実施の形態1.
本実施の形態1においては、以上のような光ファイバ内のモード分散を低減するために、光の伝搬速度差をなくすことを考える。
まず、本実施の形態1の原理について述べると、光ファイバの中心軸に対して大きい角度で入射された光が、該中心軸に対して小さい角度で入射された光より伝搬速度が遅くなるのを解消するため、図1に示すように、送信光ファイバOf1と受信光ファイバOf2との間に、大きな角度で出射する光線R1を小さな角度で入射する光線R1’に、また小さな角度で出射する光線R2を大きな角で入射する光線R2’に変換する光学レンズ系を設け、光線をミキシングすることで、光の伝搬速度差をなくすようにする。
以下、図2〜図19を用いて、このような光学レンズ系を実現しえる具体例をいくつか挙げて説明する。なお、本実施の形態1では、光ファイバOf1が上記光学系に光を送信する送信光ファイバ、また光ファイバOf2が該光学レンズ系からの光を受信する受信光ファイバであるものとして説明するが、光ファイバOf1が受信光ファイバで、光ファイバOf2が送信光ファイバであっても、その光の動きは同様である。また、上記光ファイバとしては、ステップ・インデックス・ファイバであっても、グレイテッド・インテックス・ファイバであってもよい。
まず、図2〜図5を用いて、上記光学レンズ系を実現する第1の具体例として、球面レンズと、リング状に集光する環状集光レンズとを組み合わせてなる光学レンズ系について説明する。
まず、図2及び図3を用いて、本実施の形態1の光学レンズ系に使用する、リング状に集光する環状集光レンズについて説明する。図2は、球面レンズに入射された平行光の集光状態(図2(a))、及び環状集光レンズに入射された平行光の集光状態(図2(b))を示す図であり、図3は、本実施の形態1における、環状集光レンズを示した正面図(図3(a))、及びそのA−A’断面図(図3(b))である。
上記球面レンズについては、レンズ母材の屈折率と周辺雰囲気の屈折率との屈折率差により、図2(a)の断面図に示されるように、平行光が入射されると、ある一点の焦点に光が集められ、また焦点からそれぞれの角度で光が入射されると、該球面レンズから平行光として出射されるものである。
そして、今回新たに作製する、リング状に集光する環状集光レンズは、図2(b)の断面図に示されるように、平行光が入射されると、該レンズの中心点hで点対称な2つの焦点、つまり該2点を直径とする円の周囲に光が集められ、また該光が集光する円周上の点からそれぞれの角度で光が入射されると、該環状集光レンズから平行光として出射されるものである。そして、このような集光を実現するレンズの形状としては、例えば図3に示されるように、レンズの入射面、及び出射面の両面において、該レンズの半径の1/2の位置に最大の厚みを持たせ、レンズの中心点hに近付くに従って、外周面の曲面と同じ曲率で厚みが薄くなるようなものがある。
また、上記環状集光レンズを作製する方法としては、ガラス製の所定の曲率を有する球面レンズ両面を、該球面レンズ半径の1/2の位置を最大厚み部とし、該球面レンズの中心hに近付くに従って外周面の曲面と同じ曲率で厚みが薄くなるように切削,研磨することで、または研磨のみすることで作製する方法や、上述したような形状の型をつくり、プラスチック等をその型でプレス成形することで作製する方法等が考えられる。
次に、本実施の形態1における光学レンズ系について説明する。
まず、図4を用いて、環状集光レンズLdと球面レンズLcとからなる光学レンズ系の構成について説明する。図4は、本実施の形態1における、環状集光レンズと球面レンズとからなる光学レンズ系の構成を示す断面図である。
図4において、本実施の形態1における光学レンズ系は、送信光ファイバOf1と受信光ファイバOf2との間に、第1の環状集光レンズLd1と、上記球面レンズLcと、第2の環状集光レンズLd2とを、上記送信光ファイバOf1の中心軸Ax1と、上記受信光ファイバOf2の中心軸Ax2とを結んだ直線上に、各レンズの中心がくるように配置されてなるものである。つまり、上記直線上に、上記第1の環状集光レンズLd1の中心点h1と、上記球面レンズLcの中心と、上記第2の環状集光レンズLd2の中心点h2とがくるようにする。そして、上記各レンズの配置位置は、上記送信光ファイバOf1と上記受信光ファイバOf2との間が距離Dであるとすると、送信光ファイバOf1からD/2の位置に、上記球面レンズLcの中心がくるようにし、上記球面レンズLcと上記第1及び第2の環状集光レンズLd1、Ld2との距離が、上記球面レンズLcの焦点距離D1であって、上記第1及び第2の環状集光レンズLd1、Ld2の焦点距離が、D1/2であるようにする。そして、上記各レンズの大きさは、送信光ファイバOf1から出射される光線の最大角度が受光角Ψmax以上にはならないことより、その受光角Ψmaxで出射される光が、各レンズの使用領域の範囲内に入射される大きさであればよい。なお、本実施の形態1においては、各レンズの大きさが同じであるとし、上記第1の環状集光レンズLd1の使用領域の最端位置に、送信光ファイバOf1から受光角Ψmaxで出射された光線が入射されるものとする。
次に、以上のように構成された本実施の形態1にかかる光学レンズ系を通過する光線の動きについて説明する。なお、送信光ファイバOf1から出射される光線には様々な角度のものがあるが、ここでは説明を簡略するため、送信光ファイバOf1から、最大角度すなわち受光角Ψmaxで出射される光線R1と、最小角度すなわち平行光で出射される光線R2とが、本光学レンズ系を通過する際の動きについて説明する。
図4において、送信光ファイバOf1から最大角度である受光角Ψmaxの光線R1が出射されると、該光線R1は、まず第1の環状集光レンズLd1に入射される。そして、該第1の環状集光レンズLd1に入射された光線R1は、平行光になって球面レンズLcに入射され、該球面レンズLcに入射された光線R1は、該球面レンズLcの焦点、ここでは第2の環状集光レンズLd2の中心点h2に集光する。そして、該第2の環状集光レンズLd2の中心点h2に入射された光線R1は、平行光になって受信光ファイバOf2に入射される。
一方、送信光ファイバOf1から最小角度である平行光線R2が出射されると、該光線R2は、まず第1の環状集光レンズLd1の中心点h1に入射される。そして、該第1の環状集光レンズLd1の中心点h1が球面レンズLcの前焦点にあたるため、該中心点h1に入射された光線R2は、球面レンズLcの使用領域の最端位置に入射され、平行光になって第2の環状集光レンズLd2に入射される。そして、平行光として上記第2の環状集光レンズLd2に入射された光線R2は、受信光ファイバOf2に受光角Ψmaxで入射される。
つまり、送信光ファイバOf1から最大角度である受光角Ψmaxで出射された光線R1は、本光学レンズ系を通過することで、入射角度が最小角度つまり平行光になって受信光ファイバOf2に入射され、送信光ファイバOf1から最小角度すなわち平行光として出射された光線R2は、本光学レンズ系を通過することで、入射角度が最大角度つまり受光角Ψmaxとなって受信光ファイバOf2に入射されることとなる。
従って、上記送信光ファイバOf1から出射される、伝搬速度が遅い出射角度の大きい光線R1と、伝搬速度が速い出射角度の小さな光線R2とに、同じ信号をのせ、上述した光学レンズ系を通過させると、伝搬速度の遅い光線R1は伝搬速度の速い光線となり、伝搬速度の速い光線R2は伝搬速度の遅い光線となるので、上記光学レンズ系により光線R1,R2をミキシングしてこれらの伝搬速度差をなくすことができ、この結果、光ファイバ内に生じるモード分散を削減することが可能となる。
以上の説明では、上記環状集光レンズと球面レンズとからなる光学レンズ系の1つの例として、図4に示す、2つのリング形状に集光する環状集光レンズと、1つの球面レンズとの組み合わせからなるものを挙げたが、例えば、図5に示す組み合わせも考えられる。図5は、本実施の形態1における、環状集光レンズと球面レンズとからなる光学レンズ系の別の組み合わせを示す断面図である。
本実施の形態1における別の組み合わせからなる光学レンズ系は、図5に示すように、送信光ファイバOf1と受信光ファイバOf2との間に、第1の球面レンズLc1と、第1,第2の環状集光レンズLd1,Ld2と、第2の球面レンズLc2とを、上記送信光ファイバOf1の中心軸Ax1と、上記受信光ファイバOf2の中心軸Ax2とを結んだ直線上に、各レンズの中心がくるように配置されたものである。つまり、上記直線上に、上記第1,第2の球面レンズLcの中心と、上記第1,第2の環状集光レンズLd1,Ld2の中心点h1,中心点h2とがくるようにする。そして、上記各レンズの配置位置は、上記第1の環状集光レンズLd1と上記第2の環状集光レンズLd2との間の距離D2が、上記第1の環状集光レンズLd1の後ろ焦点と、上記第2の環状集光レンズLd2の前焦点とが一致する距離になるようにし、上記各レンズの大きさは、送信光ファイバOf1から出射される光線の最大角度が受光角Ψmax以上にはならないことより、その受光角Ψmaxで出射される光がレンズの使用領域の範囲内に入射される大きさであればよい。なお、各レンズの大きさは同じとし、上記第1の球面レンズLc1の使用領域の最端位置に、送信光ファイバOf1から受光角Ψmaxで出射された光線が入射されるものとする。
次に、以上のような構成を有する光学レンズ系を通過する光線の動きについて説明する。なお、説明を簡略化するため、送信光ファイバOf1から出射される光束のうち、最大角度すなわち受光角Ψmaxで出射される光線R1と、最小角度すなわち平行光で出射される光線R2とが本光学レンズ系を通過する際の動きについて説明する。
図5において、送信光ファイバOf1から、最大角度である受光角Ψmaxの光線R1が出射されると、光線R1は、まず第1の球面レンズLc1に入射される。そして、該第1の球面レンズLc1に入射された光線R1は、平行光になって第1の環状集光レンズLd1に入射され、上記第1の環状集光レンズLd1の後ろ焦点と上記第2の環状集光レンズLd2の前焦点とが一致するよう配置されているので、該第1の環状集光レンズLd1の使用領域の最端に入射された光線R1は、第2の環状集光レンズLd2の中心点h2に入射される。そして、該第2の環状集光レンズLd2の中心点h2に入射された光線R1は、平行光になって第2の球面レンズLc2に入射され、平行光のまま該第2の球面レンズLc2を通過し、受信光ファイバOf2に入射される。一方、送信光ファイバOf1から最小角度である平行光である光線R2が出射されると、光線R2は、まず平行光のまま第1の球面レンズLc1を通過し、第1の環状集光レンズLd1の中心点h1に入射する。そして、上記第1の環状集光レンズLd1の後ろ焦点と上記第2の環状集光レンズLd2の前焦点とが一致するよう配置されているので、該第1の環状集光レンズLd1の中心点h1に入射された光線R2は、第2の環状集光レンズLd2の使用領域の最端位置に入射され、該第2の環状集光レンズLd2に入射された光線R2は、平行光になって第2の球面レンズLc2に入射され、該第2の球面レンズLc2から、受信光ファイバOf2に受光角Ψmaxで入射される。
つまり、送信光ファイバOf1から最大角度である受光角Ψmaxで出射された光線R1は、本光学レンズ系を通過することで、入射角度が最小角度つまり平行光になって受信光ファイバOf2に入射され、送信光ファイバOf1から最小角度すなわち平行光として出射された光線R2は、上記光学レンズ系を通過することで、入射角度が最大角度である受光角Ψmaxで受信光ファイバOf2に入射されることとなる。
このように、リング形状に集光する環状集光レンズLdと、球面レンズLcとを所定数組み合わせてなる光学レンズ系に、送信光ファイバOf1の端面から、同じ信号がのせられた、伝搬速度の遅い光線R1及び伝搬速度の速い光線R2が入射されると、伝搬速度の遅い大きい角度で入射された光線R1が伝搬速度の速い小さい角度で出射され、逆に伝搬速度の速い小さい角度で入射された光線R2が伝搬速度の遅い大きい角度で出射されるので、光ファイバ内における光の伝搬速度差を解消して、モード分散を削減することができる。
なお、本実施の形態1においては、リング形状に集光する環状集光レンズLdと球面レンズLcとの組み合わせからなる光学レンズ系について、具体例を2つ挙げたが、本実施の形態1における光学レンズ系の構成は、上述したレンズの組み合わせや配置位置に限られるものでない。
次に、図1に示す光学レンズ系を実現する第2の具体例として、片面が上述したリング形状に集光する環状集光レンズで、もう片面が球面レンズである、円柱状のバルク型レンズからなる光学レンズ系について説明する。
実施の形態1の変形例1.
まず、図6を用いて、本実施の形態1の変形例1の光学レンズ系に使用する、 一方の面が上述したリング形状に集光する環状集光レンズで、他方の面が球面レンズである円柱状のバルク型レンズについて説明する。図6は、本実施の形態1の変形例1における、円柱状のバルク型レンズを示す図であり、上記バルク型レンズの斜視図(図(a))と、そのA−A’断面図(図(b))とを示すものである。
図6に示すバルク型レンズ内の距離D1は、一方の面である球面レンズの焦点距離に値し、このバルク型レンズは、上述した環状集光レンズLdと球面レンズLcとを、距離D1離して配置した場合と同じ集光特性を有するものである。
この図6に示すようなバルク型レンズを作製する方法は、円柱状のガラスを切削,研磨、あるいは研磨のみすることにより、一方の面を該ガラス面の半径の1/2の位置に最大の厚みをもたせ、該ガラス面の中心に近付くに従って外周面の曲面と同じ曲率で厚みが薄くなる形状にし、他方の面を球面型のレンズの形状にすることで作製する方法、あるいは片面が上述した環状集光レンズ形状で、もう片面が球面レンズ形状を有する型を作り、プラスチック等をその型でプレス成形することにより作製する方法等が考えられる。
次に、本実施の形態1の変形例1における光学レンズ系について説明する。なお、説明を簡略化するため、送信光ファイバOf1端面から出射される光束のうち、最大角度つまり受光角Ψmaxで出射される光線R1と、最小角度つまり平行光で出射される光線R2とが、本光学レンズ系を通過する際の動きについて説明する。
まず、図7を用いて、バルク型レンズLbからなる光学レンズ系の構成について説明する。図7は、本実施の形態1の変形例1における、バルク型レンズからなる光学レンズ系の構成を示す断面図である。
図7において、本実施の形態1の変形例1における光学レンズ系は、送信光ファイバOf1と受信光ファイバOf2との間に、第1のバルク型レンズLb1と第2のバルク型レンズLb2とを、上記送信光ファイバOf1の中心軸Ax1と、上記受信光ファイバOf2の中心軸Ax2とを結んだ直線上に、それらの中心軸がくるように配置し、また上記バルク型レンズLb1,Lb2の球面レンズ面側が接するように配置されてなるものである。そして、上記第1及び第2のバルク型レンズの大きさとしては、送信光ファイバOf1から出射される光線の最大角度が受光角Ψmax以上にはならないことから、その受光角Ψmaxで出射される光がレンズの使用領域の範囲内に入射される大きさであればよい。なお、本実施の形態1の変形例1においては、第1及び第2のバルク型レンズLb1、Lb2の大きさを同じであるとし、上記バルク型レンズの使用領域の最端位置に、送信光ファイバOf1から受光角Ψmaxで出射された光線が入射されるものとする。
そして、図8に示すように、周辺雰囲気、例えば空気(屈折率≒1)中に、屈折率nの球面レンズを配置した時の集光状態(図8(a))と、屈折率nのレンズを2つ接して配置した時の集光状態(図8(b))とが同じになることを考えれば、図7に示す光学レンズ系の構成と、上述した図4に示される光学レンズ系とは、同じ構成であるとみなせる。つまり、図7の第1のバルク型レンズLb1の環状集光レンズ面が、図4に示す上記第1の環状集光レンズLd1に相当し、図7の第1,第2のバルク型レンズLb2の球面レンズ面が接した状態が、図4に示す上記球面レンズLcに相当し、図7の上記第2のバルク型レンズLb2の環状集光レンズ面が、図4に示す第2の環状集光レンズLd2に相当する。
よって、図7の光学レンズ系を通過する光線の動きは、図4の光学レンズ系を通過する光線の動きと同様となり、受信光ファイバOf1から伝搬速度が遅い大きな角度で出射される光線R1は、図7に示す光学レンズ系を通過することにより、伝搬速度の速い入射角度が小さい角度の光線に変えられ、逆に、受信光ファイバOf1から伝搬速度が速い小さな角度で出射された光線R2は、上記光学レンズ系を入射されることにより、伝搬速度の遅い入射角度が大きい角度の光線に変えられて、送信光ファイバOf2に入射されることになる。
この結果、上記光線R1及び光線R2に同じ信号をのせて伝送した場合、上記光レンズ系により光線R1と光線R2との伝搬速度差を解消することができ、モード分散を削減することができる。
以上の説明では、図7に示すように、2つのバルク型レンズLbの球面レンズ面側がお互い接するように配置してなる構成について説明したが、図9に示すように、上記バルク型レンズLbの環状集光レンズ側が対向するよう配置する構成も考えられる。図9は、本実施の形態1の変形例1における、バルク型レンズからなる光学レンズ系の別の構成を示す断面図である。
本実施の形態1の変形例1における別の構成からなる光学レンズ系は、図9に示すように、送信光ファイバOf1と受信光ファイバOf2との間に、第1のバルク型レンズLb1と第2のバルク型レンズLb2とを、上記送信光ファイバOf1の中心軸Ax1と、上記受信光ファイバOf2の中心軸Ax2とを結んだ直線上に、それらの中心軸がくるように配置し、また各バルク型レンズLb1,Lb2の環状集光レンズ面側が対向するよう配置されてなるものである。そして、2つのバルク型レンズLb1、Lb2の配置位置は、上記第1のバルク型レンズLb1と上記第2のバルク型レンズLb2との間の距離D2が、上記第1のバルク型レンズLb1の一方の面である環状集光レンズの後ろ焦点と、上記第2のバルク型レンズLb2の一方の面である環状集光レンズの前焦点とが一致する距離とする。なお、上記図6においては、バルク型レンズLb内の距離D1を該バルク型レンズLbの一方の面である球面レンズの焦点距離に値するものとしたが、図9において用いるバルク型レンズLb内の距離D1は任意でよい。また、上記各バルク型レンズLbの大きさは、送信光ファイバOf1から出射される光線の最大角度が受光角Ψmax以上にはならないことより、その受光角Ψmaxで出射される光がレンズの使用領域の範囲内に入射される大きさであればよい。
ここで、上記バルク型レンズLbを、図7で示したものと同様のものを使用するとし、上記バルク型レンズLbの使用領域の最端位置に、送信光ファイバOf1から受光角Ψmaxで出射された光線が入射されるものとすれば、図9に示された構成を有する光学レンズ系は、上述した図5に示す光学レンズ系の構成と同じ構成であるとみなせる。つまり、上記第1のバルク型レンズLb1の片面である球面レンズ面は、図5の第1の球面レンズLc1に相当し、もう片面の環状集光レンズ面は、図5の第1の環状集光レンズLd1に相当し、上記第2のバルク型レンズの片面である環状集光レンズ面は、図5の第2の環状集光レンズLd2に相当し、もう片面である球面レンズ面は、図5の第2の球面レンズLc2に相当することになる。
よって、図9に示す光学レンズ系を通過する光線の動きは、図5の光学レンズ系を通過する光線の動きと同様となり、受信光ファイバOf1から伝搬速度が遅い大きな角度で出射される光線R1は、図9に示す光学レンズ系を通過することにより、伝搬速度の速い入射角度が小さい角度の光線に変えられ、逆に、受信光ファイバOf1から伝搬速度が速い小さな角度で出射された光線R2は、上記光学レンズ系を入射されることにより、伝搬速度の遅い入射角度が大きい角度の光線に変えられて、送信光ファイバOf2に入射されることになる。
この結果、上記光線R1及び光線R2に同じ信号をのせて伝送した場合、上記光レンズ系により光線R1と光線R2との伝搬速度差を解消することができ、モード分散を削減することができる。
このように、一方の面がリング形状に集光する環状集光レンズで、他方の面が球面レンズである、円柱状のバルク型レンズを組み合わせてなる光学レンズ系に、受信光ファイバOf1から、同じ信号がのせられた光線R1及び光線R2が入射されると、伝搬速度の遅い大きな角度で入射された光線R1が伝搬速度の小さい角度で出射され、逆に伝搬速度の速い小さな角度で入射された光線R2が伝搬速度の遅い大きな角度で出射されるので、光ファイバ内における光の伝搬速度差を解消して、モード分散を削減することができる。
また、本実施の形態1の変形例1では、上記光学レンズ系がバルク型レンズからなるため、周囲雰囲気から屈折率の高いレンズに光を入射させる際に、該入射光がレンズ面で反射する光量を減らすことができ、これにより、効率よく送信光ファイバOf1から受信光ファイバOf2に光を伝送することができる。
なお、本実施の形態1の変形例1においては、上記バルク型レンズの組み合わせからなる光学レンズ系について、具体例を2つ挙げたが、上述したレンズの組み合わせや配置位置に限られるものでない。
さらに、図1に示す光学レンズ系を実現する第3の具体例として、2乗分布の屈折率分布を径方向に1つ有する円柱状のGRINレンズと、該GRINレンズを改良して、中心軸に対し対称な2乗分布の屈折率分布を径方向に2つ有するようにした円柱状の改良GRINレンズとからなる光学レンズ系について説明する。
実施の形態1の変形例2.
まず、図10〜図13を用いて、本実施の形態1の変形例2の光学レンズ系に使用する、GRINレンズ、及び改良GRINレンズについて説明する。図10は、GRINレンズのある断面における屈折率分布を示す図であり、図11は、GRINレンズを通過する光線の動きを示す図である。また、図12は、本実施の形態1の変形例2における、改良GRINレンズのある断面における屈折率分布を示す図であり、図13は、本実施の形態1の変形例2における、改良GRINレンズを通過する光線の動きを示す図である。
まず、GRINレンズについて説明する。
GRINレンズは、図10に示すように、レンズの中心軸上における屈折率が一番高く、径方向に屈折率が略2乗分布形状を描いて下がっていく円柱状のレンズであり、また、図11に示すように、該レンズ内の光線の蛇行周期(以下、「ピッチ(P)」と称する。)によって、GRINレンズを通過する光線の動きが変化するものである。例えば、図11(a)は、0.25ピッチ(P)のGRINレンズ内を通過する光線の動きを示すものであり、点光源を入射面の中心におけば平行性のよい光線を取り出すことができ、逆に無限遠物体の倒立像が出射面に結像される。また、図11(b)は、0.5PのGRINレンズ内を通過する光線の動きを示すものであり、入射面においた物体の倒立実像が出射面上に結像される。さらに、図11(c)は、0.75PのGRINレンズ内を通過する光線の動きを示すものであり、無限遠物体の正立結像が出射端面上に結像される。なお、図10及び図11において、dはレンズ直径を示し、d’はレンズ使用領域幅を示すものである。
そして、今回新たに作製する、中心軸に対し対称な2乗分布の屈折率分布を径方向に2つ有する円柱状の改良GRINレンズは、図12に示すように、レンズ使用領域幅d’内において、レンズ中心軸から±d’/4の屈折率が一番高く、該2点からレンズの中心軸方向及び外周方向に、屈折率が略2乗分布形状を描いて下がっていく円柱状のレンズである。そして、上述したGRINレンズと同様、図13に示すように、ピッチの違いにより該改良GRINレンズ内を通過する光線の動きが変化する。なお。図12及び図13においても、dはレンズ直径を示し、d’はレンズ使用領域幅を示す。
ここで、図14〜図16を用いて、上記改良GRINレンズの作製方法について、いくつか例を挙げて説明する。図14は、本実施の形態1の変形例2における改良GRINレンズを既存のGRINレンズから作製する作製方法を示す図であり、図15は、従来のGRINレンズを作製する方法を示す図であり、図16は、図15に示したGRINレンズの作製方法を応用して改良GRINレンズを作製する方法を示す図である。
まず、第1の方法は、既存のGRINレンズ140から、図14(a)に示すように、直径を中心に対称な2直線を2辺とする扇形の柱状にカットして扇形柱140aを形成し、この扇形柱140aを同様にして複数形成し、図14(b)に示すように、上記扇形の頂点を一点に集中させて束ねるように配置して一体とすることで、略円形状の扇形柱集合体である改良GRINレンズ141を作製するものである。このようにして改良GRINレンズを作製する場合、上記既存のGRINレンズ140からとりだす扇形柱140aの頂角を小さくするほど、より精度のよい、改良GRINレンズを得ることができる。また、上述したようにして作製した、図14(b)の略円形状の扇形柱集合体の改良GRINレンズ141を加熱して、図14(c)に示すように、円柱形状に再成形するようにすれば、さらに精度のよい、円柱成形体である改良GRINレンズ142を得ることができる。なお、このようにして作製された改良GRINレンズ141,142の径は、元のGRINレンズ140の2倍となることに、注意すべきである。
次に、第2の方法は、通常のGRINレンズの作製方法を応用して、改良GRINレンズを作製するものである。すなわち、通常のGRINレンズの作製方法は、図15(a)のように、低い屈折率を有するドーナツ形状の柱状体150の内側に、高い屈折率を有する円柱形状の柱状体151をはめ込み、これに、熱拡散やイオン交換等を施すことによって屈折率の高低差を拡散させて、図15(b)に示すような径方向の屈折率分布153をもつ、GRINレンズ152を作製するものである。これを応用した上記改良GRINレンズの作製方法は、まず、図16(a)のように、低い屈折率を有するドーナツ形状の柱状体160の内側に、高い屈折率を有するドーナツ形状の柱状体161をはめ込み、さらにその内側に再び低い屈折率を有する円柱形状の柱状体162をはめ込んで、3層の屈折率構造を有するものとしたものに、熱拡散やイオン交換等を施すことによって各屈折率の高低差を拡散させ、図16(b)に示すような、径方向に2つの山を有する、すなわちリング状の頂部を有する屈折率分布163をもつ、改良GRINレンズ164を作製するものである。
また、第3の方法は、光ファイバのプリフォームを作製する方法を応用して、改良GRINレンズを作製するものであり、例えば、中空ガラス管に気体状のガラス原料を吹き付け、該ガラス中空管をバーナで熱して管内において気相酸化反応させ、石英ガラス微粒子(SiO2)等を管内に堆積させるMCVD法(内づけ法)を応用し、該中空ガラス管に吹き付けるガラス原料の成分を変えて、上述したような屈折率分布を有する柱状体を作製する方法や、芯となる中心ガラス棒の周りに気体状のガラス原料をバーナで熱しながら吹き付け、火炎加水分解反応及び酸化反応により石英ガラス微粒子(SiO2)等をガラス棒の周りに堆積させて円柱状のスートプリフォームを作製し、該スートプリフォームを高温で脱水するVAD法(外づけ法)を応用し、該ガラス棒に吹き付けるガラス原料の成分を変えて、上述したような屈折率分布を有する柱状体を作製する方法等がある。
次に、本実施の形態1の変形例2における光学レンズ系について説明する。
まず、図17を用いて、GRINレンズと改良GRINレンズとからなる光学レンズ系の構成について説明する。図17は、本実施の形態1の変形例2における、GRINレンズと改良GRINレンズとからなる光学レンズ系の構成を示す断面図である。
図17において、本実施の形態1の変形例2における光学レンズ系は、送信光ファイバOf1と受信光ファイバOf2との間に、第1の0.25PのGRINレンズLg1と、上述したようにして作製された0.5Pの改良GRINレンズLg’と、第2の0.25PのGRINレンズLg2とを、上記送信光ファイバOf1の中心軸Ax1と、上記受信光ファイバOf2の中心軸Ax2とを結んだ直線上に、それらの中心軸がくるように配置されてなるものである。そして、上記各レンズの配置位置としては、上記光ファイバと各0.25PのGRINレンズ、及び0.5Pの改良GRINレンズとが接するように配置されている。
次に、以上のように構成された、本実施の形態1の変形例2における光学レンズ系を通過する光線の動きについて説明する。なお、ここでは説明を簡略化するため、送信光ファイバOf1から、最大角度すなわち受光角Ψmaxで出射される光線R1と、最小角度すなわち平行光で出射される光線R2が、本光学レンズ系を通過する際の動きについて説明する。
図17において、送信光ファイバOf1から最大角度である受光角Ψmaxの光線R1が出射されると、該光線R1は、まず第1の0.25PのGRINレンズLg1に入射され、平行性のよい光ビームになって、0.5Pの改良GRINレンズLg’に入射される。そして、該0.5P改良のGRINレンズLg’に入射された光線R1は反転して、第2の0.25PのGRINレンズLg2の中心軸上に入射され、第2の0.25PのGRINレンズの中心軸上を平行光として通過して、その平行光のまま受信光ファイバOf2に入射される。一方、送信光ファイバOf1から最小角度である平行光である光線R2が出射されると、該光線R2は、まず第1の0.25PのGRINレンズLg1の中心軸上を平行光のまま通過し、0.5Pの改良GRINレンズLg’に入射される。そして、平行光として該0.5Pの改良GRINレンズLg’に入射された光線R2は、反転して第2の0.25PのGRINレンズLg2の使用領域の最端位置に入射され、第2の0.25PのGRINレンズの使用領域の最端位置から受信光ファイバOf2に入射角度が最大角度つまり受光角Ψmaxで入射される。
そして、上記送信光ファイバOf1から伝搬速度が遅い大きい角度で出射される光線R1と、上記送信光ファイバOf1から伝搬速度が速い小さな角度で出射される光線R2とに同じ信号をのせて、上述した本実施の形態1の変形例2における光学レンズ系を通過させた場合、本光学レンズ系は、伝搬速度の遅い光線R1を伝搬速度の速い光線とし、伝搬速度の速い光線R2を伝搬速度の遅い光線とすることができるので、光ファイバのコア内に生じる上記光線R1と光線R2との伝搬速度差を解消することができ、この結果、光ファイバ内に生じるモード分散を削減することが可能となる。また、送信光ファイバOf1の出射端面、及び受信光ファイバOf2の入射端面と、上記各GRINレンズとが接しているので、周囲雰囲気から屈折率の高いGRINレンズに光を入射させる際に、該入射光がレンズ面で反射してしまう光量を減らすことができ、これにより、かなり効率よく、送信光ファイバOf1から受信光ファイバOf2に光を伝送することができる。
以上の説明では、上記GRINレンズと改良GRINレンズとを使用した光学レンズ系の1つの例として、図17に示す、2つの0.25PのGRINレンズと、1つの0.5Pの改良GRINレンズとからなるものを挙げたが、例えば図18に示すように、改良GRINレンズLg’のみからなる構成も考えられる。図18は、本実施の形態1の変形例2における、改良GRINレンズのみからなる光学レンズ系の構成を示す断面図である。
本実施の形態1の変形例2における、改良GRINレンズLg’のみからなる光学レンズ系は、図18に示すように、送信光ファイバOf1と受信光ファイバOf2との間に、0.75Pの改良GRINレンズLg’を配置し、上記送信光ファイバOf1の中心軸Ax1と、上記受信光ファイバOf2の中心軸Ax2とを結んだ直線上に、その中心軸がくるように配置されてなるものである。そして、上記0.75Pの改良GRINレンズLg’の配置位置としては、上記送信光ファイバOf1と0.75Pの改良GRINレンズLg’との間、及び該0.75Pの改良GRINレンズと受信光ファイバOf2との間を、距離D3の空間をあけるようにし、該距離D3は、上記送信光ファイバOf1から最大角度つまり受光角Ψmaxで出射される光線R1が、上記0.75Pの改良GRINレンズLg’の中心軸から、レンズの使用領域の範囲における4分の1の位置に入射される距離であり、また、上記0.75Pの改良GRINレンズLg’を通過し、受信光ファイバOf2に最大角度つまり受光角で入射される光線R2が、0.75Pの改良GRINレンズLg’の中心軸から、レンズの使用領域の範囲内における4分の1の位置から出射される距離である。なお、上記0.75Pの改良GRINレンズLg’内を通過する光線は、図13(c)に示されるように通過するものである。
次に、以上のような構成を有する光学レンズ系を通過する光線の動きについて説明する。なお、説明を簡略化するため、送信光ファイバOf1から出射される光束のうち、最大角度すなわち受光角Ψmaxで出射される光線R1と、最小角度すなわち平行光で出射される光線R2とが本光学レンズ系を通過する際の動きについて説明する。
図18において、まず送信光ファイバOf1から、最大角度すなわち受光角Ψmaxの光線R1が出射されると、光線R1は、0.75Pの改良GRINレンズLg’の中心軸から、レンズの使用領域の範囲における4分の1の位置に入射される。そして、該0.75Pの改良GRINレンズLg’に入射された光線R1は、図18に示すような経路を通って、該0.75Pの改良GRINレンズLg’の中心軸の位置から受信光ファイバOf2に入射される。一方、送信光ファイバOf1から最小角度である平行光である光線R2が出射されると、該光線R2は、距離D3だけ周囲雰囲気中を平行光で進み、0.75Pの改良GRINレンズLg’の中心軸の位置に入射される。そして、該0.75Pの改良GRINレンズLg’の中心軸の位置から入射された光線R2は、図18に示すような経路を通って、該0.75Pの改良GRINレンズLg’の中心軸から使用領域範囲における4分の1の位置から出射され、距離D3だけ周囲雰囲気中を進み、受信光ファイバOf2に最大角度である受光角Ψmaxで入射される。
つまり、送信光ファイバOf1から最大角度である受光角Ψmaxで出射された光線R1は、本光学レンズ系を通過することで、入射角度が最小角度つまり平行光になって受信光ファイバOf2に入射され、送信光ファイバOf1から最小角度すなわち平行光として出射された光線R2は、上記光学レンズ系を通過することで、入射角度が最大角度である受光角Ψmaxで受信光ファイバOf2に入射されることとなる。
なお、図18に示した改良GRINレンズLg’からなる光学レンズ系は、送信光ファイバOf1と0.75Pの改良GRINレンズLg’との間、及び0.75Pの改良GRINレンズLg’と受信光ファイバOf2との間に、距離D3の空間を設けるようにしたが、その各空間部分に、図19に示すように、幅D3のロッドレンズLrodを挿入し、送信光ファイバOf1の端面と0.75Pの改良GRINレンズLg’の端面、及び受信光ファイバOf2の端面と0.75Pの改良GRINレンズLg’の端面とを接するようにしてもよい。このようにすれば、周囲雰囲気から、屈折率の高いガラス製のレンズに光を入射させる際、あるいは屈折率の高いガラス製のレンズから光を出射させる際に、光がガラス面等において反射してしまうのを解消して、より効率よく送信光ファイバOf1から受信光ファイバOf2に光を伝送することができる。
このように、GRINレンズLgと、改良GRINレンズLg’とを所定数組あわせてなる光学レンズ系、あるいは改良GRINレンズのみからなる光学レンズ系に、送信光ファイバOf1の端面から、同じ信号がのせられた、伝搬速度の遅い光線R1及び伝搬速度の速い光線R2が入射されると、伝搬速度の遅い大きい角度で入射された光線R1が伝搬速度の速い小さい角度で出射され、逆に伝搬速度の速い小さい角度で入射された光線R2が伝搬速度の遅い大きい角度で出射されるので、光ファイバ内における光の伝搬速度差を解消して、モード分散を削減することができる。
なお、本実施の形態1の変形例2においては、GRINレンズ及び改良GINレンズからなる光学レンズ系について、具体例を3つ挙げたが、本実施の形態1の変形例2における光学レンズ系の構成は、上述したGRINレンズのピッチ(P)の組み合わせや配置位置に限られるものでない。
また、本実施の形態1においては、大きな角度で出射された光線R1を小さな角度で入射される光線に、また小さな角度で出射された光線R2を大きな角で入射される光線に変換する光学レンズ系を実現する具体例として、球面レンズと環状集光レンズとの組み合わせからなるもの(第1の具体例)、バルク型レンズの組み合わせからなるもの(第2の具体例)、GRINレンズと改良GRINレンズとのくみあわせからなるもの(第3の具体例)を挙げて説明したが、上記光学レンズ系の構成はこれらに限るものではなく、例えば、球面レンズと改良GRINレンズとの組み合わせからなるものや、バルク型レンズと改良GRINレンズとの組み合わせからなるものであってもよい。
以上のことにより、本実施の形態1によれば、送信光ファイバOf1と受信光ファイバOf2との間に、大きな角度で出射された光線R1を小さな角度で入射される光線に、また小さな角度で出射された光線R2を大きな角で入射される光線に変換する光学レンズ系を設け、該光線R1及び光線R2に同じ信号をのせて上記光学レンズ系を通過させるようにしたので、該光学レンズ系内において光線をミキシングすることで、光ファイバ内における光の伝搬速度差を解消することができ、その結果、モード分散を削減することができる。
なお、本実施の形態1では、説明を簡略化するため、図2、図10、図12に示すように、各レンズには収差が生じないものとして説明しているが、実際にはレンズには収差によるずれが存在するため、本実施の形態1の各変形例においてそのずれを考慮に入れた収差補正を行い、光学レンズ系に使用する各レンズをチューニングする必要がある。このようにすれば、よりモード分散を削減する効率をあげることができる。
さらに、以上の説明では、上記送信光ファイバOf1の端面から入射される光線R1,R2に同じ信号をのせて上記本光学レンズ系を通過させ、該光学レンズ系においてそれらをミキシングして伝搬速度差を解消し、光ファイバに生じるモード分散を削減する場合ついて説明したが、上記光線R1,R2に異なる信号をのせて上記本光学レンズ系を通過させれば、上記光線R1により伝送されていた信号と、上記光線R2により伝送されていた信号とを交換するスイッチングとして利用することもできる。
実施の形態2.
以下、本実施の形態2について、図20〜図26を用いて説明する。
上記実施の形態1では、光ファイバで1つの信号を伝送する際に、該信号をのせた光線群を、上記光学レンズ系内においてミキシングすることにより、それらの伝搬速度差を解消してモード分散を削減するようにしたが、本実施の形態2においては、モード群分離器により、上記光線群を複数の光線群(モード群)、例えば、そのモード群を高次モード群側と低次モード群とに分離し、上記光線群のうちの高次モード群を出力していくことで、受信側でのパルス幅の広がりを少なくし、モード分散を削減するものである。
まず、図20(a)及び図21を用いて、本実施の形態2の原理について説明する。図20(a)は、光ファイバから出力される光線群を2群に分けた場合を示しており、図21は、本実施の形態2において、光ファイバに入射された各光線群により伝送される、各パルスの時間波形を示した図である。
図20(a)に示すように、光ファイバ内を進んできた光線群は、例えば、2群に分けると、伝搬速度の遅い光線R1等である光ファイバから大きな角度で出射される高次モード群Rhと、伝搬速度の速い光線R2等である光ファイバから小さな角度で出射される低次モード群Rlとに分けることができる。
そして、図21に示すように、上記高次モード群Rhの光線と、低次モード群Rlの光線とを分離して出力するようにすれば、高次モード群Rh及び低次モード群Rlの両群の光線を分離せずに出力する場合(図27(b)参照)より、パルス幅の広がりが少なくなり、その結果モード分散も削減することができるものである。
以下、図22を用いて、上述のように光ファイバに入射される光線群を高次モード群Rhと、低次モード群Rlとに分離するモード群分離器について説明する。
図22は、本実施の形態2におけるモード群分離器の構成を示す図であり、図(a)は、穴あきミラーの正面図であり、図(b)は、図(a)の穴あきミラーを用いたモード群分離器の構成を示す断面図であり、図(c)は、図(a)の穴あきミラーと球面レンズとを一体化したバルク型のモード群分離器の構成を示す断面図である。
まず、図22(b)に示されるモード群分離器224の構成について説明する。図において、モード群分離器224は、図22(a)に示す中央に穴が設けられた穴あきミラー221と、球面レンズ223とからなり、高次モード群Rhの光線と低次モード群Rlの光線とからなる光線群が光ファイバOfから出射されると、球面レンズ223を介して各光線が平行光にされた後、上記穴あきミラー221により、低次モード群Rlは、該穴あきミラー221の穴222の部分から出力され、高次モード群Rhは、上記穴あきミラー221のミラー部分で反射されるようにする。これにより、光線群を高次モード群Rhと低次モード群Rlとに分離することができる。
また、高次モード群Rhの光線と低次モード群Rlの光線を分離するモード群分離器は、図22(c)のような構成をもつものであってもよい。図22(c)に示すモード群分離器225は、図22(b)で説明した、球面レンズ223と穴あきミラー221とをバルク化したものであり、具体的には、片面が球面レンズ状になった円柱のガラス棒のもう一方の面に斜面を形成し、該斜面の中央部分に円形のマスキング等をほどこして金属226を蒸着させ、また、上記中央の金属が蒸着されていない円形部分には、入射してきた光線が反射しないようにAR(無反射)コーディング227を施すことによって作製する。なお、上記モード群分離器225に入力された光線の動きは、上述したモード群分離器224と同様である。
また、上述したモード群分離器としては、図23に示すようなものも考えられる。図23は、本実施の形態2におけるモード群分離器の別の構成を示す図であり、図(a)はモード群分離器の断面図であり、図(b)は図(a)に示すモード群分離器の斜視図であり、図(c)は図(a)に示すモード群分離器によって分離された出射光の動きを示した断面図である。
図23に示すモード群分離器231は、回転楕円体の一部であるすり鉢形状の円形凹面鏡233であり、その底部の中央に穴232が設けられているものである。
上記モード群分離器231は、回転楕円体が2焦点をもち、一方の焦点から出力された光線は、もう一方の焦点にあつまる特性を利用しており、図23(c)に示すように、光ファイバOfを上記モード群分離器231の2焦点のうちの1つの焦点位置に設置し、該光ファイバOfから出射された光線群のうちの低次モード群Rlは、該モード群分離器231の穴232から出力され、高次モード群Rhは、上記モード群分離器231の円形凹面であるミラー233で反射され、上記2焦点のうちのもう一方の焦点に集光されるものである。これにより、上記光線群を、高次モード群Rhと低次モード群Rlとに分離することができる。なお、図23(c)においては、モード群分離器231により分離される光の動きを断面で示しているため、上記モード群分離器231の焦点が2点となっているが、実際にはその焦点は円環状であり、その円環状焦点の1箇所に光ファイバを設置すれば、その設置位置と円環状焦点の円の中心と点対称位置に、上記高次モード群Rhは集光される。
次に、図24を用いて、上述したモード群分離器により、分離される光線の動きについて説明する。
図24は、本実施の形態2における、光線を分離して伝送する送受信装置(図(a))、及び上記送受信装置内の光送受信部の構成(図(b),(c))を示す図である。
図24に示すように、各送受信装置は、光ファイバOfにより数珠つなぎ状態に接続されており、まず第1の送受信装置201a内の光送受信部202aにおいて、光ファイバ内を伝送された光線群を分離して、その光線群のうちの高次モード群を出力し、低次モード群は次の第2の送受信装置201bに伝送する。そして、上記第2の送受信装置201b内の光送受信部202bにおいて、上記第1の送受信装置201aから伝送された光線群をさらに分離して、その光線群のうちの高次モード群を出力し、低次モード群は次の送受信装置(図示せず)へと伝送する。そして、上記第1の送受信装置201a内の光送受信部202aは、上述したモード群分離器224aと、該モード群分離器224aの穴あきミラー221aのミラー部分で反射して分離された高次モード群Rhを受光素子242aに集光させる第3の球面レンズ244aと、上記モード群分離器224aの穴あきミラー221aの穴222を通過して、次の第2の送受信装置201bに伝送される低次モード群Rlの光を集光する第2の球面レンズ243aとを備えるものである。
そして、第2の送受信装置201bの光送受信部202bは、上記第1の送受信装置201aの光送受信部202aと同様の構成を有するものであるが、光送受信部202b内のモード群分離器224bの、穴あきミラー221bの穴222の大きさが異なる。つまり、第1の送受信装置201aにおいては、光線群のうちの高次モード群が出力され、光ファイバを介して第2の送受信装置201bに低次モード群が伝送され、上記第2の送受信装置201bにおいては、第1の送受信装置201aから伝送された低次モード群を、高次モード群と低次モード群とに分離して、その高次モード群を出力し、低次モード群を次の送受信装置に伝送するので、光送受信部202bの穴あきミラー221bの穴の大きさは、光送受信部202aの穴あきミラー221aの穴の大きさより小さくする必要がある。
なお、ここでは上記モード群分離器224として、図22(b)に示した構成を有するものを例に挙げて説明しているが、図22(c),図23に示す構成を有するものであっても、同様である。
このように、光ファイバに入射される光線群をモード群分離器において、高次モード群Rhと低次モード群Rlとに分離し、分離したモード群を出力するようにしたので、受信側において該光線群により伝送されるパルス幅の広がりを小さくすることができ、その結果、モード分散を削減することができる。
上述したような構成は、例えば、電車内において、各車両にディスプレイ等をおいて画像を表示する等のマルチメディア放送をする場合に応用される。具体的に一例を挙げて説明すると、例えば、6両編成の電車の各車両に画像を送信し、該画像をディスプレイに表示する場合、光線群に上記画像信号をのせて光ファイバにより各車両に伝送する。そして、このようなとき、上記信号がのせられた光線群を、上記モード群分離器を用いて図20(b)に示すように6つのモード群RV5〜RV0に分割して各車両に出力する。つまり、まず、1両目において、モード群分離器のミラーの穴の大きさを調節して上記光線群のうちの1/6の光線RV5を高次モード群として出力し、ディスプレイに表示すると共に、残りの5/6の光線RV4〜RV0は低次モード群として光ファイバを介して次の送受信装置に伝送する。そして、2両目では、上記光ファイバを介して伝送された残りの5/6の光線群RV4〜RV0のうちの1/6の光線RV4を高次モード群として出力し、残りの4/6の光線RV3〜RV0は低次モード群として光ファイバを介して次の送受信装置に伝送する。そして、各車両において上述の処理を繰り返し、最終車両である6両目では、上記光線群のうちの最も低次モード側にある1/6の光線RV0が伝送されるものである。以上のように各車両で上記光線群を分離して出力していくことにより、該光線の各モード群で伝送される信号のパルス幅の広がりを抑えることができ、その結果、伝送する帯域を広げることができる。
さらに、上記説明においては、光線群に同じ信号をのせ、各送受信装置においてモード分割する場合について説明したが、光線群のうちの高次モード群と低次モード群とに異なる信号をのせて、上記モード群分離器を備えた送受信装置により伝送するようにすれば、装置間で一定間隔毎に送受信方向が変わる半二重通信ではなく、装置間で同時に送受信が行われる全二重通信を行うこととが可能となる。
以下、図25及び図26を用いて、送受信装置の構成、及び高次モード群Rh及び低次モード群Rlの光線の動きについて説明する。図25は、本実施の形態2における、全二重通信する場合の送受信装置を説明するための図であり、図26は、図25の送受信装置の光送受信部の詳細な構成を示す図である。
図25において、パソコン等である装置A203aと装置B203bとを光ファイバOfにより接続し、高次モード群の光線である光線R1と低次モード群の光線である光線R2とをモード多重させることで全二重通信を行う場合、上記装置A,Bに、図26に示すような光線を受信する光送受信部を設ける。そして、上記光送受信部の送信側には、信号を送信するLED241、あるいはLD等を設け、受信側には、光ファイバから出射される光線群を分離するモード群分離器224、及び分離後の各モード群の光線を受光する受光素子242等を設ける。
ここで、図25(a)に示すように、上記装置A203aと装置B203bとの間を光ファイバOfで接続し、装置A203a、及び装置B203bの両方から、伝搬速度の速い小さい角度で出射される低次モード群Rlの光線によって信号を送信すると、光ファイバOf内において光線同士が拡散したり、装置A203aから出射された光線が光ファイバOfに入力されずにその入射端面に反射して戻ってきたり、光ファイバOfに入射してもファイバ内での散乱光が戻ってきたりする。そして、装置A203aの光送受信部205aにおいては、入射される光線が、光ファイバOfの出射端において反射して戻ってきた光線であるか、装置B203bから出射された光線であるかを判別することができない。
そこで光線を判別可能にするために、例えば、装置A203aから出射する光線を、光ファイバOf内を小さな角度で全反射する伝搬速度の速い光線、つまり低次モード群Rlの光線とし、装置B203bから出射する光線を、光ファイバOf内を大きな角度で全反射する伝搬速度の遅い光線、つまり高次モード群Rhの光線とし、各装置から出射される異なるモードの光線に信号をのせて、信号の送受信を行う。
従って、上記装置A203aの第1の光送受信部205aにおいては、送信側で低次モード群Rlの光線を出射し、受信側で装置B203bから出射された高次モード群Rhの光線が入射され、一方、上記装置B203bの第2の送受信部205bにおいては、送信側で高次モード群Rhの光線を出射し、受信側で装置A203aから出射された低次モード群Rlの光線が入射されることになる。このような構造をとると、各光送受信部205a,bは、その送信側と受信側において、逆のモード群の光線を出射、あるいは入射されるために、その構造を同じにすることはできないこととなる。
以上のような場合に、図25(b)に示すように、本実施の形態1における光学レンズ系を、装置A203aと装置B203bとの間に挿入すれば、本光学レンズ系は、光ファイバ内を小さな角度で全反射する伝搬速度の速い光線を、光ファイバ内を大きな角度で全反射する伝搬速度の遅い光線に変換するので、上記装置A203a,B203bの両装置の光送受信部において、送信側から低次モード群Rlの光線を出射させ、受信側では高次モード群Rhの光線が入射されるようにする。その結果、両装置A,Bの光送受信部の構成を同じにすることができる。
ここで、図25(b)に示される、上記装置A203aと装置B203bとの間で信号の送受信を行う場合の、光線の動きについて説明する。
図26は、装置Aの第1の光送受信部の構成の一例を示す断面図であり、上記モード群分離器によって分離された低次モード群の光線と、高次モード群の光線の動きを説明している。なお、ここでは、モード群分離器は、図22(b)に示す、穴あきミラーと球面レンズとからなるモード群分離器224であるとする。
図26において、第1の光送受信部205aは、穴あきミラー221と球面レンズ223とからなるモード群分離器224と、光源であるLED241と、LED241から出力された光線を平行光にする第3の球面レンズ243と、上記モード群分離器224から出力された光線を集光させる第2の球面レンズ244と、光ファイバOfからの光線を受光する受光素子242とを備えるものである。
まず、装置B203b(図示せず)から出射された、小さな角度で全反射する伝搬速度の速い光線群である低次モード群Rlは、光ファイバOf2中を進み、上記光学レンズ系を通過することで、大きな角度で全反射する伝搬速度の遅い高次モード群Rhに変換され、高次モード群Rhの光線として光ファイバOf1を進み、第1の光送受信部205aに入力される。
第1の光送受信部205aに入力された高次モード群Rhは、まず、モード群分離器224に入力され、穴あきミラー221のミラー部分に反射して、第2の球面レンズ244により一焦点に集められ、その焦点位置に設置した受光素子242において受光される。
一方、装置A203aから出射される、小さな角度で全反射する伝搬速度の速い低次モード群Rlは、第3の球面レンズ243を介して平行光にされて、モード群分離器224の穴あきミラー221の穴の部分222を通過して、第1の球面レンズ223により集光された後、光ファイバOf1中を進み、上記光学レンズ系を通過することで、光ファイバ内を大きな角度で全反射する伝搬速度の遅い光線群である高次モード群Rhに変換され、光ファイバOf2を介して、装置B203bの第1の光送受信部205aに入力される。
従って、装置B203bの第1の光送受信部205aに入射される光線は、高次モード群Rhであり、出射される光線は、低次モード群Rlであるため、装置B203aの光送受信部として、上記装置A203aの第1の光送受信部205aと同じ構成のものを使用することができる。
また、上述のようにハーフミラー等を利用してモード群分離器を構成し、受信光と送信光とを分離するので、LED241からの送信光を、穴あきミラー221の穴部分222を介して光ファイバに直接入射させることができるため、送信効率をあげることができ、また、光ファイバOfから出射される受信光については、上記穴あきミラーのミラー部分で反射させて受信光の集光効率を上げることができるため、受信効率をあげることができるという効果もある。
以上のように、本実施の形態2によれば、各送受信装置にモード群分離器を設け、該モード群分離器により光ファイバを送受信する光束を複数の光線群に分けることにより、各光線群により伝送されるパルス幅の広がりを少なくすることができ、その結果、モード分散を削減することが可能となる。また、光ファイバで接続された上記モード群分離器を備えた送受信装置の間に、実施の形態1で説明した光学レンズ系を挿入すれば、光ファイバにおいて全二重通信をすることが可能となる。
なお、本実施の形態2においては、説明を簡略化するため、モード群分離器を用いて光線群を高次モード群Rhと低次モード群Rlとの2群にわける場合について説明したが、この分離する数は2つに限られず、モード群分離器としてフォログラフィーを使用し、光ファイバから出射される角度の違いによって反射させる位置をかえる等すれば、光ファイバから出射された光線群を任意の数に分離可能である。