JP2007302741A - ポリイミドフィルム及び高分子電解質膜 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、陽イオン交換体や電解質膜に使用される新規なポリイミドフィルム及び高分子電解質膜に関する。
芳香族ジアミノ化合物は、ポリアミドやポリイミドなどの樹脂製造用の原料として用いられる。芳香族ポリイミドは、一般にオキシジアニリンのような芳香族ジアミンとピロメリット酸無水物のようなテトラカルボン酸二無水物との重縮合により得られ、ジアミン残基と酸無水物残基との間の電荷移動相互作用に基づく強い分子間相互作用のため、薄膜形成能に優れ、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性、そして化学的安定性に優れるので、スーパエンジニアリングプラスチックス、層間絶縁材料等の電子材料あるいは中空糸気体分離膜などで利用されている。これらの優れた特性は、イオン交換膜や燃料電池用の電解質膜においても必要なものであり、特にスルホン酸基(スルホ基ともいう)やリン酸基のようなイオン交換基を有するポリイミドは良好な燃料電池用電解質膜などとして期待される。しかし、ポリイミドは、酸性水溶液中でイミド環が加水分解し易い欠点があり、スルホン化ポリフェニレンやスルホン化ポリエーテルスルホンなどのその他のスルホン化芳香族炭化水素系高分子に比べて大きな弱点であり、その解決が重大な課題である。
そこで1,4,5,8‐ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTDA)からの六員環イミド環を有するポリイミドがフタル酸無水物からの五員環イミド環より耐加水分解性に優れているとの提案がなされ(非特許文献1)、例えば、特許文献1では、NTDAと次式(19)〜(21)で示されるスルホン化ジアミン及び非スルホン化ジアミン(例えば、オキシジアニリン)との共重合ポリイミド膜が燃料電池用の電解質膜として優れていると開示されている。しかし、これらのスルホン化ポリイミド膜の耐水性は十分なものではない。特許文献2では、式(22)で示されるスルホン化ジアミンからのスルホン化共重合ポリイミド膜がさらに優れた耐水性を有することを開示している。これは、電子吸引性のスルホ基がアミノ基の結合しているフェニル環から離れたフェニル環に結合しているのでアミンの塩基性が高く、イミド環の耐加水分解性が増すためと考えられる(例えば、非特許文献2)。
上記のスルホン化ポリイミドは、いずれもスルホ基が高分子主鎖に直接結合している場合である。パーフルオロスルホン酸系高分子電解質膜では、側鎖のフルオロエーテル末端にスルホ基が結合し、親水性のスルホ基部が疎水性の主鎖部からミクロ相分離し、親水性のイオンチャンネルを形成していると考えられている。同様の効果を期待してこれまでに、芳香族炭化水素系高分子の側鎖にスルホ基を導入した側鎖型のスルホン化芳香族炭化水素系高分子膜が報告されている。例えば、式(23)で示される4‐(4‐スルホフェノキシ)ベンゾイル基を有するポリ‐1,4‐フェニレン(非特許文献3)、式(24)で示される2‐スルホベンゾイル基を有するポリスルホン(非特許文献4)、式(25)で示されるω‐スルホアルキルスルホニル基を有するポリスルホン(非特許文献5)、式(26)で示されるω‐スルホアルキル基を有するポリスルホンなどの芳香族炭化水素系ポリマー(特許文献3)が挙げられる。
ポリイミドにおいても式(27)で示されるω‐スルホアルコキシ基を有するジアミン(非特許文献6、特許文献4)及び式(28)で示されるスルホフェノキシ基を有するジアミン(非特許文献7、8)の合成とそのポリイミドの合成と物性が報告されている。これらの側鎖型スルホン化ポリイミド膜はミクロ相分離構造を有し、比較的優れた高温耐水性を有することが明らかにされている。
その他に、側鎖にスルホ基を有するものとして、主鎖の芳香族環にアルキレンエーテル結合を介してスルホン化芳香族基を結合したポリイミド(特許文献5)や下式、
‐R‐SO3H
(Rは、アルキレン、ハロゲン化アルキレン、アリーレン及びハロゲン化アリーレン、又はエーテル結合を含むもの)で表される側鎖にスルホン酸基を有するポリイミドが示されている(特許文献6)。これらのイオン交換体のあるものは、比較的高温下での耐久性や耐加水分解性を有しているが、更なる耐加水分解性が望まれる。
‐R‐SO3H
(Rは、アルキレン、ハロゲン化アルキレン、アリーレン及びハロゲン化アリーレン、又はエーテル結合を含むもの)で表される側鎖にスルホン酸基を有するポリイミドが示されている(特許文献6)。これらのイオン交換体のあるものは、比較的高温下での耐久性や耐加水分解性を有しているが、更なる耐加水分解性が望まれる。
ポリイミドの強い分子間相互作用に基づく優れた特性を活かし、強靱で可橈性に富むスルホン化ポリイミド薄膜で、かつイミド環の耐加水分解性を著しく向上させ、優れた高温耐水性を有する電解質膜の開発が必要とされている。これまでに開発されたスルホン化ポリイミド膜は、長期間使用するとイミド環の加水分解が生じて分子量が低下するため、膜は機械的特性を失うことがある。また、高温使用中、経時的にスルホ基の脱離を生じてイオン交換容量の低下を来たし、性能が低下するという現象が見られることがある。これらの現象は、特に100℃を超える高温で顕著になることから、100℃以上の温度下で用いても、長期耐久性と機械的強度を有し、幅広い温度領域で使用可能であり、しかも低湿度下でのプロトン伝導性低下の少ない燃料電池用の電解質膜として使用に耐え得る高分子電解質膜の開発が望まれている。本発明は、電解質膜に適した芳香族ポリイミドフィルム及びそれから得られる高分子電解質膜を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定のジアミン化合物をモノマーとして用いたスルホン化ポリイミドは、耐熱性が優れ、100〜120℃の温度条件下でも高い機械的強度を保ち、しかも経時的劣化の少ない陽イオン交換膜、特に燃料電池用電解質膜に適するスルホン化ポリイミド膜を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される構造単位を有するスルホン化芳香族ポリイミドからなることを特徴とする芳香族ポリイミドフィルムである。
(式中、Arは少なくとも1つの芳香環を有する4価の基であり、Ar1は下記式(a)で表される2価の基であり、XはO、S、C(CH3)2、C(CF3)2、CH2、CO又は直接結合である。)
また本発明は、上記式(1)で表される構造単位と、下記式(2)で表される構造単位を有するスルホン化芳香族ポリイミドからなることを特徴とする芳香族ポリイミドフィルムである。
(式中、Arは少なくとも1つの芳香環を有する4価の基であり、Ar2はスルホン酸置換基を有さない2価の有機基である。)
ここで、上記スルホン化芳香族ポリイミドは、下記式(3)で表される構造単位を50モル%以下有することができる。
(但し、Arは少なくとも1つの芳香環を有する4価の基であり、Ar3は少なくとも1つの芳香環を有し、スルホン酸置換基を有さない3価の基である。)
上記スルホン化芳香族ポリイミドが式(2)で表される構造単位を有する場合、式(1)で表される構造単位が20〜80モル%、式(2)で表される構造単位が80〜20モル%の範囲であることがよい。
上記スルホン化芳香族ポリイミドが式(2)で表される構造単位を有する場合、式(1)で表される構造単位が20〜80モル%、式(2)で表される構造単位が80〜20モル%の範囲であることがよい。
更に本発明は、上記のポリイミドフイルムからなることを特徴とする高分子電解質膜である。
ここで、高分子電解質膜は、次の特性の1以上を満足することが好ましい。1)30μm厚の高分子電解質膜を温度130℃の加圧熱水中に100時間浸漬後、180°折り曲げても破断せず、破断応力が40MPa以上であること、2)温度60℃で、相対湿度100%においてプロトン伝導度が90mS/cm以上、相対湿度50%においてプロトン伝導度が5mS/cm以上であり、温度120℃で、相対湿度50%においてプロトン伝導度が30mS/cm以上であり、更に130℃の加圧熱水中に100h浸漬し、その前後において、実質的にプロトン伝導度の低下が見られないこと、3)温度50℃で30wt%メタノール濃度でのメタノール透過係数が1×10-6cm2/s以下であること。
ここで、高分子電解質膜は、次の特性の1以上を満足することが好ましい。1)30μm厚の高分子電解質膜を温度130℃の加圧熱水中に100時間浸漬後、180°折り曲げても破断せず、破断応力が40MPa以上であること、2)温度60℃で、相対湿度100%においてプロトン伝導度が90mS/cm以上、相対湿度50%においてプロトン伝導度が5mS/cm以上であり、温度120℃で、相対湿度50%においてプロトン伝導度が30mS/cm以上であり、更に130℃の加圧熱水中に100h浸漬し、その前後において、実質的にプロトン伝導度の低下が見られないこと、3)温度50℃で30wt%メタノール濃度でのメタノール透過係数が1×10-6cm2/s以下であること。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の芳香族ポリイミドフィルムは、式(1)で表される構造単位を有するスルホン化芳香族ポリイミドをフィルム状に成膜して得られる。スルホン化芳香族ポリイミドは、式(1)で表される構造単位以外の他の構造単位を有することができ、好ましい他の構造単位としては式(2)及び(3)で表される構造単位がある。
本発明の芳香族ポリイミドフィルムは、式(1)で表される構造単位を有するスルホン化芳香族ポリイミドをフィルム状に成膜して得られる。スルホン化芳香族ポリイミドは、式(1)で表される構造単位以外の他の構造単位を有することができ、好ましい他の構造単位としては式(2)及び(3)で表される構造単位がある。
スルホン化芳香族ポリイミドは、特定の芳香族ジアミンを含むジアミンと芳香族テトラカルボン酸類(好ましくは、芳香族テトラカルボン酸二無水物)とを反応させることにより合成することができる。この際、必要によりトリアミンや芳香族トリカルボン酸無水物等を併用することもできる。式(1)、式(2)及び式(3)において、芳香族テトラカルボン酸類はArを与え、芳香族ジアミンはAr1又はAr2を与えるので、好ましいAr及びAr1,Ar2は芳香族テトラカルボン酸類及びジアミンの説明から理解される。また、式(3)中のAr3はトリアミンから生ずる3価の基であるので、好ましいAr3はトリアミンの説明から理解される。
式(1)〜式(3)中、Arは少なくとも1つの芳香環を有する4価の基であるが、各式におけるArは同一であっても異なってもよい。スルホン化芳香族ポリイミドの合成に用いられる芳香族テトラカルボン酸類としては、特に限定されるものではないが、例えば、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3',3,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ピロメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、m−(ターフェニル)3,4,3",4"−テトラカルボン酸又はそれらの酸二無水物やエステル化物を挙げることができる。特に、次式(4)、(5)又は(6)で示されるナフタレン環を有し、六員環のイミドを形成し得る酸二無水物がスルホン化ポリイミドの耐水性から好適である。
なお、式(5)及び(6)において、Z及びYはCO、O、CO-C6H4-CO又は直接結合である。CO-C6H4-COである場合、C6H4はo-、m-又はp-フェニレンであることができるが、好ましくはm-又はp-フェニレンである。Z及びYは次式によって表される。
式(2)において、Ar2はスルホフェニル基を有さない2価の有機基であり、このようなポリイミドを与えるに使用されるジアミンとしては、公知の芳香族又は脂肪族ジアミンを使用することができる。例えば、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4'−オキシジアニリン、3,4'−オキシジアニリン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンの他、下記で表されるAr2(ジアミン残基)を与えるものを好適に挙げることができる。
上記のジアミンの中でも、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(BAPBz)が好ましい。
また、本発明では、ジアミンの他に3官能アミン(トリアミン)を使用することもできる。トリアミンを使用することで、分子中に分岐架橋構造を有するスルホン化芳香族ポリイミドとすることができる。トリアミンとしては、ポリイミドの耐熱性の観点から1,3,5‐トリス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(TAPB)などの芳香族アミンが好ましい。
TAPBから生じるトリアミン残基(Ar3)は、式(b)で表される。
TAPBから生じるトリアミン残基(Ar3)は、式(b)で表される。
スルホン化芳香族ポリイミドは公知のポリイミドの合成方法を適用することによって得ることができる。例えば、極性溶媒中で、芳香族ジアミン等のアミン類と芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族カルボン酸類、3級アミノ化合物、共沸溶媒としてトルエン又はキシレンなどを添加し、140〜220℃に加熱し生成した水を共沸溶媒と共に除去しながら0.5〜100時間縮重合反応させることによって容易に達成できる。ここで、3級アミノ化合物としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミンなどを挙げることができ、また必要ならば、安息香酸、イソキノリンなどを触媒として添加しても良い。アミン類のアミノ基と芳香族カルボン酸類(酸無水物基換算)のモル比は、0.95〜1.05の範囲が好ましく、この範囲から外れると、ポリイミドの分子量が低くなって得られる膜の強度が低下することから好ましくない。
本発明のポリイミドフィルムを形成するスルホン化芳香族ポリイミドは、式(1)で表される構造単位を有するものでもよく、式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位、式(3)で表される構造単位又は両者を有することができる他、本発明の効果を阻害しない範囲で少量の他の構造単位を含んでもよい。いずれの場合も、式(1)で表される構造単位は5〜100モル%、好ましくは50〜100モル%の範囲で含まれることがよい。式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とからなる場合は、式(1)で表される構造単位を20〜80モル%、式(2)で表される構造単位を80〜20モル%の範囲とすることにより特性に優れた高分子電解質膜とすることができる。式(3)で表される構造単位を有する場合は、式(3)で表される構造単位を50モル%以下、好ましくは2〜20モル%の範囲とすることがよい。なお、ポリイミド末端は含有量の計算から除外される。
式(2)で表される構造単位、式(3)で表される構造単位又は両者を有する場合は、式(1)/[式(2)+式(3)]のモル比は、5/95〜95/5の範囲であり、好ましくは10/90〜95/5、より好ましくは30/70〜80/20、特に好ましくは40/60〜80/20である。共重合のスルホン化芳香族ポリイミドにおいて、式(1)で表される構造単位が全構造単位に対して5モル%未満になると、イオン交換容量やプロトン伝導性などの特徴を発現し難くなるので好ましくない。また、共重合スルホン化芳香族ポリイミドの場合は、ランダム共重合、ブロック共重合体及び分岐架橋構造の共重合体のいずれであってもよい。
本発明の芳香族ポリイミドフィルムの形成に使用されるスルホン化芳香族ポリイミドは、その溶液粘度(35℃、0.5wt%溶液)が0.7〜20dl/g、好ましくは2.0〜10dl/gの範囲にあることが製膜性や膜の性状の点で好ましい。製膜方法には制限はないが、スルホン化芳香族ポリイミド又はその前駆体の溶液をガラス板等の基板上に所定厚みに塗布し、加熱乾燥又は硬化させたのち、基板から剥離する方法が好ましく例示される。
本発明のポリイミドフィルムの用途には制限はないが、その電解質性、イオン交換性、導電性から、膜に成形し、電気透析、拡散透析、電池隔膜等の用途に適する。
本発明の芳香族ポリイミドフィルムによる高分子電解質膜は、耐水性が極めて良好である。具体的には、30μm厚の高分子電解質膜を温度130℃の加圧熱水中に100時間浸漬後、180°折り曲げても破断せず、破断応力が40MPa以上を示す。一方、従来の特許文献などに記載されている2,2'−ベンジジンジスルホン酸等のスルホ基が主鎖の芳香環に直接結合したスルホン化芳香族ジアミンから合成したスルホン化芳香族ポリイミドのフィルムは、スルホ基の結合した芳香環のイミド環が容易に加水分解を起こすので、非スルホン化ジアミンとの共重合組成にも依存するが、同様の条件では1分〜数時間程度で溶解ないし破断する。なお、180°折り曲げは、折り目の角度が0°となるように折り曲げることをいう。
また、本発明の高分子電解質膜は、プロトン伝導度が、温度60℃、相対湿度100%において、90mS/cm以上、相対湿度50%において、5mS/cm以上、温度120℃、相対湿度50%において、30mS/cm以上で、更に130℃の加圧熱水中に100h浸漬し、その前後において、実質的にプロトン伝導度の低下が見られないもの(±5%の範囲内)がよい。
また、本発明の高分子電解質膜は、温度50℃で30wt%メタノール濃度でのメタノール透過係数が1×10-6cm2/s以下のものが有利である。
本発明のポリイミドフィルムは、機械的強度が優れ、且つ主鎖を構成する芳香族環に直接スルホン酸基が結合しているポリイミド、エーテル結合を介してアルキル基又はフェニル基にスルホン酸基が結合したポリイミドなどに比べて、高温下での水溶液中など過酷な条件下で用いた場合の加水分解による高分子鎖の切断及びスルホン酸基の脱離等経時的劣化が少なく、しかも低湿度下でのプロトン伝導性低下が少なく、燃料電池電解質膜として使用した場合、燃料の水素ガス等とメタノール等の液体に対して高いバリヤー性を併せ持つ優れた電解質膜とすることができる。すなわち、本発明では、ポリイミドの主鎖を構成する部分に親水性の基であるスルホン酸基は存在せず、親水性のスルホン酸基含有側鎖芳香環がイミド環から離れた構造になっているので、疎水性の主鎖部と親水性の側鎖基部がミクロ相分離構造をとり易い。そのため、ポリイミド主鎖部の疎水性ドメインへ水収着量は少なく、電解質膜としての利用時に主鎖が加水分解を受け難くなるのである。さらに、スルホン酸基を有する側鎖芳香環が主鎖を構成するフェニル環と直接結合しており、エーテル基等を介して主鎖に結合しているポリイミドにくらべて、側鎖芳香環の加水分解による脱離がおこりにくい。
以下に実施例を示す。
以下の実施例に示した1HNMRのデータは、溶媒として重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO‐d6)を用いて、日本電子JEOL EX-270により測定した。また、本発明における評価方法は以下のとおりである。
以下の実施例に示した1HNMRのデータは、溶媒として重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO‐d6)を用いて、日本電子JEOL EX-270により測定した。また、本発明における評価方法は以下のとおりである。
[吸水率] 膜サンプル約100mgを乾燥して乾燥重量Wdを測定した後、60℃で4時間水に浸漬した。膜サンプルを水から取り出し、手早く表面に付着した水をティシュペーパーでふき取り、膨潤時の膜重量Wsを測定した。吸水率(Water uptake;WU)を次式から求めた。
WU(%)=(Ws‐Wd)/Wd×100
WU(%)=(Ws‐Wd)/Wd×100
[耐水性] 膜厚30〜40μmの膜サンプルを130℃、加圧下熱水に100時間浸漬した後、膜形状・強度の観点から、次の5段階で評価した。なおII〜Vで用いたフイルム片は、浸漬処理後、風乾し幅5mm長さ20mmの形状としたものである。
I: 膜形状を保持していない。膜が多くの小片に破れている。
II: フイルム片の両端をつかんで(つかみ代が5mm)、折り曲げると膜が破断。
III: 折り目の角度が0°となるようにフイルム片を折り目をつけて曲げると破断。
IV: 折り目を付けて曲げても破断しないが、もとに曲げ戻すと破断。
V: 折り目を付けて曲げても、さらに曲げ戻しても破断せず。
また、加圧水浸漬処理した膜を風乾後、60℃、100〜80%RHでプロトン伝導度を測定し、プロトン伝導度の観点から、次の3段階で評価した。
a:処理によりプロトン伝導度は20%以上低下
b:5〜20%低下
c:実験誤差(±5%)範囲内(変化なし)
I: 膜形状を保持していない。膜が多くの小片に破れている。
II: フイルム片の両端をつかんで(つかみ代が5mm)、折り曲げると膜が破断。
III: 折り目の角度が0°となるようにフイルム片を折り目をつけて曲げると破断。
IV: 折り目を付けて曲げても破断しないが、もとに曲げ戻すと破断。
V: 折り目を付けて曲げても、さらに曲げ戻しても破断せず。
また、加圧水浸漬処理した膜を風乾後、60℃、100〜80%RHでプロトン伝導度を測定し、プロトン伝導度の観点から、次の3段階で評価した。
a:処理によりプロトン伝導度は20%以上低下
b:5〜20%低下
c:実験誤差(±5%)範囲内(変化なし)
[機械的強度] 膜厚約30μmの膜サンプル(幅5mm、長さ4cm)を(株)オリエンテック製のテンシロン万能試験機(RTC-1150A、ロードセルUR-50N-D)を用いて引っ張り試験を行った。測定は、未処理膜及び130℃加圧下熱水に100時間浸漬した後、風乾した膜について行った。
[プロトン伝導度] プロトン伝導度測定セルに膜シート(1.0cm×0.5cm)と4枚の白金黒電極板をとりつけ、温度制御した水中又は温度・湿度制御したチャンバー内にセットし、日置電気(株)製のLCRメーター(HIOKI3552-80)を用いて、100Hzから100kHzの周波数範囲で複素インピーダンス法により電気抵抗Rを測定し、プロトン伝導度σを次式から計算した。なお、表1での温度は60℃とした。
σ=d/(ts ws R)
ここで、dは2電極間距離(0.5cm)、tsとwsは、室温で70%RHにおける膜シートの厚さと幅である。水中でのプロトン伝導度の計算には、水中でのtsとws値を用いた。
σ=d/(ts ws R)
ここで、dは2電極間距離(0.5cm)、tsとwsは、室温で70%RHにおける膜シートの厚さと幅である。水中でのプロトン伝導度の計算には、水中でのtsとws値を用いた。
[メタノール透過係数] 液々透過測定セルの供給側セル(容量350ml)と透過側セル(容量100ml)の間にフッ素ゴムのシール板を介して膜シートをはさみつける。膜の供給側に30wt%メタノール水溶液を入れ、透過側に蒸留水を入れ、50℃の条件で、ガスクロマトグラフを用いて、任意の時間間隔での供給側と透過側の液組成を測定し、メタノール透過係数PMを求めた。なおPMの計算には膨潤膜厚を用いた。
なお、以下の実施例において用いる略語は次のとおり。
2,2'-BSPhB : 2,2'-ビス(4‐スルホフェニル)ベンジジン
BABSPE : ビス[4‐アミノ‐2‐ビ(4‐スルホフェニル)]エーテル
BAPB : 4,4'-ビス(4‐アミノフェノキシ)ビフェニル
TAPB : 1,3,5‐トリス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPBz : 1,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
NTDA : 1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物
KDNTDA : 4,4'-ケトンジナフタレン−1,1',8,8'-テトラカルボン酸二無水物
BAPBDS : 3,3'-(4,4'-ジアミノフェノキシ)ビフェニルスルホン酸
2,2'-BSPB : 2,2'‐ビス(3-スルホプロポキシ)ベンジジン
2,2'-BSPOB : 2,2'−ビス(4-スルホフェノキシ)ベンジジン
TEA : トリエチルアミン
2,2'-BSPhB : 2,2'-ビス(4‐スルホフェニル)ベンジジン
BABSPE : ビス[4‐アミノ‐2‐ビ(4‐スルホフェニル)]エーテル
BAPB : 4,4'-ビス(4‐アミノフェノキシ)ビフェニル
TAPB : 1,3,5‐トリス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPBz : 1,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
NTDA : 1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物
KDNTDA : 4,4'-ケトンジナフタレン−1,1',8,8'-テトラカルボン酸二無水物
BAPBDS : 3,3'-(4,4'-ジアミノフェノキシ)ビフェニルスルホン酸
2,2'-BSPB : 2,2'‐ビス(3-スルホプロポキシ)ベンジジン
2,2'-BSPOB : 2,2'−ビス(4-スルホフェノキシ)ベンジジン
TEA : トリエチルアミン
合成例1
ステップ1
攪拌子入り三つ口フラスコに、3-ニトロジフェニル75g、溶媒としてエチルアルコール430mLと30重量%苛性ソーダ水溶液215mL、亜鉛粉末84gを順次加え、沸点温度で5時間反応を行った。室温に冷却後、反応液を濾過し亜鉛粉末を除去し、残渣を酢酸エチルで良く洗浄した。有機層を分取し、水で洗浄後、乾燥・濃縮し、アゾ化合物65gを回収した。
ステップ1
攪拌子入り三つ口フラスコに、3-ニトロジフェニル75g、溶媒としてエチルアルコール430mLと30重量%苛性ソーダ水溶液215mL、亜鉛粉末84gを順次加え、沸点温度で5時間反応を行った。室温に冷却後、反応液を濾過し亜鉛粉末を除去し、残渣を酢酸エチルで良く洗浄した。有機層を分取し、水で洗浄後、乾燥・濃縮し、アゾ化合物65gを回収した。
ステップ2
攪拌子入り三つ口フラスコに、ステップ1で得られたアゾ化合物60g、溶媒エチルアルコール196mLに溶解した。その後、反応容器に飽和塩化アンモニウム水溶液、亜鉛粉末を順次加え、1時間還流した。反応液を室温まで冷却後、濾過して亜鉛粉末及び生成物の白色固体を濾取し、水で良く洗浄した。次に、濾残を酢酸エチルで洗浄して生成物を溶解させ亜鉛粉末を分離した。濾液を乾燥・濃縮し、目的とする白色ヒドラゾ化合物を40g得た。
攪拌子入り三つ口フラスコに、ステップ1で得られたアゾ化合物60g、溶媒エチルアルコール196mLに溶解した。その後、反応容器に飽和塩化アンモニウム水溶液、亜鉛粉末を順次加え、1時間還流した。反応液を室温まで冷却後、濾過して亜鉛粉末及び生成物の白色固体を濾取し、水で良く洗浄した。次に、濾残を酢酸エチルで洗浄して生成物を溶解させ亜鉛粉末を分離した。濾液を乾燥・濃縮し、目的とする白色ヒドラゾ化合物を40g得た。
ステップ3
攪拌子入り三つ口フラスコに、ステップ2で得られたヒドラゾ化合物30g、溶媒としてTHF500mLに溶解した。5N塩酸を滴下し加え、0℃〜室温で攪拌して反応を行った。反応液に氷冷下水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和、分液し、THF層を回収した。水層をトルエンで3回抽出し、乾燥後濃縮・精製し、白色粉末目的物を15g得た。融点152℃。
攪拌子入り三つ口フラスコに、ステップ2で得られたヒドラゾ化合物30g、溶媒としてTHF500mLに溶解した。5N塩酸を滴下し加え、0℃〜室温で攪拌して反応を行った。反応液に氷冷下水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和、分液し、THF層を回収した。水層をトルエンで3回抽出し、乾燥後濃縮・精製し、白色粉末目的物を15g得た。融点152℃。
ステップ4
100ml三つ口フラスコに6.72g(20.0ミリモル)の2,2'-ビスフェニルベンジジン(2,2'-BPB)を入れ、アイスバスで冷却した後、10mlの濃硫酸を攪拌しながらゆっくりと添加した。2,2'-BPBを完全に溶解させた後、5mlの発煙硫酸(SO3:60%)をゆっくりと添加した。発煙硫酸を完全に添加した後、該混合物を攪拌しつつ0℃で0.5時間保持した。次いでゆっくりと60℃まで加温し、60℃で2時間保った。その後室温まで冷却した後、混合物を200mlのメタノール中に注ぎ、白色固体を析出させた。固体を濾別後、水で再結晶し、8.63gの固体生成物を得た(収率87%)。1HNMR(270MHz,DMSO‐d6)測定により、δ: 6.34‐6.40 (2H, S), 6.40‐6.49 (2H, D), 6.62‐6.78 (6H, M),7.24‐7.34 (4H,D)のピークを示し、下記式で表される2,2'-BSPhBであることが確認された。融点は300℃以上。
100ml三つ口フラスコに6.72g(20.0ミリモル)の2,2'-ビスフェニルベンジジン(2,2'-BPB)を入れ、アイスバスで冷却した後、10mlの濃硫酸を攪拌しながらゆっくりと添加した。2,2'-BPBを完全に溶解させた後、5mlの発煙硫酸(SO3:60%)をゆっくりと添加した。発煙硫酸を完全に添加した後、該混合物を攪拌しつつ0℃で0.5時間保持した。次いでゆっくりと60℃まで加温し、60℃で2時間保った。その後室温まで冷却した後、混合物を200mlのメタノール中に注ぎ、白色固体を析出させた。固体を濾別後、水で再結晶し、8.63gの固体生成物を得た(収率87%)。1HNMR(270MHz,DMSO‐d6)測定により、δ: 6.34‐6.40 (2H, S), 6.40‐6.49 (2H, D), 6.62‐6.78 (6H, M),7.24‐7.34 (4H,D)のピークを示し、下記式で表される2,2'-BSPhBであることが確認された。融点は300℃以上。
合成例2
ビス(4-アミノ-2-ビ-フェニル)エーテル(BABPE)を文献(森川敦司ら、ポリマー ジャーナル、 第37巻、759-766頁(2005))に記載の方法に従って合成した。
100ml三つ口フラスコに5.28g(15ミリモル)のBABPEを入れ、アイスバスで冷却した後、8mlの濃硫酸を攪拌しながらゆっくりと添加した。BABPEを完全に溶解させた後、2mlの発煙硫酸(SO3:60%)をゆっくりと添加した。発煙硫酸を完全に添加した後、該混合物を攪拌しつつ0℃で0.5時間保持した。次いで、ゆっくりと50℃まで加温し、50℃で2時間保った。その後室温まで冷却した後、混合物を100mlのイソプロパノール中に注ぎ、白色固体を析出させた。固体を濾別後、水で再結晶し、7.14gの固体生成物を得た(収率93%)。1HNMR測定において、δ: 6.41‐6.52 (4H, M), 6.58 (2H, D), 7.30‐7.39 (2H, D),7.50‐7.60 (4H, D)のピークを示し、下記式で表されるBABSPEであることが確認された。
ビス(4-アミノ-2-ビ-フェニル)エーテル(BABPE)を文献(森川敦司ら、ポリマー ジャーナル、 第37巻、759-766頁(2005))に記載の方法に従って合成した。
100ml三つ口フラスコに5.28g(15ミリモル)のBABPEを入れ、アイスバスで冷却した後、8mlの濃硫酸を攪拌しながらゆっくりと添加した。BABPEを完全に溶解させた後、2mlの発煙硫酸(SO3:60%)をゆっくりと添加した。発煙硫酸を完全に添加した後、該混合物を攪拌しつつ0℃で0.5時間保持した。次いで、ゆっくりと50℃まで加温し、50℃で2時間保った。その後室温まで冷却した後、混合物を100mlのイソプロパノール中に注ぎ、白色固体を析出させた。固体を濾別後、水で再結晶し、7.14gの固体生成物を得た(収率93%)。1HNMR測定において、δ: 6.41‐6.52 (4H, M), 6.58 (2H, D), 7.30‐7.39 (2H, D),7.50‐7.60 (4H, D)のピークを示し、下記式で表されるBABSPEであることが確認された。
乾燥した100mlの四口フラスコ中で2.480g(5.0ミリモル)の2,2'-BSPhBと1.7mlのTEAを22mlのm-クレゾールに加えて溶かし、次いで、1.340g(5.0ミリモル)のNTDA及び0.85gの安息香酸を加え、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で20時間攪拌した。重合反応液を80℃まで冷却後、30mlのm-クレゾールを加え希釈後、多量のアセトンに投入し、析出した固体を濾別し、アセトン洗浄後乾燥した。得られた生成物の還元粘度ηSP/c(溶媒:m-クレゾール;0.5wt%;35℃、以下同じ)は3.8dl/gであった。
この生成物をm-クレゾールに溶解し、ガラス板上に流延し、100℃で1時間そして120℃で10時間乾燥して、TEA塩型のスルホン化ポリイミド膜を得た。これをメタノールに1日間浸漬し、次いで0.5M硫酸溶液に3日間浸漬しプロトン交換した後、水洗し150℃で10時間真空乾燥して下記式で表されるプロトン型のスルホン化ポリイミドNTDA-2,2'-BSPhB膜を得た。
スルホン化ジアミンとして2,2'-BSPhBを用い、非スルホン酸ジアミンとしてBAPBを用いた。乾燥した100mlの四つ口フラスコ中で2.976g(6.0ミリモル)の2,2'-BSPhBと2.10mlのTEAを35mlのm-クレゾールに加えて溶かし、次いで、1.104g(3.0ミリモル)のBAPBを添加して溶かした後、2.412g(9.0ミリモル)のNTDA及び1.53gの安息香酸を加え、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で20時間攪拌し、重合反応液を80℃まで冷却後、35mlのm-クレゾールを加え希釈後、多量のアセトンに投入し、析出した固体を濾別し、アセトン洗浄後乾燥した。得られた生成物の溶液粘度ηSP/cは3.0dl/gであった。生成物をm-クレゾールに溶解し、ガラス板上に流延し、100℃で1時間そして120℃で10時間乾燥して、TEA塩型の共重合スルホン化ポリイミド膜を得た。これをメタノールに1日間浸漬し、次いで0.5M硫酸溶液に3日間浸漬しプロトン交換した後、水洗し150℃で10時間真空乾燥してプロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドNTDA-2,2'-BSPhB/BAPB (2/1)-r膜を得た。この膜のFTIRスペクトルを図1に示す。この膜をDMSO-d6に溶かし測定した1HNMRスペクトルを図2に示す。その帰属と積分強度から生成物が下記式で表されるNTDA-2,2'-BSPhB/BAPB(2/1)であることが確認された。
2,2'-BSPhBとBAPBの仕込みモル比を3/2にして、実施例2と同様にしてポリイミドを合成した。得られた生成物の還元粘度ηSP/cは2.8dl/gであった。生成物をm-クレゾールに溶解し、実施例2と同様にキャスト製膜・処理して、下記式で表されるプロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドNTDA-2,2'-BSPhB/BAPB(3/2)-r膜を得た。
乾燥した100mlの四つ口フラスコ中で1.488g(3.0ミリモル)の2,2'-BSPhBと1.05mlのTEAを15mlのm-クレゾールに加えて溶かし、次いで、1.340g(5.0ミリモル)のNTDA及び0.85gの安息香酸を加え、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で10時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、5mlのm-クレゾールと0.736g(2.0ミリモル)のBAPBを添加し、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で10時間攪拌し、重合反応液を80℃まで冷却後、30mlのm-クレゾールを加え希釈後、多量のアセトンに投入し、析出した固体を濾別し、アセトン洗浄後乾燥した。得られた生成物の還元粘度ηSP/cは3.3dl/gであった。生成物をm-クレゾールに溶解し、実施例2と同様にキャスト製膜・処理して、下記式で表されるプロトン型のシークエンス化共重合スルホン化ポリイミドNTDA-2,2'-BSPhB/BAPB(3/2)-s膜を得た。
乾燥した100mlの四つ口フラスコ1中で1.488g(3.0ミリモル)の2,2'-BSPhBと1.05mlのTEAを10mlのm-クレゾールに加えて溶かし、次いで、0.7236g(2.7ミリモル)のNTDA及び0.46gの安息香酸を加え、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で10時間攪拌した。乾燥した100mlの四つ口フラスコ2中で0.736g(2.0ミリモル)のBAPBと7mlのm-クレゾールを添加し、次いで、0.6164g(2.3ミリモル)のNTDA及び0.39gの安息香酸を加え、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で10時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、窒素ガス雰囲気下でフラスコ2中の反応溶液をフラスコ1中に入れ、フラスコ2を1mlのm-クレゾールで3回づつ洗って、その溶液もフラスコ1中に入れ、混合溶液を80℃で10時間そして180℃で48時間攪拌し、重合反応液を80℃まで冷却後、30mlのm-クレゾールを加え希釈後、多量のアセトンに投入し、析出した固体を濾別し、アセトン洗浄後乾燥した。得られた生成物の還元粘度ηSP/cは3.0dl/gであった。生成物をm-クレゾールに溶解し、実施例2と同様にキャスト製膜・処理して、下記式で表されるプロトン型のブロック/ブロック共重合スルホン化ポリイミドNTDA-2,2'-BSPhB/BAPB(3/2)-b膜を得た。
TAPBは、1,3,5‐トリヒドロキシベンゼンと4-フルオロニトロベンゼンを反応させ、次いで、還元して合成した。
乾燥した100mlの四口フラスコ中で1.984g(4.0ミリモル)の2,2'-BSPhBと1.4mlのTEAを20mlのm-クレゾールに加えて溶かし、次いで1.34g(5.0ミリモル)のNTDA及び0.85gの安息香酸を加え、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で20時間攪拌した。溶液を室温まで冷却し、0.340g(0.67ミリモル)のTAPBと20mlのm-クレゾールを加え、60℃で4時間攪拌した。得られた溶液をガラス板上に流延し、80℃、95℃、110℃でそれぞれ1時間、130℃で8時間、さらに200℃で?時間加熱乾燥して、TEA塩型の分岐架橋スルホン化ポリイミド膜を得た。これをメタノールに2日間浸漬し、次いで0.5M硫酸溶液に3日間浸漬しプロトン交換した後、水洗し150℃で10時間真空乾燥して。下記式で表されるプロトン型の分岐架橋スルホン化ポリイミドNTDA‐2,2'-BSPhB/TAPB(6/1)膜を得た。
乾燥した100mlの四口フラスコ中で1.984g(4.0ミリモル)の2,2'-BSPhBと1.4mlのTEAを20mlのm-クレゾールに加えて溶かし、次いで1.34g(5.0ミリモル)のNTDA及び0.85gの安息香酸を加え、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で20時間攪拌した。溶液を室温まで冷却し、0.340g(0.67ミリモル)のTAPBと20mlのm-クレゾールを加え、60℃で4時間攪拌した。得られた溶液をガラス板上に流延し、80℃、95℃、110℃でそれぞれ1時間、130℃で8時間、さらに200℃で?時間加熱乾燥して、TEA塩型の分岐架橋スルホン化ポリイミド膜を得た。これをメタノールに2日間浸漬し、次いで0.5M硫酸溶液に3日間浸漬しプロトン交換した後、水洗し150℃で10時間真空乾燥して。下記式で表されるプロトン型の分岐架橋スルホン化ポリイミドNTDA‐2,2'-BSPhB/TAPB(6/1)膜を得た。
スルホン化ジアミンとしてBABSPEを用いた他は、実施例1と同様にしてポリイミドを合成した。得られた生成物の還元粘度ηSP/cは2.5dl/gであった。生成物をm-クレゾールに溶解し、実施例1と同様にキャスト製膜・処理して、下記式で表されるプロトン型のスルホン化ポリイミドNTDA-BABSPE膜を得た。
スルホン化ジアミンとしてBABSPEを用い、BABSPEとBAPBの仕込みモル比を3/2にして、実施例2と同様にしてポリイミドを合成した。得られた生成物の還元粘度ηSP/cは3.7dl/gであった。生成物をm-クレゾールに溶解し、実施例2と同様にキャスト製膜・処理して、下記式で表されるプロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドNTDA-BABSPE/BAPB(3/2)-r膜を得た。この膜のFTIRスペクトルを図1に示す。この膜をDMSO−d6に溶かし測定した1HNMRスペクトルを図2に示す。その帰属と積分強度から生成物が下記式で表されるNTDA-BABSPE/BAPB(3/2)であることが確認された。
ジアミンにBAPBzを用い、BABSPEとBAPBzの仕込みモル比を1/1にして、実施例4と同様にしてポリイミドを合成した。得られた生成物の還元粘度ηSP/cは1.5dl/gであった。生成物をm-クレゾールに溶解し、実施例4と同様にキャスト製膜・処理して、下記式で表されるプロトン型のシークエンス化共重合スルホン化ポリイミドNTDA-BABSPE/BAPBz(1/1)-s膜を得た。
スルホン化ジアミンとしてBABSPEを用いた他は実施例6と同様にして、下記式で表されるプロトン型の分岐架橋スルホン化ポリイミドNTDA-BABSPE/TAPB(6/1)膜を得た。
カルボン酸二無水物としてKDNTDAをアセナフテンから合成して用いた。NTDAの代わりにKDNTDAを使用し、BABSPEとBAPBの仕込みモル比を3/1にして、実施例8と同様にしてポリイミドを合成した。得られた生成物の還元粘度ηSP/cは2.3dl/gであった。生成物をm−クレゾールに溶解し、実施例2と同様にキャスト製膜・処理して、プロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドKDNTDA-BABSPE/BAPB(3/1)-r膜を得た。
比較例1
スルホン化ジアミンとしてBAPBDSを用い、非スルホン酸ジアミンとしてBAPBを用いた。乾燥した100mlの四口フラスコ中で2.112g(4.0ミリモル)のBAPBDSと1.40mlのTEAを25mlのm-クレゾールに加えて溶かし、次いで、0.736g(2.0ミリモル)のBAPBを添加して溶かした後、1.608g(6.0ミリモル)のNTDA及び1.02gの安息香酸を加え、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で20時間攪拌した。重合反応液を80℃まで冷却後、25mlのm-クレゾールを加え希釈後、多量のアセトンに投入し、析出した固体を濾別し、アセトン洗浄後乾燥した。得られた生成物の溶液粘度ηSP/cは2.8dl/gであった。生成物をm-クレゾールに溶解し、ガラス板上に流延し、120℃で10時間乾燥して、TEA塩型の共重合スルホン化ポリイミド膜を得た。これをメタノールに2日間浸漬し、次いで0.5M硫酸溶液に2日間浸漬しプロトン交換した後、水洗し150℃で10時間真空乾燥してプロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドNTDA‐BAPBDS/BAPB(2/1)‐r膜を得た。
スルホン化ジアミンとしてBAPBDSを用い、非スルホン酸ジアミンとしてBAPBを用いた。乾燥した100mlの四口フラスコ中で2.112g(4.0ミリモル)のBAPBDSと1.40mlのTEAを25mlのm-クレゾールに加えて溶かし、次いで、0.736g(2.0ミリモル)のBAPBを添加して溶かした後、1.608g(6.0ミリモル)のNTDA及び1.02gの安息香酸を加え、窒素ガス雰囲気下で混合物を80℃で4時間そして180℃で20時間攪拌した。重合反応液を80℃まで冷却後、25mlのm-クレゾールを加え希釈後、多量のアセトンに投入し、析出した固体を濾別し、アセトン洗浄後乾燥した。得られた生成物の溶液粘度ηSP/cは2.8dl/gであった。生成物をm-クレゾールに溶解し、ガラス板上に流延し、120℃で10時間乾燥して、TEA塩型の共重合スルホン化ポリイミド膜を得た。これをメタノールに2日間浸漬し、次いで0.5M硫酸溶液に2日間浸漬しプロトン交換した後、水洗し150℃で10時間真空乾燥してプロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドNTDA‐BAPBDS/BAPB(2/1)‐r膜を得た。
比較例2
スルホン化ジアミンとして2,2'-BSPBを用いた以外は、比較例1と同様に行った。還元粘度ηSP/cが4.5dl/gの樹脂を得てから、同様な手順でプロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドNTDA-2,2'-BSPB/BAPB(2/1)-r膜を得た。
スルホン化ジアミンとして2,2'-BSPBを用いた以外は、比較例1と同様に行った。還元粘度ηSP/cが4.5dl/gの樹脂を得てから、同様な手順でプロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドNTDA-2,2'-BSPB/BAPB(2/1)-r膜を得た。
比較例3
スルホン化ジアミンとして2,2'-BSPOBを用いた以外は、比較例1と同様に行った。還元粘度ηSP/cが3.9dl/gの樹脂を得てから、同様な手順で、プロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドNTDA‐2,2'-BSPOB/BAPB(2/1)‐r膜を得た。
スルホン化ジアミンとして2,2'-BSPOBを用いた以外は、比較例1と同様に行った。還元粘度ηSP/cが3.9dl/gの樹脂を得てから、同様な手順で、プロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドNTDA‐2,2'-BSPOB/BAPB(2/1)‐r膜を得た。
比較例4
カルボン酸二無水物としてKDNTDAを用い、スルホン化ジアミンとしてBAPBDSを用い、比較例1と同様に行った。還元粘度ηSP/cが2.2dl/gの樹脂を得てから、同様な手順で、プロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドKDNTDA‐BAPBDS/BAPB(3/1)‐r膜を得た。
カルボン酸二無水物としてKDNTDAを用い、スルホン化ジアミンとしてBAPBDSを用い、比較例1と同様に行った。還元粘度ηSP/cが2.2dl/gの樹脂を得てから、同様な手順で、プロトン型のランダム共重合スルホン化ポリイミドKDNTDA‐BAPBDS/BAPB(3/1)‐r膜を得た。
比較例5
パーフルオロスルホン酸系の電解質膜として、デュポン社製のナフィオン112の膜を用意した。
パーフルオロスルホン酸系の電解質膜として、デュポン社製のナフィオン112の膜を用意した。
〔ポリイミド膜の評価〕
実施例及び比較例で調製したポリイミド膜のイオン交換容量(IEC)の計算値と測定値(括弧内)、吸水性、耐水性、プロトン伝導性、メタノール透過性及びDMSO溶解性を評価した。結果を表1に示す。なお、DMSO溶解性における符号は次を意味する。++易溶;+可溶;+−部分可溶;−不溶。
実施例3,6,8及び比較例1の膜の加圧水浸漬前後での膜の引っ張り試験結果を表2に示す。また、実施例2、3,9と比較例1の膜の水中及び50%RHでのプロトン伝導度の温度依存性を図3に、実施例2,3,7,9と比較例1の膜の60℃でのプロトン伝導度の湿度依存性を図4に示す。
実施例及び比較例で調製したポリイミド膜のイオン交換容量(IEC)の計算値と測定値(括弧内)、吸水性、耐水性、プロトン伝導性、メタノール透過性及びDMSO溶解性を評価した。結果を表1に示す。なお、DMSO溶解性における符号は次を意味する。++易溶;+可溶;+−部分可溶;−不溶。
実施例3,6,8及び比較例1の膜の加圧水浸漬前後での膜の引っ張り試験結果を表2に示す。また、実施例2、3,9と比較例1の膜の水中及び50%RHでのプロトン伝導度の温度依存性を図3に、実施例2,3,7,9と比較例1の膜の60℃でのプロトン伝導度の湿度依存性を図4に示す。
これらの図表より、以下のことが分かる。
(1)実施例1〜11のスルホフェニル基を側鎖に有するポリイミド膜は、比較例2のスルホプロポキシ基を側鎖に有するポリイミド膜に比べて、130℃加圧水浸漬後も高いプロトン伝導度を維持でき、スルホフェニル基の脱離が起きにくいことが分かり、プロトン伝導度の観点からの膜の高温耐水性に優れている。
(2)実施例2〜5のスルホフェニル基を側鎖に有するポリイミド膜は、主鎖と側鎖共に、剛直であり、比較例2のスルホフェノキシ基を側鎖に有するポリイミド膜に比べて、130℃加圧水浸漬後膜が若干脆くなるが、実施例6のように分岐架橋構造を導入することにより、膜の高温耐水性を著しく向上できる。
(3)実施例3と8の膜は、比較例1のスルホン酸基が主鎖の芳香環に直接結合した主鎖型のスルホン化ポリイミド膜に比べて、加圧水浸漬後、引っ張り試験での弾性率と破断応力が大きく、膜の高温耐水性に優れている。
(4)実施例3〜5、8、9の膜は、比較例1の膜と比べて、低いイオン交換容量を持つにもかかわらず、同程度又は高いプロトン伝導度を有する。実施例11の膜は、比較例4の膜と比べて、同じイオン交換容量を持つにもかかわらず、高いプロトン伝導度を有する。特に低湿度でその差は顕著である。
(5)実施例3と9の膜は、120℃、50%RHにおいて、30〜50mS/cmの高いプロトン伝導度を有する。
(6)実施例3と9の膜は、比較例1,3,5の膜に比べて、50℃、30wt%でのメタノール透過係数が非常に低く、メタノール透過係数に対するプロトン伝導度の比が大きな値を有する。
(1)実施例1〜11のスルホフェニル基を側鎖に有するポリイミド膜は、比較例2のスルホプロポキシ基を側鎖に有するポリイミド膜に比べて、130℃加圧水浸漬後も高いプロトン伝導度を維持でき、スルホフェニル基の脱離が起きにくいことが分かり、プロトン伝導度の観点からの膜の高温耐水性に優れている。
(2)実施例2〜5のスルホフェニル基を側鎖に有するポリイミド膜は、主鎖と側鎖共に、剛直であり、比較例2のスルホフェノキシ基を側鎖に有するポリイミド膜に比べて、130℃加圧水浸漬後膜が若干脆くなるが、実施例6のように分岐架橋構造を導入することにより、膜の高温耐水性を著しく向上できる。
(3)実施例3と8の膜は、比較例1のスルホン酸基が主鎖の芳香環に直接結合した主鎖型のスルホン化ポリイミド膜に比べて、加圧水浸漬後、引っ張り試験での弾性率と破断応力が大きく、膜の高温耐水性に優れている。
(4)実施例3〜5、8、9の膜は、比較例1の膜と比べて、低いイオン交換容量を持つにもかかわらず、同程度又は高いプロトン伝導度を有する。実施例11の膜は、比較例4の膜と比べて、同じイオン交換容量を持つにもかかわらず、高いプロトン伝導度を有する。特に低湿度でその差は顕著である。
(5)実施例3と9の膜は、120℃、50%RHにおいて、30〜50mS/cmの高いプロトン伝導度を有する。
(6)実施例3と9の膜は、比較例1,3,5の膜に比べて、50℃、30wt%でのメタノール透過係数が非常に低く、メタノール透過係数に対するプロトン伝導度の比が大きな値を有する。
以上の結果より、本特許のスルホフェニル基を側鎖に有するポリイミドは、高温耐水性、50%RH以上の湿度域でのプロトン伝導性、そしてメタノールバリヤー性に優れることが分かった。本発明のスルホン化ポリイミド膜は、高温並びに低加湿での固体高分子形燃料電池用の高分子電解質膜として、また、直接メタノール形燃料電池用の高分子電解質膜として好適である。
本発明は、プロトン伝導性が高く、耐熱性が高く、機械的強度が大きい固体電解質であるポリイミドフィルムで、陽イオン交換体として、また各種電解用隔膜等とした場合、ガス及び液体に対するバリヤー性が大きく、特に燃料電池用電解質膜として優れた性質を有する。
Claims (8)
- スルホン化芳香族ポリイミドが、式(1)で表される構造単位を20〜80モル%、式(2)で表される構造単位を80〜20モル%有する請求項2又は3に記載の芳香族ポリイミドフィルム。
- 請求項1〜4いずれかに記載のポリイミドフイルムからなることを特徴とする高分子電解質膜。
- 30μm厚の高分子電解質膜を温度130℃の加圧熱水中に100時間浸漬後、180°折り曲げても破断せず、破断応力が40MPa以上である請求項5記載の高分子電解質膜。
- 温度60℃で、相対湿度100%においてプロトン伝導度が90mS/cm以上、相対湿度50%においてプロトン伝導度が5mS/cm以上であり、温度120℃で、相対湿度50%においてプロトン伝導度が30mS/cm以上であり、更に130℃の加圧熱水中に100h浸漬し、その前後において、実質的にプロトン伝導度の低下が見られない請求項5又は6に記載の高分子電解質膜。
- 温度50℃で30wt%メタノール濃度でのメタノール透過係数が1×10-6cm2/s以下である請求項5〜7いずれかに記載の高分子電解質膜。
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