JP2007254000A - 評価サンプルとその製造方法および評価サンプルを用いたガスバリア膜の評価方法 - Google Patents

評価サンプルとその製造方法および評価サンプルを用いたガスバリア膜の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】2枚のガスバリア膜付フィルムを用い単純な構造で信頼性の高い評価サンプルを提供し合わせて評価サンプルの製造方法と評価サンプルを用いた評価方法を提供する。
【解決手段】ガスバリア膜付フィルムにおけるガスバリア膜のガスバリア性能について、ガスバリア膜表面に成膜したカルシウム膜の腐食状態から評価するカルシウム法を実施する際に使用される評価サンプルであって、ガスバリア膜9、13を内側にして対峙しかつ外周縁部が閉止された一対のガスバリア膜付フィルムにより構成され、ガスバリア膜付フィルムの内側中央部に隙間空間が形成されてこの空間内に不活性ガスが充填されていると共に、隙間空間内において対峙する上記ガスバリア膜の一方のガスバリア膜9表面に評価用のカルシウム膜10が成膜されていることを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、水蒸気や酸素等の透過を防止するガスバリア膜が設けられたガスバリア膜付フィルムにおける上記ガスバリア膜のガスバリア性能についてガスバリア膜表面に成膜したカルシウム膜の腐食状態から評価するカルシウム法に係り、特に、このカルシウム法を実施する際に使用される評価サンプルとその製造方法および評価サンプルを用いたガスバリア膜の評価方法に関するものである。
パッケージ包装用のフィルムや表示素子のフィルム基板には、これ等フィルムや基板からの水蒸気や酸素の透過を防止するガスバリア膜と呼ばれる皮膜が形成されている。そして、このガスバリア膜は金属膜や無機質膜の単層若しくは多層膜で構成されている。
ところで、ガスバリア膜の評価には、モコン社(MOCON社:米国ミネソタ州)が開発したモコン法が一般的に利用されており、このモコン法による酸素透過率の検出限界は10−2cc/m/day程度、水蒸気透過率の検出限界は10−2g/m/day程度であった。しかし、有機ELに使用するガスバリア膜には、酸素透過率が10−4cc/m/day程度、水蒸気透過率は10−5g/m/day台程度のガスバリア特性が必要とされており、モコン法による評価方法には限界があった。
一方、上記検出限界以下の測定を可能とする方法として、ガスバリア膜の表面にカルシウム膜を成膜しその腐食の程度からガスバリア膜のガスバリア性能を評価するカルシウム法(非特許文献1参照)が知られている。カルシウム膜は金属色をしているが、水蒸気と反応してカルシウム水酸化物になると透明に変化するため、この変化を測定することによりガスバリア膜の評価が可能となる方法である。
以下、このカルシウム法について説明する。まず、カルシウム法を実施する際に使用される評価サンプルを図1に示す。この評価サンプルは、フィルム1片面にガスバリア膜2が形成されたガスバリア膜付フィルム50と、このガスバリア膜付フィルム50の中央領域を覆うガラス製キャップ5とで構成されており、かつ、ガラス製キャップ5で覆われた空間には窒素等の不活性ガスが充填されていると共に、ガラス製キャップ5で覆われたガスバリア膜付フィルム50のガスバリア膜2上にはカルシウム膜3が成膜されている。
また、上記評価サンプルは、窒素雰囲気に調整されたグローブボックス付の真空蒸着装置を用いて作製されている。まず、真空蒸着法によりガスバリア膜付フィルム50のガスバリア膜2上にカルシウム膜3を成膜し、次いで、真空蒸着装置に接続された上記グローブボックス内においてガスバリア膜付フィルム50の中央領域を覆うようにガラス製キャップ5が載置され、かつ、ガラス製キャップ5とガスバリア膜付フィルム50の隙間部に紫外線硬化樹脂6が充填され、接着封止して作製されている。尚、カルシウムは敏感に水蒸気や酸素と反応するため、上記グローブボックス内に残留しかつ評価サンプルの作製時において評価サンプル内に入り込んだppmオーダーの水蒸気や酸素が原因となって、時間経過とともに上記透明化反応が進んでしまう場合がある。この場合、これ等水蒸気や酸素はガスバリア膜付フィルム50を透過して評価サンプル内に入り込んだものでないため、上記ガスバリア性能を評価する上において誤差となる。そこで、評価サンプルの作製時において評価サンプル内に入り込んだ水蒸気や酸素等に起因した上記透明化反応を遅延させるため、図1に示すように上記カルシウム膜3上に更にアルミニウム膜4を成膜することもあり、かつ、ガスバリア膜付フィルム50とガラス製キャップ5の封止領域はシール剤7により更にシールされている。
そして、この評価サンプルを用いてガスバリア膜を評価するには、上記評価サンプルを環境試験装置(評価サンプルが投入される装置本体内の温度、湿度を任意に設定できる試験装置)内に投入し、ガスバリア膜付フィルム50側あるいはガラス製キャップ5側からカルシウム膜3の変化状態を経時的に観察し、カルシウム膜3の腐食の程度から上記ガスバリア性能を評価するものである。
ところで、従来の評価サンプルは、熱膨張率が相違するガスバリア膜付フィルム50とガラス製キャップ5とで構成されているため、ガスバリア膜付フィルム50とガラス製キャップ5の熱膨張率の差異によりガスバリア膜付フィルム50とガラス製キャップ5の接着封止部分に応力が加わり易く、接着封止部分の紫外線硬化樹脂やガスバリア膜に亀裂が生じて評価サンプル内に水蒸気や酸素が入り込んでしまうことがあった。
表1にはカルシウム法に用いる評価サンプル部材の熱膨張係数を記載する。
そして、直径30mmの評価サンプルの場合、50℃の温度差で、PES(ポリエーテルサルフォン)フィルムは30mm×5×10−5×50℃=75μm膨張し、石英では30mm×5×10−7×50℃=0.8μm膨張する。尚、PESに対しガラスでなく石英で比較している理由は、ガスバリア膜付フィルムとキャップの接着に紫外線硬化樹脂を用いた場合、その紫外線透過率がガラスより石英の方が高いため、ガラス製キャップより石英製キャップの使用が望ましいことによる。
Figure 2007254000
ここで、上記接着封止部分の紫外線硬化樹脂やガスバリア膜に亀裂を生じさせないためには接着面積を広くとればよい。しかし、接着面積を広くするには、評価サンプルの構造上、ガラス製キャップ等の寸法を大きくする必要があり、評価サンプルの取り扱い性が劣化しかつ評価サンプルの製作コストも増加する問題がある。
そして、接着封止部分の紫外線硬化樹脂やガスバリア膜に亀裂が生じて接着封止部分の信頼性が低い場合、カルシウム法で評価している対象が、ガスバリア膜なのかそれとも接着封止部分なのか区別できなくなる問題が存在した。
尚、少なくとも一方にカルシウム膜が形成された2枚のガスバリア膜付フィルムをそのガスバリア膜を内側にして貼り合わせて評価サンプルとし、評価サンプル自体の構造を単純にする方法も考えられる。
しかし、平面同士の2枚のガスバリア膜付フィルムを、紫外線硬化樹脂を用いて貼り合わせた場合、紫外線硬化樹脂がフィルムの中心部まで浸透し入り込んでしまうことがあり、カルシウム膜の腐食状態を観察することが困難となる別の問題を有していた。
G. Nisato, et al., "Evaluating High Performance Diffusion Barriers : the Calcium Test", 2001 IDW Conference Proceedings, 2001, 2
本発明はこのような問題点に着目してなされており、その課題とするところは、2枚のガスバリア膜付フィルムを用い単純な構造でかつ信頼性の高い評価サンプルを提供し、更にこの評価サンプルの製造方法と評価サンプルを用いたガスバリア膜の評価方法を提供することにある。
すなわち、請求項1に係る発明は、
少なくとも片面にガスバリア膜が設けられたガスバリア膜付フィルムにおける上記ガスバリア膜のガスバリア性能について、ガスバリア膜表面に成膜したカルシウム膜の腐食状態から評価するカルシウム法を実施する際に使用される評価サンプルを前提とし、
ガスバリア膜を内側にして対峙しかつ外周縁部が閉止された一対のガスバリア膜付フィルムにより構成され、ガスバリア膜付フィルムの内側中央部に隙間空間が形成されてこの空間内に不活性ガスが充填されていると共に、隙間空間内において対峙する上記ガスバリア膜の少なくとも一方のガスバリア膜表面に評価用のカルシウム膜が成膜されていることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る評価サンプルを製造する方法を前提とし、
少なくとも一方のガスバリア膜表面に評価用のカルシウム膜が成膜された一対のガスバリア膜付フィルムをガスバリア膜が内側となるように対向して配置し、かつ、ガスバリア膜付フィルムの少なくとも一方のフィルム中央部を吸引して外側面が凸となるように湾曲させると共に、この湾曲を保った状態で上記ガスバリア膜付フィルムの外周縁部を閉止して不活性ガスが充填された上記隙間空間を形成することを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項2記載の発明に係る評価サンプルの製造方法を前提とし
上記ガスバリア膜付フィルムの外周縁部をレーザ溶着により閉止することを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項3記載の発明に係る評価サンプルの製造方法を前提とし
発振波長10.6μmの炭酸ガスレーザを用いてレーザ溶着することを特徴とする。
次に、請求項5に係る発明は、
ガスバリア膜の評価方法を前提とし、
請求項1記載の評価サンプルを用いてガスバリア膜のガスバリア性能を評価することを特徴とする。
請求項1に係る評価サンプルは、ガスバリア膜を内側にして対峙しかつ外周縁部が閉止された一対のガスバリア膜付フィルムにより構成され、ガスバリア膜付フィルムの内側中央部に隙間空間が形成されてこの空間内に不活性ガスが充填されていると共に、隙間空間内において対峙する上記ガスバリア膜の少なくとも一方のガスバリア膜表面に評価用のカルシウム膜が成膜されていることを特徴としている。
そして、一対のガスバリア膜付フィルムにより構成されていることから、構成部品における熱膨張率の差がほとんどないため、上述の環境試験装置内に投入された際にサンプル封止部分に亀裂等が発生する恐れがほとんどない。
また、一対のガスバリア膜付フィルムにより構成されていることから、サンプル封止部分の信頼性を向上させるためこの部分の面積を広くすることも可能となる。
更に、一対のガスバリア膜付フィルムにより構成されていることから、接着剤による封止以外の方法が利用できるため、評価サンプルの製造上の自由度を増大させることが可能となる。
次に、請求項2に係る評価サンプルの製造方法は、少なくとも一方のガスバリア膜表面に評価用のカルシウム膜が成膜された一対のガスバリア膜付フィルムをガスバリア膜が内側となるように対向して配置し、かつ、ガスバリア膜付フィルムの少なくとも一方のフィルム中央部を吸引して外側面が凸となるように湾曲させると共に、この湾曲を保った状態で上記ガスバリア膜付フィルムの外周縁部を閉止して不活性ガスが充填された上記隙間空間を形成することを特徴としている。
従って、請求項2〜4に係る評価サンプルの製造方法により、請求項1記載の評価サンプルを簡便かつ確実に製造することが可能となる。
また、請求項5に係るガスバリア膜の評価方法によれば、単純な構造でかつ信頼性の高い請求項1記載の評価サンプルを用いて行う方法のため、上記評価精度を向上させることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図2(A)〜(C)に示す本発明に係る評価サンプルは、スパッタリング装置、および、窒素雰囲気に調整されたグローブボックス付の真空蒸着装置を用いて以下のような工程を経て製造されている。
まず、円形にカットされた厚さ約0.2mm、直径100mmの住友ベークライト社製PES(ポリエーテルサルフォン)フィルム8、12の片面に、住友金属鉱山(株)社製Siターゲットを用いたスパッタリング法によりSiOを約100nm成膜してガスバリア膜9、13をそれぞれ形成し、一対のガスバリア膜付フィルムを製造した。
そして、得られた一方のガスバリア膜付フィルムについてその中心部の直径60mmの範囲にカルシウム膜とアルミニウム膜が成膜できるようにマスクを重ね合わせてから、窒素雰囲気に調整されたグローブボックス付真空蒸着装置の真空チャンバー内に上記ガスバリア膜付フィルムをセットし、1×10−4Paまで排気した後、関東化学(株)社製カルシウムを成膜速度0.5nm/秒で約200nm成膜して図2(A)に示すようにカルシウム膜10を形成し、かつ、このカルシウム膜10上に高純度化学研究所社製アルミニウムを成膜速度0.5nm/秒で約100nm成膜して図2(A)に示すようにアルミニウム膜11を形成した。
次に、真空蒸着装置の上記真空チャンバー内を窒素で満たした後、カルシウム膜10とアルミニウム膜11が形成された上記ガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていない他方のガスバリア膜付フィルムを真空チャンバーに接続している窒素雰囲気(酸素濃度<2ppm、水蒸気濃度<2ppm)のグローブボックスに移動させた。
次に、カルシウム膜10とアルミニウム膜11が形成されたガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていないガスバリア膜付フィルム16をそれぞれ図3に示すような直径80mmの吸引治具17に乗せ吸引してガスバリア膜付フィルム16の中心部を凹面に湾曲させ、かつ、ガスバリア膜付フィルム16の直径90〜95mm付近にナガセケムテックス社製紫外線硬化樹脂(商品名 XNR5516)14(図2B参照)を図示外のディスペンサーで塗布して2枚のガスバリア膜付フィルム中心部に空間ができるように貼り合わせると共に、紫外線を照射して上記紫外線硬化樹脂を硬化させた。尚、図3中、符号18はOリングを示す。
更に、2枚のガスバリア膜付フィルム端部に図2(B)に示すようにガスバリアン社製トールシール(2液混合シール剤)15でシーリングし、最後に、吸引治具17の排気を停止して貼り合わされた一対のガスバリア膜付フィルムを取り外し、図2(A)〜(C)に示す本発明の評価サンプルを作製した。
ここで、図1に示す従来の評価サンプルは、ガスバリア膜付フィルム50とガラス製キャップ5とで構成されているため、これ等部材の接着封止には紫外線硬化樹脂等の接着剤を用いる方法しか利用できなかった。
これに対し、図2(A)〜(C)に示す本発明の評価サンプルは、同一材料で構成されるフィルム同士を接合して得られているため、接着剤による接合方法以外にもレーザ溶着による接合方法を利用することが可能である。レーザ溶着に使用するレーザにはフィルムに吸収される波長域が最適であり、PESフィルム等の溶着には発振波長10.6μmの炭酸ガスレーザが適用できる。尚、一般的に樹脂は赤外波長域に強い吸収性を有するため、照射レーザのエネルギーを表面近傍ですべて吸収し樹脂内部にまでレーザのエネルギーが到達し難いが、厚さ数100μmのフィルムなら特に問題とはならない。
そこで、紫外線硬化樹脂による接合方法が適用された上記評価サンプルに加えてレーザ溶着による接合方法を適用した本発明に係る評価サンプルも合わせて作製した。
すなわち、図2に示す評価サンプルと同様、円形にカットされた厚さ約0.2mm、直径100mmの住友ベークライト社製PES(ポリエーテルサルフォン)フィルム19、23(図4A、図4B参照)の片面に、住友金属鉱山(株)社製Siターゲットを用いたスパッタリング法によりSiOを約100nm成膜してガスバリア膜20、24をそれぞれ形成し、一対のガスバリア膜付フィルムを製造した。
そして、得られた一方のガスバリア膜付フィルムについてその中心部の直径60mmの範囲にカルシウム膜とアルミニウム膜が成膜できるようにマスクを重ね合わせてから、窒素雰囲気に調整されたグローブボックス付真空蒸着装置の真空チャンバー内に上記ガスバリア膜付フィルムをセットし、1×10−4Paまで排気した後、関東化学(株)社製カルシウムを成膜速度0.5nm/秒で約200nm成膜して図4(A)に示すようにカルシウム膜21を形成し、かつ、このカルシウム膜21上に高純度化学研究所社製アルミニウムを成膜速度0.5nm/秒で約100nm成膜して図4(A)に示すようにアルミニウム膜22を形成した。
次に、真空蒸着装置の上記真空チャンバー内を窒素で満たした後、カルシウム膜21とアルミニウム膜22が形成された上記ガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていない他方のガスバリア膜付フィルムを真空チャンバーに接続している窒素雰囲気(酸素濃度<2ppm、水蒸気濃度<2ppm)のグローブボックスに移動させた。
次に、カルシウム膜21とアルミニウム膜22が形成されたガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていないガスバリア膜付フィルムをそれぞれ図3に示すような直径80mmの吸引治具17に乗せ吸引してガスバリア膜付フィルムの中心部を凹面に湾曲させ、かつ、直径90mmの円周領域25(図4B参照)をレーザ溶着して接着封止した。尚、レーザ溶着の熱の影響によりガスバリア膜付フィルムの特性が変質していることも考えられるため、レーザ溶着を行った部分と2枚のフィルム端部にガスバリアン社製トールシール(2液混合シール剤26、27:図4B参照)でシーリングを施し、最後に吸引治具17の排気を停止して接着封止された一対のガスバリア膜付フィルムを取り外し、図4(A)〜(C)に示す本発明の変形例に係る評価サンプルを作製した。
そして、得られたこれ等の評価サンプルを環境試験装置(温度60℃、湿度95%)に投入し、カルシウム膜の腐食観察に基づきガスバリア特性を求めた。この腐食の観察は、フィルム側からでも最表面のアルミニウム側からでも可能であった。
以下、本発明の実施例について比較例と共に具体的に説明する。
以下に示す実施例に係る4種類(1)〜(4)の評価サンプルと、比較例に係る1種類(5)の評価サンプルを製作してそれぞれ評価した。
(1)カルシウム膜とアルミニウム膜が形成されたガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていないガスバリア膜付フィルムの2枚とも湾曲させて紫外線硬化樹脂で接合させた本発明に係る評価サンプル
(2)カルシウム膜とアルミニウム膜が形成されたガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていないガスバリア膜付フィルムの内、後者のカルシウム膜等が形成されていないガスバリア膜付フィルムのみ湾曲させて紫外線硬化樹脂で接合させた本発明に係る評価サンプル
(3)カルシウム膜とアルミニウム膜が形成されたガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていないガスバリア膜付フィルムの2枚とも湾曲させてレーザ溶着で接合させた本発明に係る評価サンプル
(4)カルシウム膜とアルミニウム膜が形成されたガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていないガスバリア膜付フィルムの内、後者のカルシウム膜等が形成されていないガスバリア膜付フィルムのみ湾曲させてレーザ溶着で接合させた本発明に係る評価サンプル
(5)カルシウム膜とアルミニウム膜が形成されたガスバリア膜付フィルムを石英製キャップで覆って紫外線硬化樹脂で接合させた比較例に係る評価サンプル
[評価サンプル作製における共通工程]
まず、円形にカットされた厚さ約0.2mm、直径100mmの2枚の住友ベークライト社製PES(ポリエーテルサルフォン)フィルム片面に、住友金属鉱山(株)社製Siターゲットを用いたスパッタリング法によりSiOを約100nm成膜してガスバリア膜をそれぞれ形成し、一対のガスバリア膜付フィルムを製造した。
そして、得られた一方のガスバリア膜付フィルムについてその中心部の直径60mmの範囲にカルシウム膜とアルミニウム膜が成膜できるようにマスクを重ね合わせてから、窒素雰囲気に調整されたグローブボックス付真空蒸着装置の真空チャンバー内に上記ガスバリア膜付フィルムをセットし、1×10−4Paまで排気した後、関東化学(株)社製カルシウムを成膜速度0.5nm/秒で約200nm成膜してカルシウム膜を形成し、かつ、このカルシウム膜上に高純度化学研究所社製アルミニウムを成膜速度0.5nm/秒で約100nm成膜してアルミニウム膜を形成した。
次に、真空蒸着装置の上記真空チャンバー内を窒素で満たした後、カルシウム膜とアルミニウム膜が形成された上記ガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていない他方のガスバリア膜付フィルムを真空チャンバーに接続している窒素雰囲気(酸素濃度<2ppm、水蒸気濃度<2ppm)のグローブボックスに移動させた。
[本発明に係る評価サンプル(1)]
次に、カルシウム膜とアルミニウム膜が形成された上記ガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていない他方のガスバリア膜付フィルムをそれぞれ図3に示すような直径80mmの吸引治具17に乗せ吸引してガスバリア膜付フィルムの中心部を凹面に湾曲させ、かつ、ガスバリア膜付フィルムの直径90〜95mm付近にナガセケムテックス社製紫外線硬化樹脂(商品名 XNR5516)をディスペンサーで塗布して2枚のガスバリア膜付フィルム中心部に空間ができるように貼り合わせると共に、紫外線を照射して上記紫外線硬化樹脂を硬化させた。
更に、2枚のガスバリア膜付フィルム端部にガスバリアン社製トールシール(2液混合シール剤)でシーリングし、最後に、吸引治具17の排気を停止して貼り合わされた一対のガスバリア膜付フィルムを取り外し、図2(A)〜(C)に示す本発明に係る評価サンプル(1)を作製した。
尚、中央部には約0.4mmの隙間空間が形成されていた。
[本発明に係る評価サンプル(2)]
次に、カルシウム膜等が形成されていない他方のガスバリア膜付フィルムを図3に示すような直径80mmの吸引治具17に乗せ吸引してガスバリア膜付フィルムの中心部を凹面に湾曲させ、かつ、ガスバリア膜付フィルムの直径90〜95mm付近にナガセケムテックス社製紫外線硬化樹脂(商品名 XNR5516)をディスペンサーで塗布すると共に、中心部が湾曲された上記ガスバリア膜付フィルムに対しカルシウム膜とアルミニウム膜が形成されかつ表面平坦のガスバリア膜付フィルムを中央部に空間ができるように貼り合わせると共に、紫外線を照射して上記紫外線硬化樹脂を硬化させた。
更に、2枚のガスバリア膜付フィルム端部にガスバリアン社製トールシール(2液混合シール剤)でシーリングし、最後に、吸引治具17の排気を停止して貼り合わされた一対のガスバリア膜付フィルムを取り外し本発明に係る評価サンプル(2)を作製した。
尚、中央部には約0.2mmの隙間空間が形成されていた。
[本発明に係る評価サンプル(3)]
次に、カルシウム膜とアルミニウム膜が形成された上記ガスバリア膜付フィルムおよびカルシウム膜等が形成されていない他方のガスバリア膜付フィルムをそれぞれ図3に示すような直径80mmの吸引治具17に乗せ吸引してガスバリア膜付フィルムの中心部を凹面に湾曲させ、かつ、2枚のガスバリア膜付フィルム中心部に空間ができるように重ね合わせてから発振波長10.6μmの炭酸ガスレーザを用いて直径90mmの円周領域25(図4B参照)をレーザ溶着して接着封止した。
更に、レーザ溶着を行った部分の両面と2枚のガスバリア膜付フィルム端部にガスバリアン製トールシール(2液混合シール剤26、27:図4B参照)でシーリングを施し、最後に吸引治具17の排気を停止して接着封止された一対のガスバリア膜付フィルムを取り外し、図4(A)〜(C)に示す本発明に係る評価サンプル(3)を作製した。
尚、中央部には約0.4mmの隙間空間が形成されていた。
[本発明に係る評価サンプル(4)]
次に、カルシウム膜等が形成されていない他方のガスバリア膜付フィルムを図3に示すような直径80mmの吸引治具17に乗せ吸引してガスバリア膜付フィルムの中心部を凹面に湾曲させ、かつ、湾曲されたこのガスバリア膜付フィルムに対しカルシウム膜とアルミニウム膜が形成されかつ表面平坦のガスバリア膜付フィルムを中央部に空間ができるように重ね合わせてから発振波長10.6μmの炭酸ガスレーザを用いて直径90mmの円周領域をレーザ溶着して接着封止した。
更に、レーザ溶着を行った部分の両面と2枚のガスバリア膜付フィルム端部にガスバリアン製トールシール(2液混合シール剤)でシーリングを施し、最後に吸引治具17の排気を停止して接着封止された一対のガスバリア膜付フィルムを取り外し本発明に係る評価サンプル(4)を作製した。
尚、中央部には約0.2mmの隙間空間が形成されていた。
[比較例に係る評価サンプル(5)]
比較例に係る評価サンプル(5)は、カルシウム膜とアルミニウム膜をガスバリア膜付フィルム中心部の直径20mmの範囲に成膜できるように上記マスクサイズを変更して作製している。
また、直径30mm、厚さ2mmの円柱形石英に、内径24mm、深さ1mmの切削(ざくり)加工を施し円形凹部を形成して石英製キャップを得ている。
そして、得られた石英製キャップの開口縁にナガセケムテックス社製の紫外線硬化樹脂(商品名 XNR5516)をディスペンサーで塗布し、かつ、カルシウム膜とアルミニウム膜が形成されたガスバリア膜付フィルムを覆うように石英製キャップを被せてから紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させた。更に、石英製キャップの側面とガスバリア膜付フィルム間にはガスバリアン製トールシール(2液混合シール剤)でシーリングを施して比較例に係る評価サンプル(5)を作製した。
尚、石英製キャップと上記ガスバリア膜付フィルムには1mmの隙間空間が形成されていた。
[評価サンプルを用いたガスバリア性能の評価]
次に、これ等5種類の評価サンプル(1)〜(5)を環境試験装置(高温高湿試験:温度60℃、湿度95%)にそれぞれ投入し、一定時間ごとに取出してカルシウム膜とアルミニウム膜が成膜されたガスバリア膜付フィルム側から50倍のTVカメラ付顕微鏡で上記カルシウム膜を観察し、かつ、TVカメラから静止画像をパソコンに取り込むと共に、図5に示すアルゴリズムによる画像解析に基づきカルシウム膜の腐食面積を求めた。
すなわち、パソコンに取り込まれた静止カラー画像(図6A参照)を3色分解して静止画像のR成分、G成分およびB成分をそれぞれ求め、かつ、各成分から透明に変化している部位を検出するため二値化閾値設定(画像濃度D:この濃度Dより明るい画素は透明になっていると判断して腐食された部位とする)を行って各成分毎の二値化画像(すなわち、画像濃度Tが上記濃度Dより明るい場合は腐食部位:D=1とし、濃度Dより暗い場合は非腐食部位:D=0として「1、0」の二値化信号に変換する)を得ると共に、得られた各二値化画像の内に1つでもD=1の腐食部位が存在すれば腐食部位として表示するOR画像を得る。
そして、任意な形状を有する腐食部位の画像について、図6(B)〜(C)に示すように「1画素膨張」を2回繰り返すと共に、図6(D)に示すように切欠き部分を閉じて「1画素クローズ」を行い(すなわち、円形状画像に変換する)、更に、図6(E)に示すように「1画素穴埋め」を行った後、元の大きさに戻すため図6(F)〜(G)に示すように「1画素収縮」を2回繰り返し、かつ、「ラベリング」を経てカルシウム膜における腐食部位の「面積合計」を求める。
このような方法により得られた5種類の評価サンプル(1)〜(5)における腐食面積の時間変化を図7に示す。そして、図7のグラフ図からカルシウムの成膜面積[本発明に係る評価サンプル(1)〜(4)は直径60mmの範囲にカルシウム膜とアルミニウム膜が成膜されているのに対し、比較例に係る評価サンプル(5)は直径20mmの範囲にカルシウム膜とアルミニウム膜が成膜されている]にほぼ比例して腐食面積が増加していることが確認される。
カルシウムの上記成膜面積を考慮した場合、図7のグラフ図に示された結果から、本発明に係る評価サンプル(1)〜(4)は従来の評価サンプル[比較例に係る評価サンプル(5)]と同等の性能を評価することができると考えられる。ここで、本発明に係る評価サンプル(1)〜(4)を用いてガスバリア膜の性能が正しく評価されるためには、カルシウム膜とアルミニウム膜を形成したガスバリア膜付フィルム側から透過した酸素および水蒸気のみに起因してカルシウム膜が腐食されていることが前提となる。すなわち、評価期間内において、カルシウム膜等が形成されていない他方のガスバリア膜付フィルム側から透過する酸素および水蒸気も上記カルシウム膜の腐食に関与するような場合、カルシウム膜を形成したガスバリア膜付フィルム側から透過する酸素および水蒸気の透過レベルを評価したことにならないからである。例えば、評価サンプルにおけるガスバリア膜のガスバリア性能が極端に悪い場合、試験環境が非常に厳しい場合、あるいは、評価期間が非常に長期に亘る等の場合、カルシウム膜等が形成されていない他方のガスバリア膜付フィルム側から透過する酸素および水蒸気を無視できなくなり、上記ガスバリア膜付フィルム側から透過した酸素および水蒸気が、カルシウム膜とアルミニウム膜を形成したガスバリア膜付フィルムの上記アルミニウム膜からカルシウム膜の腐食反応に関与してしまい、カルシウム膜を形成したガスバリア膜付フィルム側から透過する酸素および水蒸気の透過レベルを評価したことにならないからである。そして、図7のグラフ図に示された結果から、本発明に係る評価サンプル(1)〜(4)は、上述したように従来の評価サンプルと同等の性能を評価することができ、かつ、紫外線硬化樹脂とレーザ溶着による接合方法による性能差もなかったことが確認された。
他方、環境試験装置の試験条件を変えて同様の実験を行った。すなわち、5種類の評価サンプル(1)〜(5)を環境試験装置(温度サイクル試験:温度10℃、湿度95%の試験条件と、温度90℃、湿度95%の試験条件を1時間/サイクルで変更する)に投入し、一定時間ごとに取出してカルシウム膜とアルミニウム膜が成膜されたガスバリア膜付フィルム側から50倍のTVカメラ付顕微鏡で上記カルシウム膜を観察し、かつ、TVカメラから静止画像をパソコンに取り込むと共に、図5に示すアルゴリズムによる画像解析に基づきカルシウム膜の腐食面積を求めた。
そして、5種類の評価サンプル(1)〜(5)における腐食面積の時間変化を図8に示す。図8のグラフ図から、試験開始付近は、カルシウムの成膜面積[本発明に係る評価サンプル(1)〜(4)は直径60mmの範囲にカルシウム膜とアルミニウム膜が成膜されているのに対し、比較例に係る評価サンプル(5)は直径20mmの範囲にカルシウム膜とアルミニウム膜が成膜されている]にほぼ比例して腐食面積が増加していることが確認される。しかし、試験途中から従来の評価サンプル[比較例に係る評価サンプル(5)]はその腐食面積が急激に増加している。顕微鏡で観察したところ、従来の評価サンプルは円形に成膜されたカルシウム膜の周囲一部の腐食が激しいことが確認された。
このことから、ガラス製キャップを用いた従来の評価サンプルは、温度サイクルによるガラス製キャップとPESフィルムの熱膨張率の差異に起因して発生した接合部分の一部欠陥から酸素あるいは水蒸気が侵入してしまった可能性が高いことが推測される。
他方、本発明に係る評価サンプル(1)〜(4)は図7のグラフ図と同様の傾向を示しており、単純な構造でかつ信頼性の高い評価サンプルであることが確認される。
従って、ガラス製キャップを用いた従来の評価サンプルと比較し、本発明に係る評価サンプル(1)〜(4)を用いたガスバリア膜の評価方法はその精度が高いことが確認される。
本発明に係る評価サンプルは、一対のガスバリア膜付フィルムにより構成されていることから構成部品における熱膨張率の差がほとんどないため、環境試験装置内に投入された際にサンプル封止部分に亀裂等が発生する恐れがほとんどない。従って、カルシウム法を実施する際に使用される評価サンプルとして利用される可能性を有している。
カルシウム法を実施する際に使用される従来の評価サンプルの構成説明図。 図2(B)はカルシウム法を実施する際に使用される本発明に係る評価サンプルの構成説明図、図2(A)は図2(B)の符号Aで示す部位の拡大図、図2(C)は図2(B)の符号Cで示す部位の拡大図。 本発明に係る評価サンプルを製造する際に利用される吸引治具の構成説明図。 図4(B)はカルシウム法を実施する際に使用される本発明の変形例に係る評価サンプルの構成説明図、図4(A)は図4(B)の符号Aで示す部位の拡大図、図4(C)は図4(B)の符号Cで示す部位の拡大図。 本発明に係る評価サンプルを用いたガスバリア膜のガスバリア性能を評価する方法の画像解析アルゴリズムを示すフローチャート図。 本発明に係る評価サンプルを用いたガスバリア膜のガスバリア性能を評価する方法の画像解析の一部を示す説明図。 実施例と比較例に係る評価サンプルを用いた評価方法の環境試験期間とカルシウム膜の腐食面積との関係を示すグラフ図。 実施例と比較例に係る評価サンプルを用いた評価方法の環境試験期間とカルシウム膜の腐食面積との関係を示すグラフ図。
符号の説明
1 フィルム
2 ガスバリア膜
3 カルシウム膜
4 アルミニウム膜
5 ガラス製キャップ
6 紫外線硬化樹脂
7 シール剤
8 PESフィルム
9 ガスバリア膜
10 カルシウム膜
11 アルミニウム膜
12 PESフィルム
13 ガスバリア膜
14 紫外線硬化樹脂
15 シール剤
16 ガスバリア膜付フィルム
17 吸引治具
18 Oリング
19 PESフィルム
20 ガスバリア膜
21 カルシウム膜
22 アルミニウム膜
23 PESフィルム
24 ガスバリア膜
25 円周領域(レーザ溶着部分)
26 シール剤
27 シール剤
50 ガスバリア膜付フィルム

Claims (5)

  1. 少なくとも片面にガスバリア膜が設けられたガスバリア膜付フィルムにおける上記ガスバリア膜のガスバリア性能について、ガスバリア膜表面に成膜したカルシウム膜の腐食状態から評価するカルシウム法を実施する際に使用される評価サンプルにおいて、
    ガスバリア膜を内側にして対峙しかつ外周縁部が閉止された一対のガスバリア膜付フィルムにより構成され、ガスバリア膜付フィルムの内側中央部に隙間空間が形成されてこの空間内に不活性ガスが充填されていると共に、隙間空間内において対峙する上記ガスバリア膜の少なくとも一方のガスバリア膜表面に評価用のカルシウム膜が成膜されていることを特徴とする評価サンプル。
  2. 請求項1記載の評価サンプルを製造する方法において、
    少なくとも一方のガスバリア膜表面に評価用のカルシウム膜が成膜された一対のガスバリア膜付フィルムをガスバリア膜が内側となるように対向して配置し、かつ、ガスバリア膜付フィルムの少なくとも一方のフィルム中央部を吸引して外側面が凸となるように湾曲させると共に、この湾曲を保った状態で上記ガスバリア膜付フィルムの外周縁部を閉止して不活性ガスが充填された上記隙間空間を形成することを特徴とする評価サンプルの製造方法。
  3. 上記ガスバリア膜付フィルムの外周縁部をレーザ溶着により閉止することを特徴とする請求項2に記載の評価サンプルの製造方法。
  4. 発振波長10.6μmの炭酸ガスレーザを用いてレーザ溶着することを特徴とする請求項3に記載の評価サンプルの製造方法。
  5. 請求項1記載の評価サンプルを用いてガスバリア膜のガスバリア性能を評価することを特徴とするガスバリア膜の評価方法。
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