JP2007262563A - フィルム金属積層体、その製造方法、前記フィルム金属積層体を用いた回路基板、および前記回路基板の製造方法 - Google Patents

フィルム金属積層体、その製造方法、前記フィルム金属積層体を用いた回路基板、および前記回路基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フレキシブル回路基板などに適した。耐屈曲性および密着性に優れるフィルム金属積層体を提供する。
【解決手段】可とう性を有する高分子フィルム上に下地金属層を形成し、その上に上部金属導電層を形成したフィルム金属積層体において、前記下地金属層がリンを10質量%以上含有するニッケル合金からなるフィルム金属積層体。前記Ni−P合金は前記フィルムとの密着性に優れ、かつ密着性向上のための熱処理時に硬度が増加しないため、良好な密着性と耐屈曲性を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、フィルムと金属層との密着性に優れ、かつ良好な耐屈曲性を有するフィルム金属積層体、その製造方法、前記フィルム金属積層体を用いた回路基板、および前記回路基板の製造方法に関する。
フレキシブル回路基板には、耐熱性に優れたポリイミド樹脂フィルム上に金属層(下地金属(Niなど)層/上部金属(Cuなど)導電層)を形成したフィルム金属積層体が用いられていたが、このフィルムは高吸水性のため多湿雰囲気下では寸法精度が低下するという問題があった。
そこで、前記フィルムに代わるものとして、耐熱性に優れ、かつ低吸水性の液晶ポリエステルフィルムが注目されたが、このフィルムは金属層(例えば、Ni層/Cu層)との密着性が劣り、密着性向上のための熱処理を施す(特許文献1)と、Ni下地層の硬度が増加してフィルム金属積層体の耐屈曲性が低下するという問題があった。
特開2004−307980号
このような状況に鑑み、本発明者らは、先ず、液晶ポリエステルフィルムと金属層の密着性について検討し、下地金属層はCuよりNiの方がフィルムとの密着性に優れることを知見した。次に、密着性向上のための熱処理後におけるNi下地層の硬度の増加防止について検討し、下地層のNiにPを所定量含有させることにより、Ni下地層は熱処理後において硬度が増加しなくなり、得られるフィルム金属積層体は良好な密着性と耐屈曲性を有することを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
本発明は、フィルムと金属層との密着性に優れ、かつ良好な耐屈曲性を有するフィルム金属積層体、その製造方法、前記フィルム金属積層体を用いた回路基板、および前記回路基板の製造方法の提供を目的とする。
請求項1記載発明は、可とう性を有する高分子フィルム上に下地金属層を形成し、その上に上部金属導電層を形成したフィルム金属積層体において、前記下地金属層がリンを10質量%以上含有するニッケル合金からなることを特徴とするフィルム金属積層体である。
請求項2記載発明は、前記下地金属層の平均厚みが0.03μm以上、0.3μm以下であることを特徴とする請求項1記載のフィルム金属積層体である。
請求項3記載発明は、 前記下地金属層の面積抵抗率が10Ω/□以上、1KΩ/□以下であることを特徴とする請求項1または2記載のフィルム金属積層体である。
請求項4記載発明は、前記可とう性を有する高分子フィルムが、光学的に異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマーからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィルム金属積層体である。
請求項5記載発明は、可とう性を有する高分子フィルム上に下地金属層を形成し、その上に上部金属導電層を形成するフィルム金属積層体の製造方法において、前記下地金属層がリンを10質量%以上含有するニッケル合金からなり、前記上部金属導電層が銅からなり、前記下地金属層形成後または上部金属導電層形成後に150℃〜310℃の温度で熱処理を行うことを特徴とするフィルム金属積層体の製造方法である。
請求項6記載発明は、前記熱処理を行うときの下地金属層と上部金属導電層の厚さの合計が2μm以下であることを特徴とする請求項5記載のフィルム金属積層体の製造方法である。
請求項7記載発明は、前記熱処理を行った後、さらに電気めっきによって上部金属導電層を厚くした後、再度150〜310℃の温度で熱処理を行うことを特徴とする請求項5または6記載のフィルム金属積層体の製造方法である。
請求項8記載発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルム金属積層体の上部導電金属層が選択除去されて回路が形成され、下地金属層が抵抗として用いられていることを特徴とする回路基板である。
請求項9記載発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルム金属積層体の上部導電金属層および下地金属層を選択除去して回路を形成する回路基板の製造方法において、前記上部金属導電層が銅からなり、前記上部金属導電層をアンモニアおよび銅を含むアルカリ溶液によりエッチング除去し、前記下地金属層を塩化銅を含む溶液を用いてエッチング除去することを特徴とする回路基板の製造方法である。
本発明のフィルム金属積層体は、可とう性を有する高分子フィルム上にPを10質量%以上含有するNi合金の下地金属層を形成し、その上にCuなどの上部金属導電層を形成したもので、前記Ni−P合金は前記フィルムとの密着性に優れ、かつ下地金属層は密着性向上のための熱処理時に硬度が増加しないため、良好な密着性と耐屈曲性を有する。
前記下地金属層の厚みを0.03μm〜0.3μmに規定することにより、高分子フィルムと金属層との間の密着性、および耐屈曲性が向上する。
前記下地金属層の面積抵抗率を10Ω/□以上、1KΩ/□以下に規定することにより、特に優れた密着性と耐屈曲性が得られる。
高分子フィルムに、光学的に異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマーを用いると、前記熱可塑性ポリマーは高耐熱性のため、密着性向上のための熱処理時にフィルムが劣化することがなく、高品質のフィルム金属積層体が得られる。
請求項5記載発明のフィルム金属積層体の製造方法は、下地金属層形成後または上部金属導電層形成後に150℃〜310℃の温度で熱処理を行うので、得られるフィルム金属積層体は、フィルムと金属層との密着性に優れる。
請求項6記載発明のフィルム金属積層体の製造方法は、最初に熱処理を行うときの金属層の厚みを2ミクロン以下と薄くするため、金属層の残留応力を小さくできるため、ロール状態で製造する際にも、めっきのフクレ、およびフィルムと金属の剥がれを防止できる。
請求項7記載発明のフィルム金属積層体の製造方法は、熱処理後に電気めっきによって上部導電層を厚くして、再度150〜310℃で熱処理を行うので、電気めっき層の残留応力を低減できるため、エッチング後のフィルムの反りを小さくできる。
請求項8記載発明の回路基板は、フィルム金属積層体の上部導電金属層が選択除去されて回路が形成され、下地金属層が抵抗として用いられているので、抵抗器を別途設ける必要がなく、低コストでコンパクトである。
請求項9記載発明の回路基板の製造方法は、上部金属導電層(銅)をアンモニアおよび銅を含むアルカリ溶液によりエッチング除去し、前記下地金属層を塩化銅を含む溶液を用いてエッチング除去するので、回路基板を高精度に、かつ容易に製造できる。
請求項1記載発明のフィルム金属積層体は、可とう性を有する高分子フィルム上に下地金属層としてPを10質量%以上含むNi合金層を形成することにより、密着性向上のための熱処理後におけるNi下地層の硬度の増加を抑制したものなので、密着性と耐屈曲性に優れる。
本発明において、NiにPを含有させる理由は、NiにPを含有させると析出相の一部にアモルファス相が出現して、下地金属層の残留応力が低減し、それにより上部金属層との応力バランスが改善され、その結果、密着性向上のための熱処理時における下地金属層の硬度増加が防止されるためである。
本発明において、Pの含有量を10質量%以上に規定する理由は、10質量%未満では前記アモルファス相が十分に出現せず、その効果が得られないためである。特に望ましいP含有量は11質量%以上である。またPの含有量を多くしてもその効果が飽和するので、上限は17質量%とするのが望ましい。
下地金属層の厚み(平均厚み)は、あまり薄いと下地金属層に穴があいてフィルムとの密着性が低下する。また厚すぎるとフィルム金属積層体の可撓性が低下する。従って下地金属層の平均厚みは0.03〜0.3μmが望ましい。下地金属層の厚みが、面積抵抗率で10Ω/□〜1000Ω/□のとき、フィルム金属積層体の密着性および耐屈曲性が最も向上する。
下地金属層上に、銅などの上部金属導電層を直接電気めっきするのは、電流密度を上げることができないため密着性の良いめっき層が得られない。従って、銅を薄く(2μm以下)無電解めっきした後、銅を厚く電気めっきする方法が推奨される。
高分子フィルムと下地金属層の密着強度は熱処理により向上できる。
めっき後のフィルム金属積層体をロール状に巻き取る場合は、下地金属層または上部金属導電層の無電解めっき後に熱処理を施してから巻き取るようにすると、巻き取り時の金属層の剥がれが防止できる。この場合の下地金属層と上部金属導電層(銅など)を合わせた厚みは生産性を考慮して2μm以下が望ましい。さらに好ましくは、1μm以下が好適である。金属層が薄ければ、熱処理工程に至るまでのめっきのフクレ、および金属層とフィルムとの剥離を防止できる。上部金属導電層は、熱処理後、必要に応じ、電気めっきして所定厚みにするのが良い。なお、めっきによる残留応力を開放するため、電気めっき後に再度熱処理を行うと、回路形成時のエッチングにおいてフィルムの反りを低減できる。
密着性向上のための熱処理温度は、150℃未満では密着性が十分向上せず、310℃を超えるとアモルファス相が結晶化してフィルム金属積層体の耐屈曲性が低下する虞がある。従って、150℃〜310℃、特には200℃〜250℃が望ましい。
本発明において、可とう性を有する高分子フィルムには、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムなどが適用できる。中でも、ポリエステルナフタレート(PEN)はポリエステルテレフタラート(PET)よりも耐熱性が高く好適である。
特に光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー、いわゆる熱可塑性液晶ポリマーは、耐熱性が300℃前後と高く、熱処理温度に十分耐えるので最適である。耐熱性は若干劣るが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリマーも熱可塑性樹脂として好適である。前記高分子フィルムは、いずれも低吸水性なので湿式めっきに対応できる。
本発明において、フィルム表面を粗化しておくと下地金属層とフィルムとの密着性が向上する。粗化の程度は、最大粗さRzが0.3以上、2.0以下、平均粗さRaが0.1以上、0.7以下が望ましい。
フィルム表面を粗化する方法はフィルムをエッチング液に浸す方法が簡便で望ましい。エッチング液には強アルカリ溶液、過マンガン酸塩溶液、クロム酸塩溶液などが用いられる。熱可塑性液晶ポリマーフィルムの場合は強アルカリ溶液を用いるのが有効である。エッチングが困難なフィルムにはサンドブラストなどの機械的研磨法が有効である。
本発明のフィルム金属積層体を回路基板として用いる場合、導電回路はフォトレジストを用いてエッチング(除去)したい領域の金属層を露出させ、エッチング液をスプレー噴射するなどして、不要な領域の金属層をエッチングで除去して形成する。フォトレジストにはアルカリ溶液に溶解しないゴム系のフォトレジストを用いるのが望ましい。
本発明のフィルム金属積層体の金属層は、下地金属層と上部金属導電層から構成されるので、導電回路は、通常その両方をエッチング除去して形成する。その場合のエッチング液は塩化第二銅溶液が好適である。特にP濃度の高いNi−P合金をエッチングする場合はリードフレーム等で使用する塩化鉄溶液では十分にエッチングされない。塩化第二銅溶液に塩酸を適宜加えることでエッチング速度が増し、サイドエッチングが減り所定寸法の回路幅を高精度に形成できる。
金属層は、先に上部金属導電層(銅)を塩化第二鉄溶液を用いて選択除去し、その後、下地金属層(Ni−P合金層)を塩化第二銅を用いて除去することもできる。
本発明のフィルム金属積層体はNi−P合金の下地金属層が高抵抗値なので、抵抗器として使用できる。その場合、上部金属導電層のみをエッチングにより選択除去し、次いで下地金属層を、抵抗とする部分を残してエッチングにより選択除去する。この方法によれば回路基板中に抵抗器を内蔵した(埋め込んだ)フィルム金属積層体が得られる。この場合チップ抵抗器などが不要になり基板サイズを小型化できる。
上部金属導電層のみのエッチングには、塩化第二鉄溶液を用いても良いが、アンモニアと銅を含むアルカリ溶液が比較的下地金属層を溶解しないため、良好な抵抗値が得られ、しかもサイドエッチングが少なく極めて寸法精度の良いエッチングが可能である。前記アルカリ溶液としては、アンモニア銅錯塩(銅濃度として)135〜145g/L、塩化アンモニウム100〜250g/L、アンモニア10〜150g/L、pH8.5(アンモニアでpH調整)の溶液が挙げられる。
本発明のフィルム金属積層体は、片面のみに金属層を形成して片面フレキシブル基板としても、両面に金属層を形成して両面フレキシブル基板としても使用できる。また、片面のみに金属層を形成した積層体を複数枚重ね合わせ、多層基板として使用することもできる。
高分子フィルムにクラレ社製のVecstar(厚み50μm)を用い、このフィルムをアルカリ溶液に浸して表面に凹凸(表面粗さRz=0.8、Ra=0.2)を形成し、次いでコンディショナー処理、Ni−P合金の無電解めっき、Cuの無電解めっき、熱処理、Cuの電気めっきの各工程をこの順に施してフィルム金属積層体を製造した。工程ごとに水洗、乾燥を行った。金属層(下地金属層+上部金属導電層)はフィルムの両面に形成した。
コンディショナー処理は奥野製薬社製のOPC−350コンディショナーで表面を清浄化し、パラジウムを含む触媒付与液として奥野製薬社製のOPC−80キャタリスト、活性化剤としてOPC−500アクセラレーターを用いた。
Ni−10質量%〜14質量%P合金の無電解めっきには、奥野製薬社製のトップニコロンNAC浴を用いた。めっき浴のpHは硫酸またはアンモニア水を用いて3.5〜5.5に調整し、浴温は70℃〜85℃に調整した。めっき厚みはめっき浴中への浸せき時間により0.02μm〜0.65μmの範囲で種々に変化させた。Ni−P合金のP濃度はめっき浴のpHおよび温度を調節して10質量%〜18質量%の範囲で変化させた。
P濃度が14%超20%以下の無電解めっきには下記の自家浴を用いた。P濃度はめっき浴のpH、温度、Niと次亜リン酸の濃度比、鉛イオン濃度を調節して変化させた。
自家浴:硫酸ニッケル20〜30g/L、次亜リン酸ナトリウム10〜80g/L、クエン酸ナトリウム15g/L、グリシン20g/L、硝酸鉛2ppm〜20ppm、pH3.0〜5.5(希硫酸およびアンモニア水で調整)、浴温50℃〜85℃。
ここで、下地金属層の電気的特性として面積抵抗率を、低抵抗率計を用いてプローブを当て測定した。
Cuの無電解めっきは、下地金属層(Ni−P合金層)の表面を塩化パラジウム0.1g/Lと塩酸10mL/Lを含む触媒に浸漬して活性化した後、ローム・アンド・ハース社製の銅めっき浴キューポシット880を用いて行った。めっき厚みは0.5μmとして下地金属層全体を覆った。
フィルムと下地金属層の密着性向上のための熱処理は、サンプルを窒素雰囲気中で、220℃1時間加熱して行った。
その後、Cuを金属層(下地金属層+上部金属導電層)の厚みが18μmになるように硫酸銅浴を用いて電気めっきした。
得られた各々のフィルム金属積層体について、密着性および耐屈曲性を調べた。
密着性は、JIS C5016記載の機械的性能試験(90°方向引き剥がし方法)に基づいて金属層の引き剥がし強さ(ピール強度)を測定して評価した。
耐屈曲性は、フィルム両面の金属層にライン/スペース=1mm/1mmとなるように回路をエッチングにより形成してサンプルとし、カバー材は用いずに、MIT耐折試験法に基づき、JIS C6471記載の試験方法に準拠して、気温25℃、湿度50%の環境下で、荷重500gf、折り曲げ速度175rpm、折り曲げ角度±135°、折り曲げ半径0.8mmとし、破断するまでの折り曲げ回数を求めて評価した。
下地金属層(Ni−P合金)のP濃度はケイ光X線分析装置(セイコープレシジョン社製のSEA5120A)を用いてNiとPの質量を測定して求めた。下地金属層の厚みは前記質量測定値を厚みに換算して求めた。すなわち、計測した単位面積あたりの付着重量(PとNiの合計)を密度(近似的にNiの密度8.90として)で割った値を下地金属層の膜厚とした。
上部金属導電層(Cu)の厚みはケイ光X線膜厚計SFT−3200を用いて測定した。
下地金属層(Ni−P合金)の電気的特性(面積抵抗率)は低抵抗率計(三菱化学社製のロレスターGP)を用い四短針プローブにより測定した。面積抵抗率は下地金属層のパターンをエッチングにより切出して四端子法で測定することもできる。
[比較例1]
下地金属層のNi−P合金のP濃度を10質量%(以下適宜%と略記する。)未満とした他は、実施例1と同じ方法によりフィルム金属積層体を製造し、実施例1と同じ調査を行った。
なお、P濃度2%〜4%の下地金属層は奥野製薬社製の化学ニッケルEXCを用いて、P濃度4%〜6%の下地金属層はメルテックス社製のメルプレートNI−2250を用いて、P濃度6%〜8%の下地金属層はメルテックス社のメルプレートNI−871を用いて、P濃度8%以上10%以下の下地金属層はメルテックス社製のメルプレートNI−6575を用いて、それぞれ無電解めっきした。
実施例1および比較例1の試験結果を表1に示す。表1には面積抵抗率を併記した。
Figure 2007262563
表1から明らかなように、本発明例(実施例1)は、いずれもピール強度が0.6kN/m以上で密着性に優れ、また破断までの折り曲げ回数が150回以上で耐屈曲性にも優れた。特に下地金属層のめっき厚が0.03μm以上のもの(No.1〜15、17、19)はピール強度が0.8kN/mと高かった。さらにP濃度が11〜17%、下地金属層の厚みが0.03〜0.30μmのもの(No.3〜12)は破断までの折り曲げ回数が200回以上となり良好な耐屈曲性を示した。その時の面積抵抗率は10Ω/□以上、1kΩ/□の範囲にあった。
一方、比較例21〜31はP濃度が10%未満のため破断までの折り曲げ回数が120回以下で耐屈曲性が劣った。
高分子フィルムにジャパンゴアテックス社製のBIAC BC 50μm厚を用い、下地金属層のP濃度を11.3%、めっき厚みを0.20μmとし、熱処理温度を150℃〜310℃とした他は、実施例1と同じ方法によりフィルム金属積層体を製造し、実施例1と同じ調査を行った。
[比較例2]
熱処理温度を150℃未満または310℃超とした他は、実施例2と同じ方法によりフィルム金属積層体を製造し、実施例2と同じ調査を行った。
実施例2および比較例2の試験結果を表2に示す。
Figure 2007262563
表2から明らかなように、本発明例(実施例2)はいずれもピール強度が0.6kN/m以上、破断までの折り曲げ回数が100回以上で、良好な密着性および耐屈曲性を示した。中でもNo.34〜36はピール強度が0.8kN/m以上、破断までの折り曲げ回数が180回以上であり、200〜250℃の熱処理温度が特に好ましいことが判る。
一方、比較例2のNo.41〜45は熱処理温度が低いため十分なピール強度が得られず、比較例46、47は熱処理温度が高いためアモルファス相が消失して十分な耐屈曲性が得られなかった。
なお、めっき液は実施例1、2で使用したものに限定されることはなく、適宜市販のめっき浴を用いても、或いは試薬を混合した自家浴を用いても良い。また高分子フィルムも熱可塑性液晶ポリマーに限定されることはなく、PET、PEN、PEEKなどの樹脂を用いても良い。
高分子フィルムにクラレ社製のVecstar(厚み50μm)のロール品(幅625mm)を用い、実施例と同様に、このフィルムをアルカリ溶液に浸して表面に凹凸を形成し、ニッケルめっきを行った。下地金属層のP濃度を11.3%とし、ニッケルめっき後ただちに、上部金属層の一部として、銅を無電解めっきにより所定厚形成した。本実施例では、ロールフィルムを順にめっき液に浸していき、無電解銅めっき後、温風で水分を飛ばしたのち、フィルムをロールに巻き取った。ニッケルめっきに浸す時間と無電解銅めっきに浸す時間を変化させ、下地金属層と上部金属導電層の一部である無電解銅めっき層を合わせた金属層の厚みを変化させた。
その後、ロールフィルムの表面を観察し、めっきのフクレの数、金属層とフィルムとの剥がれがないかを観察した。表3に、熱処理前の金属層厚とフクレ、および剥がれの有無を示す。
Figure 2007262563
表3から明らかなように、金属層厚が0.1μm以上2.0μm以下(実施例3のNo.48〜59)であれば、フクレは少なく、剥がれも生じない。好ましくは、0.1μm以上1.0μmであればフクレは全く発生しなかった。一方、比較例3では、金属層厚が0.1μm以下(No.60〜62)であったため、フクレ、剥がれは生じないが、抵抗値が大きくその後の工程で電気めっきが行えず、上部金属導電層の残部を形成できなかった。金属層厚が2.0μm以上と厚かった(No.63〜68)場合、めっきのフクレ、または、剥がれが発生した。
熱処理を行うまではフィルムと金属層の密着性が弱いため、金属層厚が厚いとめっき応力によりフクレが発生し、ロールの搬送時の応力で剥がれが生じやすい。熱処理前の金属層厚は0.1〜2.0μm厚が適切である。
高分子フィルムにジャパンゴアテックス社製のBIAC BC 50μm厚を用い、下地金属層のP濃度を11.3%、めっき厚みを0.20μmとし、上部金属導電層の一部として無電解銅めっきとして0.50μmを行った。その後、窒素雰囲気中において150〜310℃の各温度で熱処理(熱処理1)を行ったのち、電気銅めっきを行い、上部金属導電層の残部を形成した。上部金属導電層を形成した後、再度、窒素雰囲気中において150〜310℃の各温度で熱処理(熱処理2)を行った。各条件において、フィルムの両面において金属層を形成した。
次に、200mm×200mmサイズを切りだし、両面に形成されている金属層の片面のみを、エッチングで除去した。片面のみをエッチングした状態で、平坦面に置き、四隅におけるフィルムの反り量を測定した。表4に片面エッチング後の反り量を示す。
Figure 2007262563
表4から明らかなように、上部電極導電層の残部を形成したのち、熱処理を行ったもの(No.69〜75)は、電気メッキ時の金属の残留応力が開放されて、いずれも、反り量が10mm以下と小さかった。
一方、比較例として、上部電極導電層の残部を形成したのち、熱処理を行わないもの(No.76〜82)は、片面エッチング量が20mm以上と大きかった。
実施例1、2で製造したフィルム金属積層体を用いて回路基板を製造し、実施例1と同じ調査を行った。導電回路はフォトレジストを用いて不必要な領域の金属層を露出させ、エッチング液をスプレー噴射して除去して形成した。エッチング液には塩化第二銅溶液50g〜400g/Lに対し、36%濃度塩酸50〜300mL/Lを加えた溶液(40℃〜60℃)を用いた。フォトレジストにはゴム系のフォトレジスト(東京応化社製のソルベントフォトレジスト EPPRA)を用いた。
得られた各々の回路基板はいずれもフィルムと金属層の密着性に優れ、また耐屈曲性にも優れるものであった。

Claims (9)

  1. 可とう性を有する高分子フィルム上に下地金属層を形成し、その上に上部金属導電層を形成したフィルム金属積層体において、前記下地金属層がリンを10質量%以上含有するニッケル合金からなることを特徴とするフィルム金属積層体。
  2. 前記下地金属層の平均厚みが0.03μm以上、0.3μm以下であることを特徴とする請求項1記載のフィルム金属積層体。
  3. 前記下地金属層の面積抵抗率が10Ω/□以上、1KΩ/□以下であることを特徴とする請求項1または2記載のフィルム金属積層体。
  4. 前記可とう性を有する高分子フィルムが、光学的に異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマーからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィルム金属積層体。
  5. 可とう性を有する高分子フィルム上に下地金属層を形成し、その上に上部金属導電層を形成するフィルム金属積層体の製造方法において、前記下地金属層がリンを10質量%以上含有するニッケル合金であり、前記上部金属導電層が銅からなり、下地金属層形成後または上部金属導電層の少なくとも一部を形成後に、150℃〜310℃の温度で熱処理を行うことを特徴とするフィルム金属積層体の製造方法。
  6. 前記熱処理を行うときの下地金属層と上部金属導電層の厚さの合計が2μm以下であることを特徴とする請求項5記載のフィルム金属積層体の製造方法。
  7. 前記熱処理を行った後、さらに電気めっきによって上部金属導電層を厚くした後、再度150〜310℃の温度で熱処理を行うことを特徴とする請求項5または6記載のフィルム金属積層体の製造方法。
  8. 請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルム金属積層体の上部導電金属層が選択除去されて回路が形成され、下地金属層が抵抗として用いられていることを特徴とする回路基板。
  9. 請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルム金属積層体の上部導電金属層および下地金属層を選択除去して回路を形成する回路基板の製造方法において、前記上部金属導電層が銅からなり、前記上部金属導電層をアンモニアおよび銅を含むアルカリ溶液によりエッチング除去し、前記下地金属層を塩化銅を含む溶液を用いてエッチング除去することを特徴とする回路基板の製造方法。
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