JP2007293951A - 回折素子、対物レンズユニット、光ピックアップ及び光ディスク装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、耐久性を向上することができる。
【解決手段】本発明は、回折素子20は、光ビームが通過しない光学外領域EOに、ベース層20C及びカバー層20Dが嵌合するように上層剥離防止パターンPPaを設けるようにする。
【選択図】図10
【解決手段】本発明は、回折素子20は、光ビームが通過しない光学外領域EOに、ベース層20C及びカバー層20Dが嵌合するように上層剥離防止パターンPPaを設けるようにする。
【選択図】図10
Description
本発明は回折素子の回折素子、対物レンズユニット、光ピックアップ及び光ディスク装置に関し、例えば光ディスク装置に適用して好適なものである。
近年、光ディスク装置においては、広く普及しているCD(Compact Disc)方式、DVD(Digital Versatile Disc)方式に加え、BD(Blu-ray Disc、登録商標)方式に対応したものが開発されており、これらの方式のうち、複数の方式に対応するようになされたものがある。
ところで、光ディスク装置では、構成の簡素化や小型化といった要求に応じるべく、複数種類の波長に対応した1個の対物レンズを用いることが望ましい。
しかしながら、CD方式の光ディスク、DVD方式の光ディスク及びBD方式の光ディスクでは、照射すべき光ビームの波長が異なる他、各光ディスクにおける下面から信号記録面までの間隔、すなわち保護層の厚さがそれぞれ異なっているため、光ビームを照射する対物レンズに要求される開口数もそれぞれ異なっている。
そこで、回折格子を有する回折素子を対物レンズの前段に設け、光ビームの波長に応じて回折させることにより、複数方式の光ビームを1個の対物レンズで集光するようになされたものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−302270公報
ところでかかる構成の回折素子においては、回折素子のベースとなるベース部に対して異なる材料でなる接合部を接合することにより上述した回折格子を形成するようになされている。このような回折素子では、温度や湿度などの変化によって接合部がベース部から剥離してしまい、耐久性が不十分であるという問題があった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高い耐久性を有する回折素子、並びに当該回折素子を用いた対物レンズユニット、光ピックアップ及び光ディスク装置を提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明においては、入射される光ビームの波長に応じて当該光ビームを回折させる回折素子であって、第1の材料でなるベース部と、ベース部に接合された第2の材料でなる接合部とを設け、光ビームが通過することのない光学外領域にベース部と接合部とが嵌合する嵌合パターンを設けるようにした。
これにより、光学領域に何ら制限を加えることなくベース部と接合部との接着力を向上させることができる。
本発明によれば、光学領域に何ら制限を加えることなくベース部と接合部との接着力を向上させることができ、かくして高い耐久性を有する回折素子、並びに当該回折素子を用いた対物レンズユニット、光ピックアップ及び光ディスク装置を実現できる。
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)光ディスク装置の構成
(1−1)光ディスク装置の全体構成
図1において、光ディスク装置1は、CD(Compact Disc)方式、DVD(Digital Versatile Disc)方式又はBD(Blu-ray Disc、登録商標)方式といった3方式のいずれかでなる光ディスク100を再生し得るようになされている。
(1−1)光ディスク装置の全体構成
図1において、光ディスク装置1は、CD(Compact Disc)方式、DVD(Digital Versatile Disc)方式又はBD(Blu-ray Disc、登録商標)方式といった3方式のいずれかでなる光ディスク100を再生し得るようになされている。
この光ディスク装置1は、制御部2によって全体を統括制御するようになされており、光ディスク100が装填された状態で、図示しない外部機器からの再生指示等を受け付けると、当該制御部2から駆動部3及び信号処理部4を制御することにより当該光ディスク100に記録された情報を読み出すようになされている。
実際上、信号処理部4は、制御部2の制御に基づき、光ピックアップ7により対物レンズユニット9から所定の光ビームを光ディスク100の信号記録面に照射させる。
これと同時に駆動部3は、制御部2の制御に基づき、スピンドルモータ5により光ディスク100を所定の回転速度で回転させ、スレッドモータ6により光ピックアップ7を光ディスク100の径方向であるトラッキング方向へ大きく移動させ、さらに2軸アクチュエータ8により対物レンズユニット9を光ディスク100に対して近接又は離隔させる方向であるフォーカス方向及びトラッキング方向の2方向へそれぞれ細かく移動させることにより、所望のトラックに対して光ビームを合焦させる。
これに応じて信号処理部4は、光ディスク100の信号記録面において光ビームが反射されてなる反射光を検出し、その検出結果を基に再生信号を生成して、制御部2を介してこの再生信号を図示しない外部機器へ送出させる。
光ピックアップ7は、いわゆる3波長対応型となっており、対物レンズユニット9から、CD方式でなる光ディスク100(以下、これをCD方式ディスク100cと呼ぶ)に対して波長約780[nm]の光ビームを照射し、またDVD方式でなる光ディスク100(以下、これをDVD方式ディスク100dと呼ぶ)に対して波長約650[nm]の光ビームを照射し、さらにBD方式でなる光ディスク100(以下、これをBD方式ディスク100bと呼ぶ)に対して波長約405[nm]の光ビームを照射するようになされている。
このように光ディスク装置1は、CD方式、DVD方式、又はBD方式でなる光ディスク100に対してそれぞれの方式に適した光ビームを照射することにより、当該光ディスク100を再生し得るようになされている。
(1−2)光ピックアップの構成
図2に示すように、光ピックアップ7は、光ビームの光源として、CD方式用の波長約780[nm]でなる光ビーム(以下、これをCD用光ビームLcと呼ぶ)及びDVD方式用の波長約650[nm]でなる光ビーム(以下、これをDVD用光ビームLdと呼ぶ)を出射し得るレーザダイオード11と、BD方式用の波長約405[nm]でなる光ビーム(以下、これをBD用光ビームLbと呼ぶ)を出射し得るレーザダイオード12とを有している。
図2に示すように、光ピックアップ7は、光ビームの光源として、CD方式用の波長約780[nm]でなる光ビーム(以下、これをCD用光ビームLcと呼ぶ)及びDVD方式用の波長約650[nm]でなる光ビーム(以下、これをDVD用光ビームLdと呼ぶ)を出射し得るレーザダイオード11と、BD方式用の波長約405[nm]でなる光ビーム(以下、これをBD用光ビームLbと呼ぶ)を出射し得るレーザダイオード12とを有している。
カップリングレンズ13は、レーザダイオード11から出射された光ビームの光学倍率を変換するようになされている。
ビームスプリッタ14は、反射透過面14Aにおいて、光ビームをその波長に応じて反射又は透過させるようになされており、当該反射透過面14Aにおいて、波長約780[nm]でなるCD用光ビームLc及び波長約650[nm]でなるDVD用光ビームLdを反射させ、また波長約405[nm]でなるBD用光ビームLbを透過させるようになされている。
偏光ビームスプリッタ15は、偏光面15Aにおいて、光ビームをその偏光方向により反射又は透過させるようになされており、ビームスプリッタ14側から入射された光ビームを透過させ、また偏光方向が調整された上でコリメータレンズ16側から入射された光ビームを反射させるようになされている。
コリメータレンズ16は、偏光ビームスプリッタ15から入射され発散光でなる光ビームを平行光に変換し、また立ち上げミラー17から入射され平行光でなる光ビームを収束光に変換するようになされている。
立ち上げミラー17は、コリメータレンズ16から入射される水平方向の光ビームを反射して垂直方向、すなわち光ディスク100に対してほぼ垂直に入射させる方向に立ち上げ、また1/4波長板18からほぼ垂直に入射された光ビームを水平方向に反射するようになされている。
1/4波長板18は、光ビームにおける一部成分の位相を1/4波長分遅延させることにより、立ち上げミラー17から入射される光ビームを直線偏光から円偏光へ変換し、或いは対物レンズユニット9から入射される光ビームを円偏光から直線偏光に変換するようになされている。
対物レンズユニット9は、図3に斜視図を示すように、略筒状でなる鏡筒部19(図3では一部切断面を示す)の下部に扁平な円盤状でなる回折素子20が取り付けられていると共に、当該鏡筒部19の上部から中央部にかけて、当該回折素子20とほぼ同様の大きさでなる扁平な円盤状部の下面に当該円盤よりも若干小径の紡錘形部が一体に形成されたような形状でなる対物レンズ21が取り付けられている。
対物レンズユニット9は、1/4波長板18から入射され平行光でなる光ビームを回折素子20及び対物レンズ21により収束光に変換し、これを光ディスク100の信号記録面に合焦させるようになされている。
また光ピックアップ7は、光ディスク100の信号記録面において反射され発散光となった光ビームを、対物レンズユニット9の対物レンズ21及び回折素子20により平行光に変換し、1/4波長板18により円偏光から直線偏光に変換し、立ち上げミラー17により水平方向、すなわち偏光ビームスプリッタ15が設けられている方向へ反射し、コリメータレンズ16により平行光から収束光に変換した後、偏光ビームスプリッタ15へ入射させる。
この場合、偏光ビームスプリッタ15は、光ビームの偏光方向に応じて偏光面15Aにおいて当該光ビームを反射し、これをコンバージョンレンズ22へ入射させる。
コンバージョンレンズ22は、CD用光ビームLc及びDVD用光ビームLdとBD用光ビームLbとの光学倍率の変換を行うようになされている。また光軸合成素子23は、レーザダイオード11から出射されたCD用光ビームLc及びDVD用光ビームLdの光軸とレーザダイオード12から出射されたBD用光ビームLbの光軸とを一致させるようになされている。
フォトディテクタ24は、その上面(すなわちコンバージョンレンズ22及び光軸合成素子23を通過した光ビームが照射される面)においてそれぞれ所定形状でなる複数の検出領域がそれぞれ所定の位置に形成されており、照射された光ビームの光量をそれぞれ検出して光電変換することにより複数の検出信号を生成し、これを信号処理部4(図1)へ供給するようになされている。
これに応じて信号処理部4は、フォトディテクタ24(図2)からの検出信号を用いた所定の演算処理等を行うことにより再生RF信号を生成し、当該再生RF信号を基に所定の復号化処理や復調処理等を経て再生信号を生成するようになされている。
また信号処理部4(図1)は、フォトディテクタ24(図2)からの検出信号を用いた所定の演算処理等を行うことにより、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号等といった駆動制御用の信号を生成し、これらを制御部2へ供給するようになされている。これに応じて制御部2は、駆動部3を介してトラッキング制御やフォーカス制御等を行い、光ディスク100に対する光ビームの照射状態を調整して所望のトラックに追従させ、再生信号を正常に生成し得るようになされている。
(1−2−1)CD方式ディスクの場合
実際上、制御部2(図1)は、所定のディスク種別判定手法により光ディスク100がCD方式ディスク100cであることを認識した場合、光ピックアップ7(図2)におけるレーザダイオード11の発光点11Aから発散光でなるCD用光ビームLcを発射させ、カップリングレンズ13を介してビームスプリッタ14へ入射させる。
実際上、制御部2(図1)は、所定のディスク種別判定手法により光ディスク100がCD方式ディスク100cであることを認識した場合、光ピックアップ7(図2)におけるレーザダイオード11の発光点11Aから発散光でなるCD用光ビームLcを発射させ、カップリングレンズ13を介してビームスプリッタ14へ入射させる。
光ピックアップ7は、ビームスプリッタ14によりCD用光ビームLcを反射透過面14Aにおいて反射させ、偏光ビームスプリッタ15を透過させて、コリメータレンズ16により発散光から平行光に変換し、立ち上げミラー17により水平方向から垂直方向に立ち上げ、1/4波長板18により直線偏光から円偏光に変換した後、当該CD用光ビームLcを対物レンズユニット9へ入射させる。
対物レンズユニット9は、1/4波長板18から入射されたCD用光ビームLcを回折素子20及び対物レンズ21により収束光に変換し、これをCD方式ディスク100cの信号記録面に合焦させる。
また対物レンズユニット9は、CD方式ディスク100cの信号記録面において反射され発散光となったCD用光ビームLcを、対物レンズ21及び回折素子20により平行光に変換し、1/4波長板18へ入射させる。
その後光ピックアップ7は、1/4波長板18に入射されたCD用光ビームLcを円偏光から直線偏光に変換させ、立ち上げミラー18により水平方向へ反射し、コリメータレンズ16により平行光から収束光に変換させた後、偏光ビームスプリッタ15により偏光面15Aにおいて反射させ、コンバージョンレンズ22及び光軸合成素子23を順次通過させてフォトディテクタ24へ照射させる。
フォトディテクタ24は、照射されたCD用光ビームLcの光量を複数の検出領域によりそれぞれ検出して複数の検出信号を生成し、これを信号処理部4(図1)へ供給する。
これに応じて信号処理部4は、複数の検出信号を基に再生RF信号を生成した上で再生信号を生成し、またトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号等といった駆動制御用の信号を生成するようになされている。
(1−2−2)DVD方式ディスクの場合
制御部2(図1)は、所定のディスク種別判定手法により光ディスク100がDVD方式ディスク100dであることを認識した場合、光ピックアップ7(図2)におけるレーザダイオード11の発光点11Bから発散光でなるDVD用光ビームLdを発射させ、カップリングレンズ13を介してビームスプリッタ14へ入射させる。
制御部2(図1)は、所定のディスク種別判定手法により光ディスク100がDVD方式ディスク100dであることを認識した場合、光ピックアップ7(図2)におけるレーザダイオード11の発光点11Bから発散光でなるDVD用光ビームLdを発射させ、カップリングレンズ13を介してビームスプリッタ14へ入射させる。
その後、光ピックアップ7は、CD方式ディスク100cの場合と同様、DVD用光ビームLdをカップリングレンズ13、ビームスプリッタ14、偏光ビームスプリッタ15、コリメータレンズ16、立ち上げミラー17及び1/4波長板18の順に通過又は反射させ、対物レンズユニット9において当該DVD用光ビームLdを回折素子20及び対物レンズ21により収束光に変換し、これをDVD方式ディスク100dの信号記録面に合焦させる。
また対物レンズユニット9は、CD方式ディスク100cの場合と同様、DVD方式ディスク100dの信号記録面において反射され発散光となったDVD用光ビームLdを、対物レンズ21、回折素子20により平行光に変換した後、1/4波長板18、立ち上げミラー17、コリメータレンズ16、偏光ビームスプリッタ15、コンバージョンレンズ22及び光軸合成素子23の順に通過又は反射させ、フォトディテクタ24へ照射させる。
フォトディテクタ24は、CD方式ディスク100cの場合と同様、照射されたDVD用光ビームLdの光量を複数の検出領域によって検出することにより複数の検出信号を生成し、これらを信号処理部4(図1)へ供給する。
これに応じて信号処理部4は、再生RF信号を生成した上で再生信号を生成し、またトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号等といった駆動制御用の信号を生成するようになされている。
(1−2−3)BD方式ディスクの場合
制御部2(図1)は、所定のディスク種別判定手法により光ディスク100がBD方式ディスク100bであることを認識した場合、光ピックアップ7(図2)におけるレーザダイオード12の発光点12Aから発散光でなるBD用光ビームLbを発射させ、ビームスプリッタ14へ入射させる。
制御部2(図1)は、所定のディスク種別判定手法により光ディスク100がBD方式ディスク100bであることを認識した場合、光ピックアップ7(図2)におけるレーザダイオード12の発光点12Aから発散光でなるBD用光ビームLbを発射させ、ビームスプリッタ14へ入射させる。
この場合、ビームスプリッタ14は、BD用光ビームLbを反射透過面13Aにおいて透過させ、これを偏光ビームスプリッタ15へ入射させる。
その後光ピックアップ7は、CD方式ディスク100cの場合と同様、BD用光ビームLbを偏光ビームスプリッタ15、コリメータレンズ16、立ち上げミラー17及び1/4波長板18の順に通過又は反射させ、対物レンズユニット9において当該BD用光ビームLbを対物レンズ21により収束光に変換し、これをBD方式ディスク100bの信号記録面に合焦させる。
因みに対物レンズユニット9の回折素子20は、BD用光ビームLbを回折せずそのまま透過させるようになされている(詳しくは後述する)。
また対物レンズユニット9は、CD方式ディスク100cの場合と同様、BD方式ディスク100bの信号記録面において反射され発散光となったBD用光ビームLbを、対物レンズ21により平行光に変換した後、1/4波長板18、立ち上げミラー17、コリメータレンズ16、偏光ビームスプリッタ15、コンバージョンレンズ22及び光軸合成素子23の順に通過又は反射させ、フォトディテクタ24へ照射させる。
フォトディテクタ24は、CD方式ディスク100cの場合と同様、照射されたBD用光ビームLbの光量を複数の検出領域によって検出することにより複数の検出信号を生成し、これらを信号処理部4(図1)へ供給する。
これに応じて信号処理部4は、再生RF信号を生成した上で再生信号を生成し、またトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号等といった駆動制御用の信号を生成するようになされている。
このように光ピックアップ7は、光ディスク100がCD方式ディスク100c、DVD方式ディスク100d或いはBD方式ディスク100bのいずれであっても、対物レンズユニット9により、CD用光ビームLc、DVD用光ビームLd又はBD用光ビームLbを当該光ディスク100の信号記録面に合焦させ得ると共に、その反射光をフォトディテクタ24により検出し得るようになされている。
(1−3)対物レンズユニットの構成
次に、CD方式ディスク100c、DVD方式ディスク100d及びBD方式ディスク100bと、対物レンズユニット9との拡大断面図を図4に示す。
次に、CD方式ディスク100c、DVD方式ディスク100d及びBD方式ディスク100bと、対物レンズユニット9との拡大断面図を図4に示す。
因みに、対物レンズユニット9には2軸アクチュエータ8(図1)が取り付けられているものの、図4では省略している。
一般に、CD方式、DVD方式及びBD方式では、互換性等の観点から、情報を読み出すための光ビームの波長、当該光ビームを集光する際の開口数、及び各光ディスク100における下面から信号記録面までの部分(いわゆるカバー層)の厚みがそれぞれ規格により規定されている。
具体的にCD方式では、波長が約780[nm]、開口数が約0.45、カバー層の厚みが1.2[mm]と規定されており、またDVD方式では、波長が約650[nm]、開口数が約0.6、カバー層の厚みが0.6[mm]と規定されており、さらにBD方式では、波長が約405[nm]、開口数が約0.85、カバー層の厚みが0.1[mm]と規定されている。
また対物レンズユニット9では、対物レンズ21の特性上、当該対物レンズ21からCD用光ビームLc、DVD用光ビームLd及びBD用光ビームLbがそれぞれ照射される場合の焦点距離がそれぞれ異なっている。
このため光ディスク装置1では、実際には光ディスク100の高さを固定したまま2軸アクチュエータ8(図1)を介して対物レンズユニット9の高さ(すなわち光ディスク100との間隔)を調整することにより、各光ビームを各光ディスクの信号記録面に合焦させるようになされている。
因みに図4では、説明の都合上、対物レンズユニット9を固定し光ディスク100の高さを変化させている。このため図4では、各光ディスクの下面の高さが異なっている。また図4では、CD方式ディスク100c、DVD方式ディスク100d及びBD方式ディスク100bについて、いずれもカバー層のみを表している。
ところで対物レンズ21は、BD用光ビームLbの相対的な強度やBD方式で規定されている開口数等の観点から、CD用光ビームLcやDVD用光ビームLdよりも優先して当該BD用光ビームLbに最適化された設計となっている。
このため対物レンズユニット9の対物レンズ21は、当該対物レンズ21の下側から当該対物レンズ21より僅かに小さい光束径を有するBD用光ビームLbが平行光として入射されると、当該BD用光ビームLbを収束光に変換し、BD方式ディスク100bの信号記録面に合焦させることができる。
しかしながら対物レンズ21は、BD用光ビームLbに最適化されているため、仮にCD用光ビームLc又はDVD用光ビームLdが対物レンズ21の下側から平行光として入射された場合、収束光に変換することはできるものの、収差が発生してしまうため光ディスク100の信号記録層に正しく合焦させることができない。
そこで対物レンズユニット9は、回折素子20によりCD用光ビームLc又はDVD用光ビームLdのみを選択的に回折させ非平行光として対物レンズ21に入射させると共に、BD用光ビームLbを平行光のまま当該対物レンズ21に入射させるようになされている。
具体的に回折素子20は、CD用光ビームLcを回折すると共にDVD用光ビームLd及びBD用光ビームLbを回折しないようなホログラムでなるCD用回折格子DGcが上層部20Aに形成されており、図4に示したように、BD用光ビームLb及びDVD用光ビームLdより小さい光束径で入射されるCD用光ビームLcを当該CD用回折格子DGcによってやや外方へ回折させるようになされている。
すなわち回折素子20の上層部20Aは、DVD用光ビームLd及びBD用光ビームLbをそのまま透過させてCD用光ビームLcのみを選択的に回折させることができ、換言すれば、CD用光ビームLcの収差のみを補正するレンズとして機能することになる。
これに応じて対物レンズ21は、図4に示したように、回折素子20から入射されるCD用光ビームLcをその下面及び上面においてそれぞれ屈折させ、収束光に変換する。この結果、対物レンズユニット9は、CD用光ビームLcの収差を補正することができ、対物レンズ21から照射するCD用光ビームLcをCD方式ディスク100cの信号記録面に合焦させることができる。
また回折素子20は、DVD用光ビームLdを回折すると共にCD用光ビームLc及びBD用光ビームLbを回折しないようなホログラムでなるDVD用回折格子DGdが下層部20Bに形成されており、図4に示したように、CD用光ビームLcより大きくBD用光ビームLbより小さい光束径でなるDVD用光ビームLdを当該DVD用回折格子DGdによってわずかに外方へ回折させるようになされている。
すなわち回折素子20の下層部20Bは、CD用光ビームLc及びBD用光ビームLbをそのまま透過させ、DVD用光ビームLdのみを選択的に回折させることができ、換言すれば、DVD用光ビームLdの収差のみを補正するレンズとして機能することになる。
これに応じて対物レンズ21は、図4に示したように、回折素子20から入射されるDVD用光ビームLdをその下面及び上面においてそれぞれ屈折させ、収束光に変換する。この結果、対物レンズユニット9は、DVD用光ビームLdの収差を補正することができ、対物レンズ21から照射するDVD用光ビームLdをDVD方式ディスク100dの信号記録面に合焦させることができる。
このように対物レンズユニット9は、回折素子20の上層部20AによりCD用光ビームLcのみを回折させて収差を補正し、また回折素子20の下層部20BによりDVD用光ビームLdのみを回折させて収差を補正することにより、BD用光ビームLbに最適化された対物レンズ21から照射するCD用光ビームLc、DVD用光ビームLd及びBD用光ビームLbを、CD方式ディスク100c、DVD方式ディスク100d、及びBD方式ディスク100bの信号記録面にそれぞれ合焦させ得るようになされている。
(1−4)回折素子の構成
回折素子20は、図5(A)に示すように、全体的に扁平な円盤状に形成されたベース層20Cを中心に構成されており、上述したように上層部20AにCD用回折格子DGcが形成され、また下層部20BにDVD用回折格子DGdが形成されている。
回折素子20は、図5(A)に示すように、全体的に扁平な円盤状に形成されたベース層20Cを中心に構成されており、上述したように上層部20AにCD用回折格子DGcが形成され、また下層部20BにDVD用回折格子DGdが形成されている。
ベース層20Cは、所定の屈折率を有する透明な樹脂材料でなり、屈折率の異なる他の物質や空気との境界面において、光ビームを屈折させるようになされている。
上層部20Aは、図5(B)に部分拡大断面図を示すように、ベース層20Cの上面に階段状でなるCD用回折パターンPTcが周期的に形成されており、その上側に透明な樹脂材料でなるカバー層20Dが接合されている。
CD用回折パターンPTcは、3段の階段状に形成されており、全体の高さ、すなわち1段目と3段目との距離は約12[μm]とされ、またCD用回折パターンPTcごとの周期は最短部で約18[μm]とされている。またCD用回折パターンPTcは、図3に示したように、回折素子20の上面における、中心から外径の半分程度までのCD用光ビームLcが入射される範囲に同心円状に形成されている。
カバー層20Dは、ベース層20Cと異なる屈折率を有する透明な材料によって構成されており、その下面がCD用回折パターンPTcと隙間無く接合するように形成されると共に、その上面が平面状に形成されている。また、カバー層20DはCD回折パターンPTcの上端から約20[μm]の厚みに形成されている。
このように回折素子20の上層部20Aは、ベース層20Cの上面に階段状でなるCD用回折パターンPTcが周期的に形成され、その上側に当該ベース層20Cと異なる屈折率を有するカバー層20Dが接合されており、これにより光ビームをその波長に応じて回折又は透過させ、結果的にCD用光ビームLcのみを回折させるCD用回折格子DGcとして機能する。
一方、下層部20Bは、図5(C)に部分拡大断面図を示すように、平面状に形成されたベース層20Cの下面に、DVD用回折格子DGdが形成された回折パターン層20Eが接合されている。
回折パターン層20Eは、透明な樹脂材料でなると共にベース層20Cとほぼ同等の屈折率を有しており、階段状でなるDVD用回折パターンPTdが下面側に周期的に形成されている。なお回折パターン層20Eの下面は、他の物質に覆われていないため、直接空気に触れるようになされている。
DVD用回折パターンPTdは、5段の階段状に形成されており、全体の高さ、すなわち1段目と5段目との距離は6[μm]、DVD用回折パターンPTdごとの周期は170[μm]となされ、さらにDVD用回折パターンPTdの一段目からベース層20Cまでの厚さが約20[μm]となされている。またDVD用回折パターンPTdは、図3に示したように、回折素子20の下面における、中心から外径の2/3程度までのDVD用光ビームLdが入射される範囲に同心円状に形成されている。
このように回折素子20の下層部20Bは、ベース層20Cの下面に接合された回折パターン層20Eに階段状でなるDVD用回折パターンPTdが周期的に形成されており、これにより光ビームをその波長に応じて回折又は透過させ、結果的にDVD用光ビームLdのみを回折させるDVD用回折格子DGdとして機能する。
ちなみにこの回折素子20は、製造工程上の要因によってその外周に近い領域の平面性が悪化する傾向がある。このため図6に示すように、回折素子20では、その外径を光ビームの入射される領域(以下、これを光学領域と呼ぶ)OZよりも十分大きく形成することにより、当該光学領域OZにおける平面性が確保されるようになされている。
実際上、光学領域OZがφ約4[mm]であるのに対して、回折素子20の外径はφ約5[mm]に形成され、当該光学領域OZより外側に光ビームが通過することのない光学外領域EOが幅約0.5[mm]に渡って設けられている。
このようにして、回折素子20は、BD用光ビームLbを透過させる一方、CD用光ビームLcを上層部20Aによって回折させ、DVD用光ビームLdを下層部20Bによって回折させるようになされている。
ところで、この回折素子20は、光ディスク装置1に組み込まれて様々な環境で使用されると共に、光ディスク装置1自体が熱を発生することが想定されるため、温度や湿度などの影響に対する耐久性が要求される。
回折素子20は、ベースとなるベース層20Cと、このベース層20Cに対して接合されるカバー層20D及び回折パターン層20Eとの3層構造でなる。回折素子20では、各層に使用される材料を屈折率などに応じてそれぞれ選定するため、3種類の材料が接合されることにより形成されている。次に、これら3種類の材料について着目する。
図7に示すように、ベース層20Cのベース材料RCはシクロオレフィン系の熱可塑性樹脂であるのに対し、カバー層20Dのカバー材料RD及び回折パターン層20Eのパターン材料REがアクリル系の紫外線硬化型樹脂であることから、ベース材料RCと、カバー材料RD及びパターン材料REとでは、その物性が大きく異なってくる。
すなわち、このシクロオレフィン系樹脂は非極性の樹脂材料であるのに対し、アクリル系樹脂は高極性の樹脂材料であることから、ベース材料RCに対するカバー材料RD及びパターン材料REの密着性は低く、必然的にベース層20Cと、カバー層20D及び回折パターン層20Eの接合面における接着力は低くなってしまう。
また、温度変化に対する膨張の大きさを示す線膨張係数が大きく異なっており、ベース材料RCが小さく、カバー材料RD及びパターン材料REが大きい値を有している。さらに図示しないが、一般的に寸法変化を伴うことが知られている吸湿性も大きく異なっており、線膨張係数と同様にベース材料RCが小さく、カバー材料RD及びパターン材料REが大きい値を有する。
換言すると、温度変化や湿度の変化などに対するベース層20Cの寸法変化率は小さく、カバー層20D及び回折パターン層20Eの寸法変化率は大きいといえる。
このため、温度変化や湿度の変化などに応じて接合面IF付近にはひずみが生じ、このひずみを開放しようとする平行応力FS1が当該接合面IFに対して平行に加えられることになる。次に、このときの動作について説明するが、便宜上、ベース層20Cとカバー層20Dとの界面における動作についてのみ説明し、同様の動作となるベース層20Cと回折パターン層20Eとについての説明を省略する。
例えば、図8に示すように、温度上昇に対して、線膨張係数の大きいカバー層20Dはベース層20Cよりも大きく膨張しようとするため、接合面IF付近でひずみが生じ、接合面IFに平行応力FS1が加えられる。
この平行応力FS1がベース層20C及びカバー層20Dの間の接着力より大きくなると、層間剥離が生じ、カバー層20Dがベース層20Cから剥離してしまう。
このときのひずみは、回折素子20の中心部分を中心に、外側へ向かって蓄積されて大きくなり、これに伴って平行応力FS1も外側へ行く程大きくなることから、回折素子20の外周側へ行くほど剥離が生じやすくなる。
一方、温度下降に対しても同様の現象が生じ、カバー層20Dがベース層20Cより大きく収縮しようとして接合面IFに平行応力FS1が加えられ、この平行応力FS1が大きくなると、層間剥離が生じる。
さらに、回折素子20の側面部分となる外周EDでは、ベース層20C及びカバー層20Dが接合されている接合部分が露出し、温度や湿度など外環境の影響を直接的に受けるため、カバー層20Dがベース層20Cから剥離し易くなっている。
従って、この回折素子20では、この外周EDにおいて層間剥離が発生することが多い。
ここで、図9に示すように、この接合面IFにおいてカバー層20Dがベース層20Dから一旦剥離すると、カバー層20Dの剥離された部分であるカバー層剥離部分に蓄えられていたひずみが開放されて変形し、ベース層20Cから浮き上がる。
これに対し、このカバー剥離部分と隣接し、まだ接合された状態のカバー層接合部分では、接合された部分の対抗によってひずみがそのまま残っている。このため、カバー層接合部分では、このカバー層接合部分と隣接する部分において、ひずみを開放しきることができない。
このときカバー剥離部分が変形されて浮き上がっていることから、カバー剥離部分がこの隣接する部分におけるひずみを開放して、カバー接合部分を同様に浮き上がらせようとするため、このカバー層剥離部分及びカバー接合部分の境界部分となる剥離ラインSLに対して垂直方向の垂直応力FS2が加えられる。
このとき、面積を殆ど有さない剥離ラインSLはこの垂直応力FS2に対して十分に対抗することができず、結果として連鎖的に剥離を引き起こすことになる。
そこで、本発明の回折素子20は、ベース層20Cに対するカバー層20D及び回折パターン層20Eの接着力を高めるための手段を光学外領域EOに設けることにより、ベース層20Cと、カバー層20D及び回折パターン層20Eとの剥離を防止するようになされている。
具体的に、図10に示すように、回折素子20の上層部20A及び下層部20Bには、幅が約0.5[mm]の光学外領域EOに凹凸のある剥離防止パターンPP(上層剥離防止パターンPPa及び下層剥離防止パターンPPb)がそれぞれ形成されている。
上層部20Aにおける接合面IFには、上層剥離防止パターンPPaとして、CD用回折パターンPTcの一段目と同じ高さでなる基準面STaから突出した約10本のパターンが同心円状に形成されている。
同様に、下層部20Bにおける接合面IFには、下層剥離防止パターンPPbとして、ベース層20Cと回折パターン層20Eとの平坦な界面となる基準面STbから突出した約10本のパターンが同心円状に形成されている。
図11(A)に示すように、上層剥離防止パターンPPaは、周期が約20[μm]、その高さがCD用回折パターンPTcの階段の高さとほぼ同一となる約12[μm]の台形状のパターンでなる。また、図11(B)に示すように、下層剥離防止パターンPPbも上層剥離防止パターンPPaと同一形状を有している。
この剥離防止パターンPPは、その外側面Woが基準面ST(基準面STa及びSTb)に対して直角に形成されると共に、内側面Wiが外側面Woに対してその先端側が狭くなるように、約30 [°]だけ傾斜している。
このように、回折素子20の光学外領域EOに剥離防止パターンPPを設けたことにより、ベース層20Cと、カバー層20D及び回折パターン層20Eとの接合面IFの面積を増大させることができ、光学領域OZを通過する光ビームに何ら影響を与えることなく、ベース層20Cと、カバー層20D及び回折パターン層20Eとの接着力を向上させるようになされている。
また、図12に示すように、剥離防止パターンPPを光学領域OZより外側である光学外領域EOに設けたことにより、平行応力FS1が蓄積されて大きくなる外周側における接着力を向上することができ、カバー層20D及び回折パターン層20Eがベース層20Cから剥離するのを効果的に防止することができる。
さらに、図13に示すように、剥離防止パターンPPを基準面STから突出するように設けたことにより、カバー層20D及び回折パターン層20Eがベース層20Cから一旦剥離してしまった場合でも、外側面Woの面全体で垂直応力FS2に対抗することができ、カバー層20D及び回折パターン層20Eがベース層20Cから連鎖的に剥離するのを食い止めることができる。
(2)剥離防止パターンの効果の検証
次に、この剥離防止パターンPPを設けたことによる効果を検証するために行われた実験の結果について説明する。
次に、この剥離防止パターンPPを設けたことによる効果を検証するために行われた実験の結果について説明する。
まず、以下に示す実際の回折素子20の作製手順に従って回折素子20を作製した。なお、対照実験として、剥離防止パターンPPを有さないこと以外は回折素子20と同構成でなる比較用素子CPも作製した。以下、回折素子20の作製手順について説明し、便宜上、同様の手順によって作製される比較用素子CPについての説明を省略する。
図14(A)に示すように、射出金型MFを用いた射出成型により、上面20CaにCD用回折パターンPTc及び上層剥離防止パターンPPaを有し、下面20Cbに平面状の中心部分及び下層剥離防止パターンPPbを有するベース層20C(図14(B))を作製する。
このとき、上述したように、剥離防止パターンPPの内側面Wi(図11)が外側面Woに対して30[°]だけ傾斜されている。すなわち、内側面Wiが射出金型MFの加工時に削出金具として使用されるバイトの先端と同じ30[°]だけ傾斜されているため、内側面Wiを外側面Woに対して平行に形成する方法と比較して、バイトの角度を調整する必要がなく、金型加工作業を簡素化できる。
また、回折素子20では、剥離防止パターンPPがベース層20Cの基準面STから突出するように、かつ同様の突出するパターンを有するCD用回折パターンPTcとほぼ同一の高さで設けられていることにより、射出金型MFに凸部ではなく溝を形成すれば良い。さらにその溝をCD用回折パターンPTcとほぼ同じ深さに形成すればよいため、金型加工作業を簡素化できる。
次に、図15(A)及び(B)に示すように、DVD用回折パターンPTdを反転した型形状を有するDVD回折格子用金型101Aを、下面20Caに塗布された紫外線硬化型樹脂でなるパターン材料REに対して押圧するとともに、図示しない紫外線光源を用いてベース層20Cの上面側から樹脂硬化用の紫外線を照射する。これにより、DVD回折格子用金型101Aの型形状を転写した状態でパターン材料REを硬化させ、かくして図15(C)に示すように、DVD用回折パターンPTdを正確に再現した回折パターン層20Eをベース層20Cの下面20Caに密着して形成する。
続いて図16(A)及び(B)に示すように、平坦な型面を有する平板金型101Bをベース層20Cの上面20Caに滴下された紫外線硬化型樹脂でなるカバー材料RDに対して押圧することにより、当該カバー材料RDを上面20Caに形成されているCD用回折パターンPTcに密着させ、さらに、ベース層20Cの下面側から紫外線を照射する。これにより、カバー材料RDを硬化させ、かくして当該CD用回折パターンPTcを平坦に覆うカバー層20Dを形成する(図16(C))。
なお、本実験においては、回折素子20の直径をφ約5[mm]とし、中心からφ約4[mm] を光学領域OZ、その外側の幅約0.5[mm]を光学外領域EOとした。このため、回折素子20全体の面積のうち、約36%をこの光学外領域EOが占めている。
また、剥離防止パターンPPとして、周期が約20[μm]の台形状のパターンを10本設けて約0.2mm幅としたため、回折素子20全体の面積のうち、約15%にこの剥離防止パターンPPが形成されていることになる。
このように作製された回折素子20及び比較用素子CPに対して、60[℃]×90[%RH]×500[時間]の条件で高温高湿試験を行った。図17に、このときの試験結果を示す。なお、この図17では、上層部20Aにおいて、カバー層20Dがベース層20Cから剥離したか否かのみを示しており、剥離した部分を斜線で表している。
この高温高湿試験において、回折素子20では、光学外領域EOの外周ED付近においてカバー層20Dがベース層20Cから剥離していたが、光学領域OZにおける剥離は確認されなかった。
一方、比較用素子CPでは、光学外領域EOの外周側の全域においてカバー層がベース層から剥離すると共に、カバー層の剥離が光学領域OZにまで及び、カバー層の約半分の面積がベース層から剥離した。
このことから、ベース材料RCがシクロオレフィン系樹脂であり、カバー材料RDがアクリル系樹脂であるように、密着性の低い材料同士の組み合わせであっても、剥離防止パターンPPを設けることにより、カバー層20Dがベース層20Cから剥離することを防止し得ることが確認された。
また、図示しないが、回折素子20では、回折パターン層20Eについてもカバー層20Dと同様の結果が得られ、光学領域OZでは、回折パターン層20Eがベース層20Cから剥離することはなかった。
一方、比較用素子CPでは、カバー層と同様に、パターン層がベース層から剥離し、その剥離が光学領域OZまで達していた。
このことから、光学領域OZの接合面IFにおいて凹凸のある回折パターンPTを有さないベース層20Cと回折パターン層20Eとの組み合わせであっても、剥離防止パターンPPがその効果を十分に発揮し得ることが確認された。
以上の結果から、回折素子20は、剥離防止パターンPPが設けられたことにより、高温高湿条件下におけるベース層20Cと、カバー層20D及び回折パターン層20Eの剥離を防止して耐久性を向上させ得ることが確認された。
(3)動作及び効果
以上の構成において、回折素子20では、第1の材料であるベース材料RCでなるベース層20Cに対し、第2の材料であるカバー材料RDでなるカバー層20Dが接合されると共に、ベース層20Cとカバー層20Dとが嵌合する嵌合パターンである上層剥離防止パターンPPaが、使用される光ビームのうち、最も光束径の大きいBD用光ビームLdであっても通過することのない光学外領域EOの接合面IFに設けられている。
以上の構成において、回折素子20では、第1の材料であるベース材料RCでなるベース層20Cに対し、第2の材料であるカバー材料RDでなるカバー層20Dが接合されると共に、ベース層20Cとカバー層20Dとが嵌合する嵌合パターンである上層剥離防止パターンPPaが、使用される光ビームのうち、最も光束径の大きいBD用光ビームLdであっても通過することのない光学外領域EOの接合面IFに設けられている。
これにより、光学領域OZに制限を加えることが無いため、CD用回折パターンPTcの設計に制限を加えないでベース層20C及びカバー層20D間の接着力を向上することができる。
図18に示すように、上層剥離防止パターンPPaは、外側面Wo及び内側面Wiが接合面IFに対して直角方向に形成されているため、カバー材料RD及びベース材料RCの寸法変化率の差異に起因して、接合面IFに対して平行方向に加えられる平行応力FS1を複数の外側面Wo及び内側面Wiによってほぼ直角に受止め、ひずみを分散することができるため、ひずみの蓄積により平行応力FS1が段々大きくなるのを防止できる。
また、図19に示すように、ベース層20C及びカバー層20Dが相互に入り組んでいるため、カバー層20Dがベース層20Cから剥離してしまった場合であっても、ベース層20Cとカバー層20Dとが係合した状態を保持することができる。
これにより、カバー層剥離部分がさらにひずみを開放しようとすることにより加えられる垂直応力FS2をこの係合した部分で受止めることができ、カバー層接合部分に伝達させないため、カバー層20Dがベース層20Cから連鎖的に剥離するのを防止できる。
さらに上層剥離防止パターンPPaは、光ビームが通過する光学領域OZを囲むように形成されていることにより、外周EDにおいてカバー層20Dがベース層20Cから剥離した場合であっても、上述したように連鎖的な剥離を防止できるため、その剥離を光学外領域EOの中で食い止めることができる。このため、光学領域OZ内に剥離が生じず、光学的なトラブルを防止できる。
また、上層剥離防止パターンPPaは、回折素子20の外周側に形成されている。このため、蓄積された平行応力FS1を外側に伝達させないため、特に剥離の生じやすい外周EDに加わる平行応力FS1を小さくでき、外周EDにおいてカバー層20Dがベース層20Cから剥離するのを防止できる。
また上層剥離防止パターンPPaは、円状でなる光学領域OZに対して同心円状に形成されることにより、均一に剥離を防止する役割を果たすことができ、最小限の面積によって光学領域OZにおけるカバー層20Dのベース層20Cからの剥離を防止できる。
さらに上層剥離防止パターンPPaの高さがCD用回折パターンPTcの階段の高さとほぼ同一に形成されることにより、通過することが最も多いと想定される光束径の大きいBD用光ビームLbの裾をそのまま透過させることができ、通過する光に光学的な影響を加えない。
以上の構成によれば、回折素子20は、光ビームが通過しない光学外領域EOに、ベース層20C及びカバー層20Dが嵌合するように上層剥離防止パターンPPaを設けたことにより、回折素子20としての光学的機能に悪影響を及ぼすことなくベース層20C及びカバー層20Dの接着力を向上することができ、かくして耐久性を向上することができる。
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPは、通過する光をそのまま透過させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図20に示すように、三角形状でなる剥離防止パターンPPcを形成し、回折機能を持たせるようにしても良い。
なお上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPは、通過する光をそのまま透過させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図20に示すように、三角形状でなる剥離防止パターンPPcを形成し、回折機能を持たせるようにしても良い。
これにより、光学外領域EOを通過する不要な光、いわゆる迷光を光ビームの光路外、すなわち光学領域OZの逆側である外側方向へ回折させることができる。また、この剥離防止パターンPPcを用いて開口制限を実行することも可能である。
なお、このときの剥離防止パターンPPcの高さを約14[μm]、周期を20[μm]に設定することにより、光量の約70[%]を回折角度6〜7[°]で回折させることができる。
さらに上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPが台形状でなるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その形状には制限されず、材料の特性や回折素子20のサイズに応じて適宜その形状を変更するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPがCD用回折パターンPTcとほぼ同一の高さでなるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、表面積や光学外領域EOの大きさに応じて十分に接着力が向上するような値を選定するようにしても良い。
また上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPがベース層20Cから突出するように形成されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、溝状に形成されるようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPの外側面Woが接合面IFに対して垂直に形成されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、接合面IFと外側面Woとの成す角度が鋭角になるように形成されるようにしても良い。
これにより、外側面Woが垂直に形成された場合と比較して、外側面Woの面積を増大させると共に、斜面が垂直方向の力を受止めて係合力を増大させることにより、垂直応力FS2に対して一段と強く対抗することができ、連鎖的な剥離をさらに確実に食い止めることができる。
さらに上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPが同心円状に形成される
ようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば回折素子20の外周側に格子状に形成されるようにしても良い。
ようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば回折素子20の外周側に格子状に形成されるようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、ベース材料RCがシクロオレフィン系樹脂であり、カバー材料RDがアクリル系樹脂であるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばガラス材料や、ポリカーボネートなどの各種樹脂材料から適宜選択して使用することができる。
さらに上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPは、約10本の台形状のパターンでなるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その本数には制限されず、作製される回折素子20のサイズやパターンの形状及び大きさによって適宜変更することができる。
さらに上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPは、回折素子20全体の面積に対して約15%の面積に設けられるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、カバー層20Dの厚みやベース材料RC及びカバー材料RDの密着性などに応じて適宜変更することができる。
さらに上述の実施の形態においては、剥離防止パターンPPは、光学領域OZを囲むように形成されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、光学外領域EOの面積や形状に応じて自由に形成されるようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、ベース部としてのベース層20Cと、接合部としてのカバー層20Dとによって回折素子としての回折素子20を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるベース部と、接合部とによって本発明の回折素子を構成するようにしても良い。
本発明は、例えば各種電子機器に搭載される光ディスク装置に利用することができる。
1……光ディスク装置、2……制御部、3……駆動部、4……信号処理部、7……光ピックアップ、9……対物レンズユニット、11……レーザダイオード、19……鏡筒部、20……回折素子、20A……上層部、20B……下層部、20C……ベース層、20D……カバー層、20E……パターン層、21……対物レンズ、DGc……CD用回折素子、DGd……DVD用回折素子、Lb……BD用光ビーム、Ld……DVD用光ビーム、Lc……CD用光ビーム、RC……ベース材料、RD……カバー材料、RE……パターン材料、PP……剥離防止パターン、PPa……上層剥離防止パターン、PPb……下層剥離防止パターン、OZ……光学領域、EO……光学外領域、FS1……平行応力、FS2……垂直応力、ED……外周。
Claims (13)
- 入射される光ビームの波長に応じて当該光ビームを回折させる回折素子であって、
第1の材料でなるベース部と、
上記ベース部に接合された第2の材料でなる接合部と
を具え、
上記光ビームが通過することのない光学外領域に上記ベース部と上記接合部とが嵌合する嵌合パターンを設けた
ことを特徴とする回折素子。 - 上記嵌合パターンは、
上記光ビームが通過する光学領域を囲むように設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の回折素子。 - 上記嵌合パターンは、
上記ベース部から突出するように設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の回折素子。 - 上記嵌合パターンは、
上記回折素子の外側に向かう外側面が、上記ベース部及び上記接合部の接合面に対して垂直又は鋭角に形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の回折素子。 - 上記嵌合パターンは、
同心円状に形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の回折素子。 - 上記嵌合パターンは、
上記光学外領域を通過した光を、上記光学領域を通過した上記光ビームから離開する方向に回折させる
ことを特徴とする請求項1に記載の回折素子。 - 上記第1の材料及び第2の材料は、
ガラス材料と樹脂材料との組み合わせでなる
ことを特徴とする請求項1に記載の回折素子。 - 上記第1の材料及び第2の材料は、
2種類の樹脂材料の組み合わせでなる
ことを特徴とする請求項1に記載の回折素子。 - 上記第1の材料は、
シクロオレフィン系樹脂でなる
ことを特徴とする請求項8に記載の回折素子。 - 光源から発射される光ビーム光ディスクに照射する対物レンズユニットであって、
第1の材料でなるベース部と、上記ベース部に接合された第2の材料でなる接合部と
を有し、入射された上記光ビームを波長に応じて回折する回折素子と、
上記回折素子と一体に構成され、上記回折素子から入射される上記光ビームを集光して光ディスクに照射する対物レンズと
を具え、
上記回折素子は、
上記光ビームが通過することのない光学外領域に上記ベース部と上記接合部とが嵌合する嵌合パターンを設けた
ことを特徴とする対物レンズユニット。 - 上記剥離防止パターンは、
上記光ビームの周囲に存在し、上記光学外領域を通過する光ビームの裾を当該光ビームと離開する方向に回折させる
ことを特徴とする請求項10に記載の対物レンズユニット - 光ビームを発射する光源と、
上記光ビームを集光して光ディスクに照射する対物レンズと、
第1の材料でなるベース部と、上記ベース部に接合された第2の材料でなる接合部と
を有し、入射された上記光ビームを波長に応じて回折する回折素子と、
を具え、
上記回折素子は、
上記光ビームが通過することのない光学外領域に上記ベース部と上記接合部とが嵌合する嵌合パターンを設けた
ことを特徴とする光ピックアップ。 - 光ビームを発射する光源と、
上記光ビームを集光して光ディスクに照射する対物レンズと、
第1の材料でなるベース部と、上記ベース部に接合された第2の材料でなる接合部と
を有し、入射された上記光ビームを波長に応じて回折する回折素子と、
上記対物レンズを上記光ディスクの所望のトラックに追従させるよう駆動する駆動部と
を具え、
上記光ビームが通過することのない光学外領域に上記ベース部と上記接合部とが嵌合する嵌合パターンを設けた
ことを特徴とする光ディスク装置。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9291753B2 (en) | 2011-05-30 | 2016-03-22 | Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. | Diffraction optical element and production method therefor |
-
2006
- 2006-04-21 JP JP2006118363A patent/JP2007293951A/ja active Pending
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