JP2007290374A - 印刷ヘッドの製造方法および印刷ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電アクチュエータにクラックが発生しにくく、吐出速度のバラツキが少ない印刷ヘッドの製造方法および該製造方法により製造される印刷ヘッドを提供することである。
【解決手段】流路部材16の表面に、厚み100μm以下の圧電アクチュエータ15を、液体加圧室16aの直上に変位素子5が配置するように接合する印刷ヘッドの製造方法であって、圧電アクチュエータ15を流路部材16の表面に接合した後、圧電アクチュエータ15に圧縮応力が加わった状態で、圧電セラミック層3を分極する印刷ヘッドの製造方法、およびこの製造方法より得られる印刷ヘッドである。
【選択図】図1
【解決手段】流路部材16の表面に、厚み100μm以下の圧電アクチュエータ15を、液体加圧室16aの直上に変位素子5が配置するように接合する印刷ヘッドの製造方法であって、圧電アクチュエータ15を流路部材16の表面に接合した後、圧電アクチュエータ15に圧縮応力が加わった状態で、圧電セラミック層3を分極する印刷ヘッドの製造方法、およびこの製造方法より得られる印刷ヘッドである。
【選択図】図1
Description
本発明は、印刷ヘッドの製造方法および印刷ヘッドに関し、特に、文字や画像の印刷に用いるインクジェット式プリンタに搭載される印刷ヘッドの製造方法および印刷ヘッドに関する。
近時、パーソナルコンピューターの普及やマルチメディアの発達に伴って、情報を記録媒体に出力する記録装置として、インクジェット方式の記録装置の利用が急速に拡大している。かかるインクジェット方式の記録装置には、印刷ヘッドが搭載されており、この種の印刷ヘッドには、インクが充填されたインク流路内に加圧手段としてのヒーターを備え、ヒーターによりインクを加熱、沸騰させ、インク流路内に発生する気泡によってインクを加圧し、インク吐出孔より、インク流として吐出させるサーマルヘッド方式と、インクが充填されるインク流路の一部の壁を変位素子によって屈曲変位させ、機械的にインク流路内のインクを加圧し、インク吐出孔よりインク流として吐出させる圧電方式が一般的に知られている。
圧電方式を利用したインクジェット記録装置に用いられる印刷ヘッドは、例えば図4(a)に示したように、複数の溝が液体加圧室23aとして並設され、各液体加圧室23aを仕切る壁として隔壁23bを形成した流路部材23の上に、圧電アクチュエータ21が接合された構造を有する。
圧電アクチュエータ21は、圧電セラミック層24の一方の主面に共通電極25を形成するとともに、他方の主面に複数の個別電極26を形成することにより、複数の変位素子27が設けられてなる。このアクチュエータ21は、流路部材23の開口部である液体加圧室23aの直上に個別電極26が位置するように、流路部材23と接合される。
そして、共通電極25と個別電極26との間に電圧を印加して変位素子27を振動させることにより液体加圧室23a内のインクを加圧し、流路部材23の底面に開口させた液体吐出孔28よりインク滴を吐出させる構造になっている。
また、図4(b)に示すように、圧電セラミック層24上に個別電極26を等ピッチで多数並設し、変位素子27を多数設けた印刷ヘッドを構成して、各変位素子27を独立して制御することにより、インクジェットプリンタの高速化及び高精度化に寄与することが可能である。
一方、上記のような構成の圧電アクチュエータ21は、分極時に反りが発生するという問題がある。特許文献1には、分極処理時に発生する圧電振動子ユニット先端部の反りを防止、または減少することができるインクジェット記録ヘッド用の圧電振動子ユニットとして、一方の極となる第1の電極層と他方の極となる第2の電極層とを圧電材料を挟んで交互に積層してなる圧電振動板を、所定ピッチで歯割りしてなる複数の圧電振動子(変位素子)を、その後端側を支持板に固定してなり、すくなくとも前記圧電振動板の分極処理を前記圧電振動板と前記支持板との接着後におこなうことが記載されている。
しかしながら、特許文献1記載の圧電振動子では、厚み方向が対称の構造であり、かつ圧電アクチュエータの厚さが大きいので特に問題とならなかったが、圧電アクチュエータが、厚さ100μm以下、特に50μm以下と薄く、かつ厚み方向に非対称の構造(すなわち圧電アクチュエータ21)を有する場合には、分極時に圧電アクチュエータに反りが発生する。
一般に、アクチュエータ21と流路部材23の接合は、圧電アクチュエータ21を分極した後に行なわれる。このため、接合によって圧電アクチュエータ21の反りを強制的に修正して平坦にするので、圧電アクチュエータ21にクラックが発生するという問題がある。また、クラックが発生しない場合でも、圧電アクチュエータ21に反りがある状態で流路部材23に接合し、強制的に反りを修正してしまうと、圧電アクチュエータ21の面内での残留応力にバラツキが生じるので、各変位素子27間で変位特性にバラツキが生じる。その結果、インクの吐出速度に悪影響を及ぼし、吐出速度にバラツキが生じるという問題があった。
特開平9−239977号公報
本発明の課題は、圧電アクチュエータにクラックが発生しにくく、吐出速度のバラツキが少ない印刷ヘッドの製造方法および該製造方法により製造される印刷ヘッドを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)複数の液体加圧室を有する流路部材の表面に、振動板上に、共通電極、圧電セラミック層および個別電極をこの順に積層し、個別電極と共通電極で前記圧電セラミック層を挟持して構成される変位素子を有する厚み100μm以下の圧電アクチュエータを、前記液体加圧室の直上に変位素子が配置するように接合する印刷ヘッドの製造方法であって、前記圧電アクチュエータを流路部材の表面に接合した後、該圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態で、圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極することを特徴とする印刷ヘッドの製造方法。
(2)前記圧電アクチュエータを流路部材の表面に接合した時に、前記圧電アクチュエータに圧縮応力が加わり、その状態で圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極する前記(1)記載の印刷ヘッドの製造方法。
(3)前記接合が、加熱工程および冷却工程を含み、該冷却工程において、前記圧電アクチュエータに圧縮応力が加わり、その状態で圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極する前記(1)または(2)記載の印刷ヘッドの製造方法。
(4)前記接合前に、圧電アクチュエータのエージング工程を含み、該エージング工程は、接合前の前記圧電アクチュエータにエージング処理を施す工程、または接合前の前記圧電アクチュエータに荷重をかけた状態でエージング処理を施す工程である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
(5)前記流路部材の熱膨張係数が、前記圧電アクチュエータの熱膨張係数よりも大きい前記(1)〜(4)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
(6)前記圧電アクチュエータは、幅に対する厚みの比が2×10-4〜1×10-2である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
(7)前記圧電アクチュエータは、前記圧電セラミック層の表面に前記個別電極を複数配列して、この個別電極と共通電極とで圧電セラミック層を挟持して構成される前記変位素子が複数形成されている前記(1)〜(6)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法によって製造されたことを特徴とする印刷ヘッド。
(1)複数の液体加圧室を有する流路部材の表面に、振動板上に、共通電極、圧電セラミック層および個別電極をこの順に積層し、個別電極と共通電極で前記圧電セラミック層を挟持して構成される変位素子を有する厚み100μm以下の圧電アクチュエータを、前記液体加圧室の直上に変位素子が配置するように接合する印刷ヘッドの製造方法であって、前記圧電アクチュエータを流路部材の表面に接合した後、該圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態で、圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極することを特徴とする印刷ヘッドの製造方法。
(2)前記圧電アクチュエータを流路部材の表面に接合した時に、前記圧電アクチュエータに圧縮応力が加わり、その状態で圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極する前記(1)記載の印刷ヘッドの製造方法。
(3)前記接合が、加熱工程および冷却工程を含み、該冷却工程において、前記圧電アクチュエータに圧縮応力が加わり、その状態で圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極する前記(1)または(2)記載の印刷ヘッドの製造方法。
(4)前記接合前に、圧電アクチュエータのエージング工程を含み、該エージング工程は、接合前の前記圧電アクチュエータにエージング処理を施す工程、または接合前の前記圧電アクチュエータに荷重をかけた状態でエージング処理を施す工程である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
(5)前記流路部材の熱膨張係数が、前記圧電アクチュエータの熱膨張係数よりも大きい前記(1)〜(4)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
(6)前記圧電アクチュエータは、幅に対する厚みの比が2×10-4〜1×10-2である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
(7)前記圧電アクチュエータは、前記圧電セラミック層の表面に前記個別電極を複数配列して、この個別電極と共通電極とで圧電セラミック層を挟持して構成される前記変位素子が複数形成されている前記(1)〜(6)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法によって製造されたことを特徴とする印刷ヘッド。
上記(1)〜(3)記載の印刷ヘッドの製造方法によれば、分極による反りのない圧電アクチュエータを流路部材に接合するので、圧電アクチュエータの反りを流路部材との接合で強制的に修正することによるクラックの発生を抑制することができる。しかも、該圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態で圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極するので、該分極により発生する応力を圧電アクチュエータが吸収することができ、その結果、厚さ100μm以下かつ厚み方向に非対称の構造を有する圧電アクチュエータであっても、該圧電アクチュエータにクラックが発生するのを抑制することができ、信頼性が向上するという効果がある。さらに、分極による反りのない状態で圧電アクチュエータを流路部材に接合するので、変位素子の変位特性にバラツキが発生しにくく、インクの吐出速度のバラツキを小さくすることができる。また、圧電アクチュエータと流路部材との位置合わせ精度が向上する。
上記(4)記載の印刷ヘッドの製造方法によれば、接合前の前記圧電アクチュエータにエージング処理を施す工程を含むので、圧電セラミックス層の結晶相を安定化させることができ、よって変位量を高くすることができると共に、変位特性にバラツキが生じるのを抑制することができる。また、前記エージング処理を圧電アクチュエータに荷重をかけた状態で施すと、前記した効果に加えて、圧電アクチュエータの反りを修正することができるので、流路部材との接合時における応力のバラツキを抑制することができ、よって変位特性にバラツキが生じるのをより抑制することができる。
上記(5)記載の印刷ヘッドの製造方法によれば、流路部材の熱膨張係数が、前記圧電アクチュエータの熱膨張係数よりも大きいので、圧電アクチュエータを流路部材の表面に接合すると、接合温度から常温に戻る際に、圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態にすることができる。
上記(6)記載のような幅に対する厚みの比が2×10-4〜1×10-2である圧電アクチュエータは、変位特性に優れるものの、わずかな応力でも反りやすいので、分極時において反りが顕著に発生するが、所定の状態で分極することによって、反りの影響を効果的に低減することができる。
上記(7)記載の印刷ヘッドの製造方法によれば、複数形成された変位素子において、圧電アクチュエータを流路部材の表面に接合した後、該圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態で、圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極することにより、各変位素子間の変位特性のバラツキを抑制することができるので、吐出速度のバラツキを少なくすることができる。しかも、各変位素子を独立して制御することにより、印刷ヘッドの高速化及び高精度化に寄与することができる。
上記(8)記載の印刷ヘッドによれば、上記特定の製造方法で製造されるので、圧電アクチュエータのクラックの発生が抑制されており、インクの吐出速度のバラツキが小さい印刷ヘッドを実現することができる。
上記(6)記載のような幅に対する厚みの比が2×10-4〜1×10-2である圧電アクチュエータは、変位特性に優れるものの、わずかな応力でも反りやすいので、分極時において反りが顕著に発生するが、所定の状態で分極することによって、反りの影響を効果的に低減することができる。
上記(7)記載の印刷ヘッドの製造方法によれば、複数形成された変位素子において、圧電アクチュエータを流路部材の表面に接合した後、該圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態で、圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極することにより、各変位素子間の変位特性のバラツキを抑制することができるので、吐出速度のバラツキを少なくすることができる。しかも、各変位素子を独立して制御することにより、印刷ヘッドの高速化及び高精度化に寄与することができる。
上記(8)記載の印刷ヘッドによれば、上記特定の製造方法で製造されるので、圧電アクチュエータのクラックの発生が抑制されており、インクの吐出速度のバラツキが小さい印刷ヘッドを実現することができる。
以下、本発明の印刷ヘッドの製造方法および印刷ヘッドの一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は、本実施形態の印刷ヘッド示す概略断面図であり、図1(b)は、その平面図である。図2は、図1(a)の圧電アクチュエータを示す拡大概略断面図である。図3は、本実施形態にかかる圧電アクチュエータのエージング工程を示す概略説明図である。
図1(a)に示すように、本実施形態の印刷ヘッドは、流路部材16と、圧電アクチュエータ15を備えており、圧電アクチュエータ15が流路部材16の表面に、液体加圧室16aの直上に変位素子5が配置するように接合されてなり、変位素子5の変位によって液体を吐出させるものである。
<流路部材>
流路部材16は圧延法等によって得られ、液体吐出口18および液体加圧室16aはエッチング等により所定の形状に加工されて設けられる。この流路部材16は、例えばFe−Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系からなる群より選ばれる少なくとも1種によって形成されていることが望ましい。特に、インクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましく、Fe−Cr系がより好ましい。
流路部材16は圧延法等によって得られ、液体吐出口18および液体加圧室16aはエッチング等により所定の形状に加工されて設けられる。この流路部材16は、例えばFe−Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系からなる群より選ばれる少なくとも1種によって形成されていることが望ましい。特に、インクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましく、Fe−Cr系がより好ましい。
また、流路部材16は、例えば厚み30〜100・m程度の薄板を積層して作製することができる。各薄板は、エッチングや金型による打ち抜き等の方法によって形成された微細な溝や孔を備えており、複数の薄板を積層することによって、各薄板に形成された溝や孔が、液体加圧室16a、液体吐出口18及び液体流路(不図示)等を構成するように組み合わせることができる。
上記のような薄板の材料としては、例えばステンレス板、アルミニウム板、モリブデン板などの金属材料、シリコン等の半導体材料、またはアルミナや炭化珪素等のセラミックス材料等が挙げられ、特に、導電性を有し、かつ安価で精密加工のできる金属材料を用いることが好ましい。
<圧電アクチュエータ>
圧電アクチュエータ15は、図1(a)および図2に示すように、振動板1、共通電極2、圧電セラミック層3および個別電極4で構成されており、振動板1上に、共通電極2、圧電セラミック層3および個別電極4をこの順に積層したものである。
圧電アクチュエータ15は、図1(a)および図2に示すように、振動板1、共通電極2、圧電セラミック層3および個別電極4で構成されており、振動板1上に、共通電極2、圧電セラミック層3および個別電極4をこの順に積層したものである。
共通電極2,個別電極4は、圧電アクチュエータ15の電極を構成するものであり、個別電極4は、図1(b)に示すように、圧電セラミック層3の表面に複数形成されている。これにより、共通電極2,個別電極4で圧電セラミック層3を挟持して構成される変位素子5が複数形成される。したがって、圧電アクチュエータ15は、厚み方向に非対称の構造を有する。
圧電アクチュエータ15の厚みTは100μm以下、好ましくは50μm以下である。これにより、大きな変位を得ることができるので、低電圧で高効率の駆動を実現できる。また、圧電アクチュエータ15の厚みTの下限値は、十分な機械的強度を有し、取扱いおよび作動中の破壊を防止する上で10μm、好ましくは20μm、より好ましくは30μmであるのがよい。上記した通り、このような薄い厚みでかつ厚み方向に非対称の構造を有する圧電アクチュエータを備えた印刷ヘッドは、クラックの発生や吐出速度にバラツキがあるが、このような構成の圧電アクチュエータ15であっても、後述するように、所定の状態で分極することによって、クラックが発生しにくく、吐出速度のバラツキが少ない印刷ヘッドを得ることができる。
圧電アクチュエータ15は、幅に対する厚みTの比(すなわち式:厚み/幅で算出される値)が2×10-4〜1×10-2であるのが好ましい。これにより、高い変位特性を得ることができる。また、上記した通り、このような幅に対する厚みの比である圧電アクチュエータは、わずかな応力でも反りやすいが、後述するように、所定の状態で分極することによって、反りの影響を効果的に低減することができる。なお、圧電アクチュエータ15の前記幅は10〜60mmであるのが好ましく、この範囲内で、幅に対する厚みTの比が所定の値となるのが好ましい。
個別電極4および共通電極2間に電圧を印加すると、該電圧が印加された個別電極4と共通電極2に挟持された部位の圧電セラミック層3が変位する。具体的には、圧電セラミック層3は、振動板1により積層方向と直交する方向の変位が抑制されるので、変位素子5は積層方向に屈曲する。その結果、圧電アクチュエータ15はユニモルフ型のアクチュエータとして駆動する。
圧電アクチュエータ15の駆動は、駆動時の電界強度Eと、圧電セラミック層3の電界強度Ecとの比率E/Ecが1より小さい条件で駆動させるのが好ましい。これにより、圧電アクチュエータ15を長期間安定して駆動することができる。これに対し、前記比率E/Ecが1より大きいと、分域回転の寄与が大きくなり、変位劣化しやすくなる。
(振動板・圧電セラミック層)
振動板1は圧電セラミックスからなり、圧電セラミック層3は、振動板1と略同一組成の圧電セラミックスからなるのが好ましい。ここで、前記圧電セラミックスとは、圧電性を示すセラミックスを意味し、例えばBi層状化合物やタングステンブロンズ構造物質、Nb酸アルカリ化合物のペロブスカイト構造化合物、Pbを含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛(PT)等を含有するペロブスカイト構造化合物、チタン酸バリウム(BT)等が挙げられるが、これら中でもPbを含むジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛(PT)が、電極(共通電極2,個別電極4)との濡れ性を高めると共に、電極との密着強度を高める点で好適である。
振動板1は圧電セラミックスからなり、圧電セラミック層3は、振動板1と略同一組成の圧電セラミックスからなるのが好ましい。ここで、前記圧電セラミックスとは、圧電性を示すセラミックスを意味し、例えばBi層状化合物やタングステンブロンズ構造物質、Nb酸アルカリ化合物のペロブスカイト構造化合物、Pbを含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛(PT)等を含有するペロブスカイト構造化合物、チタン酸バリウム(BT)等が挙げられるが、これら中でもPbを含むジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛(PT)が、電極(共通電極2,個別電極4)との濡れ性を高めると共に、電極との密着強度を高める点で好適である。
また、Aサイト構成元素としてPbを含有し、かつBサイト構成元素としてZrおよびTiを含有する結晶であるジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等のジルコン酸チタン酸鉛系化合物が、より絶対値の高い圧電定数d31を有する安定な圧電焼結体(圧電アクチュエータ15)を得るうえで好ましい。
特に、ジルコン酸チタン酸鉛系化合物などの圧電セラミックス(すなわち圧電セラミック層3および振動板1)のAサイトとBサイトの組成比が{Aサイト/Bサイト}≦1であるのが好ましい。
圧電セラミック層3および振動板1は、Sr、Ba、Ni、Sb、Nb、Zn、Yb及びTeから選ばれる少なくとも1種を含むのが好ましい。これにより、より安定した圧電焼結体(圧電アクチュエータ15)を得ることがでる。このような圧電セラミック層3および振動板1としては、例えば副成分としてPb(Zn1/3Sb2/3)O3及びPb(Ni1/2Te1/2)O3を固溶してなるものを例示できる。
また、圧電セラミック層3および振動板1は、特に、Aサイト構成元素として、アルカリ土類元素を含有することが望ましい。アルカリ土類元素としては、Ba、Srが高い変位を得られる点で好ましく、Baを0.02〜0.08モル、Srを0.02〜0.12モル含むことが、正方晶組成が主体の組成の場合に大きな変位を得るうえで有利である。
このような圧電セラミック層3および振動板1としては、例えばPb1-x-ySrxBay(Zn1/3Sb2/3)a(Ni1/2Te1/2)bZr1-a-b-cTicO3+α重量%Pb1/2NbO3(0≦x≦0.14、0≦y≦0.14、0.05≦a≦0.1、0.002≦b≦0.01、0.44≦c≦0.50、α=0.1〜1.0)等で表されものが挙げられる。
積層圧電体磁器である圧電セラミック層3および振動板1は、平均結晶粒径が2.5μm以下であることが好ましい。これにより、PZTなどの圧電セラミックスへのAgの置換固溶をより効果的に抑制することができる。結晶粒径を上記範囲にするには、例えばPZT原料調合時のAサイトとBサイトの組成比を1以下にすればよい。結晶平均粒径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察し、インターセプト法により求めることができる。
圧電セラミック層3の厚みは5〜50μm程度、好ましくは10〜30μm程度であるのがよい。これにより、変位素子5が高い変位を示すことができる。これに対し、前記厚みが5μmより薄いと、機械的強度が低下し、取扱いおよび作動中に破壊するおそれがあり、50μmより厚いと、変位が低下するおそれがあるので好ましくない。振動板1の厚みは5〜50μm、好ましくは10〜30μm程度であるのがよい。
(共通電極)
共通電極2としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばAu、Ag、Pd、Pt、Cu、Alやそれらの合金等を用いることができる。具体的には、例えばAg−Pd合金が例示できる。また、共通電極2の厚さは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度である必要があり、通常0.5〜5μm程度、好ましくは1〜4μmであるのがよい。
共通電極2としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばAu、Ag、Pd、Pt、Cu、Alやそれらの合金等を用いることができる。具体的には、例えばAg−Pd合金が例示できる。また、共通電極2の厚さは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度である必要があり、通常0.5〜5μm程度、好ましくは1〜4μmであるのがよい。
(個別電極)
個別電極4としては、上記した共通電極2と同様に導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばAu、Ag、Pd、Pt、Cu、Alやそれらの合金等を用いることができる。また、個別電極4の厚さは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度である必要があり、例えば0.1〜2μm程度、好ましくは0.1〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.3μmであるのがよい。
個別電極4としては、上記した共通電極2と同様に導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばAu、Ag、Pd、Pt、Cu、Alやそれらの合金等を用いることができる。また、個別電極4の厚さは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度である必要があり、例えば0.1〜2μm程度、好ましくは0.1〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.3μmであるのがよい。
また、同時焼成で作製する上で、共通電極2,個別電極4が、それぞれ銀を60〜85体積%、好ましくは70〜80体積%含む銀−パラジウム合金からなることが好ましい。これにより、Agの拡散量が低減され、粒内破壊を抑制することができる。
(製造方法)
次に、上記で説明した圧電アクチュエータ15の製造方法について、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を圧電セラミックスとして用いた場合について説明する。まず、チタン酸ジルコン酸鉛化合物(例えば純度99%、平均粒子径1μm以下の粉末)などの圧電セラミックスを主成分とする原料粉体を準備し、これを用いてスラリーを作製し、このスラリーを用いて、グリーンシートを作製する。グリーンシートの作製方法は、例えばドクターブレード法、ロールコータ等の周知のテープ成形方法を採用することができる。
次に、上記で説明した圧電アクチュエータ15の製造方法について、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を圧電セラミックスとして用いた場合について説明する。まず、チタン酸ジルコン酸鉛化合物(例えば純度99%、平均粒子径1μm以下の粉末)などの圧電セラミックスを主成分とする原料粉体を準備し、これを用いてスラリーを作製し、このスラリーを用いて、グリーンシートを作製する。グリーンシートの作製方法は、例えばドクターブレード法、ロールコータ等の周知のテープ成形方法を採用することができる。
次いで、作製したグリーンシートのうち、焼成後に振動板1となるグリーンシートの主面に、焼成後に共通電極2となる金属パターンを形成する。金属パターンの形成方法は、例えばスクリーン印刷法等を例示することができるが、他の公知の手法を採用することも可能である。
次に、これらのグリーンシートを積層して積層体とし、この積層体を10〜50MPaの圧力で加圧密着させて積層成形体を得る。前記加圧密着の際には、グリーンシートと実質的に同一組成の圧電セラミックスと、有機組成物からなる拘束シートを、上記積層体の両面若しくは片面に配置した状態で、加圧密着を行うのが好ましい。このように、拘束シートで外側のグリーンシートの収縮を抑制することによって、積層体の反りを低減するという効果が期待できる。
ついで、この積層成形体を所定の形状に切断した後、400℃程度で脱バインダーを行い、900〜1100℃程度で焼成して、共通電極2を内蔵する積層圧電体を作製する。なお、前記焼結前の生密度が4.5g/cm2以上であることが好ましい。これにより、より低温での焼成が可能であり、さらに生密度を上げると、Pbの蒸発を抑制することが可能である。
この積層圧電体の表面に、スクリーン印刷法等の方法により導体ペーストを印刷して、個別電極4となる金属パターンを形成し、600〜850℃程度で熱処理する。これにより、分極前の圧電アクチュエータ15を得ることができる。
上記のようにして得た圧電アクチュエータ15は、後述するように、前記した流路部材16に接合される。ここで、この接合前に圧電アクチュエータ15のエージング工程を含むのが好ましい。これにより、圧電セラミックス層3の結晶相を安定化させて変位量を高くすることができると共に、変位特性にバラツキが生じるのを抑制することができる。
具体的には、前記エージング工程は、接合前の圧電アクチュエータ15にエージング処理を施す工程、または接合前の圧電アクチュエータ15に荷重をかけた状態でエージング処理を施す工程である。前記エージング処理とは、圧電セラミックス(すなわち圧電セラミックス層3)のキュリー温度よりも50〜150℃程度低い温度で10分以上の加熱処理を行なうことを意味する。このエージング処理により、圧電アクチュエータ15を構成する圧電セラミックス層3の結晶相が正方晶側から菱面体晶側にシフトして前記結晶相が安定化するので、変位量を高くすることができる。
一方、前記キュリー温度に近すぎる温度でエージング処理を行うと、エージング処理温度からの降温時に再度結晶に歪が生じるため、前記したエージング効果が得られないおそれがある。また、前記キュリー温度に近い温度でエージング処理を行うと、短時間で前記エージング効果を得やすくなるものの、エージング処理時間が10分よりも短いと、前記エージング効果が得られないおそれがある。
エージング処理の具体例を挙げると、圧電セラミックス層3がジルコン酸チタン酸鉛(PZT)からなる場合には、エージング処理温度は200〜300℃であり、エージング処理時間は10分〜1時間30分程度であるのがよい。
前記したエージング処理は、圧電アクチュエータ15に荷重をかけた状態で施してもよい。これにより、前記した効果に加えて、圧電アクチュエータ15の反りを修正できるので、流路部材16との接合時における応力のバラツキを抑制することができ、よって変位特性にバラツキが生じるのをより抑制することができる。具体例を挙げると、反り量が400μm程度である圧電アクチュエータ15に荷重をかけた状態でエージング処理を施すと、前記反り量を200μm以下にまで低減することができる。
圧電アクチュエータ15に荷重をかける方法としては、例えば圧電アクチュエータ15の上に重りを乗せる方法等が挙げられる。すなわち、図3に示すように、まず、基板50aの上に圧電アクチュエータ15を乗せ、ついで、この圧電アクチュエータ15の上に基板50bを乗せて荷重をかければよい。
基板50a,50bの組成としては、例えば酸化ジルコニア(ZrO2)等が挙げられる。基板50a,50bの縦横の寸法としては、圧電アクチュエータ15の縦横の寸法の1.1倍以上が好ましい。これに対し、前記寸法が1.1倍より小さいと、均一に荷重がかからないおそれがある。
基板50a,50bの表面は、圧電アクチュエータ15に均一な荷重をかける上で平坦であるのが好ましく、具体的には、基板50a,50bの反り量が30μm以下であるのが好ましい。これに対し、前記反り量が30μmより大きいと、かかる荷重が不均一になり、得られる反り低減効果が小さくなるおそれがある。
基板50a,50bの重量としては、圧電アクチュエータ15の重量の5倍〜30倍が好ましい。これに対し、前記重量が5倍より小さいと、得られる反り低減効果が小さくなり、30倍より大きいと、圧電アクチュエータ15にクラックが発生するおそれがある。なお、基板50aに代えて、平坦な表面を有する基台を用いてもよい。
<印刷ヘッド>
図1(a)に示すように、変位素子5と液体加圧室16aとの位置がそれぞれ揃うように、すなわち共通電極2および個別電極4が、液体加圧室16aの真上に配置するように、圧電アクチュエータ15と流路部材16を接合する。具体的には、この印刷ヘッドは、複数の液体加圧室16aが並設され、各液体加圧室16aを仕切る壁として隔壁16bを形成した流路部材16上に上記で説明した分極前の圧電アクチュエータ15が接合されている。接合は、振動板1が液体加圧室16aの空間と当接するようにして行い、より具体的には、変位素子5の各個別電極4と、各液体加圧室16aとが対応するように接合される。
図1(a)に示すように、変位素子5と液体加圧室16aとの位置がそれぞれ揃うように、すなわち共通電極2および個別電極4が、液体加圧室16aの真上に配置するように、圧電アクチュエータ15と流路部材16を接合する。具体的には、この印刷ヘッドは、複数の液体加圧室16aが並設され、各液体加圧室16aを仕切る壁として隔壁16bを形成した流路部材16上に上記で説明した分極前の圧電アクチュエータ15が接合されている。接合は、振動板1が液体加圧室16aの空間と当接するようにして行い、より具体的には、変位素子5の各個別電極4と、各液体加圧室16aとが対応するように接合される。
ここで、圧電アクチュエータ15を流路部材16の表面に接合した時に、圧電アクチュエータ15に圧縮応力が加わり、その状態で圧電アクチュエータ15の圧電セラミック層3を分極するのが好ましい。具体的には、前記接合が、加熱工程および冷却工程を含み、該冷却工程において、圧電アクチュエータ15に圧縮応力が加わり、その状態で圧電アクチュエータ15の圧電セラミック層3を分極するのがよい。
前記接合は、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ15や流路部材16への影響を及ぼさない上で、熱硬化温度が100〜250℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータ15と流路部材16とを加熱接合することができ(すなわち加熱工程)、接合温度から常温に戻る際(すなわち冷却工程)に、圧電アクチュエータ15に圧縮応力が加わる。
ここで、流路部材16の熱膨張係数が、圧電アクチュエータ15の熱膨張係数よりも大きいのが好ましい。これにより、圧電アクチュエータ15を流路部材16の表面に接合すると、接合温度から常温に戻る際に、圧電アクチュエータ15に圧縮応力が加わった状態にすることができる。具体的には、流路部材16の熱膨張係数は6×10-6〜17×10-6/℃であり、圧電アクチュエータ15の熱膨張係数は6×10-6〜8×10-6/℃であるのが好ましく、この範囲内で、流路部材16の熱膨張係数が、圧電アクチュエータ15の熱膨張係数よりも大きくなるのが好ましい。前記熱膨張係数は、圧電アクチュエータ15および流路部材16それぞれの組成を調製して、所定の値にすることができる。前記熱膨張係数は、JIS R1618に準拠して測定し、得られた値である。
ついで、この状態、すなわち接合が完了して圧電アクチュエータ15が流路部材16に固定されると共に、圧電アクチュエータ15に圧縮応力が加わった状態で、個別電極4と共通電極2の間に分極電圧を印加して圧電セラミック層3を分極して、本実施形態にかかる印刷ヘッドを得ることができる。前記分極の条件としては、圧電アクチュエータ15の組成や厚み等に応じて、任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば0.5〜5kv/mm程度の直流電圧を、1〜10分間程度印加して分極を行えばよい。
そして、個別電極4と共通電極2との間に図示しない駆動回路より電圧を印加すると、電圧が印加され変位した変位素子5に対応する液体加圧室16a内のインクが加圧され、圧電アクチュエータ15を振動させることにより、液体加圧室16a内のインクが流路部材16の底面に開口させた液体吐出孔18よりインク滴として吐出される。この際、本実施形態の印刷ヘッドによると、吐出速度のバラツキを少なくすることができる。また、この印刷ヘッドは変位特性に優れるので、高速で高精度な吐出というという特徴が得られ、その結果、高速印刷に好適な印刷ヘッドを提供することができる。また、本発明の印刷ヘッドをプリンタに搭載することによって、例えば上記の印刷ヘッドにインクを供給するインクタンクと、記録紙に印刷するための記録紙搬送機構とを備えているプリンタでは、従来に比べて高速・高精度の印刷を容易に達成することができる。
以上、本発明の一実施形態について示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更や改良したものにも適用できることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態では、振動板1および圧電セラミック層3が、いずれも1層で構成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、振動板および/または圧電セラミック層が複数層で構成されていてもよい。この場合には、圧電アクチュエータの厚みを簡単に調整することができる。また、内部に電極等の配線回路層を形成してもよい。
また、振動板1は圧電セラミック層3の圧電セラミックスと略同一の材料であるのが好ましいが、振動板1および圧電セラミック層3の圧電セラミックス組成は完全に一致している必要はなく、本発明の効果、すなわち圧電アクチュエータにクラックが発生しにくく、吐出速度のバラツキを少なくすることができる範囲内で、その組成が異なっていてもよい。
圧電アクチュエータ15を流路部材16の表面に接合した後、圧電アクチュエータ15に圧縮応力が加わった状態とする方法として、流路部材16の熱膨張係数を圧電アクチュエータ15の熱膨張係数よりも大きくして前記所定の状態とする方法について説明したが、接合に用いる接着剤の熱膨張係数や硬化温度を調節して、前記所定の状態としてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<印刷ヘッドの作製>
〔試料No.4〜8〕
(圧電アクチュエータの作製)
まず、原料として、焼成後に表1に示す熱膨張係数を有するような、純度99%以上のチタン酸ジルコン酸鉛を含有する圧電セラミックス粉末を準備した。ついで、この粉末に、水系バインダーとしてブチルメタクリレート、分散剤にポリカルボン酸アンモニウム塩、溶剤にイソプロビルアルコールと純水を各々添加して混合し、スラリーを得た。このスラリーをドクタープレード法によりキャリアフィルム上に、シート形状に塗布して、グリーンシートを作製した。このグリーンシートは、圧セラミック層用および振動板用の両方に使用した。
〔試料No.4〜8〕
(圧電アクチュエータの作製)
まず、原料として、焼成後に表1に示す熱膨張係数を有するような、純度99%以上のチタン酸ジルコン酸鉛を含有する圧電セラミックス粉末を準備した。ついで、この粉末に、水系バインダーとしてブチルメタクリレート、分散剤にポリカルボン酸アンモニウム塩、溶剤にイソプロビルアルコールと純水を各々添加して混合し、スラリーを得た。このスラリーをドクタープレード法によりキャリアフィルム上に、シート形状に塗布して、グリーンシートを作製した。このグリーンシートは、圧セラミック層用および振動板用の両方に使用した。
ついで、Ag‐Pd合金粉末を含有する共通電極ペーストを振動板用のグリーンシートの表面に厚さ4μmで印刷し、共通電極を形成した。更に、共通電極が印刷された面を上向きにして振動板用のグリーンシートの上に圧電セラミック層用のグリーンシートを積層し、加圧プレスして積層体を得た。
この積層体を脱脂処理した後、980℃で酸素99%以上の雰囲気中に4時間保持して焼結し、圧電セラミック層と振動板と共通電極とからなる積層焼結体を作製した。次に、圧電セラミック層の表面に個別電極を形成した。個別電極は、スクリーン印刷にてAuペーストを塗布した後、これを600〜800℃の大気中で焼付けて形成した。最後に、個別電極にリード線を半田で接続して、表1に示す形状の圧電アクチュエータを得た。なお、表1中の熱膨張係数は、上記で説明したJIS R1618に準拠して測定した。
(流路部材の作製)
流路部材は、圧延法によって作製した(Fe−Cr系)。なお、液体吐出口および液体加圧室はエッチングにより所定の形状に加工した。得られた流路部材の熱膨張係数を、圧電アクチュエータと同様にして測定した。その結果を表1に示す。
流路部材は、圧延法によって作製した(Fe−Cr系)。なお、液体吐出口および液体加圧室はエッチングにより所定の形状に加工した。得られた流路部材の熱膨張係数を、圧電アクチュエータと同様にして測定した。その結果を表1に示す。
(印刷ヘッドの作製)
上記で得た圧電アクチュエータを、上記で得た流路部材の表面に、液体加圧室の直上に変位素子が配置するように接合して、各印刷ヘッドを得た(表1中の試料No.4〜8)。なお、接合は、熱硬化温度が150℃のエポキシ樹脂接着剤を用いて行なった。これにより、圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態となる。
上記で得た圧電アクチュエータを、上記で得た流路部材の表面に、液体加圧室の直上に変位素子が配置するように接合して、各印刷ヘッドを得た(表1中の試料No.4〜8)。なお、接合は、熱硬化温度が150℃のエポキシ樹脂接着剤を用いて行なった。これにより、圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態となる。
(分極)
流路部材との接合後、圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態(流路部材の熱膨張係数が、圧電アクチュエータの熱膨張係数よりも大きい)で、3kv/mmの直流電圧を5分間印加して圧電セラミック層の分極を行なった。
流路部材との接合後、圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態(流路部材の熱膨張係数が、圧電アクチュエータの熱膨張係数よりも大きい)で、3kv/mmの直流電圧を5分間印加して圧電セラミック層の分極を行なった。
〔試料No.10,11〕
上記実施例と同様にして積層焼結体を得、圧電セラミック層の表面に個別電極を形成した後、表1に示す条件で圧電アクチュエータのエージング工程を行った。ついで、個別電極にリード線を半田で接続して、表1に示す形状の圧電アクチュエータを得た以外は、上記実施例と同様にして各印刷ヘッドを得、分極を行なった(表1中の試料No.10,11)。
上記実施例と同様にして積層焼結体を得、圧電セラミック層の表面に個別電極を形成した後、表1に示す条件で圧電アクチュエータのエージング工程を行った。ついで、個別電極にリード線を半田で接続して、表1に示す形状の圧電アクチュエータを得た以外は、上記実施例と同様にして各印刷ヘッドを得、分極を行なった(表1中の試料No.10,11)。
なお、表1中、「エージング処理」とは、個別電極にリード線を接続する前の圧電アクチュエータについて、エージング処理温度250℃、エージング処理時間1時間の条件でエージング処理を施すことを意味する。また、表1中、「酸化ジルコニア基板」とは、個別電極にリード線を接続する前の圧電アクチュエータを図3に示すような状態にして、荷重をかけたことを意味する。基板50a,50bの物性は、以下の通りである。
(基板50a,50bの物性)
組成:酸化ジルコニア(ZrO2)
寸法:前記圧電アクチュエータの寸法に対して縦横とも約1.3倍
質量:前記圧電アクチュエータの質量の約10倍
(基板50a,50bの物性)
組成:酸化ジルコニア(ZrO2)
寸法:前記圧電アクチュエータの寸法に対して縦横とも約1.3倍
質量:前記圧電アクチュエータの質量の約10倍
[比較例]
〔試料No.1〜3,9〕
上記実施例と同様にして、圧電アクチュエータおよび流路部材を得、前記圧電アクチュエータ(すなわち流路部材と接合前の圧電アクチュエータ)について、3kv/mmの直流電圧を5分間印加して圧電セラミック層の分極を行なった。ついで、上記実施例と同様にして、分極後の圧電アクチュエータを、流路部材の表面に、液体加圧室の直上に変位素子が配置するように接合して、各印刷ヘッドを得た(表1中の試料No.1〜3)。
〔試料No.1〜3,9〕
上記実施例と同様にして、圧電アクチュエータおよび流路部材を得、前記圧電アクチュエータ(すなわち流路部材と接合前の圧電アクチュエータ)について、3kv/mmの直流電圧を5分間印加して圧電セラミック層の分極を行なった。ついで、上記実施例と同様にして、分極後の圧電アクチュエータを、流路部材の表面に、液体加圧室の直上に変位素子が配置するように接合して、各印刷ヘッドを得た(表1中の試料No.1〜3)。
また、圧電アクチュエータの形状を表1に示す形状(すなわち圧電アクチュエータの厚みが本発明の範囲外)にした以外は、上記実施例と同様にして、圧電アクチュエータおよび流路部材を得た。ついで、上記実施例と同様にして、この圧電アクチュエータ流路部材の表面に接合後、圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態(流路部材の熱膨張係数が、圧電アクチュエータの熱膨張係数よりも大きい)で、3kv/mmの直流電圧を5分間印加して圧電セラミック層の分極を行ない、印刷ヘッドを得た(表1中の試料No.9)。
<評価>
上記で得られた印刷ヘッド(表1中の試料No.1〜11)について、クラックの有無、結晶相c/a、変位量(平均値・バラツキ)を評価した。各評価方法を以下に示すと共に、その結果を表1に併せて示す。
上記で得られた印刷ヘッド(表1中の試料No.1〜11)について、クラックの有無、結晶相c/a、変位量(平均値・バラツキ)を評価した。各評価方法を以下に示すと共に、その結果を表1に併せて示す。
(クラックの有無)
圧電アクチュエータを流路部材に接合した際、圧電アクチュエータのクラックの発生の有無を目視観察により評価した。なお、評価基準は以下のように設定した。
評価基準
○:圧電アクチュエータにクラックが発生しない
×:圧電アクチュエータにクラックが発生した
圧電アクチュエータを流路部材に接合した際、圧電アクチュエータのクラックの発生の有無を目視観察により評価した。なお、評価基準は以下のように設定した。
評価基準
○:圧電アクチュエータにクラックが発生しない
×:圧電アクチュエータにクラックが発生した
(結晶相c/a)
各圧電セラミック層の格子定数比c/aは、X線回折法(XRD)からa軸の格子定数とc軸の格子定数の比率を求めた。なお、この値が小さいほど、結晶相が安定化していることを示す。
各圧電セラミック層の格子定数比c/aは、X線回折法(XRD)からa軸の格子定数とc軸の格子定数の比率を求めた。なお、この値が小さいほど、結晶相が安定化していることを示す。
(変位量)
変位量は、共通電極と個別電極との間に25Vの直流電圧を印加し、室温にて周波数10kHzのsin波形で駆動した際の変位量を、レーザードップラー振動計にて10箇所測定し、その平均値を算出するとともに、各値と平均値の差の最大の値を平均値で除して変位量のバラツキとした。
変位量は、共通電極と個別電極との間に25Vの直流電圧を印加し、室温にて周波数10kHzのsin波形で駆動した際の変位量を、レーザードップラー振動計にて10箇所測定し、その平均値を算出するとともに、各値と平均値の差の最大の値を平均値で除して変位量のバラツキとした。
表1から明らかなように、本発明の範囲外である試料No.1〜3,9に対し、試料No.4〜8,10および11は、圧電アクチュエータにクラックがなく、変位量も優れているのがわかる。
1 振動板
2 共通電極
3 圧電セラミック層
4 個別電極
5 変位素子
15 圧電アクチュエータ
16 流路部材
16a 液体加圧室
16b 隔壁
18 液体吐出孔
50a,50b 基板
2 共通電極
3 圧電セラミック層
4 個別電極
5 変位素子
15 圧電アクチュエータ
16 流路部材
16a 液体加圧室
16b 隔壁
18 液体吐出孔
50a,50b 基板
Claims (8)
- 複数の液体加圧室を有する流路部材の表面に、
振動板上に、共通電極、圧電セラミック層および個別電極をこの順に積層し、個別電極と共通電極で前記圧電セラミック層を挟持して構成される変位素子を有する厚み100μm以下の圧電アクチュエータを、
前記液体加圧室の直上に変位素子が配置するように接合する印刷ヘッドの製造方法であって、
前記圧電アクチュエータを流路部材の表面に接合した後、該圧電アクチュエータに圧縮応力が加わった状態で、圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極することを特徴とする印刷ヘッドの製造方法。 - 前記圧電アクチュエータを流路部材の表面に接合した時に、前記圧電アクチュエータに圧縮応力が加わり、その状態で圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極する請求項1記載の印刷ヘッドの製造方法。
- 前記接合が、加熱工程および冷却工程を含み、該冷却工程において、前記圧電アクチュエータに圧縮応力が加わり、その状態で圧電アクチュエータの圧電セラミック層を分極する請求項1または2記載の印刷ヘッドの製造方法。
- 前記接合前に、圧電アクチュエータのエージング工程を含み、該エージング工程は、接合前の前記圧電アクチュエータにエージング処理を施す工程、または接合前の前記圧電アクチュエータに荷重をかけた状態でエージング処理を施す工程である請求項1〜3のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
- 前記流路部材の熱膨張係数が、前記圧電アクチュエータの熱膨張係数よりも大きい請求項1〜4のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
- 前記圧電アクチュエータは、幅に対する厚みの比が2×10-4〜1×10-2である請求項1〜5のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
- 前記圧電アクチュエータは、前記圧電セラミック層の表面に前記個別電極を複数配列して、この個別電極と共通電極とで圧電セラミック層を挟持して構成される前記変位素子が複数形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の印刷ヘッドの製造方法によって製造されたことを特徴とする印刷ヘッド。
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2007
- 2007-03-26 JP JP2007078482A patent/JP2007290374A/ja active Pending
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