JP2007268490A - マイクロデバイス及びそれを用いた触媒反応方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】壁面に触媒を固定化したマイクロ流路内において、物質移動を積極的に促進させ、高効率で混合及び反応させることができる。
【解決手段】
複数種類の反応流体同士を混合又は反応させるための微細な流路20Aを備えたマイクロデバイス10であって、微細な流路20Aが曲がり部32を1以上備えると共に、前記流路全体のうちの少なくとも曲がり部32の内壁面に反応に関与する触媒21が固定化されている。
【選択図】 図1
【解決手段】
複数種類の反応流体同士を混合又は反応させるための微細な流路20Aを備えたマイクロデバイス10であって、微細な流路20Aが曲がり部32を1以上備えると共に、前記流路全体のうちの少なくとも曲がり部32の内壁面に反応に関与する触媒21が固定化されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、マイクロデバイス及びそれを用いた触媒反応方法に係り、特に、壁面に触媒を固定化させたマイクロ流路において効率的に触媒反応を行うマイクロデバイス及びそれを用いた触媒反応方法に関する。
マイクロ空間内では単位体積あたりの表面積が大きくなる特徴から、反応流体の反応界面を多く形成でき、温度制御も容易にできるので、流体間の反応や混合の高効率化又は高速化ができる技術として注目されている。
従来、触媒反応の分野においては、反応表面積を増加させることを目的として、マイクロ流路内に触媒を担持させる方法が検討されている。
例えば、特許文献1では、触媒や酵素等が固定化されている多孔質構造体をマイクロ流路内の一部に構築する提案がなされている。これによれば、従来よりも触媒や酵素等を大量に固定化でき、高効率なマイクロデバイスを実現できると記載されている。
また、特許文献2では、微細な流路の内壁表面に光触媒活性を有する物質の薄膜を備えたマイクロデバイスが提案されている。これによれば、流路の内壁面への流体成分の付着堆積が抑制され、且つ光触媒の酸化作用により流路内を常に清浄な状態に維持できるとされている。
しかし、上記従来例の方法では、マイクロ流路内における反応表面積を向上させることはできるが、流路のマイクロ化に伴う問題があった。
特許文献1のような方法では、マイクロ流路内に多孔質構造体を入れる作業が必要であり、生産上効率が悪いという問題があった。また、流路の微細化に伴い反応流体が層流を形成するため、触媒を固定化した壁面近傍方向への物質移動の推進力が分子拡散のみになる。特許文献2の方法では、触媒を固定化した壁面近傍は境界層を形成するので、物質移動がされにくい。従って、流路内において触媒反応を高効率で行うことができなかった。
しかし、特許文献2において問題になった壁面近傍の物質移動速度の低下は、マイクロデバイスの微細化にて避けられないことではない。流路を曲げることによりディーン渦と呼ばれる渦が発生することが知られている。非特許文献1では、屈曲構造を有するマイクロ流路における流体挙動とそのシミュレーションが検討されている。
特開2004−317128号公報
特開2004−202336号公報
化学工学会第68年会論文第30巻第3号(2004)p341「屈曲構造を有するマイクロ流路における流体挙動とそのシミュレーション」
しかし、非特許文献1では、シミュレーションの結果を、微細な流路内で行う触媒反応に適用するとの目的又は考察も明示されていない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、壁面に触媒を固定化したマイクロ流路内において、物質移動を積極的に促進させ、高効率で混合及び反応させることができるマイクロデバイス及びそれを用いた触媒反応方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、複数種類の反応流体同士を混合又は反応させるための微細な流路を備えたマイクロデバイスであって、前記微細な流路が曲がり部を1以上備えると共に、前記流路全体のうちの少なくとも前記曲がり部の内壁面に前記反応に関与する触媒が固定化されていることを特徴とするマイクロデバイスを提供する。
微細な流路は、反応流体の反応界面を多くすることができ、且つ温度制御も容易であるとの大きなメリットがある反面、反応流体の流れが層流となるため、微細な流路の内壁面に触媒を固定化して反応(例えば触媒反応)を行わせようとした場合に、層流のために触媒と反応流体との接触が促進されにくいというデメリットがある。即ち、層流を形成し易い微細な流路は、反応流体に熱を付与したり、触媒に光を付与して活性化したりして反応を促進することに関しては優れているが、固体である触媒と液体又は気体である反応流体との接触効率を上げて反応を促進することに関しては劣っている。従って、層流が形成され易い微細な流路であっても、触媒と反応流体との接触を促進できれば反応を著しく促進することが可能となる。
本発明は係る観点から発明したものであり、請求項1によれば、複数種類の反応流体同士を混合又は反応させるための微細な流路を備えたマイクロデバイスであって、微細な流路が曲がり部を1以上備えると共に、流路全体のうちの少なくとも曲がり部の内壁面に反応に関与する触媒が固定化されている。このような曲がり部を有する微細な流路に反応流体を流すことにより、反応流体が曲がり部を通過する際に流路の幅方向に慣性力が生じる。これにより、壁面に触媒を固定化したマイクロ流路内において、流体の物質移動を積極的に促進させることができ、効率的に混合及び反応させることができる。
ここで、曲がり部とは、2次元的又は3次元的に流路が曲がっている部分のことをいい、湾曲部、屈曲部等が含まれる。
請求項2は請求項1において、前記曲がり部が、3以上であることを特徴とする。これにより、本発明の効果が更に良好に得られる。
請求項3は請求項1又は2において、前記微細な流路の曲がり部が、該曲がり部を流れる流体のディーン数Deが10以上となるように構成されたことを特徴とする。
請求項3によれば、微細な流路の曲がり部が、該曲がり部を流れる流体のディーン数Deが10以上となるように構成される。すなわち、曲がり部の流路の内径、流路長、及び曲率半径Rが、流す流体の種類に応じてディーン数Deが10以上となるように構成されることが好ましい。これにより、壁面に触媒を固定化したマイクロ流路内において、物質移動を積極的に促進させ、高効率で混合及び反応させることができる。ここで、ディーン数Deは下記式で表される。
De=Re(Deq/2R)1/2
(Re:レイノルズ数、Deq:流路の等価直径(m)、R:曲率半径(m))
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記微細な流路の温度を制御するための温度制御手段を備えたことを特徴とする。
(Re:レイノルズ数、Deq:流路の等価直径(m)、R:曲率半径(m))
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記微細な流路の温度を制御するための温度制御手段を備えたことを特徴とする。
請求項4によれば、微細な流路の温度を制御するための温度制御手段を備えるので、流路内で触媒反応をより効率的に行うことができる。ここで、温度制御手段としては、ジャケット式金属薄膜ヒータ、温調ジャケット、流路に沿って形成された熱媒体流路等を好ましく使用できる。
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記微細な流路が、等価直径が1mm以下のマイクロ流路であることを特徴とする。
請求項5によれば、微細な流路が、等価直径が1mm以下のマイクロ流路であるので、流路内で触媒反応をより高効率で行うことができる。ここで、微細な流路が、等価直径が0.5mm以下であることがより好ましい。
本発明の請求項6は前記目的を達成するために、マイクロデバイスを用いた触媒反応方法であって、曲がり部を1以上備え、少なくとも該曲がり部の内壁面に前記反応に関与する触媒が固定化された微細な流路に、反応流体を流して触媒反応を行わせることを特徴とするマイクロデバイスを用いた触媒反応方法を提供する。
請求項6によれば、マイクロデバイスを用いた触媒反応方法であって、曲がり部を1以上備え、少なくとも該曲がり部の内壁面に反応に関与する触媒が固定化された微細な流路に、反応流体を流して触媒反応を行わせる。これにより、壁面に触媒を固定化したマイクロ流路内において、物質移動を積極的に促進させ、高効率で混合及び反応させることができる。
ここで、触媒反応としては、例えば、燃料電池用の燃料改質反応や発電反応にみられるPt、Ru、Ni等の触媒上における反応や、酸素還元反応等が挙げられる。
請求項7は請求項6において、前記微細な流路の曲がり部におけるディーン数Deが10以上になるように運転することを特徴とする。
請求項7によれば、微細な流路の曲がり部におけるディーン数Deが10以上になるように運転する。すなわち、流路に流す流体のレイノルズ数Reを構成する物性(流体の密度、粘度、流速等)を上記ディーン数Deの範囲を満たすように運転することが好ましい。
これにより、壁面に触媒を固定化したマイクロ流路内において、物質移動を積極的に促進させ、高効率で混合及び反応させることができる。
請求項8は請求項6又は7において、前記微細な流路内の温度を調節して、前記微細な流路内を流れる反応流体を反応させることを特徴とする。
請求項8によれば、微細な流路内の温度を調節して、微細な流路内を流れる反応流体を反応させる。従って、壁面に触媒を固定化したマイクロ流路内において、物質移動を積極的に促進させ、且つ触媒反応をより高効率で行うことができる。
本発明によれば、壁面に触媒を固定化したマイクロ流路内において、物質移動を積極的に促進させ、高効率で混合及び反応させることができる。
以下、添付図面に従って、本発明に係るマイクロデバイス及びそれを用いた触媒反応方法の好ましい実施の形態について説明する。
以下において「マイクロデバイス」とは、微細な流路(マイクロチャンネル)で流体を流し、および/またはそこで合流させ、それに起因する混合、反応、熱交換等の操作を行うための装置の総称である。
また、その微細な流路(マイクロチャンネル)またはそこを通過するストリームの直径または等価直径(チャンネルまたはストリームの断面が円形でない場合)は、1mm以下であり、等価直径が0.8mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
図1は、本発明に係るマイクロデバイス10の第一実施形態の構成を説明する平面図である。図2は、図1のA−A’線断面図であり、図3は、図1の部分拡大断面図である。このうち、図3は、第1液溜め部24(図1の左上部点線内)を示す。
すなわち、マイクロデバイス10は、主に、板状体の表面に等価直径が1mm以下の長溝20が形成されている基板12と、この基板12の表面に密着固定され、長溝を覆うことにより基板12に微細な流路20Aを形成する覆い板22と、を備えている。
上記の長溝20により形成される微細な流路20Aは、曲がり部32…を複数備えており、平面視で数段階折り重なった蛇行状となっている。この流路20Aの一端は、覆い板22に形成された円柱状空洞部である第1液溜め部24、第2液溜め部26、及び第3液溜め部28と反応流体供給路14A、16A、18Aを介して連通しており、流路20Aの他端は、覆い板22に形成された円柱状空洞部である第4液溜め部29と連通している。
微細な流路20Aの内壁面には、図2に示されるように、触媒層21が形成及び固定されている。触媒層21の厚さは、1〜50μmであることが好ましい。
触媒層21の種類としては、各種固体触媒(金属触媒や金属化合物触媒等)がある。例えば、金属触媒は通常、触媒活性、耐久性、触媒の効率的利用等のため、触媒活性のないアルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)などの上に分散させて使用することが好ましい。
触媒の具体的な例としては、電極反応に使用される電極触媒や光触媒等があり、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pa)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、白金ルテニウム合金(Pt/Ru)、ニッケル(Ni)、酸化チタン(TiO2)、硫酸ジルコニア等が挙げられる。
上記の触媒層21の形成方法としては、CVD法、グロー放電法、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、ゾル−ゲル法等がある。また、触媒懸濁液を長溝20の壁面に噴霧塗布(スプレー塗布)する方法、長溝20以外の部分をマスキングして触媒懸濁液に浸漬して塗布するディップコーティング法、直接長溝20に刷毛塗りする方法等があり、いずれも適用可能である。また、均一な膜質を確保でき、密着性も高く、実用的な処理時間で形成可能である等の点から、スパッタリング法を採用することが好ましい。
曲がり部32の形状は、図1に示されるように、湾曲形状であることが好ましいが、非曲線状に屈曲した形状であってもよい。
曲がり部32においては、流れる流体の粘度、密度等の物性や流速等の運転条件にも依存するが、流路の内径、流路の長さ、曲率半径等がディーン数Deが10以上を満たすように構成されることが好ましい。
ここで、ディーン数Deは下記式で表される。
De=Re(Deq/2R)1/2
(Re:レイノルズ数、Deq:流路の等価直径(m)、R:曲率半径(m))
このような範囲とすることにより、曲がり部32を流れる流体が、円弧の中心から外側方向に働く慣性力を受けて強制的に混合される。また、壁面に形成された触媒層21との接触面積(回数)も増加する。
(Re:レイノルズ数、Deq:流路の等価直径(m)、R:曲率半径(m))
このような範囲とすることにより、曲がり部32を流れる流体が、円弧の中心から外側方向に働く慣性力を受けて強制的に混合される。また、壁面に形成された触媒層21との接触面積(回数)も増加する。
上記のような最適なディーン数Deの範囲は、流動解析ソフトとして既に日本で市販されて流動解析ソフトであるアールフロー社製の数値解析ソフト、R−Flowを用いて予めシミュレーションを行うことによって把握することができる。
また、曲がり部の形状は、楕円形状又は非曲線状の曲がり部でもよい。また、曲がり部の数も図1の例に限定されることはなく、1以上であればよい。
基板12の表面に形成する長溝20の断面積は、等価直径が1mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることが更に好ましい。また、流路の長さは、触媒反応が終了するに足る長さに設定され、反応の種類によって異なる。
この長溝20の断面形状は、特に制限はなく、矩形(正方形、長方形)、台形、V形、半円形等、各種の形状が採用できる。
基板12の表面(長溝が形成される面)及び覆い板本体22の裏面(基板12に密着する面)は、流路20Aの形成、及び液漏れの防止等の点より、充分な平坦性を確保できていることが好ましい。
マイクロデバイス10において、少なくとも流路20Aと対向する領域に温度制御手段30を設けることが好ましい。これにより、高効率で触媒反応を行わせることができる。
温度制御手段30としては、公知公用の温度制御手段を使用できるが、例えば、金属薄膜ヒータ、温調コイル、温調ジャケット等が好ましく使用できる。
図4及び5は、温度制御手段30の変形例を説明する図である。このうち、温度制御手段30を備えたマイクロデバイス10の上面図であり、図5は、図4のA−A’線断面図である。
図4及び5に示されるように、温度制御手段である熱媒体流路プレート30が、マイクロデバイス10に隣接して設けられている。
熱媒体流路プレート30は、本体部材34と底部材36とで構成され、本体部材34に所望温度の熱媒体を流す熱媒体流路38Aが流路20Aに沿って形成されている(図4の点線参照)。また、熱媒体流路38Aの流路幅W2は、流路20Aの流路幅W1よりも広く形成されている。
また、熱媒体流路の流路幅W2が、下流方向に縮流するように構成されてもよい。これにより、流路20Aの上流側から下流側にかけた全領域において、熱媒体流路38Aからの伝熱速度を均一化することができる。ここで、熱媒体供給手段としては、各種ポンプを使用できるがマイクロポンプを用いることが好ましい。
マイクロデバイス10において、流路20A内に光を照射するための図示しない光照射手段を設けることが好ましい。これにより、光触媒を用いた反応を行わせることができる。
光照射手段としては、例えば、キセノンランプ、蛍光灯、紫外線ランプ、レーザー等の各種光源だけでなく自然光を取込む機構も採用できる。
自然光を取込む方法としては、マイクロデバイス10を構成する部材(基板12及び/又は覆い板22)の材質の一部を透明にする方法がある。このような材料として、各種樹脂板、より具体的には、ポリジメチルスルホキシド(PDMS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、紫外線硬化樹脂、ポリカーボネート(PC)等、各種樹脂膜、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)等が採用できる。また、樹脂以外には強化ガラスや石英ガラス等のガラス類やサファイア等も採用できる。
マイクロデバイス10を構成する部材(基板12及び覆い板22を含む)の材質としては、強度が高く、腐食防止性があり、反応流体の流動性を高くするものが好ましい。例えば、金属(鉄、アルミ、ステンレス鋼、チタン、その他の各種金属)、樹脂(フッ素樹脂、アクリル樹脂等)、ガラス(石英等)、セラミックス(シリコン等)などが好ましく使用できる。また、プラズマCVD法などの表面改質処理を行って、SiN4、SiN2、Al2O3などの皮膜をマイクロデバイス10の構成部材の表面に形成して、耐食性、流動性を向上させてもよい。
マイクロデバイス10を製作するには、微細加工技術が適用される。適用可能な微細加工技術としては、例えば、X線リソグラフィを用いるLIGA(Roentgen−Lithographie Galvanik Abformung)技術、EPON SU−8(商品名)を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM(Micro Electro Discharge Machining))、Deep RIE(Reactive Ion Etching)によるシリコンの高アスペクト比加工法、Hot Emboss加工法、光造形法、レーザー加工法、イオンビーム加工法、及びダイヤモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法等がある。これらの技術を単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。好ましい微細加工技術は、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、及び機械的マイクロ切削加工法である。一般的に、マイクロデバイス10としては、SUS(ステンレス鋼)製の部材を微細放電加工して微細流路を形成することが多いが、使用する材質に応じた加工方法で加工することが好ましい。
部材間の接合方法は、高温加熱による材料の変質や変形による流路等の破壊を伴わず、寸法精度を保った精密な方法が望ましく、製作材料との関係から固相接合(例えば圧接接合や拡散接合等)や液相接合(例えば、溶接、共晶接合、はんだ付け、接着等)を選択することが好ましい。例えば、材料にシリコンを使用する場合にシリコン同士を接合するシリコン直接接合や、ガラス同士を接合する融接、シリコンとガラスを接合する陽極接合、金属同士を接合する拡散接合等が挙げられる。セラミックスの接合については、金属のようなメカニカルなシール技術以外の接合技術が必要であり、アルミナに対してglass solderなる接合剤をスクリーン印刷で、80μm程度の膜厚に印刷し、圧力をかけずに440〜500℃で熱処理する方法がある。また、新しい技術として、表面活性化接合、水素結合を用いた直接接合、HF(フッ化水素)水溶液を用いた接合等がある。
例えば、本実施形態におけるマイクロデバイス10は、次のようにして製造することができる。図6は、シリコンウエハを用いたマイクロデバイス10の製造工程の一例を示す模式図である。
すなわち、図6(a)に示されるように、基板12の板材として洗浄したシリコンウエハを用い、ドライプラズマエッチングにより、一方の主面に長溝20’を形成する。
次いで、図6(b)に示されるように、この主面側にスパッタリング法で触媒層21を成膜する。
次いで、図6(c)に示されるように、マスキングによって長溝20’の壁面の触媒層21を形成する。尚、この製造工程では、研磨により長溝20’の壁面以外の不用な触媒層21を除去する方法も採用できる。
その後、図6(d)に示されるように、シリコンウエハ12の長溝20側の面に他のシリコンウエハ22を直接接合で接合して一体化する。ここで、シリコンウエハ22の流路用溝20に対抗する領域に、あらかじめ選択的に触媒層21を成膜しておくことが好ましい。
そして、接合一体化された板材をチップ化することにより、図1に示すマイクロチャンネルチップを得ることができる。
本実施形態で使用される反応流体としては、液体、気体、固液混相流体、気液混相流体等が含まれる。
次に、本発明に係るマイクロデバイス10の作用について説明する。図7は、図1のマイクロデバイス10のA−A’線断面模式図である。尚、本実施形態では、反応流体L1と、反応流体L2との2液の場合について図1及び図7を用いて説明する。
図1に示されるように、反応流体L1が流体供給手段25(ポンプ等)により反応流体供給路14Aに供給され、反応流体L2も同様に反応流体供給路16Aに供給される。反応流体L1、L2は、それぞれの反応流体供給路14A、16Aを流れて、流路20Aで合流する。ここで、反応流体L1、L2の流速を、ディーン数Deが10以上となるように制御することが好ましい。
次いで、合流した反応流体L1、L2同士は、流路の壁面に固定された触媒層21との接触界面上で触媒反応がおこる。ここで、温度制御手段30により触媒反応に適した温度に加熱されている。
このとき、流路20Aの曲がり部32では、層流を形成していた反応流体L1、L2は、円弧の中心から外側方向に働く慣性力を受ける。これにより、図7に示されるように、円弧の外側領域を流れる反応流体L1が内側領域に(矢印P方向に)物質移動しやすくなる。
これにより、反応流体L1、L2の混合性能が向上し、高効率で触媒反応が行える。特に、壁面近傍は境界層が形成されるため、流路20Aの幅方向で濃度分布が生じやすいが、曲がり部32…で働く慣性力により強制的に物質移動が促進されるので、流路20A内での濃度分布が減少する。また、触媒層21との接触界面量も増加する。
このように、反応流体L1、L2が、曲がり部32を繰り返し流れることにより、相互の物質移動が更に促進されると共に、触媒層21との接触界面も増加するので高効率で触媒反応が行える。
尚、本実施形態では、反応流体供給路14A、16Aからそれぞれ反応流体L1、L2を供給して、流路20Aで合流させながら、触媒反応を行わせる例について説明したが、あらかじめ反応流体L1、L2を混合しておき(ミキシング工程)、この混合反応流体L3を流路20Aに供給してもよい。
また、反応流体の種類の数に応じて、液溜め部又は供給口を更に設けて、直接複数種類の反応流体を流路20Aに供給できるように構成してもよい。
本実施形態では、曲がり部32の形状が同じものを数箇所設ける例を示したが、その他の形状でもよい。図8〜11は、本発明に係るマイクロデバイス10の変形例を説明する上面図である。
図8は、異なるサイズの曲がり部32を組み合わせた流路20Aを示す上面図であり、図9は、曲がり部32をクランク状(非曲線状)に形成した流路20Aを示す上面図である。また、図10は、曲がり部32を連続的につなげた波型形状の流路20Aを示す上面図であり、図11は、曲がり部32を渦巻状に形成した流路20Aを示す上面図である。
このように、用途や設計に応じて、曲がり部32の形状やサイズを変えて、ディーン数を制御することができる。
[第二実施形態]
図12は、本発明に係るマイクロデバイス10の第二実施形態であり、3次元的に微細な流路を形成したマイクロデバイス10’である。図12(a)は、第二実施形態のマイクロデバイス10’の構成を説明する斜視図であり、図12(b)は、マイクロデバイス10’のB−B’線断面図である。反応流体の流れ方向を矢印Aで示す。
図12は、本発明に係るマイクロデバイス10の第二実施形態であり、3次元的に微細な流路を形成したマイクロデバイス10’である。図12(a)は、第二実施形態のマイクロデバイス10’の構成を説明する斜視図であり、図12(b)は、マイクロデバイス10’のB−B’線断面図である。反応流体の流れ方向を矢印Aで示す。
図12に示されるように、本実施形態のマイクロデバイス10’は、円筒状であり、主に、円筒状の外周面に等価直径が1mm以下の長溝20が形成されている円筒状内壁12と、この円筒状内壁12の外側に密着固定され、長溝20を覆うことにより基板12に微細な流路20Aを形成する円筒状外壁22と、を備えている。
円筒状の上面には、反応流体L1、L2を供給する第1、第2の供給口24’、26’が設けられている。この第1、第2の供給口24’、26’は反応流体供給路14A、16Aと連通しており、流路20Aに連通している。
流路20Aは、円筒壁面に沿って螺旋状に形成されており、円筒の下面に設けられた排出口28’に連通している。
この螺旋状の流路20Aの形状は、本実施形態に限定されることはなく、例えば、マイクロデバイス10’の円筒径の大きさや断面形状、流路20Aの螺旋回数等が、ディーン数Deが10以上となるように構成されることが好ましい。
この螺旋状の流路20Aの内壁面には、図12(b)に示されるように、触媒層21が形成及び固定されている。触媒層21の種類、形成方法、及び厚さは、前述の第一実施形態と同様である。
円筒状の内壁、外壁の材質については、第一実施形態と同様のものを使用できる。
マイクロデバイス10’の作製方法や触媒形成方法も、第一実施形態と同様のものを使用できる。
マイクロデバイス10’の外周面に温度制御手段30’が設けられることが好ましい。温度制御手段30’としては、第一実施形態と同様のものを使用できる。
次に、本実施形態のマイクロデバイス10’の作用について説明する。
先ず、第1の供給口24’より反応流体L1をスポイトやポンプ等の流体供給手段(不図示)で供給し、第2の供給口26’より反応流体L2を同様に供給する。ここで、反応流体を送液する方法としては、既述した流体供給手段を使用することができる。
反応流体L1、L2は、それぞれの反応流体供給路14A、16Aを流れて、流路20Aで合流する。ここで、反応流体L1、L2の流速を、ディーン数Deが10以上となるように制御することが好ましい。
次いで、合流した反応流体L1、L2は、螺旋状に形成された流路20A内を同図で下降するように流れ(矢印)、流路の壁面に固定された触媒層21との接触界面上で触媒反応がおこる。
このとき、螺旋状の流路20Aでは、反応流体L1、L2は、円弧の中心から外側の方向に働く慣性力を受ける。従って、円弧の外側領域を流れる反応流体L1が内側領域に物質移動しやすくなる。
これにより、反応流体L1、L2の混合性能が向上し、高効率で触媒反応が行える。特に、壁面近傍は境界層が形成されるため、流路20Aの幅方向で濃度分布が生じやすいが、曲がり部32…で働く慣性力により強制的に物質移動が促進されるので、流路20A内での濃度分布が減少する。また、触媒層21との接触界面量も増加する。
このように、反応流体L1、L2が、螺旋状の流路20A内を流れることにより、相互の物質移動が更に促進されると共に、触媒層21との接触界面も増加するので高効率で触媒反応が行える。
本実施形態では、3次元的な曲がり部を有する流路として、円筒の螺旋状の流路を例に挙げたが、直方体の壁面に沿った螺旋状や、円錐状の壁面に沿った螺旋状の流路(渦巻状流路を3次元化した形状)であってもよい。マイクロデバイスを設置する向きは、本実施形態のように縦置きだけでなく、横置きでもよい。
また、本実施形態では、反応流体供給路14A、16Aからそれぞれ反応流体L1、L2を供給して、流路20Aで合流させながら、触媒反応を行わせる例について説明したが、あらかじめ反応流体L1、L2を混合しておき(ミキシング工程)、この混合反応流体を流路20Aに供給してもよい。
次に、本発明に係るマイクロデバイスの応用例について説明する。本発明に係るマイクロデバイスは、例えば、携帯用燃料電池の燃料改質機構に適用することができる。
通常、携帯用燃料電池の燃料としては、持ち運びや管理の容易なアルコールや炭化水素等の液体燃料が使用される。この液体燃料を改質して水素を取り出し、燃料電池の発電反応に利用することが多い。
このような液体燃料(以下、メタノールの例を示す)のから水素を取り出すための燃料改質機構は、部分酸化部及び/又は水蒸気改質部と、CO酸化処理部とを備えている。
部分酸化部では、式(1)に示す部分酸化反応により空気とともに供給された燃料から水素を発生させる。
CH3OH+O2/2+1.88N2→CO2+2H2+1.88N2…(1)
この部分酸化反応では、式(2)に示す逆シフト反応が伴い、COが副次的に生成される。H2+CO2→CO+H2O…(2)
ここで、この部分酸化反応は、300℃以下に維持するように制御することが好ましい。
この部分酸化反応では、式(2)に示す逆シフト反応が伴い、COが副次的に生成される。H2+CO2→CO+H2O…(2)
ここで、この部分酸化反応は、300℃以下に維持するように制御することが好ましい。
水蒸気改質部では、部分酸化部における部分酸化反応による発熱を熱源として利用し、式(3)に示す水蒸気改質反応により気化された燃料から水素を発生させる。
CH3OH+H2O→CO2+3H2−60kJ/mol…(3)
CO酸化処理部では、式(4)に示すCO選択酸化反応により部分酸化部および水蒸気改質部での生成ガス中のCOをCO2に酸化する。
CO酸化処理部では、式(4)に示すCO選択酸化反応により部分酸化部および水蒸気改質部での生成ガス中のCOをCO2に酸化する。
CO+O2/2→CO2…(4)
ここで、CO選択酸化反応は、150〜200℃の範囲で行われることが好ましい。
ここで、CO選択酸化反応は、150〜200℃の範囲で行われることが好ましい。
このような燃料改質機構を構成する部分酸化部、水蒸気改質部及びCO酸化処理部に本発明が適用できる。すなわち、部分酸化部、水蒸気改質部及びCO酸化処理部が、それぞれ基板上に、壁面に触媒を固定した流路状に形成され、且つその流路形状が曲がり部を1以上有している(例えば、図1参照)。
曲がり部の形状は、ディーン数Deが10以上を満たすように構成されることが好ましい。
部分酸化触媒としては、例えば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)等の金属をアルミナやセラミックに担持させたものが用いられる。水蒸気改質触媒としては、例えば、パラジウム(Pd)等の金属をアルミナやセラミックに担持させたものが用いられる。CO酸化触媒には、例えば、白金(Pt)等の金属をアルミナやセラミックに担持させたものが用いられる。
このように構成した部分酸化部、水蒸気改質部及びCO酸化処理部のそれぞれの流路の曲がり部において、燃料や空気、水蒸気等の反応流体が、慣性力を受けて物質移動しやすくなる。これにより、流路の壁面に固定された触媒との接触界面が増加し、高効率で触媒反応を行うことができる。従って、本発明を適用した燃料改質機構によれば、CO除去された純度の高い水素ガスを高効率で得ることができる。
本実施形態では、燃料としてはメタノールと水とを用いる例を挙げたが、これに限定されるものではなく、例えばジメチルエーテルと水とを用いてもよく、改質により水素を取り出せる有機燃料であればいずれでもよい。
また、本実施形態では、燃料改質部を構成する部分酸化部、水蒸気改質部及びCO酸化処理部が、いずれも曲がり部を有する流路である例を示したが、上記のうち何れか1以上が曲がり部を有する流路であってもよい。また、曲がり部の数は多いことが好ましい。
以上に説明した本発明に係るマイクロデバイス及びそれを用いた触媒反応方法によれば、壁面に触媒を固定化したマイクロ流路内において、物質移動を積極的に促進させ、高効率で混合及び反応させることができる。
以上、本発明に係るマイクロデバイス及びそれを用いた触媒反応方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
例えば、本発明に係るマイクロデバイスに外乱付与手段(例えば、低周波振動付与手段)を設けて、流路20A内を流れる反応流体に外乱を付与して、反応流体同士の混合性能を向上させることもできる。
例えば、燃料電池用の燃料改質部に適用するだけでなく、発電部におけるセパレータの流路にも適用できる。また、燃料電池の他にも、各種の触媒反応にも適用できる。
本発明は、各種の触媒反応を利用した各種リアクタ(微粒子製造装置、燃料電池、燃料改質装置等)、理科実験教材、各種分析・検査器具等にも適用できる。
次に、実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
流路幅が200μm、流路深さが200μm、流路長さが30mmである流路20Aを備え、覆い板22が透明である部材からなる図1のマイクロデバイス10を用いて、ウイルスの不活性化反応を行った。本例のマイクロデバイス10には、流路20Aの曲がり部は5回であり、曲率半径は125μmであった。
触媒としてはTiO2を使用し、流路20A壁面に厚み3μmの触媒薄膜をゾル−ゲル法で形成した。
光照射手段としては、100Wのキセノンランプを使用した。送液ポンプとしては、扇動式ポンプを使用した。
流路20Aを25℃に維持するようにヒータを調節し、血液を流路20Aに流して反応させた。このとき、曲がり部32のディーン数Deが39となるような流速(0.33m/s)で血液を流した。
この結果、上記の流路20Aに血液を送液すると、血液中のウイルスが不活性化することが解った。
比較例1として、曲がり部を有しない流路において同様の実験を行った。即ち、流路幅、深さ、及び長さは上記実施例と同じであるが、曲がり部のない一直線の流路を使用した。その他の条件(温度、懸濁液の組成等)は、上記実施例と同様とした。
この結果、血液中のウイルスが不活性化しないことが解った。これより、曲がり部を有することで、反応が速やかに起こり、反応効率が向上することを確認した。
10、10’…マイクロデバイス、12…基板、22…覆い板、14、16、18…供給溝、20…長溝、14A、16A、18A…反応流体供給路、20A…流路、21…触媒(層)、30…温度制御手段(ヒータ等)、32…曲がり部、24…第1液溜め部、26…第2液溜め部、28…排出口、29…第3液溜め部
Claims (8)
- 複数種類の反応流体同士を混合又は反応させるための微細な流路を備えたマイクロデバイスであって、前記微細な流路が曲がり部を1以上備えると共に、前記流路全体のうちの少なくとも前記曲がり部の内壁面に前記反応に関与する触媒が固定化されていることを特徴とするマイクロデバイス。
- 前記曲がり部が、3以上備えられたことを特徴とする請求項1のマイクロデバイス。
- 前記微細な流路の曲がり部が、該曲がり部を流れる流体のディーン数Deが10以上となるように構成されたことを特徴とする請求項1又は2のマイクロデバイス。
- 前記微細な流路の温度を制御するための温度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1のマイクロデバイス。
- 前記微細な流路が、等価直径が1mm以下のマイクロ流路であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1のマイクロデバイス。
- マイクロデバイスを用いた触媒反応方法であって、曲がり部を1以上備え、少なくとも該曲がり部の内壁面に前記反応に関与する触媒が固定化された微細な流路に、反応流体を流して触媒反応を行わせることを特徴とするマイクロデバイスを用いた触媒反応方法。
- 前記微細な流路の曲がり部におけるディーン数Deが10以上になるように運転することを特徴とする請求項6のマイクロデバイスを用いた触媒反応方法。
- 前記微細な流路内の温度を調節して、前記微細な流路内を流れる反応流体を反応させることを特徴とする請求項6又は7のマイクロデバイスを用いた触媒反応方法。
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