JP2007292219A - 転がり軸受の組立方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軌道輪の軌道面や転動体の表面を傷付けることなく、スムーズに転動体を軸受へ組み込むことができる軸受の組立方法を提供する。
【解決手段】相対回転可能に対向して配置された一対の軌道輪2,4と、各軌道輪の対向面2b,4bに形成された軌道面2c,4c間に転動自在に組み込まれた複数の転動体8とを備えた転がり軸受において、同一平面上で各軌道輪を相対的に偏心させた状態で軌道輪間に構成された隙間Sから、複数の転動体を軌道面間に挿入して、所定位置まで移動させる転がり軸受の組立方法であって、双方の軌道輪に温度差を与え、各軌道輪を相対的に膨張又は収縮させることで、各転動体と軌道面との間の軸受すきまを広げる温度差付与工程を有する。
【選択図】図1
【解決手段】相対回転可能に対向して配置された一対の軌道輪2,4と、各軌道輪の対向面2b,4bに形成された軌道面2c,4c間に転動自在に組み込まれた複数の転動体8とを備えた転がり軸受において、同一平面上で各軌道輪を相対的に偏心させた状態で軌道輪間に構成された隙間Sから、複数の転動体を軌道面間に挿入して、所定位置まで移動させる転がり軸受の組立方法であって、双方の軌道輪に温度差を与え、各軌道輪を相対的に膨張又は収縮させることで、各転動体と軌道面との間の軸受すきまを広げる温度差付与工程を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、半導体製造装置、電気部品や自動車部品などの組立装置、機械部品や電子部品などの検査・試験装置及び各種搬送装置などに組み込まれる転がり軸受の組立方法の改良に関する。
従来から、転がり軸受(以下、単に軸受ともいう)の組立方法(転動体の組込方法)として、各種の方法が知られている。例えば、玉軸受の場合、まず、一方の軌道輪(例えば、内輪)を他方の軌道輪(例えば、外輪)に対して径方向(ラジアル方向)に移動(偏心)し、内輪と外輪との間に三日月状の開口部(隙間)を形成する。次に、内輪と外輪との間に形成された三日月状の開口部(隙間)から複数の玉を内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に挿入する。この状態で、内輪及び外輪に力を加えてこれらを弾性変形させると共に、内輪を外輪と同心となる位置まで径方向(上述とは逆のラジアル方向)に移動させる。そして、玉を内輪の軌道面と外輪の軌道面との間で移動させ、等間隔に位置付けることで、軸受を組み立てることができる。
また、このような組立方法により転動体(玉)を軸受に組み込む際、その作業を容易に且つ確実に行うための各種の治具(軸受組立装置)も知られている(特許文献1参照)。
例えば、図4〜図6に示すような治具を用いた軸受の組立方法(転動体の組込方法)の一例について、以下、説明する。
例えば、図4〜図6に示すような治具を用いた軸受の組立方法(転動体の組込方法)の一例について、以下、説明する。
かかる組立方法においては、組立対象となる転がり軸受の一対の軌道輪(内輪2と外輪4)を、その一方側の端面(図4の下側の面)2a,4aが同一の水平面(ベース)Gに接するように配置する。また、内輪2と外輪4の中心軸をずらし(例えば、内輪2を径方向(ラジアル方向)へベースGに沿ってスライド(移動)し、内輪2と外輪4とを偏心させ)、内輪2と外輪4の対向面2b,4bにそれぞれ形成された軌道面2c,4cの間に三日月状の隙間Sを生じさせる。この状態で、当該隙間Sに三日月形の治具6をその一方側の端面(図4の下側の面)6aがベースGに接するように配置し、当該治具6の他方側の端面(図4の下側の面)6b上に転動体(玉)8を順次落下させて、当該隙間Sから内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間に挿入する(図5,図6)。なお、治具6の高さ(端面6a,6b間の距離)は、その端面6b上に玉8を載せた場合に、当該玉8の表面の凸曲面と内外輪の軌道面2c,4cの凹曲面とが丁度はまり合う高さとなるように調整されている。
次に、先にずらした内輪2と外輪4の中心軸とを一致させ(例えば、内輪2を径方向(上述とは逆のラジアル方向)へベースGに沿ってスライド(移動)し、内輪2と外輪4とを同心円上に配置(同心化)させ)、治具6を軸受から取り外す(図7の状態)。
そして、玉8を内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間に沿って移動させ、等間隔に位置付けることで、内外輪の軌道面2c,4c間へ各玉8が転動自在に組み込まれ、軸受が組み立てられる。
そして、玉8を内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間に沿って移動させ、等間隔に位置付けることで、内外輪の軌道面2c,4c間へ各玉8が転動自在に組み込まれ、軸受が組み立てられる。
この場合、治具6は、その材料に各種ゴム(例えば、シリコンゴム、ニトリルゴムやアクリルゴム等)、各種プラスチック(例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系エラストマーやナイロン系エラストマー等)、各種紙(例えば、クリーンペーパー等)及び各種布(例えば、不織布等)などの優れた弾塑性を持つ材料を用いて形成されている。
このため、軸受の組立時に、玉8を治具6の上に落下させても、その衝撃を治具6が弾性変形して吸収するため、玉8は治具6の上で弾まず、軸受から飛び出すことがない。また、治具6は、軸受から容易に取り外す(例えば、引っ張り出す)ことができ、その際、治具6が玉8と接触しても玉8を損傷させる(例えば、玉8の表面(転動面)に傷を付ける)こともない。
したがって、当該治具6を用いて玉8を軸受に組み込むことで、軸受の組立作業を容易に且つ確実に行うことができる。
したがって、当該治具6を用いて玉8を軸受に組み込むことで、軸受の組立作業を容易に且つ確実に行うことができる。
しかしながら、上述したような軸受の組立方法では、特に軸受の内部すきま(内外輪の軌道面2c,4cと玉8との間のすきま)が小さい場合(その中でも特に、軸受の内部すきまが負の値の場合)、各玉8を等間隔に移動させる際に、例えば、2つの玉8が内輪2を挟んで180°対称の位置に並ぶと、各玉8が内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとに圧接し、拘束された状態となる。このような状態のまま、玉8を所定の位置へ移動させる(等間隔に位置付けるように移動させる)と、内外輪の軌道面2c,4cや玉8の表面(転動面)に傷が付いてしまう場合がある。このような傷は、例えば、軸受の回転中に異音が生じたり、軸受の回転精度(例えば、回転安定性)が早期に低下してしまう原因となってしまう。
特開2002−168260号公報
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、軌道輪の軌道面や転動体の表面を傷付けることなく、スムーズに転動体を軸受へ組み込むことができる軸受の組立方法を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明に係る軸受の組立方法は、相対回転可能に対向して配置された一対の軌道輪と、各軌道輪の対向面に形成された軌道面間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた転がり軸受において、同一平面上で各軌道輪を相対的に偏心させた状態で軌道輪間に構成された隙間から、複数の転動体を軌道面間に挿入して、所定位置まで移動させる転がり軸受の組立方法であって、双方の軌道輪に温度差を与え、各軌道輪を相対的に膨張又は収縮させることで、各転動体と軌道面との間の軸受すきまを広げる温度差付与工程を有する。
この場合、温度差付与工程を経た後、同一平面上で各軌道輪を相対的に偏心させた状態で軌道輪間に構成された隙間から、複数の転動体を軌道面間に挿入して、所定位置まで移動させる。また、同一平面上で各軌道輪を相対的に偏心させた状態で軌道輪間に構成された隙間から、複数の転動体を軌道面間に挿入した状態で、温度差付与工程を経た後、複数の転動体を所定位置まで移動させる。
さらに、温度差付与工程は、一方の軌道輪である外輪を加熱して膨張させることで前記軸受すきまを広げる。また、温度差付与工程は、前記他方の軌道輪である内輪を冷却して収縮させることで前記軸受すきまを広げる。
なお、前記転がり軸受は、軸受すきまが負に設定されている。
さらに、温度差付与工程は、一方の軌道輪である外輪を加熱して膨張させることで前記軸受すきまを広げる。また、温度差付与工程は、前記他方の軌道輪である内輪を冷却して収縮させることで前記軸受すきまを広げる。
なお、前記転がり軸受は、軸受すきまが負に設定されている。
本発明の軸受の組立方法によれば、軌道輪の軌道面や転動体の表面を傷付けることなく、スムーズに転動体を軸受へ組み込むことができる。
以下、本発明の実施形態に係る転がり軸受の組立方法について、添付図面を参照して説明する。
なお、軸受としては、例えばスラスト軸受やラジアル軸受を適用することができるが、ここでは一例として、ラジアル軸受を想定する。また、転動体としては、例えばころや玉を適用することができるが、ここでは一例として、玉を想定する。
なお、その際、従来の転がり軸受(図4〜図7)と同一の構成には図面上で同一符号を付して、その説明を省略する。
なお、軸受としては、例えばスラスト軸受やラジアル軸受を適用することができるが、ここでは一例として、ラジアル軸受を想定する。また、転動体としては、例えばころや玉を適用することができるが、ここでは一例として、玉を想定する。
なお、その際、従来の転がり軸受(図4〜図7)と同一の構成には図面上で同一符号を付して、その説明を省略する。
図1(a)〜(d)には、本発明の第1実施形態に係る軸受の組立方法が示されている。
本実施形態に係る軸受の組立方法において、組立対象の軸受は、相対回転可能に対向して配置された一対の軌道輪(内輪2及び外輪4)と、内輪2及び外輪4の対向面2b,4bに形成された軌道面2c,4c間に転動自在に組み込まれた複数の転動体(玉)8とを備えている。なお、本実施形態において、組立対象の軸受の軸受すきま(各玉8と軌道面2c,4cとの間のすきま(内部すきま))は、負に設定されている。
本実施形態に係る軸受の組立方法において、組立対象の軸受は、相対回転可能に対向して配置された一対の軌道輪(内輪2及び外輪4)と、内輪2及び外輪4の対向面2b,4bに形成された軌道面2c,4c間に転動自在に組み込まれた複数の転動体(玉)8とを備えている。なお、本実施形態において、組立対象の軸受の軸受すきま(各玉8と軌道面2c,4cとの間のすきま(内部すきま))は、負に設定されている。
このような軸受を組み立てるために、本実施形態に係る軸受の組立方法では、まず、同一平面上で内輪2を外輪4側に、あるいは外輪4を内輪2側に寄せて、内輪2と外輪4とを相対的に偏心させ、内輪2と外輪4との間に三日月状の隙間Sを構成する(図1(a)の状態)。この場合、内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間の最大距離は、W1となっている。
次に、この状態(図1(a)の状態)で、内輪2及び外輪4に温度差を与え、外輪4を膨張させることで、各玉8と軌道面2c,4cとの間の軸受すきまを広げる温度差付与工程を実施する。なお、本実施形態において、温度差付与工程は、加熱装置(図示しない)を用いて外輪4のみを加熱し、内輪2と外輪4とに温度差を与えている(外輪温度>内輪温度)。
温度差付与工程を実施することにより、加熱された外輪4は、その温度が所定の温度に達すると熱膨張する。これに対し、内輪2は加熱冷却されず、初期状態(図1(a)の状態)のまま維持されるため、外輪4は内輪2に対して相対的に膨張する。これにより、内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間の最大距離はW2となり(W2>W1)、W2とW1との差(W2−W1)の分だけ軸受すきまを広げることができる(図1(b)の状態)。なお、加熱装置は、少なくとも外輪4が熱膨張する温度に達するまで、外輪4を加熱することができるだけの熱量を発生可能な装置(例えば、高周波誘導加熱装置など)であれば、任意の装置を適用することができる。
当該温度差付与工程を経た後、内輪2と外輪4との間に構成された隙間Sから、複数の玉8を軌道面2c,4c間に挿入する。本実施形態では、一例として、7個の玉8を軌道面2c,4c間に挿入している(図1(c)の状態)。この状態(図1(c)の状態)で、先に同一平面上で相対的に偏心させた内輪2と外輪4とを同一平面上で同心化させる。すなわち、例えば、外輪4側に寄せた内輪2を元の位置まで戻す、あるいは内輪2側に寄せた外輪4を元の位置まで戻すことで内輪2と外輪4とを同心円上に配置させることができる。
そして、各玉8を内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間に沿って移動させ、7個の玉8を所定位置(等間隔)に位置付けることで、内外輪の軌道面2c,4c間に各玉8が転動自在に組み込まれ、図1(d)に示すような軸受が組み立てられる。
この場合、上述した温度差付与工程の実施により、外輪4が内輪2に対して相対的に膨張しており、軸受すきまは、W2とW1との差(W2−W1)の分だけ設定値よりも広がっている。このため、各玉8を内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間に沿って移動させる際、各玉8が内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとに圧接し拘束された状態となることはない。これにより、各玉8を内外輪の軌道面2c,4c間に沿ってスムーズに移動させることができる。このとき、各玉8から内外輪の軌道面2c,4cに過度の摩擦力が作用することはないため、内外輪の軌道面2c,4cや玉8の表面(転動面)を傷付けることなく、各玉8を軸受へ組み込むことができる。
なお、各玉8を軸受へ転動自在に組み込んだ後、熱膨張した外輪4の温度を所定温度まで低下させ、外輪4を初期状態(図1(a)の状態)まで戻すことで、軸受すきまが負の軸受を完成させることができる(図1(d)の状態)。この場合、熱膨張した外輪4の温度を所定温度まで低下させる方法としては、例えば、外輪4を各種の冷却装置(例えば、ドライアイスや窒素ガス発生装置など)を用いて冷却する方法や、玉8を組み込んだ状態で所定時間、軸受を空冷する方法(室温環境で放置する方法)などを採ることができる。
また、上述した本実施形態において、温度差付与工程は、加熱装置(図示しない)を用いて外輪4のみを加熱し、内輪2と外輪4とに温度差を与えたが(外輪温度>内輪温度)、これに代えて、図2(a)〜(d)に示す変形例のように、冷却装置(図示しない)を用いて内輪2のみを冷却し、内輪2と外輪4とに温度差を与えてもよい(外輪温度>内輪温度)。
この場合、温度差付与工程を実施することにより、冷却された内輪2は、その温度が所定の温度まで低下すると収縮する。これに対し、外輪4は加熱冷却されず、初期状態(図2(a)の状態)のまま維持されるため、内輪2は外輪4に対して相対的に収縮する。これにより、内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間の最大距離はW3となり(W3>W1)、W3とW1との差(W3−W1)の分だけ軸受すきまを広げることができる(図2(b)の状態)。なお、冷却装置は、少なくとも内輪2が収縮する温度に達するまで、内輪2を冷却することができる装置(例えば、ドライアイスや窒素ガス発生装置など)であれば、任意の装置を適用することができる。
当該温度差付与工程を経た後、上述した第1実施形態と同様に、偏心させた内外輪間の隙間Sから複数の玉8を軌道面2c,4c間に挿入し(図2(c)の状態)、内外輪を同心化させ、各玉8を移動、等配することで、各玉8を軸受へ転動自在に組み込むことができる。
なお、本変形例においては、各玉8を軸受へ転動自在に組み込んだ後、収縮した内輪2の温度を所定温度まで上昇させ、内輪2を初期状態(図2(a)の状態)まで戻すことで、軸受すきまが負の軸受を完成させることができる(図2(d)の状態)。この場合、収縮した内輪2の温度を所定温度まで上昇させる方法としては、例えば、内輪2を各種の加熱装置(例えば、高周波誘導加熱装置など)を用いて加熱する方法や、玉8を組み込んだ状態で所定時間、軸受を放置(例えば、室温環境で放置)する方法などを採ることができる。
また、上述した温度差付与工程において、加熱装置(図示しない)を用いて外輪4のみを加熱すると共に、冷却装置(図示しない)を用いて内輪2のみを冷却し、内輪2と外輪4とに温度差を与えてもよい(外輪温度>内輪温度)。
この場合、温度差付与工程を実施することにより、加熱された外輪4は、その温度が所定の温度に達すると熱膨張すると共に、冷却された内輪2は、その温度が所定の温度まで低下すると収縮する。これにより、内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間の最大距離を上述した第1実施形態及び変形例の場合よりも短時間に拡大させることができる。なお、収縮した内輪2の温度上昇、熱膨張した外輪4の温度低下のための方法は、上述した第1実施形態及び変形例の場合と同様の方法を採ればよい。
また、本発明は、上述した第1実施形態及び変形例に限定されず、以下のように変更しても同様の効果を得ることができる。
図3(a)〜(d)には、本発明の第2実施形態に係る軸受の組立方法が示されている。上述した第1実施形態では、内外輪間に温度差を与えた後に(温度差付与工程を実施した後に)、各玉8を内外輪の軌道面2c,4c間に挿入したが、本実施形態では、各玉8を軌道面2c,4c間に挿入した状態で、内外輪間に温度差を与える(温度差付与工程を実施する)。
なお、以下の説明において、上述した第1実施形態で説明した組立対象の転がり軸受(図1(a)〜(d))と同一の構成については、図面上で同一符号を付して、その説明を省略する。
図3(a)〜(d)には、本発明の第2実施形態に係る軸受の組立方法が示されている。上述した第1実施形態では、内外輪間に温度差を与えた後に(温度差付与工程を実施した後に)、各玉8を内外輪の軌道面2c,4c間に挿入したが、本実施形態では、各玉8を軌道面2c,4c間に挿入した状態で、内外輪間に温度差を与える(温度差付与工程を実施する)。
なお、以下の説明において、上述した第1実施形態で説明した組立対象の転がり軸受(図1(a)〜(d))と同一の構成については、図面上で同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態に係る軸受の組立方法では、まず、同一平面上で内輪2を外輪4側に、あるいは外輪4を内輪2側に寄せて、内輪2と外輪4とを相対的に偏心させ、内輪2と外輪4との間に三日月状の隙間Sを構成する(図3(a)の状態)。この場合、内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間の最大距離は、W1となっている。
本実施形態においては、この状態(図3(a)の状態)で、内輪2と外輪4との間に構成された隙間Sから、複数の玉8を軌道面2c,4c間に挿入する。本実施形態では、一例として、7個の玉8を軌道面2c,4c間に挿入している(図3(b)の状態)。
本実施形態においては、この状態(図3(a)の状態)で、内輪2と外輪4との間に構成された隙間Sから、複数の玉8を軌道面2c,4c間に挿入する。本実施形態では、一例として、7個の玉8を軌道面2c,4c間に挿入している(図3(b)の状態)。
次に、この状態(図3(b)の状態)で、内輪2及び外輪4に温度差を与え、外輪4を膨張させることで、各玉8と軌道面2c,4cとの間の軸受すきまを広げる温度差付与工程を実施する。なお、本実施形態において、温度差付与工程は、加熱装置(図示しない)を用いて外輪4のみを加熱し、内輪2と外輪4とに温度差を与えている(外輪温度>内輪温度)。
温度差付与工程を実施することにより、加熱された外輪4は、その温度が所定の温度に達すると熱膨張する。これに対し、内輪2は加熱冷却されず、初期状態(図3(a)の状態)のまま維持されるため、外輪4は内輪2に対して相対的に膨張する。これにより、内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間の最大距離はW4となり(W4>W1)、W4とW1との差(W4−W1)の分だけ軸受すきまを広げることができる(図3(c)の状態)。なお、加熱装置は、少なくとも外輪4が熱膨張する温度に達するまで、外輪4を加熱することができる熱量を発生可能な装置(例えば、高周波誘導加熱装置など)であれば、任意の装置を適用することができる。
当該温度差付与工程を経た後、先に同一平面上で相対的に偏心させた内輪2と外輪4を同一平面上で同心化させる。すなわち、例えば、外輪4側に寄せた内輪2を元の位置まで戻す、あるいは内輪2側に寄せた外輪4を元の位置まで戻すことで内輪2と外輪4とを同心円上に配置させることができる。
そして、各玉8を内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間に沿って移動させて、7個の玉8を所定位置(等間隔)に位置付けることで、内外輪の軌道面2c,4c間に各玉8が転動自在に組み込まれ、図3(d)に示すような軸受が組み立てられる。
この場合、上述した温度差付与工程の実施により、外輪4が内輪2に対して相対的に膨張しており、軸受すきまは、W4とW1との差(W4−W1)の分だけ設定値よりも広がっている。このため、各玉8を内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとの間に沿って移動させる際、各玉8が内輪2の軌道面2cと外輪4の軌道面4cとに圧接し拘束された状態となることはない。これにより、各玉8を内外輪の軌道面2c,4c間に沿ってスムーズに移動させることができる。このとき、各玉8から内外輪の軌道面2c,4cに過度の摩擦力が作用することはないため、内外輪の軌道面2c,4cや玉8の表面(転動面)を傷付けることなく、各玉8を軸受へ組み込むことができる。
なお、各玉8を軸受へ転動自在に組み込んだ後、熱膨張した外輪4の温度を所定温度まで低下させ、外輪4を初期状態(図3(a)の状態)まで戻すことで、軸受すきまが負の軸受を完成させることができる(図3(d)の状態)。この場合、熱膨張した外輪4の温度を所定温度まで低下させる方法としては、例えば、外輪4を各種の冷却装置(例えば、ドライアイスや窒素ガス発生装置など)を用いて冷却する方法や、玉8を組み込んだ状態で所定時間、軸受を空冷する方法(室温環境で放置する方法)などを採ることができる。
また、上述した第2実施形態において、温度差付与工程は、加熱装置(図示しない)を用いて外輪4のみを加熱し、内輪2と外輪4とに温度差を与えたが(外輪温度>内輪温度)、これに代えて、上述した変形例のように、冷却装置(図示しない)を用いて内輪2のみを冷却し、内輪2と外輪4とに温度差を与えてもよいし、あるいは、加熱装置(図示しない)を用いて外輪4のみを加熱すると共に、冷却装置(図示しない)を用いて内輪2のみを冷却し、内輪2と外輪4とに温度差を与えてもよい(外輪温度>内輪温度)。
なお、上述した第1実施形態及び変形例、第2実施形態において、温度差付与工程を実施した際の内輪2と外輪4との温度差については、具体的な温度を例示して説明しなかったが、軸受すきまの設計値に応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。この場合、温度差付与工程を実施することにより軸受すきまを広げるためには、少なくとも温度差付与工程の実施後は、外輪温度が内輪温度よりも高いことが好ましい。
また、上述した第1実施形態及び変形例、第2実施形態において、軌道輪(内輪2及び外輪4)の材料については、特に限定しなかったが、例えば、高炭素クロム軸受鋼や浸炭軸受鋼などを適用することができるが、加熱又は冷却によって、膨張又は収縮し易い材料であることが好ましい。
また、上述した第1実施形態及び変形例、第2実施形態において、玉の大きさ、数については、特に限定されず、軸受の使用目的や使用環境に応じて任意の大きさや個数に設計することができる。
また、上述した第1実施形態及び変形例、第2実施形態において、保持器や密封板については特に言及しなかったが、例えば、各玉8を内外輪の軌道面2c,4c間へ転動自在に組み込んだ後、保持器(例えば、波型プレス保持器など)を装着し、さらに、内外輪間に密封板(例えば、シールやシールドなど)を介在させればよい。
また、上述した第1実施形態及び変形例、第2実施形態において、玉の大きさ、数については、特に限定されず、軸受の使用目的や使用環境に応じて任意の大きさや個数に設計することができる。
また、上述した第1実施形態及び変形例、第2実施形態において、保持器や密封板については特に言及しなかったが、例えば、各玉8を内外輪の軌道面2c,4c間へ転動自在に組み込んだ後、保持器(例えば、波型プレス保持器など)を装着し、さらに、内外輪間に密封板(例えば、シールやシールドなど)を介在させればよい。
2 内輪
2a,4a 端面
2b,4b 対向面
2c,4c 軌道面
4 外輪
6 治具
8 玉
G ベース
S 内外輪間隙間
W1,W2,W3,W4 軌道面間最大距離
2a,4a 端面
2b,4b 対向面
2c,4c 軌道面
4 外輪
6 治具
8 玉
G ベース
S 内外輪間隙間
W1,W2,W3,W4 軌道面間最大距離
Claims (6)
- 相対回転可能に対向して配置された一対の軌道輪と、各軌道輪の対向面に形成された軌道面間に転動自在に組み込まれた複数の転動体とを備えた転がり軸受において、同一平面上で各軌道輪を相対的に偏心させた状態で軌道輪間に構成された隙間から、複数の転動体を軌道面間に挿入して、所定位置まで移動させる転がり軸受の組立方法であって、
双方の軌道輪に温度差を与え、各軌道輪を相対的に膨張又は収縮させることで、各転動体と軌道面との間の軸受すきまを広げる温度差付与工程を有することを特徴とする転がり軸受の組立方法。 - 温度差付与工程を経た後、同一平面上で各軌道輪を相対的に偏心させた状態で軌道輪間に構成された隙間から、複数の転動体を軌道面間に挿入して、所定位置まで移動させることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受の組立方法。
- 同一平面上で各軌道輪を相対的に偏心させた状態で軌道輪間に構成された隙間から、複数の転動体を軌道面間に挿入した状態で、温度差付与工程を経た後、複数の転動体を所定位置まで移動させることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受の組立方法。
- 温度差付与工程は、一方の軌道輪である外輪を加熱して膨張させることで前記軸受すきまを広げることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の転がり軸受の組立方法。
- 温度差付与工程は、前記他方の軌道輪である内輪を冷却して収縮させることで前記軸受すきまを広げることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の転がり軸受の組立方法。
- 前記転がり軸受は、軸受すきまが負に設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の転がり軸受の組立方法。
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JP2006121560A JP2007292219A (ja) | 2006-04-26 | 2006-04-26 | 転がり軸受の組立方法 |
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JP2009156456A (ja) * | 2007-12-28 | 2009-07-16 | Jtekt Corp | 転がり軸受の組立方法 |
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CN113894291A (zh) * | 2021-09-23 | 2022-01-07 | 石家庄铁道大学 | 一种激光选区熔化成形高铁用GCr15轴承钢的方法 |
CN114352646A (zh) * | 2022-01-21 | 2022-04-15 | 烟台汽车工程职业学院 | 一种机械用高速轴承内外圈生产装配机械手 |
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2006
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