JP2007231308A - 耐疲労特性に優れた厚鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】引張強さ:400MPa以上の強度を有し、特別な溶接材料を使用することなく、溶接継手部の耐疲労特性に優れた厚鋼板を提供する。
【解決手段】板厚方向に、中央部と表層部とからなる複層の厚鋼板で、中央部および表層部が、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.50〜2.40%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.005〜0.150%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる範囲内の組成を有し、かつ表層部および中央部が、TA<TB(ここで、TA:溶接冷却時の表層部の変態開始温度、TB:溶接冷却時の中央部の変態開始温度)を満足する、変態特性を有し、表層部を0.5〜10mmの範囲の厚みとする。これにより、溶接止端部の引張の残留応力が緩和され、ないしは圧縮の残留応力とすることができ、耐疲労特性が顕著に向上する。
【選択図】なし
【解決手段】板厚方向に、中央部と表層部とからなる複層の厚鋼板で、中央部および表層部が、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.50〜2.40%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.005〜0.150%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる範囲内の組成を有し、かつ表層部および中央部が、TA<TB(ここで、TA:溶接冷却時の表層部の変態開始温度、TB:溶接冷却時の中央部の変態開始温度)を満足する、変態特性を有し、表層部を0.5〜10mmの範囲の厚みとする。これにより、溶接止端部の引張の残留応力が緩和され、ないしは圧縮の残留応力とすることができ、耐疲労特性が顕著に向上する。
【選択図】なし
Description
本発明は、船舶、海洋構造物、建設機械、建築物、橋梁、タンク、鋼管、水圧鉄管などの溶接鋼構造物用として好適な厚鋼板に係り、とくに耐疲労特性の改善に関する。
船舶、海洋構造物、建設機械、建築物、橋梁、タンク等の溶接鋼構造物に使用される鋼板には、強度、靭性などの機械的特性および溶接性に優れていることはもちろん、構造安全性を確保するため、耐疲労特性にも優れていることが要求されている。
一般に、疲労特性は、疲労亀裂発生特性と、疲労亀裂伝播特性とに分けて評価されている。溶接鋼構造物では、溶接止端部が大きな応力集中係数を有して応力集中部となりやすく、また溶接止端部には、引張の残留応力も作用するため、溶接止端部が疲労亀裂の発生源となることが多い。そのため、なめ付け溶接を施し、止端部形状を改善して応力集中係数を小さくし溶接止端部に応力が集中するのを抑制して、溶接止端部からの疲労亀裂発生を抑制する方策が知られている。しかし、溶接鋼構造物には多数の溶接止端部があり、上記した方策を実行するには、多くの労力と時間とを必要とし施工工数の増加や、施工コストの高騰を招くうえ、溶接止端部からの疲労亀裂発生を完全に防止することが困難であるという問題がある。
一般に、疲労特性は、疲労亀裂発生特性と、疲労亀裂伝播特性とに分けて評価されている。溶接鋼構造物では、溶接止端部が大きな応力集中係数を有して応力集中部となりやすく、また溶接止端部には、引張の残留応力も作用するため、溶接止端部が疲労亀裂の発生源となることが多い。そのため、なめ付け溶接を施し、止端部形状を改善して応力集中係数を小さくし溶接止端部に応力が集中するのを抑制して、溶接止端部からの疲労亀裂発生を抑制する方策が知られている。しかし、溶接鋼構造物には多数の溶接止端部があり、上記した方策を実行するには、多くの労力と時間とを必要とし施工工数の増加や、施工コストの高騰を招くうえ、溶接止端部からの疲労亀裂発生を完全に防止することが困難であるという問題がある。
このような問題に対し、例えば特許文献1には、溶接により生成する溶接金属を、溶接後の冷却過程でマルテンサイト変態を起こさせ、室温でマルテンサイト変態の開始時より膨張した状態とする溶接方法が提案されている。特許文献1に記載された技術では、溶接材料として、マルテンサイト変態開始温度が250℃未満170℃以上の鉄合金を使用することが好ましいとしている。しかし、特許文献1に記載された技術では、溶接後の冷却過程でのマルテンサイト変態による膨張を利用して溶接止端部を含め溶接継手部に圧縮応力を付与することを意図して、溶接金属を基本的に高合金組成とするため、溶接金属に割れが発生しやすく、また、溶接施工自体の作業性が低下するなどの問題があった。
また、特許文献2には、C、Si、Mn、Alを適正量含み、さらに、Cr、Mo、Ni、Cu、Nb、TiおよびVを含有した組成と、軟質の素地(軟質部)を有しさらにその素地中に硬質部が分散し、軟質部と硬質部の硬さ差が150HV以上である組織と、を有する鋼板が提案されている。特許文献2に記載された技術によれば、軟質部と硬質部との界面で亀裂進展の停留効果があり、疲労亀裂進展速度を低減することができるとしている。
また、特許文献3には、C、Si、Mn、Al、Nを適正量含み、P、S含有量を所定値以下に調整し、あるいはさらに、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ti、Nb、Zr、V等の1種以上を所定量含有した組成と、軟質相と、軟質相を網目状に囲む硬質第二相からなる二相組織を有し、軟質相が平均ビッカース硬さで150HV以下、硬質相が平均ビッカース硬さで250HV以上で、硬質第二相の粒界占有率が0.5以上である耐疲労亀裂伝播特性に優れた厚鋼板が提案されている。特許文献3に記載された技術によれば、疲労亀裂進展速度がいずれの亀裂進展方向においても顕著に抑制できるとしている。
しかし、特許文献2、3に記載された技術では、いずれも、母材部における疲労亀裂の進展を抑制する効果があるが、溶接部におけるような高温に加熱された領域では効果が消失するため、溶接部からの疲労亀裂発生を完全に防止できず、実用的に大きな効果が得られていないという問題があった。
また、特許文献4には、疲労亀裂が発生する表裏層を、C、Si、Mnを適正範囲に含有し、炭素当量値を0.24以下に限定した、溶接熱影響部のフェライト組織分率が増加する組成とし、内層を、炭素当量値が0.30〜0.70を満足する、従来型高張力鋼の化学成分とする、表層、内層および裏層の合計3層からなる複層厚鋼板が提案されている。これにより、高張力鋼としての強度を確保しつつ、溶接部の疲労強度が向上するとしている。特許文献4に記載された技術は、表裏層で、疲労亀裂の発生と伝播を最も効果的に抑制する能力を有する、軟質のフェライト相を生成させて、溶接部の疲労強度を向上させようとするものである。
また、特許文献4には、疲労亀裂が発生する表裏層を、C、Si、Mnを適正範囲に含有し、炭素当量値を0.24以下に限定した、溶接熱影響部のフェライト組織分率が増加する組成とし、内層を、炭素当量値が0.30〜0.70を満足する、従来型高張力鋼の化学成分とする、表層、内層および裏層の合計3層からなる複層厚鋼板が提案されている。これにより、高張力鋼としての強度を確保しつつ、溶接部の疲労強度が向上するとしている。特許文献4に記載された技術は、表裏層で、疲労亀裂の発生と伝播を最も効果的に抑制する能力を有する、軟質のフェライト相を生成させて、溶接部の疲労強度を向上させようとするものである。
また、特許文献5には、表裏層が脱炭層からなり、ビッカース硬さで70〜140HVの硬さと、面積率で60%以上のフェライト組織と、所定範囲の厚さを有し、表裏層を除く内層が表裏層より硬く、ビッカース硬さで130〜500HVの硬さを有する、疲労強度に優れた溶接構造用複層鋼材が提案されている。特許文献5に記載された技術では、表裏層の組織をフェライト組織とすることにより、亀裂閉口現象が促進され疲労強度が向上するとしている。
しかしながら、特許文献4、5に記載された技術におけるように、鋼板の表裏層に軟質層を配置することは、鋼板全厚での引張強さを低下させることになるため、板厚を増大させるか、あるいは内層の強度を高めることを必要とする。鋼板内層の炭素当量を大きくすることにより、内層の強度を高めることができるが、鋼板内層の炭素当量を大きくすることは、鋼板製造時や溶接時の変態挙動で、鋼板表面および溶接止端部に大きな引張の残留応力が発生することになり、かえって疲労強度を低下させる恐れがある。
また、特許文献6には、表層と内層からなり、表層がC含有量を高めた浸炭層からなり、表層のマルテンサイト変態開始温度Msが50〜350℃であり、かつ表層を除く内層のマルテンサイト変態終了温度Mfが、表層のマルテンサイト変態開始温度Ms 以上である、疲労強度に優れた溶接構造用複層鋼材が提案されている。変態点の異なる領域を複層化することにより、溶接冷却過程で、表層が変態膨張している際に内層を熱収縮状態として、表層の溶接残留応力を圧縮応力にすることができ、特別な配慮を必要とせず、高い疲労強度を有する溶接構造物を構築することができるとしている。
特開平11−138290号公報
特開平11−310846号公報
特開2004−143504号公報
特開平8−225885号公報
特開2003−239037号公報
特開2003−277879号公報
しかしながら、特許文献6に記載された技術で、溶接部表層に圧縮の残留応力を発生させるためには、表層の変態点をかなり低下させる必要がある。例えば、表層の変態点の低下を、C含有量のみで調整するには、Cを0.3%以上含有させる必要がある。しかし、Cを0.3%以上含有すると、溶接部の高温割れや低温割れを回避して、通常の溶接施工を行うことが困難となる。
このように、上記した従来技術では、特殊な溶接材料を使用することなく、溶接継手部における疲労亀裂の発生を抑制することが困難であり、さらには発生した疲労亀裂の伝播も十分に抑制することができないのが現状である。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、母材はもちろん、特殊な溶接材料を使用することなく、溶接継手部においても、耐疲労特性に優れた厚鋼板を提供することを目的とする。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、母材はもちろん、特殊な溶接材料を使用することなく、溶接継手部においても、耐疲労特性に優れた厚鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、溶接継手部の耐疲労特性に影響する表層の残留応力について、さらに詳しくは溶接継手部表層に圧縮応力を残留させる方策、あるいは引張の残留応力を低減する方策について鋭意研究を行った。その結果、溶接継手部の耐疲労特性を向上させるためには、厚鋼板を、中心部と該中心部を挟む表層部とからなり、中心部の組成と該中心部を挟む表層部の組成とが異なる複層構造の鋼板とし、さらに溶接時の冷却過程における表層部の変態開始温度TAが、中心部の変態開始温度TB未満となるように表層部組成および中心部組成を調整する必要があることに思い至った。すなわち、表層部の変態開始温度が、中心部の変態開始温度より低い温度となるように、表層部および/または中心部の組成を調整することにより、溶接時の冷却に際し、中心部が変態膨張を開始した後に、表層都において変態膨張を開始させることができ、これにより、それまでに表層に存在していた引張の残留応力を緩和することができるか、あるいはさらに表層に圧縮の残留応力を発生させることができることを見出した。また本発明者らは、表層部および中心部の組織がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト、あるいはそれらの組み合わせである複合組織であっても、生成する組織に関係なく、表層部の変態開始温度と中心部の変態開始温度とが少しでも差があれば、上記した耐疲労特性向上効果が同様に得られることを見出した。
また、本発明者らは、溶接継手部の表層で、引張の残留応力が緩和されるか、あるいは圧縮の残留応力となることにより、疲労亀裂の進展も抑制される。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)板厚方向に、中央部と該中央部を挟む表層部との3層からなる複層鋼板であって、前記中央部が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.50〜2.40%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.005〜0.150%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる範囲内の組成を有し、前記表層部が、0.5〜10mmの範囲の厚みと、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.50〜2.40%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.005〜0.150%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる範囲内で、前記中央部とは異なる組成を有し、かつ前記表層部および前記中央部が、次(1)式
TA<TB ……(1)
(ここで、TA:溶接熱サイクルにおける冷却時の表層部の変態開始温度、TB:溶接熱サイクルにおける冷却時の中央部の変態開始温度)
を満足する、溶接熱サイクルにおける変態特性を有することを特徴とする耐疲労特性に優れた厚鋼板。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)板厚方向に、中央部と該中央部を挟む表層部との3層からなる複層鋼板であって、前記中央部が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.50〜2.40%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.005〜0.150%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる範囲内の組成を有し、前記表層部が、0.5〜10mmの範囲の厚みと、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.50〜2.40%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.005〜0.150%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる範囲内で、前記中央部とは異なる組成を有し、かつ前記表層部および前記中央部が、次(1)式
TA<TB ……(1)
(ここで、TA:溶接熱サイクルにおける冷却時の表層部の変態開始温度、TB:溶接熱サイクルにおける冷却時の中央部の変態開始温度)
を満足する、溶接熱サイクルにおける変態特性を有することを特徴とする耐疲労特性に優れた厚鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.005〜0.22%、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜4.0%、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜2.0%、W:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%,B:0.0005〜0.0040%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼板。
本発明によれば、鋼板の状態で所望の各組成を有する複層を形成することにより、特殊な溶接材料を使用することなく、溶接継手部において、所望の耐疲労特性を有する厚鋼板を安価に提供でき、産業上格段の効果を奏する。
本発明の厚鋼板は、図1に示すように、板厚方向に、中央部1と、該中央部1を挟む表層部2、表層部2、との3層からなる複層鋼板である。本発明では、表層部2は、0.5〜10mmの範囲の厚みを有し、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.70%、Mn:0.50〜2.40%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.005〜0.15%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる範囲内の組成を有する。一方、中央部1は、上記した範囲と同じ範囲内の組成を有するが、表層部2とは異なる組成を有するものとする。そして、本発明厚鋼板では、中央部1と表層部2の組成を、次(1)式
TA<TB ……(1)
(ここで、TA:溶接熱サイクルにおける冷却時の表層部の変態開始温度(℃)、TB:溶接熱サイクルにおける冷却時の中央部の変態開始温度(℃))
を満足する、溶接熱サイクルにおける変態特性を有するようにそれぞれ調整するものとする。なお、(1)式の適合を決定する溶接熱サイクルは、厚鋼板が使用される部位で適用される溶接施工で用いられ、溶接方法、溶接入熱に応じたものとする。
TA<TB ……(1)
(ここで、TA:溶接熱サイクルにおける冷却時の表層部の変態開始温度(℃)、TB:溶接熱サイクルにおける冷却時の中央部の変態開始温度(℃))
を満足する、溶接熱サイクルにおける変態特性を有するようにそれぞれ調整するものとする。なお、(1)式の適合を決定する溶接熱サイクルは、厚鋼板が使用される部位で適用される溶接施工で用いられ、溶接方法、溶接入熱に応じたものとする。
本発明厚鋼板においては、中央部1と表層部2とは、共通する成分範囲内で、異なる組成となるように調整する。なお、各部の変態特性の調整は、C、Mn、Ni、Cr、Mo、Cuの各成分含有量の調整により行なうことが好ましい。
なお、表層部の変態開始温度TA、中心部の変態開始温度TBは、基本的には所望の溶接施工時の溶接熱サイクルを模擬した、所定の溶接再現熱サイクルを表層部、中心部それぞれの組成を有する鋼材に付与し、熱電対により変態開始温度を実測するものとする。所定の溶接再現熱サイクルとしては、最高加熱温度を1400℃として、冷却速度を所望の溶接施工時の冷却速度(例えば、板厚25mmの鋼材に入熱:2kJ/mmのCO2溶接を模擬した、800〜500℃の冷却時間:12s)に合致するように設定することが好ましい。また、変態開始温度の簡便な決定方法としては、変態開始温度の予測式、例えば、次(2)式
T(℃)=910−273C−74Mn−56Ni−16Cr−9Mo−5Cu ……(2)
(ここで、C、Mn、Ni、Cr、Mo、Cu:各元素の含有量(質量%))
を用いる方法があるが、正確ではない。なお、それぞれの組成を有する鋼材に所定の溶接施工を施し、それぞれの鋼材について冷却時の変態開始温度を実測することにより求めるのが好ましく、また正確である。
なお、表層部の変態開始温度TA、中心部の変態開始温度TBは、基本的には所望の溶接施工時の溶接熱サイクルを模擬した、所定の溶接再現熱サイクルを表層部、中心部それぞれの組成を有する鋼材に付与し、熱電対により変態開始温度を実測するものとする。所定の溶接再現熱サイクルとしては、最高加熱温度を1400℃として、冷却速度を所望の溶接施工時の冷却速度(例えば、板厚25mmの鋼材に入熱:2kJ/mmのCO2溶接を模擬した、800〜500℃の冷却時間:12s)に合致するように設定することが好ましい。また、変態開始温度の簡便な決定方法としては、変態開始温度の予測式、例えば、次(2)式
T(℃)=910−273C−74Mn−56Ni−16Cr−9Mo−5Cu ……(2)
(ここで、C、Mn、Ni、Cr、Mo、Cu:各元素の含有量(質量%))
を用いる方法があるが、正確ではない。なお、それぞれの組成を有する鋼材に所定の溶接施工を施し、それぞれの鋼材について冷却時の変態開始温度を実測することにより求めるのが好ましく、また正確である。
表層部、および中心部の溶接熱サイクルにおける変態特性が、(1)式を満足しない場合には、溶接時の冷却に際し、中心部が変態膨張を開始した後に、表層部において変態膨張を開始させることができなくなり、表層に存在していた引張の残留応力を緩和することや、あるいは表層に圧縮の残留応力を発生させることができなくなり、耐疲労特性の向上効果が期待できなくなる。
また、表層部および中心部の組織がフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト、あるいはそれらの組み合わせである複合組織であっても、生成する組織に関係なく、表層部、中心部が、上記した組成で上記した(1)式を満足するような変態特性を有していれば、耐疲労特性向上効果が期待できる。
まず、各成分について、共通する範囲の限定理由について説明する。以下、組成における質量%は単に%で記す。
まず、各成分について、共通する範囲の限定理由について説明する。以下、組成における質量%は単に%で記す。
C:0.01〜0.20%
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するため、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超える含有は、溶接性を著しく低下させる。このため、Cは0.01〜0.20%の範囲に限定した。
Si:0.01〜0.70%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、強度をも増加させる元素である。このような効果を確保するためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.70%を超える多量の含有は、溶接性および母材靭性を著しく低下させる。このため、Siは0.01〜0.70%の範囲に限定した。
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するため、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超える含有は、溶接性を著しく低下させる。このため、Cは0.01〜0.20%の範囲に限定した。
Si:0.01〜0.70%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、強度をも増加させる元素である。このような効果を確保するためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.70%を超える多量の含有は、溶接性および母材靭性を著しく低下させる。このため、Siは0.01〜0.70%の範囲に限定した。
Mn:0.50〜2.40%
Mnは、Cと同様に鋼の強度を増加させる元素であり、本発明では0.50%以上の含有を必要とする。一方、2.40%を超える過剰な含有は溶接性を低下させる。このため、Mnは0.5〜2.40%の範囲に限定した。
P:0.020%以下
Pは、不純物として鋼中に不可避的に含有され、母材靭性や、溶接熱影響部靭性を劣化させる元素であり、経済性を考慮して可能なかぎり低減することが好ましいが、0.020%までは許容できる。このため、Pは0.020%以下に限定した。
Mnは、Cと同様に鋼の強度を増加させる元素であり、本発明では0.50%以上の含有を必要とする。一方、2.40%を超える過剰な含有は溶接性を低下させる。このため、Mnは0.5〜2.40%の範囲に限定した。
P:0.020%以下
Pは、不純物として鋼中に不可避的に含有され、母材靭性や、溶接熱影響部靭性を劣化させる元素であり、経済性を考慮して可能なかぎり低減することが好ましいが、0.020%までは許容できる。このため、Pは0.020%以下に限定した。
S:0.0070%以下
Sは、不純物として鋼中に不可避的に含有され、熱間加工性や、母材の延性・靭性、溶接熱影響部籾性を劣化させる元素であり、経済性を考慮して可能なかぎり低減することが好ましいが、0.0070%までは許容できる。このため、Sは0.0070%以下に限定した。
Al:0.005〜0.15%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を十分に確保するためには0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.15%を超える過剰な含有は、母材靭性の劣化をもたらす。このため、Alは0.005〜0.15%の範囲に限定した。
Sは、不純物として鋼中に不可避的に含有され、熱間加工性や、母材の延性・靭性、溶接熱影響部籾性を劣化させる元素であり、経済性を考慮して可能なかぎり低減することが好ましいが、0.0070%までは許容できる。このため、Sは0.0070%以下に限定した。
Al:0.005〜0.15%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を十分に確保するためには0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.15%を超える過剰な含有は、母材靭性の劣化をもたらす。このため、Alは0.005〜0.15%の範囲に限定した。
上記した成分の範囲が、中心部および表層部における基本の組成範囲であるが、本発明では、上記した範囲の基本組成に加えてさらに、Ti:0.005〜0.22%、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜4.0%、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜2.0%、W:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%、B:0.0005〜0.0040%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上、を必要に応じ選択して含有することができる。
Ti、Cu、Ni、Cr、Mo、W、Nb、V、Bはいずれも、鋼の強度を増加させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有することができる。
Ti:0.005〜0.22%
Tiは、炭化物等の析出物を形成し、鋼板の強度増加、および鋼板の母材靭性、溶接熱影響部靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.22%を超えて含有すると、靭性の著しい低下をもたらす。このため、含有する場合は、Tiは0.005〜0.22%の範囲に限定することが好ましい。
Ti:0.005〜0.22%
Tiは、炭化物等の析出物を形成し、鋼板の強度増加、および鋼板の母材靭性、溶接熱影響部靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.22%を超えて含有すると、靭性の著しい低下をもたらす。このため、含有する場合は、Tiは0.005〜0.22%の範囲に限定することが好ましい。
Cu:0.01〜2.0%
Cuは、鋼板の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、熱間脆性により鋼板表面性状が劣化する。このため、含有する場合は、Cuは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。
Cuは、鋼板の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、熱間脆性により鋼板表面性状が劣化する。このため、含有する場合は、Cuは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。
Ni:0.01〜4.0%
Niは、鋼板母材の強度を増加させつつ靭性をも向上させることが可能な元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、4.0%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、含有する場合は、Niは0.01〜4.0%の範囲に限定することが好ましい。
Niは、鋼板母材の強度を増加させつつ靭性をも向上させることが可能な元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、4.0%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、含有する場合は、Niは0.01〜4.0%の範囲に限定することが好ましい。
Cr:0.01〜2.0%
Crは、鋼板母材の強度を増加させるのに有効に作用する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、靭性が著しく劣化する。このため、含有する場合は、Crは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。
Crは、鋼板母材の強度を増加させるのに有効に作用する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、靭性が著しく劣化する。このため、含有する場合は、Crは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。
Mo:0.01〜2.0%
Moは、鋼板母材の強度を増加させるのに有効に作用する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、靭性が著しく劣化する。このため、含有する場合は、Moは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。
Moは、鋼板母材の強度を増加させるのに有効に作用する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、靭性が著しく劣化する。このため、含有する場合は、Moは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。
W:0.01〜2.0%
W は、Moと同様に、鋼板母材の強度を増加させるのに有効に作用する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、靭性が著しく劣化する。このため、含有する場合は、Wは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。
W は、Moと同様に、鋼板母材の強度を増加させるのに有効に作用する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、靭性が著しく劣化する。このため、含有する場合は、Wは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。
Nb:0.003〜0.1%
Nbは、鋼板母材の強度と、さらに靭性を向上させる元素であり、このような効果は、0.003%以上の含有で顕著となる。一方、0.1%を超えて含有すると、靭性の低下を招く恐れがある。このため、含有する場合は、Nbは0.003〜0.1%の範囲に限定することが好ましい。
Nbは、鋼板母材の強度と、さらに靭性を向上させる元素であり、このような効果は、0.003%以上の含有で顕著となる。一方、0.1%を超えて含有すると、靭性の低下を招く恐れがある。このため、含有する場合は、Nbは0.003〜0.1%の範囲に限定することが好ましい。
V:0.003〜0.5%
Vは、鋼板母材の強度向上と、Nbと同様に、さらに鋼板母材の靭性を向上させる元素であり、このような効果は、0.003%以上の含有で顕著となる。一方、0.1%を超えて含有すると、靭性の低下を招く恐れがある。このため、含有する場合は、Vは0.003〜0.5%の範囲に限定することが好ましい。
Vは、鋼板母材の強度向上と、Nbと同様に、さらに鋼板母材の靭性を向上させる元素であり、このような効果は、0.003%以上の含有で顕著となる。一方、0.1%を超えて含有すると、靭性の低下を招く恐れがある。このため、含有する場合は、Vは0.003〜0.5%の範囲に限定することが好ましい。
B:0.0005〜0.0040%
Bは、焼入れ性の向上を介して、鋼板の強度を増加させる元素であり、このような効果は0.0005%以上の含有で顕著になる。一方、0.0040%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、含有する場合は、Bは0.0005〜0.0040%の範囲に限定することが好ましい。
Bは、焼入れ性の向上を介して、鋼板の強度を増加させる元素であり、このような効果は0.0005%以上の含有で顕著になる。一方、0.0040%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、含有する場合は、Bは0.0005〜0.0040%の範囲に限定することが好ましい。
Ca、Mg、REMはいずれも、介在物の形態を制御する作用を有する元素であり、必要に応じて1種または2種以上を含有することができる。
Ca、Mg、REMは、鋼中のSを固定し、硫化物系介在物の形態制御を介して鋼の靭性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためにはそれぞれ、Ca:0.0001%以上、Mg:0.0001%以上、REM:0.0001%以上の含有を必要とする。一方、Ca:0.0060%、Mg:0.0060%、REM:0.0200%を超えてそれぞれ含有すると、介在物量が増加し靭性がかえって劣化する。このため、含有する場合には、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%の範囲に限定することが好ましい。
Ca、Mg、REMは、鋼中のSを固定し、硫化物系介在物の形態制御を介して鋼の靭性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためにはそれぞれ、Ca:0.0001%以上、Mg:0.0001%以上、REM:0.0001%以上の含有を必要とする。一方、Ca:0.0060%、Mg:0.0060%、REM:0.0200%を超えてそれぞれ含有すると、介在物量が増加し靭性がかえって劣化する。このため、含有する場合には、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%の範囲に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、N:0.0070%以下、O:0.0060%以下が許容できる。
また、本発明厚鋼板では、表層部が、0.5〜10mmの範囲の厚みを有する。
表層部を上記した範囲の厚みとすることにより、表層に残留する引張応力の緩和や表層に圧縮応力を有効に付与することができる。表層部の厚みが、0.5mm未満では、発生した応力がかかる領城が板厚に対して小さすぎるため、耐疲労特性を向上させるだけの効果が得られない。一方、10mmを超えて厚くなると、溶接止端部に発生する応力が小さく、有効な効果が得られない。
また、本発明厚鋼板では、表層部が、0.5〜10mmの範囲の厚みを有する。
表層部を上記した範囲の厚みとすることにより、表層に残留する引張応力の緩和や表層に圧縮応力を有効に付与することができる。表層部の厚みが、0.5mm未満では、発生した応力がかかる領城が板厚に対して小さすぎるため、耐疲労特性を向上させるだけの効果が得られない。一方、10mmを超えて厚くなると、溶接止端部に発生する応力が小さく、有効な効果が得られない。
つぎに、本発明厚鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明厚鋼板は、複層化した鋼素材(スラブ)を使用して、通常の厚板圧延法により容易に製造することができる。鋼素材(スラブ)を複層化する方法は、とくに限定する必要はなく、公知の方法がいずれも適用できる。例えば、上記した(1)式を満足し、上記した表層部の組成、板厚となるように、また、上記した中央部の組成となるように、連続鋳造法で複層の鋼素材(スラブ)を作製する方法や、上記した(1)式を満足し、かつ上記した表層部の組成と板厚となるよう調整した鋼素材(スラブ)と上記した中央部の組成となるように調整した鋼素材(スラブ)とを重ね合わせて、圧延し複層の鋼素材(スラブ)とする方法などが、例示できる。鋼素材(スラブ)の圧延に際しては、通常の厚板圧延法、例えば通常の熱間圧延、制御圧延、制御冷却や焼入れ焼戻等の調質処理など、通常の厚板圧延プロセスがいずれも適用でき、所定の板厚の厚鋼板とすることができる。
本発明厚鋼板は、複層化した鋼素材(スラブ)を使用して、通常の厚板圧延法により容易に製造することができる。鋼素材(スラブ)を複層化する方法は、とくに限定する必要はなく、公知の方法がいずれも適用できる。例えば、上記した(1)式を満足し、上記した表層部の組成、板厚となるように、また、上記した中央部の組成となるように、連続鋳造法で複層の鋼素材(スラブ)を作製する方法や、上記した(1)式を満足し、かつ上記した表層部の組成と板厚となるよう調整した鋼素材(スラブ)と上記した中央部の組成となるように調整した鋼素材(スラブ)とを重ね合わせて、圧延し複層の鋼素材(スラブ)とする方法などが、例示できる。鋼素材(スラブ)の圧延に際しては、通常の厚板圧延法、例えば通常の熱間圧延、制御圧延、制御冷却や焼入れ焼戻等の調質処理など、通常の厚板圧延プロセスがいずれも適用でき、所定の板厚の厚鋼板とすることができる。
表1に示す組成の溶鋼を真空溶解法で溶製し、造塊法で鋼素材とした。これら鋼素材を、表2に示す組み合わせで重ね合わせて、全体で厚みが100mmとなるように調整し、圧延素材(スラブ)とし、熱間圧延により所定の板厚の厚鋼板とした。なお、厚鋼板の板厚が20mmの場合には、中心部となる鋼素材の厚さを50mm、表層部となる鋼素材の厚さを25mmとし、それぞれの鋼素材を重ね合わせたのち溶接にて取り付け、複層の圧延素材(スラブ)とした。なお、厚鋼板の板厚が25mmの場合には、中心部となる鋼素材の厚さを60mm、表層部となる鋼素材の厚さを20mmとした。
これら圧延素材に、加熱温度:1150℃×1hの加熱処理を施したのち、熱間圧延を施し、所定の板厚の厚鋼板とした。なお、圧延終了温度は800℃とし、圧延終了後、空冷または加速冷却処理を施した。なお、加速冷却処理の冷却速度は、25〜50℃/sとし、加速冷却処理の冷却停止温度は400℃として、その後、空冷した。
得られた厚鋼板について、引張試験、衝撃試験、疲労試験を実施し、引張特性、靭性、耐疲労特性を評価した。試験方法は次の通りとした。
(1)引張試験
得られた厚鋼板から、JIS 1 A号(全厚)の引張試験片を採取して、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張強さTSおよび0.2%耐力YSを求めた。
(2)衝撃試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2242の規定に準拠して、表面から板厚方向に1mmの位置が試験片表面となるように、Vノッチ試験片を採取して、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrsを求め、靭性を評価した。
(3)疲労試験
得られた厚鋼板から、溶接継手作製用試験材を採取し、入熱2kJ/mmの炭酸ガス溶接(多層盛)にて突き合わせ継手を作製した。
得られた厚鋼板について、引張試験、衝撃試験、疲労試験を実施し、引張特性、靭性、耐疲労特性を評価した。試験方法は次の通りとした。
(1)引張試験
得られた厚鋼板から、JIS 1 A号(全厚)の引張試験片を採取して、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張強さTSおよび0.2%耐力YSを求めた。
(2)衝撃試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2242の規定に準拠して、表面から板厚方向に1mmの位置が試験片表面となるように、Vノッチ試験片を採取して、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrsを求め、靭性を評価した。
(3)疲労試験
得られた厚鋼板から、溶接継手作製用試験材を採取し、入熱2kJ/mmの炭酸ガス溶接(多層盛)にて突き合わせ継手を作製した。
得られた突き合わせ継手から疲労試験片を採取し、JIS Z 3103に準拠して引張疲れ試験を実施し、106回における疲労強度を求め、疲労亀裂発生特性を評価した。
また、得られた厚鋼板から、CT試験片(W:100mm)を採取して、ASTM E 647に準拠して△K=15MPa√mでの亀裂伝播速度を求め、疲労亀裂伝播特性を評価した。
得られた結果を表3に示す。なお、各部の変態開始温度は、溶接再現熱サイクル法により求め、表2に併記した。なお、付与した溶接再現熱サイクルは最高加熱温度を1400度として800〜500℃の冷却時間を12sとした。
また、得られた厚鋼板から、CT試験片(W:100mm)を採取して、ASTM E 647に準拠して△K=15MPa√mでの亀裂伝播速度を求め、疲労亀裂伝播特性を評価した。
得られた結果を表3に示す。なお、各部の変態開始温度は、溶接再現熱サイクル法により求め、表2に併記した。なお、付与した溶接再現熱サイクルは最高加熱温度を1400度として800〜500℃の冷却時間を12sとした。
本発明例はいずれも、400MPa以上の引張強さTSと、優れた母材靭性を有し、溶接継手としても、高い疲労強度を有するとともに、低い疲労亀裂伝播速度を示し、優れた耐疲労亀裂発生特性および耐疲労亀裂伝播特性を有する厚鋼板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、溶接継手において、耐疲労亀裂発生特性および/または耐疲労亀裂伝播特性が低下している。
Claims (3)
- 板厚方向に、中央部と該中央部を挟む表層部との3層からなる複層鋼板であって、
前記中央部が、質量%で、
C:0.01〜0.20%、 Si:0.01〜0.70%、
Mn:0.50〜2.40%、 P:0.020%以下、
S:0.0070%以下、 Al:0.005〜0.150%
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる範囲内の組成を有し、
前記表層部が、0.5〜10mmの範囲の厚みと、質量%で、
C:0.01〜0.20%、 Si:0.01〜0.70%、
Mn:0.50〜2.40%、 P:0.020%以下、
S:0.0070%以下、 Al:0.005〜0.15%
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる範囲内で、前記中央部とは異なる組成を有し、かつ
前記表層部および前記中央部が、下記(1)式を満足する、溶接熱サイクルにおける変態特性を有することを特徴とする耐疲労特性に優れた厚鋼板。
記
TA<TB ……(1)
ここで、TA:溶接熱サイクルにおける冷却時の表層部の変態開始温度(℃)、
TB:溶接熱サイクルにおける冷却時の中央部の変態開始温度(℃) - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.005〜0.22%、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜4.0%、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜2.0%、W:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%,B:0.0005〜0.0040%の1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の厚鋼板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006051060A JP2007231308A (ja) | 2006-02-27 | 2006-02-27 | 耐疲労特性に優れた厚鋼板 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012072489A (ja) * | 2010-08-31 | 2012-04-12 | Jfe Steel Corp | 耐候性に優れた溶接構造用鋼材 |
JP2021188088A (ja) * | 2020-05-29 | 2021-12-13 | Jfeスチール株式会社 | 溶接部の耐疲労特性に優れた鋼材および溶接継手の製造方法 |
-
2006
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