JP2007246844A - 耐水グリースおよび該グリース封入ハブベアリング - Google Patents
耐水グリースおよび該グリース封入ハブベアリング Download PDFInfo
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Abstract
【課題】軸受運転時にグリース中に水が混入するような過酷な潤滑条件下でも、軸受の耐表面起点型剥離性を向上させる耐水グリース、および該グリースを用いた長寿命を示すハブベアリングを提供する。
【解決手段】非水系基油と、増ちょう剤と、水分散剤とが配合されてなり、含水率 20 重量%のときに測定した上記水分散剤により分散している水の粒子径が 50μm 以下であり、特に上記水分散剤が界面活性剤であり、非水系基油が鉱油であり、増ちょう剤がウレア系化合物である。
【選択図】図1
【解決手段】非水系基油と、増ちょう剤と、水分散剤とが配合されてなり、含水率 20 重量%のときに測定した上記水分散剤により分散している水の粒子径が 50μm 以下であり、特に上記水分散剤が界面活性剤であり、非水系基油が鉱油であり、増ちょう剤がウレア系化合物である。
【選択図】図1
Description
本発明は、水が混入する危険のある環境下で使用される軸受に封入する耐水グリースおよび該グリースを封入したハブベアリングに関する。
水が浸入する環境下で使用される軸受の代表例として自動車用ハブベアリングを挙げることができる。自動車用ハブベアリングは、1980年代になり、組込み性の向上を目的に第一世代ハブベアリングと呼ばれる、背面合わせ軸受の外輪を一体化した複列アンギュラ玉軸受、または複列円すいころ軸受が、自動車メーカで採用されるようになった。外輪を一体化することで、軸受組立て時に初期アキシャルすきまが適正値に設定されているため、自動車への組付け時に予圧調整が不要となった。次に、第一世代の外輪にフランジ部を設けた第二世代ハブベアリングと呼ばれる複列軸受が開発された。これは標準軸受のみでは軽量化やサイズダウンに限界があり、軸受の周辺部品である軸(ハブ輪)やハウジング(ナックル)とユニット化することで、部品点数の削減と軽量化を図った結果である。ナックルへの固定を圧入からボルト締結に変えることで、車体への組付けも容易となった。さらに、第三世代ハブベアリングでは、軸(ハブ輪)と軸受内輪を一体化し、余肉を削減するとともに、ラインの組立て性をさらに向上させている。最近では、ハブベアリングと等速ジョイントを一体化した第四世代ハブジョイントも開発されている。
近年の自動車用軸受(ホイールベアリング)は車体への組付け作業性、軽量化、小型化を考慮して、最近では第二世代、第三世代のホイールベアリングの採用が増加している。
軸受材質に着目すると、第一世代では内外輪ともに軸受鋼(例えばSUJ2)が用いられていたが、外輪にフランジが設けられる第二世代、第三世代のホイールベアリングでは、鍛造性が良く安価なS53Cなどの機械構造用炭素鋼が用いられるようになった。機械構造用炭素鋼は軌道部に高周波熱処理を施すことで、軸受部の転がり疲労強度を確保しているが、合金成分が少ないため表面強度が弱く、軸受鋼に比べ表面起点剥離への耐性が劣る。そのため、第一世代と同じ潤滑仕様では使用条件が厳しい場合に耐久性が劣ることがあった。
軸受材質に着目すると、第一世代では内外輪ともに軸受鋼(例えばSUJ2)が用いられていたが、外輪にフランジが設けられる第二世代、第三世代のホイールベアリングでは、鍛造性が良く安価なS53Cなどの機械構造用炭素鋼が用いられるようになった。機械構造用炭素鋼は軌道部に高周波熱処理を施すことで、軸受部の転がり疲労強度を確保しているが、合金成分が少ないため表面強度が弱く、軸受鋼に比べ表面起点剥離への耐性が劣る。そのため、第一世代と同じ潤滑仕様では使用条件が厳しい場合に耐久性が劣ることがあった。
ホイールベアリングはその用途から晴天での走行のみならず雨天、悪路、海岸での走行など使用環境が非常に悪い条件で使用される。軸受内への水や異物の侵入はシールにより抑えられてはいるものの完全なものではない。したがって、軸受内に水や異物が侵入することは免れない。さらに、省エネの観点からもハブベアリングの低トルク化が求められ、その方法の一つとしてシールの軽接触化が考えられる。したがって水が浸入する可能性がより高まり、軸受内の潤滑状態は悪くなる。この問題は各世代に共通のものであり、さらに軸受材料に構造用鋼を使用している第二世代、第三世代および第四世代のハブベアリングでは潤滑状態が悪いと表面起点型剥離が発生する危険性が大きくなる。
耐水グリースの改良については、低粘度基油の採用による回転トルクの低減(特許文献1参照)や、静電気除去のための導電性の付与(特許文献2参照)が知られているが、水がグリースに混入した時に軸受性能を維持するための配慮はなされていなかった。
軸受中に水が混入すると以下のことが問題となる。水滴が負荷域に浸入した場合、油膜が途切れ潤滑性の面で不利である、油膜が途切れることにより金属接触が起こり、摩耗、表面起点型の剥離(ピーリングやスミアリングなど)、早期剥離が発生する危険がある。早期剥離とは表面近傍に白色組織変化を伴った剥離や転動体の転動方向とそれとは逆方向に表面近傍で亀裂が進展する剥離を指す。また、軸受内での水の存在状態によっては軸受内部に錆が発生する。
特開2003−239999号公報
特開2004−169862号公報
耐水グリースの改良については、低粘度基油の採用による回転トルクの低減(特許文献1参照)や、静電気除去のための導電性の付与(特許文献2参照)が知られているが、水がグリースに混入した時に軸受性能を維持するための配慮はなされていなかった。
軸受中に水が混入すると以下のことが問題となる。水滴が負荷域に浸入した場合、油膜が途切れ潤滑性の面で不利である、油膜が途切れることにより金属接触が起こり、摩耗、表面起点型の剥離(ピーリングやスミアリングなど)、早期剥離が発生する危険がある。早期剥離とは表面近傍に白色組織変化を伴った剥離や転動体の転動方向とそれとは逆方向に表面近傍で亀裂が進展する剥離を指す。また、軸受内での水の存在状態によっては軸受内部に錆が発生する。
本発明は、このような問題に対処すべくなされたものであり、軸受運転時にグリース中に水が混入するような過酷な潤滑条件下でも、機械構造用炭素鋼を用いた軸受の耐表面起点型剥離性を向上させる耐水グリース、および該グリースを用いた長寿命を示すハブベアリングを提供することを目的とする。
本発明の耐水グリースは非水系基油と、増ちょう剤と、水分散剤とが配合されてなる耐水グリースであって、含水率 20 重量%のときに測定した上記水分散剤により分散している水の粒子径が 50μm 以下であることを特徴とする。特に上記水分散剤が界面活性剤であることを特徴とする。
本発明の耐水グリースを構成する非水系基油が鉱油であり、増ちょう剤がウレア系化合物であることを特徴とする。
本発明において、水の粒子径は荷重 600 N 下でガラスプレート上に押し広げた含水率 20 重量%のグリース中に分散している水滴の直径を顕微鏡にて測定した数値である。
本発明の耐水グリースを構成する非水系基油が鉱油であり、増ちょう剤がウレア系化合物であることを特徴とする。
本発明において、水の粒子径は荷重 600 N 下でガラスプレート上に押し広げた含水率 20 重量%のグリース中に分散している水滴の直径を顕微鏡にて測定した数値である。
本発明のハブベアリングは、上記耐水グリースが封入され、機械構造用炭素鋼からなる摺接部位を有するハブベアリングであることを特徴とする。
ここで、摺接部位とは、例えば後述の図1に示すようなハブベアリングにおいてハブ輪1および内輪2を有する内方部材5と、外輪である外方部材3と、両部材間に介在する複列の転動体4、4との転がり接触部をいう。また、本発明の耐水グリースはハブベアリング6において、内方部材5と、外方部材3と、両部材間を密封し複列の転動体4を軸方向に挟む形で取付けられた2個のシール部材7、8とに囲まれた環状空間に封入される。
ここで、摺接部位とは、例えば後述の図1に示すようなハブベアリングにおいてハブ輪1および内輪2を有する内方部材5と、外輪である外方部材3と、両部材間に介在する複列の転動体4、4との転がり接触部をいう。また、本発明の耐水グリースはハブベアリング6において、内方部材5と、外方部材3と、両部材間を密封し複列の転動体4を軸方向に挟む形で取付けられた2個のシール部材7、8とに囲まれた環状空間に封入される。
本発明の耐水グリースは、軸受に封入する耐水グリースであって、該グリースは、非水系基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに、浸入した水を微小粒子としてグリース中に分散させることができる分散剤を配合してあるので、軸受に浸入してきた水を一定以下の粒子径の微粒子として分散させることができる。そのため、グリース中に水が混入したとしても油膜形成の阻害を起こす水分の働きを抑制することができる。
このため、表面起点型剥離を抑えることができ、潤滑条件が過酷になっても封入された軸受を長寿命とすることができる。
錆止め作用についても、軸受を構成する鋼と、塊状の水成分との接触を少なくできるため錆の発生を抑制することができる。
このため、表面起点型剥離を抑えることができ、潤滑条件が過酷になっても封入された軸受を長寿命とすることができる。
錆止め作用についても、軸受を構成する鋼と、塊状の水成分との接触を少なくできるため錆の発生を抑制することができる。
本発明のハブベアリングは機械構造用炭素鋼からなる摺接部位を有するハブベアリングであって、該ハブベアリングに上記耐水グリースを封入しているので、ハブベアリングに水が混入しても油膜形成の阻害を起こす水分の働きを抑制することができる。このため、表面起点型剥離を抑えることができ、潤滑条件が過酷になっても長寿命を得ることができる。
機械構造用炭素鋼であり、かつ高周波熱処理を施された材料で一部が構成され、該材料を転動体との摺接部位に有し、水が浸入する危険のある箇所で使用される軸受の耐久性について検討した結果、グリース中に水を分散させることができる添加剤を配合することで、浸入してきた水を直径 50μm 以下の水滴に分散できるグリースを封入した軸受は、水が浸入しても転がり接触部の潤滑性能が低下することなく持続することを見出した。
これは水滴粒子径を制御できるグリースに浸入した水が微小な水粒子となってグリース中に分散させられ、連続相であるグリースに閉じ込められるので、グリースによる油膜形成を阻害することができないことにより軸受の耐久性が向上するものと考えられる。本発明はこのような知見に基づくものである。
これは水滴粒子径を制御できるグリースに浸入した水が微小な水粒子となってグリース中に分散させられ、連続相であるグリースに閉じ込められるので、グリースによる油膜形成を阻害することができないことにより軸受の耐久性が向上するものと考えられる。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明の耐水グリースは非水系基油と、増ちょう剤とからなるベースグリース中に、水を分散させることができる水分散剤を配合して得られる耐水グリースであって、含水率 20 重量%のとき水分散剤により分散している水の粒子径は 50μm 以下である。50μm 以下の水滴であれば、耐水グリースによる油膜形成を水分が阻害することはない。好ましくは 30μm 以下、さらに好ましくは 5〜25μm の範囲である。50μm 以上では油膜形成を阻害し軸受寿命を極端に短くする。
本発明において浸入してきた水の粒子径を制御できる分散剤としては、界面活性剤を使用できる。界面活性剤は、水がハブベアリングのグリースに浸入しても、油膜切れや発錆を起こさないようにグリース中の水分を無害化させるために用いられる。グリースに浸入した水は界面活性剤により微小な水粒子となってグリース中に分散させられる。グリースは連続相として存在できるので、油膜切れが生じないと考えられる。
また、同様に連続相であるグリースに閉じ込められた不連続相である水粒子はハブベアリング本体を構成する構造鋼と接触する確率も極めて低く、低い確率で構造鋼に付着した水粒子もハブベアリング本体の回転に連動する転動体の回転によりすぐに連続相であるグリースに置換されるので構造鋼を発錆させることができないと考えられる。
本発明に使用できる界面活性剤は、連続相であるグリース中に水粒子を不連続相として捕捉し易いW/O(油相(グリース)中に水相が分散している状態)型の界面活性剤であり、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表わすHLB(Hydrophilic-lipophilic Balance) 値が 5〜18 の範囲であることが好ましい。
また、同様に連続相であるグリースに閉じ込められた不連続相である水粒子はハブベアリング本体を構成する構造鋼と接触する確率も極めて低く、低い確率で構造鋼に付着した水粒子もハブベアリング本体の回転に連動する転動体の回転によりすぐに連続相であるグリースに置換されるので構造鋼を発錆させることができないと考えられる。
本発明に使用できる界面活性剤は、連続相であるグリース中に水粒子を不連続相として捕捉し易いW/O(油相(グリース)中に水相が分散している状態)型の界面活性剤であり、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表わすHLB(Hydrophilic-lipophilic Balance) 値が 5〜18 の範囲であることが好ましい。
本発明に用いる界面活性剤としては、具体的には、ポリアルキレングリコール系、カルボン酸アルキレングリコール系、カルボン酸ポリアルキレングリコール系等のグリコール系添加剤、カルボン酸グリセリン系、カルボン酸ポリオキシアルキルグリセリン系、カルボン酸グリセリル系等のグリセリン系添加剤、カルボン酸ポリグリセリル系、カルボン酸ポリオキシアルキレングリセリル系等のグリセリル系添加剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、カルボン酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系等のエーテル系添加剤、カルボン酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルジエステル系、ソルビタンエステル系等のエステル系添加剤、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油系、カルボン酸ポリオキシアルキレン硬化ひまし油系等のひまし油系添加剤、カルボン酸ポリオキシアルキレントリメチロールプロパン系添加剤、金属スルフォネート系添加剤等が挙げられる。これらのなかで金属スルフォネート系添加剤、ソルビタンエステル系添加剤、カルボン酸ポリアルキレングリコール系添加剤が好ましい。
本発明に使用できる界面活性剤の配合割合は、非水系基油と増ちょう剤とからなるベースグリース 100 重量部に対して 1〜5 重量部であることが好ましい。1 重量部未満の場合には界面活性剤が不足して水の粒子径が 50μm をこえ、グリースの潤滑油膜の形成が不十分となることから所期の効果を十分に得ることが困難になり、また、5 重量部をこえる場合には水の粒子径が 50μm より微小化するものの水を分散させる効果は頭打ちになりグリース特性を低下させる。
本発明の耐水グリースに使用できる非水系基油としては、例えば、鉱油、ポリ-α-オレフィン(以下、PAOと記す)油、エステル油、フェニルエーテル油、フッ素油、さらに、フィッシャートロプシュ反応で合成される合成炭化水素油(GTL基油)などが挙げられる。また、これらの混合物を使用できる。
鉱油としては、例えば、ナフテン系鉱油、パラフィン系鉱油、流動パラフィン、水素化脱ろう油などの通常潤滑油やグリースの分野で使用されているものをいずれも使用することができる。
PAO油としては、α-オレフィンの重合体、α-オレフィンとオレフィンとの共重合体、またはポリブテンなどが挙げられる。これらは、α-オレフィンの低重合体であるオリゴマーとし、その末端二重結合に水素を添加した構造である。また、α-オレフィンの一種であるポリブテンも使用でき、これはイソブチレンを主体とする出発原料から塩化アルミニウムなどの触媒を用いて重合して製造できる。ポリブテンは、そのまま用いても、水素添加して用いてもよい。
α-オレフィンのその他の具体例としては、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン等を挙げることができ、通常はこれらの混合物が使用される。
また、潤滑性能や価格を考慮すると、これらの非水系基油の中でも鉱油を使用することが好ましい。
鉱油としては、例えば、ナフテン系鉱油、パラフィン系鉱油、流動パラフィン、水素化脱ろう油などの通常潤滑油やグリースの分野で使用されているものをいずれも使用することができる。
PAO油としては、α-オレフィンの重合体、α-オレフィンとオレフィンとの共重合体、またはポリブテンなどが挙げられる。これらは、α-オレフィンの低重合体であるオリゴマーとし、その末端二重結合に水素を添加した構造である。また、α-オレフィンの一種であるポリブテンも使用でき、これはイソブチレンを主体とする出発原料から塩化アルミニウムなどの触媒を用いて重合して製造できる。ポリブテンは、そのまま用いても、水素添加して用いてもよい。
α-オレフィンのその他の具体例としては、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン等を挙げることができ、通常はこれらの混合物が使用される。
また、潤滑性能や価格を考慮すると、これらの非水系基油の中でも鉱油を使用することが好ましい。
本発明に使用できる非水系基油は、室温で液状を示し、40℃における動粘度が 30〜200 mm2 /sec である。好ましくは、40〜120 mm2/sec である。30 mm2/sec 未満の場合は、短時間で非水系基油が劣化し、生成した劣化物が非水系基油全体の劣化を促進するため、軸受の耐久性を低下させ短寿命となる。また、200 mm2/sec をこえると回転トルクの増加による軸受の温度上昇が大きくなるので好ましくない。
本発明においてベースグリース 100 重量部中に占める非水系基油の配合割合は、好ましくは 60〜99 重量部、さらに好ましくは 70〜95 重量部である。
非水系基油の配合割合が、65 重量部未満では、グリースが硬く低温時の潤滑性が悪い。また 98 重量部をこえると軟質で洩れ易くなる。
非水系基油の配合割合が、65 重量部未満では、グリースが硬く低温時の潤滑性が悪い。また 98 重量部をこえると軟質で洩れ易くなる。
本発明の耐水グリースに使用できる増ちょう剤としては、ベントン、シリカゲル、フッ素化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
ウレア系化合物は、例えば下記式(1)で表わされる。
(R2 は、炭素原子数 6〜15 の芳香族炭化水素基を、R1 およびR3 は、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数6〜12の芳香族基、脂環族基および脂肪族基から選ばれた少なくとも一つの基を、それぞれ示す。)
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
式(1)で表されるジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、3,3-ジメチル-4,4-ビフェニレンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
本発明においては、芳香族ジイソシアネートと、脂環族モノアミンおよび芳香族モノアミン、または芳香族モノアミン単体との反応で得られる脂環族−芳香族ウレア系化合物または芳香族ウレア系化合物が好ましい。
本発明においては、芳香族ジイソシアネートと、脂環族モノアミンおよび芳香族モノアミン、または芳香族モノアミン単体との反応で得られる脂環族−芳香族ウレア系化合物または芳香族ウレア系化合物が好ましい。
反応は、例えばモノアミン酸とジイソシアネート類を、70〜120℃程度の非水系基油中で十分に反応させた後、温度を上昇させ 120〜180℃で 1〜2 時間程度保持し、その後冷却し、ホモジナイザー、3 本ロールミル等を使用して均一化処理することによりなされ、各種配合剤を配合するためのベースグリースが得られる。
本発明においてベースグリース 100 重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、好ましくは 1〜40 重量部、さらに好ましくは 3〜25 重量部である。増ちょう剤の配合割合が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40 重量部をこえるとグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られにくくなる。
本発明においてベースグリース 100 重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、好ましくは 1〜40 重量部、さらに好ましくは 3〜25 重量部である。増ちょう剤の配合割合が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40 重量部をこえるとグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られにくくなる。
本発明の耐水グリースには、機能を損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、例えばアミン系、フェノール系、イオウ系化合物などの酸化防止剤、イオウ系、リン系化合物などの摩耗抑制剤、金属スルフォネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、金属スルフォネート、金属フォスフェートなどの清浄分散剤などが挙げられる。これらは単独または2種類以上組み合せて添加することができる。
本発明のハブベアリングの一例(従動輪用第三世代ハブベアリング)を図1に示す。図1は、ハブベアリングの断面図である。ハブベアリング6は、ハブ輪1および内輪2を有する内方部材5と、外輪である外方部材3と、複列の転動体4、4とを備えている。ハブ輪1はその一端部に車輪(図示せず)を取付けるための車輪取付けフランジ1dを一体に有し、外周に内側転走面1aと、この内側転送面1aから軸方向に延びる小径段部1bとが形成されている。
本明細書においては、軸方向に関して「外」とは、車両への組付け状態で幅方向外側をいい、「内」とは、幅方向中央側をいう。
ハブ輪1の小径段部1bには、外周に内側転走面2aが形成された内輪2が圧入されている。そして、ハブ輪1の小径段部1bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部1cにより、ハブ輪1に対して内輪2が軸方向へ抜けるのを防止している。
外方部材3は、外周に車体取付けフランジ3bを一体に有し、内周に外側転走面3a、3aと、これら複列の外側転走面3a、3aに対向する内側転走面1a、2aとの間には複列の転動体4、4が転動自在に収容されている。
本発明の耐水グリースはシール部材7と、外方部材3と、シール部材8と、内方部材5と、ハブ輪1とに囲まれた空間に封入され、外方部材3と、内方部材5とに挟まれた複列の転動体4、4の周囲を被覆し、転動体4、4の転動面と、内側転走面1a、2aおよび外側転走面3a、3aとの転がり接触部の潤滑に供される。
本発明の耐水グリースは、ハブベアリング以外の高負荷がかかる軸受にも使用することができる。
本明細書においては、軸方向に関して「外」とは、車両への組付け状態で幅方向外側をいい、「内」とは、幅方向中央側をいう。
ハブ輪1の小径段部1bには、外周に内側転走面2aが形成された内輪2が圧入されている。そして、ハブ輪1の小径段部1bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部1cにより、ハブ輪1に対して内輪2が軸方向へ抜けるのを防止している。
外方部材3は、外周に車体取付けフランジ3bを一体に有し、内周に外側転走面3a、3aと、これら複列の外側転走面3a、3aに対向する内側転走面1a、2aとの間には複列の転動体4、4が転動自在に収容されている。
本発明の耐水グリースはシール部材7と、外方部材3と、シール部材8と、内方部材5と、ハブ輪1とに囲まれた空間に封入され、外方部材3と、内方部材5とに挟まれた複列の転動体4、4の周囲を被覆し、転動体4、4の転動面と、内側転走面1a、2aおよび外側転走面3a、3aとの転がり接触部の潤滑に供される。
本発明の耐水グリースは、ハブベアリング以外の高負荷がかかる軸受にも使用することができる。
本発明のハブベアリングに使用できる材質は、軸受鋼、浸炭鋼、または機械構造用炭素鋼を挙げることができる。これらの中で鍛造性が良く安価なS53Cなどの機械構造用炭素鋼を用いることが好ましい。該炭素鋼は一般に高周波熱処理を施すことで、軸受部の転がり疲労強度を確保した上で用いられる。しかし、機械構造用炭素鋼は高周波熱処理を施しても、合金成分が少ないため表面強度が弱く、軸受鋼に比べ摺接部位での表面起点型剥離への耐性が劣る。この表面起点型剥離の問題に対し、本発明の耐水グリースは摺接部位における潤滑性能を向上させることによって、ハブベアリングに用いられる機械構造用炭素鋼の表面起点型剥離を防止することができる。
本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例2
非水系基油である鉱油に、増ちょう剤としてウレア化合物を均一に分散させた鉱油/ウレア系ベースグリース(JISちょう度No.2グレード、ちょう度:265〜295 )を準備した。
鉱油(新日本石油社製タービン100、40℃での動粘度:100 mm2/sec )2000 g 中で、ジフェニルメタン−4、4'−ジイソシアネー卜 231.7 g と、アニリン 86.2 g と、シクロヘキシルアミン 91.7 g とを反応させ、生成したウレア化合物を均一に分散させてベースグリースを得た。このベースグリースに、表1に示す配合で添加剤を配合して試験用グリースを得た。
得られた試験用グリースにつき、以下に記す水粒子径測定、油膜形成率試験および軸受寿命試験に供し、水粒子径、油膜形成率および軸受寿命時間無を測定した。結果を表1に併記する。
実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例2
非水系基油である鉱油に、増ちょう剤としてウレア化合物を均一に分散させた鉱油/ウレア系ベースグリース(JISちょう度No.2グレード、ちょう度:265〜295 )を準備した。
鉱油(新日本石油社製タービン100、40℃での動粘度:100 mm2/sec )2000 g 中で、ジフェニルメタン−4、4'−ジイソシアネー卜 231.7 g と、アニリン 86.2 g と、シクロヘキシルアミン 91.7 g とを反応させ、生成したウレア化合物を均一に分散させてベースグリースを得た。このベースグリースに、表1に示す配合で添加剤を配合して試験用グリースを得た。
得られた試験用グリースにつき、以下に記す水粒子径測定、油膜形成率試験および軸受寿命試験に供し、水粒子径、油膜形成率および軸受寿命時間無を測定した。結果を表1に併記する。
<水粒子径測定>
グリースと水とを、重量比で 80:20 で混合しミクロスパーテルを用いて手動で撹拌して試験用グリースを得た。この試験用グリースをガラスプレートに採取し、厚さ 0.025 mm のスペーサシムをガラスプレートの両端に置き、その上から別のガラスプレートで挟み、ガラスプレート全体に 600 N の荷重を均一に負荷して、試験用グリースを広げ、試験用グリース内に存在する水滴の粒子径D(20)を顕微鏡にて観察、測定した。
ここでD(20)は含水率 20 重量%のグリース中に分散している水滴の直径を表す。
グリースと水とを、重量比で 80:20 で混合しミクロスパーテルを用いて手動で撹拌して試験用グリースを得た。この試験用グリースをガラスプレートに採取し、厚さ 0.025 mm のスペーサシムをガラスプレートの両端に置き、その上から別のガラスプレートで挟み、ガラスプレート全体に 600 N の荷重を均一に負荷して、試験用グリースを広げ、試験用グリース内に存在する水滴の粒子径D(20)を顕微鏡にて観察、測定した。
ここでD(20)は含水率 20 重量%のグリース中に分散している水滴の直径を表す。
<油膜形成率試験>
使用軸受:アンギュラ玉軸受7006ADLLBをハブベアリングに模擬して使用した。
試験条件:得られた試験用グリースをアンギュラ玉軸受7006ADLLBに 1.0 g 封入し、ラジアル荷重 8000 N 、アキシャル荷重 3000 N 、軸受回転数 1000 rpm にて回転させた状態で、注水量 1.0 ml/時間で 10 時間、注水したときの試験用グリースの油膜形成率を測定した。
使用軸受:アンギュラ玉軸受7006ADLLBをハブベアリングに模擬して使用した。
試験条件:得られた試験用グリースをアンギュラ玉軸受7006ADLLBに 1.0 g 封入し、ラジアル荷重 8000 N 、アキシャル荷重 3000 N 、軸受回転数 1000 rpm にて回転させた状態で、注水量 1.0 ml/時間で 10 時間、注水したときの試験用グリースの油膜形成率を測定した。
<軸受寿命試験>
使用軸受:アンギュラ玉軸受7006ADLLBをハブベアリングに模擬して使用した。
試験条件:得られた試験用グリースをアンギュラ玉軸受7006ADLLBに 1.0 g 封入し、ラジアル荷重 8000 N 、アキシャル荷重 3000 N 、軸受回転数 1000 rpm にて回転させた状態で、注水量 1.0 ml/時間で注水したときの軸受寿命を測定した。軸受寿命は外輪転動面、内輪転動面、鋼球のいずれか1つが損傷し振動が大きくなるまでの時間を軸受寿命とした。
使用軸受:アンギュラ玉軸受7006ADLLBをハブベアリングに模擬して使用した。
試験条件:得られた試験用グリースをアンギュラ玉軸受7006ADLLBに 1.0 g 封入し、ラジアル荷重 8000 N 、アキシャル荷重 3000 N 、軸受回転数 1000 rpm にて回転させた状態で、注水量 1.0 ml/時間で注水したときの軸受寿命を測定した。軸受寿命は外輪転動面、内輪転動面、鋼球のいずれか1つが損傷し振動が大きくなるまでの時間を軸受寿命とした。
表1に示すとおり水粒子径D(20)が 50μm 以下の領域(特に 15〜25μm )で、高い油膜形成率となる。
水が混入した場合、D(20)が 50μm より大きくなるグリースでは油膜の形成が損なわれるため金属接触を起こす恐れがあるが、D(20)が 50μm 以下になるグリースでは油膜を形成できるため金属接触を起こす危険性は少なくなり、軸受寿命が長く、さらに錆の発生も抑制できる。
水が混入した場合、D(20)が 50μm より大きくなるグリースでは油膜の形成が損なわれるため金属接触を起こす恐れがあるが、D(20)が 50μm 以下になるグリースでは油膜を形成できるため金属接触を起こす危険性は少なくなり、軸受寿命が長く、さらに錆の発生も抑制できる。
本発明の耐水グリースは、非水系基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに、水をグリース中に均一に分散させることができる分散剤を配合して軸受に浸入してきた水の分散粒子径を 50μm 以下に制御していることから、該グリースを封入した軸受運転時にグリース中に水が混入したとしてもグリースの油膜形成の阻害を起こす水分の働きを抑制することができるので、軸受の表面起点型剥離を抑えることができ、軌道輪に構造用鋼を用いた軸受においても、潤滑条件が過酷になっても長寿命を得ることができる。そのため、常に水の浸入のある環境下で、耐摩耗性とともに、長期間耐久性の要求される鉄道車両、建設機械、自動車電装補機などに用いる耐水グリースとして好適に利用することができる。
1 ハブ輪
1a 内側転走面
1b 小径段部
1c 加締部
1d 車輪取付けフランジ
2 内輪
2a 内側転走面
3 外方部材
3a 外側転走面
3b 車体取付けフランジ
4 転動体
5 内方部材
6 ハブベアリング
7 シール部材
8 シール部材
1a 内側転走面
1b 小径段部
1c 加締部
1d 車輪取付けフランジ
2 内輪
2a 内側転走面
3 外方部材
3a 外側転走面
3b 車体取付けフランジ
4 転動体
5 内方部材
6 ハブベアリング
7 シール部材
8 シール部材
Claims (4)
- 非水系基油と、増ちょう剤と、水分散剤とが配合されてなる耐水グリースであって、
含水率 20 重量%のときに測定した前記水分散剤により分散している水の粒子径が 50μm 以下であることを特徴とする耐水グリース。 - 前記水分散剤が界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の耐水グリース。
- 前記非水系基油が鉱油であり、前記増ちょう剤がウレア系化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の耐水グリース。
- 耐水グリースが封入され、機械構造用炭素鋼からなる摺接部位を有するハブベアリングであって、前記耐水グリースが請求項1、請求項2または請求項3記載の耐水グリースであることを特徴とするハブベアリング。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006075471A JP2007246844A (ja) | 2006-03-17 | 2006-03-17 | 耐水グリースおよび該グリース封入ハブベアリング |
EP06810715A EP1988147A4 (en) | 2005-09-28 | 2006-09-28 | WATERPROOF LUBRICATING GREASE AND LUBRICATED SEAL BEARING AND HUB BEARING LUBRICATED WITH THE LUBRICANT |
US11/992,376 US8153568B2 (en) | 2005-09-28 | 2006-09-28 | Water-resistant grease and water-resistant-grease-enclosed rolling bearing and hub |
PCT/JP2006/319266 WO2007037308A1 (ja) | 2005-09-28 | 2006-09-28 | 耐水グリース、該グリース封入転がり軸受およびハブベアリング |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006075471A JP2007246844A (ja) | 2006-03-17 | 2006-03-17 | 耐水グリースおよび該グリース封入ハブベアリング |
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JP2007246844A true JP2007246844A (ja) | 2007-09-27 |
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ID=38591475
Family Applications (1)
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JP2006075471A Pending JP2007246844A (ja) | 2005-09-28 | 2006-03-17 | 耐水グリースおよび該グリース封入ハブベアリング |
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JP (1) | JP2007246844A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014037864A (ja) * | 2012-08-16 | 2014-02-27 | Nsk Ltd | 車輪支持用転がり軸受 |
-
2006
- 2006-03-17 JP JP2006075471A patent/JP2007246844A/ja active Pending
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