JP2007232485A - 架空地線の損傷区間推定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】架空地線に対して、落雷による損傷可能性の高い区間を推定し、効率的な点検補修を可能とする架空地線の損傷区間推定方法およびそのプログラムを提供する。
【解決手段】落雷の大きさがしきい値以上である場合(ステップS104においてYESの場合)、かつ、落雷の位置がいずれかの区間からのしきい距離内に含まれる場合(ステップS106においてYESの場合)には、CPUは、当該区間または当該区間を含む区間群と対応付けてリスク値を積算する(ステップS108)。そして、CPUは、積算したリスク値のうち、所定値を超過したリスク値が存在する場合(ステップS110においてYESの場合)には、当該所定値を超過したリスク値に対応する区間または区間群に含まれる区間を落雷による損傷可能性が高いと推定する(ステップS112)。
【選択図】図5
【解決手段】落雷の大きさがしきい値以上である場合(ステップS104においてYESの場合)、かつ、落雷の位置がいずれかの区間からのしきい距離内に含まれる場合(ステップS106においてYESの場合)には、CPUは、当該区間または当該区間を含む区間群と対応付けてリスク値を積算する(ステップS108)。そして、CPUは、積算したリスク値のうち、所定値を超過したリスク値が存在する場合(ステップS110においてYESの場合)には、当該所定値を超過したリスク値に対応する区間または区間群に含まれる区間を落雷による損傷可能性が高いと推定する(ステップS112)。
【選択図】図5
Description
この発明は架空地線の損傷区間推定方法およびそのプログラムに関し、特に落雷標定装置により標定される落雷の大きさおよびその位置に基づいて、損傷可能性の高い区間を推定する技術に関するものである。
電力を輸送する送電線には、落雷による損傷や電気事故を防止するため、架空地線が設けられている。架空地線は、その一端または両端が接地され、接地電位に維持された導体である。そして、架空地線は、送電線の上部に配置され、送電線の雷に対する遮へい効果を発揮する。
この遮へい効果により、送電線に近接した位置に雷が発生した場合には、送電線ではなく架空地線に落雷することが多い。架空地線への落雷により生じる雷電流は、架空地線を介して接地へ放電されるため、送電線への影響(雷事故)を回避できる。
ところで、落雷により生じる雷電流は非常に大きく、架空地線に損傷を与えることも多い。架空地線が損傷すると、その損傷部位から電気事故に進展する可能性もあるため、架空地線を維持管理することは非常に重要である。
特開平1−320481号公報(特許文献1)には、送電線に落雷が生じた場合に、その落雷を検出し、かつ、その落雷位置を標定する送電線への落雷検知システムが開示されているが、その一端または両端が接地される架空地線では、このような落雷検知システムを適用することは困難である。
また、架空地線への落雷により影響をほとんど生じない送電線側では、架空地線の電位が上昇して架空地線と電力線との間で放電(フラッシオーバ)が生じなければ、架空地線への落雷や落雷位置を検出することはできない。したがって、架空地線に対する落雷を検出することは困難であった。
そのため、たとえば、特開平9−121418号公報(特許文献2)に開示される架空地線損傷検出器や、特開2004−242476号公報(特許文献3)に開示される架空地線状況点検装置などを用いて、落雷による損傷可能性の有無に関わらず、架空地線の全長に対して点検補修が行なわれていた。
特開平1−320481号公報
特開平9−121418号公報
特開2004−242476号公報
しかしながら、送電線の全長は、一般的に数10km〜数100kmにもなるため、上述のような架空地線損傷検出器や架空地線状況点検装置などを用いても、架空地線の全長を点検補修するには多くの労力および時間を費やさざるを得なかった。また、架空地線における損傷の多くが、鉄塔などの支持物の間(径間)で生じており、地上から目視で損傷部位を発見することは困難であった。
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、架空地線に対して、落雷による損傷可能性の高い区間を推定し、効率的な点検補修を可能とする架空地線の損傷区間推定方法およびそのプログラムを提供することである。
この発明によれば、所定間隔毎に配置された支持物により支持され、かつ、隣接する2つの支持物の径間毎に区間が規定される架空地線において、落雷による損傷可能性が高い区間を推定する架空地線の損傷区間推定方法である。この発明に係る架空地線の損傷区間推定方法は、落雷標定装置から落雷の大きさおよびその位置を取得する取得ステップと、取得ステップにおいて取得された落雷の大きさがしきい値以上であるか否かを判断する大きさ判断ステップと、大きさ判断ステップにおいて、落雷の大きさがしきい値以上であると判断されると、区間の各々について、当該落雷の位置が各区間からのしきい距離内に含まれるか否かを判断する距離判断ステップと、距離判断ステップにおいて、落雷の位置がいずれかの区間からのしきい距離内に含まれると判断されると、当該区間または当該区間を含む区間群と対応付けて、当該落雷による損傷可能性を示すリスク値を積算する積算ステップと、積算ステップにおいて積算されたリスク値が所定値を超過した区間または区間群に含まれる区間を、落雷による損傷可能性が高いと推定する推定ステップとからなる。
この発明によれば、落雷標定装置により取得された落雷の大きさおよび落雷位置に基づいて、架空地線の各区間に対して、しきい値以上の大きさをもち、かつ、しきい距離内に生じた落雷を抽出し、その抽出した落雷による架空地線に対する損傷可能性を示すリスク値を区間毎または区間群毎に積算する。そして、積算された区間毎または区間群毎のリスク値に基づいて、損傷可能性が高い区間を定量的に推定する。
そのため、同一の架空地線を構成する複数の区間に対して、損傷可能性が相対的に高い区間、および、損傷可能性が絶対的基準を超過している区間、のいずれの推定も行なうことができる。よって、架空地線の敷設距離が長い場合であっても、優先的に点検補修すべき区間を決定できる。
好ましくは、距離判断ステップは、落雷が負極性または正極性のいずれであるかに応じて、しきい距離を変化させる。
また好ましくは、積算ステップは、リスク値を各区間の設備形態を示す値に応じて補正する。
さらに好ましくは、各区間の設備形態を示す値は、各区間における架空地線の標高を含む。
さらに好ましくは、各区間の設備形態を示す値は、各区間における架空地線の地上高を含む。
さらに好ましくは、各区間の設備形態を示す値は、各区間の両端における支持物の塔頂差を含む。
また好ましくは、架空地線の点検補修実績を受付け、点検補修作業が行なわれた区間または当該区間を含む区間群に対応付けて積算されているリスク値をリセットするリセットステップをさらに含む。
また、この発明によれば、上述の架空地線の損傷区間推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
この発明によれば、架空地線に対して、落雷による損傷可能性の高い区間を推定し、効率的な点検補修を可能とする架空地線の損傷区間推定方法およびそのプログラムを実現できる。
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態に従う損傷区間推定方法の対象となる送配電系統1の概略構成図である。
図1を参照して、送配電系統1は、発電所や上位変電所などに設置された送電側変圧器50と、下位変電所などに設置された受電側変圧器52と、それらを互いに接続する電力線56とからなり、送電側変圧器50から受電側変圧器52へ電力線56を介して電力が輸送される。そして、電力線56は、所定間隔毎に連続的に配置された支持物54.1,54.2,・・・,54.Nによって支持される。支持物54.1,54.2,・・・,54.Nは、一例として、鉄塔や鉄柱などからなる。そして、電力線56の上部空間には、架空地線58が支持物54.1,54.2,・・・,54.Nで支持される。架空地線58は、支持物54.1,54.2,・・・,54.Nにおいて、図示しない接地極を介して大地に接地される。
なお、図1においては、一例として、3相3線式で1系統分に相当する3本の電力線56を図示するが、共通の支持物54に2系統分、すなわち6本の電力線が敷設されてもよく、その場合には、架空地線も2系統分、すなわち2本の架空地線が敷設される。
さらに、支持物54.1,54.2,・・・,54.Nのうち、隣接する2つの支持物の径間毎に区間2,区間3,・・・,区間Nのように区間が規定される。そして、このように規定された区間毎に点検補修作業が行なわれる。すなわち、これらの区間が、点検補修作業の対象を定める最小単位となる。したがって、架空地線58に対する、落雷による損傷可能性の判断は各区間に対して行なえば十分である。なお、以下の説明においては、支持物54.1,54.2,・・・,54.Nを総称的に支持物54と示す場合もある。
図2は、この発明の実施の形態に従う損傷区間推定システム100の概略構成図である。
図2を参照して、損傷区間推定システム100は、落雷標定装置2と、推定装置10とからなる。そして、落雷標定装置2が落雷の大きさおよびその位置を標定し、推定装置10が落雷標定装置2により標定されたデータに基づいて、架空地線58の各区間における落雷による損傷可能性を評価する。
落雷標定装置2は、センサ部4.1,4.2,4.3と、解析部6とからなる。センサ部4.1,4.2,4.3は、落雷の検出対象範囲(図示しない)の外縁に配置され、各々が落雷に伴い発生する電磁波を検出する。そして、センサ部4.1,4.2,4.3は、検出した電磁波の時間波形およびその電磁波が到来した角度(方向)を解析部6へ伝送する。
解析部6は、センサ部4.1,4.2,4.3から受けた電磁波の時間波形および電磁波の到来角度に基づいて、落雷の大きさ(雷電流)および落雷の位置を標定する。そして、解析部6は、標定した落雷の大きさおよびその位置を推定装置10へ出力する。
推定装置10は、後述するように、落雷標定装置2から受けた落雷の大きさおよびその位置に基づいて、架空地線58の区間毎に落雷による損傷可能性を示すリスク値を積算し、いずれの区間が落雷による損傷可能性が高いかを推定する。
図3は、落雷標定装置2による落雷標定の原理を説明する図である。
図3を参照して、解析部6は、センサ部4.1,4.2,4.3がそれぞれ検出した電磁波の時間波形に基づいて、特定の雷による電磁波がセンサ部4.1,4.2,4.3のそれぞれに到達するまでに要した時間T1,T2,T3を検出する。そして、解析部6は、電磁波の伝搬速度が同一であるとして、時間T1,T2,T3のそれぞれに相当する、落雷位置からセンサ部4.1,4.2,4.3までの伝搬距離を算出する。すなわち、解析部6は、センサ部4.1,4.2,4.3を中心とし、それぞれの伝搬距離を半径とする円を地図上に描画する。
図3を参照して、解析部6は、センサ部4.1,4.2,4.3がそれぞれ検出した電磁波の時間波形に基づいて、特定の雷による電磁波がセンサ部4.1,4.2,4.3のそれぞれに到達するまでに要した時間T1,T2,T3を検出する。そして、解析部6は、電磁波の伝搬速度が同一であるとして、時間T1,T2,T3のそれぞれに相当する、落雷位置からセンサ部4.1,4.2,4.3までの伝搬距離を算出する。すなわち、解析部6は、センサ部4.1,4.2,4.3を中心とし、それぞれの伝搬距離を半径とする円を地図上に描画する。
また、解析部6は、センサ部4.1,4.2,4.3がそれぞれ検出した電磁波の到来角度θ1,θ2,θ3に基づいて、センサ部4.1,4.2,4.3から見た落雷位置の方向を算出する。
そして、解析部6は、描画したそれぞれの円の交差位置、および、センサ部4.1,4.2,4.3から見た落雷位置の方向の交差位置、との誤差が最小となるような位置を落雷位置と標定する。さらに、解析部6は、センサ部4.1,4.2,4.3が検出した電磁波の大きさを、落雷位置からセンサ部4.1,4.2,4.3までの伝搬距離により補正することで、落雷の大きさを標定する。
図4は、推定装置10の概略構成図である。
図4を参照して、推定装置10は、一例としてコンピュータ20からなり、コンピュータ20には、マウス34と、キーボード36と、ディスプレイ38が接続される。
図4を参照して、推定装置10は、一例としてコンピュータ20からなり、コンピュータ20には、マウス34と、キーボード36と、ディスプレイ38が接続される。
コンピュータ20は、それぞれバス40に接続された、CPU(Central Processing Unit)22と、オペレーティングシステムに送られたプログラムなどを記憶したROM(Read Only Memory)24と、実行されるプログラムをロードし、プログラム実行中のデータを記憶するためのRAM(Random Access Memory)26と、ハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)28と、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)ドライブ30とを備える。CD−ROMドライブ30には、CD−ROM32が挿入される。
コンピュータ20は、後述の図5に示すフローチャートが記述されたプログラムがCPU22で実行されることにより、架空地線58の損傷区間推定処理を実行する。一般的にこのようなプログラムは、CD−ROM32などの記録媒体に記憶されて流通し、CD−ROMドライブ30などにより記録媒体から読取られてハードディスク28に一旦記憶される。さらにハードディスク28からRAM26に読出されてCPU22により実行される。
また、ハードディスク28には、推定対象となる支持物54.1,54.2,・・・,54.Nの位置、標高、地上高および塔頂差などが予め格納される。
図5は、この発明の実施の形態に従う架空地線の損傷区間推定を実行するためのフローチャートである。
図5を参照して、CPU22は、落雷標定装置2において落雷の標定が行なわれたか否かを判断する(ステップS100)。落雷標定装置2において落雷の標定が行なわれた場合(ステップS100においてYESの場合)には、CPU22は、落雷標定装置2から落雷の大きさおよびその位置を取得する(ステップS102)。そして、CPU22は、取得した落雷の大きさがしきい値以上であるか否かを判断する(ステップS104)。
落雷の大きさがしきい値以上である場合(ステップS104においてYESの場合)には、CPU22は、取得した落雷の位置が各区間からのしきい距離内に含まれるか否かを判断する(ステップS106)。なお、CPU22は、落雷が負極性であるか正極性であるかに応じて、その判断基準となるしきい距離の値を変化させる。
落雷の位置がいずれかの区間からのしきい距離内に含まれる場合(ステップS106においてYESの場合)には、CPU22は、当該区間または当該区間を含む区間群と対応付けてリスク値を積算する(ステップS108)。ここで、CPU22は、各区間における架空地線58の標高、各区間における架空地線58の地上高および各区間の両端における支持物54の塔頂差、を含む設備形態を示す値に応じてリスク値を補正する。
そして、CPU22は、積算したリスク値のうち、所定値を超過したリスク値が存在するか否かを判断する(ステップS110)。所定値を超過したリスク値が存在する場合(ステップS110においてYESの場合)には、CPU22は、当該所定値を超過したリスク値に対応する区間または区間群に含まれる区間を落雷による損傷可能性が高いと推定する(ステップS112)。
ステップS100においてNOの場合、ステップS104においてNOの場合、ステップS106においてNOの場合、ステップS110においてNOの場合またはステップS112の実行後において、CPU22は、架空地線58の点検補修作業の実績が与えられたか否かを判断する(ステップS114)。一方、ユーザは、区間別の点検補修作業の実績を入力する。
点検補修作業の実績が与えられた場合(ステップS114においてYESの場合)には、CPU22は、点検補修作業の実施された区間または当該区間を含む区間群に対応付けられて積算されているリスク値をリセットする(ステップS116)。
そして、ステップS114においてNOの場合、または、ステップS116の実行後において、CPU22は、処理を終了する。
なお、上述のフローチャートにおいては、落雷標定装置2が落雷を標定する毎に処理を実行する場合について例示したが、これ以外にも、落雷標定装置2により標定された落雷データを一旦蓄積するデータベース装置を介して、バッチ的に処理を実行してもよい。すなわち、落雷標定装置2と接続されたデータベースが標定される落雷データを順次格納し、推定装置10が当該データベースから所定期間に蓄積された落雷データを一括して受信し、当該受信した落雷データに対して、上述のステップS104〜S108の処理を繰返し実行するようにしてもよい。
以下、図5に示すフローチャートの要部について詳細に説明する。
(落雷の大きさのしきい値)
図6は、架空地線58の損傷の有無別に雷事故を生じた雷電流の経験率を示す図である。なお、雷事故とは、架空地線58に過大な雷電流が生じた結果、架空地線58の電位が上昇し、架空地線58と電力線56との間で放電(フラッシオーバ)が生じた状態を意味し、以下の説明においても同様の意味で使用する。このようなフラッシオーバが生じた場合においては、電力線56側に過電流、過電圧または地絡電流などが生じるため、電力線56側の保護リレーにより検出できる。そのため、図6に示す雷事故件数には、フラッシオーバを生じなかった落雷については含まれないことを付言しておく。また、雷電流は、落雷標定装置2により標定された雷電流(落雷の大きさ)である。
(落雷の大きさのしきい値)
図6は、架空地線58の損傷の有無別に雷事故を生じた雷電流の経験率を示す図である。なお、雷事故とは、架空地線58に過大な雷電流が生じた結果、架空地線58の電位が上昇し、架空地線58と電力線56との間で放電(フラッシオーバ)が生じた状態を意味し、以下の説明においても同様の意味で使用する。このようなフラッシオーバが生じた場合においては、電力線56側に過電流、過電圧または地絡電流などが生じるため、電力線56側の保護リレーにより検出できる。そのため、図6に示す雷事故件数には、フラッシオーバを生じなかった落雷については含まれないことを付言しておく。また、雷電流は、落雷標定装置2により標定された雷電流(落雷の大きさ)である。
そして、図6は、実際の架空地線58の全長に対する点検補修作業の結果、発見された区間毎の損傷と、当該区間において雷事故を過去に生じさせた雷電流との関係を示す図である。具体的には、図6の横軸は、雷事故を生じさせた雷電流(落雷標定装置2による標定値)を示し、縦軸は、母集団に含まれる区間数のうち、対応する横軸で示される雷電流を生じたことのある区間数の割合(経験率)を示す。すなわち、一例として、母集団が100区間である場合において、雷電流が100kAにおける経験率が50%以上であるとすると、50区間においては、過去に100kA以上の雷電流をもつ落雷により雷事故が発生したことを意味する。
図6においては、全体で130区間からなる実際の架空地線58に対する点検補修結果に基づいて、「素線切れ」の有無、および、「溶損」の有無の観点から各区間をそれぞれグループ分けし、各グループについて、落雷(1497回)に対する雷電流の経験率を調査した結果である。なお、「素線切れ」が発生していたのは全体(130区間)のうち10区間、であり、「溶損」が発生していたのは全体(130区間)のうち26区間であった。また、「素線切れ」および「溶損」は、それぞれ独立に発生するので、「素線切れ」および「溶損」のグループは、全区間の中からそれぞれ別々に分類した。
図6を参照して、「素線切れ発生」、「素線切れ無」、「溶損発生」および「溶損無」のいずれについても、雷電流が90kAまでは経験率が100%である。すなわち、損傷の有無に関わらず、いずれの区間にも雷電流90kAまでの落雷が生じていることを意味する。したがって、雷電流が90kA以下の落雷については、架空地線に対して損傷を与える可能性が低いことを意味する。
また、雷電流が90kAを超えると、「素線切れ無」および「溶損無」の経験率は、「素線切れ発生」および「溶損発生」の経験率に比較して低くなっている。これは、過去に大きな雷電流が生じた頻度が低いので、損傷の発生がないと理解することもできる。したがって、過去に生じた雷電流の大きさに依存して、損傷発生の有無に有意差があると認められる。
上述のような検討に基づいて、この発明の実施の形態における落雷のしきい値は、一例として90kAとし、取得した落雷の大きさがこのしきい値以上であるか否かを判断する(図5のステップS104)。
(しきい距離)
図7は、区間mに対して、落雷の位置が各区間からのしきい距離内に含まれるか否かを判断する処理を説明するための図である。
図7は、区間mに対して、落雷の位置が各区間からのしきい距離内に含まれるか否かを判断する処理を説明するための図である。
図7を参照して、支持物54.lおよび支持物54.mの径間に規定される区間mを中心として、しきい距離内の領域が定義される。区間mは、平面上で見ると、支持物54.lと支持物54.mとを結ぶ略直線となるので、しきい距離内の領域は長円形状となる。そして、この長円形状の領域内に落雷位置が含まれるか否かが判断される(図5のステップS106)。さらに、落雷が負極性または正極性のいずれであるかに応じて、しきい距離を変化、すなわち長円形の内径を変化させる。
図8は、負極性および正極性の別に、落雷の電荷量の統計的な頻度分布を示す図である。
図8を参照して、対数−対数座標において、電荷量と累積頻度分布とは、一次関数の関係となる。そして、この一次関数(相間関数)を決定し、累積頻度分布が50%となる電荷量(電荷量の中間値)を求めると、負極性の落雷においては9C(クーロン)となり、正極性の落雷においては95C(クーロン)となる。すなわち、統計的に見ると、正極性の落雷のもつ電荷量(エネルギー)は、負極性の落雷に比較して、約10倍程度大きいと判断できる。
したがって、正極性の落雷は、架空地線58からより離れた位置に生じたとしても、架空地線58に損傷を与える可能性が相対的に高いと言える。そこで、図7に示すように、落雷が負極性または正極性のいずれであるかに応じて、しきい距離を変化させ、負極性の落雷に比較して、正極性の落雷を検出する領域を拡大する。
なお、負極性または正極性は、気象条件などにより雷雲中に蓄積される電荷に応じて決定され、一般的に、夏場の落雷は負極性が多く、冬場の落雷は正極性が多い。
図9は、架空地線58から落雷位置までの距離別に発生した雷事故件数を示す図である。なお、図9における「落雷位置との距離」は、架空地線58と落雷位置との平面上の最短距離である。
図9を参照して、負極性落雷は、ほぼ落雷位置との距離が500m以下の範囲である場合において、雷事故を生じている。そのため、負極性落雷に対するしきい距離は、600mとすれば十分であると言える。さらに、落雷標定装置2の標定誤差および支持物54の位置誤差などを考慮して、200mのマージンを付加し、この発明の実施の形態における負極性落雷に対するしきい距離は、一例として800mとする。
一方、正極性落雷は、有効な数を収集することができなかったので、図8に示す雷エネルギーの差異などに基づいて、負極性落雷の約2倍のしきい距離、すなわち1200mを採用する。さらに、負極性落雷の場合と同様に、200mのマージンを付加し、この発明の実施の形態における正極性落雷に対するしきい距離は、一例として1400mとする。
ところで、一般的に落雷標定装置2から出力される落雷位置のデータは、緯度および経度であるので、各支持物54についての緯度および経度データが予め測定され、コンピュータ20に格納される。そして、CPU22は、落雷位置と各支持物54との緯度および経度の差に基づいて距離を算出する。そのため、各支持物54の位置データ(緯度および経度)は、できるだけ正確に測定しておくことが望ましい。なお、緯度および経度データから平面上の距離を算出する際には、計量法に規定されるように地球の扁平率の補正を加える必要がある。
(リスク値積算および損傷区間推定)
上述したように、落雷位置がいずれかの区間のしきい距離内にある場合においては、当該区間または当該区間を含む区間群と対応付けて、リスク値を積算する。
上述したように、落雷位置がいずれかの区間のしきい距離内にある場合においては、当該区間または当該区間を含む区間群と対応付けて、リスク値を積算する。
図10は、積算されるリスク値の一例を示す図である。なお、図10は、一例として、区間毎にリスク値を積算する場合を示す。
図10を参照して、落雷標定装置2により標定される各落雷について、上述した処理が繰返し実行され、しきい値以上の大きさをもち、かつ、いずれかの区間のしきい距離内にある落雷についてのリスク値が順次蓄積されていく(図5のステップS108)。そのため、落雷の発生に伴い、区間または区間群のリスク値は累積され、やがて所定の損傷境界値を超過するようになる。
そして、定期的または逐次的に、積算された区間毎または区間群毎のリスク値を損傷境界値と比較することで、損傷リスクの高い、すなわち損傷可能性が高い区間を推定することができる(図5のステップS112)。
一般的に電力線の点検補修作業を行なう場合には、電力線を開放し、無電圧状態にする必要がある。このような無電圧状態を実現するためには、需要家に対する供給影響が生じないように、計画的な運用変更が必要である。そのため、電力線の点検補修作業は、予め定められた点検補修周期(たとえば5年毎)で行なわれる。
したがって、この発明の実施の形態に従う損傷区間推定方法によれば、このような点検補修期間の直前に、損傷可能性が高い、すなわち点検対象とすべき区間を一斉に抽出し、効率的に点検補修作業を行なうことができる。
図10に示すように、そのリスク値が損傷境界値を超過している区間を点検対象として抽出する。なお、特許文献2および3に示されるような架空地線損傷検出器を用いる場合には、準備作業に時間および労力を要するので、離散的に架空地線58の区間を点検補修するより、連続した区間を点検補修する方が効率的である場合も多い。そこで、図10に示すように、その一部にリスク値が損傷境界値に到達していない区間が含まれていても、一群の連続した区間を点検対象として抽出してもよい。
図11は、点検補修作業の実施に応じてリセットされたリスク値を示す図である。
図11を参照して、ユーザは、点検対象として抽出した区間の点検補修作業が完了すると、キーボード36やマウス34などを用いて、その実績をコンピュータ20に与える。すると、CPU22は、入力された点検補修作業が実施された区間または当該区間を含む区間群に対応付けて蓄積されているリスク値をリセットし、ゼロとする(図5のステップS116)。
図11を参照して、ユーザは、点検対象として抽出した区間の点検補修作業が完了すると、キーボード36やマウス34などを用いて、その実績をコンピュータ20に与える。すると、CPU22は、入力された点検補修作業が実施された区間または当該区間を含む区間群に対応付けて蓄積されているリスク値をリセットし、ゼロとする(図5のステップS116)。
すなわち、点検補修作業により、当該区間が損傷していないことの確認、または、当該区間の損傷の回復がなされるので、リスク値は一旦ゼロとされ、再度リスク値の蓄積が開始される。
上述したように、リスク値に応じて、点検補修作業を優先的に実施すべき区間が抽出されるため、架空地線58を構成する各区間の点検補修時期が互いに異なるようになるが、落雷毎により蓄積され、かつ、点検補修によりリセットされるリスク値を用いることで、架空地線58の維持管理が容易かつ確実に実現できる。
なお、上述した損傷境界値としては絶対的な一定値を用いてもよいが、1つの送配電線において、相対的にリスク値が高い区間を推定するような場合においては、各区間で積算されたリスク値に応じて、変動するような損傷境界値を用いてもよい。たとえば、各区間で積算されたリスク値の総平均値を算出し、この総平均値を損傷境界値に採用することで、全区間に対して、平均値以上のリスク値をもつ区間を推定することもできる。
また、上述したように、実際の点検補修作業は、連続した区間群の単位で実施する方が効率的である場合が多いので、複数の区間で構成される区間群に対して、各区間のリスク値を当該区間群の単位でまとめて積算するようにしてもよい。このような構成によると、点検対象が区間群の単位で決定できるので、実際の点検補修作業により好適となる。
(設備形態によるリスク値の補正)
リスク値は、各区間における架空地線58の標高、各区間の架空地線58の地上高および各区間の両端における支持物54の塔頂差を含む設備形態を示す値に応じて補正される。具体的には、1回の落雷あたり、標高補正係数、地上高補正係数および塔頂差補正係数を乗じた値がリスク値として積算される。そのため、各区間に対応付けて積算されるリスク値は、積算対象である落雷の総数に標高補正係数、地上高補正係数および塔頂差補正係数を乗じた値となる。
リスク値は、各区間における架空地線58の標高、各区間の架空地線58の地上高および各区間の両端における支持物54の塔頂差を含む設備形態を示す値に応じて補正される。具体的には、1回の落雷あたり、標高補正係数、地上高補正係数および塔頂差補正係数を乗じた値がリスク値として積算される。そのため、各区間に対応付けて積算されるリスク値は、積算対象である落雷の総数に標高補正係数、地上高補正係数および塔頂差補正係数を乗じた値となる。
(標高補正)
従来の経験則および統計的な調査から、支持物54の標高が高い場合には、雷事故の頻度が高いことが知られている。そこで、この発明の実施の形態においては、各区間における架空地線58の標高に応じた標高補正係数でリスク値を補正する。
従来の経験則および統計的な調査から、支持物54の標高が高い場合には、雷事故の頻度が高いことが知られている。そこで、この発明の実施の形態においては、各区間における架空地線58の標高に応じた標高補正係数でリスク値を補正する。
標高別の雷事故比率および標高補正係数を表1に示す。
表1は、実際に発生した雷事故の件数を支持物54の標高別に分類し、かつ、標高別の支持物54の設置数で規格化(除算)することで、標高別の雷事故比率を導出したものである。そして、1000m以上の雷事故比率を1.00(基準)とし、各標高における相対的な雷事故比率を算出した。なお、対象とした雷事故の件数は、38516件である。
このように導出した雷事故比率によると、雷事故比率が標高に略比例することがわかる。この発明の実施の形態においては、表1に示す雷事故比率に基づいて「標高補正係数」を決定した。そして、架空地線58の各区間の標高に応じて、表1に示す標高補正係数を乗じた値をリスク値として採用する。そのため、ある区間のしきい範囲内に1つの落雷が生じた場合において、当該区間の標高が1000m以上であれば、積算されるリスク値は「1.00」となり、一方、当該区間の標高が100m未満であれば、積算されるリスク値は「0.20」となる。
このように、区間の標高に応じて、積算するリスク値を変化させることで、より実際の落雷に近い損傷可能性を表すことができる。
なお、架空地線58の1つの区間における標高は一定ではないので、この発明の実施の形態においては、その区間を規定する2つの支持物54の平均標高値を区間の代表標高値とする。
図12は、支持物54で規定される各区間の概略断面図である。
図12を参照して、一例として、支持物54.k,54.l,54.m,54.nが順に配置された区間l,mおよびnを示す。区間mについてみると、両端の支持物54.l,54.mの標高は、それぞれGLl,GLmである。そのため、区間mの標高は、これらの平均値である、(GLl+GLm)/2と決定される。そして、この決定された区間mの標高を表1に示す標高補正係数に適用して、区間mの標高補正係数を決定する。以下、他の区間についても同様である。
図12を参照して、一例として、支持物54.k,54.l,54.m,54.nが順に配置された区間l,mおよびnを示す。区間mについてみると、両端の支持物54.l,54.mの標高は、それぞれGLl,GLmである。そのため、区間mの標高は、これらの平均値である、(GLl+GLm)/2と決定される。そして、この決定された区間mの標高を表1に示す標高補正係数に適用して、区間mの標高補正係数を決定する。以下、他の区間についても同様である。
なお、各区間の両端に配置される支持物54の平均標高値を用いる方法に代えて、区間全長にわたって平均した標高値を用いてもよい。
(地上高補正)
架空地線58による遮へい効果の特性から、支持物54の地上高に応じて、架空地線58に近接して発生した雷を吸引する効果を生じる。そこで、この発明の実施の形態においては、架空地線58の地上高に応じた地上高補正係数で補正したリスク値を用いる。
架空地線58による遮へい効果の特性から、支持物54の地上高に応じて、架空地線58に近接して発生した雷を吸引する効果を生じる。そこで、この発明の実施の形態においては、架空地線58の地上高に応じた地上高補正係数で補正したリスク値を用いる。
図13は、支持物54の吸引半径を説明するための図である。
図13を参照して、地上高がそれぞれha,hb(ha<hb)である支持物54aおよび54bを比較する。支持物54aおよび54bの塔頂は、それぞれ敷設された架空地線58により接地電位に維持される。一方、支持物54aおよび54bが設置される地表面も接地電位である。そのため、いずれも接地電位に維持される、地表面と支持物54の塔頂との間の距離、すなわち支持物54の地上高に応じて、架空地線58の遮へい効果も変化する。
図13を参照して、地上高がそれぞれha,hb(ha<hb)である支持物54aおよび54bを比較する。支持物54aおよび54bの塔頂は、それぞれ敷設された架空地線58により接地電位に維持される。一方、支持物54aおよび54bが設置される地表面も接地電位である。そのため、いずれも接地電位に維持される、地表面と支持物54の塔頂との間の距離、すなわち支持物54の地上高に応じて、架空地線58の遮へい効果も変化する。
その結果、架空地線58に近接して発生した雷を、電力線ではなく自身に吸引できる範囲(吸引半径)も支持物54の地上高に応じて変化する。そして、地上高ha<hbであるため、支持物54bにおける吸引半径は、支持物54aにおける吸引半径に比較して大きくなる。そのため、架空地線58から見ると、地上高が高いほど雷の直撃を受けやすくなることを意味する。
このような吸引半径は、地上高hが25m以上であれば、(h/25)0.5に比例することが知られている。そこで、この発明の実施の形態においては、表2に示すように、この吸引半径に基づいた地上高補正係数を用いる。
このように、各区間における架空地線58の地上高に応じて、積算するリスク値を変化させることで、より実際の落雷による損傷可能性を表すことができる。
なお、各区間における架空地線58の地上高は一定ではないので、この発明の実施の形態においては、その区間を規定する2つの支持物54の平均標高値を区間の代表標高値とする。
再度、図12を参照して、区間mについてみると、両端の支持物54.l,54.mの地上高は、それぞれhl,hmである。そのため、区間mの地上高は、これらの平均値である、(hl+hm)/2と決定される。そして、この決定された区間mの地上高を表2に示す地上高補正係数に適用して、区間mの地上高補正係数を決定する。以下、他の区間についても同様である。
なお、各区間の両端に配置される支持物54の平均地上高を用いる方法に代えて、区間全長にわたって平均した地上高を用いてもよい。
(塔頂差補正)
従来の経験則および統計的な調査から、隣接する支持物54の塔頂差、すなわち架空地線58が配置されている高低差が大きいほど、落雷を受ける確率が高いことが知られている。
従来の経験則および統計的な調査から、隣接する支持物54の塔頂差、すなわち架空地線58が配置されている高低差が大きいほど、落雷を受ける確率が高いことが知られている。
たとえば、再度、図12を参照して、支持物54.mは、隣接する支持物54.lおよび54.nに比較して、その塔頂が高い。そのため、支持物54.l,54.m,54.nで支持される架空地線58の経路の断面形状は凸状となり、そのピークは支持物54.mの塔頂に位置する。この形状に起因して、支持物54.mに落雷が生じる確率は、他の支持物54.lおよび54.nに比較して高くなる。
そこで、この発明の実施の形態においては、各区間の両端における支持物54の塔頂差に応じた塔頂差補正係数で補正したリスク値を用いる。
このように支持物54の塔頂差に応じた塔頂差補正係数の一例を表3に示す。
なお、表3は、実際に発生した雷事故を支持物54の塔頂差別に分類した結果に基づいて、導出したものである。以下、再度図12を参照して、区間mの塔頂差補正係数を決定する手順について説明する。
第1のステップとして、隣接する支持物54の各々に対して塔頂差を算出する。具体的には、支持物54.kと支持物54.lとの塔頂差Δhkl,支持物54.lと支持物54.mとの塔頂差Δhlm,支持物54.mと支持物54.nとの塔頂差Δhmnをそれぞれ算出する。なお、塔頂差Δhkl=(標高GLk+地上高hk)−(標高GLl+地上高hl)であり、他も同様である。
第2のステップとして、区間mの両端に配置される支持物54.lおよび54.mにおける塔頂差補正係数をそれぞれ導出する。具体的には、表3を参照して、支持物54.lの塔頂差ΔhklおよびΔhlmに相当する塔頂差補正係数をそれぞれ決定し、決定された塔頂差補正係数を加算した値を支持物54.lの塔頂差補正係数とする。すなわち、(支持物54.lの塔頂差補正係数)=(塔頂差Δhklに相当する塔頂差補正係数)+(塔頂差Δhlmに相当する塔頂差補正係数)となる。また、支持物54.mについても同様である。
第3のステップとして、上述の第2のステップにおいて導出された支持物54.lおよび54.mにおける塔頂差補正係数の平均値を区間mにおける塔頂差補正係数として採用する。すなわち、(区間mにおける塔頂差補正係数)={(支持物54.lの塔頂差補正係数)+(支持物54.mの塔頂差補正係数)}/2である。
以下同様にして、第1〜第3のステップに従い、各区間における塔頂差補正係数が決定される。
このように、各区間の両端における支持物54の塔頂差に応じて、積算するリスク値を変化させることで、より実際の落雷に近い損傷可能性を表すことができる。
(補正係数による推定精度への効果)
上述のように、標高補正係数、地上高補正係数および塔頂差補正係数からなる設備形態に応じた補正係数を乗じたリスク値を採用することによる推定精度の検証を行なった。
上述のように、標高補正係数、地上高補正係数および塔頂差補正係数からなる設備形態に応じた補正係数を乗じたリスク値を採用することによる推定精度の検証を行なった。
図14は、過去の落雷実績に基づいて、この発明の実施の形態に従う損傷区間推定方法に基づくリスク値により推定される損傷区間と、当該落雷が実際に生じた区間との誤差を示す図である。そして、図14においては、上述の設備形態を示す値に応じて補正した場合(設備形態補正有)と補正しなかった場合(設備形態補正無)とについて比較した。
図14を参照して、検証した複数の落雷(76個)に対して、推定誤差が0、すなわち推定した損傷区間と実際の落雷区間とが一致したのは、設備形態補正を行なわない場合には32個であったのに対して、設備形態補正を行なった場合には35個に増加している。また、推定誤差が1区間であった場合も同様に増加している。
その結果、推定誤差が0または1区間であるケースが全体に示す比率は、設備形態補正を行なわない場合には74%であったのに対して、設備形態補正を行なった場合には80%に増加している。
このように、設備形態を示す値に応じて補正することで、より実際の落雷に近いリスク値を表すことができ、架空地線の損傷区間をより高精度で推定できることが示される。
なお、設備形態を示す値に応じた補正値は、支持物54の構造変更や位置変更などの設備形態についての変更が生じない限り不変である。そのため、図5のステップS108の実行する毎に各補正係数を算出する必要はなく、支持物54の位置、標高、地上高および塔頂差などが入力または変更された際に、各補正係数の算出を行なってもよい。その場合においては、その算出した各補正係数は、コンピュータ20のハードディスク28などに格納される。
(推定精度検証)
図15は、この発明の実施の形態に従う損傷区間推定方法を実際の架空地線に適用し、当該架空地線の点検補修結果と比較した結果を示す図である。
図15は、この発明の実施の形態に従う損傷区間推定方法を実際の架空地線に適用し、当該架空地線の点検補修結果と比較した結果を示す図である。
図15を参照して、一例として、損傷境界値を「2.00」とし、蓄積されたリスク値が当該損傷境界値を超過した区間を損傷可能性が高い区間として推定した。そして、損傷可能性が高い区間として推定された区間を含む連続した区間群を点検対象として抽出した。
一方、架空地線58の全区間について行なった点検補修作業に基づいて、実際に損傷していた区間に対応付けて、その損傷内容を示す記号を付した。なお、図15において、「△」は架空地線の素線切れがあったことを示し、「☆」は架空地線の溶損および溶損の原因であるアーク痕があったことを示す。
図15によると、実際に損傷していた区間は、この発明の実施の形態に従う損傷区間推定方法により損傷可能性が高い区間として推定された区間と極めてよく一致している。一部、推定された区間以外の区間において損傷の発生が見られるが、そのような区間のリスク値も損傷境界値に近接している。
したがって、この発明の実施の形態に従う損傷区間推定方法によれば、極めて高い精度で、架空地線の損傷可能性が高い区間を推定できる。
なお、この発明の実施の形態においては、設備形態を示す値として、標高、地上高および塔頂差を例示したが、これ以外にも設備形態に応じた値を用いることができる。
この発明の実施の形態によれば、落雷標定装置により取得された落雷の大きさおよび落雷位置に基づいて、架空地線の各区間に対して、しきい値以上の大きさをもち、かつ、しきい距離内に生じた落雷を抽出し、その抽出した落雷による架空地線に対する損傷可能性を示すリスク値を区間毎または区間群毎に積算する。そして、積算された区間毎または区間群毎のリスク値に基づいて、損傷可能性が高い区間を定量的に推定する。
そのため、同一の架空地線を構成する複数の区間に対して、損傷可能性が相対的に高い区間、および、損傷可能性が絶対的基準を超過している区間、のいずれの推定も行なうことができる。よって、架空地線の敷設距離が長い場合であっても、優先的に点検補修すべき区間を決定でき、効率的な点検補修を実現できる。
また、この発明の実施の形態によれば、雷電流の大きさに応じて、架空地線を損傷させる可能性のある落雷を抽出する。そのため、大量に発生する大小さまざまな落雷のうち、必要な落雷だけを選別することになり、不要な演算処理を省略することができるため、すべての落雷に対して処理を実行する場合に比較して、より高速な処理を実現できる。
また、この発明の実施の形態によれば、各区間の架空地線の標高、各区間における架空地線58の地上高および各区間の両端における支持物54の塔頂差を含む設備形態を示す値に応じて、リスク値を補正する。そのため、架空地線の敷設状況に応じて変化する落雷による損傷可能性を、より実際の落雷に近いものとして表すことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 送配電系統、2 落雷標定装置、4.1,4.2,4.3 センサ部、6 解析部、10 推定装置、20 コンピュータ、28 ハードディスク(HDD)、30 CD−ROMドライブ、34 マウス、36 キーボード、38 ディスプレイ、40 バス、50 送電側変圧器、52 受電側変圧器、54,54.1,54.2,・・・,54.N,54a,54b 支持物、56 電力線、58 架空地線、100 損傷区間推定システム。
Claims (8)
- 所定間隔毎に配置された支持物により支持され、かつ、隣接する2つの前記支持物の径間毎に区間が規定される架空地線において、落雷による損傷可能性が高い区間を推定する架空地線の損傷区間推定方法であって、
落雷標定装置から落雷の大きさおよびその位置を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された落雷の大きさがしきい値以上であるか否かを判断する大きさ判断ステップと、
前記大きさ判断ステップにおいて、前記落雷の大きさが前記しきい値以上であると判断されると、前記区間の各々について、当該落雷の位置が各区間からのしきい距離内に含まれるか否かを判断する距離判断ステップと、
前記距離判断ステップにおいて、前記落雷の位置がいずれかの区間からの前記しきい距離内に含まれると判断されると、当該区間または当該区間を含む区間群と対応付けて、当該落雷による損傷可能性を示すリスク値を積算する積算ステップと、
前記積算ステップにおいて積算された前記リスク値が所定値を超過した区間または区間群に含まれる区間を、落雷による損傷可能性が高いと推定する推定ステップとからなる、架空地線の損傷区間推定方法。 - 前記距離判断ステップは、前記落雷が負極性または正極性のいずれであるかに応じて、前記しきい距離を変化させる、請求項1に記載の架空地線の損傷区間推定方法。
- 前記積算ステップは、前記リスク値を各区間の設備形態を示す値に応じて補正する、請求項1または2に記載の架空地線の損傷区間推定方法。
- 前記各区間の設備形態を示す値は、各区間における前記架空地線の標高を含む、請求項3に記載の架空地線の損傷区間推定方法。
- 前記各区間の設備形態を示す値は、各区間における前記架空地線の地上高を含む、請求項3または4に記載の架空地線の損傷区間推定方法。
- 前記各区間の設備形態を示す値は、各区間の両端における前記支持物の塔頂差を含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の架空地線の損傷区間推定方法。
- 前記架空地線の点検補修実績を受付け、点検補修作業が行なわれた区間または当該区間を含む区間群に対応付けて積算されている前記リスク値をリセットするリセットステップをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の架空地線の損傷区間推定方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の架空地線の損傷区間推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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