JP2007276330A - インクジェットヘッド - Google Patents

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誠至 清水
Toshio Ogawa
寿男 小川
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浩光 水谷
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Abstract

【課題】フレキシブルフラットケーブルとアクチュエータとの電気的接合のはがれを防止し、且つ部材に生じたバリによるフレキシブルフラットケーブルの損傷を、製造コストを抑えながら防止する。
【解決手段】フレキシブルフラットケーブル12は、アクチュエータ11の複数の電極43に重なって電気的に接合される平坦部12aと、平坦部12aの一端を基端として引き出される可撓部12bとを有し、可撓部12bでは、引き出し方向Bに直交する方向の幅寸法が平坦部12aよりも細幅になるように両側縁を除去した除去部70が形成されており、平坦部12aのほぼ全面を覆うように固着された剛性板13には、可撓部12bの細幅部71とほぼ対応する幅の切欠部13aと、その両端にて除去部70に向かって突出する2つの突出部13bが設けられている。
【選択図】図4

Description

本発明は、キャビティ部内のインクをアクチュエータによって選択的に吐出するインクジェットヘッドに関するものである。
従来からインクジェットヘッドとしては、前面に複数のノズルが配置されて内部にインク流路を有するキャビティユニット(請求項のキャビティ部に相当)と、このキャビティユニット内のインクに選択的に吐出圧力を与える圧電アクチュエータとを有し、この圧電アクチュエータに駆動信号を出力するフレキシブルフラットケーブルが接合された構造が知られている。
例えば、本出願人は、特許文献1等で、キャビティユニットと圧電アクチュエータとフレキシブルフラットケーブルとからなり、薄い扁平形状にインクジェットヘッドを形成し、前記キャビティユニットの背面に、アクチュエータを囲むように枠状の補強フレームを固着し、全体の剛性を高めてからインクジェットヘッドをヘッドホルダに取り付ける構造を開示している。
一方、フレキシブルフラットケーブルは可撓性を有する樹脂フィルムを基材とする帯状の部材であるが、その一端は前記補強フレームの内周の内側においてアクチュエータの背面に電気的に接合されて固定され、他端は外方に引き出されている。従って、補強フレームを前記インクジェットヘッドに固定するときには、フレキシブルフラットケーブルの他端側がアクチュエータの背面から離れる方向に持ち上げられ、補強フレームの上面側を通るように引き出される。また、インクジェットヘッドをヘッドヘッドホルダに固定するときには、特許文献1の図11に記載されているように、フレキシブルフラットケーブルは、ヘッドホルダ側へ立ち上がるように引き出され、ヘッドホルダの底板に穿設されたスリット孔に挿通される。
特開2005−246779号公報(図7及び図11)
前述したように、補強フレームをインクジェットヘッドに固定するときや、インクジェットヘッドをヘッドホルダに固定するときに、フレキシブルフラットケーブルの他端側は持ち上げられ、あるいはその他の製造工程においてインクジェットヘッドを搬送する際にフレキシブルフラットケーブルが揺り動かされるため、フレキシブルフラットケーブルの一端側には、フレキシブルフラットケーブルと圧電アクチュエータとの電気的接合を剥離する方向に力が作用する。
従って、フレキシブルフラットケーブルと圧電アクチュエータとを電気的に接合した後に、可撓部12bを取り扱うと接合はがれによる不良が発生し易くなり、製造工程における歩留まりが悪化するという問題があった。
また、インクジェットヘッドに取り付けられる板状の部材は、プレス加工で製造されることが多いため、プレス加工によるバリがフレキシブルフラットケーブルと接触する位置にあると、フレキシブルフラットケーブルを傷つけ断線を引き起こす虞がある。しかしながら、バリ除去加工を全てのバリに対して施すと製造コストを押し上げるという問題もある。
本発明は、上記問題を解消するためのものであり、フレキシブルフラットケーブルとアクチュエータとの電気的接合のはがれを防止し、且つ部材に生じたバリによるフレキシブルフラットケーブルの損傷を、製造コストを抑えながら防止することのできるインクジェットヘッドの実現を目的とするものである。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明におけるインクジェットヘッドは、複数のノズルを外部に開口させ内部にインク流路を有するキャビティ部と、このキャビティ部内のインクに選択的に吐出圧力を与えるアクチュエータとを備え、このアクチュエータに駆動信号を出力するフレキシブルフラットケーブルが接合されたインクジェットへッドにおいて、前記アクチュエータは、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の電極を平面状に備え、前記フレキシブルフラットケーブルは、前記アクチュエータの複数の電極に重なって電気的に接合される平坦部と、前記平坦部の一端を基端として引き出される可撓部とを有し、前記可撓部では、前記引き出し方向に直交する方向の幅寸法が前記平坦部よりも細幅になるように前記引出し方向に平行な両側縁を除去した除去部が形成されており、前記フレキシブルフラットケーブルの前記複数の電極と接合される側とは反対側の背面には、前記フレキシブルフラットケーブルよりも剛性が高く且つ少なくとも前記平坦部のほぼ全面を覆う大きさの剛性板が固着され、前記剛性板の前記可撓部の引き出し側の端縁には、前記可撓部の細幅部分とほぼ対応する幅で、前記引き出し方向と反対側へ入り込んで切り欠いた切欠部が設けられ、その切欠部の前記引き出し方向に直交する方向の両端に、前記可撓部の除去部に向かって突出する2つの突出部が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記剛性板は、前記アクチュエータよりも熱伝導性に優れ、前記フレキシブルフラットケーブルを介して前記アクチュエータと熱伝導可能に接していることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記キャビティ部の一つの面に前記アクチュエータが積層され、その面に、前記キャビティ部を補強する枠状の補強フレームが、その枠部の内側面と前記アクチュエータの外側面との間に隙間を有して当該アクチュエータを囲むように固定され、前記補強フレームは、前記アクチュエータよりも前記キャビティ部の一つの面から高く突出し、前記フレキシブルフラットケーブルの可撓部は、前記補強フレームの枠部の内周よりも内側に位置する平坦部から前記補強フレームの背面側に立ち上がるように引き出されていることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットヘッドにおいて、前記剛性板は、金属製の板材をプレス加工して形成したものであって、その表裏面のうちプレス加工によってバリが生じたバリ面を、前記フレキシブルフラットケーブルと当接する側とは反対側に配置することを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記剛性板のバリ面には、当該バリ面とその反対側の面とを判別するために、表面加工または印字が施されていることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の発明は、請求項3から5のいずれかに記載のインクジェットヘッドにおいて、前記キャビティ部は、前記補強フレームが固定される面に、インク取入口を有し、前記補強フレームは、そのインク取入口に重なり、インク供給源からのインクを前記インク取入口へ導く接続穴を有しており、前記補強フレームは、金属製の板材をプレス加工して枠状に形成したものであって、前記補強フレームの表裏面のうちプレス加工によりバリが生じたバリ面を、前記キャビティ部と当接する側とは反対側に配置し、前記補強フレームにおける前記キャビティ部と反対側の背面では、その枠部の内側縁のうち、少なくとも、前記フレキシブルフラットケーブルの可撓部が引き出される側に位置する内側縁に、バリの除去加工が施されていることを特徴とするものである。
請求項1に記載の発明によれば、フレキシブルフラットケーブルの可撓部の引き出し方向に平行な両側縁に除去部を設け、剛性板に設けた切欠部に可撓部の細幅部分を位置させ、且つ、剛性板に設けた突出部で可撓部の細幅部分の幅方向における外側を覆うように構成しているから、フレキシブルフラットケーブルの可撓部が持ち上げられると、剛性板の切欠部に対応する可撓部の細幅部分が基端となって、フレキシブルフラットケーブルは上方に屈曲し、平坦部における幅方向の両端は剛性板の突出部で押えられたままとなる。
すなわち、可撓部の持ち上げにより、フレキシブルフラットケーブルの平坦部とアクチュエータとの接合を可撓部の引き出し側から剥離するように力が働いても、フレキシブルフラットケーブルの平坦部では、可撓部の細幅部分に連続する部分のみが前記剥離する力を受け、平坦部における幅方向の両端には、前記剥離する力が直接作用しないようにしている。従って、フレキシブルフラットケーブルとアクチュエータとの電気的接合を剥がれ難くすることができる。
請求項2に記載の発明によれば、剛性板は、アクチュエータよりも熱伝導性に優れ、フレキシブルフラットケーブルを介してアクチュエータと熱伝導可能に接しているから、剛性板は、アクチュエータに局所的に発生した熱を、アクチュエータ全体に分散させて放熱することができるので、局所的な発熱によるアクチュエータの動作不良やインクの吐出特性が局所的に変わるのを防止することができる。
請求項3に記載の発明によれば、補強フレームは、その枠部の内側面とアクチュエータの外側面との間に隙間を有してアクチュエータを囲み、且つアクチュエータよりもキャビティ部の一つの面から高く突出してキャビティ部に積層されているから、フレキシブルフラットケーブルの可撓部は、補強フレームとアクチュエータとの間の隙間にて屈曲して、補強フレームの背面側に立ち上がるように引き出される。このとき、請求項1に記載の発明のように、可撓部は、剛性板の切欠部に位置する細幅部分を基端として屈曲するから、切欠部を有しない剛性板を用いた場合に比べて、可撓部は切欠部の奥行き寸法分だけ広くなった隙間にて緩やかに立ち上がることができ、フレキシブルフラットケーブルとアクチュエータとを剥離させるように働く力を弱めることができる。
請求項4に記載の発明によれば、剛性板のバリ面を、フレキシブルフラットケーブルと当接する側とは反対側に配置しているから、バリ面を除去するための加工を付加して製造コストを高めなくても、バリがフレキシブルフラットケーブルを傷つけて断線等の不良を発生させることを防止できる。
請求項5に記載の発明によれば、バリ面とその反対側の面との判別を、剛性板のバリ面に対する表面加工または印字により行っているから、剛性板の形状寸法の仕上がり精度に影響を与えずに、判別のための情報を付加することができる。例えば、バリ面とその反対側の面とを判別するために、剛性板に切欠部や貫通部等を追加工する場合には、追加工による剛性板のうねりや平面度の低下等を発生させるという問題があったが、この請求項5に記載の発明では、この問題を解決できる。
また、前記印字する内容に、剛性板の製造のロット情報を用いれば、剛性板の表裏面の判別ができるとともに、剛性板に起因する不良等が発生したときに、製造工程を遡って原因を調査することも可能となる。
請求項6に記載の発明によれば、補強フレームのバリ面を、キャビティ部と当接する側と反対側に配置しているから、補強フレームとキャビティ部との間でバリによる接着不良等が発生することを防止できる。
また、補強フレームにおけるキャビティ部と反対側の背面では、その枠部の内側縁のうち、少なくとも、フレキシブルフラットケーブルの可撓部が引き出される側に位置する内側縁に、バリの除去加工を施しているから、バリがフレキシブルフラットケーブルを傷つけて断線等を引き起こす不良の発生を、最小限のバリ除去加工で防止することができる。
以下に本発明の基本的な実施形態について説明する。図1は、本発明のインクジェットヘッド1を適用したインクジェットプリンタ100を示している。実施形態のインクジェットプリンタ100は、例えば、単独のプリンタ装置としてだけでなく、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能等を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )のプリンタ機能としても適用することができるものである。インクジェット記録装置100は、本体フレーム2の内部に備えられ、被記録媒体である用紙PAにインクを吐出させて記録するインクジェットヘッド1がキャリッジ3に搭載されて、主走査方向(Y方向)に沿って走行するように構成されている。
キャリッジ3は、本体フレーム2内に主走査方向(Y方向)に沿って平行状に設けられた後ガイド軸6と前ガイド軸7とに摺動自在に載置されており、本体フレーム2の右後側に配置されたキャリッジ駆動モータ17と、無端帯であるタイミングベルト18とにより、主走査方向(Y方向)へ往復移動するように構成されている。用紙PAは、図示しない公知の用紙搬送機構により、主走査方向(Y方向)と直交する副走査方向(X方向)に沿って、インクジェットヘッド1の下面側を水平状に搬送される(図1の矢印A方向)。この用紙PAに対して、主走査方向(Y方向)に移動するインクジェットヘッド1のノズル4(図5参照)から下向きにインクが吐出されて記録が行われる。
キャリッジ3には、図2に示すように、略箱状のヘッドホルダ8が備えられ、その底板8aの上面側に、本体フレーム2内に静置されたインク供給源(インクタンク)5a〜5dからインク供給管14(14a〜14d)を介してキャリッジ側に供給されたインクを貯留するダンパー装置9が取り付けられる。この実施形態では4色のインク(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のインクが備えられている。ダンパー装置9の内部は、複数のインク室に区画され、インク室に色毎にインクが貯留される。ダンパー装置9には、インク室中のインクに滞留する気泡を除去するための排気弁手段9bも備えられている。
ヘッドホルダ8の底板8aには開口部(図示せず)が貫通形成されており、この開口部の内側では、ダンパー装置9のインク流出口9aと、インクジェットヘッド1のインク取入口37とが、後述する補強フレーム15の接続穴15bと弾性シール部材9cとを介して接続され、ダンパー装置9からインクジェットヘッド1にインクが色毎に独立して供給される。なお、説明では、インクジェットヘッド1のノズルの開口面側を前面もしくは下面、その反対側を背面もしくは上面として記載する。
図3に示すように、ヘッドホルダ8の下面側に下向きに開口形成された凹部8bには、全体として略扁平形状を有するインクジェットヘッド1が、ノズル4が開口する面を下向きに露出させて収容され、且つ凹部8bの天井面となる前記底板8aとほぼ平行になるように所定の間隔をおいて接着剤19で固着される。
ヘッドホルダ8の底板8aには、図2及び図3に示すように、後述するフレキシブルフラットケーブル12の可撓部12bを挿通させるスリット孔55と、底板8aの下面側にインクジェットヘッド1を固着させるための接着剤19を流し込むための貫通孔56も穿設されている。
インクジェットヘッド1は、複数のノズル4を外部に開口させ内部にインク流路を有するキャビティユニット(請求項のキャビティ部に相当)10と、このキャビティユニット10内のインクに複数のノズル4から選択的に吐出する圧力を与える圧電アクチュエータ11と、この圧電アクチュエータ11に駆動信号を出力するフレキシブルフラットケーブル12とが積層配置される構造のヘッドユニット20を備え、ヘッドユニット20の背面側に剛性板13と補強フレーム15とを備え、前面側にフロントフレーム16を備えている。
キャビティユニット10と圧電アクチュエータ11とは、いずれもX方向に長い平面視略長方形の扁平形状を有しているが、キャビティユニット10の平面視の外形状は、圧電アクチュエータ11の外形状よりもひと回り大きく形成されており、キャビティユニット10の背面の略中央に、圧電アクチュエータ11が積層されて、複数のノズル4へインクを供給するインク取入口37がキャビティユニット10の背面側に開口して形成されている。
フレキシブルフラットケーブル12は、扁平形状の絶縁材料製(ポリイミド等)のベースフィルムとカバーフィルムとに複数の導線50が挟まれた構造で、全体として帯状を呈し、その長手方向の一部におけるベースフィルムの表面から、導線50の端部を露出させることで複数の端子電極51が設けられている(図7参照)。図7では、導線50の一部のみを図示している。端子電極51は、圧電アクチュエータ11の背面(キャビティユニット10と反対側の面)に形成されている外部電極43(図4及び図5参照)に応じたパターンで形成されている。
フレキシブルフラットケーブル12の長手方向の一端部は、圧電アクチュエータ11の背面に重なり、フレキシブルフラットケーブル12の端子電極51と圧電アクチュエータ11の外部電極43とがバンプを介して溶着されて、フレキシブルフラットケーブル12の平坦部12aを構成している。平坦部12aのY方向側の一端に連続するフレキシブルフラットケーブル12の部位は、自由に屈曲することができる可撓部12bを構成しており、可撓部12bはヘッドホルダ8の背面側に湾曲しながら立ち上がって引き出される(図3参照)。
フレキシブルフラットケーブル12には、可撓部12bの長手方向の中途に駆動回路12cとしてチップ状のICが搭載されたCOF(チップ・オン・フレキシブルフラットケーブル)を適用しており、図3に示すように、可撓部12bが、前記ヘッドホルダ8のスリット孔55に挿通されてヘッドホルダ8の内側(底板8aの上面側)に引き出された状態で、駆動回路12cは、ヘッドホルダ8の一方の側板寄りの部分にて、ヒートシンク60と弾性部材61とに挟持されるように構成されている。これにより、駆動回路12cの発熱をヒートシンク60によって放熱するようにしている。
フレキシブルフラットケーブル12の可撓部12bには、図4及び図7に示すように、その引出し方向Bに直交する方向の幅寸法が平坦部12aよりも細幅になるように、引き出し方向Bに平行な両側縁を除去した除去部70が形成されている。除去部70は、可撓部12bの側縁を外方に向かって開口するように切り欠いて形成され、この除去部70によって、可撓部12aの基端側にはくびれが形成されており、このくびれを細幅部71とする。除去部70を構成する2つの側辺と底辺のうち、少なくとも平坦部12aに近い側の側辺70a(図7参照)は、外方に向かって除去部70の開口を広げるように傾斜することが望ましく、これにより、細幅部71を、平坦部12aから緩やかにくびれ(細幅に)させることができる。
なお、この実施形態では、除去部70を切欠状に形成しているが、可撓部12bの両側縁全てに除去部を設け、可撓部12bを全て細幅に形成してもよい。
剛性板13は、フレキシブルフラットケーブル12の背面における圧電アクチュエータ11と対応する位置に積層され、圧電アクチュエータ11及びフレキシブルフラットケーブル12の平坦部12aのほぼ全面を覆う大きさを有する平面視長方形状の扁平な板材である、剛性板13は、フレキシブルフラットケーブル12よりも剛性が高く、且つ、圧電アクチュエータ11及びフレキシブルフラットケーブル12よりも熱伝導性に優れた素材からなっており、例えば、アルミニウム、銅、SUSなどの金属板が適用されている。この剛性板13は、ヘッドユニット20全体の剛性を高める効果だけでなく、フレキシブルフラットケーブル12を介して圧電アクチュエータ11に密着することで、圧電アクチュエータ11に局所的な発熱があっても圧電アクチュエータ11全体の温度分布を均一化し、且つ放熱する効果も奏するものである。
この剛性板13の端縁のうち、フレキシブルフラットケーブル12の可撓部12bの引き出し側に位置する端縁には、図4及び図7に示すように、可撓部12bの細幅部71にほぼ対応する幅で、引き出し方向Bと反対側へ入り込んで切り欠いた切欠部13aが設けられ、切欠部13aの引き出し方向Bに直交する方向の両端(切欠部13aを挟む両端)に、可撓部12bの除去部70に向かって突出する2つの突出部13bが設けられている。この突出部13bは、少なくともその先端が前記除去部70と積層方向の上下位置で重なるように形成されている。詳細には、除去部70の前記側辺70aと突出部13bとが平面視で交差している。また、図7に示す、切欠部13aの奥行き寸法(切り込み量)Lは、切欠部13aを除く剛性板13の部分で、圧電アクチュエータ11の外部電極43とフレキシブルフラットケーブル12の端子電極51との接合箇所のすべてを必ず覆うように、比較的浅く設定されている。
剛性板13は、金属製の板材をプレス加工することで形成され、その表裏面の一方には、表裏面を判別するための判別情報65として、表面加工または印字が施されている。表面加工としては、メッキ、塗装、光沢仕上げ等が適用でき、印字としては、スタンプ、ペンによるマーク、刻印が適用できる。ここでは、剛性板13のバリ面側となる表面、すなわち、フレキシブルフラットケーブル12と当接する面と反対側の面に、判別情報65として製造ロットの情報をスタンプで印刷している。これにより、表裏面の判別と、製造ロット情報の把握との両方を、判別情報65を確認することで行えるようにしている。
補強フレーム15は、キャビティユニット10を補強するための部材であり、キャビティユニット10よりも剛性に優れた素材(例えば、SUSなどの金属板)からなり、その外周が矩形で、平面視においてキャビティユニット10よりもひと回り大きく形成された扁平な板材であり、圧電アクチュエータ11の平面形状よりもひと回り大きい貫通口部を有する枠形状に形成されている。この補強フレーム15を、キャビティユニット10の背面に沿って圧電アクチュエータ11を囲むように積層することで、薄い扁平形状のキャビティユニット10の変形や歪みを防止しており、補強フレーム15の枠部の内側面(内周面)と圧電アクチュエータ11の外側面(外周面)との間には隙間が形成されている。この補強フレーム15も金属製の板材をプレス加工することで形成している。
補強フレーム15の厚み寸法は、キャビティユニット10の背面に補強フレーム15を積層したときに、同じキャビティユニット10の背面に積層された圧電アクチュエータ11よりも、補強フレーム15が高く突出するように設定されている。
補強フレーム15の枠部15aは、平面視でX方向に細長いロの字形状を呈し、Y方向に平行な一方の短辺寄りの部位にその表裏面を貫通して、前述した接続穴15bが4つ並設されている。また、補強フレーム15の枠部15aのうち、X方向に平行な一方の長辺の上方を、フレキシブルフラットケーブル12の可撓部12bが引き出される。この長辺を第1辺部15cとする。
フロントフレーム16は、平面視コの字状の扁平な板材で、ヘッドユニット20の前面側にてキャビティユニット10を囲むように配置され、補強フレーム15の前面に固着されるものである(図2及び図3参照)。フロントフレーム16によって、キャビティユニット10のノズル面とヘッドホルダ8の周囲との段差を解消し、払拭部材等でノズル面をクリーニングする際の引っ掛かりを防止している。
次に、この実施形態でのキャビティユニット10の構成について説明する。
キャビティユニット10は、図5及び図6に示すように、ノズルプレート21、スペーサプレート22、ダンパープレート23、2枚のマニホールドプレート24a、24b、サプライプレート25、ベースプレート26、及びキャビティプレート27の合計8枚の薄い平板を、その各平板面が対向するように接着剤を介して積層し接合した構造となっている。
実施形態では、各プレート21〜27は40〜150μm程度の厚さを有し、ノズルプレート21はポリイミド等の合成樹脂製で、その他のプレート22〜27は42%ニッケル合金鋼板製である。ノズルプレート21には、微小径(20μm程度)のインク吐出用のノズル4が微小間隔で多数個穿設されており、ノズル4は、X方向に沿って延びる列状に配置され、5列設けられている。
各ノズル4は、スペーサプレート22、ダンパープレート23、2枚のマニホールドプレート24a、24b、サプライプレート25、ベースプレート26に穿設されている貫通路35を介して、キャビティプレート27の圧力室31にそれぞれ接続されている(図6参照)。
キャビティプレート27には、複数の圧力室31がノズル4の配列に対応して5列に配列されている。各圧力室31は、図5に示すように、平面視細長形状でその長手方向がY方向に沿うようにしてキャビティプレート27の板厚を貫通して形成されている。各圧力室31の長手方向の一端は、ベースプレート26に穿設された連通孔32と、サプライプレート25に形成された接続流路33とを介して共通インク室34に連通している。各圧力室31の長手方向の他端には前記貫通路35が接続されている。
2枚のマニホールドプレート24a,24bには、X方向に沿って長い5つの(共通インク室34となるべき)溝が板厚を貫通して形成されており、2枚のマニホールドプレート24a、24bを積層し、かつその上面をサプライプレート25にて覆い、下面をダンパープレート23にて覆うことにより、合計5つの共通インク室(マニホールド室)34が形成される。
マニホールドプレート24aの下面に隣接するダンパープレート23の下面側には、各共通インク室34と位置および形状を一致させ且つ共通インク室34と隔絶されたダンパー室36が凹み形成されている。このダンパープレート23は、ダンパー室36上部の薄い板状の天井部が弾性変形により自由に振動することで、圧力室31から共通インク室34に伝播した圧力変動を吸収減衰させ、圧力変動が他の圧力室31へ伝播するクロストークを抑制する。
また、キャビティプレート27のY方向に平行な一方の辺寄りには、前述のインク取入口37が4つ穿設されており、各インク取入口37と上下位置を対応させて、ベースプレート26とサプライプレート25とにそれぞれ4つの接続口38が穿設されている。4つのインク取入口37には、インク中の異物を除去するためのフィルタ体39が接着剤等で一括して貼着されている。
この実施形態では、図5における左側の1つのインク取入口37から、同じく左側の2つの共通インク室34、34に、ブラックインクが分岐して流入するようにし、ブラックインクを吐出するノズル列を2列に設定している。これは、ブラックインクがその他のカラーインクに比べて使用頻度が高いことを考慮したものであり、他の3つのインク取入口37には、シアン、イエロー、マゼンタの各インクがそれぞれ単独に供給される。
このように、キャビティユニット10では、インクが、インク取入口37から接続口38を経て共通インク室34に流入し、接続流路33及び連通孔32を経由して圧力室31に至り、さらに貫通路35を経てノズル4に至るインク流路が形成されている。
圧電アクチュエータ11は、全ての圧力室31にわたる大きさを有する扁平形状で、特開2002−254634号公報等に開示された公知のものと同様に、扁平な方向と直交する方向に積層される複数のセラミックス層11aと、このセラミックス層11a間に挟まれた電極41,42とからなる。電極41,42のうち少なくとも一方の電極は、圧力室31ごとに対応して配置されており、電極間に電圧を選択的に印加することにより圧力室31と対応するセラミックス層の部分を変位させ、圧力室31内のインクに吐出圧力を加えることができる。最上層のセラミックス層の上面には、圧力室31に対応した電極と、セラミックス層を積層方向に貫通した電気的なスルーホールを介して接続した複数の外部電極43が平面状に配置されている。そして、各外部電極43は、フレキシブルフラットケーブル12に形成された端子電極51と個別に電気的に接続されている。
次に、上記構成のインクジェットヘッド1をヘッドホルダ8に組み付ける方法について説明する。
まず、キャビティユニット10と圧電アクチュエータ11と積層し、次いで、この圧電アクチュエータ11の外部電極43とフレキシブルフラットケーブル12の端子電極51とを電気的に接続する。この電気的な接続は、外部電極43と端子電極51のいずれか一方にあらかじめバンプを形成し、外部電極43と端子電極51とを対向させて、押圧、溶融して、接合が行われる。そして、この接合により、フレキシブルフラットケーブル12の一端が、圧電アクチュエータ11に重なる平坦部12aとなる。
次に、フレキシブルフラットケーブル12の平坦部12aの背面を覆うように、粘着テープ等の接着剤で剛性板13を貼着するが、このとき、剛性板13の切欠部13aに、可撓部12bの細幅部71が位置し、且つ剛性板13の各突出部13bの先端が、可撓部12bの除去部70の上方に重なるようにして位置合わせする。
次に、キャビティユニット10の背面に、圧電アクチュエータ12を囲むように補強フレーム15を接着剤で固定する、このとき、フレキシブルフラットケーブル12の可撓部12bは、補強フレーム15の第1辺部15cの背面側を通るように持ち上げられる。
次に、フレキシブルフラットケーブル12の可撓部12bを、ヘッドホルダ8の底板8aに穿設したスリット孔55に挿通させて、補強フレーム15の背面が、ヘッドホルダ8の底板8aの下面と隙間を空けて平行状になるように位置合わせする。そして、底板8aの貫通孔56から、接着剤19を流し込んで、インクジェットヘッド1をヘッドホルダ8に固着する。次いで、インクジェットヘッド1のノズル面を囲むようにフロントフレーム16を補強フレーム15の前面に接着剤で固着する。
上記組み立て工程では、補強フレーム15をキャビティユニット10の背面に固着するときや、インクジェットヘッド1をヘッドホルダ8に固着するときに、フレキシブルフラットケーブル12の可撓部12bを上方に持ち上げ、あるいはその他の製造工程においてインクジェットヘッドを搬送する際にフレキシブルフラットケーブルが揺り動かされるため、平坦部12aと圧電アクチュエータ11との接合を、可撓部12bの引き出し側から剥離するように力が作用する。
フレキシブルフラットケーブル12の平坦部12aは、フレキシブルフラットケーブル12よりも剛性の高い剛性板13で覆われ、剛性板13の剛性により平坦部12aを圧電アクチュエータ11の背面に沿うように保たれるから、剛性板13を設けない場合に比べると、平坦部12aの剥離を抑制する効果を奏する。
加えて、フレキシブルフラットケーブル12を持ち上げたときに、フレキシブルフラットケーブル12は、剛性板13の切欠部13aに位置する細幅部71を基端として屈曲する。すなわち、可撓部12bの引き出し方向Bに位置する平坦部12aの端縁のうち、切欠部13aの幅に対応する位置には、平坦部12aを剥離する力が作用するものの、切欠部13aの幅の外側に対応する位置は、剛性板13の突出部13bに押えられ、平坦部12aを剥離する力が直接的には作用し難くくなっているから、より一層、平坦部12aの剥離を防止する効果が高められる。
また、可撓部12bは、図8(a)に示すように、剛性板13の切欠部13aに位置する細幅部71を基端として立ち上がるから、切欠部13aを設けない図8(b)に示す場合に比べると、切欠部13aの奥行き寸法(切り込み量)L分だけ補強フレーム15の内周面との間の隙間が広がり、緩やかに屈曲することができる。これも、平坦部12aの剥離を防止する効果を奏する。
次に、剛性板13及び補強フレーム15の加工形状とその取り付けについて説明する。剛性板13及び補強フレーム15は、いずれも金属製の板材をプレス加工することにより形成したものであり、そのため、これらにはプレス加工によるバリが発生する。バリを除去するために、バリ除去加工(バレル加工、面押し加工等)を付加することも考えられるが、全てのバリを除去するようにバリ除去加工を行うと、製造コストが嵩むため、できるだけバリ除去加工を少なくし、しかもバリによる悪影響をなくすことが求められる。
従って、剛性板13については、図8(a)に示すように、バリ80が発生したバリ面81を、フレキシブルフラットケーブル12と当接する側とは反対側に配置することで、剛性板13のバリが、フレキシブルフラットケーブル12に接触して、断線等を引き起こす虞を無くすことができる。
また、補強フレーム15については、バリ80が発生したバリ面81を、キャビティユニット10と当接する側と反対側に配置し、補強フレーム15の第1辺部15cの内側縁にのみ、面押しによるバリ除去加工を施している。これにより、フレキシブルフラットケーブル12の可撓部12bが第1辺部15cに当接しても、バリに傷つけられる虞をなくすことができる。また、バリ除去加工を最小限の箇所に限定することで、製造コストが嵩むことも防止できる。
また、補強フレーム15のキャビティユニット10と当接する側の面は、バリ面81の反対側であるダレ面になっているので、補強フレーム15とキャビティユニット10との接着面が密着しやすく、バリによる接着面の浮きで、接着不良、インク漏れ、クロストーク等の不都合が発生することを防止することができる。
なお、上記実施形態では、アクチュエータとして、圧電方式のものを用いたが、静電気により振動板を変位させてインクを吐出させるなど他の駆動方式においても、アクチュエータの一つの面にフレキシブルフラットケーブルを積層して引き出す形態ならば、本発明を適用することができる。
本発明のインクジェットヘッドが適用されたインクジェット記録装置の平面図である。 キャリッジの分解斜視図である。 キャリッジをY方向に沿って切断した断面図である。 ヘッドユニットと均熱板の一部分解斜視図である。 キャビティユニットの分解斜視図である。 (a)は図4のVI−VI線矢視断面図、(b)は前記(a)のb−b線矢視断面図である。 フレキシブルフラットケーブルと剛性板との位置関係を示す下面図である。 (a)は切欠部を有する剛性板を用いた場合の断面図、(b)は切欠部のない剛性板を用いた場合の断面図である。
符号の説明
1 インクジェットヘッド
4 ノズル
8 ヘッドホルダ
10 キャビティユニット
11 圧電アクチュエータ
12 フレキシブルフラットケーブル
12a 平坦部
12b 可撓部
13 剛性板
13a 切欠部
13b 突出部
15 補強フレーム
16 フロントフレーム
43 外部電極
51 端子電極
70 除去部
71 細幅部
100 インクジェットプリンタ

Claims (6)

  1. 複数のノズルを外部に開口させ内部にインク流路を有するキャビティ部と、このキャビティ部内のインクに選択的に吐出圧力を与えるアクチュエータとを備え、このアクチュエータに駆動信号を出力するフレキシブルフラットケーブルが接合されたインクジェットへッドにおいて、
    前記アクチュエータは、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の電極を平面状に備え、
    前記フレキシブルフラットケーブルは、前記アクチュエータの複数の電極に重なって電気的に接合される平坦部と、前記平坦部の一端を基端として引き出される可撓部とを有し、
    前記可撓部では、前記引き出し方向に直交する方向の幅寸法が前記平坦部よりも細幅になるように前記引出し方向に平行な両側縁を除去した除去部が形成されており、
    前記フレキシブルフラットケーブルの前記複数の電極と接合される側とは反対側の背面には、前記フレキシブルフラットケーブルよりも剛性が高く且つ少なくとも前記平坦部のほぼ全面を覆う大きさの剛性板が固着され、
    前記剛性板の前記可撓部の引き出し側の端縁には、前記可撓部の細幅部分とほぼ対応する幅で、前記引き出し方向と反対側へ入り込んで切り欠いた切欠部が設けられ、その切欠部の前記引き出し方向に直交する方向の両端に、前記可撓部の除去部に向かって突出する2つの突出部が設けられていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記剛性板は、前記アクチュエータよりも熱伝導性に優れ、前記フレキシブルフラットケーブルを介して前記アクチュエータと熱伝導可能に接していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記キャビティ部の一つの面に前記アクチュエータが積層され、その面に、前記キャビティ部を補強する枠状の補強フレームが、その枠部の内側面と前記アクチュエータの外側面との間に隙間を有して当該アクチュエータを囲むように固定され、
    前記補強フレームは、前記アクチュエータよりも前記キャビティ部の一つの面から高く突出し、
    前記フレキシブルフラットケーブルの可撓部は、前記補強フレームの枠部の内周よりも内側に位置する平坦部から前記補強フレームの背面側に立ち上がるように引き出されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記剛性板は、金属製の板材をプレス加工して形成したものであって、その表裏面のうちプレス加工によってバリが生じたバリ面を、前記フレキシブルフラットケーブルと当接する側とは反対側に配置することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記剛性板のバリ面には、当該バリ面とその反対側の面とを判別するために、表面加工または印字が施されていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記キャビティ部は、前記補強フレームが固定される面に、インク取入口を有し、前記補強フレームは、そのインク取入口に重なり、インク供給源からのインクを前記インク取入口へ導く接続穴を有しており、
    前記補強フレームは、金属製の板材をプレス加工して枠状に形成したものであって、前記補強フレームの表裏面のうちプレス加工によりバリが生じたバリ面を、前記キャビティ部と当接する側とは反対側に配置し、
    前記補強フレームにおける前記キャビティ部と反対側の背面では、その枠部の内側縁のうち、少なくとも、前記フレキシブルフラットケーブルの可撓部が引き出される側に位置する内側縁に、バリの除去加工が施されていることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のインクジェットヘッド。

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