JP2007300022A - テラヘルツ波増幅装置、テラヘルツ波変調装置ならびにこれを用いた通信装置およびセンシング装置 - Google Patents

テラヘルツ波増幅装置、テラヘルツ波変調装置ならびにこれを用いた通信装置およびセンシング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】長期にわたって安定なテラヘルツ波を所望の周期で発生することのできるテラヘルツ波変調装置を実現する。
【解決手段】多重量子井戸構造(MQW)で構成されるテラヘルツ波発生素子(1)に対し、量子数の異なるサブバンドの励起子(E2HH1,E2HH2)を同時に励起する超短光パルスを光照射回路(2)により照射する。この超短パルス照射と同期して電圧パルス印加回路(10)から、量子井戸の励起子振動のエネルギ差ΔEが、コヒーレント縦光学フォノンの振動エネルギ(ELO)と等しくなるように、サブバンドの正孔エネルギ準位(HH1,HH2)を調整する。この電圧パルス印加回路10からのパルス列により、テラヘルツ波発生素子(1)のテラヘルツ波発生周期を変調する。
【選択図】図14

Description

この発明は、テラヘルツ波変調装置に関し、特に、半導体多重量子井戸構造の励起子エネルギを利用してテラヘルツ電磁波を伝送信号に応じて生成するテラヘルツ波変調装置に関する。
テラヘルツ波は、周波数がテラヘルツ(10の12乗ヘルツ)であり、ミリ波と赤外線の中間の周波数帯に位置する電磁波である。この周波数領域は、電子回路などによる発振器にとっては超高周波領域であり、一方、半導体レーザなどのレーザ光源にとっては、超低周波領域となる。近年のレーザ技術の発展に伴い、100フェムト秒(10-15秒)以下のパルス幅を有する超短パルスレーザを容易に利用することが可能となり、このテラヘルツ領域の技術開発が急速に進展している。
テラヘルツ帯の電磁波は、従来の非破壊透視検査において用いられるX線およびγ線に比べて、物質、生体および環境に対して安全なプローブである。例えば、水および有機分子などの固有周波数がテラヘルツ領域にあり、このようなテラヘルツ領域の固有振動周波数を有する物質の構造解析などへの応用、または高速の情報通信などに対する応用が種々検討されている。このテラヘルツ波を発生する装置としては、微小共振器内の量子井戸中にポラリトンを発生させ、このポラリトンを構成する励起子の位置をずらせて、等価的に微小アンテナが励振された状態を形成して電磁波を放射する構成が提案されている(特許第2728200号公報)。
また、本願発明者は、先に、多重量子井戸構造を用いて量子数の異なるサブバンドの励起子を利用して、縦光学フォノン(LOフォノン)の振動を増強させることを示している(非特許文献1:Physical Review B70,233306、2004)。
この非特許文献1においては、量子井戸に印加される電場を用いて異なるサブバンド間励起子遷移のエネルギ差をLOフォノンの振動エネルギに同調させることにより、励起子振動エネルギ差をLOフォノン振動エネルギに共鳴させて、LOフォノンの振動を増強している。
また、外部印加電界により共鳴的にコヒーレントLOフォノンモードが励起されることが、「固体物理」、Vol. 41, No. 4 (2006年4月号、 pp. 257-267(非特許文献2))に開示されている。この非特許文献2においては、「電界によるコヒーレントLOフォノンの増強」という現象が観察されることが記載されている。
特許第2728200号公報 O. Kojima at al., Enhancement of coherent longitudinal optical phonon oscillations in a GaAs/AlAs multiple quantum well due to intersub-band energy tuning under an electric field., Physical Review B70, 233306, 2004 「固体物理」、Vol. 41, No. 4 (2006年4月号)、 pp. 257-267 D.A.B. Miller et. al. Phys. Rev. B 32,1043 (1985)
情報通信などにおいては、大量の情報を伝送するために光通信が行われている。この光通信においては、伝送情報に応じて光スイッチをオン/オフさせてデジタル情報を伝送する。しかしながら、この光通信においては伝送路として光ファイバが必要となり、また、光/電気変換装置および電気/光変換装置が必要となる。
ワイアレス通信においては、ギガヘルツ帯の高周波を利用して高速で大量の情報を伝送することが行われている。しかしながら、テラヘルツ帯の信号を搬送波として利用することは未だ行われていない。
上述の特許文献1においては、ポラリトンを用いて電磁波を発生しているものの、その構成は単一量子井戸構造であり、単発的なテラヘルツ波が発生されているだけであり、長期にわたって安定に振動するテラヘルツ波は生成されていない。また、ポラリトンの振動により電磁波を生成しており、発生電磁波強度も微弱である。また、その用途としても、従来のX線による検査の置換えなどの適用を示唆しているだけであり、具体的に発生したテラヘルツ電磁波をどのように加工・操作するかについては何ら示していない。
また、上述の非特許文献1においては、LOフォノンの共鳴的な振動により比較的長期にわたって安定なテラヘルツ波を発生することができる。しかしながら、この非特許文献1においては、安定なLOフォノン振動を利用してテラヘルツ波を発生する原理的構成が示されているだけであり、さまざまなナノ構造半導体に適用可能であることが記載されているものの、どのような用途に具体的に適用するかについては示されていない。
また、非特許文献2においても、「外部電界によりコヒーレントLOフォノンが共鳴的に励起される」ことが記載されているだけであり、共鳴励起されたLOフォノンからの電磁場をどのように加工・操作するかについては、具体的には述べていない。
それゆえ、この発明の目的は、テラヘルツ波を安定に発生することのできるテラヘルツ波増幅装置を提供することである。
この発明の他の目的は、テラヘルツ波を変調することのできるテラヘルツ波変調装置を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、このテラヘルツ波変調装置の変調機能を利用する通信装置またはセンシング装置を提供することである。
この発明に係るテラヘルツ波増幅装置は、多重量子井戸構造を含む半導体からなるテラヘルツ発生素子と、この多重量子井戸構造の量子井戸に形成されるエネルギの異なる2種類の励起子間に量子干渉ビートを生じさせるエネルギを有するパルス光をテラヘルツ波発生素子に照射する光照射回路と、多重量子井戸構造を含む半導体の縦光学フォノンの周波数に、異なる2種類の励起子間の量子干渉ビートの周波数を一致させてコヒーレント縦光学フォノン振動によるテラヘルツ波を増幅するように、該多重量子井戸内に形成される2種類の励起子間のエネルギ差を量子閉込めシュタルク効果を利用して調節するためのバイアス電圧を供給するバイアス電圧供給回路とを含む。
この発明に係るテラヘルツ波変調装置は、多重量子井戸構造を含む半導体からなるテラヘルツ発生素子と、この多重量子井戸構造の量子井戸に形成されるエネルギの異なる2種類の励起子間に量子干渉ビートを生じさせるエネルギを有するパルス光をテラヘルツ波発生素子に照射する光照射回路と、バイアス電圧を供給することによりこれらの2種類の励起子間の量子干渉ビートの周波数を変化させるバイアス電圧供給回路とを含む。
このバイアス電圧供給回路は、バイアス電圧のパルス波形を変動させることにより、量子シュタルク効果を利用して多重量子井戸構造の種々の励起子エネルギを制御し、該半導体の縦光学フォノンの周波数と量子干渉ビートの周波数との一致と不一致を変動させ、それにより、コヒーレント縦光学フォノン振動によるテラヘルツ波の増幅率を変動させて発振強度を変調する。
この発明に係る通信装置は、テラヘルツ波変調装置の変調機能を利用する。
この発明に係るセンシング装置は、このテラヘルツ波変調装置の変調機能を利用する。
光照射回路からの光パルスにより、異なるエネルギの2種類の励起子が同時に励起される。この励起子遷移のエネルギ差が、縦光学(LO)フォノンエネルギと同調しかつ効率的にテラヘルツ電磁波を発生させる様に、量子井戸層サブバンドエネルギおよび励起子を構成するキャリアの包絡波動関数を、上述の非特許文献2に示されるような量子閉込めシュタルク効果を用いてバイアス電圧により調整して、励起子間のエネルギ差を調節する。これにより、2種類の励起子間の量子干渉ビートの周波数が、量子井戸構造を有する半導体のLOフォノンの周波数と一致し、この結果、コヒーレントLOフォノン振動によるテラヘルツ波が増幅され、安定にテラヘルツ波を発生することができる。
また、このバイアス電圧をパルス化して、そのパルス波形を変動させることにより周波数変調を加える。これにより、量子井戸構造の半導体のLOフォノンの周波数と量子干渉ビートの周波数の一致/不一致が変動して、テラヘルツ波の増幅率が変化する。これにより、パルス信号で変調されたテラヘルツ波を安定に発生することができる。
また、通信情報に応じてテラヘルツ波を変調することにより、テラヘルツ帯域での通信が可能となり、大量の情報を高速で通信することが可能となる。
センシング装置においては、変調機能により強度分布を生じさせてデータサンプリングの制御(センシング位置の選択的設定)を高精度に行なうことができ、テラヘルツ領域の固有振動周波数を有する微小物質の分光分析および診断を高精度で行なうことができる。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従うテラヘルツ波変調装置の基本的構成を概略的に示す図である。図1において、テラヘルツ波変調装置は、pin構造を有し、照射光に応じてテラヘルツ電磁波(THz波)を生成するテラヘルツ波発生素子1と、このテラヘルツ波発生素子1に超短パルスの励起光ILを照射する光照射回路2と、光照射回路2からの励起光ILの照射と同期して、所定電圧レベルのパルス電圧をテラヘルツ波発生素子1に印加するバイアス電圧印加回路4を含む。
光照射回路2は、たとえばモード同期チタン(Ti):サファイアレーザで構成され、フェムト秒オーダのパルス幅を有するパルスを発生する。この光照射回路2からの励起光ILは、中心波長がたとえば1.571eVのエネルギに対応し、後に詳細に説明するテラヘルツ波発生素子1において励起子およびコヒーレント縦光学(LO)フォノンを励起する。
バイアス電圧印加回路4は、光照射回路2からの励起光ILにより励起された2種類の異なる励起子遷移のエネルギ差によって生じる励起子量子干渉(量子ビート)のエネルギが、コヒーレントLOフォノン振動周波数領域に対応するようにバイアスをかける。コヒーレントGaAsLOフォノンが、電気的双極子として作用して、その振動によりテラヘルツ電磁波を生成する。
テラヘルツ波発生素子1は、基板がn型半導体の場合には、p層10と、n層12と、これらの間のi層領域14を含む。i層領域14に、多重量子井戸構造(MQW:Multiple Quantum Well)が形成される。p層10上には、窓部19が設けられた上部電極16が形成され、この窓部19を介して光照射回路2からの励起光ILが照射される。基板がp型半導体の場合には、このp層およびn層の位置は上記の構造と逆の配置となる。励起光ILからは、また、反射光RLが生成される。光照射回路2からの励起光ILは、窓部19に照射される。反射光RLは、図しない測定部において、時間分解反射率測定のために用いられ、テラヘルツ発生素子1の反射率変化を通して誘電関数の時間応答を観測してMQW構造における励起子およびフォノンの挙動を観測する。この誘電率変調による反射率変化は、発生しているテラヘルツ波によって生じる。
n層12下部には、下部電極18が設けられる。これらの電極16および18は、たとえば金電極層で形成され、バイアス電圧印加回路4からのバイアス電圧が供給される。テラヘルツ波は、極超短波であり、直進性があり、素子の膜厚方向に沿った端面からテラヘルツ電磁波が膜厚方向のコヒーレント縦光学フォノンの振動に従って出力され、特に、電磁波の伝送方向を設定するための導波路などは設ける必要はない。次に、テラヘルツ波発生素子1の構成および動作について詳細に説明する。
図2は、図1に示すテラヘルツ波発生素子1の構造をより詳細に示す図である。図1において、p層10およびn層12は、それぞれ、一例として、p型およびn型不純物がドープされた膜厚1μmのAl0.5Ga0.5As層で形成される。i層領域14は、p層10に隣接するアンドープのAl0.5Ga0.5As層で形成されるi層20aと、n層12に隣接するアンドープのAl0.5Ga0.5As層で形成されるi層20bとを含む。これらのi層20aおよび20bの膜厚は、それぞれ、たとえば50nmであり、pin構造を実現する。
i層20aおよび20bの間に、多重量子井戸構造MQWが形成される。この多重量子井戸構造MQWにおいては、GaAs層21とAlAs層22が、交互に積層される。このGaAs層21およびAlAs層22の単位が、所定数の周期繰返し積層される。
GaAs層21およびAlAs層22は、バンドギャップが異なっており、膜厚が、それぞれ、たとえば15.3nmおよび4.5nmであり(一分子層膜厚が0.283nm)のアンドープ層であり、たとえば分子線エピタキシ法(MBE法)を用いて形成される。このような層厚画、ナノメータオーダのヘテロ接合の繰返しにより多重量子井戸ポテンシャルが形成される。本実施例においては、GaAs層21が量子井戸層、AlAs層22がポテンシャル障壁層となる。電子および正孔は、この量子井戸層内に閉じ込められる。この場合、電子および正孔の波動関数の許容される周期が量子井戸層の厚さにより制限され、量子井戸層内に離散的な量子準位(エネルギ準位)が形成される。
図3は、図2に示す多重量子井戸構造MQWのエネルギバンド構造を概略的に示す図である。図3において、井戸層と障壁層が交互に配置され、応じてエネルギバンドにおいても、ポテンシャル井戸が交互に形成される。量子井戸においては、エネルギ準位が離散化され、価電子帯において、重い正孔(ヘビーホール:HH)の準位(サブバンド)と、軽い正孔(ライトホール:LH)の準位(サブバンド)が形成される。図3においては、量子数nが1の基底状態の正孔のエネルギ準位を示す。伝導帯においても、電子の準位E1およびE2が、それぞれ量子数n1およびn2に対応して形成される。
量子井戸構造において、電場が印加されていない場合には、図4(A)に示すように、伝導帯Ecの電子の包絡波動関数φeと価電子帯Evの重い正孔および軽い正孔の包絡波動関数φhは、量子井戸の中心に関して対称的な形を有する。価電子帯Evと伝導帯Ecの間には、エネルギギャップEgが存在する。
一方、図4(B)に示すように、量子井戸の幅方向すなわち膜厚に垂直な方向に電場EFを印加した場合、エネルギバンド構造がこの電場EFの影響によりシフトし、応じて、電子の包絡波動関数φeおよび正孔の波動関数φhがそれぞれ逆方向にシフトし、波動関数の対称性が崩壊する。また、量子井戸の底部の低下により伝導帯Ecの電子準位が低下し、また、サブバンドエネルギも電場によって変化し、励起子遷移吸収エネルギもそれに伴ってシフトする。
この場合、図5に示すように、正孔と電子とは、障壁層を超えて移動することができず、電子および正孔はこの量子井戸内に閉じ込められるため、励起子の解離は生じず、その結合エネルギが大きく、また振動子強度も大きくなり、大きな量子数nの励起子も安定に存在する。この量子井戸に対して電場を印加したときの光吸収スペクトルのシフトの現象は、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)と呼ばれ、サブバンド間エネルギは、印加電場により制御することができる。
量子井戸構造において電場印加時の重い正孔の包絡波動関数φHHおよび軽い正孔の包絡波動関数φLHのずれ量は、有効質量、印加電場および膜厚に比例し、重い正孔および軽い正孔が有効質量が異なるため波動関数の形状が異なる。重い正孔HHと軽い正孔LHそれぞれの励起子は、ともに、量子井戸内に閉じ込められて振動し、膜厚方向(井戸に垂直な方向であり膜の成長方向)に誘電双極子の分極が発生する。励起子間の量子干渉により瞬間的に膜厚方向に縦方向分極Pがパルス状に生成されるため、この分極Pの振動エネルギを用いて、超短パルス印加により生成されるコヒーレントLOフォノンの振動を増強する。
図6は、多重量子井戸構造MQWの光照射時の光電流スペクトルと印加電場の関係を示す図である。縦軸に、光電流のフォトンエネルギ(単位eV)を示し、横軸に電場(単位kV/cm)を示す。図6に示す多重量子井戸構造MQWにおいては、前述のように、GaAs層は膜厚15.3nmであり、AlAs層は、膜厚4.5nmであり、この井戸層および障壁層が20周期繰返し形成される。測定温度は10K(ケルビン温度)である。
また、図6において、破線で示す曲線各々において、E2は、量子数2の電子準位を示し、またE1は、量子数1の電子準位(基底状態)を示す。HH1、HH2、およびHH3は、それぞれ、量子数1、2および3の重い正孔準位を示す。LH1、LH2は、それぞれ量子数1の軽い正孔のエネルギ準位を示す。たとえば、E2HH2は、量子数2の電子準位から量子数2の重い正孔準位への遷移エネルギを示す。またELOは、GaAs層のコヒーレントLOフォノンのエネルギを示す。図6の破線で示す曲線各々は、TM法(トランスファ(伝達)マトリックス法)を用いて計算された遷移エネルギを示す。横軸に示す電場Fは、F=(Vb−V)/Lの関係式に基づいて算出される。ここで、Vbは、pn接合のビルトイン電圧を示し、Vが、印加バイアス電圧を示す。Lは、図2に示すi層20aおよび20bと多重量子井戸構造MQWとの合計の膜厚、すなわち図1に示すpin構造のi層領域14の厚さを示す。
光電流(PC)のピーク値のシフトは、量子閉じ込めシュタルク効果による。図6に示されるように、電場が大きくなるにつれて、異なる量子数の電子および正孔サブバンド間の光学遷移が明瞭となる。一方、基底状態のE1HH1およびE1LH1の励起子の基本遷移は、ほとんど発生しない。この遷移確率の変化は、電子および正孔の包絡波動関数の対称性の破壊により生じている。
エネルギELOは、コヒーレントGaAs的LOフォノン(以下、単にコヒーレントLOフォノンと称す)のエネルギであり、E2HH2励起子とE2HH1励起子の遷移エネルギ差が、このコヒーレントGaAs的LOフォノンのエネルギELOにほぼ等しい。したがって、同じ電子または正孔のサブバンドの2つの励起子間のエネルギ差が、コヒーレントLOフォノンエネルギELOに近づくにつれて、縦分極を通して、励起子干渉とコヒーレントLOフォノンとの間の結合を利用して、LOフォノン振動を増強させることが可能となる。
図7は、この図6に示す光電流スペクトルの光電流強度の励起光フォトンエネルギの依存性を示す図である。横軸に、照射光のフォトンエネルギ(単位eV)を示し、縦軸に、光電流強度(単位任意)を示す。各曲線に付される電場は、バイアス電圧として印加される電場を示す。
図7において、各ピークは、有効質量近似から評価される。図7に示すように、量子閉込めシュタルク効果により、電場強度が増大するにつれ、遷移ピーク値がシフトしまた遷移エネルギおよび遷移振動子強度が低下している。ここで、量子閉込めシュタルク効果は、前述の非特許文献3において説明されているように、多重量子井戸に印加された電界により量子井戸内に形成されたサブバンドのエネルギが変化する物理的効果のことである。
バイアス電場が130kV/cmの条件下では、E2HH1励起子エネルギおよびE2HH2励起子エネルギの間隔が、GaAsのコヒーレントLOフォノンエネルギとほぼ一致する。したがって、これらのE2HH1励起子およびE2HH2励起子の干渉による縦分極エネルギを、コヒーレントLOフォノンに対応させることにより、共鳴条件を成立させる。このコヒーレントなLOフォノンは、フォノン振動周期よりも短いパルス光を照射した場合に生成され、したがって、超短パルスの励起光照射時に同様に生成される。これらのE2HH2励起子およびE2HH1励起子を同時に生成して、それらの間に量子干渉を生じさせるために、ポンプ光を、130kV/cmでのこれらの励起子E2HH2およびE2HH1の中間のエネルギ、すなわち1.571eVに調整する。
図8は、各バイアス電圧印加時における量子井戸構造MQWのポンプ・プローブ分光法による時間分解反射率測定結果を示す図である。横軸に、時間遅延(ピコ秒:ps)を示し、縦軸に、反射率変化ΔR/R0を示す。R0は時間0における反射率を示す。また、図8においては、各測定結果の曲線に印加バイアス電場を付して示し、また、各バイアス電場印加時における1.0ps以降の振動を×10倍または×30倍(100kV/cm)に拡大して示す。
0.0psにおいて、超短パルスが印加され、キャリアの励起(励起子の発生)およびフォノンの励起を行う。この場合、励起キャリアおよびコヒーレントフォノンは、フェムト秒単位でそれぞれ緩和しまた振動するため、プローブ光の到着タイミングをフェムト秒単位で変化させることにより反射光強度が変化する。この反射光強度を、ポンプ光およびプローブ光パルスの間の時間差を掃引しながら記録することにより、キャリアおよびコヒーレントフォノンによる誘電関数の時間応答を知ることができ、応じて素子内部での光励起キャリアおよびコヒーレントフォノンの励起および緩和状態を測定することができる。
図8に示すように、時間遅延1.0psまでは、キャリアおよびフォノンの光励起により生じた変化である。時間1.0ps以前の初期状態における時間領域信号の波形の変動は、E2HH1励起子に対する励起過剰エネルギの変化に起因すると考えられる(励起子エネルギは、QCSEによりシフトするため)。
時間遅延1.0ps以降において、振動構造は、各特性曲線において、4.0ps以上にまでわたって持続する。この振動構造は、コヒーレントGaAs的LOフォノンに起因すると考えられ、このコヒーレントLOフォノンの振幅は、印加電場強度とともに変化する。155kV/cmの印加電場条件で、振動構造の振幅が最も大きくなる。E2HH1励起子およびE2HH2励起子の量子ビートが観察されていないため、これらの励起子の位相緩和時間は、励起パルス幅とほぼ同程度であると考えられる。励起子の瞬間的な緩和における量子干渉により縦分極振動が生じ、この縦分極振動をコヒーレントLOフォノン振動と共鳴させる。
図9は、図8に示す時間領域信号のフーリエ変換を行なった後の周波数スペクトルを示す図である。図9においては、印加電場130kV/cmから170kV/cmの間の電場についてのフーリエ変換スペクトルを示す。横軸に周波数(THz)を示し、縦軸に、フーリエ変換信号強度(FT強度;単位任意)を示す。時間領域信号をフーリエ変換(FT変換)を行なうことにより、周波数領域の信号を得ることができる。
図9に示すように、FT強度は、各バイアス電場において8.8THzの周波数で、ピーク値を有する。この8.8THzは、GaAsのコヒーレントLOフォノンエネルギに相当する。このFT強度が、150kV/cmの電場付近で最も大きくなるのが観測される。すなわち、図8に示す時間1.0ps以降の振動構造が、GaAsのコヒーレントLOフォノンによるものであると考えられる。
図10は、光電流スペクトルから推定されるE2HH1励起子およびE2HH2励起子のエネルギ差ΔE(HH1−HH2)とコヒーレントLOフォノンのFT強度との関係を示す図である。横軸に、電場(単位kV/cm)を示す、縦軸に、FT強度およびエネルギ差ΔE(HH1−HH2)(単位meV)を示す。ELOは、GaAsのコヒーレントLOフォノンエネルギを示す。FT強度は、コヒーレントLOフォノンの振動振幅の二乗に対応する。白丸印は、コヒーレントLOフォノン強度を示し、黒丸印が、エネルギ差ΔE(HH1−HH2)を示す。FT強度は、電場155kV/cmでピーク値に到達する。図9に示すように、低電場印加時に比べて、数百倍のコヒーレントLOフォノンFT強度値が得られる。したがって、HH1およびHH2サブバンド間エネルギを、GaAsのコヒーレントLOフォノンエネルギELOに同調させることにより、共鳴状態が生じ、コヒーレントLOフォノンの振動振幅を大きくすることができる。これは、励起子エネルギでの共鳴効果および励起子干渉の縦分極とコヒーレントLOフォノンの縦分極との結合により生じると考えられる。
図11は、コヒーレントLOフォノンのフーリエ変換強度(FT強度)のポンプ(励起)エネルギ依存性を示す図である。図11において、横軸に、ポンプ光(励起光)のフォトンエネルギを示し、縦軸に、FT強度およびレーザパルス強度を示す(それぞれ単位任意)。図11において、点線で示される曲線Iが、ポンプレーザパルス強度を示す。ポンプレーザ光は、中心周波数が、1.573eVである。一方、実線で示す曲線IIが、GaAsのコヒーレントLOフォノンのFT強度を示す。図11には、併せて、E2HH1励起子およびE2HH2励起子の遷移エネルギをそれぞれ示す。
バイアス電場は、155kV/cmである。図11に示すように、コヒーレントLOフォノンのFT強度は、1.573eVのフォトンエネルギにおける1つのピーク値を有しているだけである。したがって、コヒーレントLOフォノンのFT強度においては、励起子E2HH1、E2LH1、およびE2HH2それぞれのエネルギに対してはピーク値が存在しないため、E2HH1励起子およびE2HH2の干渉(縦分極)とコヒーレントLOフォノンとの結合により、コヒーレントLOフォノンの振幅増大が生じていると考えられる。すなわちE2HH1励起子およびE2HH2励起子の中心エネルギ近傍で、コヒーレントLOフォノンが最大強度となっており、量子数の異なるサブバンド間の励起子の干渉が、コヒーレントLOフォノンの駆動力となっていると考えられる。
レーザパルス(ポンプ光)は、図11に示すように、励起子間エネルギ差ΔE(HH1−HH2)よりも広いスペクトルを有しており、したがって、これらの励起子E2HH1およびE2HH2を、同時に発生させることができる。これらの励起子のパルス状の縦分極が励起子E2HH1およびE2HH2間の干渉により生じ、この縦分極が、エネルギ差ΔE(HH1−HH2)が、ほぼコヒーレントGaAs的LOフォノンエネルギELOに、バイアス電場155kV/cmの条件下で結合され、コヒーレントLOフォノンと励起子干渉の縦分極の共鳴作用により、コヒーレントLOフォノンが増強され、長期にわたって安定な振動構造が生成される。
以上の議論をまとめると、以下のようにまとめられる。図8に示す時間領域信号においては、時間遅延1.0ps以前の振動構造においては、うなりは生じていないため、E2HH1−E2HH2励起子間の量子ビートが観測されていないため、高次(n=2以上)のサブバンド電子のコヒーレンス時間は非常に短いと考えられる。波動関数は、QCSEにより非対称化しており、2つの励起子が瞬間的にでも干渉した場合、その縦分極がコヒーレントLOフォノンに対する駆動力として機能し、コヒーレントLOフォノンを増強する。これにより、一定の周期の振動構造を有するコヒーレントLOフォノンを生成することができる。
図12は、TM法に従って計算した励起子の遷移確率(電子/正孔波動関数の重なり積分の2乗値)の印加電場強度依存性を示す図である。横軸に、電場(単位kV/cm)を示し、縦軸に、遷移確率(二乗オーバラップ積分)|<En|HHm>|2を示す。ここで、n,mは、サブバンドの量子数を示し、それぞれ1または2である。
励起子は、いわゆる電気双極子モーメントが、波動関数の対称性のずれから生じており、遷移確率は、確率振幅の二乗に比例する。この図12において、励起子EnHHm(n、m=1,2)において、共鳴電場近傍において、E2HH1励起子とE2HH2励起子の遷移振動子の強度がほぼ一致しており、強い励起子間干渉が生じ、コヒーレントLOフォノンを駆動することが見られる。
ここで、共鳴電場は、図12においては、155ではなく130から140kV/cmであるが、これは測定値と異なっているものの、測定時においては、ポンプアンドプローブ法に基づいて測定を行なっているため、プローブ時の照射光(プローブ光)により光励起されたキャリアによるクローンスクリーニングにより、電場がシフトしているためであると考えられる。従って、実使用時には、バイアス電場としては、井戸層に130kV/cm付近の電場が印加されるようなバイアス電圧を印加する。
図13は、対象としている量子井戸構造における電場印加条件下でのポテンシャル構造および電子・正孔包絡波動関数を概略的に示す図である。図13においては、量子数1および2の電子準位E1およびE2と、量子数1および2の重い正孔の準位HH1およびHH2を示す。包絡波動関数の非対称性のずれは、有効質量に比例するため、量子数1の重い正孔の準位HH1および量子数2の重い正孔HH2の対称性が崩れ、同様、電子準位E2においても対称性が崩れる。この対称性の崩れにより、膜垂直方向(膜成長方向)に瞬間的に縦分極Pが発生する。このとき励起子E2HH1およびE2HH2の遷移エネルギ差ΔEが、GaAsのコヒーレントLOフォノンのエネルギELOと等しくなるように外部からの印加バイアス電圧で調整する。従って、図1に示すバイアス電圧印加回路が生成するバイアス電圧のレベルを調整することにより、長期にわたって安定な振動構造を有するテラヘルツ波を光照射回路からの照射光(ポンプ光)に応じて発生することができる。このとき、バイアス電圧印加回路からのバイアス電圧を、励起光照射と同期してかつ発生周期を送信情報に応じて調整することにより、テラヘルツ波をバイアス電圧パルスおよび励起光パルス列に応じて生成することができ、テラヘルツ波を送信情報に応じて変調することができる。
図14は、この発明の実施の形態1に従うテラヘルツ波変調装置の構成を、より具体的に示す図である。図14において、テラヘルツ波変調装置は、テラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発生素子1と、このテラヘルツ波発生素子1に所定の光エネルギの超短パルスを照射する光照射回路2とテラヘルツ波発生素子1に電圧パルスを、光照射回路2からの超短光パルスに同期して電圧パルスを印加する電圧パルス印加回路10と、光照射回路2および電圧パルス印加回路10のパルス発生を同期的に制御する制御回路12を含む。
テラヘルツ波発生素子1は、先の図1に示す構成と同様、GaAs/AlAs多重量子井戸構造MQWを有し、井戸層(GaAs膜)の膜厚は、たとえば15.3nmであり、障壁層(AlAs膜)の膜厚は、4.5nmである。
光照射回路2は、モード同期のチタン:サファイアパルスレーザを含み、そのパルス幅は一例として80fs(フェムト秒)であり、出力が、たとえば20mWである。この光照射回路2からの光パルスは、中心エネルギが1.571eVである。
電圧パルス印加回路10が生成する電圧パルスは、テラヘルツ波発生素子1の量子井戸層に印加される電場が155kV/cm(またはプローブ光の効果を考慮して、130kV/cm付近)となる電圧レベルに設定される。電圧パルス印加回路10の発生するパルス電圧は、したがって、テラヘルツ波発生素子1の多重量子井戸構造MQWの全体の層厚およびi層の層厚に依存して、その電圧レベルが設定される。電圧パルスのパルス幅は、超短パルス印加時において確実に量子閉込めシュタルク効果を生じさせるため、超短パルスのパルス幅以上に設定される。
光照射回路2および電圧パルス印加回路10を、制御回路12の制御の下に同期動作させる。この電圧パルス印加回路10からの電圧パルスを、制御回路12の下に、その発生周期で変調する。
図15は、図14に示すテラヘルツ波変調装置の出力信号波形を概略的に示す図である。図15において、電圧パルス印加回路10からのパルス電圧と、テラヘルツ波発生素子1からのテラヘルツ電磁波(THz電磁波)と時間軸を併せて示す。また、THz電磁波の詳細波形を、図の上部に示す。テラヘルツ波(THz電磁波)の詳細波形の横軸の単位時間はps(:ピコ秒)である。
制御回路12の制御の下に、光照射回路2および電圧パルス印加回路10から同期して超短パルス光パルスおよび電圧パルスを印加する。これらの超短光パルスおよび電圧パルスの印加においてテラヘルツ波発生素子1が、先に詳細に説明したように、THz電磁波をそのコヒーレントLOフォノンの振動により発生する。したがって、電圧パルス列に応じてTHz電磁波が生成され、電圧パルス印加回路10からのパルス電圧を、テラヘルツ波電磁波に変調して伝送することができる。
また、これは、言い換えれば、THz電磁波が、電圧パルス印加回路10からのパルス列により変調されていると言える。超短光パルスおよびパルス電圧を、制御回路12の制御の下に、送信データに応じてパルス列間隔の調整(周波数変調)を行なうことにより、パルス電圧列に応じたテラヘルツ電磁波(THz電磁波)を生成することができ、光通信と同様テラヘルツ電磁波を搬送波としてデータを送信することができる。
なお、光照射回路2からの超短光パルスに応答して、まずTHz電磁波波形の振幅が大きく変化し、次いで1ps以降において定常的な振動構造が実現される。THz電磁波として、この1ps以後の定常的な振動波形のみを利用する場合、時間ウィンド信号などにより、時間1ps以前の信号の伝達を禁止する構成が用いられてもよい(ギガヘルツ領域でスイッチング動作するトランジスタは、現在でも利用することができる)。
また、通信分野での送信情報に代えて、被測定対象物に対し電圧パルス印加回路10および光照射回路2からの超短光パルスの印加タイミングを調整することにより、非測定対象面を走査して、必要な位置の情報を選択的に得ることができる。これにより、センシング装置への応用において、発振強度の変調されたテラヘルツ光を測定対象に照射することにより測定対象の高精度に位置決めされた部位のサンプリングを行うことができ、微小部位のセンシングを正確に行なうことができる。
なお、多重量子井戸構造において、GaAs層厚およびAlAs層厚は、厚くなると、量子サイズ効果が弱くなり、サブバンドの分裂エネルギが小さくなり、サブバンドHH1およびHH2のエネルギ差が小さくなる。また、障壁層およびi層の膜厚が変化した場合、井戸層に印加されるバイアス電場も変化する。したがって、この多重量子井戸構造MQWにおける井戸層(GaAs層)および障壁層(AlAs層)の層厚およびMQW構造およびi層の全体の膜厚に応じて、電圧パルス印加回路10の生成するパルス電圧レベルが、量子数1および2の重い正孔のサブバンドHH2およびHH1のエネルギ差が、コヒーレントLOフォノンの振動エネルギに対応する電圧レベルに設定される。
従って、GaAs膜およびAlAs膜の膜厚が、それぞれ、15.3nmおよび4.5nmで20周期繰返して積層した量子井戸構造で上下のi層の膜厚が各々50nmの場合に、バイアス電場が155kV/cmとなり、また超短光パルスのフォトンエネルギが1.571eVに設定されるのは、例示的な1つの具体例である。
また、上述の説明においては、GaAs層およびAlAs層を単位周期として、多重量子井戸構造を形成している。しかしながら、多重量子井戸構造の構成物質は、物理原理的にGaAsおよびAlAsに限定する必要はなく、AlGaAs、InGaAs、InAlAs、GaN、InGaNなどのIII−V族化合物半導体材料、また、ZnSe、ZnS、CdSなどのII−VI族化合物半導体、さらにはSi、GeなどのIV族半導体を用いても実施することができる。この場合においても、量子サイズ効果によるQCSEにより波動関数の対称性が崩れ、異なる量子数のサブバンド間のエネルギ差または同一量子数の重い正孔および軽い正孔サブバンドの励起子遷移エネルギ差が、コヒーレントLOフォノンの振動数エネルギに対応するようにバイアス電場が印加される。
すなわち、多重量子井戸構造の半導体で構成されるテラヘルツ波発生素子に対して、量子井戸に形成される2種類の励起子間に量子干渉ビートを生じさせるエネルギを有するパルス光を照射し、これらの2種類の励起子間のエネルギ差を量子閉込めシュタルク効果を利用して調節し、半導体のLOフォノンの周波数に、2種類の励起子間の量子干渉ビートの周波数を一致させる。これにより、コヒーレントLOフォノン振動によるテラヘルツ波を増幅することができ、安定なテラヘルツ波を生成することができる。
また、半導体のLOフォノンの周波数と量子干渉ビートの周波数の一致/不一致を変動させることにより、コヒーレントLOフォノン振動によるテラヘルツ波の増幅率を変動させて発振強度を変調する。
なお、図14に示すテラヘルツ波変調装置の構成においては、制御回路12が光照射回路2および電圧パルス印加回路10のパルス印加と同期動作させている。しかしながら、光照射回路2が、たとえば一定の周期、たとえば80MHzで光パルスを発生する場合、この超短光パルスに同期して電圧パルス印加回路10が電圧パルスを発生することにより、光照射回路2からの超短パルスの発生周期に応じた周期でテラヘルツ波を発生することができる。
この発明のテラヘルツ波変調装置は、テラヘルツ波を利用する情報通信において革新的な利用価値があるとともに、バイオ・環境センシングおよびテラヘルツイメージングにおいてはデータサンプリングの制御に利用することができ、その意義と価値は大きい。
この発明の実施の形態1に従うテラヘルツ波変調装置の構成を概略的に示す図である。 図1に示すテラヘルツ波発生素子の要部の構成を概略的に示す図である。 図2に示す多重量子井戸構造のエネルギバンドを概略的に示す図である。 (A)は、ポテンシャル井戸における包絡波動関数の形態を示し、(B)は、電場印加時の包絡波動関数の構成を概略的に示す。 電場印加時の重い正孔および軽い正孔の包絡波動関数の形状を概略的に示す図である。 図1に示すテラヘルツ波発生素子の印加電場と励起子遷移エネルギの関係を示す図である。 図6に示す関係の各バイアス電場印加時の光電流密度と照射フォトンおよびその関係を示す図である。 テラヘルツ波発生素子の時間分解反射率変化の時間領域信号を示す図である。 図8に示す時間領域信号の周波数領域における強度を示す図である。 図9に示すフーリエ変換後の信号強度の電場依存性とコヒーレントLOフォノンとの関係と励起子振動エネルギとの関係を示す図である。 照射レーザ光がスペクトル分布とテラヘルツ波のFT強度の関係を示す図である。 各励起子の遷移確率分布と共鳴電場との関係を示す図である。 ポテンシャル井戸における電場印加時のエネルギバンドの対称構成を概略的に示す図である。 この発明の実施の形態1に従うテラヘルツ波変調装置の構成をより具体的に示す図である。 図14に示すテラヘルツ波変調装置の出力電磁場と印加パルスのタイミング関係を示す図である。
符号の説明
1 テラヘルツ波発生素子、2 光照射回路、4 バイアス電圧印加回路、10 電圧パルス印加回路、12 制御回路。

Claims (6)

  1. 多重量子井戸構造を含む半導体からなるテラヘルツ波発生素子と、
    前記多重量子井戸構造の量子井戸に形成されるエネルギの異なる2種類の励起子間に量子干渉ビートを生じさせるエネルギを有する光パルスを前記テラヘルツ波発生素子に照射する光照射回路と、
    前記多重量子井戸構造を含む半導体の縦光学フォノンの周波数に、前記異なる2種類の励起子間の量子干渉ビートの周波数を一致させてコヒーレント縦光学フォノン振動によるテラヘルツ波を増幅するように、前記多重量子井戸内に形成される前記2種類の励起子間のエネルギ差を量子閉込めシュタルク効果を利用して調節するためのバイアス電圧を供給するバイアス電圧供給回路とを含む、テラヘルツ波増幅装置。
  2. 前記テラヘルツ波発生素子はp−i−nダイオードであり、前記ダイオードに含まれる前記i層が前記多重量子井戸構造を含む、請求項1記載のテラヘルツ波増幅装置。
  3. 前記多重量子井戸構造は、GaAs層とAlAs層とで構成される、請求項1または2に記載のテラヘルツ波増幅装置。
  4. 多重量子井戸構造を含む半導体からなるテラヘルツ発生素子と、
    前記多重量子井戸構造の量子井戸に形成されるエネルギの異なる2種類の励起子間に量子干渉ビートを生じさせるエネルギを有するパルス光を前記テラヘルツ発生素子に照射する光照射回路と、
    バイアス電圧を供給することによって前記2種類の励起子間の量子干渉ビートの周波数を変化させるバイアス電圧供給回路とを含み、
    前記バイアス電圧供給回路は、前記バイアス電圧のパルス波形を変動させることによって、量子閉込めシュタルク効果を利用して、多重量子井戸の種々の励起子エネルギを制御し、前記半導体の縦光学フォノンの周波数と前記量子干渉ビートの周波数の一致と不一致を変動させ、それによってコヒーレント縦光学フォノン振動によるテラヘルツ波の増幅率を変動させて発振強度を変調する、テラヘルツ波変調装置。
  5. 請求項4に記載されるテラヘルツ波変調装置を含み、そのテラヘルツ波変調機能を利用する、通信装置。
  6. 請求項4に記載されるテラヘルツ波変調装置を含み、そのテラヘルツ波変調機能を利用する、センシング装置。
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