JP2009049159A - コヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法 - Google Patents

コヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 量子構造におけるコヒーレントフォノンを用いて、実用化の用途に適する高強度のテラヘルツ電磁波を発生させる方法を提供すること。
【解決手段】 量子構造におけるコヒーレントフォノンを用いてテラヘルツ電磁波を発生させる方法において、量子井戸構造に電場を印加し、量子閉じ込めシュタルク効果を利用して、量子井戸層内の2つの励起子のエネルギーの差を電場で制御し、その両励起子間のエネルギーの差を、量子井戸層のコヒーレントLOフォノンのエネルギーに合わせることで、励起子量子ビートまたは励起子間の瞬間的量子干渉をコヒーレントLOフォノンの駆動力として作用させることによって、高振幅のコヒーレントLOフォノンを生成し、それによる分極の振動でテラヘルツ電磁波を発生させる。
【選択図】 図22

Description

本発明は、コヒーレントフォノンを用いてテラヘルツ(THz)電磁波を発生させる方法、特に高強度でテラヘルツ電磁波を発生させる方法に関する。
THz電磁波に関する研究は、1990年のレーザー技術の発展により、発生及び検出が可能となった比較的新しい分野である。初期の研究は、主にパルスレーザーを照射した際に、半導体表面から放射されるTHz電磁波に関するものであった。(非特許文献1〜5)
Sensing with TerahertzRadiation, edited by D. Mittleman (Springer, Berlin, 2003) Terahertz Optoelectronics, edited by K. Sakai(Springer, Berlin, 2005) P. Smith, D. H. Auston, and M. Nuss, IEEE J.Quantum Electron. 24, 255 (1988) X.-C. Zhang and D. H. Auston, Appl. Phys. Lett.56, 1011 (1990) X.-C. Zhang and D. H. Auston, J. Appl. Phys. 71,326 (1992)
近年、コヒーレント縦光学(LO)フォノンからのTHz電磁波も観測され、物性研究や応用への観点から盛んに研究が行われている。コヒーレントLOフォノンは、THz領域で単一周波数の振動分極を生じているため、単色性を有するTHz電磁波を放射する。(非特許文献6〜9)
T.Dekorsy, H.Auer, H.J.Bakker, H.G.Roskos, and H.Kurz, Phys. Rev.B 53, 4005 (1996) M. Tani, R. Fukasawa, H. Ave, S. Matsuura, K. Sakai, and S.Nakashima, J. Appl. Phys. 83, 2473 (1998) A. Leitenstorfer, S. Hunsche, J. Shah, M. C. Nuss, and W. H. Knox,Phys. Rev. Lett. 82, 5140 (1999) Y. C. Shen, P. C. Upadhya, E. H. Linfield, H. E. Beere, and A. G.Daveis, Phys. Rev. B 69, 235325 (2004)
これらの従来技術において、コヒーレントLOフォノンからTHz電磁波が放射するメカニズムは、試料表面におけるコヒーレントLOフォノンの並進対称性の破れによるものである。しかしながら、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の振幅は非常に弱く、通信、分光、イメージングなどのTHz技術への応用は困難である。そこで、高強度かつ位相緩和時間の長いコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波発生が求められている。
本発明者らは、多重量子井戸構造(MQW)におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波は、半導体バルク結晶におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波と比べると、その強度が著しく大きいことを報告している。(非特許文献10〜11)
K. Mizoguchi, T. Furuichi, O. Kojima, M. Nakajima, S. Saito, A.Syouji, and K. Sakai Appl.Phy. Lett., 87, 093102 (2005) K. Mizoguchi, A. Mizumoto, M. Nakayama, S. Saito, A. Syouji, K.Sakai, N. Yamamoto, and K. Akahane,, J. Appl. Phys., 100, art.103527 (2006)
GaAs/AlAsなどの多重量子井戸構造では、各井戸層に閉じ込められたコヒーレントLOフォノンを、同時かつ同位相で生成できるので、各井戸層において微小分極の重ね合わせが生じる。そのため、コヒーレントLOフォノンから放射されるTHz電磁波は、薄膜と比べて強いものとなる。また、多重量子井戸構造では、コヒーレントLOフォノンは各井戸層に閉じ込められているため、LOフォノンの緩和の主要因である音響フォノンへの散乱過程が抑制され、非常に長い位相緩和時間を持つTHz電磁波放射が期待できる。
本発明者らは、量子井戸構造において、重い正孔(heavy hole: HH)サブバンドと軽い正孔(lighthole: LH)サブバンドのエネルギーを、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果とも呼ぶ)によって変化させて、HH励起子とLH励起子間の励起子量子ビートのエネルギーを制御し、量子井戸層のLOフォノンエネルギーと共鳴させることにより、励起子量子ビートとコヒーレントLOフォノンとの相互作用を誘起させる点を基本として研究を進めている。
系統的な層厚を有するGaAs/AlAs多重量子井戸構造を試料とした研究から、励起子量子ビートとLOフォノンのエネルギー共鳴条件において、励起子量子ビートが駆動力となり、コヒーレントLOフォノンが著しく増強されること、ならびに、縦分極間相互作用を介してこれらの結合モードが形成されることを、時間分解反射型ポンプ・ローブ分光法による実験から初めて明らかにした。(非特許文献12〜13)
O. Kojima, K. Mizoguchi, and M. Nakayama, Phys. Rev. B68,art.155325 (2003) K. Mizoguchi, O. Kojima, T. Furuichi, M. Nakayama, K.Akahane, N. Yamamoto, and N. Ohtani, Phys. Rev. B69, art.233302 (2004)
一方、多重量子井戸構造に電場を印加することで、量子閉じ込めシュタルク効果(quantum confined Stark effect:QCSE)によって、サブバンドエネルギーを自在に制御ができることが知られている。(非特許文献14〜16)
D. A. B. Miller, D. S. Chemla, T. C. Damen, A. C. Gossard, W.Wiegmann, T. H. Wood, and C. A. Burrus, Phys. Rev. Lett., 53, 2173 (1984) D. A. B. Miller, D. S. Chemla, T. C. Damen, A. C. Gossard, W.Wiegmann, T. H. Wood, and C. A. Burrus, Phys. Rev. B 32, 1043 (1985) J. Shah, inUltarafast Spectroscopy of Semiconductors and Semiconductor Nanostructures,edited by M. Cardona, Springer Series in Solid-State Sciences, Vol. 115(Splinger, Berlin, 1996)
これより、量子閉じ込めシュタルク効果を利用して、多重量子井戸構造に電場を印加することで、励起子量子ビートの振動数を制御することができ、励起子量子ビートの振動数をLOフォノンの振動数にあわせることが可能である。
本発明者らは、時間分解反射率変化の測定から、サブバンド間エネルギーをコヒーレントLOフォノンエネルギーにあわせることで、高次の励起子間の瞬間的量子干渉によるコヒーレントLOフォノンが増強されることを報告している。(非特許文献1 7)
O. Kojima, K. Mizoguchi, and M. Nakayama, Phys. Rev. B70,art.233306 (2004)
しかしながら、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の強度は、通信、分光、イメージングなどのTHz技術への実用化には不十分であった。
そこで、本発明は、量子構造におけるコヒーレントフォノンを用いて、実用化の用途に適する高強度のテラヘルツ電磁波を発生させる方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は次の構成を備える。すなわち、量子構造におけるコヒーレントフォノンを用いてテラヘルツ電磁波を発生させる方法において、量子井戸構造に電場を印加し、量子閉じ込めシュタルク効果を利用して、量子井戸層内の2つの励起子のエネルギーの差を電場で制御し、その両励起子間のエネルギーの差を、量子井戸層のコヒーレントLOフォノンのエネルギーに合わせることで、励起子量子ビートまたは励起子間の瞬間的量子干渉をコヒーレントLOフォノンの駆動力として作用させることによって、高振幅のコヒーレントLOフォノンを生成し、それによる分極の振動でテラヘルツ電磁波を発生させることを特徴とする。
ここで、超短パルスレーザーを用いて、量子井戸構造における井戸層内の2つの励起子の準位をコヒーレントに励起することで、その両励起子間の干渉による励起子量子ビートまたは励起子間の瞬間的量子干渉を生成してもよい。
量子井戸構造に多周期の多重量子井戸構造を用い、コヒーレントLOフォノンをその多重量子井戸層に閉じ込めることで散乱過程を抑制して強度増強に寄与させてもよい。
多重量子井戸構造における原子層の周期数によって、テラヘルツ電磁波の出力強度を制御してもよい。
多重量子井戸構造の原子層には、GaAs/AlAsが利用できる。
GaAs/AlAsの多重量子井戸構造には、n-GaAs(001)基板上に分子線エピタキシャル成長させたp-i-n構造に埋め込まれた構成が利用できる。
GaAs/AlAsの多重量子井戸構造には、ノンドープのAl0.5Ga0.5As層の薄膜で挟み、p-層及びキャップ層としてAl0.5Ga0.5As層、n+層としてAl0.5Ga0.5As層を具備させてもよい。
また、多重量子井戸構造は井戸層に電場をかけることができる構造であればよいので、メタル-絶縁層-半導体の構造(m-i-s構造,メタルー量子井戸構造-n型半導体またはp型半導体の構造)でも可能である。すなわち、GaAs/AlAsの多重量子井戸構造には、n-GaAs(001)基板上に分子線エピタキシャル成長させたメタル?多重量子井戸構造?半導体構造(m-i-s構造)に埋め込まれた構成も利用できる。
この場合、GaAs/AlAsの多重量子井戸構造には、ノンドープのAl0.5Ga0.5As層の薄膜で挟み、半導体層としてn-GaAs(001)基板、メタル層としてショットキー接合させたCr半透明電極またはAu-Cr半透明電極を具備させてもよい。
本発明によると、量子井戸構造に電場を印加し、量子閉じ込めシュタルク効果を利用することで、励起子量子ビートをコヒーレントLOフォノンの駆動力として作用させることができ、高強度のテラヘルツ電磁波が得られる。
以下に、図面を基に本発明の実施形態を説明する。
試料としては、n-GaAs(001)基板上に分子線エピタキシー(Molecular BeamEpitaxy)法により作製したp-i-n構造に、多重量子井戸構造を埋め込んだものを用いた。
多重量子井戸構造には、(GaAs)44/(AlAs)16(20周期)MQW及び(GaAs)46/(AlAs)16(20周期)MQWの2つの試料を用いた。ここで、添え字は構成原子層数を表し、1原子層厚=0.283nmである。なお、以下は、実験例であり、異なる原子層数や、同様の種類の化合物半導体にも適用可能である。
図1は、GaAs/AlAS MQWを埋め込んだp-i-n試料構造と、そのポテンシャル構造の概略を示す説明図である。MQW層はノンドープのAl0.5Ga0.5As層(50nm)で挟まれている。p-層、及び、キャップ層として、Al0.5Ga0.5As層(1000nm)、n+層としてAl0.5Ga0.5As層(200nm)を有している。
試料にバイアス電圧を印加することにより、内部電場を制御した。
量子井戸構造における電場Fは、F=(Vb−V)/Lで与えられる。Vbはp-n接合の拡散電位、Vはバイアス電圧、Lはi層の長さを表す。
電場の印加が可能な試料における励起子エネルギーの評価には、光電流(Photocurrent)スペクトル測定法を用いた。
図2は、光電流スペクトル測定の光学系を示す説明図である。
100Wのハロゲンランプを分光器(Jobin-Yvon社製:HR320)で単色化し、試料に集光した。直流電源には、プログラマブル直流電圧・電流発生装置(ADVANTEST社製:R6144)を用いて、試料に電圧を印加し、内部電場を制御した。様々な電場強度における電流値は、高感度の電流計(東亜電波社製:PM-18C)で検出した。この電流計のアナログ出力の電圧信号を、デジタルボルトメーターを介して、コンピューターに取り込みデータ処理した。なお、すべての測定は10Kで行った。
本発明では、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の時間発展信号を得るために、光伝導アンテナを用いた光ゲート法を採用した。この測定法は、試料から放射されるTHz電磁波の電場振幅の時間分解信号を測定し、得られた信号をフーリエ変換することによって、各周波数での電場の振幅強度と位相情報を得るという手法である。
図3は、時間分解THz電磁波測定の光学系を示す説明図である。
フェムト秒パルスレーザーの光源として、半導体レーザーNd:YVO4レーザー(Coherent社製:Verdi)を励起光源としたモード同期Ti:sapphireレーザーシステム(Coherent社製:Mira-Seed)を用いた。このレーザーシステムでは、プリズム対による分散補償を行った結果、試料位置での光パルスのパルス幅は40fsであり、繰返し周波数は76 MHzであった。
このレーザーシステムから出射した光パルスは、ビームスプリッター(BS)によって、THz光源となる試料を励起するためのポンプ光と、検出器である光伝導アンテナ(ダイポールアンテナ)へと導かれるゲート光に分けられる。
ポンプ光は、光チョッパー(Newfocus社製:Model 3501)と光パルスの強度を調節するためのND(Neutral Density)フィルターを通り、レンズ(f=80mm)によって集光され、ヘリウム流動型クライオスタット(Oxford社製:MicrostatHe)中に設置されている試料に照射される。
一方、ゲート光は、時間遅延を与えるための可動式レトロリフレクターを通りNDフィルターを通過した後、レンズにより光伝導アンテナに照射される。
レーザーから放射される光パルスの繰り返しは76 MHzであるので、試料から放射されるTHz電磁波も同じ繰り返しで放射される。時間分解THz電磁波測定では、同じ波形のTHz電磁波が76MHzの繰り返しで到来することを利用して、ポンプ光とゲート光の間に光学的な時間遅延を設けて、THz電磁波の波形を計測する光ゲート方式を採用している。
すなわち、ゲート光を導く光路上の可動式レトロリフレクターを前後に移動させることにより光路長を変化させて、ゲート光が検出器に到達するタイミングをずらしながらTHz電磁波の振動電場の時間波形を計測する。
信号対雑音比(S/N比)を向上させるために、ダイポールアンテナからの信号を電流アンプ(Keithley428)を用いて前置増幅した後、ポンプ光に光チョッパーで2kHzの変調をかけて、参照信号をロックインアンプ(Princeton Applied Research 社製:Model 124A)に入力することで同期検波を行う。ロックインアンプにより増幅された信号は、デジタルマルチメータ(横河電機社製:Model7555)を介してコンピュータに送られ、また、光学遅延回路のコントローラ(Melles Griot 社製:Model 11 NSC 101)を通じて、可動式レトロリフレクターに装備したステッパー(MellesGriot 社製:Model 11 TSC 517)をコンピュータで制御することにより時間遅延を生じさせている。このようにして、振動電場の時間波形を計測した。
図4及び5は、測定に用いたGaAs/AlAs MQWにおける光電流スペクトルの測定結果を示すものであり、図4は、(GaAs)44/(AlAs)16MQW(20周期)を埋め込んだpin構造試料において、光電流スペクトルの電場依存性を示すイメージマップであり、図5は、(GaAs)46/(AlAs)16MQW(20周期)を埋め込んだpin構造試料において、光電流スペクトルの電場依存性を示すイメージマップである。
それぞれ、10Kで5kV/cmごとに測定を行った。各図で、虹色により光電流スペクトル強度を表している(赤色ほど強度が強く、紫色ほど強度が弱い)。また、図中の破線は、様々な電子-正孔バンド間遷移エネルギーの電場依存性を、伝達行列法を用いて計算した結果を表している。伝達行列法による計算において、GaAsの電子及び正孔の有効質量は、非特許文献18の値を用いた。
O.Madelung, Semiconductors: Date Handbook (Springer, Berlin, 2003)
計算結果は、図示の通り、高電場領域まで実験結果と非常によく一致した。
光電流スペクトルには、様々な電子及び正孔バンドから構成される励起子遷移による吸収ピークが観測されていて、電場の増大と共にエネルギーシフトしながら、ピーク強度が変化している。
これらのエネルギーシフトとピーク強度の変化は、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)に起因するものである。ピーク強度の変化は、QCSEによる電場印加時の電子・正孔包絡波動関数の非対称化により遷移確率が変化するためである。
図6は、(GaAs)44/(AlAs)16多重量子井戸構造におけるE1HH1励起子とE1HH2励起子の重なり積分値の電場依存性を示すグラフである。
(GaAs)44/(AlAs)16MQW(20周期)の試料において、E1HH1励起子とE1HH2励起子の遷移確率が電子と正孔の包絡波動関数の重なり積分値の2乗で与えられると仮定して、電場と共にどのように変化するのかを計算して図示した。
この計算結果から、量子数n=1の重い正孔(HH1)と量子数n=1の電子(E1)からなる励起子(E1HH1)というように、量子数が同じである電子-正孔バンド間遷移の遷移確率は低電場で高いが、電場の増加と共に減少し、E1HH2のように異なる量子数の電子-正孔バンド間遷移の遷移確率は、低電場で低く、高電場で高くなることがわかる。このことは、n=1とn=2の包絡波動関数の形を考えれば、容易に了解できる。
超短パルスレーザーを用いて、2つの励起子準位をコヒーレントに励起することで、励起子間の干渉による励起子量子ビートが生じる。励起子量子ビートの振動数、すなわち2つの励起子間のエネルギー差が、コヒーレントLOフォノンの振動数(エネルギー)に等しくなると、励起子量子ビートの縦分極が駆動力となり、コヒーレントLOフォノンが増強されると考えられる。
図7は、電場印加した多重量子井戸構造における各電子・正孔包絡波動関数の計算結果を示すグラフである。
(GaAs)44/(AlAs)16MQW(20周期)の試料では、図4に示したように、電場105kV/cm付近において、E1HH1励起子とE1HH2励起子のエネルギー差が、GaAs型LOフォノンエネルギー(36.8meV)とほぼ一致する。つまり、図7のように、n=1重い正孔とn=2重い正孔のエネルギー差がGaAs型LOフォノンエネルギーと一致している。
上記のことを踏まえた上で、時間分解THz電磁波信号の測定を行った。
ここで、時間分解THz電磁波測定において、E1HH1励起子とE1HH2励起子とのエネルギー差が、井戸層(GaAs層)のLOフォノンエネルギーに等しくなる印加電圧において、パルスレーザーのエネルギーをE1HH1励起子とE1HH2励起子の中心付近のエネルギーにあわせた。
(GaAs)44/(AlAs)16MQW(20周期)の試料において、電場が約105 kV/cmの時にE1HH1励起子とE1HH2励起子エネルギー差がLOフォノンエネルギーにほぼ等しくなるため、その中心付近のエネルギーである約1.55eVにパルスレーザーのエネルギーをあわせた(図4における黒線)。同様に、(GaAs)46/(AlAs)16MQW(20周期)の試料においては、電場が約120 kV/cmの時にE1HH1励起子とE1HH2励起子エネルギー差がLOフォノンエネルギーにほぼ等しくなり、E1HH1励起子とE1HH2励起子エネルギーの中心エネルギーである約1.54eVにパルスレーザーのエネルギーをあわせた(図5における黒線)。
図8及び9は、(GaAs)44/(AlAs)16MQWにおいて、種々の電場を印加した場合の時間分解THz電磁波信号と、そのフーリエ変換スペクトルを示すグラフであり、図10及び11は、(GaAs)46/(AlAs)16MQWにおいて、種々の電場を印加した場合の時間分解THz電磁波信号と、そのフーリエ変換スペクトルを示すグラフである。
励起光の強度は20mWとした。図8及び10に示されるように、2つのMQWにおけるTHz電磁波の測定結果から、0ps付近で早く緩和する信号と、それ以降の長い位相緩和時間を持つ振動構造が観測されていることがわかる。0ps付近の信号は、GaAs基板における過渡電流から生じたTHz電磁波であると考えられる。長い位相緩和時間を持つ振動構造はその時間周期が約110fsであった。この振動構造は、GaAsのLOフォノンエネルギーより見積もられる振動周期と一致し、また、電場の増大と共に振動数が変化しないことから、コヒーレントGaAs型LOフォノンによるものであると考えることができる。
これを明確にするために、時間領域の信号をフーリエ変換して振動数領域の信号にして示した図9及び11である。図から約8.8THz付近に鋭いピークが顕著に現れている。GaAs型LOフォノンの振動数が8.8THzであることからも、図8及び10に見られる長い振動構造はGaAs型LOフォノンからのTHz電磁波であると結論できる。
また、コヒーレントGaAs型LOフォノンからのTHz電磁波信号は、単純な指数関数的な減衰を示さず、約3ps付近で最大となり、その後減衰している。
フォノン−ポラリトン分散の群速度が振動数に依存するために、横光学(TO)フォノンとLOフォノンの間の振動数領域(レストストラーレンバンド)に近い振動数成分は、放射される前に一度物質内に蓄えられ、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波が時間的に遅れるとの報告もある(非特許文献9)。
そのために、多重量子井戸構造におけるコヒーレントGaAs型LOフォノンからのTHz電磁波も、単純な指数関数的減衰を示さないと考えられる。
また、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の電場依存性をより詳細に解析するために、各印加電場でのコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の積分強度をプロットした。
図12は、(GaAs)44/(AlAs)16多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波のフーリエ変換積分強度の電場依存性を示すグラフであり、図13は、(GaAs)46/(AlAs)16多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波のフーリエ変換積分強度の電場依存性を示すグラフである。
ここで、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の積分強度は、フーリエ変換スペクトルにおいて、6〜8 THzの周波数領域を積分して得た。また、光電流スペクトル測定の結果から見積もったE1HH1励起子とE1HH2励起子のエネルギー差を各電場においてプロットしたものを黒丸の印で示している。なお、図中の破線はGaAs型LOフォノンエネルギーである36.8meVを表している。
図より、E1HH1励起子とE1HH2励起子のエネルギー差がちょうどGaAs型LOフォノンエネルギーと一致する電場条件下において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の積分強度が顕著に増強されていることがわかる。このことから、E1HH1励起子とE1HH2励起子間の励起子量子ビートが駆動力となり、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波が増強されたと考えることができる。
なお、図13によると、(GaAs)46/(AlAs)16 MQWにおいて、E1HH1励起子とE1HH2励起子のエネルギー差がLOフォノンエネルギーと一致する電場と比べて、LOフォノンの積分強度のピークが高電場側に僅かにずれている。その原因としては、光励起キャリアによる電場のスクリーンニングが生じ、多重量子井戸構造の実効電場が減少したためと考えられる。
次に、E1HH1励起子とE1HH2励起子の励起子量子ビートが駆動力となりコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波が増強されていることを確かめるために、反射型時間分解ポンプ・プローブ法を用いて、励起子量子ビート及びコヒーレントLOフォノンの電場依存性を調べた。
図14は、種々の電場を印加した(GaAs)46/(AlAs)16MQWにおいて、反射型ポンプ・プローブ法を用いて観測された時間分解反射率変化信号のフーリエ変換スペクトルを示すグラフであり、図15は、得られたフーリエ変換スペクトルの電場依存性を示すイメージマップである。
図15では、虹色で光電流スペクトル強度を表している(赤色ほど強度が強く,紫色ほど強度が弱い)。また、白丸の印は、光電流スペクトルから得られた各サブバンド間エネルギー差の電場依存性を示す。
図14から、2〜4 THz領域に観測される大きなピークが、電場の増大と共に高振動数にシフトしていることがわかる。光電流スペクトルの電場依存性の結果から、このピークは、E1LH1励起子とE1HH1励起子間の励起子量子ビートであると同定される。
また、このE1LH1-E1HH1の励起子量子ビートの高振動数側に、弱いながら、電場と共に高振動数側にシフトする微弱なバンドが観測される。この微弱なバンドは、光電流スペクトルから同様に、E1HH2励起子とE1HH1励起子間の励起子量子ビートによるものであると同定される。
また、図15からも、E1HH2-E1HH1の励起子量子ビートの振動数が電場と共に高振動数側にシフトし、約115 kV/cmでLOフォノンエネルギーと一致していることがわかる。
図16は、(GaAs)46/(AlAs)16 MQWにおいて、時間分解反射率変化信号に観測されるLOフォノンのピーク強度の電場依存性を示すグラフである。
(GaAs)46/(AlAs)16MQWにおいて、反射型ポンプ・プローブ法を用いて観測された時間分解反射率変化信号を1ps以降の時間領域でフーリエ変換し、コヒーレントGaAs型LOフォノンのピーク強度を電場に対してプロットした。また、光電流スペクトル測定の結果から見積もったE1HH1励起子とE1HH2励起子のエネルギー差を各電場においてプロットしたものを、黒丸の印で示している。
図からわかるように、反射型ポンプ・プローブ法を用いて観測された時間分解反射率変化信号において、コヒーレントGaAs型LOフォノンは、E1HH2励起子とE1HH1励起子間の励起子量子ビートの振動数がLOフォノンの振動数に近づくと(印加電場が120kV/cm付近で)、共鳴的に増強されていることがわかる。
すなわち、E1HH2-E1HH1の励起子量子ビートが駆動力となり、コヒーレントLOフォノンが増強されていることが明確に示された。
次に、印加電場によるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の増強度を調べるために、図12及び13の縦軸を対数表示に改めた。すなわち、図17は、(GaAs)44/(AlAs)16多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波のフーリエ変換積分強度の電場依存性を示す片対数グラフであり、図18は、(GaAs)46/(AlAs)16多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波のフーリエ変換積分強度の電場依存性を示す片対数グラフである。
図17に示されるように、(GaAs)44/(AlAs)16MQWにおいて、電場が40kV/cmの時に比べ、115kV/cmにおけるLOフォノンの積分強度は約270倍増強されている。また、図18に示されるように、(GaAs)46/(AlAs)16MQWにおいては,電場が40kV/cmの時に比べ、130kV/cmにおけるLOフォノンの積分強度は約220倍増強されている。両試料とも、電場印加によってコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波は、200倍以上にも増強されることがわかる。
多重量子井戸構造に電場を印加することによって、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波が増強されるメカニズムとして、励起子量子ビートが駆動力となっているためと考えられる。この励起子量子ビートにおいて、励起エネルギーを2つの励起子エネルギーの中心付近にあわせたとき、励起子量子ビートの振動振幅が最大になることが知られている(非特許文献12)。
そこで、電場印加によるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の増強の原因をより詳細に調べるため、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波が最大となる電場で、時間分解THz電磁波信号の励起エネルギー依存性を測定した。
図19は、(GaAs)46/(AlAs)16MQWに120 kV/cmの電場を印加し、種々の励起エネルギーで励起した場合の時間分解THz電磁波信号を示すグラフであり、図20は、そのフーリエ変換スペクトルを示すグラフである。なお、励起光の強度は20mWとした。
図から明らかに、コヒーレントGaAs型LOフォノンからのTHz電磁波が、励起エネルギーによって変化していることがわかる。
励起エネルギーに対するコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波のふるまいを明らかにするために、図20に示したLOフォノンのピーク強度を励起エネルギーに対してプロットした。すなわち、図21は、(GaAs)46/(AlAs)16MQW(印加電場120 kV/cm)において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度の励起エネルギー依存性を示すグラフである。
ここで、図21(a)における実線は、光電流スペクトルから見積もったE1HH1とE1HH2励起子エネルギーを示している。また、図21(b)は、先に示した光電流スペクトルの電場依存性のイメージマップを示す。
図21(b)より、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の強度が、E1HH1励起子エネルギーとE1HH2励起子エネルギーの間でピークを示していることがわかる。
励起子量子ビートは、異なる2つの励起子状態を同時に励起することにより引き起こされるコヒーレンス現象である。そのため、励起子量子ビートが駆動力となりTHz電磁波が増強されているのならば、E1HH1励起子エネルギーとE1HH2励起子エネルギーの中心付近でコヒーレントフォノンからのTHz電磁波が最も強くなることが考えられる。
しかし、実験結果は中心付近よりも高い励起エネルギーで強くなっている。この理由の1つとしては、光励起キャリアによる電場のスクリーンニングが起き、実効電場が120 kV/cmよりも低くなっていることが原因として考えられる。他の要因としては、非特許文献19に示されているように、励起子量子ビートが駆動力となって、E1HH2励起子とE1HH1励起子の間で、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の誘導放出が起きているためとも考えられる。
R. Huber, B. A. Schmid, Y. Ron Shen, D. S. Chemla, and R. A.Kaindl, Phys. Rev. Lett., 96, 017402 (2006)
2準位系における誘導放出の場合、下位の順位におけるキャリア量と比べて、上位の準位のエネルギーに多数のキャリアが存在する時に誘導放出が生じることが知られている。(非特許文献20)
R. Loudon, The Quantum Theory of Light, (Oxford University Press,1983, New York)
そのため、コヒーレントLOフォノンからの励起エネルギー依存性において、E1HH2励起子エネルギー側にピークがシフトしたものとも考えられる。
電場を印加した多重量子井戸構造におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度が、どの程度増強されているかを見積もるために、電場を印加していない(GaAs)35/(AlAs)35MQW(50周期)におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度との比較を行った。
(GaAs)35/(AlAs)35MQW(50周期)におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度の励起光密度依存性は、励起光密度が1μJ/cm2のとき、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度は約1μWに達すると、すでに本発明者らによって報告されている(非特許文献11)。
ふたつの多重量子井戸構造((GaAs)44/(AlAs)16MQW(20周期)及び(GaAs)46/(AlAs)16 MQW(20周期))において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度が最も強く放射される電場印加の条件下で、励起光密度依存性を測定した。図22は、電場を印加した多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の積分強度の励起光密度依存性を示すグラフである。ここで、積分領域は8-10THzの周波数領域で行った。また、図中の破線は、励起光密度に対してTHz電磁波の強度が2乗で増加すると仮定したときの計算曲線である。
図からわかるように、励起光密度が0.7 μJ/cm2以下のとき、電場を印加した多重量子井戸構造におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度は、励起光密度に対して2乗で増加していることがわかる。
励起光密度が0.7 μJ/cm2以上になると、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度は2乗の曲線からはずれ、励起光密度に対して飽和する傾向を示している。
(GaAs)35/(AlAs)35MQW(50周期)の結果と比べると、飽和し始める励起光密度が高く、飽和傾向が小さいことがわかる。
また、(GaAs)35/(AlAs)35MQW(50周期)のコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度と比較すると、励起光密度が1μJ/cm2のとき、電場を印加した多重量子井戸構造におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度は2倍程度強くなっている。
ここで、多重量子井戸構造におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の振動振幅は、井戸層の全層数(周期数)に比例することがわかっている(非特許文献11)。すなわち、多重量子井戸構造におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度は、周期数の2乗に比例して強くなることを示している。
今回用いた電場を印加した多重量子井戸構造の周期数は20周期であり、(GaAs)35/(AlAs)35MQWは50周期であることから、実質的な増強度は励起光密度が1μJ/cm2のとき12.5倍ということになる。(GaAs)44/(AlAs)16MQW及び(GaAs)46/(AlAs)16 MQWにおいて、井戸層が50周期の試料を用いた場合には、励起光密度が1μJ/cm2のとき、10μWに達すると予想される。
以上より、多重量子井戸構造に電場を印加し、量子閉じ込めシュタルク効果を利用してサブバンド間エネルギーの差をGaAs型LOフォノンエネルギーに一致させることで、励起子量子ビートがコヒーレントLOフォノンの駆動力となり、多重量子井戸構造におけるコヒーレントGaAs型LOフォノンからのテラヘルツ電磁波の強度が200倍以上に増強されることが見出された。
また、p-i-n構造に埋め込まれた2種類の多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのテラヘルツ電磁波の強度の印加電場依存性から、電場を印加することでE1HH2-E1HH1の励起子量子ビートのエネルギーがコヒーレントLOフォノンのエネルギーと一致する時の測定結果と、電場を印加していない時の測定結果と比較すると、コヒーレントGaAs型LOフォノンからのテラヘルツ電磁波の増強度は200倍以上であることがわかった。
E1HH2-E1HH1の励起子量子ビートのエネルギーがコヒーレントLOフォノンのエネルギーと一致する印加電場の条件下において、コヒーレントLOフォノンからのテラヘルツ電磁波の励起エネルギー依存性から、E1HH2-E1HH1の励起子量子ビートの縦分極が駆動力となり、コヒーレントLOフォノンからのテラヘルツ電磁波が増強されることを見出した。
また、電場を印加していない(GaAs)35/(AlAs)35MQW(50周期)におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度の励起光密度依存性と、電場を印加した場合の多重量子井戸構造におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度の励起光密度依存性とを比較した結果、E1HH2-E1HH1の励起子量子ビートのエネルギーがコヒーレントLOフォノンのエネルギーと一致する印加電場の条件下において、励起光密度が1μJ/cm2のとき、電場を印加した多重量子井戸構造におけるコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度は2倍程度強くなっていることを見出した。
さらに、電場印加が可能な多重量子井戸構造の周期数が50周期になると、そのコヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度は、励起光密度が1μJ/cm2のとき、10μWに達すると予想される。
実験結果では示していないが、(GaAs)54/(AlAs)16 MQWにおいて、E2HH2とE2HH1間での瞬間的量子干渉でも、コヒーレントLOフォノンからのテラヘルツ電磁波の増強が確認されている。
この場合、励起子量子ビートの振動時間が短いため、励起子量子ビートが観測されなかった。すなわち、必ずしも励起子量子ビートが生じなくても、2つの励起子間の瞬間的量子干渉によっても、コヒーレントLOフォノンからのテラヘルツ電磁波の増強が確認された。
さらに、重い正孔励起子と軽い正孔励起子間の量子干渉を利用しても、テラヘルツ電磁波の増強が確認されている。この結果は、室温での測定結果なので、励起子量子ビートは観測できず、2つの励起子間の瞬間的な量子干渉によって、コヒーレントLOフォノンからのテラヘルツ電磁波が増強されたと考えられる。
本発明によると、比較的高温でも、コヒーレントフォノンからテラヘルツ電磁波を効率よく高強度で発生でき、例えば、GaAs/AlAs多重量子井戸構造では、10μW程度のTHz電磁波発生が可能である。このような強度増大は、各種センシングシステム分野における光源や通信用電磁波などに有用であり、産業上利用価値が高い。
GaAs/AlASMQWを埋め込んだp-i-n試料構造と、そのポテンシャル構造の概略を示す説明図 光電流スペクトル測定の光学系を示す説明図 時間分解THz電磁波測定の光学系を示す説明図 (GaAs)44/(AlAs)16MQW(20周期)を埋め込んだpin構造試料において、光電流スペクトルの電場依存性を示すイメージマップ (GaAs)46/(AlAs)16MQW(20周期)を埋め込んだpin構造試料において、光電流スペクトルの電場依存性を示すイメージマップ (GaAs)44/(AlAs)16多重量子井戸構造におけるE1HH1励起子とE1HH2励起子の重なり積分値の電場依存性を示すグラフ 電場印加した多重量子井戸構造における各電子・正孔包絡波動関数の計算結果を示すグラフ (GaAs)44/(AlAs)16MQWにおいて、種々の電場を印加した場合の時間分解THz電磁波信号を示すグラフ 同、フーリエ変換スペクトルを示すグラフ (GaAs)46/(AlAs)16 MQWにおいて、種々の電場を印加した場合の時間分解THz電磁波信号を示すグラフ 同、フーリエ変換スペクトルを示すグラフ (GaAs)44/(AlAs)16多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波のフーリエ変換積分強度の電場依存性を示すグラフ (GaAs)46/(AlAs)16多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波のフーリエ変換積分強度の電場依存性を示すグラフ 種々の電場を印加した(GaAs)46/(AlAs)16MQWにおいて、反射型ポンプ・プローブ法を用いて観測された時間分解反射率変化信号のフーリエ変換スペクトルを示すグラフ 同、フーリエ変換スペクトルの電場依存性を示すイメージマップ (GaAs)46/(AlAs)16 MQWにおいて、時間分解反射率変化信号に観測されるLOフォノンのピーク強度の電場依存性を示すグラフ (GaAs)44/(AlAs)16多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波のフーリエ変換積分強度の電場依存性を示す片対数グラフ (GaAs)46/(AlAs)16多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波のフーリエ変換積分強度の電場依存性を示す片対数グラフ (GaAs)46/(AlAs)16MQWに120 kV/cmの電場を印加し、種々の励起エネルギーで励起した場合の時間分解THz電磁波信号を示すグラフ 同、フーリエ変換スペクトルを示すグラフ (GaAs)46/(AlAs)16MQW(印加電場120 kV/cm)において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波強度の励起エネルギー依存性を示すグラフ 電場を印加した多重量子井戸構造において、コヒーレントLOフォノンからのTHz電磁波の積分強度の励起光密度依存性を示すグラフ

Claims (9)

  1. 量子構造におけるコヒーレントフォノンを用いてテラヘルツ電磁波を発生させる方法であって、
    量子井戸構造に電場を印加し、量子閉じ込めシュタルク効果を利用して、量子井戸層内の2つの励起子のエネルギーの差を電場で制御し、その両励起子間のエネルギーの差を、量子井戸層のコヒーレントLOフォノンのエネルギーに合わせることで、励起子量子ビートまたは励起子間の瞬間的量子干渉をコヒーレントLOフォノンの駆動力として作用させることによって、高振幅のコヒーレントLOフォノンを生成し、
    それによる分極の振動でテラヘルツ電磁波を発生させる
    ことを特徴とするコヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法。
  2. 超短パルスレーザーを用いて、量子井戸構造における井戸層内の2つの励起子の準位をコヒーレントに励起することで、その両励起子間の干渉による励起子量子ビートまたは励起子間の瞬間的量子干渉を生成する
    請求項1に記載のコヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法。
  3. 量子井戸構造が多周期の多重量子井戸構造であり、
    コヒーレントLOフォノンをその多重量子井戸層に閉じ込めることで散乱過程を抑制する
    請求項1または2に記載のコヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法。
  4. 多重量子井戸構造における原子層の周期数によって、テラヘルツ電磁波の出力強度を制御する
    請求項1ないし3に記載のコヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法。
  5. 多重量子井戸構造の原子層がGaAs/AlAsである
    請求項1ないし4に記載のコヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法。
  6. GaAs/AlAsの多重量子井戸構造が、n-GaAs(001)基板上に分子線エピタキシャル成長させたp-i-n構造に埋め込まれた構成である
    請求項5に記載のコヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法。
  7. GaAs/AlAsの多重量子井戸構造が、ノンドープのAl0.5Ga0.5As層の薄膜で挟まれ、p-層及びキャップ層としてAl0.5Ga0.5As層、n+層としてAl0.5Ga0.5As層を有する
    請求項6に記載のコヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法。
  8. GaAs/AlAsの多重量子井戸構造が、n-GaAs(001)基板上に分子線エピタキシャル成長させたm-i-s構造に埋め込まれた構成である
    請求項5に記載のコヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法。
  9. GaAs/AlAsの多重量子井戸構造が、ノンドープのAl0.5Ga0.5As層の薄膜で挟まれ、半導体層としてn-GaAs(001)基板、メタル層としてショットキー接合させたCr半透明電極またはAu-Cr半透明電極を有する
    請求項8に記載のコヒーレントフォノンによるテラヘルツ電磁波発生方法。
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