JP2007245847A - ダクト式消音装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ダクト10の断面流路の一部又は全部を、流路面積が最大である茎部21aを中心に且つ流路面積が該茎部21aより小さい葉部21bを該茎部21aの周辺に複数配置し且つ該茎部21aと該葉部21bは連通するように構成された多葉管21または該多葉管21の集合体である多葉管群20によって構成する。
【選択図】図1
Description
エンジンを地上で運転する際の主要な音源は、ジェット排気と入口側のファンおよび圧縮機である。定格回転数付近まで回転数を上昇させるとジェット排気によるジェット騒音が支配的となる。ジェット騒音の影響範囲はファンや圧縮機のそれと比べて広範囲に及ぶ。
この傾向を受けて、ジェットエンジンでは、ダクト式消音装置をジェット騒音抑制に適用するのが一般的である。ダクト式消音装置は、エンジン後方に設置されたダクトを主な構成要素とし、高温高速のジェット排気と周囲の空気をダクト内に吸い込む構造となっている。吸い込みには別個の送風機等は要せず、周囲空気が高速のジェット排気によって引き込まれるエゼクタ効果を利用している。ダクト内部では高速ジェット排気は低速空気と混合し平均速度を下げる。一般に、ジェット排気から放出される音響エネルギーは排気速度の6〜8乗に比例する性質があることから、ダクト内でジェット排気の平均速度を下げることは放出される音のエネルギーを直接的に低減する効果が見込まれる。
ダクト式消音装置の課題の一つは、エンジン排気部分とダクトとの間の流れの干渉に基づく低周波振動等を回避することである。エンジンノズルの十分後方など不適切な位置にダクトを設置すると、排気ガスを十分にダクト内部へ導入することが出来ない上、周囲空気の吸入も不十分となる。その結果、エンジン排気部分とダクト入口部分の間で帰還機構が形成されるなどして低周波数の空気振動や騒音の発生をもたらしうる点である。かかる課題は、大口径のダクトを使用することで多くは解決されようが、寸法制限のある場合には問題となる。回避策として、エンジンやダクトを取り巻く周囲に逆流が発生しにくい流路を形成すること(例えば、特許文献1を参照。)や、エンジン屋内運転設備において大型のヘルムホルツ型吸音室を設けて低周波数音の抑制することが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
エンジン周囲の整流や低周波数音遮音を目的とした建屋設備は、確かに空間的制約の無い条件では理想的である。しかし、任意の場所で同時に複数のエンジンを運転する利便性に劣り、運転のために機体を建屋や防音フェンス内部に移動させる人的、時間的労力も必要となる。敷地面積に余裕のない場所に当該設備を設置することは困難でもある。また、ジェット模型機等を運用する場所は様々であるため、これらの小型ジェットエンジンを使用する場合に適用困難である。以上より、低周波数振動の発生防止の観点では、コンパクトでかつ可搬性があり、任意の場所に容易に設置できる装置が望まれる。また、簡易な構造で主要構成部材の交換や点検が容易なこと、も望まれる。
消音装置内部における課題は、吸入した流れを互いに相関のない小規模の流れに分割することにある。小規模構造の流れ同士では、干渉による影響も少なく、混合効果も高い。また、渦寸法が小さくなるため、発生音を高周波数化でき、内部吸音処理等によって効率よく騒音低減ができる。対策として、ダクト内部に設けたディフューザで速度差の緩和を図り、適度な混合を狙ったもの(例えば、特許文献3を参照。)や、ダクト内整流であるが捻り攪拌体を多数並べて偏流等の抑制を図ったものがある(例えば、特許文献4を参照。)。
排気ガスと周囲空気の混合を機械的に促進することは音響エネルギーを直接的に低減する点で有効であり、適当な吸音措置を組み合わせることで分割した流れに伴う高周波数音の抑制も期待できる。しかし、比較的大型の挿入物ではダクト断面内での急速な混合と減速は期待しづらく、また、主流に旋回を与えると大幅な圧力損失を招来しかねない。また、隣接する攪拌体を隙間無く固定することも事実上困難である。偏流防止としては整流格子を用いることが一般的であるが、隣接する格子から発生する流れは同等の寸法であり、渦寸法を分散するには十分ではない。以上より、混合促進の観点では、隣接する攪拌部材同士の組み合わせが容易で、一層短い距離での混合を達成し、発生する音の周波数を分散することが望まれる。
具体的には、消音装置内の混合については、吸入した高速ガス流と低速空気流を短い距離で混合して減速することで音響エネルギー低減を図りつつ、大規模流れを小規模でかつ様々な寸法の流れに分割することで、発生音の高周波化・分散化を実現することが必要とされる。
他方、混合部分を内包するダクト式消音装置の構造については、ジェットエンジン単体試験、エンジンを搭載した航空機、模型機、無人機について、任意の場所でエンジン運転をすることが可能な、コンパクトでかつ可搬性に優れた装置を実現することが必要となる。
そこで、本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであって、低周波騒音の抑制と排気ジェット騒音の低減ならびにコンパクト性および可搬性に優れたダクト式消音装置を提供することを目的とする。
多葉管とは、中央部分(茎部)とこれよりも寸法の小さい複数の周囲部分(葉部)とが断面で連通する管である。径の大きな管を中心に据えて径の小さな管を周囲に配置した同一断面積の複合管に比べて、多葉管は、茎部と葉部が連通している点で相違し、この相違により複合管には見られない顕著な特徴を有するようになる。即ち、茎部を流れる流体と要部を流れる流体との間で速度が一様になる方向に連通部分を介して運動量の輸送が行われる結果、同一断面積の円形管や方形管に比べて、管内の混合促進効果は高くなる。その結果、高速の排気ジェット流と低速の空気流が多葉管または多葉管群を通過すると、これらが連通部を介して短い距離で混合し合い、中心方向に最大速度を有し且つ半径方向外側に行くに従い速度が減少した速度分布が、半径方向に対して速度がほぼ一様で且つ平均速度が減少した速度分布に変換されるようになる。これにより、音響エネルギーが減少して騒音レベルが低減するようになる。それに加えて、多葉管または多葉管群の複雑な流路は音の透過損失増大に寄与するようになる。
一方、混合流は多葉管または多葉管群から放出される際に、多葉管の茎部および葉部等によって渦流を伴った小規模流れに分割されながら放出される。各小規模流れは流体特性及び音響特性の点で異なり、特に形状・寸法の異なる渦流を有するようになる。その結果、分割された小規模流れは、渦流のスケールに対応した様々な周波数を持つ音を生成し、スケールの異なる渦同士の干渉によって、渦スケールは微細化し、高周波の音源となる。換言するに、混合流が多葉管または多葉管群を通過することにより、低周波数の騒音発生源である大規模流れは小規模流れに変換され、低周波騒音の発生が好適に抑制されることとなる。
そこで、上記ダクト式消音装置では、ダクトの断面流路の一部又は全部を、多葉管または多葉管群で構成することにより、吸入した高速排気ジェット流と低速空気流を短い距離で混合させてその混合流を減速させることで音響エネルギーの低減を図りつつ、更に排気ジェット流の大規模流れを流体特性および音響特性の異なる様々な小規模流れに分割することで、発生音の周波数分散化・高周波数化を可能とした。
上記ダクト式消音装置では、上記構成とすることにより、混合流が多葉管または多葉管群から放出される際に分割される各小規模流れの流体特性および音響特性に差異を持たせることが可能となる。これにより、様々な形状・寸法の渦流が生成され、発生音の周波数を分散することが見込まれる。また、管断面形状が複雑化するために、管を伝播する音響モードの遮断周波数が上昇し、高次の音響モードの伝播を阻むことが見込まれる。
上記ダクト式消音装置では、上記構成とすることにより、混合流が多葉管または多葉管群から放出される際に分割される各小規模流れの流体特性および音響特性に更に顕著な差異を持たせることが可能となる。これにより、発生音の周波数分散化・高周波数化を一層促進させることになる。他方、隣接する小規模流れ同士が複雑に入り組んだ接合面を共有するようになるため、排気ジェット流と空気流との混合促進効果が一層向上するようになると共に、複数の多葉管で構成される複雑な断面形状は音の透過損失を増大させるようになる。
上記ダクト式消音装置では、上記構成とすることにより、排気ジェット流の大規模流れを更に細分割し、一段階の多葉管に比べて減速効果および騒音の周波数分散・高周波数化を更に高めることを可能とする。
上記ダクト式消音装置では、上記構成とすることにより、好適に排気ジェット流を消音すると共に低周波騒音を抑制する。
上記ダクト式消音装置では、上記構成とすることにより、多くの混合が必要な部分には多葉管長を長くとり、減速効果を増す一方、元々低速の部分には多葉管長を短くするか又は多葉管を設けないなどの差を設けることが出来るようになる。これにより、ダクト断面内で一様な速度分布となるように排気ジェット流を減速することが出来るようになる。
上記ダクト式消音装置では、上記構成とすることにより、汚濁または破損の際の洗浄又は修理あるいは交換等が容易となり、保守・メンテナンス性が向上するようになる。また、着脱可能な消音ダクト部については消音特性や推力損失性能の異なるバリエーションを用意しておけば、条件や環境に応じた消音装置の柔軟な使用をすることができるというメリットがある。
上記ダクト式消音装置では、上記構成とすることにより、ダクト装置全体として部品点数を減らして軽量化することができ、その結果、コンパクトな消音装置を構成する。更に適当な台車等によって移動できる機能を持たせれば、任意の場所でエンジンの運転を行うことが可能となり、人が携帯できる程度の重量であれば、模型飛行機等に適用する際に有効となる。
消音装置は、航空機が離陸する際のジェット騒音を低減する反面、航空機の推力損失や重量増加といったデメリットを伴うため、巡航中は存在しないことが望ましい。
そこで、上記ダクト式消音装置では、上記構成とすることにより、消音装置そのものを使い捨て又は再利用可能な構造とし、離陸時にエンジンの性能に適合させて自立的に離脱する構成をとれば、飛行中の推力損失や重量増加を好適に防止しうる。
上記ダクト式消音装置では、上記構成とすることにより、多葉管内部の流れに旋回が加えられて、茎部から葉部への運動量の輸送が促進される結果、一層の混合促進を期待することが出来る。
この場合、大規模流れの排気ジェット流が、形状・寸法が不揃いな渦流を伴った不均一な小規模流れに分割されることにより、その渦流のスケールに対応した様々な周波数を持つ音を生成し、更にはスケールの異なる渦同士の干渉によって、渦スケールは微細化し、高周波の音源となる。換言するに、排気ジェット流が多葉管または多葉管群を通過することにより、低周波数の騒音発生源である大規模流れは小規模流れに小型分散され、騒音の周波数帯域が分散し低周波騒音の発生が好適に抑制されることとなる。
また、本発明のダクト式消音装置は、エンジンの排気ノズル等に直接に嵌合し且つ着脱可能に構成することが可能である。そのため、従来のダクト式消音装置に比べて、コンパクト性および可搬性に優れた消音装置を構成することが出来るようになる。従って、様々な場所でジェットエンジン等を地上運転することが出来るようになる。
更に、多葉管または前記多葉管群が、捻られた構造を有するように構成されている場合、多葉管内部の流れに旋回が加えられて、茎部から葉部への運動量の輸送が促進される結果、一層の混合促進が期待される。
このダクト式消音装置100は、エンジンから排気される高速の排気ジェット流又は高速の排気ジェット流と低速の空気流との混合流を取り込むダクト10と、詳細については後述するが、ダクト10の内部に在りその排気ジェット流と空気流との混合を促進することにより、音響エネルギーを低下させると共にその混合流を複数の小規模流れに多分割して発生する騒音の周波数帯域を分散させ低周波騒音を高周波騒音にシフトさせる多葉管群20と、その高周波騒音を吸音する吸音材30とを具備して構成されている。なお、ダクト10の長さ及び径は、エンジンの規模、エンジンを運転する場所および条件等により変わる。
図3の(a)は、ダクト中央部近傍に流速の最大分布を持った流れを減速することに配慮して、中央部に大きな大多葉管21Lが形成されるように、複数の小多葉管21sをリング状に配置したものである。このように、隣接する小多葉管21sが組み合わされることにより、小多葉管21sの外側に新たな大多葉管21Lが形成される。また、小多葉管21sの形状を好適に変えることにより、大多葉管21Lの流路形状も変わることになる。
このフラクタル状多葉管21fは、多葉管の葉部を茎部とみなして、その周囲に葉部を設けると元の多葉管に比べて葉部が細かい突起で構成された複雑な形状となる。そして、新たに形成された葉部を茎部とみなしてその周囲に葉部を形成することを繰り返すことで、フラクタル状を成す断面形状を形成することが出来る。このように、新たな葉部の形成を繰り返すと、中央部の大規模流れを数段階の葉部に分割しながら最終的には流路壁の微細な凹凸部程度まで分割し得ることになる。その結果、一段階の多葉管に比べて、混合流の更なる減速効果を生じさせるようになる。
このダクト式消音装置200は、多葉管群20以外は上記ダクト式消音装置100と同じ構成である。
実施例1に係る多葉管群20は、各多葉管21の軸方向の長さを半径方向外側に行くに従いある一定の比率で減少するように構成されている。その結果、中心部の多葉管21が最も長く、外周辺部の多葉管21が最も短く、全体として円筒部と突起部分(コーン形状)を組み合わせた外形を呈するようになる。このように連続的に多葉管21の長さを変化させると、個々の管長に基づく共鳴周波数を分散させる効果も期待できる。また、多葉管群20の前後に吸音材30を設けて排気ガスの衝突や分割された流れによる高周波数音を吸音する構成とすることが好ましい。
この図は、実施例1に係るダクト式消音装置200をエンジンテストセルの設備に固定した状態を想定したものである。テストセルは、それぞれ吸音処理された吸気通風流路と排気通風流路をつなぐ試験室にジェットエンジンを備えたものである。当該試験室内でジェットエンジンを運転すると、高速の排気ガスが放出され、大きな音源を形成する。本発明に係るダクト式消音装置200によれば、排気ガスを試験室内の空気とともに取り込んで内部で減速しつつ、分散した高周波数に相当する流れに分割する。多葉管群を通過した流れは排気通風流路を通って外部へ放出されるが、排気ジェット流れに起因する低周波数音は抑制される。
実施例3に係る排気消音キャップ300は、航空機、例えばジェット模型機の排気パイプ部に排気キャップとして着脱可能に取り付けることができるように構成されている。排気消音キャップ300は排気パイプと同径のパイプに多葉管21を敷き詰めたもので、模型機の排気パイプ後端に機械的に取り付け又は取り外しが可能な構造となっている。この排気消音キャップ300は排気パイプから放出される排気ジェットを直接的に様々な複数の小規模なジェット流に分割することができ、排気速度低減と音の高周波数化に寄与することができる。実施例1に係るダクト式消音装置200に比べて、コンパクトな装置構成である点が有利である。
20 多葉管群
21 多葉管
30 吸音材
40 サポート
100,200 ダクト式消音装置
300 排気消音キャップ
Claims (10)
- 排気ジェット流をダクト内部に導入することにより該排気ジェット流を消音するダクト式消音装置であって、前記ダクトの断面流路の一部又は全部が、流路面積が最大である茎部を中心に且つ流路面積が該茎部より小さい葉部を該茎部の周辺に複数配置し且つ該茎部と該葉部は連通するように構成された多葉管または該多葉管の集合体である多葉管群から成ることを特徴とするダクト式消音装置。
- 前記多葉管または前記多葉管群において、その一の葉部と他の葉部とは寸法および形状が異なるように構成された請求項1に記載のダクト式消音装置。
- 前記一の多葉管と他の多葉管が隣接することにより、前記多葉管の外側において複数の流路が形成されるように構成された請求項1又は2に記載のダクト式消音装置。
- 前記多葉管の流路断面又は隣接する多葉管群で形成される流路断面をフラクタル状構造となるように構成された請求項1から3の何れかに記載のダクト式消音装置
- 前記ダクト内部において、排気ジェット流の排気速度の高い部分に前記多葉管または前記多葉管群を配置した請求項1から4の何れかに記載のダクト式消音装置。
- 前記多葉管群において、その一の多葉管と他の多葉管とは軸方向の長さに差異をもたせた請求項1から5の何れかに記載のダクト式消音装置。
- 前記多葉管群または該多葉管群を有する多葉管ダクト部は着脱可能に構成された請求項1から6の何れかに記載のダクト式消音装置。
- 前記多葉管群または前記多葉管ダクト部は、エンジンの排気ノズル又はテイルパイプの端部に直接嵌合するように構成された請求項7に記載のダクト式消音装置。
- 前記多葉管群または前記多葉管ダクト部が、前記排気ノズル又はテイルパイプに働く推力が一定値を超えると、該排気ノズル又はテイルパイプから離脱し、或いは熱的膨張による変形量が一定値を超えると前記排気ノズル又はテイルパイプから離脱するように構成された請求項7又は8に記載のダクト式消音装置。
- 前記多葉管または前記多葉管群は、捻られた構造を有するように構成された請求項1から9の何れかに記載のダクト式消音装置。
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