JP2007296807A - インクジェット記録方法、記録装置、該装置用インクセットおよび記録物 - Google Patents

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Abstract

【課題】紫外線硬化型インクの適切な選定およびエネルギ付与を行うようにすることで、記録内容に応じた良好な画質および画像堅牢性を維持しつつも、ランニングコストの増加を防止する。
【解決手段】ブラックインクを紫外線硬化型インクとし、カラーインクを非紫外線硬化型インクとすることで、ロゴ,模様,枠等の共通データと、住所,明細内容,バーコード等の可変データとが同時に形成される帳票用紙などの印刷において良好な画質および画像堅牢性を維持しつつも、ランニングコストの増加抑制することが可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録方法、記録装置、該装置用インクセットおよび記録物に関するものである。
インクジェット記録方式はインクを記録ヘッドの吐出口から吐出し、紙や樹脂フィルム、あるいは布帛や金属などの記録媒体に所望の画像を形成する方式である。このように記録ヘッドが記録媒体に対して非接触に記録動作を行うため、静粛性に優れ、記録速度が速く、高密度記録が可能であってカラー化が容易であるなどの利点を有している。また、インクジェット記録方式は版を用いない印刷方式であるので、特に多品種少量印刷を行う産業用途の印刷分野にも適しており、かかる分野への応用が期待されている。
産業用印刷分野にインクジェット記録方式を応用する場合には種々の態様が考えられる。例えば各種明細書や伝票等の帳票用紙に対して印刷を行う場合には、共通データ部であるロゴ,模様,枠等は既存の印刷方式で作成する一方、住所や明細内容、バーコードなどの可変データ部はインクジェット記録方式で作成することが挙げられる。しかし、印刷業者は様々な企業等の発注者から業務を請負うことが多い。そのため、発注者毎のロゴや模様等の入った様々な専用紙を用意する一方、発注者ごとに専用紙を交換する作業が必要となるので、印刷作業が非常に煩雑となる。
そこで無地の用紙を用い、ロゴや模様等の共通データ部と文字やバーコード等の固定データ部とを区別せず、すなわちこれらの全体を1つの画像として取り扱うことで、インクジェット記録方式によりフレキシブルに印刷を行う方が有利である。ここで、帳票用紙のロゴ,模様等は、記録デューティが比較的低いものである場合が多い。一方、固有の重要な情報が記載される文字,バーコード等の可変データ部は、人が視認する対象もしくは機械の読み取り対象となるものであって、印刷の鮮明さが求められることから、ブラックインクなどで高デューティの記録が行われることが多い。
現在、インクジェット記録方式に適用されるインクは水性のものが主流であり、水性インクを用いると帳票用紙に文字,バーコード等を鮮明に記録することができる。しかしながら、水性インクには記録後の耐擦過性や耐水擦過性などの点で記録物の安定性にやや劣るという問題がある。しかし特に帳票用紙などは、人が様々な環境で取り扱う頻度が高いものであることから、記録物の安定性が求められる。そこで、インクの成分を調整し、記録媒体に対するインクの浸透性を向上すること、すなわちインクが記録媒体内部に十分に浸透した状態で定着するようにすることで、耐擦過性や耐水擦過性を改善することも考えられる。しかし、記録媒体内部へのインク浸透量が大きくなる分、記録媒体表面に残るインク色材の量が減少し、形成した文字の濃度が低下したり、バーコードなどの読取性が低下したりしてしまうという問題が生じる。
かかる問題を解決する方法として、特許文献1や特許文献2に開示の技術を適用することが考えられる。これらの文献には、紫外線硬化型インクを使用することで、インク吸収性のない媒体に記録を行っても耐擦過性が高く、アルコール耐性も良好にし得るインクジェット記録方法が開示されている。また、特許文献3には、主走査の過程で紫外線硬化型インクを吐出することで1ラインずつ記録を行う記録ヘッドを用いるとともに、記録ヘッドの両側に紫外線照射装置が設けられた構成が開示されている。そして、紫外線照射装置の紫外線照射範囲を記録ヘッドの印字幅の2倍以上とすることにより、インクを確実に硬化させることができることが記載されている。
特開平11−277725号公報 特開2000−141616号公報 特開2004−1326号公報
近年では、カラー画像を形成する記録装置が主流となっており、インクジェット記録装置においても複数の色(ブラックのほか、シアン、マゼンタおよびイエローなど)のインクを用いて様々な色を再現するものが多い。一方、紫外線の吸収量は記録媒体に形成される画像の色の濃度等によって異なるので、各色のインク毎に好ましい硬化状態を得るための紫外線のスペクトル,強度,照射時間なども異なってくる。従って、上記各特許文献に開示されたような技術を単純に適用し、全色について紫外線硬化型のインクを適用し、さらにこれに対応するべく紫外線照射系を構成することは、記録装置の大型化をもたらすだけでなく、電力消費量やインクコストなどランニングコストの増大を招くことになる。
本発明は、紫外線などのエネルギで硬化するインクの適切な選定およびエネルギ付与を行うようにすることで、記録内容に応じた良好な画質および画像堅牢性を維持しつつも、ランニングコストの増加や装置の大型化を防止することを目的とする。特に本発明は、ロゴ,模様,枠等の共通データと、住所,明細内容,バーコード等の可変データとが同時に形成される帳票用紙などの印刷に適したインク選定を行い、その選定に応じた適切なエネルギ付与を行い得るようにするものである。
そのために、本発明インクジェット記録方法または装置は、エネルギの付与により硬化するブラックインクと、前記エネルギの付与によって硬化しない2色以上のカラーインクとを用いて記録媒体上に画像形成を行う工程または手段と、
当該画像形成後に前記エネルギを付与する工程または手段と、
を具えたことを特徴とする。
ここで、前記エネルギ付与の後に、前記エネルギの付与により硬化する処理液を付与し、その後にさらに前記エネルギを付与するものとすることができる。
また、本発明は、上記インクジェット記録方法によって記録が行われた記録物、上記インクジェット記録方法に適用され、前記ブラックインクと、前記2色以上のカラーインクとを含むインクセット、さらには前記エネルギの付与により硬化する処理液をさらに含むインクセットに存する。
本発明によれば、ブラックインクを紫外線などのエネルギで硬化するインクとし、カラーインクを非エネルギ硬化型インクとすることで、ロゴ,模様,枠等の共通データと、住所,明細内容,バーコード等の可変データとが同時に形成される帳票用紙などの印刷において良好な画質および画像堅牢性を維持しつつ、ランニングコストの増加や記録装置の大型化を防止することができる。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
(記録装置)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)の一例を示す模式的側面図である。本例の記録装置は、記録部102に対し、搬送ローラ106によって矢印で示す媒体搬送方向に走行する搬送ベルト107を具え、その搬送ベルト107上に記録媒体101を担持させることにより、記録媒体101の搬送を行う。
記録部102には、4本のインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)103A〜103Dが設けられている。本例の記録ヘッド103A〜103Dは、搬送される記録媒体101に対して記録を行うべく、搬送方向に垂直な方向に、記録媒体101の全幅以上の範囲にわたって吐出口を配列してなるフルラインヘッド形態のものであり、搬送方向に沿って並置されている。ここで、記録ヘッド103Aはブラック(K)のインクを吐出するものであり、記録ヘッド103B、103Cおよび103Dは、それぞれ、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを吐出するものである。
なお、これらの記録ヘッド103A〜103Dに対しては、インク供給源であるインクタンク120A〜120Dからチューブ等を介して対応する色のインクが供給される。また、記録ヘッド103A〜103Dとしては、例えばインクを吐出するために利用されるエネルギとしてインクに膜沸騰を生じさせる熱エネルギを発生する素子を有したものを用いることができる。さらに、記録媒体の最大幅に対応した長さにわたって記録を可能とする構成としては、それぞれ単体の記録ヘッドで当該長さを満たすものであってもよいし、複数の組合せによってその長さを満たす構成であってもよい。
媒体搬送方向上、記録部102の下流側には硬化処理部104があり、ここには紫外線を照射するランプ105が設けられている。すなわち、搬送される記録媒体101に対しては、記録部102において記録ヘッド103A〜103Dにより記録(インク吐出)が行われて画像が形成され、次いで、硬化処理部104においてランプ105により紫外線照射が行われることでインク硬化処理が施される。ここで、本実施形態のランプ105の仕様および駆動条件と、これらに対応した装置の駆動条件とは、記録ヘッド103Aが吐出するブラックインクに適したものとなるように選定されている。
なお、記録ヘッド103A〜103Dの並び順は適宜定め得ることは言うまでもない。またブラックのインクの吐出後に硬化処理が施されるものであればよいのであって、硬化処理部104は、図示の例のように記録部102より下流側に設けられるのではなく、例えば記録ヘッド103Aと記録ヘッド103Bとの間に介挿されるものでもよい。加えて、インク硬化処理部の前段に、吐出されたインク中の溶剤を蒸発させる乾燥工程を実施する手段を設けることも好ましい。
図2は、本発明を適用可能な記録装置の他の例を示す模式的側面図である。図2の装置は、図1の装置構成に対して、さらに次の要素を付加したものである。
すなわち、図2の装置では、媒体搬送方向上、硬化処理部104の下流側に処理液付与部206が設けられ、ここには紫外線硬化型処理液を吐出する処理液用ヘッド203が配置されている。処理液用ヘッド203に対しては、処理液タンク220からチューブ等を介して紫外線硬化型処理液(S)が供給される。また、処理液付与部296のさらに下流側には硬化処理部208があり、ここには紫外線を照射するランプ209が設けられている。このランプ209の仕様および駆動条件等は、処理液用ヘッド203が吐出する処理液に適したものとなるように選定されている。
なお、処理液を付与するための手段としては、塗布等により行うものとすることもできる。しかしながら、必要部位に必要量を付与でき、また記録ヘッドと同様の構成のものを採用できることから、本実施形態のようにオンデマンドで吐出を行うインクジェットヘッド型のものとすることが好適である。
(インク等)
本発明に好ましく用いられるインクセットの各色インクや処理液、およびそれぞれの組成等について説明する。
ブラックインクは、帳票用紙や伝票等の印刷においては、文字,バーコードなど可変データをなす重要な画像情報の記録に使用される。このため本実施形態では、色材が記録媒体表面に多く残留し、かつ堅牢性も高い顔料成分を含み、かつ光重合開始剤,紫外線硬化型樹脂化合物を含んだインクを用いる。これにより、記録媒体上に定着した色材が画像濃度向上に寄与するとともに、図1および図2に示したような装置での紫外線硬化処理によって記録物の擦過性,耐水擦過性も良好なものとなる。
カラーインクは、本実施形態では、色材として顔料成分を含み、さらに分散剤として高分子分散剤を含むものを用いる。これは、記録媒体に付与されてインク溶剤が蒸発した後、高分子分散剤がバインダとなるため擦過性が向上するので好ましい。また、カラーインクは、帳票用紙や伝票等の印刷においては、ロゴ,模様等の比較的デザイン性の高い部分や、ハッチングで表現される背景部分などの記録に使用され、これらの画像情報は記録デューティが比較的低いことが多い。また、可変データ部に比して印刷の鮮明さの要求は低いので、本実施形態では紫外線硬化処理を受容する成分を含まない低廉なインクを用いる。
しかしカラーインクであっても、比較的高いデューティで記録される場合や、相当の堅牢性が求められる場合もある。これらの場合に有効であるのが、図2に示したような構成である。すなわち、画像形成後に紫外線硬化型処理液を当該画像形成部分に付与し、紫外線照射を行って硬化処理を施すことにより、処理液がカラー画像形成部分の保護層となるので、堅牢性が向上する。なお処理液としては、紫外線硬化型インクから色材成分を除去したもの、あるいは紫外線硬化型インクの色材成分を同量の水または溶剤で置換したものなどでなるクリアインクとすることが、硬化性やインクジェット適性の観点から好ましい。
本発明に使用される色材は、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、油性染料および顔料が挙げられる。使用する用途にあわせて、耐候性を考慮した場合には、ブラックインクおよびカラーインクともに水性の顔料インクがより好ましい。これらの色材成分の含有量は液媒体成分の種類やインクに要求される特性等に依存して決定されるが、一般的にはインク全重量に対して0.2〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%を占める割合である。
本発明のインクに使用される水溶性高分子樹脂は、アルカリ可溶型の水溶性樹脂であり、重量平均分子量は1000から30000、好ましくは3000から15000の範囲である。重量平均分子量が30000を越える樹脂では分散体の粘度が大きくなってしまい、インクジェット記録方式に使用した場合、吐出特性が低下することがある。また、重量平均分子量が1000より小さいと立体障害による十分な分散効果が得られないため、分散安定性に劣ることになる。そこで具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アルリル酸のアルキルエステル、メタクリル酸のアルキルエステル等の疎水性モノマーと、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸及びその脂肪族アルコールエステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、及びそれらの誘導体、等の親水性モノマーからなる共重合体及びそれらの塩等が用いられる。共重合体はランダム,ブロック,グラフト等のいずれの構造を有していてもよく、酸価は、80から430、好ましくは100から300の範囲である。本発明のインク中に使用される水溶性高分子樹脂としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性ポリマー、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸等の水溶性樹脂も使用することが可能である。しかし、アルカリ可溶性の水溶性樹脂の方が分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であるという利点がある。これらの水溶性高分子分散樹脂の使用量は、顔料の重量;分散剤の重量=10:6〜10:0.5の範囲である。適性な比率は選択した顔料と水溶性高分子樹脂とを用いて実験的に決定されるが、顔料に吸着せず溶解している樹脂の量は、インク中で2重量%以下であることが良い。上記アルカリ可溶型樹脂を水に可溶化させる塩基性物質としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンやアンモニア等の有機アミン、あるいは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基類を用いることが可能である。最適な塩基種は選択した顔料、分散剤の種類によって異なるが、不揮発性で安定、かつ保水性の高いものが好ましい。用いる塩基の量は基本的には高分子分散剤の酸価から計算される量から、それを中和するに必要な塩基量としてそれぞれ用いられる。場合によっては、酸の当量を上回る量の塩基を用いる場合がある。それは、分散性向上、インクのpH調整、記録性能の調整、保湿性の向上などの目的で行う。
本発明で使用可能な有機溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレンまたはオキシプロピレン付加重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類、チオジグリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、トリエチレングリコールジメチル(またはジエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(またはジエチル)エーテル等の多価アルコール類の低級ジアルキルエーテル類、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン,1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記有機溶剤の含有量は、一般にはインクの全重量に対して1〜50重量%、好ましくは2〜30%の範囲である。上記のごとき有機溶剤は単独でも混合物としても使用できるが、最も好ましい液媒体組成は、水と1種以上の有機溶剤からなり、該溶剤が少なくとも1種以上の水溶性高沸点溶剤、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールを含有するものである。
また、本発明に使用されるインクは、不純物を除去するために洗浄、精製を行ってから使用した方が好ましい。市販の顔料は、有機、無機の不純物を多量に含有しており、これら不純物は、ノズル目詰まり、コゲーション、保管安定性、記録信頼性等に悪影響を及ぼすため、これらを除去するために、洗浄、精製をして用いることが好ましい。洗浄方法・精製方法としては、濾過、遠心分離、分離膜法、イオン交換樹脂処理法、逆浸透法、活性炭法、ゼオライト法、水洗、溶剤抽出等がある。洗浄、精製は、原料混合前、分散液作製後、インク作製後に行うか、あるいは複数の段階で行ったがよい。
さらに、本発明で用いられる光重合開始剤は、184nm〜450nm程度の領域の紫外線を吸収しラジカルまたはイオンを生成してオリゴマー、モノマーの重合を開始させるものである。本発明の反応液に用いられる重合開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ベンジル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ポリ塩化ポリフェニル、ヘキサクロロベンゼン等が挙げられ、好ましくは、イソブチルベンゾインエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムである。また、Vicure10、30(Stauffer Chemical社製)、Irgacure184、651、2959、907、369、1700、1800、1850、819(チバスペシャルティケミカルズ社製)、Darocure1173(EM Chemical社製)、QuantacureCTX、ITX(Aceto Chemical社製)、Lucirin TPO(BASF社製)の商品名で入手可能な重合開始剤も使用することができる。光重合開始剤のインク中での含有量は、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜3重量%とすることができる。
紫外線硬化型樹脂化合物は、分子量500〜10000程度の範囲を持つオリゴマーと光重合性モノマーとを含有するものであることが塗膜の性能上好ましいが、どちらか一方であってもよい。オリゴマーは、単官能あるいは多官能の重合性化合物が使用できる。その中でも、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有しているものが好ましく、紫外線照射によりモノマー等と重合し塗膜を形成する。特にポリオールアクリレート、エポキシアクリレート、ピペラジンエチルアクリレート、ジアクリロイルエチルピペラジンからなる化合物群は水溶性、紫外線硬化速度、塗膜物性の面で好適である。モノマーとしては低分子ポリオールのアクリレート構造を有しているものが好ましい。具体的には、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、アクロイルモルホリン、2−フェノキシエチルアクリレート、ジペンタエリストールポリアクリレート、ジペンタエリストールポリアクリレート等が好ましい。インクジェット方式により塗工液を被記録媒体に塗布する場合、こうした光重合性化合物の添加量は5〜50%が塗膜特性、吐出特性の点から好ましい。
なお、本発明で使用される色材、光開始剤、紫外線硬化型樹脂化合物等の成分は、上述のものに限られず、その他公知のものを適宜使用しても差し支えない。
(紫外線照射ランプ)
紫外線照射ランプは、点灯中で水銀の蒸気圧が1〜10Paである低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、蛍光体が塗布された水銀灯などが好ましい。これら水銀ランプの紫外線領域の発光スペクトルは、184nmから450nmの範囲である。水銀ランプには、メタルハライドランプ、圧水銀灯、超高圧水銀灯、クセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、UVレーザなどが実用されており、市販されているものを使用し実施することができる。
光源は、用いる光重合開始剤の吸収波長・感度にも合わせて適宜選択され得る。また、必要な紫外線強度は、2〜50mW/cmの程度が好ましい。さらに、紫外線の積算照射量ないし吸収量が不足すると、インクの記録媒体への付着力が十分とならなくなる。よって、紫外線照射ランプ105(図2の構成ではさらに紫外線照射ランプ107)の仕様および駆動条件、さらには、好ましい照射時間を得るための装置の駆動条件(記録媒体搬送速度など)は、ブラックインク(図2の構成ではさらに処理液)の濃度や、これに用いられている光重合開始剤の成分などに応じて適切に選択される。
(実施例1)
ブラックインクの作製
スチレン/アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(ガラス転移温度74℃、酸価200、重量平均分子量8000)の水酸化カリウム溶液(中和率110%、樹脂固形分2.5部)80部にエチレングリコールを5部加え、この溶液に純水で洗浄したカーボンブラック(MA−6,三菱化学製)15部を添加した後、サンドミルを用いて分散し、水性分散体を作成した。この分散体の固形分は約17%であった。この分散体を用いて下記組成としたものを実施例1のブラックインクとした。
ブラックインクの組成
上記分散体 40部
水溶性紫外線硬化型樹脂モノマー(アクリロイルモルホリン) 15部
水溶性紫外線硬化型樹脂オリゴマー 5部
(ジアクリロイルエチルピペラジンオリゴマー)
光重合開始剤 3部
(イルガキュア2959、チバスペシャルケミカルズ社製)
アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製) 0.5部
水 残部
カラーインクの作製
スチレン/アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(ガラス転移温度63℃、酸価250、重量平均分子量10000)の水酸化カリウム溶液(中和率110%、樹脂固形分2.5部)80部にエチレングリコールを5部加え、この溶液にC.I.ピグメントシアン15:3を15部添加した後、サンドミルを用いて分散し、水性分散体を作成した。この分散体の固形分は約17%であった。この分散体を用いて下記組成としたものを実施例1のシアンインクとした。
スチレン/アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(ガラス転移温度74℃、酸価150、重量平均分子量9000)の水酸化カリウム溶液(中和率110%、樹脂固形分2部)80部にエチレングリコールを5部加え、この溶液に純水で洗浄したC.I.ピグメントレッド122を15部添加した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散を行い、水性分散体を作成した。この分散体の固形分は約16%であった。この分散体を用いて下記組成としたものを実施例1のマゼンタインクとした。
スチレン/アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(ガラス転移温度74℃、酸価200、重量平均分子量8000)の水酸化カリウム溶液(中和率110%、樹脂固形分2.5部)80部にエチレングリコールを5部加え、この溶液に純水で洗浄したC.I.ピグメントイエロー93を15部添加した後、サンドミルを用いて分散し、水性分散体を作成した。この分散体の固形分は約17%であった。この分散体を用いて下記組成としたものを実施例1のイエローインクとした。
カラーインク組成
上記分散体(シアン、マゼンタ、イエローの各々について) 40部
エチレングリコールモノブチルエーテル 15部
グリセリン 5部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 0.5部
アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製) 1部
イオン交換水 残部
画像形成
図1の記録装置において、記録ヘッド103A、103B、103Cおよび103Dから、それぞれ、上記組成のブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのインクを吐出させて画像を形成し、その後紫外線照射を行った。
画像の内容は、ブラックインクで文字およびバーコードを記録し、各カラーインクで20%の記録デューティの模様を形成した帳票である。UV照射は、I300MB発光体ユニット、P300電力供給、および“D”バルブを備え、200〜450nmの放射線を与えるFusion UVモデルF305紫外線ランプ(FusionUV社製)を用いて実施した。紫外線の照射強度は約100mJ/cmであり、さらに、十分な硬化が生じる所要の紫外線の積算照射量を得るために、約5sの照射時間が得られるようにした。
(実施例2)
インクの作製
ブラックインクおよびカラーインクとも、実施例1に示したものを作製した。
処理液の作製
実施例1のブラックインク組成において、分散体を同量の水に置換したものを実施例2の処理液とした。
画像形成
図2の記録装置において、記録ヘッド103A、103B、103Cおよび103Dから、それぞれ、上記組成のブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのインクを吐出させて画像を形成する一方、ヘッド203からは上記組成の処理液が付与されるようにした。また、画像形成後および処理液付与後に、それぞれ、ランプ105および209により紫外線照射を行った。
画像の内容は、ブラックインクで文字およびバーコードを記録し、各カラーインクで60%の記録デューティの模様を形成した帳票である。また、ランプ105および109の仕様および駆動条件、並びに記録媒体の搬送条件は実施例1と同様である。
(比較例1)
実施例1のブラック分散体を用い、組成は実施例1のカラーインクの組成と同じものを作製して比較例1のブラックインクとした。カラーインクは実施例1のカラーインクを使用した。そして、これらのインクを図1の装置に適用して実施例1と同じ画像を形成する一方、ブラックインクとして紫外線硬化型のものを採用しなかったことに伴い、ランプ105による紫外線照射を行わなかった。
(比較例2)
各色インクについて、比較例1と同じインクを用いた。そして、これらのインクを図1の装置に適用して実施例2と同じ画像を形成し、ランプ105による紫外線照射を行わなかった。これは、図2の記録装置に対して比較例1のインクを適用して実施例2と同じ画像を形成する一方、紫外線硬化処理および処理液付与を全く行わなかった場合に等しい。
(堅牢性評価)
以上の実施例1、実施例2、比較例1および比較例2について、耐擦過性、耐水擦過性およびバーコード読取性を項目として、形成画像の堅牢性の評価を行った。
ここで、「耐擦過性」については、記録物である形成画像をキムワイプ(クレシア社製)で擦り、その結果、擦れ跡などの汚損が視認されたか否かで評価した。「耐水擦過性」については、記録物である形成画像を水で濡らしたキムワイプで擦り、その結果、擦れ跡などの汚損が視認されたか否かで評価した。「バーコード読取性」については、ブラックインクで形成されたバーコードを水で濡らしたキムワイプで擦った後、検証機(LASERCHEKII;富士電機冷機社製)で読み取りを行い、バーコードを認識できたか否かで評価した。
表1はその評価結果をまとめたものである。
Figure 2007296807
この表に示すように、実施例1および実施例2のいずれにおいても、ブラックインクで形成された部分およびカラーインクで形成された部分に関し、すべての評価項目について良好な結果が得られた。特に、実施例2では、カラーインクで形成された部分は比較的高デューティであるが、図2の装置構成を適用し、処理液を付与してから紫外線を照射することで硬化処理を施したので、当該カラー部分についても、対擦過性および耐水擦過性ともに良好であった。
比較例1では、カラーインクで形成された部分については低デューティであるために耐擦過性および耐水擦過性については問題がなかったが、ブラックインクで形成された部分についてはすべての評価項目について劣っていた。また比較例2では、ブラックインクで形成された部分およびカラーインクで形成された部分とも、すべての評価項目について劣っていることが確認された。
以上のことから、カラーインクで形成される部分の記録デューティが比較的低くければ、視覚もしくは光学的に情報が認識される固有データ部分の記録に関与するブラックインクのみを紫外線硬化型インクとしても問題がないことが確認された。すなわち、全色インクに関して紫外線硬化型インクを用い、これに応じて紫外線照射系を構成しなくても足りるため、紫外線照射系の大型化や消費電力量およびインクコストの増大を抑制できることになる。
また、カラーインクで形成される部分の記録デューティが比較的高い場合でも、図2のような装置構成を採用し、処理液を付与してから紫外線を照射して硬化処理を施すことで、堅牢性の高い記録物を得ることができる。すなわち、全色インクに関して紫外線硬化型インクを用いることなく、例えば色材(顔料分散体)以外はブラックインクと同じ組成の処理液を1つだけ用意して、これを必要に応じて付与するようにすれば、紫外線照射系の大型化や消費電力量およびインクコストの増大を抑制できる。
(その他)
なお、上述した記録装置の構成では、インクを吐出するために利用されるエネルギとしてインクに膜沸騰を生じさせる熱エネルギを発生する素子を有した記録ヘッドを用いるものとした。しかしピエゾ振動板など通電に応じ機械的エネルギを発生することでインクを吐出させる素子を有した記録ヘッドを用いるものでもよい。また、それらのような所謂オンデマンド型のインク吐出方式を採用するものだけでなく、荷電量制御型やスプレイ方式を利用したコンティニュアス型のインク吐出方式を採用したものでもよい。
また上例では、記録媒体の最大幅に対応した長さにわたって記録素子を整列させてなる記録ヘッドを用いる一方、この記録ヘッドに対し記録媒体を搬送(副走査)させる過程でインク吐出を行うことにより記録を行う所謂ラインプリンタ形態のものを採用した。しかし本発明は、記録ヘッドの主走査と記録媒体の搬送(副走査)とを繰り返しながら記録を行う所謂シリアルプリンタ形態の装置にも適用可能である。
さらに、上例ではカラーインクとしてシアン、マゼンタおよびイエローの3色のインクを用いる場合に本発明を適用した実施形態について説明した。しかしカラーインクの種類および色はこれに限られないのは勿論である。
加えて、上例では全色インクによる画像形成後に硬化処理が施されるものとしたが、要は所要色のインクの吐出後に硬化処理が施されるものであればよいのであって、硬化処理部を適宜の部位に設け得ることは言うまでもない。また、硬化処理部は複数段設けられていてもよい。さらに、硬化処理部の前段に、吐出されたインク中の溶剤を蒸発させる乾燥工程を実施する手段を設けることも好ましい。
また、図2のような装置構成を適用した場合、記録装置側もしくはこれに対して画像データを供給するコンピュータ等のホスト装置側において画像データの判別を行い、カラーインクの記録デューティの高低に応じて、処理液付与の有無およびランプ109による紫外線照射処理の有無を定めるようにすることができる。
さらに、図2の構成ではインク吐出による画像形成後に処理液が付与される。しかし、インクと適切に混合することで、エネルギの付与による硬化処理を受容できるようにするものであれば、インク吐出前に予め処理液が吐出されるような構成であってもよい。また、処理液は形成された画像の所要部分にのみ付与されるものでも、記録媒体全体に付与されるものでもよい。
さらに加えて、紫外線硬化型インクと紫外線照射ランプとの組合せを例示したが、用いられるエネルギは紫外線に限られず他のものであってもよく、またこれにあわせてインクの組成を調整し得ることは勿論である。例えば、インクを放射線硬化型、電子線硬化型とし、エネルギとして放射線、電子線を用いることも可能である。
本発明を適用可能なインクジェット記録装置の一例を示す模式的側面図である。 本発明を適用可能なインクジェット記録装置の他の例を示す模式的側面図である。
符号の説明
101 記録媒体
102 記録部
103A〜103D インクジェット記録ヘッド
104、208 硬化処理部
105、209 紫外線照射ランプ
106 搬送ローラ
107 搬送ベルト
120A〜120D インクタンク
203 処理液用ヘッド
206 処理液付与部
220 処理液タンク

Claims (14)

  1. エネルギの付与により硬化するブラックインクと、前記エネルギの付与によって硬化しない2色以上のカラーインクとを用いて記録媒体上に画像形成を行う工程と、
    当該画像形成後に前記エネルギを付与する工程と、
    を具えたことを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記ブラックインクは、色材としての顔料のほか、光重合開始剤および紫外線硬化型樹脂化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記カラーインクは、色材としての顔料のほか、高分子分散剤を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記エネルギは紫外線であり、前記エネルギ付与工程は紫外線照射を行う工程であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記エネルギ付与工程の後に、前記エネルギの付与により硬化する処理液を付与する工程と、当該処理液の付与後にさらに前記エネルギを付与する工程とを具えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記処理液は、前記ブラックインクから色材成分を除去した、または色材成分を同量の水または溶剤で置換した組成を有することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録方法。
  7. 少なくとも前記カラーインクで形成される部分に前記処理液が付与されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記カラーインクによる記録デューティの高低に応じて処理液の付与およびこれに続くエネルギ付与の有無が定められることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記処理液付与工程では、インクを吐出するために用いられるインクジェットヘッドと同等のインクジェットヘッドを用いて前記処理液を付与することを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記エネルギの付与に先立って、前記記録媒体上の液体を乾燥させる工程をさらに具えたことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  11. エネルギの付与により硬化するブラックインクと、前記エネルギの付与によって硬化しない2色以上のカラーインクとを用いて記録媒体上に画像形成を行う手段と、
    当該画像形成後に前記エネルギを付与する手段と、
    を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
  12. 請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のインクジェット記録方法によって記録が行われた記録物。
  13. 請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のインクジェット記録方法に適用され、前記ブラックインクと、前記2色以上のカラーインクとを含むことを特徴とするインクセット。
  14. 前記エネルギの付与により硬化する処理液をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のインクセット。
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