JP2007261344A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 減速機の減速比を最適に制御してアシストモータのモータ慣性による操舵フィーリングの低下を抑制する。
【解決手段】 減速比の変更可能な減速機を介して、アシストモータの出力トルクを操舵機構に伝達するようにする。電子制御装置は、アシスト制御ルーチンを実行し、目標アシストトルク値Tout*とアシストモータの発生可能な最大トルク値Tmmaxとに基づいて、アシストモータが操舵機構に目標アシストトルクTout*を付与可能な範囲内において、常に減速機の目標減速比G*を最小の減速比に設定する。この場合、減速機の作動遅れ分を補償する補償トルクTchg分だけアシストモータに余裕を持たせて減速比を変更する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、操舵ハンドルの操舵状態に応じて操舵アシストトルクを発生させる電動パワーステアリング装置に関する。
従来から、電動パワーステアリング装置においては、マイクロコンピュータを主要部に備えたアシスト制御装置を備え、このアシスト制御装置により、操舵ハンドルの操舵状態に応じて電動モータへの通電量を制御して、所望の操舵トルクを操舵機構に付与する。
例えば、運転者のハンドル操作に伴って発生する操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと車速を検出する車速センサとをアシスト制御装置に接続し、この2つの検出信号に基づいて最適なアシストトルクが得られるためのモータの目標電流値を演算し、この目標電流値と実際にモータに流れる電流値(実電流値)との偏差をフィードバックしてモータの通電量を制御するようにしている。
こうした電動パワーステアリング装置は、電動モータと操舵機構との間に減速機が設けられる。そして、特許文献1においては、この減速機として減速比の変更可能な可変減速機を設け、運転状態に応じてこの減速比を調整することで、電動モータの慣性力による操舵感の低下を抑えようとしている。例えば、運転者がハンドルを操舵したときの操舵トルクが小さいとき、あるいは、操舵角が小さいとき、あるいは、操舵角速度が大きいときに減速機の減速比を下げるようにしている。
特開平10−194143号
しかしながら、特許文献1のものでは、操舵感の向上に対して最適に減速比を制御しているとはいえない。つまり、特許文献1のものは、予め定められた運転状態が検出されたときに、減速機の減速比を所定値に制御するのであって、常に最適な減速比が設定されるわけではないため、必ずしも良好な操舵感が得られるものではない。
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、減速機の減速比を最適に制御してモータ慣性による操舵感の低下を抑制することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、操舵ハンドルの操舵操作に応じて車輪を操舵する操舵機構と、上記操舵機構に対して、操舵アシストトルクを発生する電動モータと、上記操舵機構に付与すべき目標アシストトルクを算出する目標アシストトルク算出手段と、上記目標アシストトルク算出手段により算出された目標アシストトルク値に基づいて上記電動モータを駆動制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置において、減速比が変更可能であり上記電動モータを減速して上記操舵アシストトルクを上記操舵機構に伝達する減速機と、上記算出された目標アシストトルク値と上記電動モータの発生可能な最大トルク値とに基づいて上記電動モータが上記操舵機構に上記目標アシストトルクを付与可能な範囲内において上記減速機の減速比を最小の減速比に設定する減速比制御手段とを備えたことにある。
上記構成を有する本発明によれば、電動モータと操舵機構との間に減速比可変の減速機を設け、減速比制御手段により、目標アシストトルク値と電動モータの発生可能な最大トルク値とに基づいて、電動モータが操舵機構に目標アシストトルクを付与可能な範囲内において減速機の減速比を最小の減速比に設定する。従って、操舵機構に目標アシストトルクが付与できる範囲内において最小の減速比が設定されるため、従来のように特定の運転状態が検出されなくても、モータ慣性力による操舵感への影響を最小に抑えることができる。
本発明の他の特徴は、上記減速比制御手段による減速比の設定は、車両運転中において常時行われることにある。
この発明によれば、車両運転中においては、操舵機構に目標アシストトルクが付与される範囲内において、常に最小の減速比が設定される。従って、常にモータ慣性力による操舵感への影響を最小に抑えることができる。
また、異常発生時においても大きなメリットが得られる。例えば、電動パワーステアリング装置内において異常が発生した場合、電動モータや減速機を即座に停止させる必要があるが、減速機においては、その異常検知直前における減速比が最小(目標アシストトルクが付与される範囲内における最小)に設定されているため、電動モータの慣性力の影響が少ない状態となっている。このため、運転者の緊急回避時における操舵操作性の大幅な低下を防止できる。
尚、本発明における「車両運転中において常時行われる」とは、車両が正常運転されているときに常時行うものであって、異常発生時などの特殊なケースを含むものではない。
本発明の他の特徴は、上記減速比制御手段は、上記目標アシストトルク値を、上記電動モータの発生可能な最大トルク値から所定トルク値を減算した値で除した値に基づいて、上記減速比を決定することにある。
この場合、上記所定トルク値は、上記減速機の作動時におけるトルク発生遅れを補償する補償トルク値であるとよい。
例えば、目標アシストトルクの上昇に伴って操舵機構に与えるアシストトルクを増大する場合、電動モータの発生トルクを増大させ、それでもアシストトルクが不足する場合に減速機の減速比を増大させるが、電動モータの目標トルクがその最大トルクを超えてから減速機の減速比を増大させていては、トルク発生遅れにより一時的にアシストトルク不足となってしまう。つまり、減速機の作動遅れ分だけトルク発生が遅れてしまい、実際に操舵機構に付与されるアシストトルクが目標アシストトルクの増大に追従しなくなる。
そこで、本発明においては、減速比制御手段により設定される減速比を、次のように決めている。
目標アシストトルク値/(電動モータの発生可能な最大トルク値−所定トルク値)
これによれば、目標アシストトルク値が増大した場合、トルク発生遅れを見込んだ分だけ早めに減速比を増大させるため、トルク発生遅れ分を電動モータ側での出力トルク調整で補うことができる。この結果、目標アシストトルクが得られなくなってしまうといった不具合を防止できる。
本発明の他の特徴は、上記減速機の減速比を検出する減速比検出手段を備え、上記モータ制御手段は、上記目標アシストトルク値を上記検出した減速比で除した値を、上記電動モータで発生させる目標トルク値に設定することにある。
この発明によれば、減速比検出手段により減速機の実際の比を検出し、その減速比に基づいて、電動モータで発生させる目標トルクを次のように求める。
電動モータの目標トルク値=目標アシストトルク値/検出した減速比
従って、操舵機構に付与するアシストトルクを精度よく目標アシストトルク値にあわせることができ、良好なアシスト制御が可能となる。
以下、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る電動パワーステアリング装置を概略的に示している。
この電動パワーステアリング装置1は、操舵ハンドル11の回動操作に連動したステアリングシャフト12の軸線周りの回転をラックアンドピニオン機構13によりラックバー14の軸線方向の運動に変換して、このラックバー14の軸線方向の運動に応じて操舵輪である左右前輪FW1,FW2を操舵するようになっている。
ラックバー14は、ギヤ部14aがラックハウジング16内に収納され、その左右両端がラックハウジング16から露出してタイロッド17と連結される。左右のタイロッド17の他端は、左右前輪FW1,FW2に設けられたナックル19に接続される。
尚、ステアリングシャフト12、ラックアンドピニオン機構13、ラックバー14で、操舵ハンドル11の操舵操作に応じて車輪FW1,FW2に操舵する操舵機構を構成する。
ステアリングシャフト12には減速比の変更可能な無段減速機40を介してアシスト用電動モータ30が組み付けられている。アシスト用電動モータ30(以下、アシストモータ30と呼ぶ)は、その回転により無段減速機40を介してステアリングシャフト12をその軸中心に回転駆動して、操舵ハンドル11の回動操作に対してアシスト力を付与する。
アシストモータ30には回転角センサ21が付設される。この回転角センサ21は、レゾルバにより構成され、アシストモータ30のロータの回転角を検出して、検出した回転角を表す検出信号を出力する。
無段減速機40(以下、単に減速機と呼ぶ)は、リングコーンRC形の無段変速機であり、アシストモータ30の出力軸に接続される入力側コーン41と、ステアリングシャフト12に同軸上に固定される出力側コーン42と、減速比変更モータ43と、入力側コーン41から出力側コーン42に回転を伝達するためのリング44および減速比変更モータ43に接続されるウォームギヤ45と噛合するリングスライドギヤ46とを備えて構成される。
減速比変更モータ43には回転角センサ22が付設される。この回転角センサ22は、レゾルバより構成され、減速比変更モータ43のロータの回転角を検出して、検出した回転角を表す検出信号を出力する。この回転角から減速機40の実際の減速比Gxを検出することができる。
ステアリングシャフト12には、操舵ハンドル11と減速機40との中間位置に操舵トルクセンサ23が組みつけられている。操舵トルクセンサ23は、ステアリングシャフト12に介装されて上端および下端をステアリングシャフト12に接続したトーションバー24と、トーションバー24の上端部および下端部にそれぞれ組み付けられたレゾルバ25,26とからなる。レゾルバ25,26は、トーションバー24の上端および下端の回転角をそれぞれ検出して、検出した各回転角を表す検出信号をそれぞれ出力する。従って、このレゾルバ25,26の検出回転角度をそれぞれ読み込むことで、操舵時におけるトーションバー24の捩れに対応した両者の検出回転角度差から、操舵ハンドル11に付与された操舵トルクTxを検出できる。
アシストモータ30および減速比変更モータ43は、電子制御装置50により駆動制御される。
この電子制御装置50は、主要部をマイクロコンピュータにより構成され、トルクセンサ23の検出信号、回転角センサ21、22の各検出信号、車速センサ27の検出信号を入力するともに、後述するアシスト制御プログラムにしたがってモータ駆動回路51,52を介してアシストモータ30および減速比変更モータ43を駆動制御する。
次に、電子制御装置50が実行するアシスト制御処理について説明する。図2は、電子制御装置50が実行するアシスト制御ルーチンを表し、電子制御装置50ROM内に制御プログラムとして記憶されている。
このアシスト制御ルーチンは、図示しないイグニッションスイッチの投入により起動し、所定の短い周期で繰り返し実行される。
本制御ルーチンが起動すると、電子制御装置50は、ステップS11において、車速センサ27からの信号により車速Vxを、トルクセンサ23からの信号により操舵トルクTxを、回転角センサ22からの信号により減速比Gxをそれぞれ検出する。
続いて、検出した車速Vxおよび操舵トルクTxに基づいて、目標アシストトルクTout*を算出する(S12)。この目標アシストトルクTout*は、ステアリングシャフト12に付与すべき目標アシストトルクの値であり、アシストトルク算出テーブルを参照して求められる。この算出テーブルは、電子制御装置50の記憶エリア内に記憶されるもので、図3に示すように、操舵トルクTxの増加にしたがって目標アシストトルクTout*も増加し、しかも、車速Vxが低くなるほど大きな値となるように設定される。
尚、目標アシストトルクTout*は、操舵トルクTxの発生方向に応じてそのトルク付与方向(アシストモータの回転方向)が異なるため、この図3においては、それぞれ絶対値にて表している。
次に、ステップS13において、算出した目標アシストトルクTout*の大きさ(絶対値)が、以下の条件を満たすか否かを判断する。
|Tout*|≦(Tmmax−Tchg)×Gmin
Tmmax:アシストモータ30で発生できる最大トルク値
Tchg:減速機40の作動時におけるトルク発生遅れを補償する補償トルク値
Gmin:減速機40の最小減速比
この条件を満たす場合には、ステップS14に進んで、減速機40における目標減速比G*を最小減速比Gminに設定する。
一方、ステップS13において、この条件を満たさないと判断した場合には、ステップS15に進んで、減速機40における目標減速比G*を次のように決定する。
G*=|Tout*|/(Tmmax−Tchg)
そして、このステップS15にて決定した目標減速比G*が減速機40の最大減速比Gmaxより大きいか否かを判断し(S16)、G*≧Gmaxである場合には、ステップS17において、目標減速比G*を最大減速比Gmaxに設定する。また、ステップS16にて「NO」、つまり、目標減速比G*が最大減速比Gmax未満であれば、目標減速比G*をステップS15にて決定した値とする。
こうして、ステップS14,S15,S17にて目標減速比G*が決定されると、次に、ステップS18に処理を進め、アシストモータ30の目標モータトルクの値Tm*を次のように決定する。
Tm*=Tout*/Gx
続いて、ステップS14,S15,S17にて決定された目標減速比G*となるように減速機40の減速比変更モータ43を駆動制御する(S19)。この場合、回転角センサ22からの信号により実際の減速比Gxが検出されているため、この検出される減速比Gxが目標減速比G*となるように減速比変更モータ43が駆動制御される。
減速機40においては、減速比変更モータ43の駆動により、リング44の位置が変更されることにより、入力側コーン41と出力側コーン42の伝達有効径を変化させて減速比の変更が行われる。
次に、ステップS18にて決定された目標モータトルクTm*に基づいてアシストモータ30を駆動制御する(S20)。アシストモータ30を駆動する駆動回路51には、図示しない電流センサが設けられ、電子制御装置50は、この電流センサにより検出される電流値が目標モータトルクTm*に応じた目標モータ電流値となるようにフィードバック制御する。本実施形態においては、アシストモータ30としてDCブラシレスモータを備えるとともに、駆動回路51としてバッテリ直流電源を3相交流電源に変換する3相インバータを備えており、回転角センサ21にて検出されるロータ回転角(位相角)に応じたタイミングで駆動回路51のスイッチング素子(図示略)をPWM制御することにより、アシストモータ30から目標モータトルクが発生するように制御する。
電子制御装置50は、ステップS20の処理を行ったのち本アシスト制御ルーチンを一旦終了するが、車両が正常状態で運転されている最中においては、常に短い周期で本制御ルーチンを繰り返し実行する。また、電子制御装置50は、電動パワーステアリング装置1内における異常を検出したとき、あるいは他の車両内異常情報を入手したときには、本アシスト制御ルーチンを即座に終了する。
操舵機構に付与されるアシストトルクは、アシストモータ30の出力トルクに減速機40の実際の減速比を乗じた大きさとなる。そして、本実施形態においては、モータ慣性による操舵性能の低下を抑制するために、目標アシストトルクTout*とアシストモータ30の最大トルクTmmaxとに基づいて、常に減速機40の減速比を可能な範囲において(操舵機構に目標アシストトルクTout*を付与可能な範囲内において)最小の目標減速比G*を求める。
この場合、ステップS16に示すように、更に、減速機40の作動遅れによる補償トルクTchg分を加味して目標減速比G*を算出している。
一般に、アシストモータ30によるアシストトルク制御に関しては良好な応答性が得られるが、減速機40による減速比の変更には作動遅れが生じる。このため、実際にステアリングシャフト12に付与される出力トルクが目標アシストトルクTout*に対して不足してしまうことが懸念される。例えば、減速比を最小に設定した状態から目標アシストトルクTout*を増加させていく場合、減速機40の作動遅れが生じなければ、アシストモータ30の出力トルクがその最大トルクTmmaxに達したときに減速比増大指令を減速比変更モータ43に出力すれば、ステアリングシャフト12に付与する出力トルクを目標アシストトルクTout*に維持できる。しかし、実際には減速機40の作動遅れにより、そのタイミングで減速比増大指令を出力していては、その分だけ出力トルク不足が生じてしまう。
そこで、本実施形態においては、ステップS15に示すように、そのトルク発生遅れを補償する補償トルクTchgを予め見込んでおき、アシストモータ30の最大トルクTmmaxからこの補償トルクTchgを減算した値に基づいて目標減速比G*を算出する。
例えば、運転者が操舵ハンドル11を操舵操作していない状態においては、目標アシストトルクTout*がゼロであるため減速機40の減速比が最小減速比Gminに設定される。そして、運転者により操舵ハンドル11が操作されて操舵トルクTxが検出されると、それに応じた目標アシストトルクTout*が設定され、アシストモータ30の目標モータトルクTmおよび目標減速比G*がステップS13〜S18にて設定される。
操舵機構に付与されるアシストトルクは、アシストモータ30の出力トルクに減速機40の減速比を乗じた値となる。そこで、本実施形態においては、補償トルクTchgを加味して、アシストモータ30の最大トルクTmmaxから補償トルクTchgを引いた値(Tmmax−Tchg)に、現状の減速比である最小減速比Gminを乗じた値((Tmmax−Tchg)×Gmin)を求め、この値が、目標アシストトルクTout*以下であれば、そのままの減速比(最小減速比Gmin)を維持する。
そして、図4に示すように、目標アシストトルクTout*が、上記値((Tmmax−Tchg)×Gmin)を超えた時点で、減速機40の目標減速比G*を増大させる。こうして、目標減速比G*は、目標アシストトルクTout*がこの値((Tmmax−Tchg)×Gmin)以上であるときに、それに応じた値(|Tout*|/(Tmmax−Tchg))に設定される。
従って、アシストモータ30にて操舵機構に目標アシストトルクを付与可能な範囲において、常に最小となる目標減速比G*が設定さる。このとき、実際の減速機40の減速比Gxが目標減速比G*に対して作動遅れ分だけずれていても、ステップS18に示すように、目標アシストトルクTout*を実際の減速比Gxで除算して得た目標モータトルクTm*に基づいてアシストモータ30を駆動制御するため、操舵機構には目標アシストトルクTout*が付与されることとなる。つまり、減速機40の作動遅れによるトルク発生遅れをアシストモータ30側のトルク制御で補償できるようにしている。
図5は、上述したアシスト制御ルーチンを実行したときの、アシストモータ30の最大トルクTmmaxに実際の減速比Gxを乗じた値((Tmmax×Gx)と、目標アシストトルクTout*との時間的な推移を表したものである。
このアシストモータ30の最大トルクTmmaxに実際の減速比Gxを乗じた値((Tmmax×Gx)は、実際に操舵機構に付与可能な最大アシストトルクを意味する。従って、このアシスト制御ルーチンでは、適切な補償トルクTchg分を予め見込んで目標減速比G*を設定することで、目標アシストトルクTout*に対して、実際に操舵機構に付与可能なアシストトルクが不足しないようにしている。
この補償トルクTchgの値は、例えば、電動パワーステアリング装置1として必要とされるアシストトルクの変化率ΔT(Nm/秒)と、減速機40にて減速作動に要する時間(秒)tとの積(ΔT×t)として予め算出しておき、電子制御装置50内の記憶エリアに記憶しておくようにすればよい。
以上説明した本実施形態の電動パワーステアリング装置1によれば、車両が起動して運転状態(イグニッションスイッチがオン状態)にあるとき、目標アシストトルクTout*が得られる範囲内において、減速機40の減速比を常に最小値に設定するため、アシストモータ30の慣性力による操舵感への影響を最小に抑えることができる。
また、例えば、電動パワーステアリング装置1内において異常が発生した場合、電子制御装置50は、アシストモータ30や減速比変更モータ43を即座に停止させるが、減速機40においては、その異常検知直前における減速比が最小に設定されているため、アシストモータ30の慣性力の影響が少ない状態となっている。このため、運転者の緊急回避時における操舵操作性の大幅な低下を防止できる。
更に、目標アシストトルクTout*が増大した場合、トルク発生遅れを見込んだ補償トルクTchg分だけアシストモータ30に余裕を持たせて早めに減速比を増大させるため、トルク発生遅れ分をアシストモータ30側での出力トルク調整で補うことができる。この結果、実際の操舵機構への出力トルクが目標アシストトルクに対して不足してしまうといった不具合を防止できる。
また、アシストモータ30で発生させる目標モータトルクTm*を、目標アシストトルクTout*を減速機40の実際の減速比Gxで除算した値に設定するため、操舵機構に付与するアシストトルクを目標アシストトルクTout*にあわせることができ、良好なアシスト制御が可能となる。
以上、本実施形態の電動パワーステアリング装置1について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、無段減速機40を用いているが、有段減速機を採用しても良い。この場合、ステップS15にて算出された目標減速比G*を超える最小の減速比を設定すればよい。例えば、図6に示すように、減速比を最小のG1から最大のG5にまで変更できる構成においては、目標アシストトルクTout*が(Tmmax−Tchg)×G1,(Tmmax−Tchg)×G2,(Tmmax−Tchg)×G3,(Tmmax−Tchg)×G4,(Tmmax−Tchg)×G5となるときに減速機40の減速比を変更するようにする。
また、本実施形態においては、車速Vxと操舵トルクTxとに基づいて目標アシストトルクTout*を算出しているが、これに限定されるものでもなく、少なくとも操舵状態に応じて算出するようにすればよい。
また、本実施形態においては、補償トルクTchgの値を一定値としているが、減速比に応じて変化させるようにしてもよい。例えば、有段減速機において各減速比ごとに減速比変更に必要な時間が異なる場合には、それぞれの必要時間に応じた補償トルクTchgを記憶しておいて使い分けるようにしてもよい。
尚、本実施形態における電子制御装置50が実行するアシスト制御ルーチンのステップS12の処理が本発明の目標アシストトルク算出手段に相当し、ステップS18,S20の処理が本発明のモータ制御手段に相当し、ステップS13〜S17,S19の処理が本発明の減速比制御手段に相当する。
本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の全体システム構成図である。 電子制御装置が実行するアシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。 目標アシストトルク算出マップである。 目標アシストトルクと目標減速比との関係を表すグラフである。 目標アシストトルクと、出力可能トルクとの関係を表すグラフである。 有段変速機を用いた場合における、目標アシストトルクと目標減速比との関係を表すグラフである。
符号の説明
1…電動パワーステアリング装置、11…操舵ハンドル、12…ステアリングシャフト、13…ラックアンドピニオン機構、14…ラックバー、22…回転角センサ(減速比検出手段)、27…車速センサ、30…アシスト用電動モータ、40…減速機、41…入力側コーン、42…出力側コーン、43…減速比変更モータ、44…リング、45…ウォームギヤ、46…スライドギヤ、50…電子制御装置、51,52…駆動回路、FW1,FW2…前輪。

Claims (5)

  1. 操舵ハンドルの操舵操作に応じて車輪を操舵する操舵機構と、
    上記操舵機構に対して、操舵アシストトルクを発生する電動モータと、
    上記操舵機構に付与すべき目標アシストトルクを算出する目標アシストトルク算出手段と、
    上記目標アシストトルク算出手段により算出された目標アシストトルク値に基づいて上記電動モータを駆動制御するモータ制御手段と
    を備えた電動パワーステアリング装置において、
    減速比が変更可能であり、上記電動モータを減速して上記操舵アシストトルクを上記操舵機構に伝達する減速機と、
    上記算出された目標アシストトルク値と上記電動モータの発生可能な最大トルク値とに基づいて、上記電動モータが上記操舵機構に上記目標アシストトルクを付与可能な範囲内において、上記減速機の減速比を最小の減速比に設定する減速比制御手段と
    を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 上記減速比制御手段による減速比の設定は、車両運転中において常時行われることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 上記減速比制御手段は、上記目標アシストトルク値を、上記電動モータの発生可能な最大トルク値から所定トルク値を減算した値で除した値に基づいて、上記減速比を決定することを特徴とする請求項1または2記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 上記所定トルク値は、上記減速機の作動時におけるトルク発生遅れを補償する補償トルク値であることを特徴とする請求項3記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 上記減速機の減速比を検出する減速比検出手段を備え、上記モータ制御手段は、上記目標アシストトルク値を上記検出した減速比で除した値を、上記電動モータで発生させる目標トルク値に設定することを特徴とする請求項1ないし請求項4記載の電動パワーステアリング装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10689024B2 (en) 2017-09-08 2020-06-23 Hyundai Motor Company Method for determining assist torque of power steering system

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