JP2007303125A - 光拡散糸及び面状構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ほぼ円形の横断面を有する光透過性で且つその表面が実質的な鏡面である単繊維2を4本単層に且つ並列に並べ、隣り合う単繊維2を互いに融着または溶着して固定することにより形成された平糸3に撚りが付与されている。撚りは、平糸3の幅の5倍の長さで1回を越える頻度で、光拡散糸1の全長にわたって連続的に与えられている。この撚りにより、光拡散糸1の長手方向に沿って平糸3の表面と裏面が周期的に逆転し、各単繊維2の長軸の向きも光拡散糸1の長手方向に沿って連続的に変化する。このため、光拡散糸1に平行光が入射した場合、平行光の入射角度が一定であっても、光拡散糸1の長手方向の個々の部分に応じて円錐面状の拡散光の中心軸の方向が互いに異なり、撚りの1周期において広い範囲に拡散光を生じる。
【選択図】図2
Description
また、特許文献1及び2には、多数の単繊維を織り込んだ織物からなる透明体が開示されている。
このため、このような織り方の織物をカーテンとして用いて採光を行うと、織り目の隙間を通り抜けて直接室内に入る直射日光が多くなり、これが室内において眩しい日差しとなる。
また、この発明は、このような面状構造体に用いることができる光拡散糸を得ることも目的としている。
さらに、この発明の他の目的は、配光を行いつつも眩しさを低減することができる面状構造体を得ることである。
構造体の所定の表面の凹凸が光の波長に比べ十分小さい面への入射光は鏡面反射をし、一方、凹凸が光の波長と同程度かそれ以上のときは乱反射(拡散反射)をすることが知られている。鏡面反射をする表面は一般に「鏡面」と呼ばれる。
対象とする表面の大部分が「鏡面」あるいは概ね均一に分散された「鏡面」により構成されている場合、所定表面の面積に対する鏡面部面積の総和の割合(鏡面率とする)がその面の用途において妥当な範囲にあると考えられるものを「実質的鏡面」と定義する。例えば、鏡はその求められる機能上、入射光の大部分が鏡面反射をしなければならず、鏡面率はおよそ0.9以上であろう。
複数本の単繊維が、単層または複層に且つ並列に並べられて互いに固定された平糸を形成し、この平糸を撚ることによって光拡散糸を得ることもできる。さらに、複数の平糸を互いに撚り合わせてもよい。
また、複数本の単繊維が、互いに束ねられた状態で撚り合わされる、あるいは互いに編み合わされてもよい。
この発明に係る第2の面状構造体は、上記の光拡散糸を面状支持体に縫い込んだ、または編み込んだ、または刺繍したものである。
この発明に係る第3の面状構造体は、上記の多数の光拡散糸を互いにほぼ並列に近接した状態で保持したものである。この場合、多数の光拡散糸を面状支持体上に配列固定する構成とすることができる。
上記の第1〜第4の面状構造体は、布状の柔軟性を有していてもよく、あるいは板状の剛性を有していてもよい。
また、各縦糸が複数本の横糸毎に横糸の表裏を交互に通り、各横糸が複数本の縦糸毎に縦糸の表裏を交互に通るように、光拡散性を有する糸を縦糸及び横糸の少なくとも一方として織り込む、あるいは編み込むことにより、織り目あるいは編み目の隙間が少なくなり、配光を行いつつも眩しさを低減することが可能となる。
本願発明者は、種々の径の光ファイバ及び丸棒を用いて突条を有する光拡散構造体を試作し、拡散の配光分布を調べた結果、多数の突条が互いに平行で且つ十分に近接して並べられ、各突条の断面の曲縁が円弧であり、突条の表面がほぼ鏡面を示す場合には、構造体の表面のある点iに入射する光線Aは、上述の突条の並びによる回折効果により、反射においても透過においても、点iを頂点とする円錐の面状に拡散し、かかる拡散光束において、拡散反射光束は縦半分の円錐の面状に拡がり、拡散透過光束は残る縦半分の円錐の面状に拡がることを判明した。
図2に実施の形態1に係る光拡散糸1を示す。この光拡散糸1は、図3に示されるように、ほぼ円形の横断面を有する光透過性の単繊維2を4本単層に且つ並列に並べ、隣り合う単繊維2を互いに融着または溶着して固定することにより平糸3を形成し、この平糸3を撚ったものである。このとき、平糸3の幅Wの5倍の長さで1回を越える撚りが与えられる。図2に示した光拡散糸1では、平糸3の幅Wの4倍の長さでほぼ1回の撚りを有している。
なお、各単繊維2の表面は実質的な鏡面となっており、4本の単繊維2がこの発明における突条を形成している。また、単繊維2は、例えば熱可塑性ポリマー等から製造することができる。
例えば、平糸3の幅Wの2倍の長さでほぼ1回の撚りを与えた場合には、平糸3の幅方向両端部における単繊維2の向きは互いにほぼ直交し、光拡散糸1に入射する光は、撚りの1周期においてほぼ全方向に拡散する。
図5に実施の形態2に係る光拡散糸11を示す。この光拡散糸11は、実施の形態1と同様に、2本の単繊維2を並列に並べて互いに融着または溶着して固定することにより平糸12を形成し、この平糸12を2本互いに撚り合わせたものである。このとき、撚り合わせた2本の平糸12の全体の幅の5倍の長さで1回を越える撚りが与えられる。図5に示した光拡散糸11は、2本の平糸12の全体の幅の4倍の長さでほぼ1回の撚りを有している。
この光拡散糸11においても、各単繊維2の長軸の向きが光拡散糸11の長手方向に沿って連続且つ周期的に変化し、実施の形態1の光拡散糸1と同様の効果を有する。
なお、平糸12は2本の単繊維2を並べたものに限らず、図3のように4本の単繊維2、あるいは他の本数の単繊維2を並列に並べた平糸を用いることもできる。さらに、複数の単繊維2を複層に且つ並列に並べて互いに固定した平糸を用いてもよい。
図6に実施の形態3に係る光拡散糸21を示す。この光拡散糸21は、複数本の単繊維2を互いに束ねた状態で紐状に撚り合わせたものである。このとき、光拡散糸21の径の5倍の長さで1回を越える撚りが与えられる。
この光拡散糸21においても、各単繊維2の長軸の向きが光拡散糸21の長手方向に沿って連続且つ周期的に変化し、実施の形態1及び2の光拡散糸1及び11と同様の効果を有する。
また、それぞれ複数の単繊維2を並べた複数の平糸を束ねて紐状に撚り合わせることもできる。
図7に実施の形態4に係る光拡散糸31を示す。この光拡散糸31は、図3に示した4本の単繊維2からなる平糸3を3本用い、これらの平糸3を三つ編みに編み合わせたものであり、扁平な紐状に形成されている。
このように編み合わせることにより、各単繊維2に光拡散糸31の径または幅の5倍の長さで1回を越える撚りが与えられる。光拡散糸31に曲がりや反りが加えられても、3本の平糸3の相対位置はほとんど変わることがなく、また編みを堅くすることにより、平糸3同士の近接度を良好に保つことができる。
編み合わせにより、光拡散糸31の長手方向に沿って各平糸3の扁平な面が蛇行し、光拡散糸31に光が入射した場合に、円錐面状の透過拡散の中心軸は光の入射部における単繊維2の接線方向と平行になるため、拡散光が広い範囲に及ぶこととなる。
レーザポインタを用いて光拡散糸31にレーザビームを照射したところ、拡散光はほぼ45度の範囲に広がった。
なお、3本の平糸に限るものではなく、2本あるいは4本以上の平糸を編み合わせてもよい。
また、平糸ではなく、複数本の単繊維2を互いに編み合わせて光拡散糸を形成することもできる。
図9に示されるように、長方形の一対の長辺上にそれぞれ4つの半円が互いに近接して配列された断面形状を有する平糸5を製造した。長方形の各長辺上の4つの半円がそれぞれこの発明における突条に対応しており、実質的な鏡面である表面を有している。
このような平糸5は、この平糸5の断面形状と同じ形状のノズル開口を有する口金から例えば温度300℃でポリエチレンテレフタレートを紡出し、延伸することにより製造することができる。なお、ポリエチレンテレフタレートに3.5重量%程度以下の艶消し剤を含ませることもできる。
この平糸5を実施の形態1の平糸3、実施の形態2の平糸12、実施の形態3の単繊維2、実施の形態4の平糸3の代わりに用いてそれぞれ光拡散糸を形成することができる。
なお、実施の形態1にこの平糸5を適用する場合には、平糸5が撚りを有するように、口金から紡出させた直後に撚りを与えて、そのまま冷却固化させることもできる。
上記の実施の形態1〜5に記載の光拡散糸1、11、21、31、41のいずれかを縦糸及び横糸の少なくとも一方として織り込む、あるいは編み込むことにより、光拡散特性を有する織り布、編み布等の面状構造体を形成することができる。
なお、織り方、編み方については限定されるものではない。
このとき、光拡散糸1、11、21、31、41のいずれかを縦糸及び横糸の双方に用いてもよく、光拡散糸1、11、21、31、41のうちの2つをそれぞれ縦糸と横糸に用いてもよい。さらに、縦糸及び横糸の一方のみに光拡散糸1、11、21、31、41のいずれかを使用し、他方には光拡散糸1、11、21、31、41以外の糸(光拡散特性を有しない種類の糸を含む)を使用することもできる。
このような面状構造体においては、縦糸及び横糸の少なくとも一方として用いられた光拡散糸1、11、21、31、41が広範囲に拡散光を生じさせるため、この面状構造体に太陽光を照射させることにより、その時点の太陽の位置に大きく依存することなく、すなわち太陽の位置が移動しても、室内に均一な分布で配光を行うことが可能となる。
フィルム状または板状の透明な面状支持体あるいは網状の面状支持体に上記の実施の形態1〜5に記載の光拡散糸1、11、21、31、41のいずれかを縫い込む、または編み込む、または刺繍することにより、光拡散特性を有する面状構造体を形成することができる。
このような面状構造体においても、光拡散糸1、11、21、31、41が広範囲に拡散光を生じさせるため、実施の形態6と同様に、室内に均一な分布で配光を行うことが可能となる。
図10に実施の形態8に係る面状構造体を示す。透明な面状支持体6の表面上に、上記の実施の形態1〜5に記載の光拡散糸1、11、21、31、41のいずれかを多数本互いにほぼ並列に近接した状態で配列し、固定したものである。
この面状構造体においても、配列固定された光拡散糸1、11、21、31、41が広範囲に拡散光を生じさせるため、実施の形態6及び7と同様に、室内に均一な分布で配光を行うことが可能となる。
なお、一対の透明な面状支持体6の間に多数本の光拡散糸1、11、21、31、41を配列し、挟持させてもよい。
図11に実施の形態9に係る面状構造体を示す。図3に示した平糸3を縦糸及び横糸として用いて織り込むことにより、布状の面状構造体を得ることができる。ここで、各縦糸は複数本の横糸毎に横糸の表裏を交互に通り、各横糸は複数本の縦糸毎に縦糸の表裏を交互に通るように織り込まれる。さらに、横糸が縦糸の表裏を交互に通る位相が隣り合う横糸毎に縦糸1本ずつずれるように構成されている。
すなわち、図11に示されるように、横糸Y1を、縦糸T1の前面を通した後、縦糸T2、T3の背面に、次いで縦糸T4、T5の前面に、さらに縦糸T6、T7の背面に・・・と縦糸2本ずつの背面と前面に交互に通す。横糸Y1に隣接する次の横糸Y2は、縦糸T1、T2の前面を通した後、縦糸T3、T4の背面に、次いで縦糸T5、T6の前面に、さらに縦糸T7、T8の背面に・・・と、横糸が縦糸の背面と前面を通る位相を隣り合う横糸毎に縦糸1本ずつ一定方向にずらす。
このとき、縦糸1本ずつではなく、横糸が縦糸の背面と前面を通る位相を隣り合う横糸毎に縦糸所定の複数本ずつ一定方向にずらしてもよい。
これに対し、この実施の形態9のように横糸が縦糸の背面と前面を通る位相を隣り合う横糸毎にずらす織り方においては、図14に示されるように、縦糸Dと縦糸Eとの水平方向の間隔は小さくなり、縦糸C、Dと縦糸E、Fとの交錯域では、図15に示されるように、これら縦糸C、Dと縦糸E、Fの近接度が高まり、その近接領域の面積S2は図13の通常の交錯織りにおける面積S1に比べて大幅に増大する。
なお、図11では、縦糸及び横糸としてそれぞれ平糸3を用いたが、これに限るものではない。例えば、図16に示されるように、縦糸として平糸3を用い、横糸として光拡散特性を有しない糸7を使用することもできる。この場合の横糸は、縦糸の配列を保持するためにのみ用いられている。
さらに、これらの光拡散性を有する糸を縦糸及び横糸の少なくとも一方として図11あるいは図16のように編み込んで編み布を形成してもよい。
上述した実施の形態1〜9においては、光透過性を有する単繊維2、平糸3、4、5及び12を用いたが、これら単繊維や平糸を光反射体から構成しても、「円錐面状の拡散」が「半円錐面状の拡散」に変わるだけで、他の特性は実施の形態1〜9と同様の効果が得られる。この場合、実施の形態8で用いた透明な面状支持体6の代わりに不透明な面状支持体を用いることもできる。
r≦0.0625mm
θ≧160度
d≦5μm
なお、突条として単繊維2を用いる場合には、単繊維2の径Dを、
D≦0.125mm
とすればよい。
Claims (17)
- 所定の径または幅を有し且つ光透過性または光反射性を有する糸であって、
互いにほぼ並列に近接して並ぶ複数の突条が表面上に形成され、各突条は少なくともほぼ円の一部の横断面を有し且つ実質的な鏡面からなる表面を有すると共に前記所定の径または幅の5倍の長さで1回を越える撚りを有することを特徴とする光拡散糸。 - 前記突条は、ほぼ円形の横断面を有する光透過性または光反射性の単繊維からなる請求項1に記載の光拡散糸。
- 複数本の単繊維が、単層または複層に且つ並列に並べられて互いに固定された平糸を形成し、この平糸が撚られた請求項2に記載の光拡散糸。
- 複数の平糸が互いに撚り合わされた請求項3に記載の光拡散糸。
- 複数本の単繊維が、互いに束ねられた状態で撚り合わされた請求項2に記載の光拡散糸。
- 複数本の単繊維が、互いに編み合わされた請求項2に記載の光拡散糸。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散糸を縦糸及び横糸の少なくとも一方として織り込んだあるいは編み込んだ面状構造体。
- 面状支持体を備え、請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散糸を前記面状支持体に縫い込んだ、または編み込んだ、または刺繍した面状構造体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の多数の光拡散糸を互いにほぼ並列に近接した状態で保持した面状構造体。
- 面状支持体を備え、多数の光拡散糸は前記面状支持体上に配列固定された請求項9に記載の面状構造体。
- それぞれ少なくともほぼ円の一部の横断面を有し且つ実質的な鏡面からなる表面を有すると共に互いにほぼ並列に近接して並ぶ複数の突条が表面上に形成された光拡散性を有する糸を縦糸及び横糸の少なくとも一方として織り込んだあるいは編み込んだ面状構造体であって、
各縦糸は複数本の横糸毎に横糸の表裏を交互に通り、
各横糸は複数本の縦糸毎に縦糸の表裏を交互に通る
ことを特徴とする面状構造体。 - 横糸が縦糸の表裏を交互に通る位相が隣り合う横糸毎に縦糸所定の本数ずつずれている、または縦糸が横糸の表裏を交互に通る位相が隣り合う縦糸毎に横糸所定の本数ずつずれている請求項11に記載の面状構造体。
- 光拡散性を有する糸の突条は、ほぼ円形の横断面を有する光透過性または光反射性の単繊維からなる請求項11または12に記載の面状構造体。
- 光拡散性を有する糸は、複数本の単繊維が単層または複層に且つ並列に並べられて互いに固定された平糸である請求項13に記載の面状構造体。
- 光拡散性を有する糸は、請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散糸である請求項13に記載の面状構造体。
- 布状の柔軟性を有する請求項7〜15のいずれかに記載の面状構造体。
- 板状の剛性を有する請求項7〜15のいずれかに記載の面状構造体。
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