JP2007273574A - 光半導体装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】発光素子にかかる残留応力が望ましい方向に一定の範囲内でかかるようにして、発光素子の性能・信頼性を向上させ、量産性を高めた光半導体装置を提供する.
【解決手段】発光素子、例えば、半導体レーザチップ21と、半導体レーザチップ21の活性層に近い表面と対向して接続する基台23と、基台23と半導体レーザチップ21との間に挟まれたハンダ接続層24とを具備し、半導体レーザチップ21は、端面近傍のハンダ接続層24と対向する面上に一対の突起部28a、28bを有し、基台23と反対側に凸状の曲率半径R1で光軸方向に反っている構成からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、書き換え可能な光ディスクや高速大容量の光通信などに用いる高性能な光半導体装置に関する。
高度情報化社会を迎えて、インターネットに代表される通信手段には、高速で大容量の光通信技術が要望され、通信などで得た大容量の情報の記憶手段として、より一層の高速で大容量の書き換え可能な光ディスク技術が要望されている。このような状況の中で、光通信技術や光ディスク技術のキーデバイスとなる半導体レーザなどの光半導体装置は、さらに高性能・高機能・高信頼性を要求される。
この光半導体装置の高性能化を行うための主要な技術として、発光素子である半導体レーザチップを基台に接続する技術がある。例として図8に従来の光半導体装置の構成例について示す。
図8は光通信の光源として使用される光半導体装置10の要部を表したものである。光半導体装置10は、分布帰還型の半導体レーザチップ1の活性層2の存在する側の表面4をSi基板3上に形成されたSiO2膜5に向けた形で配置されている。なお、半導体レーザチップ1はSiO2膜5の上に形成された電極パタン6の上にAuSnからなるハンダ層7で固定されている。活性層2の両側は切り欠かれており、メサ部8となっている。ハンダ層7は活性層2を含んだメサ部8の直下の部分を避ける形で充填されている。したがって、両側のハンダ接続層7の間には空隙部9が存在している。
このように構成された光半導体装置10は、ハンダ接続層7が凝固した状態においては、半導体レーザチップ1とSi基板3との間の熱膨張係数の違いによって歪みや残留応力が発生する。しかしながら、活性層2の付近にはハンダ接続層7が存在しておらず、かつ活性層2の両端にメサ部8が配置されている。したがって、ハンダ接続層7が直接接触していないので、活性層2の歪みや残留応力による影響を大幅に減少させることができる。この結果、分布帰還型の半導体レーザチップからなる光半導体装置10は安定した発振波長の単一モードによる動作が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
また、同様に活性層に近い半導体レーザチップ表面の真下にハンダのない空洞の領域を設けて、メサ部のない半導体レーザチップをSi基板などの光実装基板にハンダ接続した例がある(例えば、特許文献2参照)。光半導体素子と実装基板との熱膨張係数の違いにより、ハンダ接続後の光半導体素子の活性層などに内部応力が残留するが、空洞の領域を設けることにより内部応力による活性層に形成された回折格子の特性の不安定性を低減して安定な発振特性が得られている。
さらに残留応力の低減と光半導体素子の高温動作特性の改善を図るために、半導体レーザチップへのハンダ接続領域が複数本平行に作成された構成例もある。すなわち、半導体レーザチップはメサ部の直下のサブマウント部分に溝を設けて、メサ部に沿ってストライプ上にハンダ接続され、メサ部の両側はハンダの実装がされていない空間として残留応力を低減するのに働く。そのうえ、半導体レーザチップのメサ部から離れた領域は上記の溝と平行に高融点ハンダで接続して、電気的な接続と放熱性とを確保している(例えば、特許文献3参照)。
特開2002−314184号公報 特開平11−87849号公報 特開2003−23200号公報
しかしながら、上記の残留応力対策はいずれも半導体レーザチップの共振器端面に平行な方向に行われており、光半導体装置がより高性能・高信頼性を確保するためには半導体レーザチップの共振器の方向、すなわち、光軸方向にも残留応力対策を行わなければならないという課題があった。具体的には、この半導体レーザチップの共振器方向の残留応力が望ましい方向にかかるように制御しないと、例えば、光ディスク用高出力半導体レーザの場合では、光ディスク用半導体レーザの主要な特性の一つである偏光比がロット内の個々のデバイスでばらつく、あるいは、バーンイン初期での動作電流値の変化がロット内の個々のデバイスでばらつくなどの課題を有していた。さらに、残留応力対策に加えて高放熱性を備えた接続構造を実現しないと、例えば、光ディスク用高出力半導体レーザの場合では、初期特性のばらつきなどが十分抑制できないという課題を有していた。
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、発光素子が基台に接続されるときに高放熱の接続構造を備え、発光素子の共振器端面に平行な方向だけでなく、これと垂直な光軸方向にも残留応力対策が施された光半導体装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の光半導体装置は、発光素子と、上記発光素子が接続される基台と、上記基台と上記発光素子との間に挟まれた接続層とを具備し、上記発光素子は略直方体形状で長辺方向に沿って共振器を構成し、上記共振器の端面近傍の上記接続層と対向する面上に一対の突起部を有し、上記基台と反対側に凸状の曲率半径で光軸方向に反っている構成からなる。
また、基台は、発光素子の活性層に近い表面と対向して発光素子と接続される構成としてもよい。
また、発光素子の曲率半径が250mm以上である構成としてもよい。
これらの構成により、発光素子の活性層で発生した熱は高放熱で拡散し、かつ、発光素子にかかる残留応力が一定の方向に一定の範囲内でかかるように制御されて、発光素子のロット内での初期特性やバーンイン初期での動作電流値の変化に関して、さらに均一性を向上することができる。
また、接続層はハンダ接続層である構成としてもよい。
また、接続層の厚さは、前記共振器の中央部は厚く、前記共振器の端面近傍は中央部より薄い構成としてもよい。
これらの構成により、発光素子は接続層を通じて活性層で発生した熱をさらに高放熱で基台側に拡散することができる。そのうえ、発光素子は、接続層の厚さが共振器の中央部は厚くなるために、基台と反対側に凸状の曲率半径で光軸方向に反っている形状をさらに再現性よく実現することができる。
また、突起部は、端面に沿って帯状に形成されている構成としてもよい。
また、突起部は、発光素子の基板を加工して形成されている構成としてもよい。
また、突起部は、発光素子を構成する材料と同等以上の高さの熱伝導率を有する材料で構成してもよい。
これらの構成により、発光素子をハンダ接続するときのハンダ融点からの温度降下時に発光素子を掴んだコレットが突起部より発光素子を冷却することにより、発光素子は、さらに再現性よく基台と反対側に凸状の曲率半径で光軸方向に反っている形状を実現することができる。
また、発光素子は、半導体レーザチップまたは端面発光型発光ダイオードチップである構成としてもよい。
この構成により、発光素子の中で活性層に電流と光が集中することにより活性層が残留応力の影響を受けやすい半導体レーザチップや端面発光型発光ダイオードチップは、ロット内での初期特性やバーンイン初期での動作電流値の変化に関して、さらに均一性を向上することができる。
また、基台はSi基板で構成されているものとしてもよい。
また、Si基板上に少なくとも受光素子、回路素子または反射ミラーが構成されているものとしてもよい。
これらの構成により、半導体レーザチップに受光素子や回路素子および反射ミラーなどの光学素子を高密度に集積した、さらに高性能・高機能の光半導体装置を実現することができる。
また、基台は、高放熱の金属材料または半導体材料からなる構成としてもよい。この構成により、さらに放熱性や温度特性がよく、高信頼性の光半導体装置が実現できる。
本発明の光半導体装置は、発光素子の光軸方向がハンダ接続している基台と反対方向に凸状の曲率半径で反っている構成からなり、この構成により、発光素子にかかる残留応力が望ましい方向に一定の範囲内でかかるようにして、発光素子のロット内での初期特性の均一性やバーンイン初期での動作電流値の変化の均一性をさらに向上させることができる。その結果、光通信技術や光ディスク技術のキーデバイスとして、高性能・高機能・高信頼性の光半導体装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態にかかる光半導体装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面で同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。
(第1の実施の形態)
図1から図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。図1に本発明の第1の実施の形態の光半導体装置20の概略構成図を示す。図1(a)は本実施の形態の光半導体装置20の実装状態を上から見た概略構成図、(b)は(a)のA−A線の断面から光半導体装置20の実装状態を見た概略断面図を示す。
図1(a)において、発光素子、例えば、半導体レーザチップ21が、出力光、例えば、レーザ光22を出射する活性層に近い表面を下にして、対向する導電性の基台(以下、サブマウントという)23上に予め形成されたハンダ接続層24によりサブマウント23に接続されている。なお、サブマウント23はパッケージ(図示していない)の一部の金属基台25にハンダ接続されている。
また、図1(b)は図1(a)のA−A線の断面から光半導体装置20の構成を見た概略断面図である。半導体レーザチップ21は、図1(a)、(b)に示されるように略直方体形状をしており、よく知られているように長辺方向に沿って共振器を構成し、共振器の両端の一対の端面29a、29bは共振器の反射ミラーとなっている。なお、レーザ光22を出射する方向が半導体レーザチップ21の共振器の方向であり、レーザ光を伝播する光軸方向となっている。さらに、半導体レーザチップ21は、共振器の端面近傍のハンダ接続層24と対向する面状に一対の突起部28a、28bを備えている。この突起部28 a、28bは端面29a、29bに沿って帯状に形成されている。
図1(b)において、半導体レーザチップ21は、光軸方向がサブマウント23に接続された方向と反対方向に凸状の曲率半径R1で反っている。すなわち、図1(b)において凸状の曲率半径R1で反った半導体レーザチップ21は、サブマウント23にハンダ層24により接続されている。ここで半導体レーザチップ21とサブマウント23との間の隙間は、半導体レーザチップ21が凸状に反るために光軸方向で不均一となる。したがって、ハンダ層24は共振器の中央で厚く共振器の両端で薄くなるように上記の隙間を埋めて、半導体レーザチップ21とサブマウント23とがハンダ層24により接続される。さらに、サブマウント23は金属基台に対する接着面26に予め蒸着されたハンダ層(図示していない)によって金属基台25に接着されている。
このように本実施の形態の光半導体装置20においては、図1(b)に示すように半導体レーザチップ21の中央部27bが凸となり、半導体レーザチップ21の後端面部27aと前端面部27cを結んだ線よりも距離ΔB1だけ反っている。すなわち、半導体レーザチップ21は曲率半径R1、角度Θ1を見込んだ弧として凸状に反っている。このように凸状に沿った状態にすると、これと逆の凹状に沿った状態と比較して、初期特性の均一性やバーンイン初期での動作電流値の変化の均一性がよくなる。すなわち、ロット内でも初期特性のばらつきが小さくなり、初期特性の平均値も光半導体装置の性能および信頼性の上で好ましいものとなる。
例えば、半導体レーザチップ21に波長650nm帯のAlGaInP系材料を用いた赤色レーザについて製作し、初期特性と信頼性について確認した。最大パルス光出力が300mWまで出力可能な半導体レーザチップ21を用いた。この半導体レーザチップ21は共振器長1500ミクロン、幅300ミクロン、厚さ110ミクロンの形状を持ち、一対の突起部28a、28bはAuをメッキして形成されており、その形状は、それぞれ長さ100ミクロン、幅300ミクロン、厚さ5ミクロンである。
図2は、半導体レーザチップ21の反りと信頼性に大きな影響を及ぼ初期の動作電流値の関係を示している。反り量を表す距離(以下、反り量とする)ΔB1は、1ロット(n=15)の平均値で0.5ミクロン、最大値で1.0ミクロンであり、半導体レーザチップ21は基台と反対側に凸状の曲率半径で光軸方向に反っていた。このΔB1が最大値の1.0ミクロンのときの曲率半径R1は281mmであった。また、反り量が平均値で0.3ミクロンの別のロットは、特に初期特性の平均値が良好な低い値で、かつ、ばらつきが少ないことを示している。したがって、曲率半径R1は0.3ミクロンの反り量に相当する900mm以上にすることが望ましい。
なお、反り量については、レーザ光による光の干渉縞を観測して解析することにより数値を算出している。このときの測定限界は0.05ミクロンであるので、共振器長1500ミクロンの半導体レーザチップが凸状の反りを持つ曲率半径の上限は6000mmである。ただし、この曲率半径の上限は半導体レーザチップの共振器長が長くなれば大きくなる。したがって、共振器長3000ミクロンの半導体レーザチップが凸状の反りを持つ曲率半径の上限は22500mmとなる。
さらに、反り量については、半導体レーザチップ21を切断してその断面の形状から測定したところ、0.02ミクロンの反り量でも初期特性の均一性やバーンイン初期での動作電流値の変化の均一性がよくなることが確認できた。したがって、共振器長3000ミクロンの半導体レーザチップが凸状の反りを持つ曲率半径の上限は56250mmとなる。これらの結果より、半導体レーザチップ21は曲率半径280mm以上56250mm以下で凸状の弧として反っていることが望ましい。さらに図2においては、反りが凸であっても曲率半径が281mmを下回る状態では初期の動作でんりゅうが増大する。また、反りが凹状になった場合は一気に初期の動作電流が増大して、信頼性への悪影響が懸念される状態になっていることを示している。
また、ハンダ接続層24は、例えば、AuとSnの材料からなるものを使用すると、共振器の方向で中央部が4.8ミクロン、両端部が3.8ミクロンの厚さとなっていた。このハンダ接続層24は半導体レーザチップ21にメッキしているAuメッキとサブマウント23のレーザ接続面に予めパターニングしているSnハンダ層が溶融して形成されたものである。
なお、上記の波長650nm帯のAlGaInP系材料を用いた赤色レーザについて、さらに実験を追加して確認したところ、凹状に反ると初期特性、例えば、偏光比のばらつきが大きくなり過ぎて量産性に影響があることがわかった。また、この凹状に反った半導体レーザチップ21を組み立てて、バーンインを行った結果、初期の動作電流値の平均値や動作電流値の初期からの変化量が、凸状に反った半導体レーザチップ21よりも大きくなることがわかった。
さらに、凸状に反っていても曲率半径R1が250mm以下になると、応力による負荷が大きくなり過ぎ、初期特性で動作電流値の平均値は曲率半径R1が250mm以上のものに比べて大きくなることが判った。この動作電流値の平均値が大きくなることは、光ピックアップに搭載するときに発熱量が大きくなり、温度上昇が大きくなるなど好ましくない。
以上説明したように、半導体レーザチップ21にかかる残留応力が一定の方向に一定の範囲内でかかり、その結果、半導体レーザチップ21は図1(b)で示すように凸状に反ることにより、半導体レーザのロット内での初期特性の均一性やバーンイン初期での動作電流値の変化の均一性をさらに向上することができる。この理由についての詳細は明確でないが、半導体レーザチップ21の表面のうち、活性層に近い表面が収縮することにより圧縮性の応力を受けることにより、共振器の方向のゲインなどのばらつきが抑制されて均一性が向上するものと推定される。
また、半導体レーザチップ21が図1(b)に示すように凸状に反るような組立方法の一例を以下に示す。図1(b)の半導体レーザチップ21をサブマウント23にハンダ付けするときに、例えば、平コレット(図示していない)で半導体レーザチップ21の全体を掴んでサブマウント23に押し付ける。この場合、半導体レーザチップ21は一対の突起部28a、29bが平コレットと接触しており、中央部27bは接触していない。したがって、平コレットの熱は突起部28a、28bを介して半導体レーザチップ21に伝達される。
次に平コレットを加熱し、同時にサブマウント23の下部からも加熱して半導体レーザチップ21の全体を加熱し、同時にハンダを溶かしハンダ付けを行う。ハンダを一旦溶融したのちに、ハンダを固めるために温度を降下するときに、平コレットとサブマウント23の下部からの加熱を止めて室温近辺まで自然に冷却する。この冷却の過程で半導体レーザチップ21の熱は、ハンダ接続層24を介してサブマウント23に逃げるものと、突起部28a、28bを介して平コレットへ逃げるものと、2つの経路から逃げていく。このときに、半導体レーザチップ21のハンダ接続層24と接触した面の前端面部27cと後端面部27aとは、片側は空気の領域であるので中央部27bに比べてやや早く冷却される。さらに、この間に、平コレットは突起部28a、28bを介して半導体レーザチップ21をサブマウント23に押し付けているので両端面29a、29bの近傍のハンダが固まりやすくなり、この部分から固体化していく。ハンダが固体化すると同時に収縮するので、半導体レーザチップ21の両端面29a、29bの近傍が固体化および収縮により、サブマウント23側に引っ張られる。その結果、半導体レーザチップ21はハンダ接続層24と反対側に凸状に反ることとなると考えられる。
一方、半導体レーザチップ21のハンダ接続層24と対向する面では、平コレットを介して半導体レーザチップ21の熱が逃げていくので、突起部28a、28bの近辺が先に冷却し、中央部27bは冷却するのが後になり温度がやや高くなる。その結果、突起部28a、28bのある前端面部27cと後端面部27aに比べて中央部27bの熱膨張が大きくなり、ハンダ接続層24と反対側に凸状に反ることとなると考えられる。
このように、ハンダ接続層24と反対側に凸状に反った状態でハンダ接続層24の中の溶融したハンダは両端から中へ、すなわち、前端面部27cと後端面部27aのハンダから先に固体化し、中央部27bのハンダは最後に固化するものと考えられる。
以上のようにハンダ接続層24が固体化すると図1(b)に示すようにハンダ接続層24自体が半導体レーザチップ24のある方向に凸の形状となり、半導体レーザチップ21を含めて全体が室温近辺まで冷えた後もハンダ接続層24の凸の形状は保たれることとなり、半導体レーザチップ21もハンダ接続層24と反対側に凸状に反ると考えられる。
このようにハンダ接続層24のハンダが半導体レーザチップ21の端面29a、29bの近傍の前端面部27cと後端面部27aから中央部27bに固体化していく過程は、AuとSnからなるハンダ接続層24を用いた場合は、特に顕著である。例えば、サブマウント23の半導体レーザチップ21側の表面にSnのメッキ層を形成し、このSnが加熱により溶融し、半導体レーザチップ21の表面にメッキされたAuを溶かして、SnとAuからなるハンダ接続層24を形成する場合で説明する。
図3は半導体レーザチップ21の中央部27bが凸となった形状で半導体レーザチップ21がサブマウント23にハンダ接続層24で接続されている状態を示している。上記で説明したように、Snが主な成分のハンダは溶融したのちに前端面部27cと後端面部27aから冷却されて中央部27bに固体化していくので、半導体レーザチップ21は中央部27bが凸になる。
このことにより、後端面部27aと前端面部27cはサブマウント23に近くなり、ハンダ接続層24中の液相のハンダを中央部のほうに押しやると考えられる。すなわち、ハンダ層24中の溶融したSnを中央部に押しやることとなる。その結果、中央領域24bにおけるハンダ層24中のAuに対してSnを含有する割合が、ハンダ層24中の後端面領域24aおよび前端面領域24cにおけるAuに対してSnを含有する割合よりも多くなると考えられる。このようなハンダ層24中のSnとAuの割合は、図3に示す断面のハンダ層24について、3素子をX線マイクロアナリシス(以下、XMAとする)で分析したところ上記で説明した傾向が3素子共に見られた。このXMAの結果からも、ハンダは溶融したのちに前端面部27cと後端面部27aから冷却されて中央部27bに固体化していくことが確認される。
ところで、ハンダ接続による応力を緩和するためには融点の低いハンダを用いるのがよい。ハンダの融点と室温との温度差が少ない方がハンダ接続時に生じる応力を少なくすることができる。図4にAuとSnからなるハンダの相図を示す。図4で縦軸はハンダ温度、横軸はSnの組成を示している。図4よりAuがSnより多く含有される、すなわち、Auの含有の割合が50%を超えると、AuとSnからなるハンダは280℃のAuリッチな共晶ハンダの組成でほとんどのハンダが固体化する。しかしながら、Snからなるハンダを図4のSnの融点である232℃まで昇温して冷却してやると、半導体レーザチップ21にメッキされたAuがSnからなるハンダ中にSnの組成に対して10%程度溶け出すだけで、図4の217℃の共晶点で固体化する。このように217℃程度の低温でハンダ接続を行うと室温近辺の温度との温度差を小さくすることができるので、ハンダ接続による残留応力を緩和することができる。
なお、これらの構成により、ハンダ接続でのハンダ温度を降下させるときに半導体レーザチップ21の中央部の下にある中央領域24bのハンダの融点が、後端面領域24aおよび前端面領域24cのハンダの融点より低くなる。したがって、ハンダ温度が降下するときに融点の高い後端面領域24aおよび前端面領域24cのハンダがまず固体化する。このときに、半導体レーザチップ21のハンダ接続層24と接触した面の前端面部27cと後端面部27aとは、片側は空気の領域であるので中央部27bに比べてやや早く冷却される。さらに、この間に、平コレットは突起部28a、28bを介して半導体レーザチップ21をサブマウント23に押し付けているので両端面29a、29bの近傍のハンダが固まりやすくなり、この部分から固体化していく。これらの効果により、半導体レーザチップ21はサブマウント23と反対側に凸状の曲率半径で光軸方向に反る形状となることをさらに確実に決定することができる。
なお、本実施の形態では突起部28a、28bは金属であるAuを用いたが、発光素子を構成する材料と同等以上の高さの熱伝導率を有する材料であれば、他の金属や他の材料を用いてもよい。
また、突起部28a、28bは発光素子を構成する材料である基板を加工して形成してもよい。すなわち、本実施の形態では半導体レーザチップ21は波長650nm帯のAlGaInP系材料を用いた赤色レーザを用いているので、基板はGaAs材料でできている。したがって、例えばGaAs材料からなる基板をエッチングすることにより、GaAs材料からなる突起部28a、28bを形成してもよい。
(第2の実施の形態)
図5に本発明の第2の実施の形態を示す図である。図5に本発明の第2の実施の形態の光半導体装置30の概略構成図を示す。図5(a)は本実施の形態の光半導体装置30の実装状態を上から見た概略構成図、(b)は(a)のB−B線の断面から光半導体装置30の実装状態を見た概略断面図を示す。
本実施の形態は、図1に示す第1の実施の形態とは、半導体レーザチップ31の突起部38a、38bが図3(a)に示すように半導体レーザチップ31の端面39a、39bおよび側面40a、40bよりも少し内側の領域に形成されているところが異なる。
図5(a)において、発光素子、例えば、半導体レーザチップ31が、出力光、例えば、レーザ光32を出射する活性層に近い表面を下にして、対向する導電性のサブマウント33上に予め形成されたハンダ接続層34によりサブマウント33に接続されている。なお、サブマウント33はパッケージ(図示していない)の一部の金属基台35にハンダ接続されている。
また、図5(b)は図5(a)のB−B線の断面から光半導体装置30の構成を見た概略断面図である。半導体レーザチップ31は、図1(a)、(b)に示されるように略直方体形状をしており、長辺方向に沿って共振器を構成し、共振器の両端の一対の端面39a、39bは共振器の反射ミラーとなっている。なお、レーザ光32を出射する方向が半導体レーザチップ21の共振器の方向であり、レーザ光を伝播する光軸方向となっている。さらに、半導体レーザチップ31は、共振器の端面近傍のハンダ接続層34と対向する面上に一対の突起部38a、38bを備えている。この突起部38 a、38bは端面39a、39bに沿って帯状に形成されている。ただし、半導体レーザチップ31が、へき開工程により半導体ウェハから個別のチップに分離しやすいように、突起部38 a、38bは、半導体レーザチップ31の端面39a、39bおよび側面40a、40bよりも少し内側の領域に形成されている。
図5(b)において、半導体レーザチップ31は、光軸方向がサブマウント33に接続された方向と反対方向に凸状の曲率半径R2で反っている。すなわち、図5(b)において凸状の曲率半径R2で反った半導体レーザチップ31は、サブマウント33にハンダ層34により接続されている。ここで半導体レーザチップ31とサブマウント33との間の隙間は、半導体レーザチップ31が凸状に反るために第1の実施の形態と同様に光軸方向で不均一となる。したがって、ハンダ層24は共振器の中央で厚く共振器の両端で薄くなるように上記の隙間を埋めて、半導体レーザチップ31とサブマウント33とがハンダ接続層34により接続される。さらに、サブマウント33は金属基台に対する接着面36に予め蒸着されたハンダ層(図示していない)によって金属基台35に接着されている。
このように本実施の形態の光半導体装置30においては、図5(b)に示すように半導体レーザチップ31は曲率半径R2、角度Θ2を見込んだ弧として凸状に反っている。第1の実施の形態で示したように、凸状に沿った状態にすると、これと逆の凹状に沿った状態と比較して、初期特性の均一性やバーンイン初期での動作電流値の変化の均一性がよくなる。すなわち、ロット内でも初期特性のばらつきが小さくなり、初期特性の平均値も光半導体装置の性能および信頼性の上で好ましいものとなる。
例えば、半導体レーザチップ31に波長650nm帯のAlGaInP系材料を用いた赤色レーザについて製作し、初期特性と信頼性について確認し、反り量ΔB2との関係について確認したところ、第1の実施の形態で得た結果と同様の良好な結果が得られた。
図6に図5(a)および(b)の構成でサブマウント33に半導体レーザチップ31をハンダ付けしたものを金属製パッケージに組み立てた例について示す。図6(a)は半導体レーザ41のキャップ(図示していない)を外した状態で内部構造を示した模式図、(b)は(a)の矢印の方向から見た内部構造の模式図を示す。
図6(a)で光半導体装置41がキャップ(図示していない)を外して、内部の組立構造がわかるように示されている。サブマウント33と反対の方向に凸状に反った半導体レーザチップ31がサブマウント33上に搭載され、このサブマウント33は、さらに金属ブロック42上に低温ハンダでハンダ付けされている。なお、半導体レーザチップ31は共振器の端面近傍のハンダ接続層と対向する面上に一対の突起部を備えているが、ここでは図示していない。金属ブロック42は金属製パッケージ43と一体化されている。金属製パッケージ43には、電極端子44a、44b、44cが一体化して取り付けてある。電極端子44bと金属製パッケージ43とは電気的に導通しており、電極端子44bは半導体レーザ41のグランド端子となっている。また、電極端子44aは光半導体装置41に電流注入をする端子で、グランド端子に対して正電圧が印加される。なお、この電流注入を行う電極端子44aは、導電性ワイヤ45で半導体レーザチップ31と接続されている。
図6(b)は図6(a)を矢印の方向から見た模式図である。半導体レーザチップ31はサブマウント33と反対の方向に凸状に反って組み立てられている。なお、電極端子44は表示を省略している。
電極端子44a、44bを電源に接続して電流注入を行うと、光半導体装置41は、波長650nm帯のパルス光出力250mWのレーザ光46を出力した。半導体レーザチップ31にかかる残留応力が一定の方向に一定の範囲内でかかるので、光半導体装置のロット内での初期特性の均一性やバーンイン初期での動作電流値の変化の均一性がよい半導体レーザ41が得られた。
なお、本実施の形態では突起部38a、38bは金属であるAuを用いたが、発光素子を構成する材料と同等以上の高さの熱伝導率を有する材料であれば、他の金属や他の材料を用いてもよい。
また、突起部38a、38bは発光素子を構成する材料である基板を加工して形成してもよい。すなわち、本実施の形態では半導体レーザチップ31は波長650nm帯のAlGaInP系材料を用いた赤色レーザを用いているので、基板はGaAs材料でできている。したがって、例えばGaAs材料からなる基板をエッチングすることにより、GaAs材料からなる突起部38a、38bを形成してもよい。
(第3の実施の形態)
図7に本発明の第3の実施の形態の光半導体装置におけるハンダ接続の概略構成図を示す。図7(a)は本実施の形態の光半導体装置のパッケージ上部に相当するキャップ(図示していない)を外して、半導体レーザチップが基台にハンダ接続された状態を示す模式図、(b)は(a)のC−C線の断面から見た半導体レーザチップと基台がハンダ接続された状態の断面図を示す。
図7(a)に示す光半導体装置50は、半導体レーザチップ51、受光素子52、受光信号の処理回路(図示していない)、反射ミラー53や回折格子(図示していない)からなる光集積装置である。すなわち、受光素子52と信号処理回路(図示していない)をSi基板上に作りつけた受光素子チップ54上に半導体レーザチップ51をハンダ接続している。このように半導体レーザチップ51を取り付けた受光素子チップ54をパッケージ55の金属基台56に導電性ペーストで接着する。なお、半導体レーザチップ51は共振器の端面近傍のハンダ接続層と対向する面上に一対の突起部を備えているが、ここでは図示していない。
光半導体装置50はパッケージ55の電極端子57により電流注入をすることにより、パッケージ55および受光素子チップ54と導電性ワイヤで接続された半導体レーザチップ51は駆動されて、レーザ光(図示していない)を出射する。このレーザ光は、受光素子チップ54の表面に平行に出射し、受光素子チップ54に作りつけられた反射ミラー53の反射点58で反射し、垂直上方に出射する。光半導体装置50から出射したレーザ光は、光ディスク上の信号を読み取ったのちに光半導体装置50に戻り、パッケージ55に接着されたパッケージ上部の回折格子(図示していない)で分岐されて受光素子51で受光される。受光した信号は増幅され、かつ、演算がなされて後段の回路の入力信号として伝達される。
図7(b)に上記の光半導体装置50のB−B線の方向から見た半導体レーザチップ51のハンダ接続構造の要部断面図を示す。図7(b)に示すように半導体レーザチップ51の中央部59bが凸となった形状で、半導体レーザチップ51は受光素子チップ54である基台にハンダ層60で接続されている状態を示している。ハンダ層60を一旦溶融したのちに、冷却してハンダ層60を固める過程で半導体レーザチップ51の中央部59bが凸になり、後端面部59aと前端面部59cは受光素子チップ54に近くなり、ハンダ層60を中央部のほうに押しやると考えられる。すなわち、ハンダ層60中の溶融したSnを中央部に押しやることとなる。その結果、ハンダ層60中の中央領域60bにおけるAuに対してSnを含有する割合が、ハンダ層60中の後端面領域60aおよび前端面領域60cにおけるAuに対してSnを含有する割合よりも多くなると考えられる。さらに中央領域60bにおいて、ハンダ層60中のAuに対してSnを含有する割合が多くなると考えられる。このようなハンダ層60中のSnとAuの割合は、図7(a)に示す断面のハンダ層60について、3素子をX線マイクロアナリシス(以下、XMAとする)で分析したところ上記で説明した傾向が3素子共に見られた。
さらに、電源接続用電極端子57を電源に接続して電流注入を行うと、光半導体装置50は、波長650nm帯のパルス光出力300mWのレーザ光61を出力した。半導体レーザチップ51にかかる残留応力が一定の方向に一定の範囲内でかかるので、光半導体装置のロット内での初期特性の均一性やバーンイン初期での動作電流値の変化の均一性がよい光半導体装置50が得られた。
なお、第1から第3の実施の形態において、高出力半導体レーザチップは、波長650nm帯のAlGaInP系半導体レーザチップを用いて説明したが、書き換え型光ディスクに用いることができる高出力半導体レーザチップであれば、波長780nm帯のAlGaAs系半導体レーザチップ、青色レーザチップおよび紫外光レーザチップを用いてもよい。また、2波長レーザチップや3波長レーザチップ等の多波長レーザチップを用いてもよく、半導体レーザチップもモノリシックに形成されていても、ハイブリッドに複数のチップが実装されていてもよい。
なお、本実施の形態において光ディスク機器に使用する高出力半導体レーザチップについて説明したが、光通信システムに用いる高出力半導体レーザチップ、例えばファイバ励起による光増幅用の高出力半導体レーザチップに適用しても有用である。
本発明は、半導体レーザチップにかかる残留応力が望ましい方向に一定の範囲内でかかるようにして、半導体レーザチップの性能・信頼性を向上させ、量産性を高めた光半導体装置を提供するものであり、光通信および光ディスクの機器やシステム等に有用である。
本発明の第1の実施の形態における光半導体装置を示す概略構成図で、(a)は光半導体装置の実装状態を上から見た概略構成図、(b)はA−A線の断面から光半導体装置の実装状態を見た概略断面図 凸状の反りによって初期特性(動作電流)が安定になることを示すグラフ 本発明の第1の実施の形態における凸状の半導体レーザチップの実装状態を示す模式図 AuとSnからなるハンダの相図 本発明の第2の実施の形態における光半導体装置を示す概略構成図で、(a)は光半導体装置の実装状態を上から見た概略構成図、(b)はB−B線の断面から光半導体装置の実装状態を見た概略断面図 本発明の第2の実施の形態において金属製パッケージに組み立てた光半導体装置を示す概略構成図で、(a)は内部の主要構造を示した模式図、(b)は(a)の矢印の方向から見た内部の主要構造の模式図 本発明の第3の実施の形態における光半導体装置を示す概略構成図で、(a)は内部の主要構造を示した模式図、(b)は(a)のC−C線の断面から見た内部の主要構造の概略断面図 従来の光半導体装置の概略構成図
符号の説明
1,21,31,51 半導体レーザチップ
2 活性層
3 Si基板
4 表面
5 SiO2
6 電極パタン
7,24,34,60 ハンダ接続層
8 メサ部
9 空隙部
10,20,30,41,50 光半導体装置
22,32,46,61 レーザ光
23,33 サブマウント
24a,60a (ハンダ層中の)後端面領域
24b,60b (ハンダ層中の)中央領域
24c,60c (ハンダ層中の)前端面領域
25,35,56 金属基台
26,36 接着面
27a,37a,59a (半導体レーザチップの)後端面部
27b,37b,59b (半導体レーザチップの)中央部
27c,37c,59c (半導体レーザチップの)前端面部
28a,28b,38a,38b,62a,62b 突起部
29a,29b,39a,39b 端面
40a,40b 側面
42 金属ブロック
43 金属製パッケージ
44,44a,44b,44c,57 電極端子
45 導電性ワイヤ
52 受光素子
53 反射ミラー
54 受光素子チップ
55 パッケージ
58 反射点
R1,R2 曲率半径
Θ1,Θ2 角度
ΔB1,ΔB2 反り量

Claims (14)

  1. 発光素子と、
    前記発光素子が接続される基台と、
    前記基台と前記発光素子との間に挟まれた接続層とを具備し、
    前記発光素子は略直方体形状で前記接続層と対向する面上に一対の突起部を有し、前記基台と反対側に凸状の曲率半径で反っていることを特徴とする光半導体装置。
  2. 前記発光素子は略直方体形状で長辺方向に沿って共振器を構成し、前記基台と反対側に凸状の曲率半径で光軸方向に反っていることを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置。
  3. 前記基台は、前記発光素子の活性層に近い表面と対向して前記発光素子と接続されることを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置。
  4. 前記発光素子の曲率半径が250mm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光半導体装置。
  5. 前記接続層はハンダ接続層であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光半導体装置。
  6. 前記接続層の厚さは、前記共振器の中央部は厚く、前記共振器の端面近傍は中央部より薄いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光半導体装置。
  7. 前記突起部は、前記端面に沿って帯状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光半導体装置。
  8. 前記突起部は、前記発光素子の基板を加工して形成されていることを特徴とする請求項6に記載の光半導体装置。
  9. 前記突起部は、前記発光素子を構成する材料と同等以上の高さの熱伝導率を有する材料で構成されることを特徴とする請求項6に記載の光半導体装置。
  10. 前記発光素子は、半導体レーザチップまたは端面発光型発光ダイオードチップであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光半導体装置。
  11. 前記基台はSi基板で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光半導体装置。
  12. 前記Si基板上に少なくとも受光素子、回路素子または反射ミラーが構成されていることを特徴とする請求項10に記載の光半導体装置。
  13. 前記基台は、高放熱の金属材料または半導体材料からなることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光半導体装置。
  14. 前記発光素子は略直方体形状で前記接続層と対向する面上の長辺の両側の稜線の内側に島状一対の突起部を有し、前記基台と反対側に凸状の曲率半径で反っていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光半導体装置。
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