JP2007236387A - 精製タンパク質の製造方法 - Google Patents

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昌弘 佐藤
Fumiyoshi Okano
文義 岡野
Yoshibumi Nishikawa
義文 西川
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Abstract

【課題】遺伝子工学的に製造されるFlt3リガンドを高純度で分離精製して製造する方法を提供する。
【解決手段】Flt3リガンドタンパク質を含む溶液を銅キレート担体に接触させ、該担体への吸着物を溶出剤で溶出する工程を含み、好ましくは該工程の後に、下記(a)〜(c)の少なくともいずれか1つの工程を行うことを特徴とする精製タンパク質の製造方法。
(a)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をハイドロキシルアパタイト担体に接触させ、素通りした画分を回収する工程。
(b)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をイオン交換担体に接触させ、該担体への吸着物を溶出剤で溶出する工程。
(c)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をゲル濾過担体に接触させる工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、Flt3リガンドを遺伝子操作技術によって量産し、以って医薬品(抗腫瘍・抗ウイルス・抗アレルギー)とすることを目的とした、Flt3リガンドを高純度で製造する方法に関する。
樹状細胞は骨髄由来抗原提示細胞であり、免疫系、抗原の取り込み、抗原提示に関与している。ナイーブT細胞は樹状細胞によって提示された抗原により活性化され増殖する。このため樹状細胞の重要な役割として、リンパ球が介する免疫システムを誘導し、制御することが挙げられる。近年、癌の免疫療法においてワクチンのアジュバントとして樹状細胞を利用することが注目されている。マウスの腫瘍モデルの実験で、生体外で誘導・活性化した樹状細胞を用いた抗腫瘍効果の報告が多数あり、ヒト腫瘍に対する臨床試験も多くの施設で実施されている。このような樹状細胞を用いた治療は現在のところ、最も有望な腫瘍の免疫治療方法と考えられている。
Fms-like tyrosine kinase receptor 3 ligand(特許文献1、以下Flt3リガンドと略記する)は、Flt3レセプターを介したシグナル伝達により造血系の前駆細胞や幹細胞の増殖、分化を制御することが知られている。さらに、Flt3リガンドは樹状細胞の増殖活性を有することが知られており、Flt3リガンドを用いて生体内あるいは生体外で樹状細胞を増幅させることにより、極めて効率的に抗腫瘍免疫を誘導し腫瘍を退縮できることができ、新規癌ワクチン療法としてのヒト臨床応用への可能性が示されている。また、脊髄形成異常症、再生不良性貧血、HIV感染等の感染症を対象にしたFlt3リガンドを用いた治療も期待されている。
Flt3リガンドの精製法に関して、以下の方法が報告されている。FLAGタグとFlt3リガンドの細胞外ドメインの融合タンパク質を作製し、アフィニティークロマトグラフィーにより精製する(特許文献1)。あるいは、Flt3リガンドの細胞外ドメインとヒト免疫グロブリンのFcドメインとの融合タンパク質を作製し、プロテインAセファロースカラムで精製する(特許文献1)。さらに、Flt3受容体とヒト免疫グロブリンのFcドメインとの融合タンパク質を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる、異種タンパクと融合させないFlt3リガンドの精製法も報告されている(特許文献1)。
米国特許第5554512号明細書
Flt3リガンドは膜貫通型と膜貫通型Flt3リガンドの細胞外ドメインが切断されることで形成される可溶性型の2種類が存在し、その両方が生理活性を持つ(ハナン(Hannum)、「ネイチャー(Nature)」、1994年、第368巻、p.643-648)。そのため、遺伝子操作により可溶化Flt3リガンドを作製することで、細胞内から活性型で分泌させることが可能になる。
Flt3リガンドの遺伝子組換え手法を用いた量産により、腫瘍やアレルギー、ウイルス病などの治療薬としての開発が期待される。
また、ヒトと同様ぺット、特にイヌにも、乳腺腫瘍など多数の腫瘍、アレルギー性の皮膚炎、パルボウイルス感染症、ジステンバー感染症など多数のウイルス病などが知られており、その治療薬の開発が求められている。
多成分から成る有用蛋白質を医薬品とする場合、各成分をそれぞれ単独に精製分離し、各成分ごとに毒性試験、薬効試験等詳細な解析を行うことが必要であり、また製剤化の際、それぞれの成分を常に一定含量添加することが義務づけられている。従って、Flt3リガンドを遺伝子組換えの医薬品とする場合、上記の異種タンパク質との融合タンパク質を作製し、アフィニティークロマトグラフィーによる精製を行うことは好ましくない。さらに、Flt3受容体とヒト免疫グロブリンのFcドメインとの融合タンパク質を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる方法では、高純度のFlt3受容体タンパク質を作製するという煩雑な行程が入り、同一の品質を保持したアフィニティーカラムの作製が容易ではない。望ましくは市販のカラムを用いて目的の成分を高純度で精製分画することが重要な課題である。 このように多成分の中に存在する異種タンパクを含まないFlt3リガンドを、市販カラムを用いた精製で活性を維持したまま高純度に大量に分離精製する方法はこれまで知られていなかった。従って、市販のカラム担体を用いてFlt3リガンドの高純度での製造法を確立することができれば、Flt3リガンドの医薬品としての開発の途がさらに開かれると期待される。
本発明者はかかる状況に鑑み、各種生産系で生産されたFlt3リガンドを高純度に精製分離することを目的とし、創意工夫を成し、遺伝子組換え手法を用いて種々の生産系でFlt3リガンドを生産し、それぞれ純度90%以上に精製分離する方法を確立し、かくして本発明を完成させるに至った。
具体的には、本発明は以下の構成からなる。
(1)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液を銅キレート担体に接触させ、該担体への吸着物を溶出剤で溶出する工程を含むことを特徴とする精製タンパク質の製造方法。
(2)Flt3リガンドタンパク質が配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である(1)に記載の精製タンパク質の製造方法。
(3)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液に界面活性剤を添加して銅キレート担体に接触させることを特徴とする(1)または(2)に記載の精製タンパク質の製造方法。
(4)(1)に記載の工程を行った後に、下記(a)〜(c)の少なくともいずれか1つの工程を行うことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の精製タンパク質の製造方法。
(a)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をハイドロキシアパタイト担体に接触させ、素通りした画分を回収する工程。
(b)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をイオン交換担体に接触させ、該担体への吸着物を溶出剤で溶出する工程。
(c)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をゲル濾過担体に接触させる工程。
(5)イオン交換担体がアニオン交換担体であることを特徴とする(4)に記載の精製タンパク質の製造方法。
(6)(4)に記載の(a)〜(c)の工程において、Flt3リガンドタンパク質を含む溶液に界面活性剤を添加して担体に接触させることを特徴とする(4)または(5)に記載の精製タンパク質の製造方法。
(7)界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であることを特徴とする(3)または(6)に記載の精製タンパク質の製造方法。
(8)Flt3リガンドタンパク質が、Flt3リガンド遺伝子を導入したバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞を用いて製造されたものであることを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載の精製タンパク質の製造方法。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の精製タンパク質の製造法を含む医薬品の製造方法。
本発明は、Flt3リガンドの製造方法を開示する。本発明により、銅キレート担体、好ましくはさらにハイドロキシアパタイト担体、イオン交換担体及び/またはゲル濾過担体を用いたカラム精製方法を利用してFlt3リガンドを異種タンパク質あるいは夾雑タンパク質を含むことなく精製分離することが可能となる。本発明により腫瘍、アレルギー、感染症を対象とした、Flt3リガンドの医薬品としての開発の途がさらに開かれると期待される。
本発明中のFlt3リガンドタンパク質は、Flt3受容体を活性化する能力を有する化合物に関する。本明細書中でいう化合物は、哺乳類由来のFlt3リガンド遺伝子がコードするタンパク質であり、Flt3リガンドの細胞外ドメインからなるタンパク質もしくはその変異体でもよい。
本明細書中に「Flt3リガンド」と単独で表記されている場合は、上記に標す化合物のことを指す。
本発明でいう変異体とは、Flt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質のアミノ酸配列の1から40個のいずれか、好ましくは1から20個のいずれか、さらに好ましくは1から数個のいずれかのアミノ酸付加、置換または欠失を含む。Flt3リガンドの細胞外ドメインは、例えばイヌFlt3リガンドの場合、配列番号1のアミノ酸番号1から186番目を指す。また、配列番号1のアミノ酸番号1から24はシグナル配列と推測されることから、本発明のいう細胞外ドメインは配列番号1のアミノ酸番号25番目から186番目を好ましく用いることができ、さらにこれらタンパク質を構成するアミノ酸数が1または数個異なるものも含む。
変異体はタンパクに対する修飾も含み、タンパクをコードする核酸に対してなされることができ、その例としては、欠失、点突然変異、切頭化、アミノ酸置換およびアミノ酸の付加が挙げられる。
あるいは、修飾は、例えば開裂、リンカー分子の付加、検出可能部分(例えばビオチン)の付加、脂肪酸の付加、あるアミノ酸の別のアミノ酸による置換等により、タンパクに対して直接なされ得る。Flt3リガンドのアミノ酸配列は、天然または非天然起源であり得る。即ち、それらは、天然Flt3リガンドを含み得るか、あるいはアミノ酸配列が、Flt3受容体に結合し、細胞にシグナルを伝達し細胞を活性化、例えば細胞増殖促進、する能力を保持する限り、非天然型起源の配列を含み得る。非天然型起源のアミノ酸は人工合成アミノ酸を含むがこれに限定されない。
明細書中でいうFlt3受容体とは、哺乳動物におけるFlt3受容体をいう。Flt3受容体は細胞外ドメインと細胞内ドメインからなる膜貫通タンパク質である。2量体のFlt3リガンドがFlt3受容体の細胞外ドメインに結合すると、Flt3受容体が2量体を形成し、Flt3受容体の細胞内ドメインがリン酸化されることで細胞増殖等に必要なシグナルが伝達される。ここでいうFlt3リガンドのFlt3受容体への結合は、Flt3リガンドのFlt3受容体細胞外ドメインへの結合のことを指す。
明細書中でいう、Flt3受容体を活性化する能力を有するとは、Flt3リガンドをFlt3受容体を発現している細胞に作用させることによりFlt3受容体を発現している細胞の増殖を促進させる能力のことをいう。Flt3受容体を発現している細胞としては、ヒト白血病株化細胞であるOCI-AML5、末梢血単核球、骨髄由来単核球が好ましく用いられる。
本発明において、精製に使用される銅キレート担体とは、銅をキレート結合させた担体のことをいう。銅キレート担体としては、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミドゲル、合成ポリマーなどに、例えばビスカルボキシメチルイミノ基[−N(CH2COOH)2]などのキレート能を有する交換基が結合した担体を硫酸銅などの銅塩の溶液で処理した担体が挙げられる。好ましくは、 キレーティングセファロース・ファーストフロー(アマシャムファルマシア社製)、キレーティングセファロース・ハイパフォーマンス(アマシャムファルマシア社製)、AF−Chelateトヨパール(東ソー社製)、Chelex 100Resin(バイオラッド社製)、POROS MC(アプライドバイオシステム社製)などの不溶性多糖類系担体に銅をキレートさせた担体が用いられ、特にキレーティングセファロース・ファーストフローが好ましく用いられる。銅キレート担体からの溶出は、競合試薬、キレート剤、低pHの緩衝液で溶出することができる。例えばイヌFlt3リガンドの場合、イミダゾールの濃度を0Mから0.5Mまで直線的に濃度勾配を上昇させることにより容易に溶出させることが可能であり、好ましくはイミダゾール濃度0.01Mから0.05MでイヌFlt3リガンドが最も良く溶出される。
ハイドロキシアパタイト担体としては、ハイドロキシアパタイトバイオゲルHT(バイオラッド社製)、ハイドロキシルアパタイト(PENTAX、サンギ、三井東圧化学社製)、セルロファインHAp(チッソ社製)等が好ましく、特にバイオラット社製のハイドロキシアパタイトバイオゲルHTが好ましく用いられる。ハイドロキシアパタイトの官能基はカルシウムイオンの示す2対の陽性荷電(Cサイト)と3対のリン酸基がもつ6価の陰性荷電酸素原子(Pサイト)からなる。タンパク質のアミノ基はPサイトに親和性を示すが、Cサイトとは反発する。また、タンパク質のカルボキシル基はCサイトに親和性を示すが、Pサイトとは反発するため、この性質を利用してタンパクの分離が可能となる。例えば、ハイドロキシアパタイトバイオゲルHTを用いて昆虫細胞で発現させたイヌFlt3リガンドを精製する場合、昆虫細胞から回収した培養上清に含まれるイヌFlt3リガンドは担体に結合しないため素通り画分に回収されるが、その他の夾雑タンパク質は担体に結合する。
イオン交換担体としては、アニオン交換担体とカチオン交換担体があり、アガロース、セルロース、合成ポリマーゲルなどに、例えばジエチルアミノエチル(Diethylaminoethyl)、クオテナリアミノエチル(Quaternary aminoethyl)、クオテナリアンモニウム(Quaternary ammonium)、カルボキシメチル(Carboxymethyl)、スルホプロピル(Sulphopropyl)、メチルスルホネ−ト(Methyl sulphonate)などの官能基を導入したものが挙げられる。これらのうち、例えばジエチルアミノエチル、クオテナリアミノエチル、クオテナリアンモニウムなどの3級アミン又は4級アンモニウムを不溶性の支持体に導入させたアニオン交換担体が好ましく用いられる。具体的には、Qセファロース・ファーストフロー(アマシャムファルマシア社製)、Qセファロース・ハイパフォーマンス(アマシャムファルマシア社製)、トヨパールSuper Q(東ソー社製)、トヨパールQAE(東ソー社製)、Macro−Prep 25Q(バイオラッド社製)、Macro−Prep HighQ(バイオラッド社製)、UNOsphere(バイオラッド社製)、QA−セルロファイン(チッソ社製)、Q−500−m(チッソ社製)、POROS HQ(アプライドバイオシステム社製)等が好ましく、特に好ましくは、クオテナリアンモニウムが導入された、Qセファロース・ハイパフォーマンス(アマシャム・ファルマシア社製)やQセファロース・ファーストフロー(アマシャム・ファルマシア社製)など(以下、Qセファロース担体と略記する)が用いられる。Qセファロース担体からの溶出は、溶出剤のpH値、イオン強度などによって決定される。例えば、昆虫細胞中で生産させたイヌFlt3リガンドの場合、pH:8付近でイヌFlt3リガンドはQセファロース担体へ結合し、塩濃度0.01Mから1.0M、好ましくは塩濃度0.03Mから0.5M、さらに好ましくは塩濃度0.05Mから0.2MでイヌFlt3リガンドの溶出が可能である。
また、ゲル濾過担体としては、アガロースとデキストランを共有結合させたビーズのゲルを用いることが好ましい。ゲル濾過担体としては、アマシャム・ファルマシア社製のスーパーデックス75、スパーデックス200、セファデックスG10セファデックスG200、セファクリルS100HR、セファクリルS500HR、セファロースCL2BまたはセファロースCL6B等、バイオラット社製のBio-Sil SECまたはBio-Silect等、東ソー社製のTSKgel G2000 SW、TSKgel Super-SW 2000、TSKgel G5000PW等を使用することができ、これら以外のものも容易に入手することができる。ゲル濾過クロマトグラフィーは、タンパク質の分子サイズの違いを利用して物質を分離する方法であり、低分子はカラム内の移動速度が遅く、高分子は速く移動する。例えば、スーパーデックス200を用いて昆虫細胞で発現させたイヌFlt3リガンドを精製する場合、流速200μl/minの条件では70分から80分の間にイヌFlt3リガンドを回収できるが、分離条件はこれに限定されない。
本発明の精製タンパク質の製造方法は、銅キレート担体を用いた精製工程を単独で行ってもFlt3リガンドの高純度化が可能であるが、好ましくは、銅キレート担体を用いた精製工程を実施した後に、ハイドロキシアパタイト担体、イオン交換担体、ゲル濾過担体を用いる精製工程の少なくとも1つの工程を組合わせて行った方がより効果が高い。例えば、昆虫細胞で生産したイヌFlt3リガンドを含む溶液中には、多くの昆虫細胞およびバキュロウイルス由来の夾雑物が含まれるので、少なくとも上記2つ、好ましくは上記3つ、最も好ましくは上記4つのカラム担体を組合わせて精製を実施する。例えば、昆虫細胞中で生産させたイヌFlt3リガンドの製造においては、初段精製に銅キレート担体を、2段目精製にハイドロキシアパタイト担体、3段目精製にアニオン交換担体、4段目精製にゲル濾過担体を用いることが好ましい。
なお、各カラム担体を用いた精製操作における、溶出剤の組成、液量などは特に限定されるものではなく、最適な分離条件は存在する夾雑タンパク質、Flt3リガンドの量、およびカラムの寸法などに応じて適宜決定される。
本発明の製造方法において、銅キレート担体を用いた精製を行う際に、Flt3リガンドの活性を有するタンパク質を含む溶液に界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の添加量は、0.001〜1重量%とすることが好ましい。界面活性剤を添加することにより、精製挙動に変化なく、精製タンパク質を高純度に製造することができる。また、界面活性剤を添加することにより、カラム担体やカラム容器への目的タンパク質の吸着によるロスを防止でき、高い収率での製造が可能になる。
界面活性剤は、銅キレート担体を用いる精製の後に行う次の(a)〜(c)の工程においても、Flt3リガンドタンパク質を含む溶液へ添加することが好ましい。
(a)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をハイドロキシアパタイト担体に接触させ、素通りした画分を回収する工程。
(b)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をイオン交換担体に接触させ、該担体への吸着物を溶出剤で溶出する工程。
(c)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をゲル濾過担体に接触させる工程。
添加する界面活性剤としては、特に限定はないが、アルキルアリルポリエーテルアルコール、高級アルコール硫酸化物、N−ココイルーLーアルギニンエチルエステルDLーピロリドンカルボン酸塩、NーココイルーNーメチルアミノエチルスルホン酸ナトリウム、コレステロール、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、スクワラン、ステアリンアルコール、ステアリン酸ポリオキシル40、セスキオレイン酸ソルビタンセタノール、セトマクロゴール1000、セバシン酸ジエチル、ソルビタン脂肪酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルフェノキシポリオキシエチレンエタン硫酸エステルアンモニウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレインアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等)、ポリオキシエチレンステアリンエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン30)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール、ポリソルベート60、ポリソルベート80、マクロゴール400、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロマクロゴール、リン酸ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテル、リン酸ポリオキシエチレンオレイルエーテルなど日本薬局方に医薬品添加物として記載されているものが好ましい。これらのなかでも、イヌFlt3リガンドの活性を有するタンパク質を製造する場合には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、特に好ましく用いられる。
上記の方法で製造されたFlt3リガンドタンパク質は,還元下、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により見かけの分子量が決定される。例えば、イヌFlt3リガンドの場合、見かけの分子量が約15〜20kDである。また、本発明の方法で製造されるFlt3リガンドの純度は、SDS−PAGEによる分析で98%以上、逆相カラムを用いたHPLCによる分析で、90%以上である。
上記の方法で製造したFlt3リガンドは、好ましくは以下に示す方法にてその活性を測定することが可能である。例えば、精製Flt3リガンド存在下と非存在下でヒト白血病株化細胞であるOCI-AML5(AML5)を培養し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターを用いて測定する。Flt3リガンド存在下の場合におけるAML5のトリチウムチミジンの取り込み量が、Flt3リガンド非存在下の場合におけるAML5のトリチウムチミジンの取り込み量を上回れば、Flt3リガンドの活性を有すると認めるのがよい。また、別の好ましい方法は、末梢血単核球あるいは骨髄由来単核球を用いる方法である。例えば、精製Flt3リガンド存在下と非存在下でこれら細胞を培養し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターを用いて測定する。Flt3リガンド存在下の場合におけるこれら細胞のトリチウムチミジンの取り込み量が、Flt3リガンド非存在下の場合におけるこれら細胞のトリチウムチミジンの取り込み量を上回れば、Flt3リガンドの活性を有すると認めるのがよい。少なくとも上記の細胞を2種類使って、精製Flt3リガンドの活性を確認することがよい。
Flt3リガンドをコードするDNAを組込んだ組換えベクターは例えば次のようにして製造することができる。すなわち、哺乳類由来の細胞からポリ(A)RNAを抽出した後、cDNAを合成し、各種哺乳類のFlt3リガンドタンパクをコードする遺伝子配列を元にしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと略す)を行うことにより、Flt3リガンドcDNAの全長あるいは細胞外ドメインをクローニングすることができる。
臟器などよりRNAを得る方法としては、通常の方法、例えば、ポリソームの分離、ショ糖密度勾配遠心や電気泳動を利用した方法などがあげられる。上記の臟器や細胞よりRNAを抽出する方法としては、グアニジン・チオシアネート処理後CsCl密度勾配遠心を行うグアニジン・チオシアネート−塩化セシウム法(チルグウィン(Chirgwin)、外3名、「バイオケミストリー(Biochemistry)」、1979年、第18巻,p.5294-5299)バナジウム複合体を用いてリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤で処理したのちフェノール抽出を行う方法(バーガー(Berger)、外1名、「バイオケミストリー(Biochemistry)、1979年、第18巻,p.5143-5149」,グアニジン・チオシアネート−ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン塩酸法、グアニジン・チオシアネート−フェノール・クロロホルム法、グアニジン・チオシアネートで処理したのち塩化リチウムで処理してRNAを沈殿させる方法などの中から適当な方法を選んで行うことができる。
臟器やマイトージェンなどで刺激された単核球やリンパ球より通常の方法、例えば、塩化リチウム/尿素法、グアニジン・イソチオシアネート法、オリゴdTセルロースカラム法等によりmRNAを単離し、得られたmRNAから通常の方法、例えば、Gublerらの方法(グブラー(Gubler)、外1名、「ジーン(Gene)」、1983年 第25巻,p.263−269),Okayamaらの方法(オカヤマ(Okayama)、外1名、「モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Molecular and cellular biology)」,1982年、第2巻,p.161-170;オカヤマ(Okayama)、外1名、「モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Molecular and cellular biology)」,1983年、第3巻,p.280-289)等によりcDNAを合成する。得られたmRNAからcDNAを合成するには、基本的にはトリ骨芽球ウイルス(AMV)などの逆転写酵素などを用いるほか1部プライマーを用いてDNAポリメラーゼなどを用いる方法を組み合わせてよいが、市販の合成あるいはクローニング用キットを用いるのが便利である。
宿主としては原核生物又は真核生物を用いることができる。原核生物としては細菌、特に大腸菌(Escherichia coli),バチルス属(Bacillus)細菌、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等を用いることができる。真核生物としては酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces serevisiae)等の真核性微生物、昆虫細胞、例えば、ヨトウガ(夜盗蛾)細胞(Spodoptera frugiperda),キャベツルーパー細胞(Trichoplusiani),カイコ細胞(Bombyx mori),動物細胞、例えばヒト細胞、サル細胞、マウス細胞等を使用することができる。本発明においてはさらに、生物体それ自体、例えば昆虫、例えばカイコ、キャベツルーパー等を用いることもできる。
発現ベクターとしては、プラスミド、ファージ、ファージミド、ウイルス(バキュロ(昆虫)、ワクチニア(動物細胞))等が使用できる。発現ベクター中のプロモーターは宿主細菌に依存して選択され、例えば細菌用プロモーターとしてはlacプロモーター、trpプロモーター等が使用され、酵母用プロモーターとしては、例えばadh1プロモーター、pqkプロモーター等が使用される。また、昆虫用プロモーターとしてはバキュロウイルスポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等、動物細胞としてはSimian Virus40のearlyまたはlateプロモーター等があげられるが、これらに限定されない。 発現ベクターによる宿主の形質転換は、当業界においてよく知られている常法により行うことができ、これらの方法は例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons社、に記載されている。形質転換体の培養も常法に従って行うことができる。
Flt3リガンドを哺乳動物細胞あるいは昆虫細胞を用いて生産する場合、その前駆体タンパクに膜貫通ドメインが存在するため、全長Flt3リガンドは細胞外に分泌されない。Flt3リガンドは細胞外ドメインを含む可溶型でも生物活性があることが知られており、例えば、配列番号1に示すイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインをコードする遺伝子を含む発現ベクターを用いることによって活性型イヌFlt3リガンドを細胞で生産し、かつ培養液から回収することができる。
Flt3リガンドは、例えば、夜盗蛾由来の昆虫細胞、例えばSf-9、Sf-21あるいはHigh Fiveに感染する夜盗蛾科由来のバキュロウイルスより組換えウイルスを作製することによって、昆虫細胞発現系を用いて生産することができる。組換えバキュロウイルスは、Flt3リガンドの蛋白質をコ−ドするDNAをバキュロウイルス用のクローニングベクターに連結して作製した組換え体プラスミドとバキュロウイルスDNAとを、昆虫細胞にコトランスフェクションして作製することができる。従って、組換え体ウイルスは、in vivo的な方法で作製することができる。
すなわち、Flt3リガンドのタンパク質をコードするDNA部分を、例えばpAcAB3(Pharmingen社製)などのクローニングベクターの発現調節部分の下流に連結するという一般的な遺伝子操作に従って組換え体プラスミドを作製することができる。この組換え体プラスミドとバキュロウイルスDNAとを、文献(藤井著、「蛋白質 核酸 酵素」、1992年、第37巻、p.2701−2706)のような方法で昆虫細胞、例えばSf-9にコトランスフェクションした後、培養を続け、培養液中に出現した非組換え体(野性型)と組換え体のウイルスの中から限界希釈法、もしくはプラーク法などの一般的な方法によって組換え体ウイルスをクローニングすることができる。組換え体ウイルスはFlt3リガンドを発現していることから、組換えウイルスのクローンから産生されるFlt3リガンドを抗Flt3リガンド抗体を用いて検出することで、野性型ウイルスと容易に区別できる。Flt3リガンドの生産は、前記の組換えバキュロウイルスを昆虫細胞中で増殖させることにより行なう。
昆虫細胞を用いる場合は、前記組換え体ウイルスを含む培養液により、細胞を感染させ、平面培養または浮遊培養により培養する。昆虫細胞を培養する培地としては、例えば牛血清を添加したTC-100培地を使用することができる。培養温度は25〜28℃が適当である。培養後、培養液を遠心分離しその上清からFlt3リガンドを回収する。
さらに、Flt3リガンドは、例えば、カイコに感染する組換えカイコ核多角体病ウイルスを作製することによって、カイコ発現系を用いて生産することができる。組換えカイコ核多角体病ウイルスは、Flt3リガンドの蛋白質をコ−ドするDNAをカイコのクローニングベクターに連結して作製した組み換え体プラスミドとカイコ核多角体病ウイルスDNAとを、カイコ樹立細胞にコトランスフェクションして作製することができる。従って、組換え体ウイルスは、in vivo的な方法で作製することができる。
すなわち、Flt3リガンドの蛋白質をコードするDNA部分を、例えばpBK283などのカイコのクローニングベクターの発現調節部分の下流に連結するという一般的な遺伝子操作に従って組換え体プラスミドを作製することができる。この組換え体プラスミドとカイコ核多角体病ウイルスDNAとを、文献(ホリウチ(Horiuchi)、「アグリカルチュアル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)」, 1987年、第51巻,p.1573−1580)のような方法でカイコ樹立細胞、例えばBM−N株にコトランスフェクションした後、培養を続け、培養液中に出現した非組換え体(野性型)と組換え体のウイルスの中から限界希釈法、もしくはプラーク法などの一般的な方法によって組換え体ウイルスをクローニングすることができる。組換え体ウイルスは多角体の形成能がないことから、野性型ウイルスと容易に区別できる。Flt3リガンドの生産は、前記の組換えカイコ核多角体病ウイルスをカイコ樹立細胞中、またはカイコ生体中で増殖させることにより行なう。
カイコ樹立細胞を用いる場合は、前記組換え体ウイルスを含む培養液により、BM−N細胞を感染させ、平面培養または浮遊培養により培養する。BM−N細胞を培養する培地としては、例えば牛血清を添加したTC−100培地を使用することができる。培養温度は25〜28℃が適当である。培養後、培養液を遠心分離しその上清からFlt3リガンドを回収する。
カイコ生体を用いる場合は、前記の組換え体ウイルスを含む培養液をカイコ幼虫に注射して、合成飼料を与えて飼育する。飼育後、体液を採取しその上清からFlt3リガンドを回収する。
また、哺乳動物発現系を用いることでFlt3リガンドを製造することも可能である。Flt3リガンドをコードするDNAを有する哺乳動物細胞発現用ベクターを構築し、例えば、サルの株化細胞COS1あるいはCOS7、チャイニーズハムスターの株化細胞CHO等にトランスフェクトすることで、Flt3リガンドの産生が可能となる。哺乳類細胞中でのFlt3リガンド発現のための好ましい系は、G418耐性を付与する遺伝子(安定トランスフェクト化細胞株の選択を促す)、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー−プロモーター配列のような選択可能マーカーを含有するpRc/CMV(Invitrogen, Carlsbad, CAから入手可能)のような系である。さらに、霊長類またはイヌ細胞株中での発現に適しているのは、エプスタイン−バーウイルス(EBV)複製起点を含有し、多コピー染色体外素子としてのプラスミドの保持を促すpCEP4ベクター(Invitrogen)である。別の発現ベクターは、in vitroでの転写を効率的に刺激するポリペプチド延長因子1αのプロモーターを含有するpEF−BOSプラスミドである。本プラスミドは、ミシズマ(Mishizuma)ら(「ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic acids research)」、1990年、第18巻、p.5322)により記載されており、トランスフェクション実験におけるその使用は、例えばデモウリン(Demoulin)ら(「モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Molecular and cellular biology)、1996年、第16巻、p.4710−4716」により開示されている。さらに別の好ましい発現ベクターは、スタンフォード-ペリカウデット(Stratford-Perricaudet)らにより記載されたアデノウイルスであり、これはE1およびE3タンパク質を欠いている(「ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インバスティゲーション(The Journal of clinical investigation)」、1992年、第90巻、p.626−630)。Adeno.P1A組換え体としてのアデノウイルスの使用は、P1Aに対する免疫感作のためのマウスにおける皮内注射において、ワーニアー(Warnier)らにより開示されている(「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International journal of cancer)」、1996年、第67巻、p.303−310)。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例に使用するFlt3リガンドとしてイヌFlt3リガンドの例を示す。
参考例1:Flt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAのクローニング
イヌおよびヒト末梢血よりHistopaque-1077(Sigma社製)を用いた密度勾配遠心によりヒトおよびイヌ末梢血単核球(以下PBMCと略記する)を分離した。PBMC分離後、イヌPBMCは10%牛胎児血清(以下FBSと略記する)を含むERDF培地(極東製薬(株)製)で培養し、ヒトPBMCはAIM−V培地(Gibco社製)で培養した。イヌおよびヒトFlt3リガンドの発現を誘導するために、10μg/mlのコンカナバリンA(Sigma社製)で1日刺激した。刺激したイヌおよびヒトPBMCから、TRIZOL(Gibco社製)を用いて総RNAを調整した。得られたRNAの5μgから、SuperScriptTMFirst-Strand Synthesis System for RT-PCR (Invitrogen社製) を用いて、添付のプロトコールに従いcDNA(総量20μl)を調整した。
PCRは1μlの刺激イヌおよびヒトリンパ球由来cDNA、それぞれ2種類のプライマー(配列番号2と配列番号3)を各1μM, 0.2mM各dNTP, 1mM MgSO4, 1UのKODポリメラーゼ(Toyobo社製)となるように各試薬と添付のバッファーを加え全量を50μlとし、Bio Rad社製のThermal Cyclerを用いて行った。なお、配列番号2と配列番号3のプライマーには制限酵素部位のEcoRIが挿入してあり、さらに配列番号3には終止コドンが付加されている。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約570bpのDNA断片を調製した。TAクローニングキット(Invitrogen社)を用いて調整したDNAをベクターへ挿入し、蛍光DNAシーケンサー(Applied Biosystems社製ABI PRISM 3100)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、調整したDNAの塩基配列を決定した。
参考例2:Flt3リガンド細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを挿入した組換えバキュロウイルスの作製
参考例1により得られたベクター(イヌFlt3リガンドのアミノ酸配列の1から182番目が挿入されている)を制限酵素EcoRIで切断後、Klenow Fragment(Takara社製)で平滑末端化を行った。バキュロウイルス発現ベクターとしてpAcAB3(Pharmingen社製)を用いた。ポリヘドリンプロモーター下流のXbaIサイトを制限酵素XbaI(Takara社製)で切断後、Klenow Fragmentで平滑末端化を行い、Calf intestine Alkaline Phosphatase(Takara社製)で脱リン酸化処理をした。調整したベクターとイヌFlt3リガンド細胞外ドメインのDNA断片を連結し、組換えベクターを作製した。添付マニュアルに従い、作製した組換えベクターと昆虫細胞Sf9(Spondoptera frugeruda由来、Gibco社製)を用いて組換えウイルスrAcCaFLを作製した。
75cm2のフラスコでコンフルエントまで平面培養したSf9細胞を血清非含有の培地Sf-900 II(Gibco社製)で置き換え、組換えバキュロウイルスrAcCaFLを感染させ、4日間培養した後、培養上清を回収した。
イヌFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した培養上清に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜を3%スキムミルク含有リン酸緩衝液で4℃、一晩、ブロッキングし、その後、抗イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を室温で1時間反応させた。0.1% Tween-20を含むリン酸緩衝液(以下PBSTと略記する)で3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECL(Amersham社製)に反応させ、X線フィルムに感光することで、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現を確認した。
実施例1:昆虫細胞で製造したFlt3リガンドの精製
参考例2で得られたFlt3リガンドタンパク質を含む溶液を用いて銅キレート担体であるキレーティングセファロース・ファーストフロー(アマシャムファルマシア社製)によるイヌFlt3リガンドの分画を検討した。精製はpH:6で行った。培養上清を、銅キレート担体を充填したカラムにアプライした後、十分量の20mMリン酸緩衝液(pH:6.8)でカラムを洗浄した。溶出はイミダゾールの濃度を0mMから50mMまで変化させて溶出を行った。その結果、イヌFlt3リガンドは、20mMのイミダゾールの濃度で溶出された。本精製工程での回収率は約60%であった。
イヌFlt3リガンドを含む画分をさらにハイドロキシアパタイト担体であるハイドロキシアパタイトバイオゲルHT(バイオラッド社製)を充填したカラムにアプライし、十分量の10mMリン酸緩衝液(pH6)でカラムを洗浄した結果、イヌFlt3リガンドは該担体に結合することなく素通り画分に回収された。本精製工程での回収率は約85%であった。
イヌFlt3リガンドを含む画分をさらにアニオン交換担体であるQセファロース・ファーストフロー(アマシャムファルマシア社製)を充填したカラムにアプライし、十分量の50mMトリス塩酸緩衝液(pH:8)でカラムを洗浄後、NaClの濃度を0.1Mから1Mまで0.1M刻みで溶出を行った。その結果、イヌFlt3リガンドは0.1MのNaCl濃度でにより溶出された。本精製工程での回収率は約70%であった。
イヌFlt3リガンドを含む画分をさらにゲル濾過担体であるスーパーデックス200を充填したカラムにアプライし、0.01%のPluronic F-68(Gibco社製)を含むPBSを十分量カラムに展開した。スーパーデックス200を用いた場合、流速200μl/minの条件では70分から80分の間にイヌFlt3リガンドが回収できた。本精製工程での回収率は約70%であった。イヌFlt3リガンドの純度は、逆相カラムを用いたHPLCによる分析で、90%以上であった。
以上の結果を図1に示す。
参考例3:精製イヌFlt3リガンドの活性の確認
実施例1で得られた精製イヌFlt3リガンドのin vitroでの活性測定は以下のようにして行った。ヒト白血病株化細胞であるOCI-AML5(DSMZ製、以下AML5と略記する)は、Flt3リガンドおよびGM-CSF依存的に増殖する細胞株である。AML5は、20% FBSと10 ng/mlのGM-CSFを含むalpha-MEM培地(Gibco社製)で培養し、培養開始後1ヶ月以内の細胞を解析に用いた。
洗浄したAML5を5% FBSを含むalpha-MEMで懸濁し、細胞が3 x 104 / 100 μl / wellとなるように96穴プレートに移した。10 μlの精製イヌFlt3リガンドを添加し、5% CO2, 37℃の条件で66時間培養した。なお、培養開始から48時間後にそれぞれの培養液に1μCiづつのトリチウムチミジン(Amersham社製)を添加した。培養後、細胞ハーベスターにて細胞をガラス濾紙上に回収し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターにて測定した。図2に示すように、精製イヌFlt3リガンドはAML5の増殖を促進させ、作製したイヌFlt3リガンドはFlt3リガンドの活性を有することが確認された。
参考例4:精製イヌFlt3リガンドの活性のイヌPBMC増殖活性の確認
イヌ末梢血よりHistopaque-1077を用いた密度勾配遠心によりイヌPBMCを分離した。洗浄したイヌPBMCをAIM-V培地で懸濁し、細胞が5 x 104 / 100 μl / wellとなるように96穴プレートに移した。イヌFlt3リガンドを含む培養上清、ヒトGM-CSF(Genzyme社製)とヒトIL-4(Genzyme社製)を添加し、5% CO2, 37℃の条件で7日間培養した。なお、培養開始から6日目にそれぞれの培養液に1μCiづつのトリチウムチミジンを添加した。培養後、細胞ハーベスターにて細胞をガラス濾紙上に回収し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターにて測定した。1000U/mlのヒトGM-CSFと1000U/mlのヒトIL-4の存在下で精製イヌFlt3リガンドを加えたところ、図3に示すように、イヌPBMC由来の細胞の増殖を促進することが確認された。
実施例2:カイコによるイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現
カイコ核多角体病ウイルス発現ベクターのp283(日本農産工業(株)製)をEcoRIで切断後、Calf intestine Alkaline Phosphatase(Takara社製)で脱リン酸化処理をし、参考例1により得られたベクターを制限酵素EcoRIで切断後に得られるイヌFlt3リガンド細胞外ドメインのDNA断片と連結し、組換えベクターを作製した。添付マニュアルに従い、作製した組換えベクターとBmN4細胞(フナコシ(株)製)を用いて組換えウイルスrBmCaFLを作製した。
作製したrBmCaFLを5齢のカイコに皮下接種し、3日後に体液を回収した。
Flt3リガンドタンパク質を含む回収した体液を用いて銅キレート担体であるキレーティングセファロース・ファーストフロー(アマシャムファルマシア社製)によるイヌFlt3リガンドの分画を検討した。培養上清を銅キレート担体を充填したカラムにアプライし、十分量の20mMリン酸緩衝液(pH:6.8)でカラムを洗浄した。溶出はイミダゾールの濃度を0mMから50mMまで変化させて溶出を行った。その結果、イヌFlt3リガンドは、20mMのイミダゾールの濃度で溶出された。
銀染色の結果を図4に示す。
イヌFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した体液に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜をSM-PBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECL(Amersham社製)に反応させ、X線フィルムに感光することで、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現を確認した。
実施例3:界面活性剤を添加したFlt3リガンドの精製
イヌFlt3リガンドの活性を有するタンパク質の精製過程において、担体を充填するカラム、チューブ、受ける容器などへイヌFlt3リガンドの活性を有するタンパク質が吸着し、精製収率が低下する可能性がある。そのため、日本薬局方に記載されている界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を精製工程に添加し、精製収率の向上効果を検討した。
実施例1における銅キレート担体、ハイドロキシアパタイト担体、アニオン交換担体及びゲル濾過担体による各精製工程において、0.01%のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)をイヌFlt3リガンドを含む溶液又は画分に添加し、参考例2と同様の条件で昆虫細胞にて生産したイヌFlt3リガンドの活性を有するタンパク質を精製した。
その結果、各精製工程での精製挙動に全く変化は認められず、各担体での精製収率が5〜20%向上した。
銅キレート担体、ヒドロキシアパタイト担体、アニオン交換担体、ゲル濾過担体およびこれら4種類のカラムを組み合わせた場合での、昆虫細胞で製造したイヌFlt3リガンドの精製状況を銀染色にて検出した図である。 ヒトGM-CSFとヒトIL-4の存在下でイヌFlt3リガンドを添加することによりイヌ末梢血単核球由来細胞の増殖が促進することを示す図である。 ヒト白血病株化細胞AML-5を用いて、精製イヌFlt3リガンドがFlt3リガンドの活性を有することを示す図である。 銅キレート担体を用いた場合での、カイコで製造したイヌFlt3リガンドの精製状況を銀染色にて検出した図である。
符号の説明
1 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞の培養上清由来のタンパク質を示す図である。
2 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞の培養上清由来のタンパクを銅キレート担体で精製した後のタンパク質を示す図である。
3 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞の培養上清由来のタンパクをハイドロキシアパタイト担体で精製した後のタンパク質を示す図である。
4 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞の培養上清由来のタンパクをアニオン交換担体で精製した後のタンパク質を示す図である。
5 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞の培養上清由来のタンパクをゲル濾過担体で精製した後のタンパク質を示す図である。
6 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞の培養上清由来のタンパクを銅キレート担体、ハイドロキシアパタイト担体、アニオン交換担体、の3種類のカラムを用いて精製した後のタンパク質を示す図である。
7 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞の培養上清由来のタンパクを銅キレート担体、ハイドロキシアパタイト担体、アニオン交換担体、ゲル濾過担体の4種類のカラムを用いて精製した後のタンパク質を示す図である。
8 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを感染させたカイコの体液由来のタンパク質を示す図である。
9 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを感染させたカイコの体液由来のタンパクを銅キレート担体で精製した後のタンパク質を示す図である。
10 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を示す図である。

Claims (9)

  1. Flt3リガンドタンパク質を含む溶液を銅キレート担体に接触させ、該担体への吸着物を溶出剤で溶出する工程を含むことを特徴とする精製タンパク質の製造方法。
  2. Flt3リガンドタンパク質が配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である請求項1に記載の精製タンパク質の製造方法。
  3. Flt3リガンドタンパク質を含む溶液に界面活性剤を添加して銅キレート担体に接触させることを特徴とする請求項1または2に記載の精製タンパク質の製造方法。
  4. 請求項1に記載の工程を行った後に、下記(a)〜(c)の少なくともいずれか1つの工程を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の精製タンパク質の製造方法。
    (a)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をハイドロキシアパタイト担体に接触させ、素通りした画分を回収する工程。
    (b)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をイオン交換担体に接触させ、該担体への吸着物を溶出剤で溶出する工程。
    (c)Flt3リガンドタンパク質を含む溶液をゲル濾過担体に接触させる工程。
  5. イオン交換担体がアニオン交換担体であることを特徴とする請求項4に記載の精製タンパク質の製造方法。
  6. 請求項4に記載の(a)〜(c)の工程において、Flt3リガンドタンパク質を含む溶液に界面活性剤を添加して担体に接触させることを特徴とする請求項4または5に記載の精製タンパク質の製造方法。
  7. 界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であることを特徴とする請求項3または6に記載の精製タンパク質の製造方法。
  8. Flt3リガンドタンパク質が、Flt3リガンド遺伝子を導入したバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞を用いて製造されたものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の精製タンパク質の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の精製タンパク質の製造方法を含む医薬品の製造方法。
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