JP2007254463A - 魚類の病原性細菌類の駆除剤及びその駆除方法 - Google Patents

魚類の病原性細菌類の駆除剤及びその駆除方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 安価で、安全性が高く、かつ、魚類の病害細菌に対して効果の高い駆除剤を提供する。
【解決手段】 有機酸を主成分とする処理剤にて、病害細菌類の寄生した魚類を処理することにより、安全に、かつ、効果的に、病害細菌類を予防駆除することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、魚類の養殖において、魚類表面又は内部に付着乃至繁殖する病原性の細菌類を駆除する魚類の病原性細菌類の駆除剤及びその駆除方法に関する。
魚類養殖の分野において、魚類表面又は内部に付着乃至繁殖する細菌類の駆除は、養殖魚の得率向上のために欠かせないものである。
魚類の細菌病としては、多種の細菌病が知られており、具体的には、ブリのビブリオ病・類結節症・連鎖球菌症・ノカルジア症・滑走細菌症・イクチオホヌス症、マダイのビブリオ病・エドワジェラ症・滑走細菌症、クロダイのパスツレラ症、イシダイの連鎖球菌症・アクロモバクター症、ヒラメの連鎖球菌症・エドワジェラ症・ノカルジア症・滑走細菌症、ビブリオ病・連鎖球菌症、クロソイのビブリオ病・連鎖球菌症・滑走細菌症、マグロのノカルジア症、ウナギのビブリオ病・ひれ赤病・頭部潰瘍症・赤点病・パラコロ病・カラムナリス病・連鎖球菌症・デルモシスチジウム症・わたかぶり病、サケ科のビブリオ病・せっそう病・カラムナリス病・細菌性鰓病・水カビ病、コイ・ニシキゴイの運動性エロモナス病・カラムナリス病・抗酸菌症等が挙げられる。
従来より知られている魚類の駆除剤としては、例えば、ヒラメの養殖においては、ニフルスチレン酸等が用いられてきたが、その薬剤自身の発ガン性のため、使用環境が限定されてきている。
また、一部の細菌病(パスツレラ属細菌性類結節症)に対して効果を発揮する抗生物質(ホスホマイシン)が開発され使用されている(例えば、特許文献1参照)が、効果が十分でないことや、抗生物質が環境に与える影響が大きいため、抗生物質の使用ができなくなる状況下にある。
更に、トロロコンブ属藻類、カジメ属藻類等から選ばれる1種又は2種以上と、乳酸球菌及びポリフェノールから選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴とする魚類の感染予防・治療剤(例えば、特許文献2参照)や、塩酸、硫酸、メタスルホン酸等の酸によりpHを3.0〜5.0に調整してなる養殖魚の寄生虫駆除剤(例えば、特許文献3参照)が知られている。
しかしながら、上記特許文献2記載の魚類の感染予防・治療剤は、駆除治療効果が未だ十分でない点に課題がある。
また、上記特許文献3に記載の寄生虫駆除剤は、原生動物(胞子虫類、べん毛虫類、繊毛虫類)、へん形動物(吸虫類、条虫類)などの寄生虫をpH3.0〜5.0の濃度で駆除するものである。これに対して、魚類の表面又は内部に付着乃至繁殖する病原性の細菌類は、寄生虫に較べてその大きさは非常に小さく、また、生体細胞の構造等も相違するため、単にpHを3.0〜5.0に調整した処理剤を魚類の病原性細菌類に適用しても有効に駆除できない場合があり、却って魚類に悪影響を与えたりする点に課題がある。更に、塩酸や硫酸でpHを調整した駆除剤では、魚類の病原性細菌類に対して有効に駆除できないなどの課題がある。
このように魚類の病原性細菌類に対して駆除効果の高い薬剤は、未だ殆ど開発されていないのが現状である。また、最近では、種々の細菌による病害が複合的に発生しており、いろんな病気を併発することも多くなってきている。
従って、安全な物質で効果の高い病原性細菌類を有効に予防駆除できる薬剤の開発が切望されているのである。
特開2004−307346号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平6−227986号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平10−72344号公報(特許請求の範囲、実施例等)
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、安価で、使用可能な温度・濃度範囲も広く、安全性の高いもので、魚類の病原性細菌類を有効に駆除できる薬剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、有機酸類を適当な濃度に希釈した水溶液として用いることにより、目的の安価かつ安全な物質で、魚類の病害細菌に対して、高い殺菌効果を示すこと見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4)に存する。
(1) 有機酸を主成分とすることを特徴とする魚類の病原性細菌類の駆除剤。
(2) 有機酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、ケトグルタル酸、フィチン酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、イタコン酸及びアジピン酸の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)記載の魚類の病原性細菌類の駆除剤。
(3) 処理時の濃度が、1ppm以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の魚類の病原性細菌の駆除剤。
(4) 上記(1)〜(3)の何れ一つに記載の駆除剤を水又は海水で希釈した処理液に、病原性細菌の寄生した魚類を浸漬処理することを特徴とする魚類の病原性細菌の駆除方法。
なお、本発明において、病原性細菌の寄生した「魚類」には、一般の淡水魚、海水魚などの魚類の他、貝類(カキ、アコヤガイ、ホタテガイ、アワビ、ハマグリ、アサリ等)、甲殻類(クルマエビ、ガザミ、イセエビ等)、スッポン、ウニ類、ナマコ、マボヤなどの海産動物を含むものであり、また、これらの魚卵、稚貝、稚魚などの全てを含むものである。
また、本発明において、対象とする細菌病としては、例えば、ブリのビブリオ病・類結節症・連鎖球菌症・ノカルジア症・滑走細菌症・イクチオホヌス症、マダイのビブリオ病・エドワジェラ症・滑走細菌症、クロダイのパスツレラ症、イシダイの連鎖球菌症・アクロモバクター症、ヒラメの連鎖球菌症・エドワジェラ症・ノカルジア症・滑走細菌症、ビブリオ病・連鎖球菌症、クロソイのビブリオ病・連鎖球菌症・滑走細菌症、マグロのノカルジア症、ウナギのビブリオ病・ひれ赤病・頭部潰瘍症・赤点病・パラコロ病・カラムナリス病・連鎖球菌症・デルモシスチジウム症・わたかぶり病、サケ科のビブリオ病・せっそう病・カラムナリス病・細菌性鰓病・水カビ病、コイ・ニシキゴイの運動性エロモナス病・カラムナリス病・抗酸菌症、クルマエビの細菌性えら病・えら黒病、スッポンのムコール症等が挙げられ、また、これらの魚類における魚卵、稚貝等の各細菌病が挙げられ、これらを原因とする魚病に対して有効に駆除(予防、治療を含む)することができる。
本発明によれば、安価で、かつ、使用可能な温度条件も幅広く、安全性が高いという条件を満たし、魚類の病原性細菌類に対して高い駆除効果を有する魚類の病原性細菌類の駆除剤及びその駆除方法が提供される。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の魚類の病原性細菌類の駆除剤は、有機酸を主成分とすることを特徴とするものであり、また、その駆除方法は、本発明の駆除剤を水又は海水で希釈した処理液に、病原性細菌の寄生した魚類を浸漬処理することを特徴とするものである。
本発明の駆除剤は、有機酸を主成分としており使用する有機酸は全て使用することができる。特に好ましいのは、食品添加物に認められている安全性の高い、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、ケトグルタル酸、フィチン酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、イタコン酸、アジピン酸等である。
用いる有機酸は、それぞれ単独で用いてもよいし、更に有機酸の混合物(有機酸の2種以上)を用いてもよい。
また、用いる有機酸は主成分となる量であればよく、好ましくは、駆除剤全量中に0.1重量%以上、更に好ましくは1〜100重量%、特に好ましくは、4〜100重量%とすることが望ましい。
本発明の駆除剤(製剤)の剤形は、粉末状、ペースト状、顆粒状、液体状等いずれでも良く、また、危険物に当たる物質の場合、30%水溶液、50%水溶液など、通常の危険物取扱において爆発、発火等の危険性を伴なわない濃度の製品とすればよい。
使用時には、この駆除剤を水又は海水にて適時希釈溶解し、一定時間浸漬処理して使用する。
処理時の濃度は、有機酸を1ppm(1×10−4重量%)以上、好ましくは、10ppm(1×10−3重量%)以上、特に好ましくは、40ppm(4×10−3重量%)以上含むものが好ましい。上限は、駆除対象となる魚種、細菌類の種類に応じて変動するものであるが、10000ppm(1重量%)以下、好ましくは、1000ppm(1×10−1重量%)以下、500ppm(5×10−2重量%)以下である。
また、処理時の水温としては、0℃〜50℃、好ましくは、5℃〜45℃、特に好ましくは、10℃〜40℃が好ましい。
更に、処理時間は、作業に応じて調整して良く、通常10〜90分の浸漬時間が好ましい。
本発明の駆除剤は、上述の如く、有機酸を主成分とするものであるが、難溶性の有機酸の場合は、アルコール・乳化剤などの溶解助剤を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有してもよいものである。
また、本発明の駆除剤では、本発明の効果を損なわずに、処理中の養殖魚の生存率の更なる向上の点から、上記有機酸に、更に水溶性高分子、例えば、ゼラチン、キトサン、メチルセルロース、アルギン酸ソーダ、寒天、ポリアクリル酸ナトリウムや、天然多糖類等を含有してもよい。これらの成分の処理時の濃度は、駆除対象となる魚種、細菌類の種類に応じて変動するものであるが、有機酸と同濃度〔1ppm(1×10−4重量%)以上、10000ppm(1重量%)以下〕、好ましくは、10〜1000ppmが望ましく、特に好ましくは、40〜500ppmが望ましい。
このように構成される本発明では、安価で、かつ、使用可能な温度条件も幅広く、安全性が高いという条件を満たし、魚類の病原性細菌類に対して高い駆除効果を有する魚類の病原性細菌類の駆除剤及びその駆除方法が得られるものとなる。
次に、試験例により本発明を更に詳細に説明するが、下記試験例等に限定されるものではない。
〔試験例1、魚病治療試験1〜3〕
24時間培養より得られた滑走細菌液〔滑走細菌症病原菌、テナシバクリューム マリチムス、菌株として46501株・ヒラメ由来、050603株・ヒラメ由来〕を20倍希釈した液に30分間浸漬(感染時の菌液量3L)させて、滑走細菌を強制感染させたヒラメを使用した。
滑走細菌感染ヒラメが入った水槽(30L円形水槽、処理水量10L)に、下記表1に示す各濃度となる有機酸を投入し、下記に示す試験方法1〜3により一定時間浸漬処理を行い、その後の生残率を調査した。
なお、試験には、有機酸による処理を行わない滑走細菌感染魚も同様に飼育し、この無処理区(コントロール)との比較により治療効果を評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
試験方法1(魚病治療試験1)
感染菌:050603株(1.0×10CFU/ml)
供試魚:平均体重14.9gのヒラメを1区につき15尾
処理:温度26℃、20分間
飼育温度26℃
試験方法2(魚病治療試験2)
感染菌:46501株(6.3×10CFU/ml)
供試魚:平均体重26.1gのヒラメを1区につき15尾
処理:温度16℃、20分間
飼育温度16℃
試験方法3(魚病治療試験3)
感染菌:46501株(2.9×10CFU/ml)
供試魚:平均体重37.1gのヒラメを1区につき15尾
処理:温度16℃、30分間
飼育温度16℃
Figure 2007254463
上記表1の結果から明らかなように、健常なヒラメに滑走細菌を感染させると、生残率が無処理区では、試験1で2日目に0%、試験例2で7日目に0%、試験例3で20%まで低下する。
これに対して、各濃度の有機酸(ギ酸、プロピオン酸、クエン酸)で浸漬処理したヒラメは、生存率を35%〜100%に高まることが判明した。
〔試験例2、各種有機酸が滑走細菌の増殖に与える影響〕
使用菌株:24時間培養より得られた滑走細菌液、滑走細菌症病原菌、テナシバクリューム マリチムス(T.maritimus)、菌株として、46501株・ヒラメ由来、46502株・ヒラメ由来、040355株・ヒラメ由来、46416株・ヒラメ由来、050603株・ヒラメ由来
使用有機酸:クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、イタコン酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、グルコン酸、フィチン酸、乳酸、酪酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸
使用培地:改変Zobell培地(80%海水1L中、ペプトン5g・酵母エキス1g)
試験方法:有機酸濃度を段階的に希釈した後、各種菌液を入れ、25℃、100ppmで振とう培養した。6時間毎に630nmで吸光値を測定し、菌の増殖を調査し、最小発育阻止濃度(MIC)を求めた。
各種有機酸の滑走細菌症病原菌、テナシバクリューム マリチムスに対する最小発育阻止濃度(ppm)を下記表2に示す。
Figure 2007254463
上記表2の結果を考察すると、最小発育阻止濃度は、乳酸・46501株で最小濃度となる20.3ppmであり、酒石酸・050603株で最高濃度となる390.6ppmであった。
用いた15種の有機酸は、上記表2の結果から明らかなように、滑走細菌症病原菌に対し、繁殖阻止、駆除に極めて有効であることが判る。
〔試験例3、魚病治療試験4〕
24時間培養より得られた滑走細菌液〔滑走細菌症病原菌、46501株・ヒラメ由来〕を20倍希釈した液に30分間浸漬(感染時の菌液量3L)させて、滑走細菌を強制感染させたヒラメを使用した。
滑走細菌感染ヒラメが入った水槽(30L円形水槽、処理水量10L)に、下記表3に示す濃度のクエン酸及びゼラチンを投入し、下記に示す試験方法により一定時間浸漬処理を行い、その後の生残率を12時間毎に調査した。
なお、試験には、有機酸による処理を行わない滑走細菌感染魚も同様に飼育し、この無処理区(コントロール)との比較により治療効果を評価した。
これらの結果を下記表3に示す。
試験方法(魚病治療試験4)
感染菌:46501株(2.8×10CFU/ml)
供試魚:平均体重26.1gのヒラメを1区につき15尾
処理:温度21.5℃、20分間
Figure 2007254463
上記表3の結果から明らかなように、クエン酸100ppmで浸漬処理したヒラメの生存率は無処理区(2日目以降、生存率0%)よりも高く、更に、天然高分子(ゼラチン)を併用することにより、更に生存率を高めることが判った。
また、天然高分子(ゼラチン)の併用では、100ppm添加区が最も生存率が高いことが判った。
〔試験例4、マダイの有機酸耐久試験〕
薬浴用槽タンク(30L円形水槽、処理水量10L)に、クエン酸濃度500ppm、クエン酸濃度500ppm+ゼラチン100ppmの処理液、無処理区をそれぞれ調製した。
各処理液(処理温度17.5℃)に、マダイ10尾(平均体重9.5g)を投入し、20分間浸漬処理を行った。その後、流水式水槽に移し、1時間後、24時間後のマダイの状態を測定した。
これらの結果を下記表4に示す。
Figure 2007254463
上記表4の結果から明らかなように、滑走細菌を駆除できる500ppm−20分間薬浴処理をマダイで行っても、マダイへの薬害は発生せず、マダイの滑走細菌駆除としても使用できることが判った。
以上の試験結果から明らかなように、本発明の魚類の病原性細菌類の駆除剤は、使用可能な温度条件も幅広く、食用酸、添加物等として安全性が確認されている有機酸を使用しているので安全性が高いという条件を満たし、魚類の病原性細菌類に対して高い駆除効果を有することが判った。
本発明により、安価で、安全性が高く、かつ、魚類の病害細菌に対して効果の高い駆除剤を提供することができる。

Claims (4)

  1. 有機酸を主成分とすることを特徴とする魚類の病原性細菌類の駆除剤。
  2. 有機酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、ケトグルタル酸、フィチン酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、イタコン酸及びアジピン酸の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の魚類の病原性細菌類の駆除剤。
  3. 処理時の濃度が、1ppm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の魚類の病原性細菌の駆除剤。
  4. 請求項1〜3の何れ一つに記載の駆除剤を水又は海水で希釈した処理液に、病原性細菌の寄生した魚類を浸漬処理することを特徴とする魚類の病原性細菌の駆除方法。
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