JP2006166908A - 動物用疾患治療剤およびその製造方法 - Google Patents

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義文 西川
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Abstract

【課題】
遺伝子工学的に製造されるFlt3リガンド、その製造方法の提供。
【解決手段】
イヌのcDNAからFlt3リガンドの細胞外ドメインをコードする遺伝子をクローニングし、Flt3リガンドの細胞外ドメインをコードするDNAを含む組み替えバキュロウイルスを作成し、これを昆虫細胞に感染させることによってイヌFlt3リガンドの大量生産に成功した。これにより、ヒトをはじめ、動物の抗腫瘍薬、抗アレルギー薬、抗ウイルス薬などへのFlt3の用途が開かれることが期待される。
【選択図】なし

Description

本発明は、Flt3受容体に結合し、イヌ樹状細胞の増殖促進活性を有するタンパク質、該タンパク質を含む動物用疾患治療剤、該動物用疾患治療剤を用いる動物の疾患治療方法、
動物用医薬品(抗腫瘍・抗ウイルス・ワクチンアジュバント)とすることを目的とした組換えベクター、組換えウイルス及び形質転換体、並びに該タンパク質の製造方法に関する。
樹状細胞は骨髄由来抗原提示細胞であり、免疫系、抗原の取り込み、抗原提示に関与している。ナイーブT細胞は樹状細胞によって提示された抗原により活性化され増殖する。このため樹状細胞の重要な役割として、リンパ球が介する免疫システムを誘導し、制御することが挙げられる。近年、癌の免疫療法においてワクチンのアジュバントとして樹状細胞を利用することが注目されている。マウスの腫瘍モデルの実験で、生体外で誘導・活性化した樹状細胞を用いた抗腫瘍効果の報告が多数あり、ヒト腫瘍に対する臨床試験も多くの施設で実施されている。このような樹状細胞を用いた治療は現在のところ、最も有望な腫瘍の免疫治療方法と考えられている。
Fms-like tyrosine kinase receptor 3 ligand(特許文献1、以下Flt3リガンドと略記する)は、Flt3レセプターを介したシグナル伝達により造血系の前駆細胞や幹細胞の増殖、分化を制御することが知られている。さらに、Flt3リガンドは樹状細胞の増殖活性を有することが知られており、Flt3リガンドを用いて生体内あるいは生体外で樹状細胞を増幅させることにより、極めて効率的に抗腫瘍免疫を誘導し腫瘍を退縮できることができ、新規癌ワクチン療法としてのヒト臨床応用への可能性が示されている。また、脊髄形成異常症、再生不良性貧血、HIV感染等の感染症を対象にしたFlt3リガンドを用いた治療も期待されている。
遺伝子操作技術によりマウスのFlt3リガンド(特許文献1)に続き、ヒトのFlt3リガンドのcDNAもクローニングされ(特許文献1)、その遺伝子組換え手法を用いた量産化が検討されている。ヒトおよびマウスFlt3リガンドと相同性の高い遺伝子がイヌから同定されているが、そのタンパクの発現およびその機能は明らかにされていない(非特許文献1)。
米国特許第5554512号明細書 ヤング(Yang)、外1名、「ディーエヌエー・シークエンス(DNA Sequence)」、2000年、第11巻、p163-166
Flt3リガンドは膜貫通型と膜貫通型Flt3リガンドの細胞外ドメインが切断されることで形成される可溶性型の2種類が存在し、その両方が生理活性を持つ(ハナン(Hannum)、「ネイチャー(Nature)」、1994年、第368巻、p.643-648)。そのため、遺伝子操作により可溶化Flt3リガンドを作製することで、細胞内から活性型で分泌させることが可能になる。ヒトおよびマウスのFlt3リガンドの細胞外ドメインは、従来の方法、例えば大腸菌、酵母、哺乳動物細胞、を用いて活性型タンパクの製造が可能である(特許文献1)が、イヌFlt3リガンドに関しては活性型の製造ができなかった。
イヌ由来遺伝子からFlt3リガンドの活性を有したタンパク質を遺伝子組換え手法を用いて細胞で容易に量産することが可能になれば、ヒトをはじめ、動物の抗腫瘍薬、抗アレルギー薬、抗ウイルス薬など、Flt3リガンドとしての用途が開かれることが期待される。
本発明者は、かかる状況に鑑み、イヌFlt3リガンド遺伝子の大量発現を目的とし、創意工夫を成し、イヌのcDNAからFlt3リガンドの細胞外ドメインをコードする遺伝子をクローニングし、Flt3リガンドの細胞外ドメインをコードするDNAを含む組換えバキュロウイルスを作製し、これを昆虫細胞に感染させることによってイヌFlt3リガンドの大量生産にも成功し、以って簡単に大量にFlt3リガンドを製造する方法を確立し、かくして本発明を完成させるに至った。
具体的には、本発明は以下の構成からなる。
(1)Flt3受容体に結合し、イヌ樹状細胞の増殖促進活性を有することを特徴とする化合物。
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその変異体であることを特徴とする(1)に記載の化合物。
(3)イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質またはその変異体である(1)に記載の化合物。
(4)Flt3受容体に結合し、イヌ樹状細胞の増殖促進活性を有する物質を含むことを特徴とする動物用疾患治療剤。
(5)該物質がタンパク質であることを特徴とする(4)に記載の動物用疾患治療剤。
(6)該物質が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその変異体である(4)に記載の動物用疾患治療剤。
(7)該物質がイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質またはその変異体である(4)に記載の動物用疾患治療剤。
(8)該疾患が腫瘍または感染症である(4)〜(7)のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤。
(9)対象となる動物がイヌである(4)〜(8)のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤。
(10)インターロイキン12および/またはインターロイキン18を含んでなる(4)〜(9)のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤。
(11)注射剤であることを特徴とする(4)〜(10)のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤。
(12)(4)〜(11)のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤を動物に注射投与することを特徴とする動物の疾患治療方法。
(13)(4)〜(10)のいずれか1項に記載された動物用疾患治療剤を末梢血から分離したリンパ球に作用させた後、再び体内に戻すことを特徴とする動物の疾患治療方法。
(14)(4)〜(10)のいずれか1項に記載された動物用疾患治療剤を投与した動物から分離した末梢血単核球を生体外で培養後、再び体内に戻すことを特徴とする動物の疾患治療方法。
(15)配列番号2のDNA配列を含む組換えベクター。
(16)イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質またはその変異体をコードするDNA配列を含む組換えベクター。
(17)配列番号2のDNA配列を含む組換えバキュロウイルス。
(18)イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質またはその変異体をコードするDNA配列を含む組換えバキュロウイルス。
(19)(15)または(16)に記載の組換えベクターにより宿主細胞を形質転換してなる形質転換体。
(20)宿主細胞が真核細胞あるいは原核生物である(19)に記載の形質転換体。
(21)(19)または(20)に記載の形質転換体を培養することを特徴とするイヌFlt3リガンドの製造方法。
(22)(17)または(18)に記載の組換えバキュロウイルスを昆虫樹立細胞中で増殖させることを特徴とするイヌFlt3リガンドの製造方法。
(23)(17)または(18)に記載の組換えバキュロウイルスをカイコ生体中で増殖させることを特徴とするイヌFlt3リガンドの製造方法。
(24)(15)または(16)に記載の組換えベクターを用いた哺乳細胞発現系によるイヌFlt3リガンドの製造方法。
(25)(15)または(16)に記載の組換えベクターを用いた大腸菌発現系によるイヌFlt3リガンドの製造方法。
(26)(15)または(16)に記載の組換えベクターを用いた無細胞発現系によるイヌFlt3リガンドの製造方法。
(27)イヌFlt3リガンドを特異的に認識する抗体。
本発明は、バキュロウイルスを用いた昆虫細胞発現系、カイコ発現系および無細胞発現系によるイヌFlt3リガンドとその製造方法を開示する。イヌFlt3リガンドは、Flt3受容体に結合し、イヌCD11c陽性細胞の増殖促進活性を有することを特徴とする。製造したイヌFlt3リガンドは、腫瘍、アレルギー、感染症を対象にした動物用疾病治療剤になりうる。
また、本発明はイヌFlt3リガンドを特異的に認識する抗体も開示する。
本発明の一態様は、Flt3受容体に結合し、イヌCD11c陽性細胞の増殖促進活性を有する化合物に関する。本明細書中でいう化合物は、イヌFlt3リガンド遺伝子がコードするタンパク質であり、配列番号1に示すアミノ酸からなるタンパク質もしくはその変異体あるいはイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインからなるタンパク質もしくはその変異体でもよい。
本明細書中に「イヌFlt3リガンド」と単独で表記されている場合は、上記に標す化合物のことを指す。
ここでいうFlt3受容体とは、哺乳動物におけるFlt3受容体をいい、特にヒトまたはイヌのものが好ましい。Flt3受容体は細胞外ドメインと細胞内ドメインからなる膜貫通タンパク質である。2量体のFlt3リガンドがFlt3受容体の細胞外ドメインに結合すると、Flt3受容体が2量体を形成し、Flt3受容体の細胞内ドメインがリン酸化されることで細胞増殖等に必要なシグナルが伝達される。ここでいうFlt3リガンドのFlt3受容体への結合は、Flt3リガンドのFlt3受容体細胞外ドメインへの結合のことを指す。また、ここでいう樹状細胞とは、樹状細胞の分子マーカーであるCD11cまたはCD123を細胞表面に発現している細胞のことである。また、CD11cまたはCD123陽性細胞の中で、単球の分子マーカーCD14が発現していない細胞によって、樹状細胞を特徴づけることができる。これら以外の樹状細胞の分子マーカーには、CD1a, CD40, CD48, CD54, CD58, CD80, CD86, VAL-4, MHCクラスII, Eカドヘリン等があり、これらのマーカーが発現していることを指標にして樹状細胞を特徴づけることも可能である。
Flt3リガンドのFlt3受容体への結合は、例えば以下の方法で測定することができる。Flt3受容体のタンパク質を吸着させたカラム担体を作成し、このカラム担体にFlt3リガンドのタンパク質を含む溶液を接触させる。担体カラムを洗浄後、緩衝液の条件変更(pH、塩濃度、極性)、変性緩衝液の使用(pHの極端な変化、カオトロピック塩の添加)、Flt3リガンドの競合などにより担体からFlt3リガンドが溶出される場合に、Flt3リガンドがFlt3受容体へ結合すると認めるのがよい。また、Flt3リガンドのタンパク質を吸着させたカラム担体とFlt3受容体のタンパク質を含む溶液を使用してもよい。
さらに、ここでいう増殖促進活性とは、イヌ由来の細胞にイヌFlt3リガンドを作用させた場合、CD11c陽性細胞の数の増加、全細胞中のCD11c陽性細胞の割合の増加、CD11c陽性細胞のDNA合成の活性化のいずれかの活性を有することをいう。本発明において、好ましい細胞の増殖促進活性の測定方法は、例えばイヌFlt3リガンド存在下と非存在下でイヌ末梢血リンパ球(以下PBMCと略記する)を培養し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターを用いて測定し、さらに培養前後におけるCD11c陽性細胞の割合を測定する。イヌFlt3リガンド存在下の場合におけるイヌPBMCのトリチウムチミジンの取り込み量が、イヌFlt3リガンド非存在下の場合におけるイヌPBMCのトリチウムチミジンの取り込み量を上回り、さらに培養後にCD11c陽性細胞の割合の増加が見られた場合にイヌCD11c陽性細胞の増殖促進活性を有すると認めるのがよい。
本発明でいう変異体とは、配列番号1またはイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質のアミノ酸配列の1から40個のいずれか、好ましくは1から20個のいずれか、さらに好ましくは1から数個のいずれかのアミノ酸付加、置換または欠失を含む。イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインは、その代表例としては配列番号1のアミノ酸番号1から186番目を指す。また、配列番号1のアミノ酸番号1から24はシグナル配列と推測されることから、本発明の細胞外ドメインは配列番号1のアミノ酸番号25番目から186番目を好ましく用いることができ、さらにこれらタンパク質を構成するアミノ酸数が1または数個異なるものも含む。
変異体はタンパクに対する修飾も含み、タンパクをコードする核酸に対してなされることができ、その例としては、欠失、点突然変異、切頭化、アミノ酸置換およびアミノ酸の付加が挙げられる。
あるいは、修飾は、例えば開裂、リンカー分子の付加、検出可能部分(例えばビオチン)の付加、脂肪酸の付加、あるアミノ酸の別のアミノ酸による置換等により、タンパクに対して直接なされ得る。イヌFlt3リガンドのアミノ酸配列は、天然または非天然起源であり得る。即ち、それらは、天然イヌFlt3リガンドを含み得るか、あるいはアミノ酸配列が、Flt3受容体に結合し、細胞にシグナルを伝達し細胞を活性化、例えば細胞増殖促進、する能力を保持する限り、非天然型起源の配列を含み得る。非天然型起源のアミノ酸は人工合成アミノ酸を含むがこれに限定されない。
さらに、ここでいう変異体には、イヌFlt3リガンドをコードする核酸分子(本明細書中ではDNAと表記することもある)とハイブリダイズする他の核酸分子が有する核酸配列よりコードされる相同体タンパク質のうちイヌCD11c陽性細胞の増殖促進活性を有するタンパク質を含む。核酸ハイブリダイゼーションパラメーターは、このような方法を編集する参考文献、例えばサムブルック(Sambrook)著、「モレキュラー・クローニング ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:: A Laboratory Manual)」、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年、第1−3巻に見出され得る。
ここでいうハイブリダイズする他の核酸分子は、例えば前述のMolecular Cloningに記載の方法によって得ることができる。例えば、6×SSC、0.5%SDSおよび50%ホルムアミドの溶液中で42℃にて加温した後、0.1×SSC、0.5%SDSの溶液中で68℃にて洗浄する条件でも依然として陽性のハイブリダイズのシグナルが観察されることを表す。用いられ得る条件、試薬等があるが、当業者はこのような条件に通じており、従ってこの条件に限定されない。
イヌFlt3リガンドをコードする核酸に関するスクリーニングでは、32Pプローブと一緒に上記の条件を用いて、核酸ハイブリダイゼーション、例えばサザンブロットまたはノーザンブロットが実施され得る。イヌFlt3リガンドをコードするDNAが最後に移された膜を洗浄後、放射能シグナルを検出するために、その膜はX線フィルムに対して配置される。
しかしながら、本発明のイヌFlt3リガンドをコードする核酸分子とハイブリダイズする他の核酸分子が有する核酸配列よりコードされる相同体タンパク質の明瞭な同定を可能にする方法で当業者は条件を操作し得ることを理解されたい。当業者は、その後ルーチンに単離されるこのような分子の発現に関する細胞およびライブラリーのスクリーニングとその後の関連核酸分子の単離およびシーケンシングのための方法にも周知している。
概して、ここでいう相同体タンパク質とは、前記の変異体の一態様であり、典型的には配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列あるいはイヌFlt3リガンドの細胞外ドメイン、またはこのようなアミノ酸配列をコードする核酸分子(例えば、配列番号2)と少なくとも90%のアミノ酸同一性および/または少なくとも75%の核酸分子の同一性を共有する。いくつかの場合には、相同体タンパク質は、少なくとも90%のアミノ酸同一性および/または95%の核酸分子の同一性を共有し、そしてさらにその他の場合には、少なくとも95%のアミノ酸同一性および/または90%の核酸分子の同一性を共有する。
本発明のまた別の一様態は、Flt3受容体に結合し、イヌCD11c陽性細胞の増殖促進活性を有する物質を含むことを特徴とする動物用疾患治療剤に関する。ここでいう動物用疾患治療剤とは、イヌFlt3リガンドを含む組成物を動物に投与することで疾患動物の症状を改善することができる治療剤を指す。例えば、癌を発症しているイヌに本発明の治療剤を投与し、癌が生体より消失する、癌の大きさが減少する、癌の増殖を抑制するか、あるいは白血球の増加、呼吸様式の安定、元気・食欲・活動性の回復などのクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の改善等、いずれかの効果が期待される。疾患動物の症状の改善を判断する方法はこれらに限定されない。なお、ここでいう動物はイヌが好ましく、ヒトは含まれない。
イヌFlt3リガンドは、イヌ白血球からの樹状細胞マーカーCD11c陽性細胞とMHCクラスII陽性細胞の増殖促進能、イヌ白血球の増殖促進能、上記に示したイヌ生体に発生した腫瘍を縮小させる能力などのいずれかの活性を有することにより特性化される。CD11c分子とMHCクラスII分子の発現解析は、例えば、蛍光を標識したそれら分子に対する抗体を細胞に反応させ、フローサイトメーターなどの蛍光強度を測定できる装置によって蛍光の強度を測定し、測定細胞中の各分子の陽性率を測定することで可能である。イヌ白血球の増殖は、例えばイヌFlt3リガンド存在下で細胞を培養し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターを用いて測定する、イヌ白血球の数をヘモサイトメーターで数える、ことで調べることができる。また、MTTにより細胞増殖を測定することもできる。MTTは細胞内ミトコンドリアの脱水素酵素の基質であり、生存能の高い細胞ほど還元されるMTT量が多く、その結果生じるホルマザン量が生存細胞数とよく対応し生細胞のみを測定することができる。イヌFlt3リガンドの特性を調べる方法はこれらに限定されない。
Flt3リガンドは、好ましくは以下に示す方法にてその活性を測定することが可能である。例えば、Flt3リガンド存在下と非存在下でヒト白血病株化細胞であるOCI-AML5(AML5)を培養し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターを用いて測定する。Flt3リガンド存在下の場合におけるAML5のトリチウムチミジンの取り込み量が、Flt3リガンド非存在下の場合におけるAML5のトリチウムチミジンの取り込み量を上回れば、Flt3リガンドの活性を有すると認めるのがよい。また、別の好ましい方法は、末梢血単核球あるいは骨髄由来単核球を用いる方法である。例えば、Flt3リガンド存在下と非存在下でこれら細胞を培養し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターを用いて測定する。Flt3リガンド存在下の場合におけるこれら細胞のトリチウムチミジンの取り込み量が、Flt3リガンド非存在下の場合におけるこれら細胞のトリチウムチミジンの取り込み量を上回れば、Flt3リガンドの活性を有すると認めるのがよい。少なくとも上記の細胞を2種類使って、精製Flt3リガンドの活性を確認することがよい。
本発明の動物用疾患治療剤の対象となる疾患は、例えば腫瘍、アレルギー疾病、皮膚炎、感染症であるが、好ましい疾患は腫瘍および感染症である。対象となる腫瘍には、例えば乳腺腫瘍、肝臓癌、肺癌、白血病などがある。また、対象となる感染症には、例えばイヌジステンバー、イヌ伝染性肝炎、イヌパルボウイルス感染症、狂犬病などがあげられる。
本発明の動物用疾患治療剤に関する免疫感作プロトコールの一部として、免疫応答を増強する物質が、イヌFlt3リガンドとともに投与され得る。このような免疫応答増強化合物は、アジュバントまたはサイトカインとして分類され得る。アジュバントは、抗原の貯蔵所(細胞外またはマクロファージ内)を提供し、マクロファージを活性化し、かつ特定組のリンパ球を刺激することにより、免疫学的応答を強化し得る。多数の種類のアジュバントが、当業界で周知である。特定の例としては、MPL(SmithKline Beecham)、サルモネラ属のSalmonella minnesota Re 595リポ多糖類の精製および酸加水分解後に得られる同類物;QS21(SmithKline Beecham)、Quillja saponaria抽出物から精製される純QA−21サポニン;PCT出願WO96/33739(SmithKline Beecham)に記載されたDQS21;QS−7、QS−17、QS−18およびQS−L1(ソ(So)、外10名、「モレキュルズ・アンド・セル(Molecules and cells)」、1997年、第7巻、p.178−186);フロイントの不完全アジュバント;フロイントの完全アジュバント;ビタミンE;モンタニド;ミョウバン;CpGオリゴヌクレオチド(例えば、クレイグ(Kreig)、外7名、「ネイチャー(Nature)」、第374巻、p.546−549)を参照);ならびにスクアレンおよび/またはトコフェロールのような生分解性油から調製される種々の油中水エマルションが挙げられる。好ましくは、イヌFlt3リガンドは、DQS21/MPLの組合せと混合されて投与される。DQS21対MPLの比は、典型的には約1:10〜10:1,好ましくは約1:5〜5:1、さらに好ましくは約1:1である。典型的には、イヌ投与に関しては、DQS21およびMPLは、約1μg〜約100μgの範囲で動物用疾患治療剤に存在する。その他のアジュバントが当業界で既知であり、本発明に用いられ得る(例えば、ゴッディング(Goding)著,「モノクローナル・アンチボディーズ:プリンシプル・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)」、第2版、1986年を参照)。イヌFlt3リガンドおよびアジュバントの混合物またはエマルションの調製方法は、当業者には周知である。
対象疾患に対する免疫応答を刺激するその他の因子も、本発明の動物用疾患治療剤に含まれる。例えばサイトカインも、リンパ球刺激特性の結果として、免疫感作プロトコールに有用である。このような目的のために有用な多数のサイトカインは当業者に既知であり、その例としてはインターロイキン−12(IL−12)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびIL−18などが挙げられる。また、バクテリア由来の非メチル化DNA配列を含むCpGも、免疫応答を刺激する因子として用いられる。免疫を刺激する因子はこれらに限定されない。
対象の動物に投与される場合、本発明の動物用疾患治療剤は、製薬上許容可能な調製物中で投与される。このような調製物は、製薬上許容可能な濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、相溶性担体、補助免疫増強剤、例えばアジュバントおよびサイトカイン、ならびに任意にその他の療法的作用物質をルーチンに含有し得る。
本発明はさらに、イヌFlt3リガンドと腫瘍、アレルゲン、ウイルスに関連した抗原タンパク質あるいは抗原ペプチドとともに投与したり、粒子状の剤型にして投与することができる。また、剤型としては、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッド(脂質)を結合させた製剤などが用いられる。
本発明のイヌFlt3リガンドの考え得る治療効果を誘導するには、イヌFlt3リガンドを直接体内に導入するin vivo方法、イヌからある種の細胞を採取し体外でイヌFlt3リガンド存在下で培養し、その細胞を体内に戻すex vivo方法がある(日経サイエンス,1994年4月,p20−45、月刊薬事,1994年,第36巻,第1号,p.23−48、実験医学増刊,1994年,第12巻,第15号、およびこれらの引用文献等)が、in vivo方法がより好ましい。
in vivo方法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することが出来る。また、腫瘍を対象にした場合、本発明の動物用疾患治療剤を動物の腫瘍に直接注射投与することもできる。in vivo方法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には本発明のイヌFlt3リガンドを含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、本発明のイヌFlt3リガンドを含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
製剤中の本発明のイヌFlt3リガンドの含量は、治療目的の疾患、患畜の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常本発明のイヌFlt3リガンドとして、1μg〜1000μg/kg、好ましくは10μg〜100μg/kgであり、これを1週間から4週間連続的に投与するのが好ましい。
イヌFlt3リガンドの投与により生体内でCD11c陽性細胞が増殖した状態で、抗原タンパク質あるいは抗原ペプチドおよびCpG等の免疫を刺激する因子を投与することで、抗原に対する強い免疫反応を誘導し、疾病を治療することが可能である。例えば、表皮に腫瘤を持つ患犬に対してイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を腫瘍部分付近の皮下に1週間から4週間連続で注射投与し、その後、1μg〜1000μg/kgの癌関連抗原タンパク質または腫瘍組織とCpG等の免疫活性化剤を所属リンパ節付近の皮下および皮内に注射投与した後、投与した抗原タンパク質および腫瘍組織に対する強い免疫反応が誘導され、腫瘍の退縮、縮小および転移抑制が観察される。また本治療方法により、QOLの大幅な改善効果が得られる。
さらに、上記のプロトコールに加えイヌIL12および/またはイヌIL18を1から10回注射投与することで、上記治療法の治療効果およびQOLの改善効果を増強することが期待できる。
また、本発明のイヌFlt3リガンドにより、in vitroで誘導した樹状細胞を体内に戻すことも効果的であろう。
すなわち、骨髄あるいは末梢血から、GM-CSFとIL-3(あるいはIL-4)により樹状細胞を誘導し、その培養系にイヌFlt3リガンドと好ましくは腫瘍、アレルゲン、ウイルスに関連した抗原タンパク質あるいは抗原ペプチドを加えることにより、腫瘍特異的な樹状細胞を誘導することができる。この樹状細胞を有効量投与することで、症状の治療に望ましい免疫応答を誘導できる。さらに好ましくは、腫瘍特異的な樹状細胞を誘導後、T細胞を樹状細胞と相互作用させて腫瘍特異的に反応するT細胞を増殖させ、投与することもある。
用いる末梢血または骨髄は新鮮試料、低温保存試料及び凍結保存試料のいずれでもよい。末梢血は、全血を培養してもよいし、白血球成分だけを分離して培養してもよいが、後者の方が効率的で好ましい。さらに白血球成分の中でも単核球を分離してもよい。また、骨髄を起源とする場合には、骨髄を構成する細胞全体を培養してもよいし、これから単核球を分離して培養してもよい。末梢血やその白血球成分、骨髄細胞には、樹状細胞の起源となる単核球、造血幹細胞又は未成熟樹状細胞やCD4陽性細胞等が含まれている。
用いられるサイトカインは、安全性と生理活性が確認された特性のものであれば、天然型、あるいは遺伝子組み換え型等、その生産手法については問わないが、好ましくは医療用に用いられる品質が確保された標品が必要最低量で用いられる。添加するサイトカインの濃度は、樹状細胞が誘導される濃度であれば特に限定されず、通常サイトカインの合計濃度で10〜1000ng/mL程度が好ましく、さらに好ましくは20〜500ng/mL程度である。培養は、白血球の培養に通常用いられている周知の培地を用いて行うことができる。培養温度は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、37℃程度が最も好ましい。また、培養中の気体環境は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、5%CO2を通気することが好ましい。さらに培養期間は、必要数の細胞が誘導される期間であれば特に限定されないが、通常3日〜8週間の間で行われる。細胞の分離や培養に供される機器は、適宜適当なものを用いることができるが、医療用に安全性が確認され、かつ操作が安定して簡便であることが好ましい。特に細胞培養装置については、シャーレ、フラスコ、ボトル等の一般的容器に拘わらず、積層型容器や多段式容器、ローラーボトル、スピナー式ボトル、バッグ式培養器、中空糸カラム等も用いることができる。上記の方法によりin vitroで培養された樹状細胞およびT細胞はの投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調整することができるが、通常1〜1000000000個、好ましくは1000000〜1000000000個であり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。
また別の方法では、明細書に記載のイヌFlt3リガンドを含む動物用疾患治療剤を動物に投与し、その後に骨髄あるいは末梢血からリンパ球を分離し、その培養系に腫瘍、アレルゲン、ウイルスに関連した抗原タンパク質あるいは抗原ペプチドを加えることにより、腫瘍特異的なリンパ球を誘導することができる。
上記に示した腫瘍に対する治療法の効果の検証は、治療後の腫瘍の大きさの測定、腫瘍の内臓への転移を観察する、あるいはイヌのQOLの改善等により判定可能である。
本発明に係る動物用疾患治療剤は、腫瘍あるいは感染症など免疫能が低下した疾病、あるいは特に細胞性免疫反応に比べ、液性免疫反応が中心となったような片寄った免疫反応を示す疾病などさまざまな動物の免疫疾病に対して、従来のこれらイヌの疾病に対する治療薬・予防薬や治療方法・治療方法に比べ、顕著な治療効果および予防効果を示す。
また、この動物用疾患治療剤は、イヌFlt3リガンドに加えて任意に他の成分を含むことができる。本発明の動物用疾患治療剤に添加される成分は、主として、動物用疾患治療剤が投与される方式に依存して決定される。動物用疾患治療剤が個体として用いられる場合は、例えばラクトース等の充填剤、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン等の結合剤、着色剤、コーティング剤等を用いることができ、このような剤は経口投与に好適である。また、担体または賦活剤として例えば、白色ワセリン、セルロース誘導体、界面活性剤、ポリエチレングリコール、シリコーン、オリーブ油等を加えてクリーム、乳液、ローション等の形態として外用薬として患部に塗布して用いることもできる。また、本薬が液体として投与される場合は、通常行われている生理学的に許容される溶媒、および乳化剤、安定剤を含むことができる。溶媒としては水、PBS、等張性生理食塩水等が挙げられ、乳化剤としては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、脂肪酸系界面活性剤、シリコーン等が例示でき、安定剤としては、イヌ血清アルブミン、ゼラチン等のポリオール、またはソルビトール、トレハロースなどの糖類等が挙げられる。
本発明の動物用疾患治療剤は、例えば下記の精製過程を経て、対象となる動物へ投与される。Flt3リガンドを含む溶液をハイドロキシアパタイト担体および/または色素担体および/またはイオン交換担体および/またはゲル濾過担体に接触させ、Flt3リガンドを回収する。これらカラム担体を用いた精製操作はそれぞれ単独で行ってもイヌFlt3リガンドの高純度化が可能であるが、好ましくはそれぞれを組合わせて、さらに好ましくはすべてを組み合わせて行った方がより効果が高い。
本発明のイヌFlt3リガンドをコードするDNAを組込んだ組換えベクターは、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、イヌの細胞からポリ(A)RNAを抽出した後、cDNAを合成し、マウスやヒトのFlt3リガンドに相同性の高いイヌ由来タンパクをコードする遺伝子配列を元にしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと略す)を行うことにより、イヌFlt3リガンドcDNAの全長あるいは細胞外ドメインをコードする核酸分子をクローニングすることができる。
イヌの臟器などよりRNAを得る方法としては、通常の方法、例えば、ポリソームの分離、ショ糖密度勾配遠心や電気泳動を利用した方法などがあげられる。上記イヌ臟器やイヌ細胞よりRNAを抽出する方法としては、グアニジン・チオシアネート処理後CsCl密度勾配遠心を行うグアニジン・チオシアネート−塩化セシウム法(チルグウィン(Chirgwin)、外3名、「バイオケミストリー(Biochemistry)」、1979年、第18巻,p.5294-5299)バナジウム複合体を用いてリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤で処理したのちフェノール抽出を行う方法(バーガー(Berger)、外1名、「バイオケミストリー(Biochemistry)、1979年、第18巻,p.5143-5149」,グアニジン・チオシアネート−ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン塩酸法、グアニジン・チオシアネート−フェノール・クロロホルム法、グアニジン・チオシアネートで処理したのち塩化リチウムで処理してRNAを沈殿させる方法などの中から適当な方法を選んで行うことができる。
イヌ臟器やマイトージェンなどで刺激されたイヌ単核球やイヌリンパ球より通常の方法、例えば、塩化リチウム/尿素法、グアニジン・イソチオシアネート法、オリゴdTセルロースカラム法等によりmRNAを単離し、得られたmRNAから通常の方法、例えば、Gublerらの方法(グブラー(Gubler)、外1名、「ジーン(Gene)」、1983年,第25巻,p.263−269),Okayamaらの方法(オカヤマ(Okayama)、外1名、「モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Molecular and cellular biology)」,1982年、第2巻,p.161-170;オカヤマ(Okayama)、外1名、「モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Molecular and cellular biology)」,1983年、第3巻,p.280-289)等によりcDNAを合成する。得られたmRNAからcDNAを合成するには、基本的にはトリ骨芽球ウイルス(AMV)などの逆転写酵素などを用いるほか1部プライマーを用いてDNAポリメラーゼなどを用いる方法を組み合わせてよいが、市販の合成あるいはクローニング用キットを用いるのが便利である。
本発明中の配列番号2のDNA配列またはイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNA配列を含む組換えベクターは、本発明の化合物の相同体タンパク質をコードするDNA配列を含む組換えベクターも包含する。
また、本発明の組み換えベクターは、イヌFlt3リガンドの同一アミノ酸残基をコードする代替的コドンを含む核酸配列の使用も包含する。例えば、ロイシン残基(配列番号1の第4番目のアミノ酸)は、コドンUUA,UUG,CUU,CUC,CUAおよびCUGによりコードされ得る。6つのコドンは各々、ロイシン残基をコードするという目的に関して等価である。したがって、ロイシンコードヌクレオチドトリプレットのいずれかを用いて、in vitroまたはin vivoでタンパク質合成装置を指図して、ロイシン残基を組み入れ得る、ということは当業者には明らかであろう。同様に、配列番号1のイヌFlt3リガンドを含む他のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列トリプレットとしては、以下のものが挙げられる:CGA、CGC、CGG、CGT、AGAおよびAGG(アルギニンコドン);AAAおよびAAG(リシンコドン);GUA、GUC、GUGおよびGUU(バリンコドン);GAAおよびGAG(グルタミンコドン);UUCおよびUUU(フェニルアラニンコドン)ならびにUACおよびUAU(チロシンコドン)。その他のアミノ酸残基は、ポリヌクレオチド配列により同様にコードされ得る。したがって本発明は、遺伝子コードの縮重のためにコドン配列中の天然型イヌFlt3リガンドをコードする核酸とは異なる縮重核酸よりコードされるタンパク質を包含する。
例えば、単一アミノ酸変化を有するポリペプチドをコードする修飾核酸分子が調製され得る。これらの核酸分子は各々、本明細書中に記載したような遺伝子コードの縮重に対応するヌクレオチド変化と相容れない1、2または3つのヌクレオチド置換を有し得る。同様に、2つのアミノ酸変化を有するポリペプチドをコードする修飾核酸分子が調製され得るが、これらは例えば2〜6のヌクレオチド変化を有する。例えばアミノ酸2および3、2および4、2および5、2および6等をコードするコドンのヌクレオチドの置換を含めたこれらと同様の多数の修飾核酸分子が当業者により容易に意図される。上記の例では、2つのアミノ酸の各組合せは、修飾核酸分子の組に、ならびにアミノ酸置換をコードするすべてのヌクレオチド置換に含まれる。当業者に容易に意図されるように、さらなる置換(即ち、3またはそれ以上)、付加または欠失(例えば、停止コドンまたはスプライス部位(単数または複数)の導入による)を有するポリペプチドをコードする付加的核酸分子も調製され得るし、本発明に包含される。上記の核酸またはポリペプチドはいずれも、本明細書中に開示された核酸および/またはポリペプチドに対する構造的関連または活性の保持に関して、ルーチン実験により試験され得る。
本発明の組換えベクターを用いて宿主を形質転換させることで形質転換体を作製することができる。ここでいう組換えベクターを用いて宿主を形質転換させるとは、エレクトロポレーション法、リポフェクチン法、リン酸カルシウム法などを用いて組換えベクターを宿主へ導入し、組換えベクターのもつ形質を宿主へ供与することをいう。この場合の形質とは、例えば薬剤耐性遺伝子を持つ組換えベクターを宿主に導入すると、その宿主は薬剤に抵抗性の特性をもつことをいう。
宿主としては原核生物又は真核生物を用いることができる。原核生物としては細菌、特に大腸菌(Escherichia coli),バチルス属(Bacillus)細菌、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等を用いることができる。真核生物としては酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces serevisiae)等の真核性微生物、昆虫細胞、例えば、ヨガ(夜盗蛾)細胞(Spodoptera frugiperda),キャベツルーパー細胞(Trichoplusiani),カイコ細胞(Bombyx mori),動物細胞、例えばヒト細胞、サル細胞、マウス細胞等を使用することができる。本発明においてはさらに、生物体それ自体、例えば昆虫、例えばカイコ、キャベツルーパー等を用いることもできる。
ある特定のタンパク質をコードするDNAが含まれる組換えベクターの場合、その組換えベクターを用いて宿主を形質転換させると、宿主は特定のタンパク質を発現し生産する形質を獲得する。このような場合の組換えベクターは、発現ベクターをいうこともできる。
発現ベクターとしては、プラスミド、ファージ、ファージミド、ウイルス(バキュロ(昆虫)、ワクチニア(動物細胞))等が使用できる。発現ベクター中のプロモーターは宿主に依存して選択され、例えば細菌用プロモーターとしてはlacプロモーター、trpプロモーター等が使用され、酵母用プロモーターとしては、例えばadh1プロモーター、pqkプロモーター等が使用される。また、昆虫用プロモーターとしてはバキュロウイルスポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等、動物細胞としてはSimian Virus40のearlyまたはlateプロモーター等があげられるが、これらに限定されない。
本発明の組換えベクターに用いる好ましいプロモーターはバキュロウイルスポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等が挙げられるが、バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターがより好ましい。
イヌFlt3リガンドを哺乳動物細胞あるいは昆虫細胞を用いて生産する場合、配列番号1のアミノ酸からなるイヌFlt3リガンドには膜貫通ドメインが存在するため、この場合のイヌFlt3リガンドは細胞外に分泌されない。ヒトあるいはマウスのFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質は樹状細胞の増殖活性を有することが知られており、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターを用いることによって活性型イヌFlt3リガンドを細胞で生産し、かつ培養液から回収することができると期待される。
また、配列番号1のアミノ酸より構成されるイヌFlt3リガンドを哺乳動物細胞あるいは昆虫細胞を用いて生産する場合、配列番号1をコードするDNAを含む発現ベクターを用いることによって配列番号1に示すイヌFlt3リガンドを細胞膜上に発現させることができる。この細胞膜を界面活性剤等で処理することで、配列番号1に示すイヌFlt3リガンドを回収することができる。
イヌFlt3リガンドは、例えば、夜盗蛾由来の昆虫細胞、例えばSf-9、Sf-21あるいはHigh Fiveに感染する夜盗蛾科由来のバキュロウイルスよりイヌFlt3リガンドをコードするDNAを含む発現ベクターを用いて組換えウイルスを作製することによって、昆虫細胞発現系にてイヌFlt3リガンドを生産することができる。組換えバキュロウイルスは、イヌFlt3リガンドをコ−ドするDNAをバキュロウイルス用の発現ベクターに連結して作製した組換えベクターとバキュロウイルスDNAとを、昆虫細胞にコトランスフェクションして作製することができる。従って、組換えウイルスは、in vivo的な方法で作製することができる。
すなわち、イヌFlt3リガンドをコードするDNA部分を、例えばpAcAB3(Pharmingen社製)などのクローニングベクターの発現調節部分の下流に連結するという一般的な遺伝子操作に従って組換えベクターを作製することができる。この組換えベクターとバキュロウイルスDNAとを、文献(藤井著、「蛋白質 核酸 酵素」、1992年、第37巻、p.2701−2706)のような方法で昆虫細胞、例えばSf-9にコトランスフェクションした後、培養を続け、培養液中に出現した非組換え体(野性型)と組換え体のウイルスの中から限界希釈法、もしくはプラーク法などの一般的な方法によって組換え体ウイルスをクローニングすることができる。組換え体ウイルスはイヌFlt3リガンドを発現していることから、組換えウイルスのクローンから産生されるイヌFlt3リガンドを抗イヌFlt3リガンド抗体を用いて検出することで、野性型ウイルスと容易に区別できる。イヌFlt3リガンドの生産は、前記の組換えバキュロウイルスを昆虫細胞中で増殖させることにより行なう。
昆虫細胞を用いる場合は、前記組換え体ウイルスを含む培養液により、細胞を感染させ、平面培養または浮遊培養により培養する。昆虫細胞を培養する培地としては、例えば牛血清を添加したTC-100培地を使用することができる。培養温度は25〜28℃が適当である。培養後、培溶液を遠心分離しその上清からイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を回収、あるいは組換えウイルスが感染した昆虫細胞を界面活性剤等で処理することで配列番号1よりなるイヌFlt3リガンドのタンパク質を回収する。
さらに、イヌFlt3リガンドは、例えば、カイコに感染する組換えカイコ核多角体病ウイルスを作製することによって、カイコ発現系を用いて生産することができる。組換えカイコ核多角体病ウイルスは、イヌFlt3リガンドをコ−ドするDNAをカイコの組換えベクターに連結して作製した発現ベクターとカイコ核多角体病ウイルスDNAとを、カイコ樹立細胞にコトランスフェクションして作製することができる。従って、組換えウイルスは、in vivo的な方法で作製することができる。
すなわち、イヌFlt3リガンドをコードするDNA部分を、例えばpBK283などのカイコの組換えベクターの発現調節部分の下流に連結するという一般的な遺伝子操作に従って発現ベクターを作製することができる。この発現ベクターとカイコ核多角体病ウイルスDNAとを、文献(ホリウチ(Horiuchi)、「アグリカルチュアル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)」, 1987年、第51巻,p.1573−1580)のような方法でカイコ樹立細胞、例えばBM−N株にコトランスフェクションした後、培養を続け、培養液中に出現した非組換え体(野性型)と組換え体のウイルスの中から限界希釈法、もしくはプラーク法などの一般的な方法によって組換え体ウイルスをクローニングすることができる。組換え体ウイルスは多角体の形成能がないことから、野性型ウイルスと容易に区別できる。イヌFlt3リガンドの生産は、前記の組換えカイコ核多角体病ウイルスをカイコ樹立細胞中、またはカイコ生体中で増殖させることにより行なう。
カイコ樹立細胞を用いる場合は、前記組換え体ウイルスを含む培養液により、BM−N細胞を感染させ、平面培養または浮遊培養により培養する。BM−N細胞を培養する培地としては、例えば牛血清を添加したTC−100培地を使用することができる。培養温度は25〜28℃が適当である。培養後、培溶液を遠心分離しその上清からイヌFlt3リガンドを回収、あるいは組換えウイルスが感染した細胞を界面活性剤等で処理することで配列番号1よりなるイヌFlt3リガンドのタンパク質を回収する。
カイコ生体を用いる場合は、前記の組換え体ウイルスを含む培養液をカイコ幼虫に注射して、合成飼料を与えて飼育する。飼育後、体液を採取しその上清からイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を回収、あるいは組換えウイルスが感染した細胞を界面活性剤等で処理することで配列番号1よりなるイヌFlt3リガンドのタンパク質を回収する。
また、哺乳動物発現系を用いることでイヌFlt3リガンドを製造することも可能である。イヌFlt3リガンドをコードするDNAを有する哺乳動物細胞用の発現ベクターを構築し、例えば、サルの株化細胞COS1あるいはCOS7、チャイニーズハムスターの株化細胞CHO等にトランスフェクトすることで、イヌFlt3リガンドの産生が可能となる。哺乳類細胞中でのイヌFlt3リガンドの発現に好ましい系は、G418耐性を付与する遺伝子(安定トランスフェクト化細胞株の選択を促す)、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー−プロモーター配列のような選択可能マーカーを含有するpRc/CMV(Invitrogen, Carlsbad, CAから入手可能)のような系である。さらに、霊長類またはイヌ細胞株中での発現に適しているのは、エプスタイン−バーウイルス(EBV)複製起点を含有し、多コピー染色体外素子としてのベクターの保持を促すpCEP4ベクター(Invitrogen)である。別の発現ベクターは、in vitroでの転写を効率的に刺激するポリペプチド延長因子1αのプロモーターを含有するpEF−BOSプラスミドである。この発現ベクターは、ミジズマ(Mishizuma)ら(「ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic acids research)」、1990年、第18巻、p.5322)により記載されており、トランスフェクション実験におけるその使用は、例えばデモウリン(Demoulin)ら(「モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Molecular and cellular biology)、1996年、第16巻、p.4710−4716」により開示されている。さらに別の好ましい発現ベクターは、スタンフォード-ペリカウデット(Stratford-Perricaudet)らにより記載されたアデノウイルスであり、これはE1およびE3タンパク質を欠いている(「ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インバスティゲーション(The Journal of clinical investigation)」、1992年、第90巻、p.626−630)。Adeno.P1A組換え体としてのアデノウイルスの使用は、P1Aに対する免疫感作のためのマウスにおける皮内注射において、ワーニアー(Warnier)らにより開示されている(「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International journal of cancer)」、1996年、第67巻、p.303−310)。
また、原核生物、例えば大腸菌発現系を用いることでイヌFlt3リガンドを製造することも可能である。イヌFlt3リガンドをコードするDNAを有する大腸菌用の発現ベクターを構築し、宿主細胞の大腸菌、例えばBL21にトランスフェクトすることで、イヌFlt3リガンドの産生が可能となる。細胞増殖を促進する等の生理活性を有したイヌFlt3リガンドを製造するには、可溶性タンパクとしてイヌFlt3リガンドを回収することが必要である。大腸菌の発現系においてイヌFlt3リガンドが不溶性タンパクとして発現した場合、変成剤、例えば尿素あるいはグアニジン塩酸で不溶性タンパクを可溶化させ、その後、穏やかに変成剤を除去することで生理活性を有したイヌFlt3リガンドを製造することが可能であろう。変成剤を除去する方法は当業者には周知である。また、上記の方法以外にイヌFlt3リガンドの生産あるいは生理活性を向上させるには、プロテアーゼを欠損した大腸菌を使用する、チオレドキシンを発現した大腸菌を使用する、分子シャペロン、例えばgroELおよびgroESを発現している大腸菌を使用する方法があるが、これらの方法に限定されない。
また、無細胞発現系を用いて、イヌFlt3リガンドを製造ことも可能である。無細胞発現系としては、遺伝子の転写、アミノ酸の翻訳に必要な構成成分であるトランスファーRNA、リボソーム、RNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、アミノ酸、ピロリン酸、リン酸、ヌクレオチド一リン酸、ヌクレオチド二リン酸等を含んだ大腸菌、コムギ胚芽の細胞溶解物(ライセート)を用いることが知られている。これらライセートとイヌFlt3リガンドの遺伝子を含むベクターを加えて反応させることで、in vitroでイヌFlt3リガンドの製造が可能である。また、分子シャペロン、例えばgroEL、groES、DnaK、DnaJ等を単独あるいは組み合わせて上記の反応を行うことで、イヌFlt3リガンドの生理活性を向上させることができるであろう。ここでいう無細胞発現系は、上記に限定されるものではない。
本発明の別の一態様は、イヌFlt3リガンドを特異的に認識する抗体に関する。ここでいう特異的とは、本発明の抗体がイヌFlt3リガンドのみを検出し、別の種、例えばヒトFlt3リガンドには反応しないことをいう。また、ここでいう抗体とは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、血清、血漿を包含する。
本発明のイヌFlt3リガンドに対する抗体は、イヌFlt3リガンドの変異体に対する抗体も包含し、例えば、レイル(Lane)ら著、「アンティボディーズ;ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies; A Laboratory Manual)、第1版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harber Laboratory Press)、1989年」などに記載の方法により、本発明の化合物およびその変異体、あるいは配列番号1に含まれる1から40個のアミノ酸、好ましくは10から30個のアミノ酸配列よりなるペプチド、例えば配列番号1に示すアミノ酸番号19から39番目からなるペプチドを用いて適切な方法で適切な動物、例えばウサギ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラット等を免疫することにより、イヌFlt3リガンドを認識する抗体、あるいはその活性を中和する抗体を容易に作製できる。抗体の用途としては、アフィニティークロマトグラフィー、cDNAライブラリーのスクリーニング、免疫学的診断法等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
参考例1:イヌおよびヒトFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAのクローニング
イヌおよびヒト末梢血よりHistopaque-1077(Sigma社製)を用いた密度勾配遠心によりヒトおよびイヌ末梢血単核球(以下PBMCと略記する)を分離した。PBMC分離後、イヌPBMCは10%牛胎児血清(以下FBSと略記する)を含むERDF培地(極東製薬(株)製)で培養し、ヒトPBMCはAIM−V培地(Gibco社製)にで培養した。イヌおよびヒトFlt3リガンドの発現を誘導するために、10μg/mlのコンカナバリンA(Sigma社製)で1日刺激した。刺激したイヌおよびヒトPBMCから、TRIZOL(Gibco社製)を用いて総RNAを調整した。得られたRNAの5μgから、SuperScriptTMFirst-Strand Synthesis System for RT-PCR (Invitrogen社製) を用いて、添付のプロトコールに従いcDNA(総量20μl)を調整した。
PCRは1μlの刺激イヌおよびヒトリンパ球由来cDNA、それぞれ2種類のプライマー(イヌFlt3リガンドは配列番号3と配列番号4、ヒトFlt3リガンドは配列番号5と配列番号6)を各1μM, 0.2mM各dNTP, 1mM MgSO4, 1UのKODポリメラーゼ(Toyobo社製)となるように各試薬と添付のバッファーを加え全量を50μlとし、Bio Rad社製のThermal Cyclerを用いて行った。なお、配列番号3と配列番号4のプライマーには制限酵素部位のEcoRIが挿入してあり、さらに配列番号4には終止コドンが付加されている。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約570bpのDNA断片を調製した。TAクローニングキット(Invitrogen社)を用いて調整したDNAをベクターへ挿入し、蛍光DNAシーケンサー(Applied Biosystems社製ABI PRISM 3100)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、調整したDNAの塩基配列を決定した。
実施例1:イヌFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを挿入した組換えバキュロウイルスの作製
参考例1により得られたベクターを制限酵素EcoRIで切断後、Klenow Fragment(Takara社製)で平滑末端化を行った。バキュロウイルス発現ベクターとしてpAcAB3(Pharmingen社製)を用いた。ポリヘドリンプロモーター下流のXbaIサイトを制限酵素XbaI(Takara社製)で切断後、Klenow Fragmentで平滑末端化を行い、Calf intestine Alkaline Phosphatase(Takara社製)で脱リン酸化処理をした。調整したベクターとイヌFlt3リガンド細胞外ドメインのDNA断片を連結し、組換えベクターを作製した。添付マニュアルに従い、作製した組換えベクターと昆虫細胞Sf9(Spondoptera frugeruda由来、Gibco社製)を用いて組換えウイルスrAcCaFLを作製した。
75cm2のフラスコでコンフルエントまで平面培養したSf9細胞を血清非含有の培地Sf-900 II(Gibco社製)で置き換え、組換えバキュロウイルスrAcCaFLを感染させ、4日間培養した後、培養上清を回収した。
イヌFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した培養上清に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜を3%スキムミルク含有リン酸緩衝液(以下SM-PBSと略記する)で4℃、一晩、ブロッキングし、その後、実施例4で作製した2種類の抗イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を室温で1時間反応させた。0.1% Tween-20を含むPBS(以下PBSTと略記する)で3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECL(Amersham社製)に反応させ、X線フィルムに感光することで、図1に示すようにイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現を確認した。
参考例2:ヒトFlt3受容体の細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAのクローニング
ヒト白血病株化細胞であるOCI-AML5(DSMZ製、以下AML5と略記する)は、Flt3リガンド依存的に増殖する細胞株でありFlt3受容体が発現している。AML5は、20% FBSと10 ng/mlのGM-CSFを含むalpha-MEM培地(Gibco社製)で培養し、培養開始後1ヶ月以内の細胞を解析に用いた。AML5から、TRIZOLを用いて総RNAを調整した。得られたRNAの5μgから、SuperScriptTMFirst-Strand Synthesis System for RT-PCRを用いて、添付のプロトコールに従いcDNA(総量20μl)を調整した。
PCRは1μlのAML5由来cDNA、配列番号7と配列番号8に示す2種類のプライマを各1μM, 0.2mM各dNTP, 1mM MgSO4, 1UのKODポリメラーゼとなるように各試薬と添付のバッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cyclerを用いて行った。なお、配列番号7のプライマーには制限酵素部位のBamHIが挿入してあり、配列番号8のプライマーには制限酵素部位のHindIII、6個のヒスチジンタグをコードする配列および停止コドンが挿入されている。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約1,600bpのDNA断片を調製した。TAクローニングキット(Invitrogen社)を用いて調整したDNAをベクターへ挿入し、蛍光DNAシーケンサを用い、その添付プロトコールに従って、ダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、挿入したDNAの塩基配列を決定した。ベクターへクローニングされたDNAは、Flt3受容体の細胞外ドメイン(アミノ末端から541アミノ酸まで)とそのカルボキシル末端へ6個のヒスチジンを融合したタンパク質(Hisタグ)をコードしている。
参考例3:Flt3受容体の細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを挿入した組換えバキュロウイルスの作製
PCRにより得られたDNA断片を制限酵素BamHIとHindIIIで切断後、Klenow Fragment(Takara社製)で平滑末端化を行った。バキュロウイルス発現ベクターとしてpAcAB3を用いた。ポリヘドリンプロモーター下流のXbaIサイトを制限酵素XbaI(Takara社製)で切断後、Klenow Fragmentで平滑末端化を行い、Calf intestine Alkaline Phosphatase(Takara社製)で脱リン酸化処理をした。調整したベクターとイヌFlt3リガンド細胞外ドメインのDNA断片を連結し、組換えベクターを作製した。添付マニュアルに従い、作製した組換えベクターと昆虫細胞Sf9を用いて組換えウイルスrAcFlt3-Hisを作製した。
75cm2のフラスコでコンフルエントまで平面培養したSf9細胞を血清非含有の培地Sf-900 IIで置き換え、組換えバキュロウイルスrAcFlt3-Hisを感染させ、4日間培養した後、培養上清を回収した。
Flt3受容体の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した培養上清に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜をSM-PBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、抗Flt3受容体ウサギ抗体(Upstate biotechnology社製)または抗HRP標識抗His抗体(Quiagen社製)を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、抗Flt3レセプター抗体の反応後にHRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECLに反応させ、X線フィルムに感光することで、Flt3レセプターの発現を確認した。
実施例2:イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質のFlt3受容体の細胞外ドメインタンパク質への結合実験
75cm2のフラスコでコンフルエントまで平面培養したSf9細胞を血清非含有の培地Sf-900 IIで置き換え、実施例1で作製したrAcCaFLと参考例3で作製したrAcFlt3-Hisを同時あるいはおのおの単独で感染させ、4日間培養した後、培養上清を回収した。各培養上清を、ハイドロキシアパタイト担体(バイオラッド社製)を充填したカラムにアプライした後、十分量の10mMリン酸緩衝液(pH:6)でカラムを洗浄した。0.3Mリン酸緩衝液(pH:6)をカラムに展開し、溶出画分を回収した。
溶出画分中のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質およびFlt3受容体の細胞外ドメインタンパク質はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した培養上清に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜をSM-PBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、実施例8で作製したイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体(配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号153から175番目よりなるペプチドより作製した抗体)あるいは抗HRP標識抗His抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECLに反応させ、X線フィルムに感光することで、溶出画分中のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質およびFlt3受容体の細胞外ドメインタンパク質の存在を確認した。結果を図2に示す。rAcCaFLあるいはrAcFlt3-Hisを単独で感染させた場合の実験結果より、イヌFlt3リガンド単独ではハイドロキシアパタイト担体に結合しないが、Flt3受容体はハイドロキシアパタイト担体に結合することが判明した。次に、rAcCaFLあるいはrAcFlt3-Hisを単独で感染させて回収した培養上清を等容量で1時間、室温にて混合した場合とrAcCaFLとrAcFlt3-Hisを同時に感染させた後に回収した培養上清の場合は、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質が溶出画分で検出された。この結果は、Flt3受容体の細胞外ドメインタンパク質に対しイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインが結合していることを示している。
参考例4:イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインの精製方法
実施例1で得られた細胞培養上清を用いてハイドロキシアパタイト担体によるイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の分画を検討した。精製はpH:6で行った。培養上清を、ハイドロキシアパタイト担体を充填したカラムにアプライした後、十分量の10mMリン酸緩衝液(pH:6)でカラムを洗浄した。溶出はリン酸緩衝液(pH:6)の濃度を0.1Mから0.5Mまで0.1M刻みで行った。その結果、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質は、ハイドロキシアパタイト担体に結合することなく素通りの画分で検出された。なお、昆虫細胞およびバキュロウイルス由来の夾雑物の大部分はハイドロキシアパタイト担体に結合した。
イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を含む画分をさらにブルーセファロース担体を充填したカラムにアプライし、十分量の50mMトリス塩酸緩衝液(pH:8)でカラムを洗浄後、NaClの濃度を0.1Mから1Mまで0.1M刻みで溶出を行った。その結果、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質は50mMトリス塩酸緩衝液(pH:8)により溶出された。
イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を含む画分をさらにアニオン交換担体を充填したカラムにアプライし、十分量の50mMトリス塩酸緩衝液(pH:8)でカラムを洗浄後、NaClの濃度を0.1Mから1Mまで0.1M刻みで溶出を行った。その結果、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質は0.1MのNaCl濃度でにより溶出された。
イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を含む画分をさらにゲル濾過担体を充填したカラムにアプライし、0.01%のPluronic F-68を含むPBSを十分量カラムに展開した。スーパーデックス200を用いた場合、流速200μl/minの条件では70分から80分の間にイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質が回収できた。イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の純度は、SDS−PAGEによる分析で98%以上、逆相カラムを用いたHPLCによる分析で、90%以上であった。
実施例3:イヌCD11c陽性およびイヌMHCクラスII陽性細胞の増殖能の測定
イヌ末梢血よりHistopaque-1077を用いた密度勾配遠心によりイヌPBMCを分離した。洗浄したイヌPBMCをAIM-V培地で懸濁し、細胞が5 x 104 / 100 μl / wellとなるように96穴プレートに移した。イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を含む培養上清、ヒトGM-CSF(Genzyme社製)とヒトIL-4(Genzyme社製)を添加し、5% CO2, 37℃の条件で7日間培養した。なお、培養開始から6日目にそれぞれの培養液に1μCiづつのトリチウムチミジンを添加した。培養後、細胞ハーベスターにて細胞をガラス濾紙上に回収し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターにて測定した。図3に示すように、1000U/mlのヒトGM-CSFと1000U/mlのヒトIL-4をを加えることで、イヌPBMC由来の細胞の増殖が促進することが確認された。次に、1000U/mlのヒトGM-CSFと1000U/mlのヒトIL-4の存在下でイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を含む培養上清を加えたところ、図4に示すように、イヌPBMC由来の細胞の増殖をさらに促進することが確認された。
上記の方法でイヌPBMCを分離後、AIM-V培地で懸濁し、細胞数が6 x 106/ 5 ml/ 25 cm2フラスコ2 x 106 / 2 ml/ 24ウェルプレートとなるように、5% CO2, 37℃の条件で培養した。90分後に培養上清を除き、5 mlのAIM-V培地にイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を含む昆虫細胞の培養上清(1:150希釈)存在下あるいは非存在下で1000 U/mlのヒトGM-CSF と1000 U/ml のヒトIL-4を加え、5% CO2, 37℃の条件で6日間培養した。培養細胞におけるCD11c, CD3, MHC class IIの発現はFACS Calibur(Becton, Dickinson and Company社製)を使い測定した。使用した抗体の抗イヌCD3-FITC、抗イヌCD11c、抗イヌMHC class II-FITCはSerotec社より購入した。
イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の存在下でを含む昆虫細胞の培養上清存在下において、培養4日目から細胞に樹状突起物を有し、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質非存在下の細胞に比べて細胞の大きさが大きい細胞群が観察されたことから、樹状細胞様の細胞が誘導されていることが示唆された。イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の添加により樹状細胞の増殖が促進されるかを確認するため、培養開始後6日目の細胞を回収し、フローサイトメトリーで樹状細胞のマーカーであるCD11c陽性細胞と抗原提示細胞のマーカーであるMHC class II の割合を比較した。樹状細胞はT細胞マーカーであるCD3の発現は見られないことから、CD3陰性細胞とMHC class II陽性細胞の割合を算出した。表1で示すように、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を添加しない場合に比べて、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を添加することでCD3陰性細胞中のCD11c陽性およびMHC class II陽性細胞が約2倍に増加することが確認された。この結果は、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質がイヌ樹状細胞を増殖させる活性をもつことを示唆している。
次に精製イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を用いた解析を行った。
イヌ末梢血よりHistopaque-1077を用いた密度勾配遠心によりイヌPBMCを分離した。洗浄したイヌPBMCを2%FCSを含むRPMI培地で懸濁し、細胞が1 x 105 / 100 μl / wellとなるように96穴プレートに移した。各濃度のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を添加し、5% CO2, 37℃の条件で7日間培養した。なお、培養開始から6日目にそれぞれの培養液に1μCiづつのトリチウムチミジンを添加した。培養後、細胞ハーベスターにて細胞をガラス濾紙上に回収し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターにて測定した。図5に示すように、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を加えることで、濃度依存的にイヌPBMC由来の細胞の増殖が促進することが確認された。
上記の方法でイヌPBMCを分離後、AIM-V培地あるいは10%FBSを含むRPMI培地で懸濁し、細胞数が2 x 106 / 2 ml/ 24ウェルプレートとなるように、5% CO2, 37℃の条件で培養した。2時間後に培養上清を除き、2 mlのAIM-V培地あるいは10%FBSを含むRPMI培地に10ng/mlあるいは25ng/mlイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の存在下あるいは非存在下で1000 U/mlのヒトGM-CSF と1000 U/ml のヒトIL-4を加え、5% CO2, 37℃の条件で6日間培養した。培養細胞におけるCD11c, CD14の発現はFACS Calibur(Becton, Dickinson and Company社製)を使い測定した。使用した抗体の抗イヌCD14はPharmingen社より購入した。
図6に示すように、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の存在下で、培養6日目から細胞に樹状突起物を有し、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質非存在下の細胞に比べて細胞の大きさが大きい細胞群が観察されたことから、樹状細胞様の細胞が誘導されていることが示唆された。イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の添加により樹状細胞の増殖が促進されるかを確認するため、培養開始後6日目の細胞を回収し、フローサイトメトリーで樹状細胞のマーカーであるCD11c陽性細胞と単球マーカーであるCD14の割合を比較した。樹状細胞は単球マーカーであるCD14の発現は見られないことから、培養細胞中のCD11c陽性CD14陰性細胞割合を算出した。表2で示すように、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を添加しない場合に比べて、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を添加することでCD11c陽性CD14陰性細胞が増加することが確認された。イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の有無によるイヌ樹状細胞誘導能の差は、AIM-V培地で培養した時に顕著に現れた。この結果は、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質がイヌ樹状細胞を増殖させる活性をもつことを示唆している。
実施例4:イヌFlt3リガンドを検出するウサギポリクローナル抗体の作製
配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号19から39番目及び153から175番目までのペプチドを合成後、ウサギに免疫することにより抗血清を得た。この抗血清には抗イヌFlt3リガンドウサギポリクローナル抗体が含まれている。
作製した抗イヌFlt3リガンドウサギポリクローナル抗体におけるイヌFlt3リガンドに対する反応性の確認は、ウェスタンブロットにより以下の方法で実施した。実施例1より回収した培養上清に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜を3%スキムミルク含有リン酸緩衝液(以下SM-PBSと略記する)で4℃、一晩、ブロッキングし、その後、作製した2種類のイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECLに反応させ、X線フィルムに感光することで、図1に示すように2種類の抗体は共にイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現を確認した。
実施例5:カイコによるイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現
カイコ核多角体病ウイルス発現ベクターのp283(日本農産工業(株)製)をEcoRIで切断後、Calf intestine Alkaline Phosphatase(Takara社製)で脱リン酸化処理をし、参考例1により得られたベクターを制限酵素EcoRIで切断後に得られるイヌFlt3リガンド細胞外ドメインのDNA断片と連結し、組換えベクターを作製した。添付マニュアルに従い、作製した組換えベクターとBmN4細胞(フナコシ(株)製)を用いて組換えウイルスrBmCaFLを作製した。
作製したrBmCaFLを5齢のカイコに皮下接種し、3日後に体液を回収した。
イヌFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した体液に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜をSM-PBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、実施例4で作製したイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体(配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号153から175番目よりなるペプチドより作製した抗体)を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECL(Amersham社製)に反応させ、X線フィルムに感光することで、図7に示すようにイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現を確認した。
実施例6:哺乳動物細胞によるイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現
哺乳動物発現ベクターのpcDNA3.1(Invitrogen社製)をEcoRIで切断後、Calf intestine Alkaline Phosphatase(Takara社製)で脱リン酸化処理をし、参考例1により得られたベクターを制限酵素EcoRIで切断後に得られるイヌFlt3リガンド細胞外ドメインのDNA断片と連結し、組換えベクターを作製した。作製した組換えベクターをCOS1細胞へトランスフェクトし、その4日後に培養上清を回収した。
イヌFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した培養上清に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜をSM-PBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、実施例4で作製したイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体(配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号153から175番目よりなるペプチドより作製した抗体)を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECL(Amersham社製)に反応させ、X線フィルムに感光することで、図8に示すようにイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現を確認した。
参考例5:哺乳動物細胞で製造したイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の精製
実施例6で得られたFlt3リガンドタンパク質を含む溶液を用いてアニオン交換担体よるイヌFlt3リガンドの分画を検討した。培養上清を、アニオン交換担体を充填したカラムにアプライした後、十分量の50mMトリス塩酸緩衝液(pH:8)でカラムを洗浄した。溶出はNaClの濃度を0Mから1.0Mまで0.1M刻みで行った。その結果、イヌFlt3リガンドは、アニオン交換担体に結合することなく素通りの画分で検出された。
イヌFlt3リガンドを含む画分をさらにブルーセファロース担体を充填したカラムにアプライし、十分量の20mMリン酸緩衝液(pH:6.8)でカラムを洗浄後、溶出はNaClの濃度を0Mから1.0Mまで0.1M刻みで行った。その結果、イヌFlt3リガンドは1.0M NaClにより溶出された。
イヌFlt3リガンドを含む画分をさらにハイドロキシアパタイト担体を充填したカラムにアプライし、十分量の10mMリン酸緩衝液(pH:6.8)でカラムを洗浄後、リン酸緩衝液(pH:6.8)の濃度を0Mから0.5Mまで0.1M刻みで溶出を行った。その結果、イヌFlt3リガンドは0.5Mのリン酸緩衝液(pH:6.8)の濃度でにより溶出された。
イヌFlt3リガンドを含む画分をさらにゲル濾過担体を充填したカラムにアプライし、0.01%のPluronic F-68(Gibco社製)を含むPBSを十分量カラムに展開した。スーパーデックス200を用いた場合、流速200μl/minの条件では70分から80分の間にイヌFlt3リガンドが回収できた。イヌFlt3リガンドの純度は、逆相カラムを用いたHPLCによる分析で、90%以上であった。
実施例7:哺乳動物細胞で製造したイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の活性測定
AML-5細胞を2%FCSを含むα-MEM培地で懸濁し、細胞が1 x 104 / 100 μl / wellとなるように96穴プレートに移した。各濃度のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を添加し、5% CO2, 37℃の条件で2日間培養した。なお、測定前6時間でそれぞれの培養液に1μCiづつのトリチウムチミジンを添加した。培養後、細胞ハーベスターにて細胞をガラス濾紙上に回収し、トリチウムチミジンの取り込み量を液体シンチレーションカウンターにて測定した。図9に示すように、イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を加えることで、濃度依存的にAML-5細胞の増殖が促進することが確認された。また、実施例3に示す方法により、哺乳動物細胞で生産したイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質がイヌ樹状細胞を増殖させる活性をもつことを確認した。
実施例8:大腸菌によるHisタグ融合イヌおよびヒトFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現
大腸菌にてイヌおよびヒトFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質を発現させるための発現ベクターの構築は以下の方法により実施した。PCRは、参考例1でTAクローニングキットを用いて作製したベクターを1μl、それぞれ2種類のプライマー(イヌFlt3リガンドは配列番号9と配列番号10、ヒトFlt3リガンドは配列番号11と配列番号12)を各1μM, 0.2mM各dNTP, 1mM MgSO4, 1UのKODポリメラーゼとなるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cyclerを用いて行った。なお、プライマーには制限酵素部位のNdeIが挿入してあり、配列番号10と配列番号12には終止コドンが挿入してある。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約570bpのDNA断片を調製した。
PCRにより得られたDNA断片を制限酵素NdeI(Takara社製)で切断後、あらかじめ制限酵素NdeIで切断後、Calf intestine Alkaline Phosphatase(Takara社製)で脱リン酸化処理したpET-16b(Novagen社製)へ組み込み、大腸菌用発ベクターを作製した。宿主として大腸菌BL21(DE3)(Takara社製)を使用した。トランスフォームしたBL21のシングルコロニーをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地でOD600が約0.5になるまで培養後、終濃度で1mMになるようにIPTGを添加してさらに4時間培養した。培養後、大腸菌を5,000xgで4℃、30分間遠心し、沈殿物を0.5% Triton X-100とプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma社製)の存在下で超音波にて破砕した。破砕物を数回洗浄し、沈殿物を終濃度8M尿素で4℃、一晩可溶化させた。その後、15,000xgで4℃、20分間、2回遠心し、得られた上清をフィルター濾過し、可溶性画分を得た。発現産物は、イヌおよびヒトFlt3リガンド細胞外ドメインのN末端にHisタグが融合したものである。
イヌおよびヒトFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した培養上清に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜をSM-PBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、実施例4で作製したイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体またはヒトFlt3リガンドに対するヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz社製)を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECL(Amersham社製)に反応させ、X線フィルムに感光することで、図11に示すようにイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現を確認した。また、実施例3に示す方法により、本大腸菌発現系で生産したイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質がイヌ樹状細胞を増殖させる活性をもつことを確認した。
実施例9:大腸菌によるイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現
大腸菌にてイヌFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質を発現させるための発現ベクターの構築は以下の方法により実施した。PCRは、参考例1でTAクローニングキットを用いて作製したベクターを1μl、それぞれ2種類のプライマー(配列番号9と配列番号10)を各1μM, 0.2mM各dNTP, 1mM MgSO4, 1UのKODポリメラーゼとなるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cyclerを用いて行った。なお、プライマーには制限酵素部位のNdeIが挿入してあり、配列番号10には終止コドンが挿入してある。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約570bpのDNA断片を調製した。
PCRにより得られたDNA断片を制限酵素NdeI(Takara社製)で切断後、あらかじめ制限酵素NdeIで切断後、Calf intestine Alkaline Phosphatase(Takara社製)で脱リン酸化処理したpET-30a(Novagen社製)へ組み込み、大腸菌用発ベクターを作製した。宿主として大腸菌BL21(DE3)(Takara社製)を使用した。トランスフォームしたBL21のシングルコロニーをカナマイシン(終濃度15μg/ml)含有LB培地でOD600が約0.5になるまで37℃で培養後、終濃度で1mMになるようにIPTGを添加してさらに25℃で20時間培養した。培養後、大腸菌を5,000xgで4℃、30分間遠心し、沈殿物を0.5% Triton X-100とプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma社製)の存在下で超音波にて破砕した。その後、16,000xgで4℃、30分間、遠心し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。
イヌFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した培養上清に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜をSM-PBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、実施例4で作製したイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECL(Amersham社製)に反応させ、X線フィルムに感光することで、図10に示すようにイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現を確認した。また、実施例3に示す方法により、本大腸菌発現系で生産したイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質がイヌ樹状細胞を増殖させる活性をもつことを確認した。
実施例10:イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体の特異性の検証
イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体の特異性の検証はウェスタンブロット法により確認した。実施例8より調整した可溶性画分および大腸菌破砕液に等量の可溶化バッファーを添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜をSM-PBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、実施例94で作製したイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体(配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号19から39番目よりなるペプチドより作製した抗体)あるいは抗ヒトFlt3リガンド抗体(Santa Cruz社製)を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体を室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄後、ECLに反応させ、X線フィルムに感光することで、イヌおよびFlt3リガンド細胞外ドメインタンパク質の発現を確認した。結果を図11に示す。大腸菌において、イヌおよびヒトFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の発現が確認された。作製したイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体は、ヒトFlt3リガンドには反応せず、イヌFlt3リガンド特異的に反応することが判明した。
イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞から産生されるイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットにより検出したことを示す図である。 昆虫細胞から産生されるイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質がFlt3受容体の細胞外ドメインタンパク質に結合する能力を有することを示す図である。 ヒトGM-CSFとヒトIL-4の存在下でイヌ末梢血単核球由来細胞の増殖が促進することを示す図である。 ヒトGM-CSFとヒトIL-4の存在下でイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を含む昆虫細胞由来培養上清を添加することによりイヌ末梢血単核球由来細胞の増殖が促進することを示す図である。 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の存在下でイヌ末梢血単核球由来細胞の増殖が促進することを示す図である。 ヒトGM-CSFとヒトIL-4の存在下でイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を添加することにより、培養開始後4日目で細胞に樹状突起物を有している細胞群が観察されることを示す図である。 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を発現する組換えカイコ核多角体病ウイルスを5齢カイコへ接種し、3日目に回収した体液からイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を検出できることを示す図である。 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを挿入した哺乳動物発現ベクターをCOS1細胞へトランスフェクトし、4日目の培養上清からイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を検出できることを示す図である。 哺乳動物細胞で製造したイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質の存在下でAML-5細胞の増殖が促進することを示す図である。 Hisタグを付加していないイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質が大腸菌発現系にて発現可能なことを示す図である。 作製したイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体(配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号19から39番目よりなるペプチドより作製した抗体)がイヌFlt3リガンドを特異的に検出することを示す図である。
符号の説明
1 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞Sf9へ4日間感染後に回収した培養上清を抗原とし、配列番号1に示すアミノ酸番号19から39に対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
2 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞Sf9へ4日間感染後に回収した培養上清を抗原とし、配列番号1に示すアミノ酸番号153から175に対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
3 ウェスタンブロットにより検出されたイヌFlt3リガンドのタンパクのバンドを示す。
4 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスとヒトFlt3受容体の細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを同時に昆虫細胞Sf9へ4日間感染後に回収した培養上清をハイドロキシアパタイトカラムへアプライし、カラムを洗浄後、0.5Mリン酸緩衝液でタンパクを溶出したものを抗原としたウエスタンブロットの結果である。
5 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスあるいはヒトFlt3受容体の細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞Sf9へ4日間感染後に別々に回収し、その後混合した培養上清をハイドロキシアパタイトカラムへアプライし、カラムを洗浄後、0.5Mリン酸緩衝液でタンパクを溶出したものを抗原としたウエスタンブロットの結果である。
6 ヒトFlt3受容体の細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞Sf9へ4日間感染後に回収した培養上清をハイドロキシアパタイトカラムへアプライし、カラムを洗浄後、0.5Mリン酸緩衝液でタンパクを溶出したものを抗原としたウエスタンブロットの結果である。
7 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞Sf9へ4日間感染後に回収した培養上清をハイドロキシアパタイトカラムへアプライし、カラムを洗浄後、0.5Mリン酸緩衝液でタンパクを溶出したものを抗原としたウエスタンブロットの結果である。
8 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞Sf9へ4日間感染後に回収した培養上清を抗原としたウエスタンブロットの結果である。
9 Flt3受容体に対する抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
10 イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
11 AIM-V培地で7日間培養後のイヌ末梢血単核球におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示す結果である。
12 1000U/mlのヒトGM-CSF を含むAIM-V培地で7日間培養後のイヌ末梢血単核球におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示す結果である。
13 1000U/mlのヒトIL-4を含むAIM-V培地で7日間培養後のイヌ末梢血単核球におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示す結果である。
14 1000U/mlのヒトGM-CSFと1000U/mlのヒトIL-4を含むAIM-V培地で7日間培養後のイヌ末梢血単核球におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示す結果である。
15 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞Sf9へ4日間感染後に回収した培養上清、1000U/mlのヒトGM-CSF、1000U/mlのヒトIL-4を含むAIM-V培地で7日間培養後のイヌ末梢血単核球におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示す結果である。
16 コントロールのバキュロウイルスを昆虫細胞Sf9へ4日間感染後に回収した培養上清、1000U/mlのヒトGM-CSF、1000U/mlのヒトIL-4を含むAIM-V培地で7日間培養後のイヌ末梢血単核球におけるトリチウムチミジンの取り込み量を示す結果である。
17 25 ng/mlのイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク、1000U/mlのヒトGM-CSF、1000U/mlのヒトIL-4を含むAIM-V培地で6日間培養後のイヌ末梢血単核球の顕微鏡写真である。
18 AIM-V培地のみで6日間培養後のイヌ末梢血単核球の顕微鏡写真である。
19 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を発現する組換えカイコ核多角体病ウイルスのクローン1を5齢カイコへ接種し、3日目に回収した体液からイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体(配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号153から175番目よりなるペプチドより作製した抗体)を用いてイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を検出できることを示す結果である。
20 イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を発現する組換えカイコ核多角体病ウイルスのクローン2を5齢カイコへ接種し、3日目に回収した体液からイヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体(配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号153から175番目よりなるペプチドより作製した抗体)を用いてイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を検出できることを示す結果である。
21 5齢カイコの体液からは、イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体(配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号153から175番目よりなるペプチドより作製した抗体)を用いてもイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を検出することができないことを示す結果である。
22 イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体(配列番号1に示すイヌFlt3リガンドのアミノ酸配列中のアミノ酸番号153から175番目よりなるペプチドより作製した抗体)を用いて、昆虫細胞で製造したイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質を検出することができることを示す結果である。
23 カイコの体液からウェスタンブロットにより検出されたイヌFlt3リガンドのタンパクのバンドを示す。
24ウェスタンブロットにより検出された昆虫細胞発現系由来イヌFlt3リガンドのタンパクのバンドを示す。
25 ウェスタンブロットにより検出された哺乳細胞発現系由来イヌFlt3リガンドのタンパクのバンドを示す。
26 IPTG添加後のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を抗原とし、イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
27 IPTG添加前のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を抗原とし、イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
28 IPTG添加後のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液の可溶性画分を抗原とし、イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
29 IPTG添加前のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液の可溶性画分を抗原とし、イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
30 IPTG添加後のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液の不溶性画分を抗原とし、イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
31 IPTG添加前のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液の不溶性画分を抗原とし、イヌFlt3リガンドに対するウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
32 ウェスタンブロットにより検出された大腸菌発現系由来イヌFlt3リガンドのタンパクのバンドを示す。
33 IPTG添加前のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を抗原とし、抗イヌFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
34 IPTG添加後のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を抗原とし、抗イヌFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
35 IPTG添加後のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液の可溶性画分を抗原とし、抗イヌFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
36 IPTG添加後のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を尿素で可溶化後の可溶性画分を抗原とし、抗イヌFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
37 IPTG添加前のヒトFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を抗原とし、抗イヌFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
38 IPTG添加後のヒトFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を抗原とし、抗イヌFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
39 IPTG添加後のヒトFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液の可溶性画分を抗原とし、抗イヌFltガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
40 IPTG添加後のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を尿素で可溶化後の可溶性画分を抗原とし、抗イヌFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
41 IPTG添加前のヒトFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を抗原とし、抗ヒトFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
42 IPTG添加後のヒトFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を抗原とし、抗ヒトFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
43 IPTG添加後のヒトFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液の可溶性画分を抗原とし、抗ヒトFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。
44 IPTG添加後のイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質をコードするDNAを組み込んだ大腸菌用の発現ベクターを導入した大腸菌破砕液を尿素で可溶化後の可溶性画分を抗原とし、抗ヒトFlt3リガンド抗体を用いたウエスタンブロットの結果である。

Claims (27)

  1. Flt3受容体に結合し、イヌ樹状細胞の増殖促進活性を有することを特徴とする化合物。
  2. 配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその変異体であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
  3. イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質またはその変異体である請求項1に記載の化合物。
  4. Flt3受容体に結合し、イヌ樹状細胞の増殖促進活性を有する物質を含むことを特徴とする動物用疾患治療剤。
  5. 該物質がタンパク質であることを特徴とする請求項4に記載の動物用疾患治療剤。
  6. 該物質が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその変異体である請求項4に記載の動物用疾患治療剤。
  7. 該物質がイヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質またはその変異体である請求項4に記載の動物用疾患治療剤。
  8. 該疾患が腫瘍または感染症である請求項4〜7のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤。
  9. 対象となる動物がイヌである請求項4〜8のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤。
  10. インターロイキン12および/またはインターロイキン18を含んでなる請求項4〜9のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤。
  11. 注射剤であることを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤。
  12. 請求項4〜11のいずれか1項に記載の動物用疾患治療剤を動物へ注射投与することを特徴とする動物の疾患治療方法。
  13. 請求項4〜10のいずれか1項に記載された動物用疾患治療剤を末梢血から分離したリンパ球に作用させた後、再び体内に戻すことを特徴とする動物の疾患治療方法。
  14. 請求項4〜10のいずれか1項に記載された動物用疾患治療剤を投与した動物から分離した末梢血単核球を生体外で培養後、再び体内に戻すことを特徴とする動物の疾患治療方法。
  15. 配列番号2のDNA配列を含む組換えベクター。
  16. イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質またはその変異体をコードするDNA配列を含む組換えベクター。
  17. 配列番号2のDNA配列を含む組換えバキュロウイルス。
  18. イヌFlt3リガンドの細胞外ドメインタンパク質またはその変異体をコードするDNA配列を含む組換えバキュロウイルス。
  19. 請求項15または請求項16に記載の組換えベクターにより宿主細胞を形質転換してなる形質転換体。
  20. 宿主細胞が真核細胞あるいは原核生物である請求項19に記載の形質転換体。
  21. 請求項19または請求項20に記載の形質転換体を培養することを特徴とするイヌFlt3リガンドの製造方法。
  22. 請求項17または請求項18に記載の組換えバキュロウイルスを昆虫樹立細胞中で増殖させることを特徴とするイヌFlt3リガンドの製造方法。
  23. 請求項17または請求項18に記載の組換えバキュロウイルスをカイコ生体中で増殖させることを特徴とするイヌFlt3リガンドの製造方法。
  24. 請求項15または請求項16に記載の組換えベクターを用いた哺乳細胞発現系によるイヌFlt3リガンドの製造方法。
  25. 請求項15または請求項16に記載の組換えベクターを用いた大腸菌発現系によるイヌFlt3リガンドの製造方法。
  26. 請求項15または請求項16に記載の組換えベクターを用いた無細胞発現系によるイヌFlt3リガンドの製造方法。
  27. イヌFlt3リガンドを特異的に認識する抗体。
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