JP2007242460A - イオン源 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガスが供給されてプラズマを生成する、内部空間を備えたチャンバ12と、チャンバ12と電気絶縁され、内部空間のチャンバ内壁面から突出し、内部空間に熱電子を供給するフィラメント14と、フィラメント14と同じ種類のフィラメントの溶断時の溶断電流を記録保持するメモリ44bと、溶断電流の50〜80%の電流をフィラメント電流の立ち上げ時に流す電流制御部40と、溶断電流の50〜80%の電流をフィラメントに流したときの抵抗値を求める計測部42と、求めた抵抗値からフィラメントの摩耗状態を判定する判定部44cと、を有する。
【選択図】図1
Description
まず、チャンバの内部空間内に原料ガスを導入し、減圧してアーク放電に適した圧力とする。次に、チャンバの内部空間に磁場を印加する。この磁場は、チャンバの内部空間に生成されるプラズマを閉じ込め、アーク放電に適した状態でプラズマ密度を維持しやすくするために用いられる。次に、フィラメントとチャンバとの間に、例えば数十V〜百数十Vの電圧を印加する。この後、フィラメントに電流を流しフィラメントを白熱させる。このとき、フィラメントが白熱し熱電子がチャンバ内の内部空間に放出され始め、熱電子の放出量が一定量を超えるとアーク放電が開始する。アーク放電開始後、フィラメント電流を増加させ10〜20秒後、アーク放電は安定する。
図5に沿って説明すると、まず、フィラメントに通電開始後、予め定められた流れに従ってフィラメント電流を制御して、すなわちフィードフォワード制御してフィラメント電流を徐々に増加させる。例えば5A/秒で増加させる。フィラメント電流を徐々に増加させると、通電開始後20〜30秒の間に、アーク放電が始まりアーク放電電流が立ち上がる。しかし、このアーク放電の状態は不安定な発生状態である。
一方、通電開始後30秒以降においては、アーク放電電流の計測値と目標値とのずれによりフィラメント電流を制御する。すなわちフィードバック制御してフィラメント電流を制御することにより、アーク放電を安定化させる。アーク放電が安定した後は、フィラメント電流の制御により、アーク放電電流を効率よく制御できる。しかし、上記アーク放電の不安定状態では、アーク放電電流をフィラメント電流で制御することは難しい。
このようなオーバーシュートを回避するために、アーク放電電流が流れ始め、例えば0.1Aを閾値としてアーク放電電流を検知したときにフィラメント電流を一定にする制御を行うと、ノイズ等による誤動作により不安定に発生するアーク放電の状態でフィラメント電流の増加を止める不具合が生じる。
一方、アーク放電電流が立ち上がり、例えば1Aを閾値としてアーク放電電流を検知した場合、フィラメント電流の上記オーバーシュートは避けられない状態となる。
このオーバーシュートは、特にプラズマに曝され、スパッタリングにより摩耗することによって線径の細くなったフィラメントは、抵抗損が大きくなるため発熱によって自らが溶断する場合も多い。このように、アーク放電を安定的に発生させるためのフィラメント電流を得るためには、フィラメント電流はオーバーシュートを経なければならない。
また、イオン源を用いるイオン注入装置の場合、フィラメント電流をある一定の状態から低下させる場合もあるが、この場合、フィラメント周辺の回路部分はすでに加熱されているので、フィラメント周辺の回路部分が加熱されていない場合と比べてフィラメント周辺の状態は著しく異なっている。この抵抗値は、フィラメントの抵抗値を含むが、温度の影響を受けて変化した回路抵抗値をも含むため、フィラメントの摩耗状態を精度よく判断することはできない。
前記チャンバと電気絶縁され、前記内部空間のチャンバ内壁面から突出し、通電することにより前記内部空間に熱電子を放出するフィラメントと、前記フィラメントと同じサイズ及び同じ種類のフィラメントが前記内部空間に生成されるプラズマにより摩耗することにより線径が細くなり、フィラメントの発熱によりフィラメント自体が溶断する時の溶断電流を記録保持する記録部と、前記溶断電流の50〜80%の電流をフィラメントの通電開始時に流す電流制御部と、フィラメントに前記溶断電流の50〜80%の電流を流したときの抵抗値を求める計測部と、求めた抵抗値から前記フィラメントの摩耗状態を判定する判定部と、を有することを特徴とするイオン源を提供する。
イオン源10は、原料ガスを供給しアーク放電することによりプラズマを生成し、このプラズマからイオンを取り出すことによりイオビームを生成するバーナス型イオン源である。イオン源10は、図1に示す様に、チャンバ12、フィラメント14、反射電極板(リペラープレート)16、背面電極板18、絶縁部材20、原料ガス供給口22、イオンビーム取出口24、および所定の電圧を印加する引出電源26、アーク電源28、フィラメント電源30、原料ガス調整バルブ32、電流制御部40、計測部42、及びコンピュータ44を有して構成される。チャンバ12は、図示されないイオン注入装置の減圧容器内に収納され、チャンバ12内で10−2〜10−3(Pa)に減圧された状態とされる。コンピュータ44には、CPU44a、メモリ44b及び判定部44cを有し、この他にイオン源10の動作を制御する図示されない制御部を有する。
チャンバ12の内部空間34の内壁面には、一方の端面から内部空間34に突出するフィラメント14が設けられ、他方の端面には反射電極板16が設けられ、フィラメント14が反射電極板16に対向するように配置されている。フィラメント14は、タングステン等の抵抗導体線が1〜数回螺旋状に巻かれて折り返された発熱素子体である。
一方、チャンバ12の外側には、背面電極板18、フィラメント14および反射電極板16の配置方向(図1中のX方向)に沿って磁場が形成されるようにN極、S極の磁石36、38が設けられている。
また、内部空間34の内壁面には、原料ガス供給口22が設けられ、供給管42を介して図示されないガス供給源と接続され、原料ガス調整バルブ32を介して原料ガスの供給が調整されるようになっている。
さらに、チャンバ12には、生成したイオンを引き出す開口部と、この開口部近傍にイオンビームとしてイオンを引き出す引出電極(板)46が設けられている。
計測部42は、フィラメント14による電圧低下を計測することによりフィラメント14の両端間の抵抗値を求めるとともに、フィラメント14の正極とチャンバ12との間を流れるアーク放電電流を計測する部位である。これらの計測結果は、コンピュータ44に供給される。
コンピュータ44は、イオン源10全体の作動を制御管理するとともに、イオン源の使用とともにスパッタにより摩耗して線径が細くなるフィラメントの現在の摩耗状態を判定し、この判定結果に応じてフィラメント14に流す電流の制御信号を生成する部位である。具体的には、コンピュータ44は、各種演算処理を実行するCPU44a、各種情報を保持するメモリ44b及びフィラメントの摩耗状態を判定する判定部44cを有する。判定部44cは、コンピュータ44にてプログラムを実行することにより機能するサブルーチンにて構成される。勿論この他に、イオン源10全体の作動を制御管理する機能も有する。
メモリ44bは、計測部42で計測された抵抗値及びアーク放電電流の計測結果を記録保持するとともに、フィラメント10と同じサイズ、同じ種類のフィラメントがプラズマのスパッタにより摩耗することにより線径が細くなり、フィラメントの発熱によりフィラメント自体が溶断する時の溶断電流を記録保持する。この溶断電流は、イオン源のインストール時からメモリ44b内に記憶し設定しておいてもよく、あるいは現在装着されているフィラメント14ではなくフィラメント14以前に装着されて用いられた以前のフィラメントの溶断直前に抵抗値を計測したときのフィラメント電流を記録保持するように構成してもよい。
判定部44cは、溶断電流の50〜80%の電流をフィラメント14に流したときの計測部42にて求められる抵抗値を用いて、フィラメント14の摩耗状態を判定する。
具体的には、溶断電流の50〜80%のフィラメント電流は、フィラメント14を自らの発熱により白熱して高温化状態とするので、プラズマを安定状態で発生するときのフィラメントの使用状態に近くなる。本発明は、この状態におけるフィラメント14の両端間の抵抗値を求める。したがって、判定部44cは、アーク放電が安定的に行われてプラズマが安定して生成される状態になるまでのフィラメント電流のオーバーシュートに耐えられるか否かを精度良く判定することができる。
図2(a)に示すフィラメント14が新品の時の抵抗値とフィラメント電流との関係と、図2(b)に示すフィラメント14が寿命末期の抵抗値とフィラメント電流との関係とを比較すると、新品時と寿命末期の差異は明確に示される。具体的には、フィラメント14が発熱する状態とは程遠い微小電流(20A)のフィラメント電流では、抵抗値は新品の時5mΩであり(図2(a)参照)、摩耗末期では10mΩであり(図2(b)参照)、摩耗による抵抗の増加は5mΩ程度と小さい。このため、判定部44cは精度のよい判定は困難である。しかし、例えば、フィラメント14が白熱する状態となるフィラメント電流が60Aの場合、抵抗値は新品の時6mΩに(図2(a)参照)、摩耗末期では21mΩに(図2(b)参照)漸近し、摩耗による抵抗の増加は15mΩ以上となる。フィラメント電流が60Aを超える場合でも同様の傾向であり、フィラメント14が白熱する状態では摩耗による抵抗の増加が大きいため、判定部44cは精度のよい判定を容易に行うことができる。
このような斜線領域におけるフィラメント電流は、摩耗により寿命末期とされるフィラメントの溶断電流の50〜80%である。図3の例では、新品時のフィラメントが発熱により抵抗値を増大させる60Aを下限とし、フィラメント電流が寿命末期のフィラメントであってもオーバーシュートしない80Aを上限とすることが好ましい。より好ましくは70〜80Aの範囲をフィラメント電流とする。
コンピュータ44は、この判定結果に基づいて、フィラメント電流の制御の指示を電流制御部40に送る。フィラメント14が寿命末期に近いと判定された場合、フィラメント電流の増加速度を下げてオーバーシュートを可能な限り小さくする。
このようにして、フィラメント14の摩耗状態に応じて、フィラメント電流の増加速度を変化させることで、フィラメント14が溶断せずに、効率よく安定したアーク放電を発生させ維持させることができる。
まず、メモリ44bに記録された溶断電流の値が呼び出されて溶断電流の50〜80%の範囲の一定値、例えば60%が設定され、溶断電流に一定値を乗算した電流値が通電開始時のフィラメント電流として設定される(ステップS10)。コンピュータ44は、設定された電流値に応じた指示を電流制御部40に出す。電流制御部40は、この指示に応じた制御信号を生成し、フィラメント電源30のフィラメント電流を制御する。例えば、設定されるフィラメント電流は70〜80Aである。
この間に、計測部42では、フィラメント14の両端間の電圧が測定され、抵抗値が推定算出される(ステップS30)。抵抗値は、フィラメント電流が一定値を保つ10〜20秒の間に複数回計測され、複数回計測した抵抗値が平均される。この平均値を予め設定された1次緩和過程に基づく関数に入力されて、抵抗値が漸近して一定値になるときの抵抗値が推定算出される。すなわち、フィラメント電流の通電開始から一定時間経過後のフィラメント14の両端間の抵抗値を計測し、フィラメント14が熱平衡により収束したときの抵抗値を推定して求める。上記1次緩和過程に基づく関数の替わりに、参照テーブルを参照して、抵抗値が推定算出されてもよい。
フィラメント14が発熱し白熱した状態では、フィラメントの温度が周辺部品に伝熱して、周辺部品の温度も上昇するため、フィラメント14の温度変化はフィラメントの周辺部品の熱伝導率及び熱容量に依存する。したがって、同一のイオン源であれば、フィラメントの発熱量を一定にすることでフィラメントの温度は常に一定の時間で静定する。このため、フィラメントに一定の電流を流してそのときの抵抗値を求めることにより、静定したときのフィラメント14の両端間の抵抗値を推定することができる。
なお、本発明においては、計測部42は、フィラメント電流を通電開始から一定時間毎に抵抗値を計測し、この抵抗値の過渡変化から、フィラメント14が熱平衡により収束したときの抵抗値を推定して求めてもよい。
次に、この判定結果に応じて、フィラメント電流を増加させるときの増加速度が設定される(ステップS50)。判定結果で、フィラメントが摩耗による寿命末期と判定される場合、フィラメントでは、新品時のフィラメントと同様のフィラメント電流の増加速度を与えると、フィラメント電流が大きなオーバーシュートを引き起こしてフィラメント自体が溶断する可能性が高い。このため、フィラメント電流は、新品時のフィラメントに与えるフィラメント電流の増加速度よりも低い増加速度で増加させる。例えば、新品時のフィラメントの場合の増加速度が2(A/秒)とすると、0.5(A/秒)と設定される。
一方、抵抗値が予め定められた値以下の場合、新品時と同様のフィラメント電流の増加速度で制御してもフィラメントは溶断しないとされ、新品時のフィラメントに与えるフィラメント電流の増加速度と同じ増加速度、例えば2(A/秒)が設定される。
又、白熱したフィラメントでは、微小電流を流した場合に比べて抵抗値が大きくなり、フィラメントの抵抗値に近い値を示すので、フィラメントの摩耗状態を精度良く判定することができる。
こうして、フィラメント電流を設定した増加速度で上昇させることにより、チャンバ12内の雰囲気は、フィラメントが溶断することなく、しかも安定してアーク放電が発生する状態に効率よく到達される(ステップS60)。
12 チャンバ
14 フィラメント
16 反射電極板
18 背面電極板
20 絶縁部材
22 原料ガス供給口
24 イオンビーム取出口
26 引出電源
28 アーク電源
30 フィラメント電源
32 原料ガス調整バルブ
34 内部空間
36,38 磁石
40 電流制御部
42 計測部
44 コンピュータ
46 引出電極(板)
Claims (3)
- ガスを供給して電圧を印加することによりプラズマを生成し、このプラズマからイオビームを生成するイオン源であって、
ガスが供給されてプラズマを生成する、少なくとも一部に導体面を有する内部空間を備えたチャンバと、
前記チャンバと電気絶縁され、前記内部空間のチャンバ内壁面から突出し、通電することにより前記内部空間に熱電子を放出するフィラメントと、
前記フィラメントと同じサイズ及び同じ種類のフィラメントが前記内部空間に生成されるプラズマにより摩耗することにより線径が細くなり、フィラメントの発熱によりフィラメント自体が溶断する時の溶断電流を記録保持する記録部と、
前記溶断電流の50〜80%の電流をフィラメントの通電開始時に流す電流制御部と、
フィラメントに前記溶断電流の50〜80%の電流を流したときの抵抗値を求める計測部と、
求めた抵抗値から前記フィラメントの摩耗状態を判定する判定部と、を有することを特徴とするイオン源。 - 前記計測部は、前記溶断電流の50〜80%の電流を流す通電開始から一定時間後の前記抵抗値を計測し、この計測結果から前記フィラメントの熱平衡により収束したときの抵抗値を推定する請求項1に記載のイオン源。
- 前記計測部は、前記溶断電流の50〜80%の電流を流す通電開始から一定時間毎に前記抵抗値を計測し、これらの抵抗値の時間変化から、前記フィラメントが熱平衡により収束したときの抵抗値を推定する請求項1に記載のイオン源。
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