JP2007300825A - デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子および該遺伝子を導入したアラゲカワラタケ形質転換体 - Google Patents

デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子および該遺伝子を導入したアラゲカワラタケ形質転換体 Download PDF

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Abstract

【課題】
担子菌において、さらなる低温での処理を可能にするために、不飽和脂肪酸含量を増大させ、実質的にアラゲカワラタケの低温でのリグニン分解活性を維持できる形質転換体を提供することを課題とする。
【解決手段】
配列番号3の塩基配列で表される、新規なアラゲカワラタケのデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子、また、それを導入して得られるアラゲカワラタケ形質転換体。更に、形質転換体は、発現性が高い遺伝子のプロモーター領域の支配下に該デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を連結したベクターを導入してなることが好ましく、マンガンペルオキシダーゼ遺伝子も導入されていることが望ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、リグニン分解能を有する酵素を産生し、パルプ製造や土壌改良に使用できるアラゲカワラタケに関する。特に、低温耐性を高めるための遺伝子導入に関する。
難分解性の天然高分子であるリグニンを分解する微生物として担子菌をはじめとする木材腐朽菌が知られている。木材腐朽菌の中には、廃棄物の焼却や化学物質の合成の過程で排出されるダイオキシンを分解するもの、あるいは、その他の環境ホルモンなどを分解するものも知られている。これらの中で白色腐朽菌は、目的物を低分子まで分解する能力が高く、有用な菌である。しかしながら自然状態で白色腐朽菌を用いようとする場合、気候等の違いによる分解能力低下が懸念され、特に低温地域での利用では活性が下がることが想定される。
菌類の低温での活性を付与する方法として、トレハロースを利用する方法が知られている(特許文献1)。特許文献1には、パン製造工程に用いるパン酵母において、トレハロース分解系酵素遺伝子を破壊し、細胞内に著量のトレハロースを蓄積するようにした形質転換酵母は冷凍耐性を高めるというデータが開示されている。
また、細胞内に極性の高いアミノ酸を著量に蓄積した酵母は冷凍耐性が高まったとの報告がある(非特許文献1)。
その他、冷凍耐性を獲得する方法としてパルミチン酸よりステアリン酸に基質特異性が高いデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を酵母に導入して、オレイン酸含量を増加させる方法が提案されている(特許文献2)がこの酵母の冷凍耐性は明らかにされていない。
そこで、実用冷凍耐性酵母と同等の性質を持つ一倍体酵母を変異処理することにより冷凍耐性の低下した変異株を用いて、マーカーレスキュー法により冷凍耐性を再獲得する遺伝子を同定し、デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子をコードすることを報告している(特許文献3)。
担子菌シイタケにおいてもデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の存在は開示され(非特許文献2)、低温シフトにより該遺伝子の発現量が2倍程度増大していることが示されている。さらに、担子菌ではデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子以外にデルタ−12−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の存在も示唆されているが菌糸体状態において低温に温度変化させることによりデルタ−12−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子の発現量は増大しなかった(非特許文献3)ことより、担子菌ではデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を発現させることが重要である。しかしながら、上述のデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子活性を遺伝子改変により増強する方法については開示されておらず、低温における難分解性物質に対する分解能力については明らかにされていない。
また、これまでにも担子菌を用いた環境浄化やパルプ製造工程への利用が検討されており、分解酵素遺伝子の同定や遺伝子組換えによる分解酵素遺伝子の増強などが試みられている。しかしながらこれらの有用菌株を上述の目的で利用する場合、自然状態での利用が必要となる。紙パルプ産業の場合、木材資源の豊富な北海道や東北など比較的平均気温の低い地域に工場を有することも少なくないし、他の地方でも、冬季には0〜10℃程度の低温になることが多い。しかし、このような低温の地域、あるいは冬季に木材チップの菌処理を行う場合、有用菌の低温による不活性化のために充分にリグニン分解能を示さなくなる。また、有機塩素化合物などの分解により環境浄化を目指す場合にも気温の低い地域での利用は制限される。
そこでアラゲカワラタケ(Trametes hirsuta)にデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を導入することが考えられるがアラゲカワラタケにおいてその存在は報告されていない。また、シイタケ由来のデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を用いることも考えられるが、これまでにシイタケ由来の遺伝子がアラゲカワラタケにおいて作用したとの報告も存在しない。さらにアラゲカワラタケの形質転換系において異種微生物であるシイタケの遺伝子を導入することは遺伝子組換え体となり、開放系での利用には生物学的封じ込めや組換え微生物の漏洩防止措置に多大な労力を要し、実質的に産業上の利用において大きな障害となることが予想される。
特公平10−117771号公報 特開平10−75782号公報 特開2000−37185号公報 特開平9−47289号公報 特開平6−54691号公報 Appl. Microbiol. Biotechnol., 47, 405-411, 1997 Sakai, H. and Kajiwara, S. Biosci. Biotechnol. Biochem. 67, 2431-2437, 2003 Sakai,H.and Kajiwara,S.,Mol.Gen. Genomics, 273, 336-341, 2005 Yelton, et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 1470, 1984 A-M, Frishauf et al., J. Mol. Biol., 170, 827, 1983 C. Yanisch-Perron, et al., Gene, 33, 103, 1985 P., Broda et. al., J. Microbiol. Methods, 4, 155, 1985
上述するように担子菌においてもさらなる低温での処理を可能にするために、この不飽和脂肪酸含量を増大させる方法がより重要であると考えられる。本発明は、実質的にアラゲカワラタケの低温でのリグニン分解活性を維持できる形質転換体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)〜(4)の構成を採用する。
(1) 配列番号3の塩基配列で表される、アラゲカワラタケのデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子。
(2) 上記(1)に記載のデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を導入して得られるアラゲカワラタケ形質転換体。
(3) アラゲカワラタケにおいて発現性が高い遺伝子のプロモーター領域の支配下に該デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を連結したベクターを導入してなる(2)に記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
(4) 更に、遺伝子改変したマンガンペルオキシダーゼ遺伝子を導入した(2)または(3)に記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、アラゲカワラタケから低温耐性に関与するデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を取得し、遺伝子改変により該遺伝子を構成的に発現せしめ、細胞内の不飽和脂肪酸含量を顕著に増大させ、より低温で生育する有用菌株を取得することに成功した。即ち、アラゲカワラタケを通常の培養温度である25℃〜35℃から15℃に下げた条件にて培養し、培養菌体からcDNAライブラリーを作製し、無作為に選抜したcDNAクローンについて塩基配列の解析を行うことによりアラゲカワラタケ由来のデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を取得し、プロモーター領域を構成的に発現するグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素遺伝子由来の領域に置換した発現ベクターをアラゲカワラタケ宿主に導入し、低温においても高いリグニン分解酵素生産性を維持していることを確認し、本発明に到達した。
上記のように、低温耐性担子菌において、デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ生産量を増大させることにより担子菌が産生する脂肪酸全体における不飽和脂肪酸量を増大させることが低温耐性に効果があることが示された。
以上に結果により、アラゲカワラタケによる難分解性の塩素化合物の分解処理や環境中に蓄積したリグニンなどの芳香族化合物を広い温度領域で処理することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は前述したように、難分解性化合物の分解に効果ある担子菌アラゲカワラタケの低温耐性を向上させることを見出した結果、広い適応温度範囲にて環境浄化や木材チップの菌処理に供することが可能となる。
本発明のアラゲカワラタケのデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子は以下のような手順で得ることができる。
アラゲカワラタケの染色体ライブラリーは以下のような手順で作成する。すなわち、アラゲカワラタケの子実体から、Yeltonらの方法(非特許文献4)等、通常の染色体DNAの抽出法に準じて染色体DNAを調製し、得られた染色体DNAをSau3AI等の適当な制限酵素で処理し、部分分解を行なった後、ショ糖密度勾配超遠心法で分画して10kbp〜25kbpのDNA断片を得る。同じ付着末端を生じさせる制限酵素で処理したファージDNAに、上記で得られたDNA断片を挿入して染色体遺伝子ライブラリーを作製する。ファージDNAとしてはEMBL3(非特許文献5)λファージDNAなどを用いることができる。挿入後、in vitroでパッケージングを行ない、染色体DNAライブラリーとする。またサブクローニングにはpUC18(非特許文献6)等のプラスミドを用いることができる。クローニングベクターは、上記例示のものに制限されず、市販されるか、文献記載の公知のものが使用できる。
アラゲカワラタケを本来の生育温度である30℃から15℃に低くして培養した菌体のcDNAライブラリーを構築する方法は以下の通りである。すなわち、アラゲカワラタケを低温で培養した菌体からBrodaらの方法(非特許文献7)等、通常のmRNAの抽出法に準じて調製し、得られたmRNAを鋳型にしてcDNAを作成することができる。得られたcDNAに対し、λgt10(アマシャム社製)等のファージベクターなどでパッケージング処理することによりcDNAライブライーとすることができる。
得られた染色体遺伝子ライブラリーまたはcDNAライブラリーから、他生物種から単離されているデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて作製した合成DNAプローブを用いるプラーク・ハイブリダイゼーションによってデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を含むクローンを選択することができる。さらに選択したクローンから目的の遺伝子を含むDNA断片を単離し、制限酵素地図の作成および配列決定を行い、当該遺伝子を取得することができる。
デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ活性を向上させる方法としては当該遺伝子を多コピーで染色体DNA上に挿入することやプロモーター領域を置換して構成的に発現するように改変すること、もしくは誘導酵素遺伝子プロモーター領域の支配下により誘導発現させることなどが挙げられる。このようなプロモーター領域としてはアラゲカワラタケで高発現するものであればいずれでも良いが、それらの中で解糖系の高発現遺伝子であるグリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素遺伝子プロモーター領域やセルロースの有無によって発現調節するセルロース分解酵素系遺伝子プロモーター領域などを用いることが挙げられる。本発明における「プロモーター配列」とは、構造遺伝子の転写を調節する機能を有するものであり、真核生物のプロモーター内で実質的に保存されている機能的塩基配列モチーフ(TATA,CCAA,GCボックスなど)を少なくとも含むDNA断片である。また「転写可能」とは、宿主内でプロモーターの作用下で上記遺伝子のmRNAへの転写が起こることを意味する。有用ポリペプチドをコードする遺伝子は、プロモーター配列を含むDNA断片の下流に結合され、プロモーターの作動によりmRNAに転写される。
本発明に用いるアラゲカワラタケとしてはラッカーゼ、リグニンペルオキシダーゼならびにマンガンペルオキシダーゼなどのリグニン分解酵素生産能を有する株が好適である。また、本発明ではアラゲカワラタケは国内、海外に広く分布している天然のものを用いることができ、これらの子実体から純粋分離して用いることができる。また、例えば独立行政法人製品評価技術基盤機構生物資源遺伝部門(NBRC)からNBRC4917として分譲されている株を用いることができる。さらに好ましくは遺伝子導入宿主としてアラゲカワラタケ由来の栄養要求性一核菌糸株を用いることが好ましい。この様な菌としてアラゲカワラタケのオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ欠損株(OJI-1078株)がFERM BP-4210として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されており、この株を用いることができる。
形質転換における選抜マーカー遺伝子としてはアラゲカワラタケで機能するものであればいずれでも良いが、アラゲカワラタケ宿主のロイシン・アルギニン二重栄養要求性変異を用いる場合には、アラゲカワラタケから取り出したアルギニン生合成系酵素遺伝子群のオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ遺伝子を用いることができる。また、野性株の形質転換法としては、カルボキシン耐性遺伝子である改変型コハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子を用いることによっても形質転換体を取得することができる。
選抜マーカー遺伝子とデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ生産用改変遺伝子ならびにリグニン分解酵素生産用改変遺伝子を同時に組み込むことにより所望の性質を有するアラゲカワラタケを取得することができる。形質転換法としては、塩化カルシウム/PEG法、リン酸カルシウム法、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、スフェロプラスト法、リポフェクション法、アグロバクテリウム法などを例示できるが、これらに限定されない。
このようにして得られた形質転換体を通常の培養温度である30℃より低い温度で培養を行った場合にも高いリグニン分解酵素活性を維持していることを認めることができる。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
<実施例1>アラゲカワラタケからデルタ−9−デサチュラーゼ遺伝子の単離
アラゲカワラタケNBRC 4917株の平板寒天培養から直径5mmの寒天片をコルクボーラーで打ち抜き、グルコース・ペプトン培地(グルコース2%、ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.2%、KH2PO4、MgSO4 0.05%、リン酸でpH4.5に調製)200mlに植菌し、15℃で7日間回転振盪培養を行った。培養後菌体を集菌し、1Lの滅菌水で菌体を洗浄し、液体窒素で凍結した。この凍結菌体を用いてグアニジン塩酸法による全RNAの回収を行い、次いで宝酒造製のOligotex -dT <super> mRNA Purification kitを用いて、poly(A)+RNAを調製した。さらにSTRATAGENE社製のcDNA Synthesis kitを用いてcDNAを合成し、5'側にEcoRIサイト、また3'側にXhoIサイトを付加し、λZAPIIベクターのEcoRI-XhoIサイトへ挿入し、in vitro packaging kitによりcDNAライブラリーとした。
上記で作製したcDNAライブラリー液をシャーレ上でプラークが単離できるように適当に希釈しEschericia coli XL1 Blue MRF'株へ感染させ、37℃で1晩培養することにより、プラークを形成させた。得られたシングルプラークをSMバッファーに懸濁し、シークエンス用ユニバーサルプライマーであるM13(-20)プライマー(5'-GTAAAACGACGGCCAGT-3':配列番号1)並びにM13 Reverse プライマー(5'-GGAAACAGCTATGACCATG-3':配列番号2)を用いてPCR反応を行い、cDNA断片を増幅した。このようにして得られたcDNA断片をABI310型DNAシークエンサーを用いて塩基配列の解析を行った。その結果、デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼをコードするcDNA遺伝子を見出した。塩基配列を配列番号3に、また推定されるアミノ酸配列を配列番号4に示す。
<実施例2>デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子発現ベクターの構築
アラゲカワラタケにおいて構成的に発現しているグリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素遺伝子プロモーター領域の支配下に実施例1で得られたデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を順方向で連結した発現ベクターを構築した。即ち、アラゲカワラタケ染色体DNAを鋳型にして、5'- GAATTCAGAGGCGAGAGCGG -3'(配列番号5)に示すプライマーと5'- CCATGGTGTGTGGTGGATGGG-3'(配列番号6)に示すプライマーを用いてPCR反応を行った。増幅された約0.9 kbのDNA断片は、TOPO TA Cloning Kit (Invitrogen 社製)を用いてクローニングを行い、pTAGPDPを得た。このプラスミドを制限酵素NcoIで消化後、Klenow fragmentを用いて平滑化後、さらに制限酵素EcoRIで消化し、0.9kbのDNA断片を得た。次にpBluescriptII SK+プラスミドを制限酵素EcoRIならびにSmaIで消化したベクターに導入し、pGPDPとした。
さらにpGPDPの下流にマンガンパーオキシダーゼ遺伝子(MnP)のイントロンを含む3'末端領域(0.8 kb)を導入するために、アラゲカワラタケ由来MnP遺伝子を含むプラスミドpBSMPOG1(FERM P-14933として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託)を鋳型に、5'- CCATGGCCTTCCCGACCCTTC -3'(配列番号7)に示すプライマーと5'- GCGGCCGCGGGTACTGTG -3'(配列番号8)に示すプライマーを用いて、PCR反応を行った。得られた0.8 kbのDNA断片はTOPO TA Cloning Kit を用いてクローニングを行った後、得られたプラスミドを制限酵素NcoIと制限酵素NotIで消化した後、アガロースゲル電気泳動により0.8 kbのDNA断片を回収し、上記プラスミドpGPDPを制限酵素NcoIと制限酵素NotIで消化したベクターpGPDPに導入し、プラスミドpGPDP-Mnpterとした。
次に、デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ構造遺伝子部分を増幅するために実施例1で得られたcDNAクローンを鋳型にして、5'-CCATGGCCTCCGTCGTCGAC-3'(配列番号9)に示すプライマーと5'-CCATGGTCAGCCGAGCATACC-3'(配列番号10)に示すプライマーを用いて構造遺伝子部分のみを増幅し、約1.4 kbのDNA断片を得た。得られたDNA断片を上記で作製したベクターpGPDP-MnpterのNcoIサイトへ挿入し、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素遺伝子プロモーター領域に対し順方向に挿入されたクローンを選抜し、デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子発現ベクターpGPDPFAD1とした。
<実施例3>アラゲカワラタケの形質転換
(a)一核菌糸体培養
直径6mm前後のガラスビーズを約30個入れた500 ml容三角フラスコにSMY培地(シュークロース1 %、麦芽エキス1 %、酵母エキス0.4 %)100 mlを分注して滅菌後、アラゲカワラタケOJI-1078株の平板寒天培地から直径5mmの寒天片をコルクボーラーで打ち抜きSMY培地に植菌し、28 ℃で7日間静置培養した(前培養)。ただし、菌糸を細分化するために、1日に1〜2回振り混ぜた。次に、1L容の三角フラスコにSMY培地200 mlを分注し、さらに回転子を入れ、滅菌後、前培養菌糸をナイロンメッシュ(孔径30 μm)で濾集し、全量を植菌し、28 ℃で培養した。なお、スターラーで1日2時間程度撹拌することにより菌糸を細分化した。この培養を4日間行った。
(b)プロトプラストの調製
上記液体培養菌糸をナイロンメッシュ(孔径30 μm)で濾集し、浸透圧調節溶液(0.5 M MgSO4、50mlマレイン酸バッファー(pH 5.6))で洗浄した。次に、湿菌体100 mgあたり1 mlの細胞壁分解酵素液に懸濁し、緩やかに振盪しながら28℃で3時間インキュベートしてプロトプラストを遊離させた。細胞壁溶解酵素として、次の市販酵素製剤を組み合わせて使用した。即ち、セルラーゼ・オノズカ(cellulase ONOZUKA RS)(ヤクルト社製、東京、日本)5 mg、ヤタラーゼ(Yatalase)(宝酒造社製、京都、日本)10 mgを上記浸透圧調節溶液1 mgに溶解して酵素液として用いた。
(c)プロトプラストの精製
上記酵素反応液からナイロンメッシュ(孔径30μm)で菌糸断片を除いた後、プロトプラストの回収率を高めるため、ナイロンメッシュ上に残存する菌糸断片とプロトプラストを上記浸透圧調節溶液で1回洗浄した。得られたプロトプラスト懸濁液を遠心分離(1,000×g、5分間)し、上静を除去し、4 mlの1Mシュークロースを含む20 mM MOPS緩衝液(pH 6.3)で再懸濁後、遠心操作を繰り返し、上記1Mシュークロース溶液で2回洗浄した。沈殿物に1Mソルビトールを含む20 mM MES緩衝液(pH 6.4)に40 mM塩化カルシウムを加えた溶液500 μlに懸濁し、プロトプラスト懸濁液とした。この懸濁液を4℃で保存した。
プロトプラスト濃度は血球計算盤を用いて、直接検鏡により求めた。すべての遠心操作はスウィングローターで1,000×g、5分間、室温で行った。
(d)形質転換
約106個/100 μlのプロトプラスト懸濁液100 μlに対して、実施例2で作製したプラスミドpGPDPFAD1を2μgならびにリグニン分解酵素の一つであるマンガンペルオキシダーゼ発現ベクターpGPMPG(特許文献4に記載の方法により作成)を2μg添加した。さらに選択マーカーとして、アラゲカワラタケ由来のオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ遺伝子を保持するプラスミドpUCR1(特許文献5に記載の方法により作成し、FERM BP-4201として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されているもの)を0.2 μg添加し30分間氷冷した。次に、液量に対して等量のPEG溶液(50 % PEG 3400を含む20 mM MOPS緩衝液(pH 6.4))を加え、30分間氷冷した。次に、0.5 Mシュークロースおよびロイシンを含む最小寒天培地(寒天1.5%)に混合してシャーレに撒いた。上記シャーレを28 ℃で数日間培養を行い、形質転換体を得た。さらに形質転換体からDNAを調製し、目的とするデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子発現ベクターのpGPDPFAD1ならびにマンガンペルオキシダーゼ発現ベクターpGPMPGが組み込まれていることをPCR法により確認した。
<実施例4>低温におけるリグニン分解酵素活性の維持
上記実施例3で得られたデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子ならびにマンガンペルオキシダーゼ遺伝子が同時に導入された形質転換体を用いて培養温度が低温でもマンガンペルオキシダーゼ活性を維持できるかを検討した。
具体的には上記形質転換体(pGPFAD-MnP)をポテトデキストロール寒天培地上にて28℃で7日間培養したプレートからNo.3コルクボーラーにて5片打ち抜き、200mlのグルコース(3%)・ペプトン(1%)・酵母エキス(1%)液体培地と共にワーリングブレンダーにより10秒間破砕し、滅菌済みの500ml容三角フラスコに移し、28℃で120rpmにて5日間振盪培養し、前培養液とした。次いで該前培養液50mlを1000mlの上記グルコース・ペプトン・酵母エキス液体培地に硫酸マンガンを0.4mMとなるように添加した本培養培地に接種した。接種後、培養液を15℃で120rpmにて振盪培養を行った。マンガンペルオキシダーゼ活性の経時変化を図1に示す。マンガンペルオキシダーゼの酵素活性測定は0.5Mマロン酸ナトリウム緩衝液(pH 5.5)50μl、酵素液345μl、10mM過酸化水素5μl、1mM MnSO4 100μlを十分混合し、反応の結果生じるMn(III)マロン酸複合体の270nmの吸光度増加を経時的に記録することにより行った。ここで酵素活性単位は1分間にMn(III)マロン酸複合体1μmole増加させる活性を1ユニットとした。一方、同条件下で培養した供与DNAを含まない宿主OJI-1078株の培養上清には本酵素活性はほとんど認められなかった。
形質転換体(pGPFAD-MnP)と比較例である宿主OJI-1078株における培養温度15℃でのマンガンペルオキシダーゼ活性の経時変化を示す。

Claims (4)

  1. 配列番号3の塩基配列で表される、アラゲカワラタケのデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子。
  2. 請求項1に記載のデルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を導入して得られるアラゲカワラタケ形質転換体。
  3. アラゲカワラタケにおいて発現性が高い遺伝子のプロモーター領域の支配下に該デルタ−9−脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子を連結したベクターを導入してなる請求項2に記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
  4. 更に、遺伝子改変したマンガンペルオキシダーゼ遺伝子を導入した請求項2または3に記載のアラゲカワラタケ形質転換体。
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