JP5283007B1 - 養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法 - Google Patents

養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5283007B1
JP5283007B1 JP2012275789A JP2012275789A JP5283007B1 JP 5283007 B1 JP5283007 B1 JP 5283007B1 JP 2012275789 A JP2012275789 A JP 2012275789A JP 2012275789 A JP2012275789 A JP 2012275789A JP 5283007 B1 JP5283007 B1 JP 5283007B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fish
hydrogen peroxide
gliding
concentration
water system
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012275789A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014060990A (ja
Inventor
隆司 水盛
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Katayama Chemical Works Co Ltd
Original Assignee
Katayama Chemical Works Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Katayama Chemical Works Co Ltd filed Critical Katayama Chemical Works Co Ltd
Priority to JP2012275789A priority Critical patent/JP5283007B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5283007B1 publication Critical patent/JP5283007B1/ja
Publication of JP2014060990A publication Critical patent/JP2014060990A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A40/00Adaptation technologies in agriculture, forestry, livestock or agroalimentary production
    • Y02A40/80Adaptation technologies in agriculture, forestry, livestock or agroalimentary production in fisheries management
    • Y02A40/81Aquaculture, e.g. of fish

Landscapes

  • Farming Of Fish And Shellfish (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Abstract

【課題】養殖魚の滑走細菌症を治療およびその発症を効果的に予防すると共に、食品衛生上の問題や環境中への拡散による公衆衛生上の問題を生じさせない養殖場における滑走細菌の殺滅方法を提供することを課題とする。
【解決手段】養殖漁場の閉鎖水系内に養殖魚を収容し、過酸化水素または過酢酸を添加し、前記閉鎖水系内で前記養殖魚を薬浴処理して、前記閉鎖水系内および/または前記養殖魚に生存する滑走細菌を殺滅することを特徴とする養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法により、上記の課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、過酸化水素または過酢酸で薬浴処理することにより、養殖魚の滑走細菌症を治療およびその発症を効果的に予防する方法に関する。
滑走細菌症は、ブリ、マダイ、ヒラメ、トラフグなどの海産魚類が発症する魚病であり、その原因菌である滑走細菌は、テナキバクラム マリティマム(Tenacibaculum maritimum)(「Flexibacter maritimus」または「Gliding-bacterial」ともいう)であることが判明している(例えば、非特許文献1参照)。
滑走細菌症は、最初にアメリカでサケ科魚類にその発症が報告され、日本でも1970年頃から種々の海産養殖魚に発生して、ときには大きな被害をもたらすようになった(例えば、非特許文献2参照)。
その症状は、稚魚では口唇部や尾鰭に糜爛や壊死あるいは崩壊が起こり、幼魚や成魚では頭部、躯幹、鰭、鰓などに発赤や出血、ときには潰瘍が見られ、特に稚魚期における被害が多い(例えば、非特許文献3参照)。
海産養殖場は、閉鎖系であることが多く、海産魚の個体が高密度に存在していることから、一旦養殖魚に滑走細菌症が発症すると、その感染の影響は大きく、海産養殖産業において深刻な問題となっている。
滑走細菌は、ニフルスチレン酸ナトリウムやテトラサイクリン系の抗生物質に感受性があり、滑走細菌症の防除対策としては、滑走細菌の不活化菌体またはそれを有効成分とする魚類滑走細菌症ワクチン(特許文献1参照)、ニフルスチレン酸ナトリウム(特許文献2参照)および特定のベンジルアミン誘導体またはその酸付加塩と有効量のオキシテトラサイクリンなどの抗菌活性物質を含む組成物(特許文献3参照)などの薬剤に頼っているのが現状である。例えば、ニフルスチレン酸ナトリウムは、かれい目魚類の薬浴剤で、農林水産省の水産用医薬品として承認されている。
しかしながら、これらの抗菌性薬剤などの使用は、多剤耐性菌の増加や薬剤の魚体への残留による食品衛生上の問題および環境中への拡散による公衆衛生上の問題を孕んでいる。また、薬剤の経口投与では、餌を摂取しない重症魚には効果が得られないという問題がある。
さらに、ニフルスチレン酸ナトリウムには使用制限があり、ひらめ、ほしがれい、まこがれい、まつかわなどのかれい目魚類のうち、重量50g以下の稚魚にしか使用できないという問題がある。
また、ニフルスチレン酸ナトリウムは、発がん性や変異原性をもつ可能性のあるニトロフラン系の合成抗菌剤であり、今後水産用医薬品の承認が取り消しとなる可能性がある。
独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所(現 増養殖研究所)では、ニフルスチレン酸ナトリウムに代わる医薬品開発の支援を目的として、候補となる薬剤の各種魚病細菌に対する抗菌活性の測定および魚介類に対する安全性と効果を把握する飼育試験などを実施している。
候補となる薬剤としては、二酸化塩素、ブロノポール(2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)およびグルタルアルデヒド、さらには特定保健食品やヒトに使用されている薬剤(カテキン、プロピレングリコール、キトサン、アクリノール、アクリフラビン、チモール、ソルビン酸カリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリリン酸、ポリリン酸ナトリウム、塩化ヘキサデシルピリジニウム)や観賞魚用の駆虫剤に含有されているメチレンブルーが挙げられている。
これまでの試験結果によれば、ブロノポールや安定化二酸化塩素において、シマアジ、マダイおよびヒラメにおいて生菌数の減少効果が確認されている(例えば、非特許文献4参照)。
特開2008−74797号公報 特開平8−9821号公報 特開平6−165646号公報
H. Wakabayashi、外2名、「Flexibacter maritimus sp.Nov., a Pathogens of Marine Fishes」、International Journal of Systematic Bacteriology、1986年、第36巻、第3号、p.396-398 Muneo Hikida、外3名、「Flexibacter sp., a Gliding Bacterium Pathogenic to Some Marine Fishes in Japan」、Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries、1979年、第45巻、第4号、p.421-428 J-F. Bernardet、外2名、「Comparative Study on Flexibacter maritimus Strains Isolated from Farmed Sea Bass (Dicentrarchus labrax) in France」、Fish Pathology、1994年、第29巻、第2号、p.105-111 渡邉研一、外1名、「研究 海産魚類の滑走細菌症治療医薬の探索〜抗菌活性と魚に対する安全性の検討〜」、月刊アクアネット、有限会社湊文社、2011年7月、p.56-59
そこで、本発明は、養殖魚の滑走細菌症を治療およびその発症を効果的に予防すると共に、食品衛生上の問題や環境中への拡散による公衆衛生上の問題を生じさせない養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、養殖魚の寄生虫駆除剤として用いられる過酸化水素や過酢酸などの過酸化水素を発生させる物質が優位に滑走細菌を殺滅する効果を有すること、特に比較的低濃度の過酸化水素を含む閉鎖水系内で養殖魚を長時間、薬浴処理することにより、より効果的に養殖魚の滑走細菌症を治療およびその発症を予防できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、養殖漁場の閉鎖水系内に海水魚の養殖魚を収容し、過酸化水素濃度が0.1〜100mg/Lになるように過酸化水素または過酢酸を添加し、その濃度が維持された状態で、前記閉鎖水系内で前記養殖魚を0.5〜6時間薬浴処理して、前記閉鎖水系内および/または前記養殖魚に生存する滑走細菌のTenacibaculum maritimumを殺滅することを特徴とする養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法が提供される。
本発明によれば、養殖魚の滑走細菌症を治療およびその発症を効果的に予防すると共に、食品衛生上の問題や環境中への拡散による公衆衛生上の問題を生じさせない養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法を提供することができる。
すなわち、本発明の方法は、既に滑走細菌症を発症した養殖魚の治療と、養殖魚が滑走細菌と共存しており発症する可能性のある滑走細菌症の予防とを合せて実施することができる。しかも、過酸化水素は、水中で水と酸素に自然分解するので、食品衛生や公衆衛生における問題も生じない。
従来から過酸化水素は、養殖魚の寄生虫を駆除するための薬浴剤として用いられているが、その薬浴処理は、寄生虫を刺激し、異常な屈曲・収縮運動と吸盤の開閉運動を促し、吸盤の付着能力を消失させ、虫体を付着面から脱落せしめることにより駆除するものであり、本発明の作用機構と異なっている。また、処理の薬剤濃度や時間についても、最適条件は異なっている(株式会社片山化学工業研究所、製品名「マリンサワーSP」の農林水産省に提出された動物用医薬品製造承認申請書 概要書5.2参照)。
例えば、海水系養殖魚の外部寄生虫の最適な駆除方法としては、過酸化水素濃度が200〜3000mg/Lで薬浴時間が1〜20分であり、トラフグのヘテロボツリウム症の予防方法では、過酸化水素濃度が400〜2000mg/Lで薬浴時間が20〜120分である。
一方、本発明の方法の中でとりわけ有効な処理方法は、
養殖漁場の閉鎖水系内に養殖魚を収容し、過酸化水素濃度が0.1〜100mg/Lになるように過酸化水素または過酢酸を添加し、その濃度が維持された状態で、閉鎖水系内で養殖魚を0.5〜6時間薬浴処理して、閉鎖水系内および/または養殖魚に生存する滑走細菌を殺滅する方法であり、
養殖魚がブリ、マダイ、カンパチ、ヒラメおよびトラフグから選択される海産魚類である、および
滑走細菌がTenacibaculum maritimumである
のいずれか1つの条件を満たす場合に上記の効果がさらに発揮される。
本発明の養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法は、養殖漁場の閉鎖水系内に養殖魚を収容し、過酸化水素または過酢酸を添加し、前記閉鎖水系内で前記養殖魚を薬浴処理して、前記閉鎖水系内および/または前記養殖魚に生存する滑走細菌を殺滅することを特徴とする。
本発明で使用する薬剤は、過酸化水素または過酢酸である。
過酸化水素としては、通常、工業用として市販されている濃度3〜60%の過酸化水素水溶液が挙げられ、安全性や作業性の点で濃度30〜45%程度が好ましい。
また、過酢酸としては、通常、工業用として市販されているものを用いることができ、例えば、過酢酸6%、酢酸32%、過酸化水素8%および水54%の組成のもの、過酢酸32%、酢酸4%および水64%の組成のもの、過酢酸26%、酢酸54%および水20%の組成のもの、ならびに過酢酸14〜17%、酢酸20〜30%、過酸化水素10〜15%および水38〜56%の組成のものなどが挙げられる。
過酢酸は、水中で過酸化水素と酢酸に分解し、分解により生成された過酸化水素が本発明の効能に寄与する。
過酸化水素または過酢酸を養殖漁場の閉鎖水系に添加するにあたっては、所望の濃度になるようにこれらを海水で適宜希釈または溶解して用いてもよい。
本発明の方法では、過酸化水素および過酢酸の代わりに、水中で過酸化水素を発生し得る過酸化水素発生化合物(または過酸化水素供給化合物)を用いることもできる。
このような化合物としては、過炭酸、過ホウ酸、ペルオキシ硫酸などの無機過酸、過酢酸以外の有機過酸およびこれらの塩類が挙げられ、塩類としては、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明の方法における過酸化水素濃度は、滑走細菌の殺滅効果を考慮して、養殖魚の種類や状態、周辺環境などの状況により適宜設定すればよい。
養殖漁場の閉鎖水系内での過酸化水素濃度は、好ましくは0.1〜100mg/Lであり、より好ましくは0.125〜80mg/Lであり、さらに好ましくは0.125〜64mg/Lである。
また、その処理時間は、好ましくは0.5〜6時間であり、より好ましくは0.5〜2時間であり、さらに好ましくは0.5〜1時間である。
過酸化水素濃度が0.1mg/L未満では、本発明の効果が充分に得られないことがある。また、過酸化水素濃度が100mg/Lを超えると、魚に対して悪影響を及ぼすことがある。
また、処理時間が0.5時間未満では、本発明の効果が充分に得られないことがある。また、処理時間が6時間を超えると、魚に対して悪影響を及ぼし作業性が悪くなることがある。
したがって、より好ましい本発明の方法としては、養殖漁場の閉鎖水系内に養殖魚を収容し、過酸化水素濃度が0.1〜100mg/Lになるように過酸化水素または過酢酸を添加し、その濃度が維持された状態で、前記閉鎖水系内で前記養殖魚を0.5〜6時間薬浴処理して、前記閉鎖水系内および/または前記養殖魚に生存する滑走細菌を殺滅するのがよい。
本発明の方法では、養殖漁場の閉鎖水系内に所定の過酸化水素濃度になるように過酸化水素または過酢酸を添加し、その濃度が維持された状態で、閉鎖水系内に養殖魚を所定時間保持、すなわち養殖魚を薬浴処理して、閉鎖水系内および/または養殖魚に生存する滑走細菌を殺滅する。
過酸化水素は水中で水と酸素に自然分解するので、「過酸化水素濃度が維持された状態」とは、閉鎖水系内に過酸化水素または過酢酸が添加された直後、過酸化水素の自然分解が進行しても所定の濃度にある状態、または過酸化水素が所定の濃度以下に低下した後、過酸化水素または過酢酸がさらに添加されて所定の濃度にある状態を意味する。
本発明者は、養殖漁場の閉鎖水系内の過酸化水素濃度は、水系内の分解要因の多少により変化するものの、一般に過酸化水素の分解により添加時の初期濃度から30分から1時間程度までは徐々に低下し、その後、殆ど平衡状態で緩やかに低下すること、平衡状態の過酸化水素濃度が0.1mg/L以上であれば、少なくとも本発明の方法における処理時間の範囲であれば、その濃度を維持できることを確認している。また、本発明者は、過酢酸は、過酸化水素よりも初期濃度の低下が急激であることを確認している。
本発明の好ましい方法としては、上記の処理時間中に過酸化水素濃度が上記の範囲内にあればよく、処理終了時の過酸化水素濃度が少なくとも0.1mg/Lになるように、すなわち処理時間中の過酸化水素の分解を見越して過酸化水素または過酢酸を添加するのがよい。
例えば、処理終了時における見込みの過酸化水素濃度の10〜100倍程度になるように、過酸化水素または過酢酸を添加するのが好ましいが、本発明の方法としては、それらに限定されるものではない。
また、処理途中で水系内の過酸化水素濃度を公知の方法により測定し、過酸化水素濃度の低下度合により、適宜過酸化水素または過酢酸を添加してもよい。
一方、過酸化水素濃度が高い場合には、その分解のためにカタラーゼのような過酸化水素分解能を有する酵素ならびに亜硫酸ナトリウムなどの還元物質を併用してもよい。
本発明の方法は、滑走細菌症を発症した、または発症し得る魚類であれば、海水魚、淡水魚のいずれであってもその効果が期待できる。
それらの中でも、養殖産業の盛んな、ブリ、マダイ、カンパチ、ヒラメおよびトラフグから選択される海産魚類は、その効果が大いに期待できる。
また、滑走細菌症の発症は、海産魚類の稚魚期に多く見られるため、本発明の方法は、海産魚類の稚魚期や魚の移送時に実施するのが特に好ましい。
滑走細菌症の原因細菌には、後述する試験例において用いたTenacibaculum maritimum(テナキバクラム マリティマム)以外にも、種々の滑走細菌およびそれらの亜種が考えられるが、本発明の方法は、これまで研究により原因細菌として最も有力とされているTenacibaculum maritimumである場合に最も効果が期待できる。
本発明を試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例により限定されるものではない。
試験例1(滑走細菌に対する殺菌効果確認試験)
〔薬剤〕
試験例では次の薬剤を使用した。
(a)過酸化水素(約30%水溶液、和光純薬工業株式会社製、特級試薬)
(b)過酢酸(15%の14%過酸化水素水溶液、Evonik社製、製品名:Peraclean(登録商標)Ocean)
(c)ブロノポール(ノバルティスアニマルヘルス株式会社製、製品名:パイセス)
(d)二酸化塩素(三栄製薬株式会社製、製品名:グリーンFクリーン)
(e)ニフルスチレン酸ナトリウム(上野製薬株式会社製、製品名:エルバージュ)
〔液体培地および寒天培地の調製〕
300ミリリットルの蒸留水を入れた1リットル三角フラスコに、トリプトン(日本製薬株式会社製、製品名:Tryptone)0.5g、酵母エキス(日本製薬株式会社製、製品名:BactoTM Yeast Extract)0.5g、肉エキス(Becton, Dickinson and Company製、製品名:Difco BactoTM Beef Extract)0.2gおよび酢酸ナトリウム3水和物(キシダ化学株式会社製、特級試薬)0.2gを入れて溶解させ、温度121℃で15分間高圧滅菌を行った。また、別途700ミリリットルのろ過海水(5C)を滅菌瓶に入れ、温度121℃で15分間高圧滅菌した。
三角フラスコおよび滅菌瓶の内容物が温度50〜55℃に冷却された後、それらをクリーンベンチ内で混合して、液体培地(海水Cytophaga培地)を得た。
寒天培地は、上記液体培地を作成する際、寒天(ナカライテスク株式会社製、製品名:精製寒天末)を10g添加することにより得た。
〔滑走細菌株の調製〕
独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所において温度−85℃で冷凍保存された滑走細菌症原因菌(Tenacibaculum maritimum)3株(TC133、TC134およびFPC453、それぞれA株、B株、C株)の分譲を受け、これらを滑走細菌株として使用した。
改変Cytophaga寒天(1.5%)培地を用いて温度25℃で2日間培養し、複数のコロニーの先端を白金耳で触れ、改変Cytophaga液体培地に接種し、温度25℃で2日間振とう培養して菌液を作製した。なお、菌液は、Cytophaga寒天培地に塗抹後、温度25℃で5日間培養して生菌数を測定した。
〔試験〕
各薬剤(a)〜(e)は、有効成分の設定の10倍濃度になるように滅菌蒸留水を用いて希釈したものを使用した。なお過酢酸については、過酢酸濃度の10倍濃度になるように希釈したものを使用した。
また、菌液は、70%滅菌ろ過海水で希釈して、約105cfu/ミリリットルに調整したものを使用した。
菌液を9ミリリットルに希釈した供試薬剤1ミリリットルを混合して試験液とし、0.5時間、1時間、2時間および6時間経過後に、Cytophaga寒天培地に試験液0.1ミリリットルを塗抹して温度25℃で5日間培養し、殺菌効果(最小殺菌濃度mg/L:MBC)を確認した。得られた結果を表1に示す。
MBC(最小殺菌濃度)は、100%の細菌を殺滅することができる最も低い薬剤濃度である。
Figure 0005283007
表1の測定結果から、薬剤(b)の過酢酸が最も高い殺菌能力を有することがわかる。
また、薬剤(a)の過酸化水素は、薬剤(b)の過酢酸の殺菌能力には及ばず、薬剤(e)の現行のニフルスチレン酸ナトリウムと比較するとやや殺菌能力に欠けるものの、代替薬として有望視されている薬剤(c)のブロノポールや薬剤(d)の二酸化塩素よりも高い殺菌能力を有することがわかる。特に薬剤(c)のブロノポールと比較すると1時間未満の短時間の接触での効力の差が顕著である。
上記の試験例1は、滑走細菌症を発症した魚類を使用せず、滑走細菌およびそれに対する薬剤のみを用いた試験であるが、当業者であれば、それらの結果、具体的にはMBC(最小殺菌濃度)および従来の他の薬剤による薬浴処理の実績から、本発明の方法を、滑走細菌症を発症した魚類の治療、または滑走細菌と共存する魚類の滑走細菌症の予防に適用できることは充分に予測し得る。すなわち、特定のMBCが得られた薬剤の濃度およびそれによる処理時間で、滑走細菌症を発症したまたは発症することが予想される魚類を薬浴処理することにより、本発明の効果が発揮されることが充分に予測し得る。
試験例2(マダイの滑走細菌症に対する予防効果確認試験)
〔薬剤〕
試験例1の薬剤(a)過酸化水素(約30%水溶液、和光純薬工業株式会社製、特級試薬)のみを使用した。
〔液体培地および寒天培地の調製〕
試験例1と同様にして、液体培地および寒天培地を調製した。
〔滑走細菌株の調製〕
滑走細菌症原因菌としてA株のみを用いたこと、振とう培養の条件「温度25℃で2日間」を「25℃で45時間」に変更したこと以外は試験例1と同様にして、滑走細菌株を調製した。
〔試験〕
容量約6リットルのポリプロピレン製の容器に天然滅菌海水(水温20℃)3リットルを入れ、上記A株を用いて調製した菌液を攻撃菌濃度が108cfu/ミリリットルになるように添加し、そこにマダイ稚魚(平均体長30mm、平均体重0.7g)60尾を収容し、通気下で1時間浸漬し、マダイ稚魚を滑走細菌症に感染させた。
次いで、容量約1リットルの透明ポリプロピレン製の容器に人工海水(水温20℃)1リットルを入れ、薬剤(a)の過酸化水素をそれぞれ表2に示す濃度0.05mg/L、50mg/Lおよび120mg/Lになるように添加し、そこに滑走細菌症に感染させたマダイ稚魚5尾をそれぞれ収容し、処理時間0.25〜8時間の薬浴を行なった。
所定時間の薬浴後、4リットルの人工海水を入れた水槽でマダイ稚魚を5日間飼育し、死亡状況および死亡個体の症状を観察した。なお、人工海水は1日1回全量を交換した。
また、薬剤(a)無添加の人工海水を用いたこと以外は上記と同様の操作で試験し、薬浴未実施のブランク(比較)とした。得られた結果を表2に示す。
Figure 0005283007
表2の測定結果から、過酸化水素濃度が0.1〜100mg/Lで、0.5〜6時間の薬浴処理をすることで滑走細菌を効果的に殺滅し、養殖魚の滑走細菌症を効果的に予防できることがわかった。
また、比較例2および4では薬浴処理中にマダイ稚魚の死亡が確認されたことから、長時間あるいは高濃度の薬浴処理は魚に対して悪影響を与えるおそれがあることもわかった。

Claims (2)

  1. 養殖漁場の閉鎖水系内に海水魚の養殖魚を収容し、過酸化水素濃度が0.1〜100mg/Lになるように過酸化水素または過酢酸を添加し、その濃度が維持された状態で、前記閉鎖水系内で前記養殖魚を0.5〜6時間薬浴処理して、前記閉鎖水系内および/または前記養殖魚に生存する滑走細菌のTenacibaculum maritimumを殺滅することを特徴とする養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法。
  2. 前記養殖魚が、ブリ、マダイ、カンパチ、ヒラメおよびトラフグから選択される海産魚類である請求項1に記載の養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法。
JP2012275789A 2012-08-30 2012-12-18 養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法 Active JP5283007B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012275789A JP5283007B1 (ja) 2012-08-30 2012-12-18 養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012190025 2012-08-30
JP2012190025 2012-08-30
JP2012275789A JP5283007B1 (ja) 2012-08-30 2012-12-18 養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP5283007B1 true JP5283007B1 (ja) 2013-09-04
JP2014060990A JP2014060990A (ja) 2014-04-10

Family

ID=49273995

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012275789A Active JP5283007B1 (ja) 2012-08-30 2012-12-18 養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5283007B1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103548729A (zh) * 2013-10-28 2014-02-05 广西壮族自治区海洋研究所 一种网箱养殖金头鲷药浴防病的方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FI130256B (en) * 2020-05-26 2023-05-15 Luonnonvarakeskus WATER CIRCULATION AND VENTILATION SYSTEM FOR AN AQUACULTURE PLANT, RELATED PLANT, METHODS AND USE

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03187349A (ja) * 1989-12-15 1991-08-15 Hayashikane Sangyo Kk 抗菌性養魚飼料
JP2008074797A (ja) * 2006-09-22 2008-04-03 Univ Kinki 魚類滑走細菌症ワクチン
WO2009022424A1 (ja) * 2007-08-16 2009-02-19 National University Corporation Kochi University 魚類の病原性細菌類の駆除剤及びその駆除方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03187349A (ja) * 1989-12-15 1991-08-15 Hayashikane Sangyo Kk 抗菌性養魚飼料
JP2008074797A (ja) * 2006-09-22 2008-04-03 Univ Kinki 魚類滑走細菌症ワクチン
WO2009022424A1 (ja) * 2007-08-16 2009-02-19 National University Corporation Kochi University 魚類の病原性細菌類の駆除剤及びその駆除方法

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6013006681; Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences Vol.54, 1997, p.2653-8 *
JPN6013006685; 日本細菌学雑誌 Vol.52, No.2, 1997, p.393-416 *
JPN6013006689; 魚病研究 Vol.45, No.2, 2010, p.66-8 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103548729A (zh) * 2013-10-28 2014-02-05 广西壮族自治区海洋研究所 一种网箱养殖金头鲷药浴防病的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014060990A (ja) 2014-04-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ahmed et al. Platinum nanoparticles inhibit bacteria proliferation and rescue zebrafish from bacterial infection
JP3882939B1 (ja) 魚のスクーチカ症治療方法及び予防方法
Acosta et al. High-level biocidal products effectively eradicate pathogenic γ-proteobacteria biofilms from aquaculture facilities
Lilley et al. Comparative effects of various antibiotics, fungicides and disinfectants on Aphanomyces invaderis and other saprolegniaceous fungi
JPWO2006101060A1 (ja) バチルス・ズブチリスを用いた甲殻類カビ病および魚介類カビ病の予防方法
JP5711846B1 (ja) 養殖用水中の水カビ防除方法
TW201345522A (zh) 殺真菌劑用於治療魚類真菌病之用途(二)
KR101434553B1 (ko) 어류의 스쿠티카충 및 병원성 세균 구제용 조성물 및 이들의 구제방법
JP2020096599A (ja) 低濃度過酸化水素水による魚類外部寄生虫駆除方法
JP4225385B2 (ja) 魚類の病原性細菌類の駆除剤及びその駆除方法
JP5283007B1 (ja) 養殖漁場における滑走細菌の殺滅方法
KR100845424B1 (ko) 양식어류의 질병 예방 및 치료를 위한 조성물
JP5553337B2 (ja) 海産魚白点病予防治療剤
KR101544049B1 (ko) 넙치 양식 어류 스쿠치카병 방제용 및 치료용 조성물
Jantrakajorn et al. Egg surface decontamination with bronopol increases larval survival of Nile tilapia, Oreochromis niloticus.
JP4859060B2 (ja) カリグスの駆除方法
KR20100061685A (ko) 어류의 병원성 세균류의 구제제 및 그 구제 방법
KR101850697B1 (ko) 어류의 스쿠티카충 감염 질병 예방 또는 치료용 약학 조성물, 및 이를 포함하는 천연 사료
KR101257493B1 (ko) 브로모페놀계열 화합물을 포함하는 항세균 및 항원충 조성물
KR100823558B1 (ko) 어류의 스쿠치카충 살충제
EP3422856B1 (en) Preparation containing sea water and an added potassium compound
EP0786936B1 (en) Method for reducing bacterial contamination in an aquaculture
EP4037698B1 (en) A probiotic composition comprising probiotic bacteria for use in a method of treating and/or preventing a parasitic infection in a teleost
Liao et al. The use of chemicals in aquaculture in Taiwan, Province of China
EP1658776A1 (en) Method for producing live food water organisms in the presence of an antibacterial

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5283007

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250