JP2007268487A - マイクロ科学装置の流体操作方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な多層流状態で均一に反応又は混合することができる。
【解決手段】
複数の流体をそれぞれ同芯軸多層状の第1、第3流体供給路22、26内に流通させた後、1本の微細な混合・反応流路36に流通させることにより、混合又は反応させる同芯軸多層流型マイクロ科学装置の流体操作方法において、複数の流体のうち、混合・反応流路36に対して同芯軸状に流れない不整流体L1の外側に、複数の流体とは反応せず且つ複数の流体よりも高流速及び/又は高粘度の不活性流体LNを流すことで、不整流体L1の流れを混合・反応流路36に対して同芯軸状に流れるように矯正する。
【選択図】 図1
【解決手段】
複数の流体をそれぞれ同芯軸多層状の第1、第3流体供給路22、26内に流通させた後、1本の微細な混合・反応流路36に流通させることにより、混合又は反応させる同芯軸多層流型マイクロ科学装置の流体操作方法において、複数の流体のうち、混合・反応流路36に対して同芯軸状に流れない不整流体L1の外側に、複数の流体とは反応せず且つ複数の流体よりも高流速及び/又は高粘度の不活性流体LNを流すことで、不整流体L1の流れを混合・反応流路36に対して同芯軸状に流れるように矯正する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、マイクロ科学装置の流体操作方法に係り、特に、層流を安定に形成させて複数の流体同士を反応又は混合させるマイクロ科学装置の流体操作方法に関する。
マイクロ空間内では単位体積あたりの表面積が大きくなる特徴から、反応流体の反応界面を多く形成でき、温度制御も容易にできるので、流体間の反応や混合の高効率化又は高速化ができる技術として注目されている。
このようなマイクロ空間を利用したマイクロ科学装置において、反応や混合を均一且つ効率よく行うためには、反応流体同士を安定した多層流状態で合流させることが重要である。そして、均一な多層流の界面積や層厚みを精密に制御することにより、界面での分子拡散を制御しながら均一な反応を行うことができる。
例えば、特許文献1では、内軸管と該内軸管の側面から導入する外軸管により形成される多重同軸ノズルを備えた反応器を用いて、ハロゲン化銀乳剤を製造する方法が提案されている。
また、特許文献2では、円筒状の主流路の側壁から主流路に合流する導入流路を備えた流通型微小反応流路が提案されている。これら特許文献1、2によれば、反応流体を同芯円筒層流で合流させて反応又は混合することができるとされている。
特開平4−139440号公報
特開2002−292274号公報
しかしながら、上記従来例のような同芯軸多層円筒層流を形成するマイクロ科学装置は、加工・組立て精度等の製作精度が低い場合が多く、流路内を流れる複数の流体の断面が均等な同芯軸多層円環状になるようにするのは困難であり、これにより、均一に反応又は混合を行うことが困難であった。
例えば、多重管構造を構成する内管の肉厚バラツキ、芯ズレ及び傾き等が発生した場合、合流後の配管内を流れる流体の断面は、同芯軸状にはならない、所謂「不整流」と呼ばれる歪んだ形状になる。このため、所望の同芯軸多層円筒層流を形成するためには、製作技術のレベルアップが必要とされ、その方法として超精密加工技術が必要とされている。しかし、現実的な問題としては得率を考慮するとコストがかかるという問題もあり、対策方法が望まれていた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合することができるマイクロ科学装置の流体操作方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、複数の流体をそれぞれ同芯軸多層状の供給流路内に流通させた後、1本の微細な混合・反応流路に流通させることにより、混合又は反応させる同芯軸多層流型マイクロ科学装置の流体操作方法において、前記複数の流体のうち、前記混合・反応流路に対して同芯軸状に流れない不整流体の外側に、前記複数の流体とは反応せず且つ前記複数の流体よりも高流速及び/又は高粘度の不活性流体を流すことで、前記不整流体の流れを前記混合・反応流路に対して同芯軸状に流れるように矯正することを特徴とするマイクロ科学装置の流体操作方法を提供する。
請求項1によれば、複数の流体をそれぞれ同芯軸多層状の供給流路内に流通させた後、1本の微細な混合・反応流路に流通させることにより、混合又は反応させる同芯軸多層流型マイクロ科学装置の流体操作方法において、複数の流体のうち、混合・反応流路に対して同芯軸状に流れない不整流体の外側に、複数の流体とは反応せず且つ複数の流体よりも高流速及び/又は高粘度の不活性流体を流すことで、不整流体の流れを矯正する。これにより、装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合することができる。
ここで、1本の微細な混合・反応流路と同芯軸状に流れない不整流体とは、既述したようなものをいい、例えば、同芯軸多層状の流路を構成する内管の肉厚バラツキ、芯ズレ及び傾き等の製作精度の不良に起因して不均一に又は歪んで流れる流体のことをいう。また、不活性流体とは、不整流体を含む複数の流体同士の反応に対して不活性な流体をいい、例えば、水、シリコーンオイル、フッ素系不活性液(例えば、住友スリーエム製フロリナート)等が挙げられる。また、微細な混合・反応流路は、円相当直径が1mm以下であることが好ましい。
請求項2は請求項1において、前記不活性流体を前記不整流体に隣接した外側に流して前記不整流体の流れを矯正した後、前記不整流体を含む前記複数の流体同士を多層状に合流させることを特徴とする。
請求項2によれば、不均一な流動状態の不整流体が、直接反応に関与するその他の流体と接することを抑制できる。これにより、装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合することができる。
請求項3は請求項1又は2において、前記不活性流体の粘度が、前記不整流体の粘度の1〜10倍であることを特徴とする。
請求項3によれば、不活性流体の粘度が不整流体の粘度の1〜10倍と高いため、不整流体の慣性力よりも不活性流体の慣性力の方が勝り、製作精度に起因する反応流体の不整流を矯正ことができる。これにより、装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合することができる。また、不活性流体の粘度が不整流体の粘度の1〜5倍であることがより好ましい。
請求項4は請求項1又は2において、前記不活性流体の流速が、前記不整流体の流速の1〜10倍であることを特徴とする。
請求項4によれば、不活性流体の流速が不整流体の流速の1〜10倍であるので、製作精度に起因する反応流体の不整流を矯正することができる。また、不活性流体の流速が不整流体の流速の1〜5倍であることがより好ましい。
請求項5は前記目的を達成するために、複数の流体をそれぞれ同芯軸多層状の供給流路内に流通させた後、1本の微細な混合・反応流路に流通させることにより、混合又は反応させる同芯軸多層流型マイクロ科学装置の流体操作方法において、前記複数の流体のうち、前記混合・反応流路に対して同芯軸状に流れない不整流体に外力を付与することで、前記不整流体の流れを前記混合・反応流路に対して同芯軸状に流れるように矯正することを特徴とするマイクロ科学装置の流体操作方法を提供する。
請求項5によれば、複数の流体をそれぞれ同芯軸多層状の供給流路内に流通させた後、1本の微細な混合・反応流路に流通させることにより、混合又は反応させる同芯軸多層流型マイクロ科学装置の流体操作方法において、複数の流体のうち、混合・反応流路に対して同芯軸状に流れない不整流体に外力を付与することで、不整流体の流れを矯正する。これにより、装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合することができる。ここで、外力とは、不均一に流れる流体を矯正する方向に付与する重力や磁力のことをいう。
請求項6は請求項5において、前記外力は、重力であることを特徴とする。
請求項6によれば、例えば、重力を利用して装置を傾けることにより、製作精度による反応流体の流れの不均一さや歪み等を低減することができる。
請求項7は請求項5において、前記不整流体が磁性物質を含むと共に、該不整流体に前記外力として磁場を印加することを特徴とする。
請求項7によれば、製作精度に起因して不均一に流れる不整流体に磁性物質を含有させて、外力として磁場を印加する。これにより、不整流体中の磁性物質が磁力の作用を受けて、不整流体の流れの不均一さや歪み等を低減することができる。
本発明によれば、装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な多層流状態で均一に反応又は混合することができる。
以下、添付図面に従って、本発明に係るマイクロ科学装置の流体操作方法の好ましい実施の形態について説明する。
[第一実施形態]
図1は、本実施形態におけるマイクロ科学装置10の構成の一例を説明する断面図である。図2(A)は、図1のマイクロ科学装置10の合流部付近の拡大断面図であり、図2(B)は、図2(A)のA−A’線断面図である。これらの同図では、第1隔壁部材の製作精度が低い場合の例について示す。以下、液体L1、L2間で反応生成物LMを生成する液液反応の例について説明するが、これに限定されるものではない。また、本実施形態では、一部に製作精度に問題のある同芯軸多層円筒層流型のマイクロ科学装置の例について説明するが、これらに限定されるものではない。
図1は、本実施形態におけるマイクロ科学装置10の構成の一例を説明する断面図である。図2(A)は、図1のマイクロ科学装置10の合流部付近の拡大断面図であり、図2(B)は、図2(A)のA−A’線断面図である。これらの同図では、第1隔壁部材の製作精度が低い場合の例について示す。以下、液体L1、L2間で反応生成物LMを生成する液液反応の例について説明するが、これに限定されるものではない。また、本実施形態では、一部に製作精度に問題のある同芯軸多層円筒層流型のマイクロ科学装置の例について説明するが、これらに限定されるものではない。
図1に示されるように、マイクロ科学装置10は、全体として略円筒状に形成されており、主に、装置の外殻部を構成する円筒状の円管部12を備えている。ここで、図中における直線Sは装置の軸心を示しており、この軸心Sに沿った方向を装置の軸方向として以下の説明を行う。
円管部12の円相当直径Dは、1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。本実施形態では、同芯軸多層流路及び1本の混合・反応流路の断面形状が円形である例を示すが、これに限定されるものではなく、矩形、V字型等でもよい。
この円管部12の先端面には液体L1、L2が反応した後の反応生成液LMの吐出口14が開口している。
円管部12内には、円管部12内の空間を軸方向に沿って区画する円筒状の第1隔壁部材16及び第2隔壁部材18が多重筒状に設けられ、各隔壁部材16、18の基端面が円管部12の基端部に固着されている。これらの第1、2隔壁部材16、18は、本来、円管部12とそれぞれ同軸状に配置されており、円管部12内の断面円の空間を同軸状に3分割するように区画されていることが好ましいが、本実施形態では、第1隔壁部材16の製作精度が低く同軸状に配置されていない場合において、液体L1が不整流体を形成する例で説明する。
なお、図示しないが、円管部12の内周面と第1隔壁部材16の外周面又は第2隔壁部材18との間に複数個のスペーサを介装してもよい。これにより、2個の隔壁部材16、18がそれぞれ十分な強度で円管部12に連結固定され、液体L1、L2、LNの液圧の影響により所定位置から変移したり、変形したりすることが防止される。
図2(A)に示されるように、第1及び第2隔壁部材16、18により区画された断面円及び断面円環状の空間を、軸心側から順に第1流体供給路22、第2流体供給路24及び第3流体供給路26とされる。また、円管部12の基端面には、それぞれの流体供給路22、24、26に液体を供給する流体供給配管28、30、32が接続される。
これにより、これらの流体供給配管28、30、32を通して、第1〜第3流体供給路22、24、26には、マイクロ科学装置10の上流側に設置された3個の流体供給源(図示せず)から加圧状態とされた液体L1、不活性液体LN及び液体L2が供給される。
ここで、不活性液体LNは、製作精度の低い第1隔壁部材16内を流れる液体L1の不整流を矯正する液体であり、液体L1、L2に対して不活性である。
このような不活性液体LNは、高粘度であることが好ましく、不整流体の粘度の1〜10倍であることがより好ましく、不整流体の粘度の1〜5倍であることがさらに好ましい。
不活性液体LNの流速は大きいことが好ましく、不整流体の流速の1〜10倍であることがより好ましく、不整流体の流速の1〜5倍であることがさらに好ましい。
上記のような範囲とすることにより、製作精度の低い第1隔壁部材16から供給される液体L1の不整流を、効果的に矯正することができる。
また、円管部12内において、第1隔壁部材16よりも先端側には、流体供給路22、24からそれぞれ供給された液体L1、不活性液体LNが合流し、液体L1の流れを不活性液体LNで矯正するための矯正流路34が形成される。そして、第2隔壁部材18よりも先端側には、矯正流路34、流体供給路26からそれぞれ供給された矯正後の液体(L1+LN)及び液体L2が合流して反応を行う混合・反応流路36が形成される。
ここで、矯正流路34内の出口部で、液体L1の流れの矯正がほぼ完了していることが好ましい。従って、矯正流路34の液体L1、不活性液体LNの流通方向に沿った路長PL(図1参照)は、液体L1の流れの矯正がほぼ完了する長さに設定されることが好ましい。但し、第2隔壁部材18の先端が第1隔壁部材16より短くなるように構成されても、液体LNを液体L1の外周層に安定して流すことができれば、液体L1の不整流を矯正することができる。
これらの液体L1、不活性液体LN、及び液体L2の操作順序としては、液体L2と不整流である液体L1が直接接触しないように流通を開始又は終了することが好ましい。例えば、液体L1、不活性液体LNの供給を先ず開始した後、液体L2の供給を開始することが好ましい。これにより、不整流を形成する液体L1が、液体L2と直接接触することを抑制できる。
図2(A)に示されるように、第1流体供給路22、第2流体供給路24及び第3流体供給路26の先端部には、それぞれ矯正流路34内へ開口する第1流体供給口38、混合・反応流路36内へ開口する第2流体供給口40が形成される。これらの流体供給口38、40は、本来、それぞれ軸心Sを中心とする円軌跡に沿って断面円環状に開口し、互いに同芯円状となるように配設されている。ここで、開口幅W1、W2、W3は、それぞれ流体供給口38、40の開口面積を規定し、この流体供給口38、40の開口面積と液体(L1+LN)、L2の供給量に応じて、流体供給口38、40を通して混合・反応流路36内へ導入される液体L1、L2、LNの初期流速が定まる。
円管部12内における混合・反応流路36よりも先端側の空間には、混合・反応流路36内で液体L1、L2の反応が行われた反応生成液LMが、吐出口14に向かって流れる排出液路が形成される。ここで、反応生成液LMが液体L1、L2の反応により生成される場合には、混合・反応流路36内の出口部で液体L1、L2の反応が完了している必要がある。従って、混合・反応流路36の液体L1、L2の流通方向に沿った路長QL(図1参照)は、液体L1、L2の反応が完了する長さに設定する必要がある。尚、マイクロ科学装置10内には、常に、液体L1、L2及びこれらの反応された反応生成液LMが隙間なく充填され、吐出口14側へ流通しているものとする。
マイクロ科学装置10を構成する部材の材質としては、加工性に優れ、強度が高く、腐食防止性があり、原料流体の流動性を高くするものが好ましい。例えば、金属(鉄、アルミ、ステンレス鋼、チタン、その他の各種金属)、樹脂(フッ素樹脂、アクリル樹脂等)、ガラス(石英等)、セラミックス(シリコン等)などが好ましく使用できる。
マイクロ科学装置10を製作するには、微細加工技術が適用される。適用可能な微細加工技術としては、例えば、X線リソグラフィを用いるLIGA(Roentgen−Lithographie Galvanik Abformung)技術、EPON SU−8(商品名)を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM(Micro Electro Discharge Machining))、Deep RIE(Reactive Ion Etching)によるシリコンの高アスペクト比加工法、Hot Emboss加工法、光造形法、レーザー加工法、イオンビーム加工法、及びダイアモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法等がある。これらの技術を単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。好ましい微細加工技術は、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、及び機械的マイクロ切削加工法である。
要素間や部材間の接合方法は、高温加熱による材料の変質や変形による流路等の破壊を伴わず、寸法精度を保った精密な方法が望ましく、製作材料との関係から固相接合(例えば圧接接合や拡散接合等)や液相接合(例えば、溶接、共晶接合、はんだ付け、接着等)を選択することが好ましい。例えば、材料にシリコンを使用する場合にシリコン同士を接合するシリコン直接接合や、ガラス同士を接合する融接、シリコンとガラスを接合する陽極接合、金属同士を接合する拡散接合等が挙げられる。セラミックスの接合については、金属のようなメカニカルなシール技術以外の接合技術が必要であり、アルミナに対してglass solderなる接合剤をスクリーン印刷で、80μm程度の膜厚に印刷し、圧力をかけずに440〜500℃で熱処理する方法がある。また、新しい技術として、表面活性化接合、水素結合を用いた直接接合、HF(フッ化水素)水溶液を用いた接合等がある。
本実施形態における流体供給手段としては、各種マイクロポンプ、無脈流プランジャーポンプ、シリンジポンプ等を好適に使用することができる。これらのポンプは、第1、第3流体供給路やこれに連通する流路内は全て液体L1、不活性液体LN及び液体L2で満たされ、外部に用意した流体供給手段によって液体全体を駆動する方式であり、第1、第3流体供給路に供給する液体L1、L2の供給圧力、供給流量を、特に無脈流プランジャーポンプ、シリンジポンプの場合は無脈流にて安定に制御することができる。
また、本実施形態に使用される流体としては、液体、気体、液固混相流体、気固混相流体等が挙げられる。
次に、本実施形態のマイクロ科学装置10の作用について、図1及び図3を用いて説明する。図3は、混合・反応流路36内の径方向断面を示す図である。
先ず、流体供給配管28、30、32を通して、第1〜第3流体供給路22、24、26には、マイクロ科学装置10の上流側に設置された3個の流体供給源(図示せず)から加圧状態とされた液体L1、不活性液体LN及び液体L2が供給される。このとき、例えば、液体L2、不活性液体LNの供給を先ず開始した後、液体L1の供給を開始する方法が好ましい。これにより、不整流を形成する液体L1が、液体L2と直接接触することを防止でき、不均一な反応又は混合を抑制できる。
次いで、液体L1は流体供給路22内を流れ、不活性液体LNは流体供給路24内を流れて、液体L1、不活性液体LNは矯正流路34内で合流する。このとき、第1流体供給口38から不整流として矯正流路34内へ流出する液体L1は、液体L1の外周を流れる高粘度及び/又は高速の液体LNの作用を受けて矯正される。
次いで、歪みを矯正された液体(L1+LN)は、第2流体供給口40から混合・反応流路36に供給される。また、液体L2は、流体供給路26内を流れた後、混合・反応流路36に供給される。そして、液体(L1+LN)と液体L2とが混合・反応流路36内で合流する。
このとき、図3に示されるように、軸心側から液体L1、LN、L2が同芯軸多重円筒状に層流を形成し、不活性液体LNを介して、液体L1、L2が相互に拡散し、均一に混合又は反応を行うことができる。
なお、本実施形態においては、液体L1、不活性液体LNの供給を先ず開始した後、液体L2の供給を開始する例で説明したが、液体L1、不活性液体LN、及び液体L2を同時に供給してもよい。
このように、本発明を適用することにより、装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合することができる。
また、本実施形態では、2液を反応させる例について説明したが、2液以上を反応させる場合にも本発明を適用できる。図4は、本発明を適用して、液体L1、L2及びL3の3液を反応させる場合において、混合・反応流路内の径方向断面を説明する図である。
例えば、軸心側から液体L1、L2、L3の順に同芯軸多層流を形成させて反応させる装置において、液体L2が製作精度の低い円筒状の隔壁部材から構成される流路から供給される場合は、図4に示されるように、液体L2と液体L3の間に不活性液体LNを流すようにするとよい。
図5は、第1隔壁部材16の製作精度が低いマイクロ科学装置10の変形例を説明する断面図である。図5に示されるように、第1隔壁部材16の製作精度が低いような場合にも、第2隔壁部材18内に流す不活性液体LNの粘度、密度等の物性や、流速等の操作条件を制御することにより、液体L1の流れを矯正することができる。
[第二実施形態]
本実施形態は、磁性物質を含む液体L1’に磁場を印加して、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合する例である。図6は、本実施形態におけるマイクロ科学装置10’の構成の一例を説明する断面図である。このうち、図6(A)は、マイクロ科学装置10’の合流部付近の拡大断面図であり、図6(B)は、図6(A)のA−A’線断面図である。同図では、第1隔壁部材16の製作精度が低い場合の例について示す。尚、各図において、第一実施形態と同一の部材や機能を有するものは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態は、磁性物質を含む液体L1’に磁場を印加して、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合する例である。図6は、本実施形態におけるマイクロ科学装置10’の構成の一例を説明する断面図である。このうち、図6(A)は、マイクロ科学装置10’の合流部付近の拡大断面図であり、図6(B)は、図6(A)のA−A’線断面図である。同図では、第1隔壁部材16の製作精度が低い場合の例について示す。尚、各図において、第一実施形態と同一の部材や機能を有するものは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図6に示されるように、マイクロ科学装置10’は、主に、液体LNを供給するための第2隔壁部材18を除外し、磁場を印加する磁場印加手段42を外部に設けたこと以外は、第一実施形態とほぼ同様に構成されている。
マイクロ科学装置10’を構成する部材の材質や製造方法については、第一実施形態と同様である。
本実施形態において、液体L1’は、製作精度の低い第1隔壁部材16内から供給される不整流の液体であり、磁性物質44…を含有している。なお、この磁性物質44…は、液体L1’と液体L2に対して不活性である。
磁場印加手段42としては、公知公用の磁場印加手段が使用できるが、具体的には、各種磁場制御(印加)装置、電磁石、各種磁石等が使用できる。
磁性物質44…としては、本実施形態のような液体中に分散した粒子状でも、液体に溶解した状態でもよい。磁性物質44…の具体的な種類としては、微粒酸化鉄(例えば、フェローテック社製EMGシリーズ等)等が使用できる。
次に、本実施形態におけるマイクロ科学装置10’の作用について説明する。
先ず、流体供給配管28、32を通して、第1、第3の流体供給路22、26には、マイクロ科学装置10’の上流側に設置された2個の流体供給源(図示せず)から加圧状態とされた液体L1’及びL2が供給される。
次いで、液体L1’は流体供給路22内を流れた後、第1流体供給口38から混合・反応流路36に供給される。また、液体L2は、流体供給路26内を流れた後、混合・反応流路36に供給される。そして、液体L1’と液体L2とが混合・反応流路36内で合流する。
このとき、第1流体供給口38から歪んだ流れの状態で供給される液体L1’は、液体L1’内に含まれる磁性物質44…が磁場印加手段42の作用を受けて矢印Mの方向に矯正される。
これにより、図7に示されるように、軸心側から液体L1’、L2が同芯軸多重円筒状に層流を形成するようになり、液体L1’、L2が相互に拡散し、混合又は反応する。
このように、本発明を適用することにより、装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合することができる。
[第三実施形態]
本実施形態は、重力場を利用して、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合する例である。図8は、本実施形態におけるマイクロ科学装置10’’の構成の一例を説明する断面図である。同図では、第1隔壁部材16の製作精度が低い場合の例について示す。尚、各図において、第一実施形態と同一の部材や機能を有するものは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態は、重力場を利用して、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合する例である。図8は、本実施形態におけるマイクロ科学装置10’’の構成の一例を説明する断面図である。同図では、第1隔壁部材16の製作精度が低い場合の例について示す。尚、各図において、第一実施形態と同一の部材や機能を有するものは、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図8に示されるように、マイクロ科学装置10’’は、主に、液体LNを供給するための第2隔壁部材18を除外し、マイクロ科学装置10’’を傾けて固定したこと以外は、第一実施形態とほぼ同様に構成されている。
マイクロ科学装置10’’は、第1隔壁部材16内を流れる液体L1の流れの歪みを低減する方向に重力が働くように傾けられて、固定手段46により固定されることが好ましい。図8においては、第1隔壁部材16が円管部12の軸に対して図中右方向に傾いているので、第1隔壁部材16内を流れる液体L1に重力(矢印G)の分力G1が図中左方向に働くようにマイクロ科学装置10’’を固定することが好ましい。
固定手段46は、マイクロ科学装置10’’を所定の角度を傾けて安定に設置できるものであれば、いずれでもよく、例えば、回転可能な板にマイクロ科学装置10’’を固定してもよい。本実施形態では、2つの支持部46a、46bを有する固定手段46の例を示す。
マイクロ科学装置10’’を構成する部材の材質や製造方法については、第一実施形態と同様である。
次に、本実施形態におけるマイクロ科学装置10’’の作用について説明する。
先ず、流体供給配管28、32を通して、第1、第3の流体供給路22、26には、マイクロ科学装置10の上流側に設置された2個の流体供給源(図示せず)から加圧状態とされた液体L1及びL2が供給される。
次いで、液体L1は流体供給路22内を流れた後、第1流体供給口38から混合・反応流路36に供給される。また、液体L2は、流体供給路26内を流れた後、混合・反応流路36に供給される。そして、液体L1と液体L2とが混合・反応流路36内で合流する。
このとき、第1流体供給口38から不整流として流出する液体L1は、重力Gの作用を受けて、液体L2と同軸状に流れる。
これにより、軸心側から液体L1、L2が同芯軸多重円筒状に層流を形成するようになり、液体L1’、L2が相互に拡散又は混合し、反応する。
このように、本発明を適用することにより、装置の製作精度に起因する悪影響を低減し、複数の流体を安定な層流状態で均一に反応又は混合することができる。
以上、本発明に係るマイクロ科学装置の流体操作方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
例えば、各実施形態において、流体は液体である例について説明したが、気体であってもよい。
本発明は、各種混合及び反応装置、各種分析装置等における流体の操作方法に適用可能である。例えば、各種塗料、インクジェット用インク、電子写真用トナー、カラーフィルタ等の顔料微粒子や磁性粒子等の微粒子を製造する微粒子製造装置の流体の操作方法に適用可能である。
10、10’、10’’…マイクロ科学装置、12…円管部、14…吐出口、16…第1隔壁部材、18…第2隔壁部材、22…第1流体供給路、24…第2流体供給路、26…第3流体供給路、28、30、32…流体供給配管、34…矯正流路、36…混合・反応流路、38…第1流体供給口、40…第2流体供給口、42…磁場印加手段、44…磁性物質(粒子)、46…固定手段
Claims (7)
- 複数の流体をそれぞれ同芯軸多層状の供給流路内に流通させた後、1本の微細な混合・反応流路に流通させることにより、混合又は反応させる同芯軸多層流型マイクロ科学装置の流体操作方法において、前記複数の流体のうち、前記混合・反応流路に対して同芯軸状に流れない不整流体の外側に、前記複数の流体とは反応せず且つ前記複数の流体よりも高流速及び/又は高粘度の不活性流体を流すことで、前記不整流体の流れを前記混合・反応流路に対して同芯軸状に流れるように矯正することを特徴とするマイクロ科学装置の流体操作方法。
- 前記不活性流体を前記不整流体に隣接した外側に流して前記不整流体の流れを矯正した後、前記不整流体を含む前記複数の流体同士を多層状に合流させることを特徴とする請求項1のマイクロ科学装置の流体操作方法。
- 前記不活性流体の粘度が、前記不整流体の粘度の1〜10倍であることを特徴とする請求項1又は2のマイクロ科学装置の流体操作方法。
- 前記不活性流体の流速が、前記不整流体の流速の1〜10倍であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1のマイクロ科学装置の流体操作方法。
- 複数の流体をそれぞれ同芯軸多層状の供給流路内に流通させた後、1本の微細な混合・反応流路に流通させることにより、混合又は反応させる同芯軸多層流型マイクロ科学装置の流体操作方法において、前記複数の流体のうち、前記混合・反応流路に対して同芯軸状に流れない不整流体に外力を付与することで、前記不整流体の流れを前記混合・反応流路に対して同芯軸状に流れるように矯正することを特徴とするマイクロ科学装置の流体操作方法。
- 前記外力は、重力であることを特徴とする請求項5のマイクロ科学装置の流体操作方法。
- 前記不整流体が磁性物質を含むと共に、該不整流体に前記外力として磁場を印加することを特徴とする請求項5のマイクロ科学装置の流体操作方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2011125318A1 (ja) * | 2010-04-01 | 2011-10-13 | 日曹エンジニアリング株式会社 | 管型流通式反応装置 |
JP2015514028A (ja) * | 2012-04-06 | 2015-05-18 | ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニVersalis S.P.A. | 溶融材料流れへの不安定添加剤の挿入方法および搬送方法 |
-
2006
- 2006-03-31 JP JP2006100299A patent/JP2007268487A/ja active Pending
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