JP2007252351A - 青枯れ病菌感染性バクテリオファージ - Google Patents
青枯れ病菌感染性バクテリオファージ Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)より単離され、ラルストニア ソラナセラムのC−319株、M4S株、Ps29株、Ps65株、Ps72株、Ps74株、MAFF106603株、MAFF106611株、MAFF211270株、MAFF211271株、MAFF211272株、MAFF301556株、MAFF301558株、MAFF730138株及びMAFF730139株のすべてに溶菌性を示すバクテリオファージ。
【選択図】なし
Description
しかしながら、これまで報告されているバクテリオファージは、溶菌スペクトルが狭く、宿主範囲、地理的分布、病原性、疫学的特徴から多くの系統が存在する青枯れ病菌を有効に防除するには十分なものではない。
(1)ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)より単離され、ラルストニア ソラナセラムのC−319株、M4S株、Ps29株、Ps65株、Ps72株、Ps74株、MAFF106603株、MAFF106611株、MAFF211270株、MAFF211271株、MAFF211272株、MAFF301556株、MAFF301558株、MAFF730138株及びMAFF730139株のすべてに溶菌性を示すバクテリオファージ。
(2)上記バクテリオファージを有効成分として含有する青枯れ病の防除剤。
(3)上記バクテリオファージを有効成分として含有する土壌改良剤。
(4)上記バクテリオファージを植物又は土壌に散布することを特徴とする青枯れ病の防除方法。
(5)上記バクテリオファージを水耕栽培又は溶液栽培の培養液に添加することを特徴とする青枯れ病の防除方法。
(6)上記バクテリオファージを土壌に添加することを特徴とする土壌の改良方法。
ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)は、トマト、ナス、タバコなど200種以上の農作物に対して、青枯れ病(立ち枯れ病)を引き起こす多犯性の土壌伝染細菌である。本明細書においては、「青枯れ病菌」とも云う。
斯かる宿主特異性は、後記実施例3に示すように、特開2005−278513号公報(特許文献1)に記載のタイプ1、タイプ2及びタイプ3に属するバクテリオファージとは、異なるものである。
Ps29株は、タバコより分離されたレース1の菌株であり、Ozawa H,Tanaka H, IchinoseT, Shiraishi T, and Yamada T. Bacterialphage P4282, a parasite of Ralstonia solanacearum, encodes a bacteriolytic protein, important for lytic infection of its host. Molecular Genetics and Genomics (2001) 265:95-101に記載の菌株である。
C−319株、Ps65株、Ps72株及びPs74株は、タバコより分離されたレース1の菌株である。
C−319株、M4S株、Ps29株、Ps65株、Ps72株及びPs74株は、山陰建設工業(島根県出雲市)より分譲された菌株である。
MAFF106603株は、レース1、biovar 3の菌株であり、MAFF106611株は、レース1、biovar 4の菌株であり、MAFF211270株は、レース1、biovar N2の菌株であり、MAFF211271株は、レース3、biovar N2の菌株であり、MAFF211272株は、レース4、biovar 4の菌株であり、MAFF301556株はレース1、biovar 4の菌株であり、MAFF301558株は、レース3、biovar N2の菌株であり、MAFF730138株は、レース1、biovar 3の菌株であり、MAFF730139株は、レース1、biovar 4の菌株である。MAFF106603株、MAFF106611株、MAFF211270株、MAFF211271株、MAFF211272株、MAFF301556株、MAFF301558株、MAFF730138株及びMAFF730139株は、農林水産省生物資源研究所発行の微生物遺伝資源利用マニュアル(12)、堀田光生・土屋健一、平成14年3月に記載の菌株で、農林水産省生物資源研究所農業生物資源ジーンバンクより分譲が可能である。
そして、このうち、「RSA1」と命名されたバクテリオファージが特に好ましい。
RSA1は、本出願人において分譲可能な状態で保管されている。尚、当該RSA1は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託を申請(NITE AP-210(平成18年2月22日))したが、拒否された。
1.形態
図1に示すとおり、バクテリオファージRSA1は、正二十面体型の頭部と線上の尾部とから構成されるものである。これは、前記非特許文献1に記載のP4282ファージとは、P4282ファージは頭部の直径が約70nm、尾部が約20nmであるのに対して、RSA1は頭部の直径が約40nm、尾部が約100nmである点で異なる。
バクテリオファージRSA1のゲノムは、2本鎖DNAよりなり、制限酵素(SmaI)処理による断片のパターンは、図2に示すとおりであり、特許文献1に記載のタイプ1〜3のバクテリオファージとは異なる(実施例5)。
電気泳動により決定したRSA1のゲノムサイズは、約39Kbpであり(図2)、非特許文献2のPK101ファージ(約35Kbp)、とは異なる。
また、RSA1の塩基配列を決定したところ、サイズは38,820bpであり、全ゲノムが決定されているラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)GMI1000株のゲノム中に、RSA1の配列と非常に高い相同性を示す領域が存在しており(図3)、RSA1はラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)のゲノム中に溶原化され保持される可能性を示している。
以上より、バクテリオファージRSA1は、文献未記載の新規な青枯れ病菌感染性バクテリオファージであると云える。
ポリペプトン10.0g、カザミノ酸1.0g、及びグルコース5.0gを、蒸留水1,000mlに加えて、CPG液体培地を調製した。このCPG液体培地を用いて、青枯れ病菌の各菌株を28℃で旋回培養(200rpm)又は振とう培養(300rpm)した。
プラークアッセイ・分離方法により青枯れ病菌MAFF211272株よりバクテリオファージRSA1を分離した。
ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)MAFF211272株をCPG培地で旋回培養し、この培養液250μLを4mlのtop agarに混合して、CPG寒天培地(上記CPG液体培地に17.0gの寒天を添加した培地)上に広げた。28℃で12時間〜48時間培養後、プラークを検出した。単一プラークの中央部分を滅菌爪楊枝でつつき、青枯れ病菌(M4S株)の培養液(OD600=0.1〜0.5)に添加してバクテリオファージを増幅した。増幅後、遠心上清を0.2μm孔のフィルターで濾過滅菌し、バクテリオファージRSA1を分離した。
このファージRSA1は青枯れ病菌 MAFF211272株に溶原化していた可能性がある。
尚、RSA1は、平成18年2月15日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託申請したが(受領番号NITE AP-210(平成18年2月22日))、平成18年3月28日に受託の拒否がなされた。
バクテリオファージRSA1の青枯れ病菌の各菌株に対する宿主特異性をプラークアッセイ法によって調べた。実施例2で分離したバクテリオファージRSA1を、実施例1で得た青枯れ病菌の各菌株の培養液(OD600=0.1〜0.5)に混合し、28℃で1時間だけ保温後、4mlのtop agarに混合してCPG寒天培地上に広げ、プラークアッセイを行った。青枯れ病菌の検定菌として、病原性、疫学的特徴、生理・生化学的性質が異なるラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)C319株、M4S株、Ps29株、Ps65株、Ps72株、Ps74株、MAFF106603株、MAFF106611株、MAFF211270株、MAFF211271株、MAFF211272株、MAFF301556株、MAFF301558株、MAFF730138株、MAFF730139株を用いた。
本発明者が青枯れ病菌からすでに単離している3種類のバクテリオファージ(特許文献1)との相同性を比較・検討するために、L-type(タイプ1ファージ)、M-type(タイプ3ファージ)、S-type(タイプ2ファージ)のバクテリオファージについても、同様の実験を行った。結果を表1に示す。
バクテリオファージRSA1の形態を透過型電子顕微鏡を用いて観察した。実施例2で示すバクテリオファージRSA1の濾過滅菌液10mlを、40,000gで1時間、遠心分離し、バクテリオファージRSA1を沈殿として得た。この沈殿を0.01mol/lのMgSO4を含む100μlのPBSに懸濁した。バクテリオファージの懸濁液をホルムバールの膜を張ったグリッドに滴下し、リンタングステン酸を用いてネガティブ染色後、透過型電子顕微鏡で観察した。この結果を図1に示す。
バクテリオファージRSA1より核酸を単離し解析した。RSA1のゲノムは2本鎖DNAよりなり、電気泳動でファージRSA1のゲノムサイズを決定したところ、図2に示すように約39kbpであった。RSA1より精製した未処理のDNA(図2A)、SmaI消化処理後のDNA(図2B)の電気泳動パターンより、RSA1のゲノムを解析したところ(図2Aにおいては、低濃度アガロースゲルを用いて電気泳動を行うことで、20Kbp以上のDNAを分離)、断片のパターンは、特許文献1及び非特許文献2のファージとは異なっていた(図2)。
RSA1の塩基配列を決定したところ、サイズは38,820bpであった。図3に示すようにラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)GMI1000株(全ゲノムが決定されている)のゲノム中に、ファージRSA1の配列と非常に高い相同性を示す領域が存在することが判明した。
ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)GMI1000株のゲノム中にファージRSA1のゲノムの配列と相同性が高い領域が存在する事は、RSA1はラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)のゲノム中に溶原化され保持される可能性を示している。
CPG寒天培地上で培養したラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)M4S株のシングルコロニーをCPG液体培地50mlに植菌し、28℃にて24〜48時間旋回培養した。この培養液10mlをCPG液体培地2,000mlに添加し、OD600=0.1(約5×107 cfu/ml)程度まで28℃にて4〜6時間旋回培養(120rpm)した。この培養液に、m.o.i.(The multiplicity of infectionの略、細胞一個あたりに対するファージの数)=0.0001〜0.1になるようあらかじめ希釈しておいたファージ液を10〜100ml添加した。ファージの希釈には、実施例1に示すCPG液体培地に、MgSO4が終濃度0.01mol/lになるように加えた溶液を用いた。28℃にて1時間静置後、28℃にて10時間以上旋回培養し(120rpm)、溶菌させることで大量のバクテリオファージ液を調製した。溶菌液は5×107〜5×109 pfu/mlのファージRSA1を含んでいた。
CPG寒天培地上で培養したラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)M4S株のシングルコロニーをCPG液体培地50mlに植菌し、28℃にて24時間旋回培養した。この培養液0.5mlをCPG液体培地100mlに添加し、OD600=0.1(約5×107 cfu/ml)程度まで28℃にて4〜6時間旋回培養(200rpm)した。この培養液に、あらかじめCPG液体培地にMgSO4が終濃度0.01mol/lになるように加えた溶液で希釈した、ファージRSA1の溶液を20μl加え、m.o.i.(The multiplicity of infectionの略、細胞一個あたりに対するファージの数)が0.01、0.001、0.0001になるよう感染させた。コントロールの試料にはファージを感染させなかった。28℃にて30分間静置後、28℃にて16時間、旋回培養し(200rpm)、2時間ごとにOD600を測定し、青枯れ病菌の増殖を記録した。結果を図4に示す。
圃場に散布する場合は圃場1平方メートル当り1×108〜1×1012pfuのファージを散布する。土壌に混合して使用する場合は土壌1Kgあたり1×1010〜1×1012pfuのファージを土壌に混合し使用する。
ファージRSA1を用いて、水耕栽培又は溶液栽培での青枯れ病菌の防除を行う。水耕栽培又は溶液栽培で用いる培養液に、ファージRSA1を1×103〜1×1010pfu/mlになるように添加し栽培する。
Claims (7)
- ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)より単離され、ラルストニア ソラナセラムのC−319株、M4S株、Ps29株、Ps65株、Ps72株、Ps74株、MAFF106603株、MAFF106611株、MAFF211270株、MAFF211271株、MAFF211272株、MAFF301556株、MAFF301558株、MAFF730138株及びMAFF730139株のすべてに溶菌性を示すバクテリオファージ。
- ラルストニア ソラナセラム(Ralstonia solanacearum) MAFF211272株より単離され、RSA1と命名された請求項1記載のバクテリオファージ。
- 請求項1又は2記載のバクテリオファージを有効成分として含有する青枯れ病の防除剤。
- 請求項1又は2記載のバクテリオファージを有効成分として含有する土壌改良剤。
- 請求項1又は2記載のバクテリオファージを植物又は土壌に散布することを特徴とする青枯れ病の防除方法。
- 請求項1又は2記載のバクテリオファージを水耕栽培又は溶液栽培の培養液に添加することを特徴とする青枯れ病の防除方法。
- 請求項1又は2記載のバクテリオファージを土壌に添加することを特徴とする土壌の改良方法。
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