JP2007262103A - 変形性関節症の治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】変形関節症治療剤を提供する。
【解決手段】ヒアルロナンを有効成分として含有する薬剤である。ヒアルロナンとしては-D-グルクロン酸-β-1,3-D-N-アセチルグルコサミン-β-1,4-を1単位とし、これを2個含む4糖(HA4)であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヒアルロナンを有効成分とする変形性関節症治療剤に関する。
ヒアルロナンは、D−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンとの2糖繰り返し単位から構成されている長鎖の多糖であり、一方、オリゴ糖も知られている。ヒアルロナンは鶏冠、さい体、皮膚、関節液などの生体組織からの抽出液、またはストレプトコッカス属の細菌を用いる発酵法などにより製造され、毒性学的および免疫学的作用が存在しないため、薬剤や化粧品として利用されており、例えばヒアルロナンの関節内注射による関節炎の治療がよく知られている。以下の説明において、4糖のヒアルロナンをHA4と記載する。
HA4には、臓器保存、肝障害および胃潰瘍に対する治療・抑制効果があることが報告されている(特許文献1参照)。また、HA4には、ストレス蛋白発現増強作用および細胞死抑制作用があることが知られている(非特許文献1参照)。
一方、変形性関節症は、慢性の関節炎を伴う関節疾患で、関節の構成要素の退行変性により、軟骨の破壊と骨、軟骨の増殖性変化を来たす疾患である。また、関節炎(滑膜炎)が上記変化により二次的(続発性)に発生する。初期には痛みは関節を使いすぎた後に生じ、安静でおさまる。進行すると軽い運動や安静時にも痛みを来たし、夜間痛もよく見られる。関節を強く曲げ伸ばしたり、運動時コツコツ音がしたり、関節炎で関節が腫れ関節液が貯留することもある。
原因としては、関節構成要素の退行変性(年齢による変化)を基盤として遺伝的要因、加令、肥満、関節不安性症、繰り返しの亜脱臼・脱臼、労働、スポーツなどによる関節への負荷等がその進行に関与している。
治療としては、初期には、抗炎症薬や痛み止めの薬を服用したり、痛み止めの入った湿布剤やテープなどを塗ったりするとおさまる。膝では大腿四頭筋力の強化訓練が有効である。股関節では外転筋力訓練(横になり足を上に挙上する)が有効である。膝や股関節の変形性関節症では杖の使用も関節への負担がへり有効である。関節内への関節保護剤の注入も有効である。関節内へのステロイドの注入療法は、乱用すると関節破壊を強めることもあり注意を要する。痛みや変形が強い場合、膝や股関節では骨切り術や人工関節などの手術の適応となる。
WO2002/004471 Xu H, Ito T, Tawada A, Maeda H, Yamanokuchi H, Isahara K, Yoshida K, Uchiyama Y, Asari A. Effect of hyaluronan oligosaccharides on the expression of heat shock protein 72. J Biol Chem. 2002 10;277(19):17308-14.
本発明は、変形性関節症治療剤を提供することを目的とする。
上述した目的を達成した本発明に係る変形性関節症治療剤は、ヒアルロナンを有効成分として含有する。
本発明に係る薬剤には、ヒアルロナンを有効成分とするものであるから、比較的安価にかつ容易に大量生産できる利点がある。また、ヒアルロナンは毒性や抗原性がほとんどないこと、生体が元来有している治療作用や疾患の防止作用を増強することから副作用の極めて少ない治療剤として期待される。このように、本発明によれば、変形性関節症に有効な新規な薬剤を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の説明において、本発明に係る治療剤を単に薬剤と称する。
本発明に係る薬剤に含まれるヒアルロナンとしては、基本的にはβ−D−グルクロン酸の1位とβ−D−N−アセチルグルコサミンの3位とが結合した2糖単位を少なくとも1個含む2糖以上のものでかつβ−D−グルクロン酸とβ−D−N−アセチルグルコサミンとから基本的に構成されるものであれば、2糖単位が1個または複数個結合したものにそれらの要素が結合した糖であってもよく、またこれらの誘導体、例えば、アシル基等の加水分解性保護基を有したもの等も使用し得る。該糖は不飽和糖であってもよく、不飽和糖としては、非還元末端糖、通常、グルクロン酸の4,5位炭素間が不飽和のもの等が挙げられる。本発明で使用するヒアルロナンとしては、具体的には動物等の天然物から抽出されたもの、微生物を培養して得られたもの、化学的もしくは酵素的に合成されたものなどいずれも使用することができる。例えば鶏冠、さい体、皮膚、関節液などの生体組織から公知の抽出法と精製法によって得ることができる。またストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法によっても製造できる。
本発明においては、ヒアルロナンオリゴ糖もヒアルロナンに包含され、上記2糖単位1個からなる2糖およびその誘導体のような低分子量のヒアルロナンから、重量平均分子量400万程度の高分子量のヒアルロナンまで使用することができる。好ましくは組織における浸透性などの点で優れる重量平均分子量380程度〜900,000程度のヒアルロナンが挙げられ、より好ましくは2〜20糖程度のヒアルロナンを挙げることができる。
ヒアルロナンのうち分子量の低いものは、具体的には、酵素分解法、アルカリ分解法、加熱処理法、超音波処理法(Biochem., 33(1994)p6503-6507)等の公知の方法によってヒアルロナンを低分子化する方法、化学的もしくは酵素的に合成する方法(Glycoconjugate J., (1993)p435-439、WO93/20827) などで製造することが好ましい。例えば酵素分解法としては、ヒアルロナン分解酵素(ヒアルロニダーゼ(睾丸由来)、ヒアルロニダーゼ(Streptomyces由来)、ヒアルロニダーゼSDなど)、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼACIII 、コンドロイチナーゼABCなどのヒアルロナンを分解する酵素をヒアルロナンに作用させてヒアルロナンオリゴ糖を生成する方法(新生化学実験講座「糖質II−プロテオグリカンとグリコサミノグリカン−」p244-248、1991年発行、東京化学同人 参照)などが挙げられる。
また、アルカリ分解法としては、例えばヒアルロナンの溶液に1N程度の水酸化ナトリウム等の塩基を加え、数時間加温して、低分子化させた後、塩酸等の酸を加えて中和して、低分子量のヒアルロナンを得る方法などが挙げられる。本発明で用いるヒアルロナンは、塩の形態を包含し、製剤上の必要に応じて、その薬学上許容できる塩を用いることができる。例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、トリ(n−ブチル)アミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、アミノ酸塩等のアミン塩などであることができる。
本発明の薬剤は、ある分子量のヒアルロナン単独又は種々の分子量のヒアルロナンを組み合わせたものなど特に限定することなく使用できる。本発明の薬剤は、ヒアルロナンを有効成分とするものであり、その有効量をヒトを含む哺乳動物に投与することによって生体に悪影響を与えることなく変形性関節症を改善することができる。
本発明の薬剤は、ヒアルロナン又はその塩を、そのまままたは必要に応じて担体、賦形剤、その他の添加物と共に、経口的あるいは非経口的に投与(関節内投与、静脈内、筋肉内、皮下などの組織内投与(注射)、経腸投与、経皮投与など)するための医薬品として、任意の剤形に製剤化することが可能であり、任意の投与方法で患者に投与される。特に、本発明に係る薬剤は、経口製剤とすることが好ましい。
経口製剤としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等の固形製剤;シロップ剤、エリキシル剤、乳剤等の液状製剤を挙げることができる。散剤は、例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水ケイ酸等の賦形剤と混合して得ることができる。顆粒剤は、上記賦形剤のほか、必要に応じ、例えば白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤や、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の結合剤や、カルボキシメチルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤をさらに加え、湿式又は乾式で造粒して得ることができる。錠剤は、上記散剤又は顆粒剤をそのまま、或いはステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤を加えて打錠して得ることができる。また、上記錠剤又は顆粒剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタアクリル酸メチルコポリマー等の腸溶性基剤で被覆し、或いはエチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油等で被覆し、これらを腸溶性或いは持続性製剤にすることができる。硬カプセル剤は、上記散剤又は顆粒剤を硬カプセルに充填して得ることができる。また軟カプセル剤は、ヒアルロナン又はその塩を、グリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油等に混合し、これをゼラチン膜で被覆して得ることができる。シロップ剤は、白糖、ソルビトール、グルセリン等の甘味剤とヒアルロナン又はその塩とを、水に溶解して得ることができる。また、甘味剤及び水のほかに、精油、エタノール等を加えてエリキシル剤とするか、或いはアラビアゴム、トラガカント、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム等を加えて乳剤又は懸濁剤にすることができる。またこれらの液状製剤には必要に応じ、矯味剤、着色剤、保存剤等を加えることができる。
非経口製剤としては、注射剤、直腸投与剤、ペッサリー、皮膚外用剤、吸入剤、エアゾール剤、点眼剤等を挙げることができる。注射剤は、ヒアルロナン又はその塩に塩酸、水酸化ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のpH調節剤;塩化ナトリウムウム、ブドウ糖等の等張化剤;及び注射用蒸留水を加え、滅菌濾過した後、アンプルに充填して得ることができる。また、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチン等を加えて真空凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤とすることができる。またヒアルロナン又はその塩にレシチン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の乳化剤を加えた後、水中で乳化された注射用乳剤とすることもできる。
直腸投与剤は、ヒアルロナン又はその塩にカカオ脂肪酸のモノ、ジ又はトリグリセリド、ポリエチレングリコール等の坐剤用基剤を加えた後、加温して溶解し、これを型に流し込んで冷却するか、或いはヒアルロナン又はその塩をポリエチレングリコール、大豆油等に混合した後、ゼラチン膜で被覆して得ることができる。皮膚外用剤は、ヒアルロナン又はその塩に、白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコール等を加え、必要に応じて加温し、混練して得ることができる。テープ剤は、ヒアルロナン又はその塩を、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体等の粘着剤と混練し、これを不織布等に展延して得ることができる。吸入剤は、例えば薬学的に許容される不活性ガス等の噴射剤に、ヒアルロナン又はその塩を溶解又は分散し、これを耐圧容器に充填して得ることができる。
(投与方法)本発明のヒアルロナンを有効成分とする薬剤の投与方法は、特に限定されないが、静脈内投与、経口投与および関節内投与を挙げることができる。
(投与量)投与量は、対象とする疾患、患者の年令、健康状態、体重等に応じ適宜決定するが、一般には0.05〜50mg/kg を1日1回あるはそれ以上に分けて投与する。
(毒性)本発明で使用するヒアルロナンは、医薬としての生物活性を示す投与量において細胞毒性はほとんどもしくは全く認められなかった。
以下、本発明に係る薬剤を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例では、変形性関節症を自然発症するC57BL/6マウスにHA4を投与し、その効果を検討した。
変形性関節症モデル動物
20週齢の雄性C57BL/6マウスを日本チャールスリバーより購入し、変形性関節症を発症した個体を使用した。群構成は、陰性対照(生理食塩水)群及びHA4(100mg/10ml/kg)経口投与群とした。
被検物質の投与
本実施例では、10mg/mlのHA4を調整した。具体的に、HA4は、Tawadaらの方法(Tawada A, Masa T, Oonuki Y, Watanabe A, Matsuzaki Y, Asari A. Large-scale preparation, purification, and characterization of hyaluronan oligosaccharides from 4-mers to 52-mers. Glycobiology. 2002; 12(7):421-6.)により調製し、生理食塩水で濃度を調節した。また、対照としては生理食塩水(生食)を調整した。
本実施例では、変形関節症を発症したマウスに、経口用ゾンデを用いて1日1回、2週間、被検物質または生理食塩水を経口投与した。
肉眼所見の実施
変形性関節症の治癒効果を肉眼にて判断した。具体的には、各群に属する全ての個体について、膝関節軟骨表面(脛骨および大腿骨)に墨汁を塗布後、ガーゼで拭き取り、墨汁の障害部位に残存する程度を以下のようにブラインドで肉眼的に5段階評価した(表1)。なお、本評価方法については、Chang DG, Iverson EP, Schinagl RM, Sonoda M, Amiel D, Coutts RD, Sah RL. Quantitation and localization of cartilage degeneration following the induction of osteoarthritis in the rabbit knee. Osteoarthritis Cartilage. 1997 Sep;5(5):357-72.参照。
Figure 2007262103
結果
変形性関節症の肉眼所見の結果を表2に示す。
Figure 2007262103
本実施例の結果、HA4投与群では、変形性関節症の治療効果を確認することができた。この結果から、ヒアルロナンを有効成分として含有する薬剤が変形関節症を抑制することが実証された。

Claims (3)

  1. ヒアルロナンを有効成分とする変形性関節症治療剤。
  2. 上記ヒアルロナンは、-D-グルクロン酸-β-1,3-D-N-アセチルグルコサミン-β-1,4-を1単位とし、これを2個含む4糖であることを特徴とする請求項1記載の変形性関節症治療剤。
  3. 経口投与剤であることを特徴とする請求項1記載の変形性関節症治療剤。
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