JP2007277590A - 曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼板 - Google Patents

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Abstract

【要約書】
【課題】曲げ加工性に優れた耐磨耗鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.30%、V:0.1〜1.0%を含有し、かつ、固溶C量が0.03%以下である組成とする。また、マトリクスをフェライト相とし、マトリクス中に硬質相が分散した組織とする。なおさらに、Nb、Tiの1種または2種、Mo、W、Si、Mn、Cuの1種または2種以上、Ni、Bの1種または2種、Crを含有してもよい。これにより、過度な高硬度化を伴うことなく、特に、土砂などによる摩耗に対する耐摩耗性と、曲げ加工性とをともに飛躍的に向上させることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、建設、土木、鉱山等の分野で使用される、例えば、パワーショベル、ブルドーザー、ホッパー、バケット等の産業機械や運搬機器等のうち、土砂との接触による摩耗が問題となるような部材用として好適な耐摩耗鋼板に係り、特に、曲げ加工性の改善に関する。なお、ここでいう、「鋼板」には、鋼板、鋼帯を含むものとする。
土、砂等による摩耗を受ける部材には、長寿命化のため、耐摩耗性に優れた鋼材が使用されている。従来から、鋼材の耐摩耗性は、高硬度化することにより、向上することが知られている。このため、耐摩耗性が要求される部材には、Cr、Mo等の合金元素を大量に添加した鋼材に焼入等の熱処理を施し、高硬度化した鋼材が使用されてきた。
例えば、特許文献1には、C:0.10〜0.19%を含み、Si、Mnを適正量含有し、Ceqを0.35〜0.44%に限定した鋼を、熱間圧延後直接焼入れし、あるいは900〜950℃に再加熱したのち焼入れし、300〜500℃で焼戻し、鋼板表面硬さを300HV以上とする耐摩耗鋼板の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、C:0.10〜0.20%を含み、Si、Mn、P、S、N、Alを適正量に調整し、あるいはさらにCu、Ni、Cr、Mo、Bのうちの1種以上を含有する鋼に、熱間圧延後直接焼入れし、あるいは圧延後放冷した後、再加熱して焼入れし、340HB以上の硬さを有する耐摩耗厚鋼板とする、耐摩耗厚鋼板の製造方法が提案されている。
また、特許文献3には、C:0.07〜0.17%を含み、Si、Mn、V、B、Alを適正量に調整し、あるいはさらにCu、Ni、Cr、Moのうちの1種以上を含有する鋼に、熱間圧延後直ちに焼入れ、あるいは一旦空冷した後に、再加熱して焼入れし、表面硬さを321HB以上で、曲げ加工性に優れた鋼板とする耐摩耗鋼板の製造方法が提案されている。
特許文献1〜3に記載された技術は、合金元素を多量に添加して、固溶硬化、変態硬化、析出硬化等を活用して、高硬度化することで、耐摩耗特性を向上させている。しかし、合金元素を多量に添加して、固溶硬化、変態硬化、析出硬化等を活用して、高硬度化した場合には、結果的に溶接性、加工性が低下し、さらに高合金化により製造コストが高騰するという問題がある。
また、使用条件によっては、表面近傍のみを高硬度化して、耐摩耗性を向上させるだけでも良い場合がある。このような場合には、Cr、Mo等の合金元素を多量に添加する必要はなく、焼入れ処理等の熱処理を施して、鋼材表面近傍のみを焼入れ組織とすることが考えられる。しかし、焼入れ組織の高硬度化のためには、一般に、鋼材の固溶C量を増加させる必要があるが、固溶C量の増加は、溶接性の低下、曲げ加工性の低下などを招くという問題がある。特に曲げ加工性に関しては、固溶C量の増加により曲げ加工時の変形抵抗が増大し、曲げ加工ができないなどの問題も生じてくる。
このため、過度に高硬度化を図ることなく、耐摩耗性を向上させることができる耐摩耗鋼板が要望されていた。
このような要望に対し、例えば、特許文献4には、C:0.10〜0.45%を含み、Si、Mn、P、S、Nを適正量に調整し、さらにTi:0.10〜1.0%を含有し、0.5μm以上の大きさのTiC析出物あるいはTiCとTiN、TiSとの複合析出物を400個/mm以上を含み、Ti*が0.05%以上0.4%未満とする表面性状に優れた耐摩耗鋼が提案されている。特許文献4に記載された技術によれば、凝固時に粗大なTiCを主体とする析出物を生成させ、過度に高硬度化させることなく安価に耐摩耗性を向上させることができるとしている。
特開昭62−142726号公報 特開昭63−169359号公報 特開平1−142023号公報 特許第3089882号公報
しかしながら、特許文献4に記載された技術では、焼入れ処理を実施し、組織をマルテンサイト組織としている。マルテンサイト組織は、延性に乏しいため、組織をマルテンサイト組織とした鋼板は、曲げ加工が容易であるとは云い難く、特許文献4に記載された技術で製造された鋼板は、曲げ加工性に問題を残していた。
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであって、耐摩耗性を向上させ、かつ、曲げ加工性を飛躍的に向上させることが可能な、曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼板を提供することを目的とする。
発明者らは、上記した目的を達成するために、耐摩耗性と曲げ加工性に影響する各種要因について、鋭意研究を重ねた。その結果、VとCを含有する成分系で、固溶C量を0.03質量%以下とすることにより、基地相(マトリクス)が軟質なフェライト相となり、かつ、マトリクス中に硬質な第二相(硬質相:VC)が分散した組織となり、過度に高硬度化させることなく、耐摩耗性が顕著に向上することを見出した。また、このような組成、組織とすることにより、耐摩耗性の向上とともに、塑性変形能が顕著に向上し、曲げ加工性が飛躍的に向上することを見出した。
発明者らが行った実験結果の一例を、V−C系でVとC量をそれぞれ変化させたときの、固溶C量と硬さ(ブリネル硬さHB)との関係、固溶C量と耐摩耗比との関係で、図1、図2にそれぞれ示す。
固溶C量を0.03質量%以下とすることにより、硬さはHB300以下程度であるが、耐摩耗比が6以上となり、耐摩耗性が顕著に向上することがわかる。なお、耐摩耗比は、ASTM G 65に準拠したラバーホイール摩耗試験における、軟鋼(SS400)の摩耗量と各鋼板の摩耗量との比を表す。耐摩耗比が大きいほど、摩耗特性に優れていることを示す。
また、V−C系でVとC量をそれぞれ変化させたときの、限界曲げ半径と硬さの関係を、図3に示す。なお、限界曲げ半径は、JIS Z 2248の規定に準拠して曲げ試験を実施し、割れが発生しない最小の曲げ半径をいうものとする。図3では、縦軸の限界曲げ半径は、板厚に対する比で表示した。図3から、基地相をフェライト相を主体とする組織とし、硬さが300HB以下と低下することにより、限界曲げ半径が小さくなり、曲げ加工性が顕著に向上することがわかる。基地相をマルテンサイト相とすると、限界曲げ半径は大きく、曲げ加工性の顕著な向上は見られない。
本発明は、このような知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.05〜0.30%、V:0.1〜1.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、固溶C量が0.03%以下である組成を有することを特徴とする曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼板。
(2)(1)において、フェライト相を基地相とし、該基地相中に硬質相が分散した組織を有することを特徴とする耐摩耗鋼板。
(3)(2)において、前記硬質相の分散密度が、400個/mm以上であることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005%以上0.10%未満、Ti:0.005%以上0.10%未満のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cu:0.1〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.1〜2.0%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(7)(1)ないし(6)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.1〜1.0%を含有する組成とすることを特徴とする耐摩耗鋼板。
(8)(1)ないし(7)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成であることを特徴とする耐摩耗鋼板。
本発明によれば、過度の高硬度化を伴うことなく、耐摩耗性と曲げ加工性とが飛躍的に向上した耐摩耗鋼板を、安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、特に、土砂との接触による摩耗に対する耐摩耗性が飛躍的に向上するという効果もある。
まず、本発明の鋼板の組成を規定した理由について説明する。なお、以下の%表示は、いずれも質量%で表す。
C:0.05〜0.30%
Cは、硬質な第二相(以下、硬質相ともいう)としての炭化物を形成し、耐摩耗性を向上させるために、有効な元素であり、このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.30%を超える含有は、硬質相としての炭化物が粗大になり、曲げ加工時に炭化物を起点として割れが発生する。このため、Cは0.05〜0.30%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.05〜0.20%である。
固溶C量:0.03%以下
固溶C量は、本発明では0.03%以下に規定する。これにより、硬さが低下し、基地相(マトリクス)が軟質のフェライト主体の組織となり、さらに基地相中に硬質な第二相(硬質相:V炭化物)が多量分散した組織となる。これにより、図1、図2に示すように、硬さは低下するが、耐摩耗性が飛躍的に向上する。これは、硬質な第二相を分散させることによる耐摩耗性向上効果と、基地相(マトリクス)を軟質なフェライトにすることによる塑性変形能向上による耐摩耗性向上効果とが、相乗した結果であると考えられる。なお、固溶C量は、鋼板から採取した試験片について、電解抽出法により炭化物を抽出して炭化物となっているC量を測定し、total C量から炭化物となっているC量を差し引き、算出するものとする。
V:0.1〜1.0%
Vは、Cとともに本発明における重要な元素であり、耐摩耗性向上に寄与する硬質な第二相(V炭化物)を形成する必須の元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、硬質な第二相(V炭化物)が粗大化し、曲げ加工時に粗大な第二相を起点として割れが発生する。このため、Vは0.1〜1.0%の範囲に規定した。なお、好ましくは、0.1〜0.5%である。
上記した成分が基本成分であるが、本発明では、必要に応じて、選択元素を含有することができる。選択元素としては、Nb:0.005%以上0.10%未満、Ti:0.005%以上0.10%未満のうちから選ばれた1種または2種、および/または、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cu:0.1〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ni:0.1〜2.0%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種、および/または、Cr:0.1〜1.0%、および/または、Al:0.1%以下、を含有することができる。
Nb:0.005%以上0.10%未満、Ti:0.005%以上0.10%未満のうちから選ばれた1種または2種
Nb、Tiはいずれも、Nと結合してNを固定することにより、Vの窒化物(VN)の析出を抑制する作用を有する。VNの析出を抑制することにより、耐摩耗性改善に有効なVCを有効に析出させることが可能となる。このような効果を得るためには、Nb、Ti はそれぞれ0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.10%以上の含有は、Nb、Tiの炭化物や炭窒化物が析出し易くなり、VCの析出量を減少させる。このため、Nb、Tiは0.005〜0.10%未満の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.005〜0.05%である。
Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cu:0.1〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上
Mo、W、Si、Mn、Cuはいずれも、鋼の高硬度化に寄与する元素であり、必要に応じて選択含有できる。
Moは、固溶強化を介して高硬度化に寄与する有効な元素であり、このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、含有する場合には、Moは0.05〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.5%である。
Wは、固溶強化を介して高硬度化に寄与する有効な元素であり、このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、含有する場合には、Wは0.05〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.5%である。
Siは、脱酸元素として有効な元素であり、このような効果を得るためには0.05%以上の含有を必要とする。また、Siは、固溶強化を介して高硬度化に寄与する有効な元素であるが、1.0%を超える含有は、延性、靭性を低下させ、さらに介在物量を増加させる等の問題を生じる。このため、Siは0.05〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.40%である。また、不可避的不純物である場合には、Siは、0.05%未満である。
Mnは、固溶強化を介して高硬度化に寄与する有効な元素であり、このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Mnは0.1〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜1.60%である。また、不可避的不純物である場合には、Mnは、0.1%未満である。
Cuは、時効析出効果を介して高硬度化に寄与する有効な元素であり、このような効果を得るためには0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、Cuは0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.5%である。
Ni:0.1〜2.0%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種
Ni、Bはいずれも、靭性向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Niは、靭性を向上させる元素であり、このような効果は0.1%以上の含有で顕著となる。一方、2.0%を超える含有は、材料コストを著しく上昇させる。このため、Niは0.1〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜1.0%である。
Bは、粒界に偏析し、粒界を強化することにより、靭性向上に有効に寄与する元素であり、このような効果を得るためには、0.0003%以上の含有を必要とする。一方、0.0030%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Bは、0.0003〜0.0030%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0003〜0.0015%である。
Cr:0.1〜1.0%
Crは、フェライトに固溶し、フェライトを軟化させる作用を有し、塑性変形能を向上させ、耐摩耗性をさらに向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とするが、1.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Crは0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.40%である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nと結合して結晶粒微細化に寄与する元素であり、必要に応じ含有できる。このような効果は、0.0020%以上の含有で認められるが、0.1%を超える多量の含有は、鋼の清浄度を低下させる。このため、Alは0.1%以下に限定することが好ましい。とくに含有しない場合は、Alは不可避的不純物として、0.0020%未満が許容できる。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、P:0.040%以下、S:0.040%以下、N:0.040%以下が許容できる。Pは、多量に含有すると靭性低下を招くため、0.040%以下とすることが望ましい。また、Sは、鋼中においてMnSを形成し、破壊発生の起点として作用し、靭性の低下を招くため、0.040%以下とすることが望ましい。
本発明の耐摩耗鋼板は、上記した組成を有し、フェライト相を基地相(マトリクス)とし、マトリクス中に硬質相(硬質な第二相)が分散した組織を有し、好ましくはブリネル硬度で350HB以下の表面硬さを有する。硬質相としては、VCなどのV系炭化物とすることが好ましい。TiやNbなどを選択添加した場合には、(VTi)Cや(NbV)C、(NbTiV)Cなどの形態となる場合もあるが、同様の摩耗特性改善効果を有する。
なお、硬質相の大きさは、特に限定されないが、耐摩耗性の観点からは、0.5μm以上50μm以下とすることが好ましい。また、硬質相の分散密度は、耐摩耗性の観点から、400個/mm以上とすることが好ましい。
つぎに、本発明の耐摩耗鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明の耐摩耗鋼板は、上記した組成の溶鋼を、公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊-分塊圧延法により、所望寸法のスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、硬質相を所望の大きさおよび個数に調整するためには、例えば、連続鋳造法を用いた場合、厚み200〜400mmの鋳片の1500〜1200℃の温度域における冷却速度0.2〜10℃/sの範囲となるように冷却を調整することが好ましい。なお、造塊法を用いる場合にも、インゴットの大きさおよび冷却条件を、硬質相を所望の大きさおよび個数になるように、調整する必要があることはいうまでもない。
ついで、鋼素材を、冷却することなく直ちに、または冷却し、950〜1250℃に再加熱したのち、熱間圧延し、所望板厚(肉厚)の鋼板とする。なお、熱間圧延の条件は、所望の寸法形状の鋼板とすることができればよく、とくに限定されない。熱間圧延後、鋼板は室温付近まで空冷される。冷却後、さらに母材の靭性など、耐摩耗性や曲げ加工性以外の性能を改善するために、再加熱焼入れ処理、あるいはさらに焼戻処理を施しても、本発明の効果を損なうことはない。また、熱間圧延後直ちに焼入れする直接焼入れ処理、あるいはさらに焼戻処理を施しても良い。
表1に示す組成の溶鋼を、真空溶解炉で溶製し、小型鋼塊(50kg)(鋼素材)とした。これら鋼素材を、1050〜1250℃に加熱したのち、熱間圧延を施して板厚20mmの鋼板とし、空冷した。なお、一部の鋼板には、熱間圧延終了後直ちに水冷する直接焼入れ処理(DQ)、直接焼入れ処理後焼戻する直接焼入れ−焼戻処理(DQT)、熱間圧延後空冷した後900℃に再加熱し焼入れする再加熱焼入れ処理(RQ)、再加熱焼入れ処理後更に焼戻する、再加熱焼入れ−焼戻処理(RQT)、あるいは900℃に再加熱し空冷する焼準処理(Nor)を施した。なお、固溶C量は、得られた鋼板から試験片を採取し、電解抽出法により炭化物を抽出し炭化物となっているC量を測定し、total C量から炭化物となっているC量を差し引き、求めた。
得られた鋼板について、組織観察、表面硬さ測定、曲げ試験、摩耗試験を実施した。試験方法は次の通りとした。
(1)組織観察
得られた鋼板から組織観察用試験片を採取し、研磨し、ナイタール腐食して、表層下1mmの位置について、光学顕微鏡(倍率:400〜1000倍)または走査型電子顕微鏡(倍率:400〜3000倍)を用いて、組織の種類および硬質相の大きさ、個数を測定した。なお、硬質相の大きさは、各硬質相の面積を測定し、同面積から円相当直径を算出し、得られた円相当直径を算術平均し、得られた平均値をその鋼板における硬質相の大きさ(平均粒径)とした。
(2)表面硬さ測定
得られた鋼板について、JIS Z 2243の規定に準拠して、ブリネル硬さ試験(試験力:29.42kN)を用いて、鋼板表面の硬さHB10/3000を測定した。なお、測定位置は、ランダムに選んだ5点とし、5点の平均値を求め、その鋼板の表面硬さとした。
(3)曲げ試験
得られた鋼板から試験片を採取し、JIS Z 2248の規定に準拠して曲げ試験を実施した。なお、曲げ半径は2.0tおよび1.0tの2水準とした。試験終了後、試験片表面を目視で観察し、割れ発生のない場合を○、割れが発生した場合を×として曲げ加工性を評価した。
(4)摩耗試験
得られた鋼板から試験片(大きさ:t×20×75mm)を採取し、ASTM G 65の規定に準拠して、ラバーホイール摩耗試験を実施した。なお、試験には、摩耗砂を使用し、試験後、試験片の摩耗量を測定した。耐摩耗性は、軟鋼(SS400)板の摩耗量を基準(1.0)として、耐摩耗比=(軟鋼板の摩耗量)/(各鋼板の摩耗量)、で評価した。耐摩耗比が大きいほど、耐摩耗性に優れていることを意味する。ここでは、耐摩耗比が5.0以上を耐摩耗性に優れているとしている。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2007277590
Figure 2007277590
Figure 2007277590
Figure 2007277590
本発明例はいずれも、耐摩耗比が非常に高く耐摩耗性が非常に優れ、かつ曲げ加工性に優れた鋼板となっている。一方、本発明範囲を外れる比較例は、耐摩耗比が低く耐摩耗性が低下しているか、あるいは、曲げ加工時に割れが発生し曲げ加工性が低下しているか、あるいは耐摩耗性および曲げ加工性のいずれも低下している。
固溶C量と硬さの関係を示すグラフである。 固溶C量と耐摩耗比との関係を示すグラフである。 限界曲げ半径と硬さとの関係におよぼす基地相組織の影響を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.30%、V:0.1〜1.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、固溶C量が0.03%以下である組成を有することを特徴とする曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼板。
  2. フェライト相を基地相とし、該基地相中に硬質相が分散した組織を有することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗鋼板。
  3. 前記硬質相の分散密度が、400個/mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の耐摩耗鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.005%以上0.10%未満、Ti:0.005%以上0.10%未満のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Cu:0.1〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
  6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.1〜2.0%、B:0.0003〜0.0030%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.1〜1.0%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
  8. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の耐摩耗鋼板。
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CN102071378A (zh) * 2011-01-14 2011-05-25 南京信息工程大学 一种耐磨钢材料及制备方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102071378A (zh) * 2011-01-14 2011-05-25 南京信息工程大学 一种耐磨钢材料及制备方法

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