JP2007282542A - 低温ストレス耐性を有するトランスジェニック植物 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物体の生育に対する影響が少なく、かつ植物体に低温ストレス耐性を付与できる優れた遺伝子を見いだし、低温ストレス耐性を有する新規なトランスジェニック植物及び植物に低温ストレス耐性を付与する方法を提供する。
【解決手段】シロイヌナズナにおいてAtCSP3遺伝子と称される遺伝子を過剰発現させることによって、植物に低温ストレス耐性を付与できるといった知見を見いだした。なお、シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子については、低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードしているが、植物体に低温ストレス耐性を付与できるといった知見は新規な発見である。
【選択図】なし

Description

植物にとって、低温、乾燥・塩などの環境ストレスは生育を大きく左右する。このことは農業においては作物生産量と直結しており、作物への環境ストレス耐性付与を目指した研究開発が進められている。従来から、育種交雑法によるストレス耐性強化がすすめられているが、交雑で導入できる遺伝資源は限られており、大幅な耐性向上は困難である。従って、遺伝子組換え等の手法により、内在性又は他種由来遺伝子の過剰発現を行う等の新しいアプローチが必要である。
近年、遺伝子組換え等の新しい手法が開発され、植物に多様な遺伝子を導入することが可能となった。実際に、アミノ酸の一種であるプロリンを合成する酵素遺伝子を導入した植物では、プロリンによる浸透圧調節機能が付与されるため、乾燥や塩ストレスに対し耐性を示すことが報告されている(非特許文献1)。また、ストレス応答を制御する転写因子遺伝子を導入することにより、ストレス応答を活性化し、乾燥、塩、低温ストレスに対して耐性を付与できることが報告されている(非特許文献2)。
しかしながら、例えば、転写因子を過剰発現した場合においては、結果的にその転写因子により誘導されるすべての遺伝子が過剰発現することになるため、ストレス耐性獲得に加えて、植物体が矮性化する等、生育への悪影響が顕在化する例も報告されている(非特許文献3)。過剰発現による悪影響のない新たな耐性付与遺伝子の探索や導入遺伝子の発現方法の改良などが求められている。
Kishor P, Hong Z, Miao GH, Hu C, Verma D. Plant Physiol. 1995 Aug;108(4):1387-1394. Liu Q, Kasuga M, Sakuma Y, Abe H, Miura S, Yamaguchi-Shinozaki K, Shinozaki K. Plant Cell. 1998 Aug;10(8):1391-406.; Jaglo-Ottosen KR, Gilmour SJ, Zarka DG, Schabenberger O, Thomashow MF. Science. 1998 Apr 3;280(5360):104-6. Liu Q, Kasuga M, Sakuma Y, Abe H, Miura S, Yamaguchi-Shinozaki K, Shinozaki K. Plant Cell. 1998 Aug;10(8):1391-406.
そこで、本発明は、植物体の生育に対する影響が少なく、かつ植物体に低温ストレス耐性を付与できる優れた遺伝子を見いだし、低温ストレス耐性を有する新規なトランスジェニック植物及び植物に低温ストレス耐性を付与する方法を提供することを目的としている。
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、シロイヌナズナにおいてAtCSP3遺伝子と称される遺伝子を過剰発現させることによって、植物に低温ストレス耐性を付与できるといった知見を見いだし、本発明を完成するに至った。なお、シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子については、低温応答性発現を示すことは知られているが(Karlson, D. and Imai, R. Plant Physiol.131, 12-15, 2003)、低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードしており、過剰発現により植物体に低温ストレス耐性を付与できるといった知見は新規な発見である。
本発明は以下を包含する。
(1)シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子が過剰発現するように改変されたトランスジェニック植物。
(2)上記遺伝子は低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードすることを特徴とする(1)記載のトランスジェニック植物。
(3)上記遺伝子は、以下の(a)〜(d)の少なくとも1つの遺伝子であることを特徴とする(1)記載のトランスジェニック植物。
(a)配列番号1に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
(b)配列番号1に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(d)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードする遺伝子
(4)上記遺伝子は過剰発現プロモーターに連結されていることを特徴とする(1)記載のトランスジェニック植物。
(5)シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子が過剰発現するように改変する、植物に低温ストレス耐性を付与する方法。
(6)上記遺伝子は低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードすることを特徴とする(5)記載の方法。
(7)上記遺伝子は、以下の(a)〜(d)の少なくとも1つの遺伝子であることを特徴とする(5)記載の方法。
(a)配列番号1に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
(b)配列番号1に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(d)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードする遺伝子
(8)上記遺伝子は過剰発現プロモーターに連結されていることを特徴とする(5)記載の方法。
本発明にかかるトランスジェニック植物は、シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子が過剰発現しているため、低温ストレスに対する耐性を有することとなる。また、本発明にかかる植物に低温ストレス耐性を付与する方法によれば、シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子を過剰発現させることにより、植物が矮小化することなく、優れた低温ストレス耐性を付与することができる。
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
本発明にかかるトランスジェニック植物は、シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子が過剰発現するように改変されたものである。本発明においてシロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質(以下AtCSP3と称する)をコードしている。植物の低温耐性獲得における低温ショックドメインRNA結合タンパク質の機能解明を行う過程(後述の実施例参照)で、AtCSP3遺伝子を欠損したシロイヌナズナにおいては、耐凍性が著しく減少するといった表現型を示す。この知見より、AtCSP3遺伝子の産物がシロイヌナズナにおける耐凍性の獲得に必須であることが示されている。
よって、シロイヌナズナに限らず、各種の植物においてシロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子を過剰発現するように改変することによって、低温ストレス耐性を向上させることができる。
トランスジェニック植物において過剰発現させる遺伝子
本発明にかかるトランスジェニック植物において、過剰発現させる遺伝子とは、シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子、あるいはシロイヌナズナ以外の植物におけるAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子である。
AtCSP3遺伝子は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードしている。AtCSP3遺伝子としては、例えば配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。
AtCSP3遺伝子のクローニングは例えば以下のようにして行うことができる。
(1) シロイヌナズナのmRNA及びcDNAライブラリーの調製
mRNAの供給源としては、シロイヌナズナの葉、茎、根、花など植物体の一部又は植物 体全体が挙げられる。また、シロイヌナズナの種子をGM培地、MS培地、#3培地などの固体培地に播種し、無菌条件下で生育させた植物体も用いることができる。本発明に用いる遺伝子のシロイヌナズナ植物体中のmRNAレベルは、低温ストレス(例えば、-10〜10℃)に曝露することにより増大するため、これらのストレスに曝露させたシロイヌナズナ植物体を用いてもよい。
mRNAの調製は、例えば、GM培地で生育させたシロイヌナズナの植物体を、低温ストレスに曝露後、液体窒素で凍結する。その後は、通常行われる手法により行うことができる。例えば、凍結した植物体を乳鉢などで摩砕後、得られた摩砕物から、グリオキザール法、グアニジンチオシナネート-塩化セシウム法、塩化リチウム-尿素法、プロテイナーゼK-デオキシリボヌクレアーゼ法などにより、粗RNA画分を抽出調製する。RNAの抽出は、市販のキット(Total RNA Extraction Kit;Amersham製)を用いてもよい。
このようにして得られた粗RNA画分を鋳型として、オリゴdTプライマー及び逆転写酵素を用いて、一本鎖cDNAを合成した後、該一本鎖cDNAを鋳型として、シロイヌナズナのゲノム情報を基に設計した一対のプライマーを用いたPCRによってAtCSP3遺伝子を増幅することができる。一対のプライマーは、例えば、AtCSP3遺伝子の塩基配列(Genebankアクセッション番号 AY035133)の5’UTRから終止コドンまでを増幅できるように設計することができる。
但し、シロイヌナズナにおいても品種等によって多少のアミノ酸配列或いは塩基配列の相違はありえる。また、同一植物品種であっても突然変異等によってアミノ酸配列或いは塩基配列が変化する場合もある。よって、シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子には、配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードする遺伝子も含まれる。
ここで、欠失、置換若しくは付加されてもよいアミノ酸の数としては、好ましくは、1個から数個である。例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2に示すアミノ酸配列に1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2に示すアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
なお、アミノ酸の欠失、付加、及び置換は、上記タンパク質をコードする遺伝子を、当該技術分野で公知の手法によって人為的に改変することによって行うこともできる。遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法又はGapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異を導入することができる。
また、AtCSP3遺伝子には、配列番号2に示すアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する遺伝子であって、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードする遺伝子も含まれる。上記70%以上の相同性は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性をいう。ここで相同性は、一般的な相同性解析ソフトウェア(BLAST、FASTA及びCLUSTAL W等)をデフォルトの設定で解析した数値を意味する。
さらにシロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子には、配列番号1に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードするDNAからなる遺伝子も含まれる。
ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高い核酸、すなわち配列番号1で表わされる塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましく95%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜68℃、好ましくは65℃での条件をいう。
一方、シロイヌナズナ以外の植物において、AtCSP3遺伝子に相当する遺伝子を同定するには、当該植物のゲノム解析が進んでいる場合にはゲノム情報を格納したデータベースを用いて、AtCSP3遺伝子の塩基配列(配列番号1)やAtCSP3のアミノ酸配列(配列番号2)をキーとして相同性の高い遺伝子を検索することによって行うことができる。また、当該植物のゲノム情報が得られない場合には、当該植物のcDNAライブラリーを構築し、AtCSP3遺伝子の塩基配列(配列番号1)の一部又は全部からなるプローブを用いて、AtCSP3遺伝子に相当する遺伝子を同定することができる。AtCSP3遺伝子に相当する遺伝子を同定したならば、定法に従って当該遺伝子を単離することができる。
AtCSP3遺伝子に相当する遺伝子がAtCSP3遺伝子と同様にRNA結合タンパク質をコードするか否かは、当該遺伝子を組み込んだ発現ベクターを適当な宿主で発現させ、発現したタンパク質における同機能を検討すればよい。また、AtCSP3遺伝子に相当する遺伝子がAtCSP3遺伝子と同様に低温ショックドメインを有するタンパク質をコードしているか否かは、対象となる遺伝子の塩基配列から推定されるアミノ酸配列を決定し、アミノ酸配列から低温ショックドメインに特徴的なアミノ酸配列を有しているか否かを調べればよい。
またRNA結合タンパク質として機能するか否かは、いわゆるゲルシフト解析を使用して検討することができる。具体的には、核酸を含む溶液に対象となるタンパク質を添加し、その後、適当な濃度のアガロースゲルを用いた電気泳動を行う。タンパク質が核酸分子と相互作用する場合には、核酸の泳動度が変化することとなる。一方タンパク質が核酸分子を相互作用しない場合には、タンパク質添加の有無に拘わらず一定の泳動度となる。この場合、タンパク質の濃度を適宜変化させた複数のサンプルを使用しても良いし、核酸と相互作用しないことが知られている既知のタンパク質をコントロールとして使用することもできる。ここで、核酸分子としては、一本鎖DNA、二本鎖DNA或いはmRNAを使用することによって、対象となるタンパク質が結合する核酸分子の種類を調べることができる。すなわち、核酸分子としてmRNAを使用してゲルシフト解析を行うことによって、対象となるタンパク質のRNA結合性を調べることができる。
なお、図1には、シロイヌナズナAtCSP3遺伝子がコードするタンパク質を用いたゲルシフト解析の結果を示している。本例では、核酸分子としてM13ssDNA、M13dsDNA及びluciferase mRNAを使用している。本結果より、AtCSP3遺伝子がコードするタンパク質は、ssDNA、dsDNA及びmRNAに対して結合できることが実証された。
また、低温ショックドメインとは、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列において10〜77番目に相当するアミノ酸配列を有するドメインとして定義することができる。配列番号2における10〜77番目のアミノ酸配列に対して、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上の相同性を有するドメインを低温ショックドメインとして定義することができる。
組換えベクター及び形質転換植物の作製
(1) 組換えベクターの作製
組換えベクターは、上述したAtCSP3遺伝子或いはAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子(以下、「目的遺伝子」ともいう)を適当なベクターに導入することにより構築することができる。ここで、ベクターとしては、アグロバクテリウムを介して植物に目的遺伝子を導入することができる、pBI系、pPZP系、pSMA系のベクターなどが好適に用いられる。特にpBI系のバイナリーベクター又は中間ベクター系が好適に用いられ、例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3等が挙げられる。バイナリーベクターとは大腸菌(Escherichia coli)及びアグロバクテリウムにおいて複製可能なシャトルベクターで、バイナリーベクターを保持するアグロバクテリムを植物に感染させると、ベクター上にあるLB配列とRB配列よりなるボーダー配列で囲まれた部分のDNAを植物核DNAに組み込むことが可能なベクターである(EMBO Journal, 10(3), 697-704 (1991))。一方、pUC系のベクターは、植物に目的遺伝子を直接導入することができ、例えば、pUC18、pUC19、pUC9等が挙げられる。また、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターも用いることができる。
バイナリーベクター系プラスミドを用いる場合、上記のバイナリーベクターの境界配列(LB,RB)間に、目的遺伝子を挿入し、この組換えベクターを大腸菌中で増幅する。次いで、増幅した組換えベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンスC58、LBA4404、EHA101、EHA105等に、エレクトロポレーション法等により導入し、該アグロバクテリウムを植物の形質導入に用いる。
ベクターに目的遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。また、目的遺伝子は、導入対象の植物内において過剰発現されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、ベクターには、上記遺伝子の上流、内部、あるいは下流に、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリA付加シグナル、5'-UTR配列、選抜マーカー遺伝子などを連結することができる。
「プロモーター」としては、植物細胞において下流の遺伝子の発現を制御する機能を有するものを使用する。例えば、プロモーターとしては、植物の特定の組織内あるいは特定の発育段階において発現を導くものであってもよいし、植物のすべての組織及びすべての発育段階において恒常的に発現を導くものであってもよい。プロモーターとしては、植物由来のものでもよいし、植物由来のものでなくてもよい。具体例としては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。
エンハンサーとしては、例えば、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域などが挙げられる。ターミネーターとしては、プロモーターにより転写された遺伝子の転写を終結できる配列であればよく、例えば、ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素(OCS)遺伝子のターミネーター、CaMV 35S RNA遺伝子のターミネーター等が挙げられる。
選抜マーカー遺伝子としては、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子などが挙げられる。また、選抜マーカー遺伝子は、上記のように目的遺伝子とともに同一のプラスミドに連結させて組換えベクターを調製してもよいが、あるいは、選抜マーカー遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターと、目的遺伝子をプラスミドに連結して得られる組換えベクターとを別々に調製してもよい。別々に調製した場合は、各ベクターを宿主にコトランスフェクト(共導入)する。
(2) 形質転換植物の作製
本発明の形質転換植物は、上記(1)の組換えベクターを用いて、対象植物を形質転換することで調製できる。形質転換植物体を調製する際には、既に報告され、確立されている種々の方法を適宜利用することができ、その好ましい例として、アグロバクテリウム法、PEG−リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。アグロバクテリウム法を用いる場合は、プロトプラストを用いる場合、組織片を用いる場合、及び植物体そのものを用いる場合(in planta法)がある。プロトプラストを用いる場合は、Tiプラスミドをもつアグロバクテリウムと共存培養する方法、スフェロプラスト化したアグロバクテリウムと融合する方法(スフェロプラスト法)、組織片を用いる場合は、対象植物の無菌培養葉片(リーフディスク)に感染させる方法やカルスに感染させる等により行うことができる。また種子あるいは植物体を用いるin planta法を適用する場合、すなわち植物ホルモン添加の組織培養を介さない系では、吸水種子、幼植物(幼苗)、鉢植え植物などへのアグロバクテリウムの直接処理等にて実施可能である。
アグロバクテリウム感染法により目的遺伝子を導入する場合、目的遺伝子を含むプラスミドを保有するアグロバクテリウムを植物に感染させる工程が必須であるが、これは、減圧浸潤法により行うことができる。すなわち、バーミキュライトとパーライトを等量ずつ合わせた土で生育させたシロイヌナズナを、目的遺伝子を含むプラスミドを含むアグロバクテリウムの培養液に直接浸し、これをデシケーターに入れバキュームポンプで65〜70mmHgになるまで吸引後、5〜10分間、室温に放置する。鉢をトレーに移しラップで覆い湿度を保つ。翌日ラップを取り、植物をそのまま生育させ種子を収穫する。次いで、目的遺伝子を保有する個体を選択するために、種子を適切な抗生物質を加えたMS寒天培地に播種する。この培地で生育したシロイヌナズナを鉢に移し、生育させることにより、目的遺伝子が導入された形質転換植物の種子を得ることができる。
目的遺伝子が植物体に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法等により行うことができる。例えば、形質転換植物体からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRを行った後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法でもよい。
あるいは、種々のレポーター遺伝子、例えばベータグルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ(LUC)、Green fluorescent protein(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ベータガラクトシダーゼ(LacZ)等の遺伝子を目的遺伝子の下流域に連結したベクターを作製し、該ベクター導入したアグロバクテリムを用いて上記と同様にして植物を形質転換させ、該レポーター遺伝子の発現を測定することにより確認できる。
本発明において形質転換に用いられる植物としては単子葉植物又は双子葉植物のいずれであってもよい。単子葉植物としては、例えばイネ科(イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、シバ、ソルガム、アワ、ヒエ等)、ユリ科(アスパラガス、ユリ、タマネギ、ニラ、カタクリ等)、ショウガ科(ショウガ、ミョウガ、ウコン等)に属する植物が挙げられ、双子葉植物としては、例えばアブラナ科(シロイヌナズナ、キャベツ、ナタネ、カリフラワー、ブロッコリー、ダイコン等)、ナス科(トマト、ナス、ジャガイモ、タバコ等)、マメ科(ダイズ、エンドウ、インゲン、アルファルファ等)、ウリ科(キュウリ、メロン、カボチャ等)、セリ科(ニンジン、セロリ、ミツバ等)、キク科(レタス等)、アオイ科(ワタ、オクラ等)、アカザ科(シュガービート、ホウレンソウ等)、フトモモ科(ユーカリ、クローブ等)、ヤナギ科(ポプラ等)に属する植物が挙げられるが、これらに限定はされない。これらの中でも、アブラナ科に属する植物、タバコ、ダイズ、コムギ等が特に好ましく用いられる。
本発明において、形質転換の対象とする植物材料としては、例えば、根、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂(植物の芽の先端の生長点)、葯、花粉等の植物 組織やその切片、未分化のカルス、それを酵素処置して細胞壁を除いたプロプラスト等の植物培養細胞が挙げられる。またin planta法適用の場合、吸水種子や植物体全体を利用し得る。
また、本発明において形質転換植物体とは、植物体全体、植物器官(例えば根、茎、葉、花弁、種子、種子、実等)植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)、植物培養細胞のいずれをも意味するものである。植物培養細胞を対象とする場合において、得られた形質転換細胞から形質転換体を再生させるためには既知の組織培養法により器官又は個体を再生させればよい。このような操作は、植物細胞から植物体への再生方法として一般的に知られている方法により、当業者であれば容易に行うことができる。植物細胞から植物体への再生については、例えば、以下のように行うことができる。
まず、形質転換の対象とする植物材料して植物組織又はプロトプラストを用いた場合、これらを無機要素、ビタミン、炭素源、エネルギー源としての糖類、植物生長調節物質(オーキシン、サイトカイニン等の植物ホルモン)等を加えて滅菌したカルス形成用培地中で培養し、不定形に増殖する脱分化したカルスを形成させる(以下「カルス誘導」という)。このように形成されたカルスをオーキシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖(継代培養)させる。
カルス誘導は寒天等の固型培地で行い、継代培養は例えば液体培養で行うと、それぞれの培養を効率良くかつ大量に行うことができる。次に、上記の継代培養により増殖したカルスを適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(以下、「再分化誘導」という)、最終的に完全な植物体を再生させる。再分化誘導は、培地におけるオーキシンやサイトカイニン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成分の種類や量、光、温度等を適切に設定することにより行うことができる。かかる再分化誘導により、不定胚、不定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、更に完全な植物体へと育成させる。あるいは、完全な植物体になる前の状態(例えばカプセル化された人工種子、乾燥胚、凍結乾燥細胞及び組織等)で貯蔵等を行ってもよい。
本発明の形質転換植物体は、形質転換処理を施した再分化当代である「T1世代」のほか、その植物の種子から得られた後代である「T2世代」、薬剤選抜あるいはサザン法等による解析によりトランスジェニックであることが判明した「T2世代」植物の花を自家受粉して得られる次世代(T3世代)などの後代植物をも含む。
上記のようにして得られる形質転換植物は、低温ストレスに対して耐性を獲得する。従って、当該形質転換植物は、低温ストレス耐性植物として使用することができる。ここで、「低温ストレス」とは、それぞれの生物種の生活至適温度よりも低い温度が持続的に負荷(例えばシロイヌナズナの場合、-10〜5℃の温度を継続的に1時間〜数週間負荷)されたときに起こるストレスをいう。
形質転換植物の低温ストレスに対する耐性の評価
本発明の形質転換植物の低温ストレスに対する耐性は、バーミキュライト、パーライトなどを含む土を入れた植木鉢に形質転換植物を植え、低温ストレスを負荷した場合の植物体の状態(例えば、生育速度、生存率、草丈、重量、収量、あるいはこれらの組合せ)を調べることによって評価することができる。ここで、低温ストレスの負荷条件は前項の通り行うことができる。
植物の環境ストレス耐性調節物質のスクリーニング方法
上述したAtCSP3遺伝子及びAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子は、植物の低温ストレス耐性を調節する物質のスクリーニングに用いることができる。植物体または植物細胞における上記遺伝子の発現量が増加すれば、その植物の低温ストレス耐性は上昇し、該遺伝子の発現量が減少すれば、低温ストレス耐性は低下する。従って、上述した遺伝子の植物体または植物細胞における発現量の増減を指標とすることにより、低温ストレス耐性の調節物質をスクリーニングすることができる。具体的には、環境ストレス耐性調節物質の候補物質を、上述した遺伝子を発現可能な植物、例えばシロイヌナズナに添加し、該植物細胞内における上述した遺伝子の発現レベルの変化を、定量的PCR法、ノーザン法等で測定する。候補物質を添加することにより上述した遺伝子の発現量が増加した場合には、当該候補物質は植物の低温ストレス耐性を強化させる物質の候補物質とすることができ、当該候補物質を添加することにより本発明の遺伝子の発現量が減少した場合には、当該候補物質は植物の低温ストレス耐性を弱化させる物質の候補物質とすることができる。
スクリーニングの対象となる候補物質の種類は特に限定されない。例えば、天然に生じる分子(例えば、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸など);脂質、ステロイド、グリコペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカンなど;あるいは天然に生じる分子の合成アナログ又は誘導体(例えば、ペプチド擬態物など);及び天然に生じない分子(例えば、コンビナトリアルケミストリー技術等を用いて作成した低分子有機化合物);ならびにそれらの混合物などを挙げることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
1.cDNAの合成
アラビドプシス(Columbia-0)のロゼット葉よりRNeasy Mini Kit (Qiagen社製)を用いてTotal RNAを抽出した。得られたRNAを用いてPCR Core Kit (Applied Biosystem社製)を利用してcDNAを合成した。
2.cDNAからのAtCSP3遺伝子部分の単離
上記の通り合成されたcDNAを鋳型として、以下のフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いてPCRを行った。
フォワードプライマー:
5’-tctagacgaacaaagtgcttcg-3’(下線部はXhoI部位:配列番号3)
リバースプライマー:
5’-gagctcttaagcaaccgaagta-3’(下線部はSacI部位:配列番号4)
これらのフォワードプライマー及びリバースプライマーは、既知のAtCSP3遺伝子の塩基配列(Genebankアクセッション番号At2g18780)の5’UTRから終止コドンまでを増幅できるように設計したものである。PCRは50μlの反応系で行った。
Ex Taq DNA ポリメラーゼ(TAKARA BIO INC.;5 units/μl)を0.2μl、10×ポリメラーゼバッファー(MgCl2を含む)を5μl、2.5mM dNTP液(2.5mM)を2.5μl、上記の各プライマー(10pmol/μl)を0.1μl及び上記で合成したcDNA(約1μg /μl)を2μl混合し、さらに反応全量をミリQ水で50μlとした。用いたPCRの反応条件及び反応回数は、以下の表1に示す。
Figure 2007282542
PCR反応後、電気泳動によりPCR産物の確認を行ったところ、予測された長さの核酸断片が(900塩基前後)が増幅されていた。得られた断片をpGEM-Teasy vector system(Promega社製)を利用してクローニングし、複数の陽性クローンを得た。それらの陽性クローンに含まれるDNA挿入断片について、BigDye Terminator v1.1 cycle Sequencing kit(Amersham Bioscience社製)を用いて、ABI社製DNAシーケンサー(373 DNA sequencer)により塩基配列を決定し、さらに上述した既知のAtCSP3遺伝子との比較解析を行い、クローニングしたDNA挿入断片がAtCSP3遺伝子であることを確認した。
3.アグロバクテリウムを用いたAtCSP3遺伝子のアラビドプシスへの形質転換
以上のようにして、単離されたAtCSP3遺伝子をTi系ベクターであるpBI 121ベクター (Clonetech社製)中のCaMV35Sプロモーターの下流に、センス鎖方向で導入した。
まず、上記で得られたpGEM-Teasy vectorにAtCSP3遺伝子が挿入されたプラスミドをXhoI及びSacIで処理しXhoI-SacI断片を調製した。調製したAtCSP3遺伝子含有XhoI-SacI断片を、XhoI及びSacIを用いて切断したpBI 121ベクターに、センス方向でライゲーションした。得られた核酸構築物をアグロバクテリウム(GV3101/Pmp-90)に凍結融解法(Hofgen et al.、(1998) Storage of competent cells for Agrobacterium transformation. Nucleic Acids Res. Oct 25;16(20):9877)を利用して形質転換した。形質転換アグロバクテリウムを選抜するため、遺伝子導入したアグロバクテリウムをカナマイシン(50mg/L)、ゲンタマイシン(100mg/L)を含むYEP培地上でカナマイシン耐性、ゲンタマイシン耐性について選抜した。選抜したコロニーをカナマイシン、ゲンタマイシンを含む5 mlのYEP培地で20〜24時間培養後、カナマイシン、ゲンタマイシンを含む100mlのYEP培地に植菌し、O.D.600=0.80になるまで培養した。培養した菌液は5000×gで10分間室温で遠心した。沈澱した菌体は50mlのfloral dropping mediumに溶解した。溶解した菌液をアラビドプシスの蕾に3〜5回注入した。アグロバクテリウムを注入した植物はビニール袋に入れ、22℃の暗所で一晩生育させた。翌日、植物を22℃、長日条件下に移動させた。植物に菌を感染させてから3日後に水を与え始めた。以上の実験に使用した培地の組成は表2及び表3の通りである。
Figure 2007282542
Figure 2007282542
*1000 x MSビタミン(1L):100g myo-inositol, 2g L-glycine, 0.5g Nicotinic acid, 0.5g Pyridoxine・HCl, 0.5g Thiamine・HCl.
4.AtCSP3形質転換植物体の選抜
形質転換した植物から得られた種を滅菌溶液(70%エタノール、0.5% Triton X-100)で30分間滅菌し、その後100%エタノールで2分滅菌した。その後、カナマイシン(50mg/L)、バンコマイシン(200mg/L)を含むMS培地に種を播いた。同培地上で正常に生育した植物体(T0世代)を自家受粉してえられたT世代で形質転換体と野生株の分離比が3:1であることを確認した。さらにT2世代で導入遺伝子をホモでもつ植物体を選抜した。以上の実験に使用した培地の組成は表4の通りである。
Figure 2007282542
*1000 x MSビタミン(1L):100g myo-inositol, 2g L-glycine, 0.5g Nicotinic acid, 0.5g Pyridoxine・HCl, 0.5g Thiamine・HCl.
5.AtCSP3ノックアウト変異株の選抜
AtCSP3遺伝子のノックアウト変異株を得るため、TAIRのホームページ(http://www.arabidopsis.org/)よりAtCSP3の低温ショックドメインにT-DNAが挿入された変異株(WiscDsLox353G12)を購入した(図2参照)。購入した種子を土(バーミキュライト(釧路石炭乾溜社製)とジーフィーミックス(サカタのタネ社製)を3:1の割合で混合したもの)に播き、ロゼット葉まで生育させた後、Leaf PCR法(Klimyuk et al.、(1993) Alkali treatment for rapid preparation of plant material for reliable PCR analysis. Plant J. Mar;3(3):493-4)によりゲノムDNAを抽出した。T-DNA挿入をホモにもつ変異株を選択するためT-DNAに対する特異的プライマー(5’-cgtccgcaatgtgtta-3’:配列番号5)とAtCSP3遺伝子に対する特異的プライマー(5’-tgtacgaacaaagtgcttcga -3’:配列番号6及び5’- tacaatccctagcgaaatgtc-3’:配列番号7)を使用しPCR反応を行った。PCR反応はアラビドプシスのゲノムDNA(約1ng/μl)を1μl、Ex Taq DNAポリメラーゼ(TAKARA BIO INC.;5 units/μl)を0.1μl、10×ポリメラーゼバッファー(MgCl2を含む)を2μl、dNTP液(2.5mM)を1μl、上記の各プライマー(10pmol/μl)を0.2μlを混合し、さらに反応液全量をミリQ水で20μlとした。用いたPCRの反応条件及び反応回数は、以下の表5に示す。
Figure 2007282542
6.AtCSP3遺伝子ノックアウト変異株におけるAtCSP3遺伝子発現の確認
AtCSP3遺伝子ノックアウト変異株のロゼット葉よりRNeasy Mini Kit (Qiagen社製)を用いてTotal RNAを抽出した。得られたRNAを用いてPCR Core Kit (Applied Biosystem社製)を利用してcDNAを合成した。上記で合成されたcDNAを鋳型として、以下のフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いてPCRを行った。
フォワードプライマー:5’-aagtgcttcgagtttttgtta-3’(配列番号8)
リバースプライマー:5’-gcagtgaacaggttgcat-3’(配列番号9)
cDNA(約1μg)を2μl、Ex Taq DNAポリメラーゼ(TAKARA BIO INC. ; 5 units/μl)を0.1μl、10×ポリメラーゼバッファー(MgCl2を含む)を1μl、dNTP液(2.5mM)を0.4μl、上記の各プライマー(5pmol /μl)を0.5μl混合し、さらに反応液全量をミリQ水で10μlとした。用いたPCRの反応条件及び反応回数は、以下の表6に示す。
Figure 2007282542
PCRの結果、AtCSP3遺伝子ノックアウト変異株においては、AtCSP3遺伝子の発現が認めらなかった。よって、本実施例で作製したAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株は、AtCSP3遺伝子の機能を欠損した株であって、AtCSP3遺伝子の機能解析に有用であることがわかった。
7.AtCSP3過剰発現株、AtCSP3遺伝子ノックアウト変異株の凍結耐性の評価
AtCSP3過剰発現株、AtCSP3遺伝子ノックアウト変異株及びアラビドプス野生株(Columbia-0)の種子を滅菌溶液(70%エタノール、0.5% Triton X-100)で30分間滅菌し、その後100%エタノールで2分間滅菌し、Gamborg培地に播いた。22℃、連続光の条件下で2週間生育させた後、TEMPERATURE CABINET(TABAI ESPEC社製)を用いて凍結耐性の評価を行った。その後、22℃、連続光の条件に戻して1週間後に生存率の測定を行った。凍結耐性評価のステップ、温度、時間は以下の表7に示す。
Figure 2007282542
ステップ1で培地を凍結させるため、2時間後に氷を入れた。また4℃から22℃に戻す時に培地から水を除去した。以上の実験に使用した培地の組成は表8の通りである。
Figure 2007282542
野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株について行った順化なしの凍結処理の結果を図3及び4に示す。図3(A)は凍結処理前における野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株の写真であり、図3(B)は凍結処理後の野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株の写真である。図4は、順化なしの凍結処理温度と生存率との関係を示す特性図である。また、順化ありの凍結処理の結果を図5及び6に示す。図5(A)は-5℃で凍結処理した後の野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株の写真であり、図5(B)は-7℃で凍結処理した後の野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株の写真であり、図5(C)は-9℃で凍結処理した後の野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株の写真である。図6は、低温順化ありの凍結処理温度と生存率との関係を示す特性図である。これらの結果から、AtCSP3遺伝子ノックアウト変異株が凍結処理によって生育困難であることが判明し、AtCSP3遺伝子は低温ストレス耐性に直接的に関与していることが判明した。
野生型及びAtCSP3過剰発現株について行った凍結処理の結果を図7〜10に示す。図7はAtCSP3遺伝子のmRNAを観察した結果である。図8はAtCSP3遺伝子がコードするタンパク質を観察した結果である。また、図9は凍結処理した後の野生型及びAtCSP3過剰発現株の写真である。図10は野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株を通常の条件で生育させた場合の植物体の写真である。図7〜10においてS3はAtCSP3過剰発現株を示し、Wは野生株を示す。これらの結果から、AtCSP3過剰発現株においては、野生株と比較して低温ストレス耐性が有意に向上していることがわかる。特に図10からわかるように、AtCSP3過剰発現株においては、矮化等の悪形質は観察されない。
以上の結果から、植物においてAtCSP3遺伝子或いはAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子を過剰発現させることによって、矮化等の悪形質を示すことなく、低温ストレス耐性を向上できることが明かとなった。
AtCSP3遺伝子がコードするタンパク質の核酸分子に対する結合活性をゲルシフト解析によって検討した結果を示す電気泳動写真である。 実施例で用いたAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株におけるAtCSP3遺伝子を模式的に示す図である。 野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株について順化処理なしで行った凍結処理実験の結果を示す写真である。 野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株について順化処理なしで行った凍結処理実験の結果を示す特性図である。 野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株について行った低温順化後の凍結処理実験の結果を示す写真である。 野生型及びAtCSP3遺伝子ノックアウト変異株について行った低温順化後の凍結処理実験の結果を示す写真である。 野生型及びAtCSP3過剰発現株についてAtCSP3遺伝子のmRNAを測定した結果を示す写真である。 野生型及びAtCSP3過剰発現株についてAtCSP3遺伝子がコードするタンパク質を検出した結果を示す写真である。 野生型及びAtCSP3過剰発現株について行った凍結処理実験の結果を示す写真である。FT, 凍結処理;W, 野生株;S3, AtCSP3過剰発現株 野生型及びAtCSP3過剰発現株を通常の環境下で育てた場合に生育に違いがないことを示す写真である。FT, 凍結処理;W, 野生株;S3, AtCSP3過剰発現株

Claims (8)

  1. シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子が過剰発現するように改変されたトランスジェニック植物。
  2. 上記遺伝子は低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードすることを特徴とする請求項1記載のトランスジェニック植物。
  3. 上記遺伝子は、以下の(a)〜(d)の少なくとも1つの遺伝子であることを特徴とする請求項1記載のトランスジェニック植物。
    (a)配列番号1に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
    (b)配列番号1に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (c)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
    (d)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードする遺伝子
  4. 上記遺伝子は過剰発現プロモーターに連結されていることを特徴とする請求項1記載のトランスジェニック植物。
  5. シロイヌナズナにおけるAtCSP3遺伝子に相当する遺伝子が過剰発現するように改変する、植物に低温ストレス耐性を付与する方法。
  6. 上記遺伝子は低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードすることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 上記遺伝子は、以下の(a)〜(d)の少なくとも1つの遺伝子であることを特徴とする請求項5記載の方法。
    (a)配列番号1に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子
    (b)配列番号1に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードするDNAからなる遺伝子
    (c)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
    (d)配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ低温ショックドメインを有するRNA結合タンパク質をコードする遺伝子
  8. 上記遺伝子は過剰発現プロモーターに連結されていることを特徴とする請求項5記載の方法。
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