しかしながら、従来のローパスフィルタを用いる手法では、ローパスフィルタ処理のために多くの処理時間が必要になるとともに、処理を行うための演算回路などの資源が必要であるという欠点があった。
また、特許文献1の例にあっては、ローパスフィルタ処理を削減することはできるものの、出力解像度の出力画像及び出力解像度よりも低解像度の出力画像を同時に出力することを意図している。したがって、予め指定された出力解像度に合わせて単一の画像出力を行う場合に、予め解像度変換を行うことが判明しているときでも、不要な周波数成分を持った圧縮画像データを生成する必要があり、圧縮画像データを記憶するため大容量の記憶領域を備える必要があった。
また、特許文献2の例にあっては、低周波成分と高周波成分とを分離して別々に取り扱い、その後分離した低周波成分と高周波成分とを合成して簡易画像データを作成する。このため、縮小処理が不要な同一解像度での印刷又はメモリカードへのデータ記憶時などにおいても合成処理を行う必要があり、処理量が増加する虞があった。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、伸張した画像を低解像度へ変換する指定又は該画像を縮小する指定を受け付け、受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、周波数係数を量子化するため異なる量子化係数を有する複数の量子化情報から1つの量子化情報を選択し、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できるとともに、圧縮率の向上と必要な記憶領域を削減することができる画像処理装置、該画像処理装置を備える画像形成装置、前記画像処理装置をコンピュータで実現するためのコンピュータプログラム、該コンピュータプログラムを記録した記録媒体及び画像処理方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、量子化データを逆量子化するため異なる逆量子化係数を有する複数の逆量子化情報から1つの逆量子化情報を選択し、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化して画像を伸張することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できる画像処理装置、該画像処理装置を備える画像形成装置、前記画像処理装置をコンピュータで実現するためのコンピュータプログラム、該コンピュータプログラムを記録した記録媒体及び画像処理方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて量子化情報を選択し、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できるとともに、圧縮率の向上と必要な記憶領域を削減することができる画像処理装置、該画像処理装置を備える画像形成装置、前記画像処理装置をコンピュータで実現するためのコンピュータプログラム、該コンピュータプログラムを記録した記録媒体及び画像処理方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、記憶された逆量子化情報のうち所定の逆量子化情報を選択し、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できる画像処理装置、該画像処理装置を備える画像形成装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、所定の量子化情報を選択し、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化することにより、保存された圧縮画像データを再度使用する場合に、所望の低解像度への変換又は画像の縮小に対応することができる画像処理装置、該画像処理装置を備える画像形成装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて逆量子化情報を選択し、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できる画像処理装置、該画像処理装置を備える画像形成装置、前記画像処理装置をコンピュータで実現するためのコンピュータプログラム、該コンピュータプログラムを記録した記録媒体及び画像処理方法を提供することにある。
本発明に係る画像処理装置は、画像の各画素に所定の周波数変換を行って画素値を周波数係数に変換し、変換された周波数係数を量子化し、量子化された量子化データを符号化して画像を圧縮し、圧縮された画像を伸張する画像処理装置において、周波数係数を量子化するため異なる量子化係数を有する複数の量子化情報を記憶する記憶手段と、伸張した画像を低解像度へ変換する指定又は該画像を縮小する指定を受け付ける受付手段と、該受付手段で受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、記憶された量子化情報を選択する第1選択手段とを備え、該第1選択手段で選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化するように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置は、量子化データを逆量子化するため異なる逆量子化係数を有する複数の逆量子化情報を記憶する記憶手段と、前記受付手段で受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、記憶された逆量子化情報を選択する第2選択手段とを備え、該第2選択手段で選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化して画像を伸張するように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置は、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付ける手段を備え、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、前記第1選択手段は、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて、記憶された量子化情報を選択するように構成してあり、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化するように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置は、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、前記第2選択手段は、記憶された逆量子化情報のうち所定の逆量子化情報を選択するように構成してあり、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化するように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置は、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付ける手段を備え、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、前記第1選択手段は、記憶された量子化情報のうち所定の量子化情報を選択するように構成してあり、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化するように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置は、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、前記第2選択手段は、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて、記憶された逆量子化情報を選択するように構成してあり、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化するように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る画像形成装置は、前述の本発明のいずれか1つに係る画像処理装置を備え、該画像処理装置で伸張された画像を形成することを特徴とする。
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、画像の各画素に所定の周波数変換を行って画素値を周波数係数に変換し、変換された周波数係数を量子化し、量子化された量子化データを符号化して画像を圧縮し、圧縮された画像を伸張させるためのコンピュータプログラムにおいて、コンピュータを、伸張した画像を低解像度へ変換する指定又は該画像を縮小する指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、周波数係数を量子化するため異なる量子化係数を有する複数の量子化情報から1つの量子化情報を選択する第1選択手段と、コンピュータを、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化する手段として機能させることを特徴とする。
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、前記指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、量子化データを逆量子化するための異なる逆量子化係数を有する逆量子化情報から1つの逆量子化情報を選択する第2選択手段と、コンピュータを、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化して画像を伸張する手段として機能させることを特徴とする。
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、画像を圧縮した圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて量子化情報を選択する手段と、コンピュータを、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化する手段として機能させることを特徴とする。
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、画像を圧縮した圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて逆量子化情報を選択する手段と、コンピュータを、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化する手段として機能させることを特徴とする。
本発明に係るコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体は、前述の本発明のいずれか1つに係るコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とする。
本発明に係る画像処理方法は、画像の各画素に所定の周波数変換を行って画素値を周波数係数に変換し、変換された周波数係数を量子化し、量子化された量子化データを符号化して画像を圧縮し、圧縮された画像を伸張する画像処理方法において、周波数係数を量子化するため異なる量子化係数を有する複数の量子化情報を記憶し、伸張した画像を低解像度へ変換する指定又は該画像を縮小する指定を受け付け、受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、記憶された量子化情報を選択し、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化することを特徴とする。
本発明に係る画像処理方法は、量子化データを逆量子化するため異なる逆量子化係数を有する複数の逆量子化情報を記憶し、受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、記憶された逆量子化情報を選択し、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化して画像を伸張することを特徴とする。
本発明に係る画像処理方法は、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて、記憶された量子化情報を選択し、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化することを特徴とする。
本発明に係る画像処理方法は、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて、記憶された逆量子化情報を選択し、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化することを特徴とする。
本発明にあっては、周波数係数を量子化するため異なる量子化係数を有する複数の量子化情報(例えば、量子化テーブル)を記憶する。量子化テーブルは、例えば、8行8列の配列であり、左上をDC成分の周波数係数に対する量子化係数、右下に向かって水平方向及び垂直方向共に高周波成分の周波数係数に対する量子化係数を有する。各周波数係数に対応する量子化係数が異なる複数の量子化テーブルを記憶する。伸張した画像を低解像度へ変換する指定又は該画像を縮小する指定を受け付けた場合、受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、記憶された量子化テーブルの中から1つの量子化テーブルを選択する。
例えば、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率が小さいほど、高周波成分に対応する量子化係数が大きい量子化テーブルを選択する。所定の周波数変換(例えば、離散コサイン変換)により画素値(画素の輝度信号、色差信号など)が周波数係数に変換される。変換された周波数係数を量子化係数で除算して量子化する場合、高周波成分に対応する量子化係数が大きい量子化テーブルを用いることにより、高周波成分の量子化インデックス(量子化された結果の整数部分)が小さくなり、画像中の高周波成分が減衰する。これにより、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率が小さいほど顕著に発生するモアレを抑制し画質を改善する。また、周波数係数よりも大きい値の量子化係数で量子化した場合、量子化インデックスは「0」となり、高周波成分に対応する量子化係数が大きい量子化テーブルを用いることにより、多くの高周波成分で量子化インデックスが「0」となり、符号量を少なくして圧縮率を向上させる。
また、本発明にあっては、量子化データ(例えば、量子化インデックス)を逆量子化するため異なる逆量子化係数を有する複数の逆量子化情報(例えば、逆量子化テーブル)を記憶する。逆量子化テーブルは、例えば、量子化テーブルと同様、8行8列の配列であり、左上をDC成分の周波数係数に対する逆量子化係数、右下に向かって水平方向及び垂直方向共に高周波成分の周波数係数に対する逆量子化係数を有する。各周波数係数に対応する逆量子化係数が異なる複数の逆量子化テーブルを記憶する。伸張した画像を低解像度へ変換する指定又は該画像を縮小する指定を受け付けた場合、受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、記憶された逆量子化テーブルの中から1つの逆量子化テーブルを選択する。
例えば、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率が小さいほど、高周波成分に対応する逆量子化係数が小さい逆量子化テーブルを選択する。量子化データに逆量子化係数を積算して逆量子化する場合、高周波成分に対応する逆量子化係数が小さい逆量子化テーブルを用いることにより、逆量子化後の復元された周波数係数は、高周波成分の周波数係数が小さくなり、所定の周波数変換の逆変換(例えば、逆離散コサイン変換)により画素値(画素の輝度信号、色差信号など)に変換した場合、画像中の高周波成分が減衰する。これにより、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率が小さいほど顕著に発生するモアレを抑制し画質を改善する。
また、本発明にあっては、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じた量子化テーブルを選択する。例えば、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率が小さいほど、高周波成分に対応する量子化係数が大きい量子化テーブルを選択する。これにより、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率が小さいほど顕著に発生するモアレを抑制し画質を改善する。また、圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存する必要がないことを確認することができ、後日利用者により指定され得る種々の解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に対応させるために圧縮率を控える必要がなく、圧縮率を向上させるとともに必要な記憶領域を削減する。
また、本発明にあっては、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、記憶された逆量子化テーブルのうち所定の逆量子化テーブルを選択する。例えば、指定された解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に拘わらず、記憶された逆量子化テーブルのうち、高周波成分に対応する逆量子化係数が最も大きい所定の逆量子化テーブルを選択する。これにより、指定された解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて高周波成分の復元量を変化させ、変倍後の画像におけるモアレの発生による画質低下を抑制する。
また、本発明にあっては、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、記憶された量子化テーブルのうち所定の量子化テーブルを選択する。例えば、指定された解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に拘わらず、記憶された量子化テーブルのうち、高周波成分に対応する量子化係数が最も小さい所定の量子化テーブルを選択する。これにより、保存された圧縮画像データが後日使用される場合、利用者により指定され得る種々の解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に対応させることができる。
また、本発明にあっては、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じた逆量子化テーブルを選択する。例えば、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率が小さいほど、高周波成分に対応する逆量子化係数が小さい逆量子化テーブルを選択する。これにより、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率が小さいほど顕著に発生するモアレを抑制し画質を改善する。
本発明にあっては、伸張した画像を低解像度へ変換する指定又は該画像を縮小する指定を受け付け、受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、周波数係数を量子化するため異なる量子化係数を有する複数の量子化情報から1つの量子化情報を選択し、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できるとともに、圧縮率の向上と必要な記憶領域を削減することができる。
また、本発明にあっては、受け付けた指定に対応する解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、量子化データを逆量子化するため異なる逆量子化係数を有する複数の逆量子化情報から1つの逆量子化情報を選択し、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化して画像を伸張することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できる。
また、本発明にあっては、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じた量子化情報を選択し、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できるとともに、圧縮率の向上と必要な記憶領域を削減することができる。
また、本発明にあっては、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合、記憶された逆量子化情報のうち所定の逆量子化情報を選択し、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できる。
また、本発明にあっては、画像を圧縮した圧縮画像データを保存するか否かの指定を受け付け、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、所定の量子化情報を選択し、選択された量子化情報を用いて周波数係数を量子化することにより、保存された圧縮画像データを再度使用する場合に、所望の低解像度への変換又は画像の縮小に対応することができる。
また、本発明にあっては、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じた逆量子化情報を選択し、選択された逆量子化情報を用いて量子化データを逆量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できる。
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る画像処理装置を備える画像形成装置100の構成を示すブロック図である。画像形成装置100(例えば、デジタル複合機)は、画像入力部1、画像処理部2(画像処理装置)、画像形成手段としての画像出力部4などを備える。画像入力部1で原稿を読み込むことにより得られたRGB(R:赤、G:緑、B:青)のアナログ信号の画像データは、画像処理部2へ出力され、画像処理部2で所定の処理が行われ、CMYeK(C:シアン、M:マゼンダ、Ye:イエロー、K:黒)のデジタルカラー信号として画像出力部4へ出力される。
画像入力部1は、例えば、CCD(Charged Coupled Device)を備え、原稿画像からの反射光像をRGBのアナログ信号として読み取り、読み取ったRGB信号を画像処理部2へ出力する。また、画像出力部4は、原稿画像の画像データを記録紙上に出力する電子写真方式又はインクジェット方式などのプリンタである。また、画像出力部4は、ディスプレイ等の表示装置であってもよい。
本発明のデジタル複合機は、一度使用した画像データを後述するデータ記憶部27に記憶しておき、次回以降は画像入力部1からの画像データの入力が無くとも、データ記憶部27に記憶された画像データを用いて画像形成用データを生成して画像出力部4へ出力することができる機能を有する。
データ記憶部27への画像データの記憶の形態として、画像の出力を複数部数行うために一時的に記憶する場合、及び後日の再利用を見越して永続的に記憶(保存する)場合の2通りある。ユーザは、画像データを保存(永続的に記憶)するか否かを明示的に指定することができる。ユーザは「ファイリング有効」を指定することにより、画像データをデータ記憶部27に記憶(保存)することができる。本発明のデジタル複合機では、ユーザが「ファイリング有効」を指定しない場合(すなわち、「ファイリング無効」)であっても、画像データを一時的にデータ記憶部27に記憶する。これにより、画像入力部1から複数回の画像データの入力が無い場合でも、データ記憶部27に記憶された画像データを用いて複数部数の画像出力を実現することができる。
画像処理部2は、A/D変換部21、シェーディング補正部22、入力階調補正部23、色空間変換部24、量子化係数算出部25、画像圧縮部26、データ記憶部27、逆量子化係数算出部28、画像伸張部29、変倍処理部30、色補正部31、領域分離処理部32、黒生成下色除去部33、空間フィルタ処理部34、中間調出力階調処理部35、操作部36、制御部37などを備える。
操作部36は、タッチパネル方式の操作パネルであり、ユーザの操作指定を受け付ける各種キー及びスイッチ、ユーザに対して報知する情報を表示する液晶ディスプレイなどを備えている。例えば、ユーザの操作指定としては、水平方向及び垂直方向に対して独立に指定された25%から400%の中での1%刻みでの変倍率指定、データ保存の要否(ファイリングの有効・無効)の指定、出力対象となる画像データの指定、出力部数指定などが含まれる。ユーザの操作指定は、上述以外にも各処理部の動作を指定するためのパラメータを含んでもよい。また、画像出力部4が表示装置である場合には、ユーザ操作指定には、解像度の変換なども含まれる。なお、操作部36に代えて、デジタル複合機が、例えば、パーソナルコンピュータ等の外部機器とネットワーク等を介して接続されている場合には、外部機器での操作により実現する構成であってもよい。
A/D変換部21は、画像入力部1から入力されたRGBの反射率信号(反射率データ)をデジタル信号に変換し、変換後のRGBの反射率信号をシェーディング補正部22へ出力する。
シェーディング補正部22は、A/D変換された反射率信号に対して、シェーディング補正処理を施す。シェーディング補正処理は、画像入力部1の照明系、結像系、及び撮像系の構成に起因して画像信号に生じる各種の歪みを取除くために行われる。シェーディング補正部22は、補正後の反射率信号を入力階調補正部23へ出力する。
入力階調補正部23は、シェーディング補正処理が施された反射率信号に、入力階調補正処理を施す。入力階調補正処理は、反射率信号を、濃度信号など画像処理部2が扱いやすい信号に変換する処理である。入力階調補正部23は、反射率信号に、カラーバランス処理をさらに施しても良い。入力階調補正部23は、処理後の反射率信号(RGB信号)を色空間変換部24へ出力する。
色空間変換部24は、後段の画像圧縮部26が圧縮処理を行いやすいようにRGBの信号をYCbCr(Y:輝度信号、Cb:b色差信号、Cr:r色差信号)の信号に変換する。
量子化係数算出部25は、複数の量子化テーブルを記憶している。量子化テーブルは後述するように、画像圧縮部26で画像データを圧縮する場合に、画像データに施される周波数変換、例えば、離散コサイン変換(Discrete Cosine Transform:DCT)により、YCbCr信号が変換された周波数係数を量子化するために用いられる。量子化係数算出部25は、操作部36から入力される水平方向及び垂直方向に対して独立に指定された変倍率、画像データの保存の要否(ファイリングの有効・無効)の指定に基づいて、複数の量子化テーブルの中から所要の1つの量子化テーブルを選択し、選択した量子化テーブルを画像圧縮部26へ出力する。
画像圧縮部26は、例えば、JPEG方式で画像データを圧縮する処理を行う。画像圧縮部26は、色空間変換部24から入力されたYCbCr信号(画像データの画素値)に対して、例えば、8×8画素から構成されるブロック毎に、周波数変換である離散コサイン変換(Discrete Cosine Transform:DCT)を施し、画素値をそれぞれの基底関数の周波数成分毎の係数である周波数係数に変換する。
画像圧縮部26は、量子化係数算出部25から入力された量子化テーブルを用いて、変換した周波数係数に対して量子化処理を行う。より具体的には、画像圧縮部26は、8×8の配列で構成される周波数係数の各係数を、8×8の配列で構成される量子化テーブルの各量子化係数で除算することにより、変換した周波数係数を近似する。
画像圧縮部26は、量子化された量子化データ(量子化された結果の整数部分である量子化インデックス)に対して所定の符号化処理(例えば、ランレングス符号化、ハフマン符号化、エントロピー符号化、及び複数の符号化手法を用いた複合的な符号化など)を行うことにより画像データを圧縮し、圧縮画像データをデータ記憶部27に記憶する。
データ記憶部27は、半導体メモリ又はハードディスクドライブ(HDD)などにより構成され、画像圧縮部26で圧縮された圧縮画像データ、及び操作部36から入力されたユーザの指定に関する情報を記憶する。
また、データ記憶部27は、ユーザからの出力対象となる画像データの指定、出力部数の指定に基づいて、出力部数が「1」であれば1回、複数部数であればそれに応じた複数回、後段の処理部に対象の圧縮画像データ及びユーザ指定を出力する。また、ユーザの指定のうち、データ保存の要否(ファイリングの有効・無効)の指定に応じてデータ記憶部27に記憶された圧縮画像データとユーザ指定の保存期間の扱いが異なる。例えば、ファイリングが無効に設定されている場合は、指定の出力部数分、後段の処理部に出力対象となる圧縮画像データ及びユーザ指定を出力した段階で、記憶された圧縮画像データ及びユーザ指定は消去される。また、ファイリングが有効に設定されている場合には、出力対象の圧縮画像データ及びユーザ指定は、別途ユーザから明示的な消去指定が行われない限り、データ記憶部27に保持されたままの永続的データとして扱われる。データ記憶部27内の永続的データは、操作部36からのユーザ指定によって画像入力部1からの画像データの再入力無しで、後段の処理部に出力対象の圧縮画像データ及びユーザ指定を出力することができる。
逆量子化係数算出部28は、後述するように、画像伸張部29で圧縮画像データを伸張する場合に、符号化されたデータを復号化して得られた量子化データを逆量子化するための複数の逆量子化テーブルを記憶している。逆量子化係数算出部28は、データ記憶部27から出力されるユーザ指定中に含まれるファイリング有効・無効と、水平方向及び垂直方向に対して独立に指定された変倍率に基づいて、画像伸張時に用いる逆量子化テーブル(例えば、輝度信号に適用するための逆量子化テーブル、r色差信号及びb色差信号に適用するための逆量子化テーブル)を画像伸張部29へ出力する。
画像伸張部29は、データ記憶部27から出力されたデータを復号化し、復号化して得られた8×8の配列で構成される量子化データを、8×8の配列で構成される逆量子化テーブルの各逆量子化係数で乗算することにより、周波数係数に変換する。
画像伸張部29は、変換された周波数係数に対して、8×8画素から構成されるブロック毎に、周波数変換の逆変換である逆離散コサイン変換(Inverse Discrete Cosine Transform:IDCT)を施し、YCbCrの信号で構成される画像データを伸張する。
変倍処理部30は、画像伸張部29が伸張したYCbCrの信号に対して主走査方向及び副走査方向の変倍を行い、画像解像度及び画像サイズの変更を行う。
色補正部31は、YCbCrの信号をCMYe(C:シアン・M:マゼンタ・Ye:イエロー)の濃度信号に変換し、かつ画像出力部4における色再現の忠実化実現のために、CMYeの濃度信号に色補正処理を施す。色補正処理は、具体的には、不要吸収成分をそれぞれ含むCMYeのトナーやインクの分光特性に基づいた色濁りを、CMYeの濃度信号から取除く処理である。色補正部31は、変換したCMYeの濃度信号を領域分離処理部32及び黒生成下色除去部33へ出力する。
領域分離処理部32は、色補正部31から入力されたCMYeの濃度信号に基づき、領域分離処理を行う。領域分離処理部32は、分離結果を黒生成下色除去部33、空間フィルタ処理部34、中間調出力階調処理部35へ出力する。
黒生成下色除去部33は、色補正部31から入力された濃度信号を構成するCMYeの色信号に基づいて、黒(K)の色信号を生成する黒生成処理を行う。また、黒生成下色除去部33は、CMYeの色信号に対して下色除去処理を施す。下色除去処理は、CMYeの色信号から黒生成処理で生成された黒の色信号を差し引いて新たなCMYeの色信号を得る処理である。これらの処理の結果、CMYeの濃度信号は、CMYeKの色信号からなる画像データに変換される。
空間フィルタ処理部34は、黒生成下色除去部33で得られたCMYeKの画像データに対して、デジタルフィルタを用いた空間フィルタ処理を施す。これによって画像の空間周波数特性が補正されるので、画像出力部4が出力する画像にぼやけ、または粒状性劣化を生じることを防止することができる。
中間調出力階調処理部35は、CMYeKの画像データに対して、階調補正処理および中間調生成処理を施す。中間調生成処理は、画像を複数の画素に分割して階調を再現できるようにする処理であり、2値や多値のディザ法・誤差拡散法等を用いることができる。また、中間調出力階調処理部35は、画像データの濃度値を、画像出力部4の特性値である網点面積率に変換する処理を行っても良い。中間調出力階調処理部35は、処理されたCMYeKの画像データを画像出力部4へ出力する。
制御部37は、CPUで構成され、画像処理部2の各処理を制御する。
次に、量子化係数算出部25について、より具体的に説明する。量子化係数算出部25は、画像圧縮時に用いる量子化テーブルを画像圧縮部26へ出力する。例えば、JPEG方式の圧縮処理では、8行8列の計64個の量子化係数で構成される量子化テーブルが必要であり、輝度信号用に1個、r色差信号及びb色差信号に共通で用いられる1個の計2個の量子化テーブルを画像圧縮部26へ出力する。
量子化係数算出部25は、例えば、輝度信号用に1個、r色差信号及びb色差信号に共通で用いられる1個の計2個の量子化テーブルを1セットとして計9セット保持し、データ保存の要否(ファイリングの有効・無効)の指定、ユーザから指定された水平方向の変倍率及び垂直方向の変倍率に従って、いずれのセットを画像圧縮部26に出力するのが適正かを選択し、選択した量子化テーブルを画像圧縮部26へ出力する。
図2は輝度信号用の量子化テーブルの一例を示す説明図であり、図3はr色差信号及びb色差信号用の量子化テーブルの一例を示す説明図である。量子化テーブル夫々は、8行8列の配列であり、左上にDC成分の周波数係数に対する量子化係数、左上から右にいくにつれて、水平方向に周波数が高い基底関数に対応する周波数係数に対する量子化係数、左上から下にいくにつれて、垂直方向に周波数が高い基底関数に対応する周波数係数に対する量子化係数、右下に水平方向、垂直方向共に周波数が高い基底関数に対応する周波数係数に対する量子化係数を有する。
図に示すように、量子化テーブル夫々は、例えば、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率指定が25%以上34%未満の場合、34%以上50%未満、50%以上の3状態に対応して、水平方向3状態、垂直方向3状態の組み合わせである計9状態のそれぞれに異なる量子化係数を有する。また、これらの量子化テーブルは、変倍率が小さくなるにつれて高周波に相当する量子化係数が大きくなるように設定されている。なお、変倍率に限定されるものではなく、解像度の変換率であってもよい。
量子化係数算出部25は、操作部36から取得したユーザの指定が、データ保存が不要(ファイリングが無効に設定されている)である場合、操作部36から取得したユーザ指定の水平方向及び垂直方向に対する変倍率に基づいて、9つの量子化テーブルのうちの1つを選択して画像圧縮部26へ出力する。
また、量子化係数算出部25は、操作部36から取得したユーザの指定が、データ保存が要(ファイリングが有効に設定されている)である場合、ユーザから指定された水平方向の変倍率及び垂直方向の変倍率とは無関係に所定の量子化テーブルを選択する。この所定の量子化テーブルは、ファイリングが無効に設定されている場合に、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率が50%以上の場合に選択される量子化テーブルと同一のものである。なお、図2及び図3は圧縮時のYCbCr信号のサンプリング比が均等の場合の例である。
次に、逆量子化係数算出部28について、より具体的に説明する。逆量子化係数算出部28は、画像伸張時に用いる逆量子化テーブルを画像伸張部29へ出力する。例えば、JPEG方式の伸張処理では、8行8列の計64個の逆量子化係数で構成される逆量子化テーブルが必要であり、輝度信号用に1個、r色差信号及びb色差信号に共通で用いられる1個の計2個の逆量子化テーブルを画像伸張部29へ出力する。
逆量子化係数算出部28は、例えば、輝度信号用に1個、r色差信号及びb色差信号に共通で用いられる1個の計2個の逆量子化テーブルを1セットとして計9セット保持し、データ保存の要否(ファイリングの有効・無効)の指定、ユーザから指定された水平方向の変倍率及び垂直方向の変倍率に従って、いずれのセットを画像伸張部29へ出力するのが適正かを選択し、選択した逆量子化テーブルを画像伸張部29へ出力する。
図4は輝度信号用の逆量子化テーブルの一例を示す説明図であり、図5はr色差信号及びb色差信号用の逆量子化テーブルの一例を示す説明図である。逆量子化テーブル夫々は、8行8列の配列であり、左上にDC成分の周波数係数に対する逆量子化係数、左上から右にいくにつれて、水平方向に周波数が高い基底関数に対応する周波数係数に対する逆量子化係数、左上から下にいくにつれて、垂直方向に周波数が高い基底関数に対応する周波数係数に対する逆量子化係数、右下に水平方向、垂直方向共に周波数が高い基底関数に対応する周波数係数に対する逆量子化係数を有する。
図に示すように、逆量子化テーブル夫々は、例えば、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率指定が25%以上34%未満の場合、34%以上50%未満、50%以上の3状態に対応して、水平方向3状態、垂直方向3状態の組み合わせである計9状態のそれぞれに異なる逆量子化係数を有する。また、これらの逆量子化テーブルは、変倍率が小さくなるにつれて高周波に相当する逆量子化係数が小さくなるように設定されている。なお、変倍率に限定されるものではなく、解像度の変換率であってもよい。
逆量子化係数算出部28は、操作部36から取得したユーザの指定が、データ保存が要(ファイリングが有効に設定されている)である場合、操作部36から取得したユーザ指定の水平方向及び垂直方向に対する変倍率に基づいて、9つの逆量子化テーブルのうちの1つを選択して画像伸張部29へ出力する。
また、逆量子化係数算出部28は、操作部36から取得したユーザの指定が、データ保存が不要(ファイリングが無効に設定されている)である場合、ユーザから指定された水平方向の変倍率及び垂直方向の変倍率とは無関係に所定の逆量子化テーブルを選択する。この所定の逆量子化テーブルは、ファイリングが有効に設定されている場合に、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率が50%以上の場合に選択される逆量子化テーブルと同一のものである。なお、図4及び図5は圧縮時のYCbCr信号のサンプリング比が均等の場合の例である。
図2及び図4に示すように、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率が50%以上の場合に選択される輝度信号用の量子化テーブルの量子化係数は、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率が50%以上の場合に選択される輝度信号用の逆量子化テーブルの逆量子化係数と同一のものである。また、図3及び図5に示すように、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率が50%以上の場合に選択されるr色差信号及びb色差信号用の量子化テーブルの量子化係数は、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率が50%以上の場合に選択されるr色差信号及びb色差信号用の逆量子化テーブルの逆量子化係数と同一のものである。
次に画像の圧縮処理及び伸張処理について説明する。まず、データ保存の指定がない場合、すなわち、ファイリングが無効の場合について説明する。画像処理部2は、画像圧縮の際に用いる量子化テーブルを、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率に応じて、量子化係数算出部25が保持する9セットの中から選択して使用する。これらの量子化テーブルは、図2及び図3に示すように、変倍率が小さくなるに応じて高周波に相当する量子化係数が大きくなるように設定されている。このため、DCT後の周波数係数を量子化すると、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率が小さい場合には、高周波部分の量子化データはDC成分側の量子化データに比べて小さい値となる。
画像伸張に用いる逆量子化テーブルは、データ保存の指定がない場合、すなわち、ファイリングが無効の場合には、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率によらず所定(一定)の逆量子化テーブルが用いられるため、逆量子化によって復元される周波数係数は、変倍率が小さいほど、変倍率が大きい場合に比べてDCTの基底関数の高周波に相当する部分の値が小さくなる。結果として、変倍率が小さい場合には画像伸張後の画像中の高周波成分が減衰することになる。
画像伸張の後に行われる変倍処理において、ユーザに指定された水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率に応じて変倍が実施される。この際、伸張後の画像データに縮小処理後の解像度で表現できない高周波成分が含まれていた場合には、縮小処理にて折り返し歪みが原因によるエリアシングモアレ(モアレ)が発生するが、画像圧縮の際に用いる量子化テーブルを水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率に応じて選択することにより、伸張後の画像データ中に含まれる縮小処理後の解像度で表現できない高周波成分は減衰しており、折り返し歪みが原因によるエリアシングモアレ(モアレ)の発生が抑制され、結果として画質の改善が可能となる。この高周波成分の減衰には、従来はローパスフィルタ処理を行う必要があった。本実施の形態ではローパスフィルタ処理を行わずに高周波成分の減衰を実現でき、比較的低リソースでの画質改善が可能となる。
次に、データ保存の指定がある場合、すなわち、ファイリングが有効の場合における画像の圧縮処理及び伸張処理について説明する。画像処理部2は、画像圧縮の際に用いる量子化テーブルとして、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率によらず、所定(一定)の量子化テーブルを選択して画像圧縮を行う。その後、画像伸張を行う際に用いる逆量子化テーブルは、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率に応じて、逆量子化係数算出部28が保持する9セットの中から1つを選択して使用する。逆量子化テーブルは、図4及び図5に示すように、変倍率が小さい場合には、変倍率が大きい場合に比べて、基底関数の周波数が高いほど対応する逆量子化係数が小さくなるように設定されている。このため、逆量子化後の復元された周波数係数は、変倍率が小さい場合ほど高周波部分の周波数係数が小さい値となる。変倍率が小さい場合には、画像圧縮時の量子化テーブルの量子化係数より逆量子化テーブルの逆量子化係数が、高周波部分において小さく設定されているため、変倍率が小さい場合には画像伸張後の画像中の高周波成分が減衰することになる。
画像伸張の後に行われる変倍処理において、ユーザに指定された水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率に応じて変倍が実施される。この際、伸張後の画像データに縮小処理後の解像度で表現できない高周波成分が含まれていた場合には、縮小処理にて折り返し歪みが原因によるエリアシングモアレ(モアレ)が発生するが、画像伸張の際に用いる逆量子化テーブルを水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率に応じて変えることで、伸張後の画像データ中に含まれる縮小処理後の解像度で表現できない高周波成分は減衰しており、折り返し歪みが原因によるエリアシングモアレ(モアレ)の発生が抑制され、画質の改善が可能となる。この高周波成分の減衰には、従来はローパスフィルタ処理を行う必要があった。本実施の形態ではローパスフィルタ処理を行わずに高周波成分の減衰を実現でき、比較的低リソースでの画質改善が可能となる。
データ保存の指定がない場合、すなわち、ファイリングが無効の場合、画像入力段階のユーザ指定に基づいた画像出力のみが可能であればよいため、必要とするデータ記憶領域の容量は小さければ小さいほどよい。この場合、ユーザに指定された水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率に応じて、変倍率が小さいほど、大きな量子化係数を用いることで、前述の高周波成分の除去と共に、小さな量子化係数を用いた場合に比べ、比較的大きな圧縮率を達成できる。これにより、変倍率が小さい場合には必要となるデータ記憶領域の容量は少なくなるという利点がある。
一方、データ保存の指定がある場合、すなわち、ファイリングが有効の場合、データ記憶領域が保持すべき画像データは、画像入力段階のユーザ指定中の変倍率のみならず、データが保存された後に、後日指定され得るあらゆる変倍率に対応できなければならない。このため、画像圧縮時には最も小さい量子化係数で構成される量子化テーブルで圧縮を行うことにより、保存された圧縮画像データを再度使用する場合に、所望の画像の縮小に対応することができる。
図6及び図7は画像処理部2の圧縮処理及び伸張処理の手順を示すフローチャートである。画像処理部2は、ユーザからの操作の有無を判定し(S11)、操作がない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続け、ユーザからの操作があるまで待機する。
ユーザからの操作があった場合(S11でYES)、画像処理部2は、低解像度への変換又は画像の縮小の指定を受け付け(S12)、出力画像の出力部数、入力される画像データのデータ保存の要否の指定を受け付ける(S13)。
画像処理部2は、ファイリング出力の指定の有無を判定し(S14)、ファイリング出力の指定がない場合(S14でNO)、保存されたデータではなく画像入力部1から入力される画像データに基づいて処理するとして、画像入力処理(例えば、シェーディング補正、入力階調補正など)を行い(S15)、入力された画像データに対するデータ保存の指定の有無を判定する(S16)。
データ保存の指定がある場合(S16でYES)、画像処理部2は、所定の量子化テーブルを選択し(S17)、入力された画像データに対して離散コサイン変換を行う(S19)。データ保存の指定がない場合(S16でNO)、画像処理部2は、低解像度への変換倍率又は画像の縮小倍率(変倍率)に応じた量子化テーブルを選択し(S18)、ステップS19の処理を行う。
画像処理部2は、離散コサイン変換により変換された周波数係数を量子化し(S20)、量子化された量子化データを符号化し(S21)、圧縮された圧縮画像データを記憶する(S22)。
画像処理部2は、記憶した圧縮画像データを読み出し(S23)、データ保存の指定の有無を判定する(S24)。データ保存の指定がある場合(S24でYES)、画像処理部2は、低解像度への変換倍率又は画像の縮小倍率(変倍率)に応じた逆量子化テーブルを選択し(S25)、圧縮画像データを復号化する(S27)。データ保存の指定がない場合(S24でNO)、画像処理部2は、所定の逆量子化テーブルを選択し(S26)、ステップS27の処理を行う。
画像処理部2は、復号化されたデータを逆量子化し(S28)、逆量子化により変換された周波数係数に対して逆離散コサイン変換を行い(S29)、伸張された画像データに基づいて画像出力処理(例えば、変倍処理、色補正処理など)を行う(S30)。一方、ステップS14で、ファイリング出力の指定がある場合(S14でYES)、保存されたデータに基づいて処理するとして、画像処理部2は、ステップS23以降の処理を続ける。
画像処理部2は、指定部数の画像出力を行ったか否かを判定し(S31)、指定部数の画像出力を行っていない場合(S31でNO)、ステップS23以降の処理を続ける。指定部数の画像出力を行った場合(S31でYES)、画像処理部2は、データ保存の指定の有無を判定する(S32)。データ保存の指定がない場合(S32でNO)、画像処理部2は、圧縮画像データを消去し(S33)、処理を終了する。データ保存の指定がある場合(S32でYES)、画像処理部2は、記憶された圧縮画像データをそのまま保存して処理を終了する。
以上説明したように、本発明にあっては、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、変倍率に対応して量子化係数が異なる量子化テーブルのうちの1つを選択して周波数係数を量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できるとともに、圧縮率の向上と必要な記憶領域を削減することができる。また、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に基づいて、変倍率に対応して逆量子化係数が異なる逆量子化テーブルのうちの1つを選択して逆量子化することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できる。
また、本発明にあっては、圧縮画像データを保存しない指定を受け付けた場合(ファイリングが無効の場合)、圧縮時には、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて量子化テーブルを選択して圧縮し、伸張時には、所定(一定の)の逆量子化テーブルを選択して伸張することにより、モアレの発生による画質低下を抑制できるとともに、圧縮率の向上と必要な記憶領域を削減することができる。また、圧縮画像データを保存する指定を受け付けた場合(ファイリングが有効の場合)、圧縮時には、所定(一定)の量子化テーブルを選択して圧縮し、伸張時には、解像度の変換倍率又は画像の縮小倍率に応じて逆量子化テーブルを選択して伸張することにより、保存された圧縮画像データを再度使用する場合に、所望の低解像度への変換又は画像の縮小に対応することができるとともに、モアレの発生による画質低下を抑制できる。
上述の実施の形態では、ファイリングが無効の場合には、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率指定によらず一定の逆量子化テーブルを選択し、ファイリングが有効の場合には水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率指定によらず一定の量子化テーブルを選択する構成であるが、これに限定されるものではなく、ファイリングが無効の場合にも、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率指定に応じて逆量子化テーブルを選択することもでき、また、ファイリングが有効の場合にも、水平方向、垂直方向のそれぞれの変倍率指定に応じて量子化テーブルを選択することもできる。これによっても、高周波成分を除去するという目的を果たすことが可能な逆量子化テーブルのセット、あるいは量子化テーブルのセットを選択し得る。
上述の実施の形態では、画像圧縮及び画像伸張の方式として、JPEG方式を例示しているが、画素値から基底関数の周波数成分毎の周波数係数に変換し、周波数係数を量子化することにより、データ量の圧縮を行う非可逆方式の場合、他の画像圧縮及び画像伸張方式にも適用可能である。例えば、本発明は、JPEG2000方式にも適用できる。画像圧縮の際のDWT後の周波数係数は、コードブロック毎の量子化ステップによって明示的な量子化可能であるが、この量子化ステップを、ファイリングの有効・無効、水平方向及び垂直方向のそれぞれの変倍率指定に応じて、量子化係数算出部で選択するとともに、画像伸張の際の逆量子化において使用する逆量子化ステップを、ファイリングの有効・無効、水平方向及び垂直方向のそれぞれの変倍率指定に応じて、逆量子化係数算出部で選択することができる。また、JPEG2000方式におけるポスト量子化に対して適用することも可能である。この場合は、画像圧縮の際に「0」見なしを行うべきビットプレーンの情報を、ファイリングの有効・無効、水平方向及び垂直方向のそれぞれの変倍率指定に応じて、量子化係数算出部で選択し、画像伸張の際に「0」見なしを行うべきビットプレーンの情報を、ファイリングの有効・無効、水平方向及び垂直方向のそれぞれの変倍率指定に応じて、逆量子化係数算出部で選択することができる。
上述の実施の形態において、量子化テーブルの量子化係数、逆量子化テーブルの逆量子化係数、変倍率の区分などは一例であって、これに限定されるものではない。また、保持する量子化テーブル及び逆量子化テーブル夫々の数は、9に限定されるものではない。
本発明は、RGBからYCrCbに変換された信号への適用に限定されるものではなく、RGBからYIQに変換された信号に対しても適用することができる。
上述の実施の形態において、画像入力部1としては、例えば、フラットベッドスキャナ、フィルムスキャナ、デジタルカメラ、携帯電話機などが用いられる。また、画像出力部4としては、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイなどの画像表示装置、処理結果を記録紙などに出力する電子写真方式又はインクジェット方式のプリンタなどが用いられる。さらに画像形成装置100としては、ネットワークを介してサーバ装置などに接続するための通信手段としてのモデムなどを備えることもできる。また、画像入力部1から画像データを取得する代わりに、ネットワークを介して外部記憶装置、サーバ装置などから画像データを取得する構成であってもよい。
本発明はコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータでの読み取り可能な記録媒体に、画像を圧縮、伸張する際に適切な量子化テーブル及び逆量子化テーブルを選択する処理を行うコンピュータプログラムを記録することもできる。この結果、上記画像処理を行うコンピュータプログラムを記録した記録媒体を持ち運び自在に提供することができる。記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理が行われるために図示しないメモリ、例えばROMのようなプログラムメディアであってもよく、図示しない外部記憶装置としてのプログラム読取装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムメディアであってもよい。いずれの場合においても、格納されているコンピュータプログラムはマイクロプロセッサがアクセスして実行させる構成であってもよいし、コンピュータプログラムを読み出し、読み出されたコンピュータプログラムは、マイクロコンピュータの図示されていないプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのコンピュータプログラムが実行される方式であってもよい。この場合、ダウンロード用のコンピュータプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。ここで、上記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク並びにCD−ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にコンピュータプログラムを担持する媒体であってもよい。また、この場合、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であることから、通信ネットワークからコンピュータプログラムをダウンロードするように流動的にコンピュータプログラムを担持する媒体であってもよい。なお、このように通信ネットワークからコンピュータプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のコンピュータプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別の記録媒体からインストールされるものであってもよい。