JP2007245022A - 硝酸性窒素による地下水汚染を防止する方法。 - Google Patents

硝酸性窒素による地下水汚染を防止する方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】畜産糞尿由来の汚染水が地下に浸透して生ずる硝酸性窒素による地下水汚染の拡大を低コストで、かつ長期間メンテナンスフリーで防止する。
【解決手段】硝酸性窒素又は土壌中で硝酸性窒素を形成する窒素化合物を含む汚染水が浸透する土壌中に平均粒子径が1〜50mmで硫黄含有量が50〜90重量%である硫黄と炭酸塩を含む粒状物を1m2当たり20〜1000kg分散させることで硝酸性窒素による地下水汚染を防止する。上記粒状物と共に炭酸塩又は酸化鉄を分散させれば、汚染防止効果が向上する。
【選択図】図1

Description

本発明は、硫黄酸化細菌による生物処理によって、特に畜産糞尿から発生する地下水の硝酸性窒素の汚染拡大を効果的にかつ低コストで防止する方法に関するものである。
河川、湖沼、閉鎖水域,閉鎖海域などの富栄養化の原因となる生活排水、産業排水、畜産排水、農業排水、水産養殖排水中の硝酸性窒素分を除去する技術として、独立栄養系硫黄酸化脱窒細菌(以下、硫黄酸化細菌という)や、従属栄養系脱窒細菌を用いたシステムが提案されている。従属栄養系脱窒細菌を用いたシステムは、廃液中に含まれるBODを利用して、またBODを含まない場合には、液体状のメタノール等水素供給源の添加が必要になる。これらのシステムでは、処理中にpH変化が起こるため、それらを常時管理しながら運転する必要があり、また多量の汚泥処理等も必要となる。それに対して独立栄養系硫黄酸化脱窒細菌を用いた処理システムは、炭酸を用いて菌体を生成するため、余剰汚泥発生量は少なく、従属栄養系脱窒細菌を用いたシステムに比べ維持コストが少ないため、最近では各方面で注目されている。
特開2001-47086公報 特開2001-104993号公報 特開2004-174328号公報
硫黄酸化細菌を用いた硝酸性窒素除去システム(以下、脱窒システムという)については、例えば特公昭62-56798号公報、特公昭63-45274号公報、特公昭60-3876 号公報、特公平1-31958号公報、特公平4-9199号公報、特開平4-74598号公報、特開平4-151000号公報、特開平4-197498号公報、特開平6-182393号公報など種々提案されている。
特開2001-47086公報(特許文献1)、特開2001-104993号公報(特許文献2)には、硫黄と石灰石の溶融混合物に硫黄酸化細菌を含有させた脱窒システムが提案されており、石灰石を共存させていることから、発生する硫酸イオンを自然に中和することが可能であることからpHの調整は不要であり、メンテナンスの容易さと脱窒処理にかかるコストの面で優れた効果を示している。
また、特許文献3では、硫黄粉と石灰粉を水不溶性又は水難溶性の有機バインダーで一体化させることにより著しく脱窒速度を高めることができ、より大量の硝酸性窒素廃液を処理することが可能となっている。
しかし、これらのシステムは、いずれも脱窒処理資材以外に、処理槽やポンプ類の設備やそれらを設置するための敷地や電力、更には、安定的な稼動のためにSSの除去など少なからずメンテを必要としており、トータルコストとしてはさらなる改善が望まれている。特に、多量のアンモニアやBODを含有する畜産系排水において、近年、大規模農家では「水質汚濁防止法」の強化にともない、空気ばっきなどの活性汚泥処理法により、BOD低減やアンモニアから硝酸への硝化工程まではかなり進んではいるものの硝酸から窒素ガスへの脱窒工程の整備はまだ決して十分とはいえず、小規模農家ではなおさらである。また、これらの処理は微生物処理が主体であることから季節ごとの温度による処理能力変動が大きく、特にアンモニアから硝酸への硝化工程はばらつきが激しく、処理された排水であっても多量のアンモニアが含まれている場合はしばしばである。その場合、硝化されていないアンモニア性窒素は地下に浸透するが、それは地中の硝化細菌により硝酸性窒素に変化して、硝酸性窒素による地下水汚染が拡大する原因となっている。また、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」により畜産糞尿は堆肥化が薦められている一方、堆肥盤設置の義務付けや、堆肥の野積み禁止など硝酸性窒素汚染対策も推進されている。しかしながら、堆肥について、その消費が追いつかず、さらに、農地の一画に保管されている堆肥中にはまだ多量のアンモニアも存在しており、それらが雨水等による地下浸透で自然に硝化が進行し、硝酸性窒素の地下水汚染の拡大が進行することも事実である。
これらの法律については、厳正に守られるべきであるが、法律適用外の小規模畜産農家からの排出や、適用される大規模畜産農家であっても排水処理設備の不良や微生物処理の場合には季節による処理能力の変化、また予測できない大雨等による排水のオーバーフローによる流出など不可抗力的に生じてしまう地下水汚染の対策も検討されるべきである。
このように畜産糞尿を主とする硝酸性窒素の地下水汚染は年々深刻な状況にあり、現在では、北海道や九州を始め畜産業の盛んな地域の硝酸性窒素地下水汚染は危機的状態で、環境基準の10ppmを大幅に超え井戸水が飲料用として使用できない状態に陥っていることから、早急に低コストで硝酸性窒素による地下水汚染の拡大が防止できる技術の開発が望まれている。
したがって、本発明の目的は、畜産糞尿由来の硝酸性窒素の地下水汚染の拡大を低コストでかつ長期間メンテナンスフリーで防止する方法を提供することにある。
本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アンモニア性及び硝酸性窒素を多量に含む畜産系排水又は堆肥置き場のように雨水等により、やむなくアンモニア性及び硝酸性窒素が流出する恐れのある場所の地中に、硫黄と炭酸塩を含む造粒物又はこの造粒物と貝がら等の炭酸塩化合物や酸化鉄粉末を分散させることにより、低コストでかつ効果的に硝酸性窒素の地下水汚染拡大が防止できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、平均粒子径が1〜50mmで硫黄含有量が50〜90重量%である硫黄と炭酸塩を含む粒又は塊状物を1m2当たり20〜1000kgとなる量で、硝酸性窒素又は土壌中で硝酸性窒素を形成する窒素化合物を含む汚染水が浸透する土壌中に分散させることを特徴とする硝酸性窒素による地下水汚染を防止する方法である。
分散させる硫黄と炭酸塩を含む粒又は塊状物100重量部に対して、別に炭酸塩10〜200重量部を同時に分散させること、又は別に鉄酸化物1〜20重量部を同時に土壌中に分散させると地下水汚染の防止効果がより向上する。
本発明で使用される硫黄と炭酸塩を含む粒又は塊状物(以下、硫黄/炭酸塩造粒物又は造粒物という)、硫黄含有量が50〜90重量%であり、その平均粒子径が1〜50mmの粒又は塊状の物である。炭酸塩の含有量は10〜50重量%であることが好ましい。硫黄/炭酸塩造粒物としては、硫黄と炭酸塩が同一の造粒物内において、どちらともか又は一方が分散した状態でかつ一体化したものであればよい。それらは、以下に述べた方法により製造することが可能である。例えば、特許文献1、特許文献2等に述べられているように、溶融硫黄中に石灰石等炭酸塩粉末を分散させた後に、急冷固化し、それを破砕・分級して得られる塊状の造粒物でもよく、また特許文献3等に述べられている硫黄粉末と炭酸塩粉末を有機又は無機バインダーを利用して、混合・押し出し・転動などの方法で得られる造粒物でもよい。更には、水のみでバインダーを使用せずに造粒したのちに110〜150℃で硫黄を局部的に溶融させて冷却・固化したものでもよいが、製造方法としてはこれらに制限されるものではない。しかし、バインダーを使用して造粒する方法は、製造が非常に簡単であり、更に硫黄粉末と炭酸塩粉末が分散していることから、造粒物自体の面積が大きくなって微生物の付着量が多くなり、脱窒能力も高くなることから好適である。
バインダーを使用する場合には、取り扱い上又は性能上で有機高分子をバインダーとすることがよい。その場合、有機バインダーとしては硫黄化合物と炭酸塩を接着でき、かつ水中の硝酸性窒素を処理するためには必然的に水に不溶又は難溶なものでなければならない。例えば、水や有機溶剤に分散又は溶解された有機系高分子がよいが、取り扱いや安全性から水に分散(エマルジョン)または溶解されたものが好都合である。それらの有機系高分子としては、例えばスチレン系、アクリル系、酢酸ビニル系やエポキシ系、ウレタン系、ビニル系エマルジョンや天然ゴムラテックス及びクロロプレンゴムやスチレンブタジエンゴム等の合成ゴムラテックス又はアスファルトやパラフィン等の瀝青質のエマルジョンさらにはポリ乳酸などの生分解性樹脂のエマルジョンがある。また、水に溶解されたものとしては、ケン化度の高い水難溶性のポリビニルアルコールが利用でき、それは生分解性が高く、また親水性が高いことからも脱窒反応速度も高くなり特に有用である。
有機系バインダーの含有量としては、上記硫黄と炭酸塩化合物の合計100重量部に対して、0.1〜30重量部がよい。より好ましくは、1.0〜10重量部である。0.1重量部未満では硫黄粉末と炭酸塩化合物粉末を強固に接着させることができず、脱窒処理中に粉体が剥離して流出することがある。一方、30重量部を超えると粉体を強固に接着はできるが、脱窒に必要な硫黄と炭酸塩化合物が有機高分子に覆われて有効に活用できず、また粒内の空隙も少なくなり、微生物の活性を高めることができないからである。
次に、ここで使用される硫黄としては、例えば石油脱硫や石炭脱硫プラントの回収硫黄や天然硫黄などが上げられるが特に制限されるものではない。
バインダーを使用して造粒する方法において、硫黄粉末及び炭酸塩粉末の粒径としては、特に限定されないが、数μm〜数100μm程度が好ましい。本来、微生物が硫黄を消費することを考えると、その接触面積を大きくするため粒子を小さくした方が好ましいが、あまりに小さすぎると扱いにくい傾向となる。また、接着に使用するバインダー量も多く必要となるので、上記範囲が適当となる。
炭酸塩としては、水難溶性のアルカリ土類金属炭酸塩がよく、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム又はそれらの混合物が好都合である。天然には、石灰石、苦土石、菱苦土石等などが豊富に存在して容易に使用できる。しかし、環境保護の観点から、炭酸塩としては、かきがら、ホタテ、あさり、あおやぎ、カラス貝などの貝殻は有用である。それらは炭酸カルシウムが主体であるが、それら以外に微生物活性に有効なマグネシウム、リン、カリウム、鉄などのミネラル分やタンパク質などを含有していることから、岩石よりもむしろ活性が高くなる。
硫黄/炭酸塩造粒物中の炭酸塩は微生物が活性を保つことができるpHであることが重要であることからなるべく均等に緻密に分散されたものがよい。従って、造粒物中に分散される炭酸塩化合物の大きさは、なるべく小さいものがよく、造粒物中に含まれる炭酸塩は篩いの目開き1mmアンダーの粉体がよいが、特に制限されるものではない。また、造粒物とは別に炭酸塩を分散させる場合、炭酸塩としては、逆にあまり粒度を小さくすると扱いづらくなるばかりか粉砕によるコストアップにつながることから篩いの目開きで1〜100mmの大きさのものがよい。しかし、あまり大きすぎても通過する水が偏流して脱窒効率が悪くなることから、より好ましくは造粒品とほぼ同じ1〜50mmがよい。
硫黄/炭酸塩造粒物の形態としては、平均粒子径で1mm未満の粉体や細粒でも、十分脱窒は進行するが、扱いやすさから平均粒子径が1mm以上の造粒物がよい。なお、ここでいう平均粒子径とは球換算径をいうこととする。逆に、平均粒子径が50mmを超えるものでもやはり脱窒は進行するが、基本的に脱窒能力は、微生物の菌体数により左右されることになるから、造粒物として50mmを越えるものは不利となる。従って、造粒物としては平均粒子径としては、1〜50mmがよい。
硫黄酸化細菌による脱窒反応での硝酸性窒素の処理量つまり寿命は、硫黄の含有量により定まってくることから、なるべく造粒物中の硫黄含有量は高い方がよい。しかし、高すぎても脱窒反応により生成してくる硫酸イオンによりpHが低下して微生物が棲息できない環境となることからそれらを中和できる炭酸塩が硫黄周辺に存在していることが重要である。ここで、炭酸塩は、発生する硫酸イオンの中和剤としての機能だけでなく、独立栄養細菌の増殖炭素源としての機能も有していることから、硫黄量に対して適切な量が必要となる。ここで、理論的には、独立栄養細菌による脱窒反応では、硫黄3kgに対して、たとえば炭酸塩が炭酸カルシウムである場合には約7kg必要となるが、一定の土壌体積中の硫黄含有量を高めるためには、つまり同じ量の造粒物を分散させるにもそのコストパーフォマンスを上げるためには、不足分の炭酸塩を外部から補給してやればよい。そのようにすることで、造粒物中の硫黄含有量を高めることができ、その寿命を長くすることができる。そこで、造粒物中の硫黄含有量は50〜90重量%とすることがよい。硫黄含有量50重量%未満でも、脱窒反応は問題なく進行するものの、硫黄の消耗により寿命が短くなるため、土壌を掘り返して地中に造粒物を投入するメンテナンス頻度が高くなり、コスト的なメリットが少なくなる。一方、硫黄含有量が90重量%を越える場合にも、脱窒反応は進行するが、共存している炭酸塩が少なく、脱窒にともない発生する硫酸イオンの中和が追いつかないために、pHが低下して微生物が棲息しにくくなり結果的に安定的な脱窒が得られなくなる。また、炭素源の供給も少なくなることから微生物の活性が低下して充分な脱窒性能が得られなくなるため、10重量%以上の炭酸塩を共存させる必要がある。
硫黄/炭酸塩造粒物を、硝酸性窒素を含む汚水が地下水方向に通過する土壌中に分散しておくと、土壌中の硫黄酸化細菌は徐々に造粒物に定着し、硫黄が酸化されるとともに脱窒反応が進行して硝酸性窒素は窒素ガスに転換されることで、硝酸性窒素が減少し、硝酸性窒素による地下水汚染の拡大が防止されることになる。
ここで、土壌中に分散させる硫黄/炭酸塩造粒物の量としては、どれだけの速度でどれだけの硝酸性窒素を消滅させる必要があるか、またどれだけの期間脱窒を継続させるかで決まってくるものである。従って、脱窒速度や脱窒可能な量を高めにし、更に脱窒期間(脱窒寿命)を延ばすためには、一定土壌中により多くの造粒物を分散させることがよい。しかし、造粒物は、脱窒反応とともに硫黄や炭酸塩が消耗し流出することから、長期にわたっては、少しずつ造粒物を埋設した場所が沈下する可能性があることから、硫黄/炭酸塩造粒物の分散量は、土壌1m2中に20〜1000kgがよい。20kg未満であっても硝酸性窒素は低減するが、効果は少ない。逆に1000kgを超える場合にも、十分効果は発揮できるものの沈下の可能性が高くなるばかりか、別個に造粒物以外の外部から補給する炭酸塩を分散させるスペースがなくなることから1000kg以下がよい。また、沈下を少なくするには、脱窒反応とは無関係、つまり大きさが変化しない砂利等を同時に投入させておくことによりその度合いは低減される。その場合、砂利の大きさは造粒物の大きさよりやや大きい10〜70mmものが好ましい。
ちなみに、1m2あたりに200kgの硫黄を分散させると、理論的に独立栄養系硫黄酸化細菌により除去できる硝酸性窒素量は、85kg程度となるが、BODを豊富に含む排水では従属栄養細菌による脱窒反応も平行して進むことから少なくとも100kg程度の硝酸性窒素は除去できると考えられる。従って、どれだけの窒素を除去すればよいかを予め検討して、硫黄/炭酸塩造粒物又は造粒物と外部補給の炭酸塩を分散させておけばよい。
外部から炭酸塩を別途分散することにより、硫黄/炭酸塩造粒物中の硫黄含有率を高めることができ、寿命を長くすることができる。炭酸塩は粉末、粒状又は塊状の形で、造粒物と同時に同じ場所に分散させればよいが、その量は、分散させる硫黄/炭酸塩造粒物100重量部に対して別に炭酸塩10〜200重量部がよい。家畜糞尿を起源とする排水には、少なからずアンモニアを有しているが、それらは炭酸塩の代りに中和機能を果たすことができる。また、同時にBODも含有しているために、それらが分解して炭酸ガスが発生することからやはり炭酸塩のかわりに微生物増殖源となることから、必ずしも理論上の炭酸塩を補給する必要はない。しかし、過剰に分散させても、とくに硫黄酸化細菌にとっては阻害となるものではない。
硫黄酸化細菌による脱窒反応が進行すると硫酸イオンが発生し、共存又は付近に存在する炭酸塩と反応して硫酸化合物(炭酸塩が炭酸カルシウムの場合には硫酸カルシウム)が生成するが、それらは、通水が停止した場合の硝酸性窒素が不足した嫌気状態では硫酸塩還元菌の作用により硫化水素ガスを発生させてしまう可能性があることから、その発生を防止する意味で、造粒物と同時に鉄酸化物粉末を分散させておくことが好ましい。鉄酸化物粉末は、発生した硫化水素を硫化物として補足することができるからである。分散させる鉄酸化物粉末の量としては、造粒物100重量部に対して1〜20重量部がよい。1重量部未満では硫化水素の発生を防ぐには効果が少なく、20重量部を超えてもそれ以上の効果は期待できない。分散させる鉄酸化物粉末は、比表面積が大きいほど硫化水素の発生を防ぐ効果は高く、従って投入量も少なくてよいことから比表面積は0.1m2/g以上のものがよい。有効な鉄酸化物粉末としては、含水酸化鉄や酸化鉄があるが、それらは鉄鉱石の粉末、黄土、ベンガラとして容易に入手可能である。なお、鉄酸化物粉末は、硫黄/炭酸塩造粒物中に含有させてもよく、この場合は別途鉄酸化物粉末を分散させなくとも同様の効果が得られるが、硫黄/炭酸塩造粒物中の硫黄含有率が低下する。
硫黄/炭酸塩造粒物及び必要により使用される炭酸塩や鉄酸化物粉末(以下、これらを造粒物等ともいう)を、硝酸性窒素又は硝酸性窒素を形成し得る窒素化合物を含む汚水が地中に浸透し通過する場所又は浸透する恐れのある場所(以下、これらの場所を汚水浸透場所という)の地中に、汚水と十分に接触するようになるべく均一に分散する。
ここで、硝酸性窒素は、-NOx(xは2又は3)で表される窒素酸化物意味し、通常は硝酸イオン、亜硝酸イオン又はこれらの塩の形で存在する。硝酸性窒素を形成し得る窒素化合物としては、地中に存在する微生物により酸化されて硝酸性窒素となるアンモニア性窒素、アミン系窒素等がある。かかる硝酸性窒素又は硝酸性窒素を形成し得る窒素化合物を含む汚水としては、家畜の屎尿、堆肥置き場からの流出水等がある。
汚水浸透場所としては、汚水浸透防止壁や防止槽が設けられていない家畜舎近辺、堆肥置き場の近辺等がある。汚水が硝酸性窒素のみを含む場合は、汚水浸透場所の表面付近土壌中に分散することで、一定の効果が得られる。しかし、かなりのアンモニアを含有するような汚水については、それが地中で硝化されるに時間がかかることから効果的に硝酸性窒素汚染を防止するためには、硫黄/炭酸塩造粒物は、アンモニア性窒素が硝酸性窒素に変化した地中で接触させたほうが良い。さらに、硫黄酸化細菌による脱窒反応は嫌気状態で進行することからも造粒物等を分散させる場所は地下がよく、0.1m以下、好ましくは0.3m以下がよい。しかし、深すぎても嫌気状態が増すことから硝化細菌による硝化作用は期待できず、また掘削のコスト面からも負担が大きくなるため、硝酸性窒素汚染の拡大防止という観点で現実的には地下2m以内でよい。分散させる土壌層の厚みは0.1m以上、好ましくは0.3m以上がよいが、2m以内でよい。なお、造粒物等を高濃度で層状に土壌中に埋設する場合は、その厚みは上記の1/5程度にまで減ずることが可能である。
本発明の処理方法によれば、硝酸性窒素含有水が通過する土壌に硫黄/炭酸塩造粒物を分散させることにより、特段の設備を建設しなくても、また、長期間メンテナンスをする必要もなく、地下水の硝酸性窒素汚染の拡大を効果的に防止することが可能となる。
図1は、実験装置の概要を示す図面である。硝酸性窒素含有排水1は、土壌2と硫黄/炭酸塩造粒物が土壌中に分散された分散層3を有する円筒状のカラム4を、ゆっくり通過して、処理排水5としてカラム下部から流出する。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明について更に詳細に説明する。
評価は、模擬的に図1に示すような内径150mmカラムで行った。評価に用いた硝酸性窒素含有排水は、養豚場から排出された有機物分解菌及び硫黄酸化細菌を含むし尿系排水である。その性状は、硝酸性窒素濃度が300mg/kg、アンモニア性窒素濃度が50mg/kg、BODが1500mg/kgであった。
造粒品Aの作成は、硫黄は、200メッシュの粉体(軽井沢精錬製)を、炭酸塩化合物としては、ドロマイトタンカル200メッシュの粉体(MgCO3含有量38%、CaCO3含有量62%駒形石灰工業製)を用いた。まず、硫黄粉末を160℃で溶融し、溶融硫黄中にドロマイトタンカル粉末を投入し、再度加熱攪拌して均一に分散した後に、水で急冷した。その後、破砕、分級して造粒品を得た。(製法1:加熱溶融法)
比較として、ドロマイトタンカルを添加しない硫黄のみの造粒品も作成した。
造粒品Bの作成は、硫黄は、200メッシュの粉体(軽井沢精錬製)を、炭酸塩化合物としては、ホタテ貝殻の粉砕品(CaCO3含有率98% 1mmアンダーが80% 北海道産)を、有機バインダーとしては、完全ケン化のポリビニルアルコール(グレード:PVA117 クラレ品)10%水溶液を使用した。まず、硫黄粉体とホタテ貝殻の粉砕品及び有機バインダーを混合し、押し出し機で5φ長さ5〜10mmに造粒し、90℃の熱風乾燥機で乾燥して水分を0.2%以下まで除去して作成した。(製法2:粉体造粒法)
造粒品以外には、炭酸塩の外部補給用として5〜10mmホタテの貝殻(CaCO3含有率98% 北海道産)及び鉄酸化物粉末として黄土粉末(テツゲン:製品名アソデス,比表面積:30m2/g、SiO2:6.5%,CaO:6.9%,MgO:0.2%,Fe23:57.0%,炭水化物:10.3%)を用いた。更に土壌としては、多量の微生物が棲息していると思われる養豚場の排水処理付近の土壌を用いた。なお、土壌にはガス抜きと沈下を抑えるために約1cmの砂利を20vol%(土壌の内数)含有させた。
実施例1〜4
表1に示す組成と製法で得られた造粒品とホタテ貝殻及び黄土粉末及び養豚場の排水処理付近の土壌をカラムにつめた。まず、底に土壌を5cm敷き、造粒品とホタテ貝殻破砕物及び黄土を混ぜた土壌を15cm敷き、更に最上部に底と同じ土壌を10cmかぶせた。上部からし尿系排水を、流量1L/日で流し、1週間及び2ケ月後の排水出口の硝酸性窒素濃度をイオンクロマトグラフィーで測定した。2ケ月後に排水の供給をストップしたのち、1週間後に土壌の上部を除去して硫化水素臭の有無を確認した。
比較例1〜5
表1に示した配合でカラムにつめ、実施例と同様に上部からし尿系排水を添加し、1週間及び2ケ月後の排水出口の硝酸性窒素濃度をイオンクロマトグラフィーで測定した。2ケ月後に排水の供給をストップしたのち、1週間後に土壌の上部を除去して硫化水素臭の有無を確認した。
表1において、組成を示す数字は重量部である。また、平均粒子径mm、重量g、充填量kg/m2は造粒品の平均粒子径mm、使用量g及び単位面積当たりの分散量kg/m2であり、ホタテ貝殻wt%及び黄土wt%は、造粒品とは別に分散させたこれらの造粒品に対する分散量である。
Figure 2007245022
上記表1から明らかなように、硫黄/炭酸塩造粒物及び炭酸塩化合物及び鉄酸化物を硝酸性窒素が通過する土壌に分散させることにより、メンテナンスを全く必要とせず効果的に硝酸性窒素を除去することで地下水の硝酸性窒素汚染の拡大を防止できることはきらかである。比較例1は、造粒物中に炭酸塩が分散されていないものは、硝酸性窒素の除去効果が非常に低い。比較例2は、造粒物中の平均粒子径が50mmを越えるものは、硝酸性窒素の除去効果が非常に低い。さらに、鉄酸化物粉末を添加していないことから通水をストップした後は硫化水素臭がする。比較例3は、1m2あたりの充填量が20kg以下の場合には、硝酸性窒素の除去効果が非常に低い。比較例4は、造粒物中の硫黄含有量が90%を越え、さらに外部からの炭酸塩の補給がない場合には、硝酸性窒素の除去効果が非常に低く、時間経過とともにさらに悪化する。また、鉄酸化物粉末を添加していないことから通水をストップした後は硫化水素臭がする。
実施例で使用した排水処理装置の概念図である。
符号の説明
1:排水、2:土壌、3:造粒物を含む分散層、4:カラム、5:処理排水

Claims (4)

  1. 平均粒子径が1〜50mmで硫黄含有量が50〜90重量%である硫黄と炭酸塩を含む粒又は塊状物を1m2当たり20〜1000kgとなる量で、硝酸性窒素又は土壌中で硝酸性窒素を形成する窒素化合物を含む汚染水が浸透する土壌中に分散させることを特徴とする硝酸性窒素による地下水汚染を防止する方法。
  2. 分散させる硫黄と炭酸塩を含む粒又は塊状物100重量部に対して、別に炭酸塩の粉、粒又は塊状物10〜200重量部を同時に分散させることを特徴とする請求項1記載の地下水汚染を防止する方法。
  3. 炭酸塩が、貝殻由来の炭酸塩である請求項2記載の地下水汚染を防止する方法。
  4. 分散させる硫黄と炭酸塩を含む粒又は塊状物100重量部に対して、別に鉄酸化物粉末1〜20重量部を同時に土壌中に分散させることを特徴とする請求項1又は2に記載の地下水汚染を防止する方法。
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