の速度で12.5Vに向けて低下してゆく。
本発明では車両減速中の回生電力を電動パワーステアリング15の駆動用電力に振り向けることとしているので、アイドル時の点火時期をMBTより予めリタードさせて待機させておく必要はなく、従って、アイドル状態となるt21のタイミングで図4第6段目に示したようにアイドルMBT許可フラグ=1として、アイドル時の点火時期をMBTに設定する(図4下から2段目参照)。
図4第5段目に示したように、電動パワーステアリング15がt21より駆動するとすれば、この電動パワーステアリング15の駆動用電力として回生電力が消費されるが、電動パワーステアリング15の駆動に伴う電圧降下代はほぼ0.5Vであることが予め分かっているので、バッテリ電圧VBからこの電動パワーステアリング15の駆動に伴う電圧降下代である0.5Vを差し引いた値(VB−0.5V)が12.5Vを超えていれば、まだ、電動パワーステアリング15の駆動用電力として回生による余裕電力を使い切っていない。VB−0.5Vがt23のタイミングで12.5V以下になれば、電動パワーステアリング15の駆動用電力として回生による余裕電力を使い切ったと判断し、図4第6段目に示したようにアイドルMBT許可フラグ=0として、アイドル時の点火時期をMBTよりリタード側の値へと切換える(図4下から2段目参照)。
ただし、図4最下段に示したようにt23のタイミングで目標スロットル弁開度が所定値Bに到達しているように、発電機4、バッテリ8、電動パワーステアリング15の各仕様や目標スロットル弁開度の上昇速度を決定する。
このようにして、アイドル状態でもt21よりt23までの期間(電動パワーステアリング15の実駆動の開始より、電動パワーステアリング15の駆動用電力として回生による余裕電力を使い切るまでの期間)で、アイドル状態での電動パワーステアリング15の駆動に備えての点火時期リタードが不要となり、アイドル燃費が向上する。
エンジンコントロールユニット11により実行されるこの制御をフローチャートにより詳述する。
図5はアイドル状態での目標発電電圧の設定及びアイドルMBT許可フラグ、アイドル空気量負荷補正フラグを設定するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。
ステップ1、2ではアイドル時であるか否か、電動パワーステアリング15が駆動しているか否かをみる。アイドル時であるか否かは、例えばアクセルペダルポジジョンセンサ25(あるいはアクセルペダルが初期位置まで戻されたときにオンとなるアイドルスイッチ)に基づいて検出することができる。電動パワーステアリング15が駆動中であるか否かは、電動パワーステアリングスイッチ26により検出することができる。アクセルペダルポジジョンセンサ25からの信号がアイドル時であることを示していないとき、電動パワーステアリングスイッチ26がOFFであるときには、そのまま今回の処理を終了する。
アクセルペダルポジジョンセンサ25からの信号がアイドル時であることを示し、かつ電動パワーステアリングスイッチ26がONであるときには、ステップ3に進み減速終了フラグをみる。ここでは減速終了フラグ=0であるとして述べると、このときにはステップ4、5に進み、今回に車速が減少しているか否か、前回に車速が減少していたか否かをみる。車速が減少しているか否かは、例えば車速センサ27に基づいて検出することができる。
今回に車速が減少しておりかつ前回に車速が減少していなかった、つまり今回に車速が減少に転じたときには車両が減速状態に入ったと判断し、ステップ6に進み最大の発電電圧である14.5Vを目標発電電圧として設定する。これにより、発電機4は最大の能力で回生を開始し、回生により生じた電力が電動パワーステアリング15の駆動用電力として消費される。このため、アイドル状態での電動パワーステアリング15の駆動に備えてアイドル時の点火時期をMBTよりリタードさせておく必要はないので、ステップ7ではアイドルMBT許可フラグ=1とする。アイドルMBT許可フラグ=1は、後述するようにアイドル時の点火時期をMBTへと指示するものである。
ステップ8ではアイドル空気量負荷補正フラグ(エンジンの始動時にゼロに初期設定)=1とし、ステップ9でタイマを起動する(タイマ値=0)。このアイドル空気量負荷補正フラグ=1により、後述するようにアイドル空気量が徐々に増量される。タイマはアイドル空気量の増量を開始してからの経過時間を計測するためのものである。
次回にステップ4、5に進んできたときには、今回に車速が減少しておりかつ前回にも車速が減少していた、つまり続けて車速が減少していることになる。このときには車両の減速中であると判断し、ステップ6、7、8、9を飛ばして今回の処理をそのまま終了する。
やがてステップ4で車速が減少していなければ、ステップ10に進んで前回に車速が減少していたか否かをみる。今回に車速が減少しておらずかつ前回に車速が減少していた、つまり今回に車速が減少しないことに転じたときには車両の減速が終了したと判断し、ステップ4、10よりステップ11に進んで減速終了フラグ=1とする。
ステップ12では、発電機4を無発電状態とする発電電圧である12.5Vを目標発電電圧として設定する。これにより、発電機4はエンジン1に対して負荷の作用していない状態となる。
この減速終了フラグ=1により次回にはステップ3よりステップ13以降に進む。ステップ13では、無発電状態であるか否かをみる。目標発電電圧が12.5Vに設定されているときには無発電状態にあると判断してステップ14に進み、バッテリ電圧VBから電動パワーステアリング駆動に伴う電圧降下代である0.5Vを差し引いた値(VB−0.5V)と12.5Vを比較する。VB−0.5Vが12.5Vを超えているときには、電動パワーステアリング駆動用電力として回生に伴うバッテリ電力の余裕分がまだ消費され尽くしていないと判断しステップ16に進む。
一方、無発電状態でもB−0.5が12.5V以下になると、電動パワーステアリング駆動用電力として回生に伴うバッテリ電力の余裕分が消費され尽くしたと判断し、ステップ14よりステップ15に進み、バッテリ電力の余裕分が消費され尽くした後における電動パワーステアリングの駆動に備えてアイドル時の点火時期をMBTよりリタードさせるため、アイドルMBT許可フラグ=0とした後、ステップ16に進む。ステップ13で無発電状態でないときにもステップ15に進んでアイドルMBT許可フラグ=0とする。
なお、ステップ14での判定方法に限定されるものでない。すなわち、バッテリ電圧VBと、12.5Vに電動パワーステアリング駆動に伴う電圧降下代である0.5Vを加算した値である13.0V(しきい値)とを比較し、バッテリ電圧VBがしきい値である13.0Vを超えているときには電動パワーステアリング駆動用電力として回生に伴うバッテリ電力の余裕分がまだ消費され尽くしていないと判断し、これに対してバッテリ電圧VBがしきい値以下になると、電動パワーステアリング駆動用電力として回生に伴うバッテリ電力の余裕分が消費され尽くしたと判断するようにしてもかまわない。
ステップ16ではタイマ値と所定値を比較する。所定値は、アイドル空気量の負荷補正の開始から終了までの時間間隔(図2においてt1からt2までの時間間隔)を定めるもので予め適合しておく。タイマ値が所定値未満であるときにはアイドル空気量の負荷補正がまだ終了していないと判断してそのまま今回の処理を終了する。やがてタイマ値が所定値以上になると、ステップ16よりステップ17に進みアイドル空気量の負荷補正を終了させるためアイドル空気量負荷補正フラグ=0とする。ステップ18では次回の車両減速時に備えるため減速終了フラグ=0に戻しておく。
図6はアイドル時の点火時期ADVIDLを設定するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。図6のフローは図5のフローに続けて実行する。
ステップ21ではアイドル時であるか否かをみる。アイドル時でないときにはそのまま処理を終了する。
アイドル時であるときにはステップ22に進み、アイドルMBT許可フラグ(図5のフローにより設定済み)をみる。アイドルMBT許可フラグ=1であるときにはステップ23でMBTをアイドル時の点火時期ADVIDLとして設定する。MBTは運転条件により予め定めて設定しておく。
一方、アイドルMBT許可フラグ=0であるときにはステップ22よりステップ24に進んで、MBTから所定値ΔADVだけ差し引いた値をアイドル時の点火時期ADVIDLとして設定する。点火時期ADVIDLの単位は圧縮上死点より進角側に計測した値[°BTDC]であるので、所定値ΔADVを差し引くと、アイドル時の点火時期ADVIDLは遅角側に移る。
このようにして設定されたアイドル時の点火時期ADVIDLは点火レジスタに移され、アイドル時に実際のクランク角がこの点火時期ADVIDLと一致したタイミングで点火コイルの1次側電流が遮断される。
図7はアイドル時の目標スロットル弁開度tTVOを設定するためのもので、一定時間毎(例えば100ms毎)に実行する。図7のフローは図5のフローに続けて実行する。
ステップ31ではアイドル時であるか否かをみる。アイドル時でないときにはそのまま処理を終了する。
アイドル時であるときにはステップ32に進み、アイドル空気量負荷補正フラグ(図5のフローにより設定済み)をみる。アイドル空気量負荷補正フラグ=1であるときにはステップ33で次式によりアイドル空気量の負荷補正量HOSを算出する。
HOS=HOS(前回)+所定値 …(1)
ただし、HOS(前回):HOSの前回値、
(1)式の所定値は、目標スロットル弁開口面積tATVOを増す速度を定めるもので、予め適合しておく。負荷補正量の前回値である「HOS(前回)」の初期値はゼロである。
アイドル空気量負荷補正フラグ=1であるあいだ、(1)式を繰り返すと、負荷補正量HOSが増加してゆく。
一方、アイドル空気量負荷補正フラグ=0であるときにはステップ32よりステップ34に進んで負荷補正量の前回値を負荷補正量に移すことで、負荷補正量HOSを保持する。
ステップ35では、基本スロットル弁開口面積ATVO0に、このようにして算出した負荷補正量HOSを加算した値を目標スロットル弁開口面積tATVOとして設定する。基本スロットル弁開口面積ATVO0は、アイドル時の目標回転速度NSETを維持するのに必要となるアイドル空気量が流れるようにするためのもので、アイドル時の目標回転速度NSETに応じて定まっている。
ステップ36ではこのようにして設定される目標スロットル弁開口面積tATVOから所定のテーブルを検索することにより、目標スロットル弁開度tTVOを求める。
このようにして求められた目標スロットル弁開度tTVOは、スロットルモータ23へと出力される。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
アイドル状態において、電動パワステアリング15は、予告無く突然に駆動される。そのため、現状の制御では、アイドル時の吸入空気による負荷補正が間に合わない期間(ディレイ時間)におけるエンジン出力不足を賄うべく、MBTから予めリタード(遅角)させた点火時期でエンジンを運転させており、電動パワーステアリング15(第1の補機)が駆動(作動)されない場合にMBTからアイドル時の点火時期を遅角させている分だけアイドル燃費を悪化させていた。
この場合に、本実施形態(請求項1に記載の発明)は、電動パワーステアリング15(第1の補機)が標準装備になりつつある現在、アイドル空気量(吸入空気量)の負荷補正を行うにしても、空気応答遅れがあるディレイ時間のあいだ、電動パワーステアリング15の電気負荷に対して、バッテリ8からの持ち出し電流(電力)で賄うことが可能になってきていることに着目してなされたものである。すなわち、本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、バッテリ電圧VBに基づいてバッテリ8の充電状態が良好であるか否か(エンジントルクが相対的に低下する遅角させた状態になるように遅角補正を行うか否か)を判定し(図5のステップ13、14参照)、バッテリ8の充電状態が良好であるときには、アイドル時の点火時期ADVIDLをMBTにして点火を実行する(遅角補正を行わないときにはエンジントルクが相対的に低下しない状態となるように、遅角補正を行わない点火時期に火花点火を行わせる)こととしたので(図6のステップ21、22、23参照)、電動パワーステアリング15の駆動に備えてアイドル時の点火時期を予めリタードさせておくことが不要となり、アイドル燃費を向上させることができる。
本実施形態(請求項7に記載の発明)によれば、エアコンディショナー16(第2の補機)に対する作動要求があるとき、その作動要求に基づきアイドル空気量の負荷補正(吸入空気量の増加補正)を行うと共に、概ねアイドル空気量の負荷補正によりエンジン出力が向上するまでのディレイ時間が経過してから、エアコンディショナー16を実際の駆動(作動)を開始させるので、エアコンディショナー16に対する駆動要求(作動要求)があってから、このエアコンディショナー16の作動要求を受けてのアイドル空気量の負荷補正が終了するまでの間に、電動パワーステアリング15(第1の補機)の駆動要求(作動要求)があっても、バッテリ8からの電力供給で電動パワーステアリング15を駆動(作動)させることができる。
実施形態では、バッテリ電圧VBと所定のしきい値との比較によりアイドル時の点火時期ADVIDLをMBTにするか否か(エンジントルクが相対的に低下する遅角させた状態になるように遅角補正を行うか否か)を判定する場合に、このしきい値は、電動パワーステアリング15(第1の補機)の駆動(作動)をバッテリ8からの電力供給で賄ったときに、バッテリ電圧VBが、無発電状態での発電機の目標発電電圧(12.5V)に第1の補機の駆動に伴う電圧降下代(0.5V)を加算した値(13.0V)を下回らないようなバッテリ電圧(つまり13.0V)である場合で説明したが(請求項3に記載の発明)、電動パワーステアリング15(第1の補機)の駆動(作動)をバッテリ8からの電力供給で開始した際には吸入空気量の増加補正を行い、しきい値は、少なくとも吸入空気量の増加補正により実際にエンジン出力が向上するまでのディレイ時間の間、電動パワーステアリング15(第1の補機)の駆動(作動)をバッテリ8からの電力供給で賄ったときに、バッテリ電圧VBが、無発電状態での発電機の目標発電電圧(12.5V)に第1の補機の駆動に伴う電圧降下代(0.5V)を加算した値(13.0V)を下回らないようなバッテリ電圧以上の値である、とすることもできる(請求項4に記載の発明)
上記図3において、12.5Vは発電機4の可変発電電圧範囲の概ね下限値近傍の電圧である(請求項8に記載の発明)。
また、車両の減速中に目標発電電圧を14.5Vにして回生している場合が、「発電機の目標発電電圧が実際のバッテリ電圧を上回っている場合」であり、この場合において電動パワステアリング15の駆動(第1の補機の作動)が開始されたときに目標発電電圧を12.5Vにすることが、「発電機の目標発電電圧を実際のバッテリ電圧を下回る電圧に切換える」ことである(請求項9に記載の発明)。
実施形態では、バッテリ電圧VBに基づいてアイドル時の点火時期をトルクが相対的に低下する遅角させた状態になるように遅角補正を行うか否かを判定する場合で説明したが、発電機4の起電力に基づいてアイドル時の点火時期をトルクが相対的に低下する遅角させた状態になるように遅角補正を行うか否かを判定するようにしてもかまわない。
請求項1の判定処理手順は図6のステップ22により果たされている。
本発明の第1実施形態のエンジンの制御装置の概略構成図。 アイドル状態でのエンジンと電動パワーステアリングの強調制御をモデルとして示した波形図。 発電電圧可変制御において目標発電電圧がどのように設定されてゆくのかを示す波形図。 第1実施形態の作用を説明するための波形図。 アイドル時の目標発電電圧の設定及びアイドルMBT許可フラグ、アイドル空気量負荷補正フラグの設定を説明するためのフローチャート。 アイドル時の点火時期の設定を説明するためのフローチャート。 アイドル時の目標スロットル弁開度の設定を説明するためのフローチャート。
符号の説明
1 エンジン
4 発電機
8 バッテリ
11 エンジンコントロールユニット
15 電動パワーステアリング(第1の補機)
16 エアコンディショナー(第2の補機)
22 スロットル弁

Claims (14)

  1. エンジンにより機械的に駆動される発電機と、
    この発電機の発電した電力を蓄えるバッテリと、
    このバッテリからの電力供給を受けて所定の点火時期に火花点火を行う点火装置と
    を備えるエンジンの制御方法において、
    前記バッテリ電圧または前記発電機の起電力に基づいて前記点火時期をトルクが相対的に低下する遅角させた状態になるように遅角補正を行うか否かを判定する判定処理手順と、
    この判定結果に基づき遅角補正を行わないときにはトルクが相対的に低下しない状態となるように、遅角補正を行わない点火時期に火花点火を行わせる火花点火実行処理手順と
    を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
  2. 前記バッテリからの電力供給で作動する第1の補機を有していることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの制御方法。
  3. 前記バッテリ電圧または前記発電機起電力と所定のしきい値との比較により前記点火時期をトルクが相対的に低下する遅角させた状態になるように遅角補正を行うか否かを判定する場合に、このしきい値は、前記第1の補機の作動をバッテリからの電力供給で賄ったときに、前記バッテリ電圧または前記発電機起電力が、無発電状態での発電機の目標発電電圧に前記第1の補機の駆動に伴う電圧降下代を加算した値を下回らないようなバッテリ電圧または発電機起電力であることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの制御方法。
  4. 前記第1の補機の作動を前記バッテリからの電力供給で開始した際には吸入空気量の増加補正を行い、前記しきい値は、少なくとも吸入空気量の増加補正により実際にエンジン出力が向上するまでのディレイ時間の間、前記第1の補機の作動を前記バッテリからの電力供給で賄ったときに、前記バッテリ電圧または前記発電機起電力が、前記無発電状態での発電機の目標発電電圧に前記第1の補機の駆動に伴う電圧降下代を加算した値を下回らないようなバッテリ電圧または発電機起電力以上の値であることを特徴とする請求項3に記載のエンジンの制御方法。
  5. 前記第1の補機は、この第1の補機に対する作動要求から実際の作動までに、概ね吸入空気量の増加補正によりエンジン出力が向上するまでのディレイ時間相当の遅れがあってはならない補機であることを特徴とする請求項3または4に記載のエンジンの制御方法。
  6. 前記作動要求から実際の作動までに前記ディレイ時間相当の遅れがあってもかまわない第2の補機を有することを特徴とする請求項5に記載のエンジンの制御方法。
  7. 前記第2の補機に対する作動要求があるとき、その作動要求に基づき吸入空気量の増加補正を行うと共に、概ね吸入空気量の増加補正によりエンジン出力が向上するまでのディレイ時間が経過してから、実際の作動を開始させることを特徴とする請求項6に記載のエンジンの制御方法。
  8. 前記無発電状態での発電機の目標発電電圧は、発電機の可変発電電圧範囲の概ね下限値近傍の電圧であることを特徴とする請求項3から7までのいずれか一つに記載のエンジンの制御方法。
  9. 前記発電機の目標発電電圧が実際のバッテリ電圧または発電機起電力を上回っている場合に、前記第1の補機の作動が開始されたとき、前記発電機の目標発電電圧を実際のバッテリ電圧または発電機起電力を下回る電圧に切換えることを特徴とする請求項3から8までのいずれか一つに記載のエンジンの制御方法。
  10. 前記バッテリ電圧または発電機の起電力を下回る電圧は、発電機の可変発電電圧範囲の概ね下限値近傍の電圧であることを特徴とする請求項9に記載のエンジンの制御方法。
  11. 前記第1の補機は、電動パワーステアリング、ヘッドライト、ワイパーの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のエンジンの制御方法。
  12. 前記第2の補機は、リアデフォッガ、ラジエタファン、ブロアフアン、エアコンディショナーの少なくとも一つであることを特徴とする請求項6から8までのいずれか一つに記載のエンジンの制御方法。
  13. 前記バッテリ電圧または前記発電機起電力に基づいて前記点火時期をMBTにするか否かを判定する運転条件はアイドル時であることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載のエンジンの制御方法。
  14. 前記遅角補正を行わないときの点火時期はMBTであることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載のエンジンの制御方法。
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JP2009221954A (ja) * 2008-03-17 2009-10-01 Fuji Heavy Ind Ltd エンジン制御装置

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