Cu拡散防止膜に上述したSiC膜またはSiCN膜を用いた従来の溝配線構造についての問題点を項目に分けて説明する。
1.Cu配線上にCu拡散防止膜としてSiN膜を成膜する場合、CVD法による成膜のための反応ガスとしては、SiH4、NH3、およびN2が一般的に用いられる。そのため、SiN膜を成膜する際、CVD装置における成膜のための処理室内にSiH4、NH3、およびN2ガスを導入し、Cu配線が形成された半導体基板の温度、および処理室内圧力の安定化を行う間、Cu配線上にはSiH4によりCuシリサイド層が形成され、Cu配線のエレクトロマイグレーション耐性が向上することになる。
しかし、Cu配線上にCu拡散防止膜としてSiC膜やSiCN膜を成膜する場合、反応ガスとしては有機シラン系ガスであるSiH(CH3)3やSi(CH3)4が広く使われており、SiH4は使用されていない。これらの有機基を含有するSi化合物ガスはSiと有機基の結合エネルギーがSiとHの結合エネルギーよりも大きく、熱分解がSiH4よりも起こりにくい。そのため、Cu配線をSiH(CH3)3またはSi(CH3)4のガス雰囲気中にさらしても、SiH4雰囲気中にさらした場合と比較して、CuとSiとの反応性が低くなる。したがって、Cu配線上にSiC膜やSiCN膜を成膜する場合は、SiN膜を成膜する場合と比較して、成膜のための反応ガスによるCuシリサイド層がCu表面で形成されにくくなる。
また、Cu配線の表面にCuシリサイド層が形成されないと、Cu配線とSiC膜またはSiCN膜との密着性が低下して、Cu配線中のCu結晶粒を安定化できず、Cu配線のエレクトロマイグレーション耐性の劣化を招くことになる。さらに、ストレスマイグレーション耐性も劣化し、上層に形成される保護膜の応力などによりCu配線が断線しやすくなる。
2.Cuシリサイド層は比抵抗がCuよりも高いため配線抵抗が高くなるという問題がある。また、Cuシリサイド層は銅配線の最表面にのみ形成されるため、さらに上層の配線層との接続孔を開口した際、接続孔のエッチングによりCuシリサイド層が除去されてしまうため、エレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションを向上させるためにはCuシリサイド層を十分に厚く形成する必要がある。これによりさらに配線抵抗が上昇してしまうという問題がある。
3.Cu配線をSiH4ガス雰囲気中にさらしてCuシリサイド層を形成する際、Cuの表面が酸化されてCu酸化層が形成されていると、表面のCu酸化層とSiが反応して、Cu、SiおよびOの混合物の異常成長が起こる。この異常成長は、配線抵抗の増大を招くだけでなく、Cu配線上端のCuとバリアメタルの界面付近で多く発生する傾向にあるため、配線間隔が狭い場所では配線同士がショートしてしまう問題が発生する。
4.Cuの防食方法として、Cu酸化層とBTA(ベンゾトリアゾール)を反応させることにより、Cu表面にBTA層を形成して酸化の進行を食い止める方法が一般的に知られている。そのため、CMP法によるCu配線形成後、BTAにより防食処理の工程を追加することでCuの酸化を防止できる。しかし、BTA層が形成されたままではCuとSiH4との反応も抑制されてしまうため、BTA層を除去する工程が必要となる。また、BTA層を除去する工程を導入しても、BTA層除去後にCu配線が大気にさらされると、大気中の酸素とCuとが反応してCu配線の表面にCu酸化層が形成され、Cu酸化層が上述の異常成長の原因となる。
5.Cu酸化層を除去する方法としてはNH3やH2等の還元性ガスを用いたプラズマ処理が一般的に知られている。しかし、このようなプラズマ処理を用いた場合、Cu表面の酸化層は除去可能であるが、Cuの結晶粒界面に沿って深さ方向に形成された酸化層まで除去することは困難である。また、プラズマ処理の際、Cu配線が加熱されマイグレーションによるヒロックの成長が進むため、Cu配線表面のモホロジーが悪化するという問題が発生する。
次に、ダマシン構造を形成する際の問題点について説明するために、VF法によるデュアルダマシン形成方法について簡単に説明する。図35〜図37はVF法を用いたデュアルダマシン形成方法による二層配線の製造工程を示す断面図である。
最初に第1の銅配線330を形成後、Cu拡散防止膜SiCN膜311、異層間絶縁膜であるSiO2膜312、エッチングストッパー膜であるSiCN膜313、第2の配線層間絶縁膜であるSiO2膜317を成膜し、先にビア部のフォトレジスト工程を行う(図35(a))。次に、第1の銅配線330上に設けられた拡散防止膜であるSiCN膜311上までエッチングを行い、ビアのフォトレジスト314をO2ドライアッシングおよびウェット剥離などで除去した後(図35(b))、反射防止膜325をビア中に埋め込み、第2溝配線用のフォトレジスト工程を行い(図36(c))、第2溝配線をエッチングする。その後、第2溝配線のフォトレジストをO2ドライアッシングおよびウェット剥離などで除去する(図36(d))。続いて、エッチバックにより第1の銅配線330上のSiCN膜311を除去し、下層配線との接続孔を形成する(図36(e))。そして、窒化タンタル(TaN)上にタンタル(Ta)が形成された積層膜(以下、「Ta/TaN膜」と表記する)、およびCu膜321をビア、および第2溝配線のための溝に同時に埋め込み(図37(f))、CMP法によりSiO2膜317上のTa/TaN膜320およびCu膜321を除去して第2の銅配線332を形成し、SiCN膜322を形成する(図37(g))。
6.上述のVF法の場合、図35(b)に示したように、ビアのエッチング工程で、拡散防止膜であるSiCN膜311上までエッチングを行うが、ビアの開口径や開口率およびエッチング選択比の問題などから、すべてのビアにおいて拡散防止膜であるSiCN膜311でビアのエッチングを止めることは非常に困難である。このため、ビアエッチングの際に、拡散防止膜であるSiCN膜311が抜けてしまったビアでは、ビア底の銅配線が、ビアと第2溝配線のエッチングによるO2ドライアッシングおよびウェット剥離液に曝されることになり、その表面が酸化および腐食され、銅の酸化層331を形成し、ビアの歩留まり低下、およびビアEMに代表される信頼性の低下を招くことになる。
さらに、第2溝配線のフォトリソグラフィー工程で寸法ズレや位置ズレによるやり直しであるリワークを行った場合、リワークのたびに、ビア底の銅配線がO2ドライアッシング、およびウェット剥離液に曝され、Cu表面の酸化および腐食が進むことになる。
ここで、第2溝配線のフォトリソグラフィー工程のリワーク回数とビアチェーン歩留まりの関係について説明する。
図38はビアチェーン歩留まりを評価した結果を示すグラフである。なお、評価に使用したビアチェーンは、ビアの不良率を算出するためのものであり、ビアの抵抗値が測定可能な構成である。測定した抵抗値が所定の規格から外れた場合にビアに欠陥があると判断した。
図38に示すように、リワーク回数が増えるとビア内の銅表面の酸化および腐食により、ビアチェーン歩留まりが低下する。このことから、フォトリソグラフィー工程のリワークはビアEMに代表される信頼性の低下を招くことになる。この問題は、VF法に限らず、全てのダマシン配線形成方法においてCu配線上層の絶縁膜をエッチングする際に共通して見られる。
7.通常、銅配線上に成膜した層間絶縁膜のエッチングを行う場合、フォトリソグラフィー工程においては、フォトレジストを露光する際、下層の銅配線の反射による干渉が問題となるため、銅配線からの反射を抑えるための反射防止膜を成膜してからフォトレジストを塗布している。しかし、デュアルダマシン配線を形成する場合、MF法では、反射防止膜を除去する際に下地の絶縁膜がエッチングダメージを受けるため、ビアエッチングのマスク絶縁膜加工や上層溝配線加工のフォトリソグラフィー工程で反射防止膜を使用できない問題がある。また、TF法では、形成された配線溝の下層の絶縁膜をエッチングする際、反射防止膜が配線溝に埋め込まれていると絶縁膜がエッチングできなくなるため、ビアのフォトリソグラフィー工程で反射防止膜を使用できない問題がある。
本発明は上記したような従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、Cu配線などの金属配線について、金属配線と金属拡散防止膜との密着性が向上し、金属配線のエレクトロマイグレーション耐性向上により金属配線寿命が長く、かつ配線抵抗の上昇が抑制された半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された絶縁膜の溝部内に、上面が露出する金属配線を形成する工程と、
前記金属配線上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記金属配線の露出面に金属拡散防止膜を形成する工程と、
を有するものである。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された第1の絶縁膜の溝部内に、上面が露出する第1の金属配線を形成する工程と、
前記第1の金属配線上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記第1の金属配線および前記第1の絶縁膜の露出面に第1の金属拡散防止膜を形成する工程と、
前記第1の金属拡散防止膜上に第2の絶縁膜および第3の絶縁膜を順に形成する工程と、
前記第1の金属配線上面が露出するまで、前記第1の金属拡散防止膜、前記第2の絶縁膜および前記第3の絶縁膜を連通する開孔を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜に、前記開孔につながる第1の溝部を形成する工程と、
前記開孔および前記第1の溝部に金属を埋め込み、前記第1の溝部内に形成される第2の金属配線と前記第1の金属配線とを接続するためのビアプラグを形成する工程と、
前記第2の金属配線の上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記第2の金属配線の露出面に第2の金属拡散防止膜を形成する工程と、
を有するものである。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された第1の絶縁膜の溝部内に、上面が露出する第1の金属配線を形成する工程と、
前記第1の金属配線上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記第1の金属配線および前記第1の絶縁膜の露出面に第1の金属拡散防止膜を形成する工程と、
前記第1の金属拡散防止膜上に第2の絶縁膜および第3の絶縁膜を順に形成する工程と、
前記第3の絶縁膜を選択的にエッチングして第1の溝部を形成する工程と、
前記第1の金属配線の上面が露出するまで、前記第1の金属拡散防止膜、前記第2の絶縁膜および前記第3の絶縁膜を連通し、かつ前記第1の溝部につながる開孔を形成する工程と、
前記第1の溝部および前記開孔に金属を埋め込み、前記第1の溝部内に形成される第2の金属配線と前記第1の金属配線とを接続するためのビアプラグを形成する工程と、
前記第2の金属配線の上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記第2の金属配線の露出面に第2の金属拡散防止膜を形成する工程と、
を有するものである。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された第1の絶縁膜の溝部内に、上面が露出する第1の金属配線を形成する工程と、
前記第1の金属配線上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記第1の金属配線および前記第1の絶縁膜の露出面に第1の金属拡散防止膜を形成する工程と、
前記第1の金属拡散防止膜上に第2の絶縁膜およびエッチングストッパー膜を順に形成する工程と、
前記第2の絶縁膜が露出するまで前記エッチングストッパー膜を選択的にエッチングして第1の開孔を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜および前記エッチングストッパー膜の露出面上に第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜に、前記第1の開孔と幅が同等以上で、前記第1の開孔につながる第1の溝部を形成する工程と、
前記第1の開孔を含む位置に、前記第1の金属配線が露出するまで、前記第1の金属拡散防止膜、前記第2の絶縁膜および前記第3の絶縁膜を連通する第2の開孔を形成する工程と、
前記第1の溝部、前記第1の開孔および前記第2の開孔に金属を埋め込み、前記第1の溝部内に形成される第2の金属配線と前記第1の金属配線とを接続するためのビアプラグを形成する工程と、
前記第2の金属配線の上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記第2の金属配線の露出面に第2の金属拡散防止膜を形成する工程と、
を有するものである。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された第1の絶縁膜の溝部内に、上面が露出する第1の金属配線を形成する工程と、
前記第1の金属配線上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記第1の金属配線および前記第1の絶縁膜の露出面に第1の金属拡散防止膜を形成する工程と、
前記第1の金属拡散防止膜上に第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の金属配線が露出するまで前記第1の金属拡散防止膜および前記第2の絶縁膜を連通する開孔を形成する工程と、
前記開孔に金属を埋め込んでビアプラグを形成する工程と、
前記ビアプラグおよび前記第2の絶縁膜の露出面を覆う第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜が露出するまで前記第3の絶縁膜を選択的にエッチングして、前記ビアプラグとつながる第1の溝部を形成する工程と、
前記第1の溝部に金属を埋め込んで第2の金属配線を形成する工程と、
前記第2の金属配線の上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記第2の金属配線の露出面に第2の金属拡散防止膜を形成する工程と、
を有するものである。
この場合、前記ビアプラグにシリコンを拡散させることとしてもよい。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された第1の絶縁膜の溝部内に設けられた第1の金属配線と、前記第1の金属配線を覆う第2の絶縁膜上に設けられた第2の金属配線と、前記第1の金属配線と前記第2の金属配線とを接続するためのビアプラグとを有する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板上に形成された第1の絶縁膜の溝部内に、上面が露出する第1の金属配線を形成する工程と、
前記第1の金属配線および前記第1の絶縁膜の露出面に第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の金属配線が露出するまで前記第2の絶縁膜を選択的にエッチングして開孔を形成する工程と、
前記開孔に金属を埋め込んで前記ビアプラグを形成する工程と、
前記ビアプラグ上面からシリコンを拡散させる工程と、
前記ビアプラグの露出面を覆う前記第2の金属配線を形成する工程と、
を有するものである。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記金属配線の配線全体にシリコンを拡散させることとしてもよく、前記金属配線はシリコン濃度が上面で最も高いこととしてもよく、前記金属配線はシリコン濃度が8atoms%以下であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記金属配線は、金属シリサイド層を含有しないシリコン含有金属配線であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第1の金属配線の配線全体にシリコンを拡散させることとしてもよく、前記第1の金属配線はシリコン濃度が上面で最も高いこととしてもよく、前記第1の金属配線はシリコン濃度が8atoms%以下であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第1の金属配線は、金属シリサイド層を含有しないシリコン含有金属配線であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第2の金属配線の配線全体にシリコンを拡散させることとしてもよく、前記第2の金属配線はシリコン濃度が上面で最も高いこととしてもよく、前記第2の金属配線はシリコン濃度が8atoms%以下であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第2の金属配線は、金属シリサイド層を含有しないシリコン含有金属配線であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記ビアプラグはシリコン濃度が上面で最も高いこととしてもよく、前記ビアプラグはシリコン濃度が8atoms%以下であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記ビアプラグは、金属シリサイド層を含有しないシリコン含有金属ビアプラグであることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜は、SiO2、SiOC、および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよく、前記絶縁膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜は、下層膜、および該下層膜上に形成される上層膜からなる積層膜を有し、
前記下層膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを有し、
前記上層膜はSiO2を有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第1の絶縁膜は、SiO2、SiOC、および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよく、前記第1の絶縁膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第1の絶縁膜は、下層膜、および該下層膜上に形成される上層膜からなる積層膜を有し、
前記下層膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを有し、
前記上層膜はSiO2を有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第3の絶縁膜は、SiO2、SiOC、および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよく、前記第3の絶縁膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第3の絶縁膜は、下層膜、および該下層膜上に形成される上層膜からなる積層膜を有し、
前記下層膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを有し、
前記上層膜はSiO2を有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記金属拡散防止膜は、SiCN膜、SiC膜、SiOC膜および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよく、前記第1の金属拡散防止膜は、SiCN膜、SiC膜、SiOC膜および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよく、前記第2の金属拡散防止膜は、SiCN膜、SiC膜、SiOC膜および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第2の絶縁膜は、SiO2、SiOC、および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよく、前記第2の絶縁膜は、梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第2の絶縁膜は、下層膜、および該下層膜上に形成される上層膜からなる積層膜を有し、
前記下層膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを有し、
前記上層膜はSiO2を有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記梯子型水素化シロキサンはL−Oxであることとしてもよく、前記梯子型水素化シロキサンは膜密度が1.50g/cm3以上1.58g/cm3以下であることとしてもよく、前記梯子型水素化シロキサンは633nm波長での膜の屈折率が1.38以上1.40以下であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第2の絶縁膜はエッチングストッパー膜を有することとしてもよい。この場合、前記エッチングストッパー膜は、SiCN膜、SiC膜、SiOC膜および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記絶縁膜の溝部に前記金属配線を形成する工程の後、前記金属配線上面に酸化防止層を形成し、該酸化防止層が酸素に曝された後、密閉された処理室内で、前記酸化防止層を加熱することにより除去し、前記金属配線を酸素に曝すことなく、前記金属配線上面からシリコンを拡散させることとしてもよい。この場合、前記シリコンを拡散させる工程の後、前記金属配線を酸素に曝すことなく、前記金属拡散防止膜を形成することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第1の絶縁膜の溝部に前記第1の金属配線を形成する工程の後、前記第1の金属配線上面に酸化防止層を形成し、該酸化防止層が酸素に曝された後、密閉された処理室内で、前記酸化防止層を加熱することにより除去し、前記第1の金属配線を酸素に曝すことなく、前記第1の金属配線上面からシリコンを拡散させることとしてもよい。この場合、前記シリコンを拡散させる工程の後、前記第1の金属配線を酸素に曝すことなく、前記第1の金属拡散防止膜を形成することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第1の溝部に前記第2の金属配線を形成する工程の後、前記第2の金属配線上面に酸化防止層を形成し、該酸化防止層が酸素に曝された後、密閉された処理室内で、前記酸化防止層を加熱することにより除去し、前記第2の金属配線を酸素に曝すことなく、前記第2の金属配線上面からシリコンを拡散させることとしてもよい。この場合、前記シリコンを拡散させる工程の後、前記第2の金属配線を酸素に曝すことなく、前記第2の金属拡散防止膜を形成することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記酸化防止層は、
ベンゾトリアゾールおよびベンゾトリアゾール誘導体のうち少なくとも一つを含む膜であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記酸化防止層を除去する工程の温度が250℃以上400℃以下であることとしてもよく、前記シリコンを拡散させる工程の温度が250℃以上400℃以下であることとしてもよい。この場合、前記酸化防止層を除去する工程と前記シリコンを拡散させる工程の温度が等しいこととしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記シリコンを拡散させる工程で、SiH4、Si2H6およびSiH2Cl2のガスのうち少なくとも一つを用いることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記金属配線が銅および銅の合金のうち少なくとも一つを含有することとしてもよい。この場合、前記金属配線が水素を含有することとしてもよい。さらに、前記金属配線が炭素を含有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記金属配線がバリアメタルを有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第1の金属配線が銅および銅の合金のうち少なくとも一つを含有することとしてもよい。この場合、前記第1の金属配線が水素を含有することとしてもよい。さらに、前記第1の金属配線が炭素を含有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第1の金属配線がバリアメタルを有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第2の金属配線および前記ビアプラグが銅および銅の合金のうち少なくとも一つを含有することとしてもよい。この場合、前記第2の金属配線および前記ビアプラグが水素を含有することとしてもよい。さらに、前記第2の金属配線および前記ビアプラグが炭素を含有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記第2の金属配線および前記ビアプラグがバリアメタルを有することとしてもよい。
さらに、上記本発明の半導体装置の製造方法において、前記銅の合金は、Al、Ag、W、Mg、Be、Zn、Pd、Cd、Au、Hg、Pt、Zr、Ti、Sn、Ni、およびFeのうち少なくとも一つを含有することとしてもよく、前記バリアメタルは、Ti、TiN、TiSiN、Ta、TaN、およびTaSiNのうち少なくとも一つを有することとしてもよい。
上記目的を達成するための本発明の半導体装置は、半導体基板上に形成された第1の絶縁膜中の溝部内に設けられ、シリコンが拡散された第1の金属配線と、
前記第1の金属配線の露出面を覆う第1の金属拡散防止膜と、
を有する構成である。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第1の金属配線の上面に接続され、前記第1の金属拡散防止膜、および前記第1の金属拡散防止膜上に形成された第2の絶縁膜の中に設けられたビアプラグと、
前記ビアプラグと接続され、前記第2の絶縁膜上に形成された第3の絶縁膜中に設けられ、シリコンが拡散された第2の金属配線と、
前記第2の金属配線の露出面を覆う第2の金属拡散防止膜と、
を有することとしてもよい。
この場合、前記ビアプラグと前記第2の金属配線との間に、該ビアプラグと該第2の金属配線とを分離するバリアメタルを有することとしてもよく、前記ビアプラグにシリコンが拡散されていることとしてもよい。
また、本発明の半導体装置は、半導体基板上に形成された第1の絶縁膜中の溝部内に設けられた第1の金属配線と、
前記第1の金属配線の上面に接続され、前記第1の絶縁膜上に形成された第2の絶縁膜に設けられ、シリコンが拡散されたビアプラグと、
前記ビアプラグと接続され、前記第2の絶縁膜上に形成された第3の絶縁膜中に設けられた第2の金属配線と、
を有する構成である。
この場合、前記ビアプラグと前記第2の金属配線とが一体であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、シリコンが前記ビアプラグ全体に拡散されていることとしてもよく、前記ビアプラグはシリコン濃度が上面で最も高いこととしてもよく、前記ビアプラグはシリコン濃度が8atoms%以下であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記ビアプラグは、金属シリサイド層を含有しないシリコン含有金属ビアプラグであることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、シリコンが前記第1の金属配線の配線全体に拡散されていることとしてもよく、前記第1の金属配線はシリコン濃度が上面で最も高いこととしてもよく、前記第1の金属配線はシリコン濃度が8atoms%以下であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第1の金属配線は、金属シリサイド層を含有しないシリコン含有金属配線であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、シリコンが前記第2の金属配線の配線全体に拡散されていることとしてもよく、前記第2の金属配線はシリコン濃度が上面で最も高いこととしてもよく、前記第2の金属配線はシリコン濃度が8atoms%以下であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第2の金属配線は、金属シリサイド層を含有しないシリコン含有金属配線であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第1の金属拡散防止膜は、SiCN膜、SiC膜、SiOC膜および有機膜のうち少なくとも一つを有することとしてもよく、前記第2の金属拡散防止膜は、SiCN膜、SiC膜、SiOC膜および有機膜のうち少なくとも一つを有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第1の絶縁膜は、SiO2、SiOC、および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよく、前記第1の絶縁膜は、梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第1の絶縁膜は、下層膜、および該下層膜上に形成される上層膜からなる積層膜を有し、
前記下層膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを有し、
前記上層膜はSiO2を有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第2の絶縁膜は、SiO2、SiOC、および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよく、前記第2の絶縁膜は、梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第2の絶縁膜は、下層膜、および該下層膜上に形成される上層膜からなる積層膜を有し、
前記下層膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを有し、
前記上層膜はSiO2を有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第3の絶縁膜は、SiO2、SiOC、および有機膜のうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよく、前記第3の絶縁膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを含んでいることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第3の絶縁膜は、下層膜、および該下層膜上に形成される上層膜からなる積層膜を有し、
前記下層膜は梯子型水素化シロキサンおよびポーラス梯子型水素化シロキサンのうち少なくとも一つを有し、
前記上層膜はSiO2を有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記梯子型水素化シロキサンはL−Oxであることとしてもよく、前記梯子型水素化シロキサンは膜密度が1.50g/cm3以上1.58g/cm3以下であることとしてもよく、前記梯子型水素化シロキサンは633nm波長での膜の屈折率が1.38以上1.40以下であることとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第1の金属配線が銅および銅の合金のうち少なくとも一つを含有することとしてもよい。この場合、前記第1の金属配線が水素を含有することとしてもよい。さらに、前記第1の金属配線が炭素を含有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第1の金属配線がバリアメタルを有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第2の金属配線および前記ビアプラグが銅および銅の合金のうち少なくとも一つを含有することとしてもよい。この場合、前記第2の金属配線および前記ビアプラグが水素を含有することとしてもよい。さらに、前記第2の金属配線および前記ビアプラグが炭素を含有することとしてもよい。
また、上記本発明の半導体装置において、前記第2の金属配線および前記ビアプラグがバリアメタルを有することとしてもよい。
さらに、上記本発明の半導体装置において、前記銅の合金は、Al、Ag、W、Mg、Be、Zn、Pd、Cd、Au、Hg、Pt、Zr、Ti、Sn、Ni、およびFeのうち少なくとも一つを含有することとしてもよく、前記バリアメタルは、Ti、TiN、TiSiN、Ta、TaN、およびTaSiNのうち少なくとも一つを有することとしてもよい。
(作用)
上記のように構成される本発明では、金属配線にシリコンを拡散させているため、シリコンを拡散させない場合に比べて、金属拡散防止膜との密着性がよくなる。また、シリコンを拡散させるため、製造工程中におけるマイグレーションが抑制される。また、配線のエレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーション耐性が向上する。さらに、シリコンが拡散された金属配線は酸化耐性が高いため、エッチング時における配線表面の劣化が抑制される。
また、本発明では、ビアプラグ内にもシリコンを拡散させているため、製造工程中におけるマイグレーション抑制効果がさらに向上する。また、配線のエレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションの耐性がさらに向上する。
また、本発明では、金属配線上面でシリコン濃度が高いため、上層となる金属拡散防止膜との密着性がより向上する。
また、本発明では、金属配線中のシリコン濃度が8atoms%以下であるため、シリサイド層より配線抵抗の大きくなるのが抑制される。
また、本発明では、金属配線表面に形成された酸化防止層を除去してから金属拡散防止膜を金属配線上に形成するまで金属配線を酸素雰囲気に曝すことがないため、配線表面だけでなく金属の結晶粒界面に沿って発生する金属の酸化が抑制される。そのため、配線表面だけでなく結晶粒に沿った深さ方向に対してもシリコンを拡散でき、配線底部までシリコンを含有したシリコン含有金属配線を形成できる。
また、本発明では、酸化防止層の除去のための加熱処理を250℃から400℃の温度範囲で行っているため、プラズマ処理の場合のプラズマにより加熱された配線表面のみがシリコンと反応してシリサイド層が形成されることを防止できる。
また、本発明では、シリコンの拡散処理を250℃から400℃の温度範囲で行っているため、金属配線表面にシリサイド層が形成されることなく金属配線にシリコンが拡散される。
また、本発明では、酸化防止層を除去する工程とシリコンを拡散させる工程の温度が等しいため、温度条件が異なる場合に必要な、温度安定までの待機時間を低減でき、酸化層除去からシリコン拡散までのスループットが向上する。
また、本発明では、同じ層の配線同士を絶縁するための絶縁膜に、梯子型水素化シロキサンまたはポーラス梯子型水素化シロキサンを含んでいるので、配線間容量を酸化膜より低減できる。また、膜密度が1.50g/cm3以上1.58g/cm3以下、または、633nm波長での膜の屈折率が1.38以上1.40以下であると誘電率がさらに低くなる。
また、本発明では、金属拡散防止膜にSiCN膜、SiC膜、SiOC膜および有機膜のうち少なくとも一つ用いているため、シリコンが拡散された金属配線と金属拡散防止膜の密着性がよい。
また、本発明では、エッチングストッパー膜を用いているため、オーバーエッチングを防ぎ、エッチング処理毎に形成される溝の形状が一定になる。
また、本発明では、異なる配線層を絶縁するための絶縁膜に、SiO2、SiOCおよび有機膜のうち少なくとも一つ用いているため、窒化膜に比べて配線間容量を低減できる。
また、本発明では、エッチングストッパー膜に、SiCN膜、SiC膜、SiOC膜および有機膜のうち少なくとも一つ用いているため、窒化膜に比べて配線間容量を低減できる。
また、本発明では、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール誘導体を含む膜を用いているため、金属の腐食防止効果が高い。
また、本発明では、金属配線が銅および銅の合金のうち少なくとも一つを含有する配線であるため、配線抵抗が小さくなり、またエレクトロマイグレーション耐性が向上する。
さらに、本発明では、金属配線が水素を含有しているため、金属配線の酸化を抑制し、金属シリサイドの析出を防止する。
本発明は以上説明したように構成されているので、以下に記載する効果を奏する。
本発明によれば、シリコン含有金属配線と金属拡散防止膜の密着性がよいため、金属配線の金属粒子を安定化して金属粒子が移動するのを防ぎ、エレクトロマイグレーション耐性が向上する。また、上層に形成される保護膜などの応力による金属配線の断線を防ぎ、ストレスマイグレーションの耐性が向上する。したがって、配線寿命の長い金属配線を形成できる。
また、本発明のように、配線全体にシリコンを拡散させシリコン含有金属配線を形成することにより、最表面のみにシリサイド層を形成する場合より、金属配線の金属粒子の移動を抑制する効果が向上し、かつ、シリサイド層を形成するよりも配線全体のシリコン含有量を低くできるため配線抵抗の上昇を抑制できる。
また、配線表面だけではなく結晶粒に沿った深さ方向に対してもシリコンを拡散させることができるため、配線底部までシリコンを含有したシリコン含有金属配線を形成できる。
また、本発明のシリコン含有銅配線は、エッチング工程における銅の酸化および腐食が防止できる。さらにCuシリサイド層を形成した場合と比較すると膜中にシリコンを拡散させているため、配線表面がエッチングされても、銅の酸化防止効果が高く、エッチングによる配線の劣化を抑制できるため製品の歩留まりを向上できる。
また、本発明のシリコン含有銅配線は、リソグラフィー工程における反射防止効果が高いことから、反射防止膜を用いることが出来ないリソグラフィー工程においても、製品歩留まり、信頼性を向上することができる。
さらに、金属配線にCu配線を用いることにより、配線サイズが縮小化されても、配線抵抗の上昇が抑制される。
(第1実施例)
本発明の第1実施例の半導体装置の構成について説明する。
図1は本発明の半導体装置の構造を示す断面図である。
図1に示すように、本実施例の半導体装置は、Cu配線にシリコンが拡散されたシリコン含有銅(Cu)配線8が半導体基板(不図示)上に成膜された下地絶縁膜1上のSiO2絶縁膜2に形成された溝部に設けられた構成である。シリコン含有Cu配線8の側面と底面はTa/TaN膜5に覆われており、シリコン含有Cu配線8の上面には、Cu拡散防止膜であるSiCN膜9、および配線層間の絶縁性確保のためのSiO2層間絶縁膜10が順に形成されている。図1に示すシリコン含有Cu配線8の他、不図示のトランジスタ、ダイオード、抵抗、およびキャパシタなどから半導体装置が構成される。
次に、第1実施例の半導体装置の製造過程において、シリコン含有Cu配線8およびSiCN膜9などの膜形成に用いられる平行平板型プラズマCVD装置について説明する。なお、ここでは、半導体基板上に膜形成する場合で説明する。
図2は第1実施例に用いられる平行平板型プラズマCVD装置の構成の一実施例を模式的に示す断面図である。
上記プラズマCVD装置は、半導体基板100上に成膜処理を行うための処理室30と、処理室30内に載置された半導体基板100の温度を一定に保つためのヒータ32と、半導体基板100を処理室30に搬入し、処理室30から搬出する搬送手段(不図示)と、処理室30内の圧力を一定に保つための排気手段34と、処理室30に複数種類の反応ガスを供給するためのガス供給部36と、処理室30内に高周波を発生させるための高周波発生機42と、ヒータ32、搬送手段(不図示)、排気手段34、ガス供給部36および高周波発生機42を制御するコンピュータ38とを備える構成である。
ガス供給部36は、数種類の反応ガスを供給するための複数のガス配管35、およびガス流量制御手段37を介して処理室30に接続されている。
処理室30には上部平板電極40と下部平板電極41が対向して設けられ、上部平板電極40および下部平板電極41は上記高周波発生機42に接続されている。また、下部平板電極41には上記ヒータ32が内蔵されている。高周波発生機42は、所定の周波数および高周波電力(RFパワー)の高周波を上部平板電極40と下部平板電極41の間に発生させる。
上記構成のプラズマCVD装置により、例えば、SiCN膜9を形成する場合、下部平板電極41上に載置された半導体基板100をヒータ32により所望の温度にし、反応ガスの種類および流量を調節して処理室30内を所望のガス雰囲気で所望の処理圧力にし、所望の高周波のRFパワーを印加することで処理室30内に反応ガスのプラズマを発生させて、半導体基板100上にSiCN膜9を形成する。
なお、上記プラズマCVD装置において、シリコン含有Cu配線8形成のためのシリコン拡散、およびSiCN膜9などの膜形成だけでなく、上記ガス雰囲気、処理圧力、処理温度、およびRFパワーなどの処理条件を調節することにより、半導体基板100上に形成された膜を除去することも可能となる。半導体基板100上に形成された膜の除去を可能にするため、上記プラズマCVD装置は半導体基板100を一枚ずつ処理する枚様式タイプである。
次に、上記プラズマCVD装置を用いた、第1実施例の半導体装置の製造方法について説明する。
図3は第1実施例の半導体装置の製造工程手順を示す断面図である。
トランジスタおよびキャパシタなどの半導体素子が形成された半導体基板(不図示)上の下地絶縁膜1上にプラズマCVD法により膜厚500nmのSiO2絶縁膜2を成膜する。成膜したSiO2絶縁膜2上にフォトレジスト3を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて、フォトレジスト3に溝配線用レジストパターン4を形成する(図3(a))。
次に、ドライエッチング技術により、溝配線用レジストパターン4からSiO2絶縁膜2をエッチングして、SiO2絶縁膜2に溝配線用パターンを形成する。その後、酸素プラズマ処理を行うO2ドライアッシングと、レジスト残渣除去のためのウェット剥離とによりフォトレジスト3を除去する。
次に、図3(b)に示すように、露出した下地絶縁膜1、およびSiO2絶縁膜2上に、バリアメタルとしてTa/TaN膜5を膜厚30nmで成膜し、成膜したTa/TaN膜5上に、電解メッキ法の陰極側下地層となるCu層を膜厚100nmでスパッタリング法により成膜する。その後、電解メッキ法によりCu層6を溝配線用パターンに埋め込んでから、結晶化のために400℃の熱処理を行う。
続いて、CMP法によりSiO2絶縁膜2上のCu層6とTa/TaN膜5を除去して、Cu配線7を形成する。CMP法処理の後、Cu配線7上面に付着した砥粒を洗浄処理により除去すると、洗浄処理に用いられた水によりCu配線7の上面にCu酸化層が形成される。その後、Cu酸化層露出面をBTAの1%希釈溶液にさらすと、BTAとCu酸化層が反応して酸化防止層となるBTA層11が形成される(図3(c))。
なお、BTA層11の下層に未反応のCu酸化層が残る場合もあるが、BTA層11を形成する前に、シュウ酸等によりCu酸化層を除去することによりCu酸化層を数nm以下に制御できる。本実施例では、図に示すように、Cu配線7上にBTA層11が形成された場合で説明する。
次に、Cu配線7上のBTA層11を熱分解により除去するため、上記プラズマCVD装置で、処理温度250〜400℃、N2ガス流量100〜5000sccm、処理圧力20Torr以下の条件で2分間、熱処理を行う。
次に、Cu酸化層が除去されたCu配線7の露出面を酸素にさらすことなく、上記プラズマCVD装置内において、SiH4ガス流量10〜500sccm、N2ガス流量100〜5000sccm、処理圧力20Torr以下の条件でCu配線7に120秒間熱処理を行い、シリコン含有Cu配線8を形成する。ここで、シリコン含有Cu配線8を形成する際、SiH4の熱処理条件によってはSiO2絶縁膜2上にSiが析出して、析出したSiがCu配線7間の短絡を起こす可能性がある。そのため、シリコン含有Cu配線8形成後、シリコン含有Cu配線8の露出面を酸素にさらすことなく、上記プラズマCVD装置内において、NH3ガス流量50〜1000sccm、N2ガス流量100〜5000sccm、処理圧力20Torr以下、RFパワー50〜500Wの条件で3秒間プラズマ処理を行い、シリコン含有Cu配線8およびSiO2絶縁膜2の表面に析出したSiを窒化する。
次に、上記窒化処理の後、シリコン含有Cu配線8を酸素にさらすことなく、上記プラズマCVD装置内で、SiH(CH3)3、NH3、およびHeの反応ガスを用いたプラズマCVD法により、Cu拡散防止膜としてSiCN膜9を膜厚50nmで、表面を窒化したシリコン含有Cu配線8およびSiO2絶縁膜2の上に成膜する。
その後、上記プラズマCVD装置により、層間絶縁膜としてSiO2層間絶縁膜10を膜厚500nmでSiCN膜9上に成膜して、シリコン含有Cu配線8上の層間絶縁膜を形成する。(図3(d))。
なお、上記シリコン含有Cu配線8の形成については、原料ガスとしてSiH4を用いたが、Si2H6やSiH2Cl2といった無機シランガスであればよく、かつO2を含まないガス雰囲気中で、処理温度250℃以上400℃以下、処理圧力20Torr以下にて行えばよい。
また、Cu配線7にシリコンが拡散されているため、上層のCu拡散防止膜との密着性がよくなる。なお、Cu拡散防止膜との密着性をより向上させるために、シリコン含有Cu配線8のシリコン濃度が配線上面で最も高くなるようにすることが望ましい。また、配線抵抗が大きくなるのを抑制するために、シリコン含有Cu配線8中のシリコン濃度を8atoms%以下にすることが望ましい。
ここで、Cuシリサイドとシリコン含有Cu配線の違いについて説明する。
図4はシリコンとCuの状態を示す相図である。図4に示す、CuとSiとの相図からCuとSiの比率が92:8以下のSi含有量ではCuシリサイドが形成されず、シリコン含有Cu層が形成される。このシリコン含有Cu層による配線がシリコン含有Cu配線となる。
次に、Cuシリサイドの形成方法とシリコン含有Cu膜の形成方法の違いについて説明する。
Cuシリサイドの形成方法は上記特開2000―150517号公報に、以下のように開示されている。この公報には、半導体集積回路装置の製造方法として、(a)半導体基板上に形成された層間絶縁膜に溝パターンを形成する工程と、(b)前記層間絶縁膜の上層にバリア層およびCu膜を順次形成する工程と、(c)前記Cu膜の表面および前記バリア層の露出した表面を化学的機械研磨法によって平坦化し、前記溝パターンに前記Cu膜および前記バリア層を埋め込む工程と、(d)0.1Torr以下の減圧状態においてシラン系ガス雰囲気中で半導体基板に熱処理を施し、前記Cu膜の表面をシリサイド化する工程とを有することが記載されている。この方法によりCuシリサイドを容易に形成できる。
一方、上記Cuシリサイドに対してCu中におけるシリコン濃度が8atoms%以下となるシリコン含有Cu膜を、上記公報に開示された方法で形成することは困難である。上述したように、本発明におけるシリコン含有Cu膜形成方法は、特開2000−150517号公報の上記(a)〜(c)の工程の後、(d)’Cu膜の表面に酸化防止層を形成する工程と、(e)’熱処理を行い酸化防止層を除去する工程と、(f)’酸化雰囲気に曝さずに減圧状態でシラン系ガス雰囲気中で半導体基板に熱処理を施し、上記Cu膜をシリコン含有Cu膜にする工程とを有することを特徴とする。以下に、上記(e)’と(f)’の工程の処理条件について詳細に説明する。なお、シラン系ガスとしてSiH4を用い、SiH4ガスによる処理をSiH4処理と称する。
図5に酸化防止層除去とSiH4処理の処理条件についての実験の結果を示す。図5(a)はCuシリサイド析出の熱処理温度依存性を示すグラフであり、図5(b)はBTA脱離の熱処理温度依存性を示すグラフであり、図5(c)はCu膜へのシリコン拡散の熱処理温度依存性を示す表である。
図5(a)のグラフは、Cu膜の酸化防止層としてCu膜上にBTAを形成した場合(●印)と、BTAを形成しない場合(□印)について、CVD装置の処理室となるチャンバー内で酸化防止層を除去するための熱処理を行い、さらにSiH4処理を行った後の微細Cu配線部のCuシリサイド析出数を示している。実験ではSiH4処理に複数の温度条件を設けた。温度条件は、温度200℃から450℃の範囲について、BTAを形成したサンプルでは11条件であり、BTAを形成しなかったサンプルでは4条件であった。Cuシリサイド析出数の計測は、面積約500μm□の観察エリアを光学顕微鏡で行った。グラフの横軸はSiH4処理の温度であり、縦軸はCuシリサイド析出数である。
図5(a)に示すように、BTAを形成した場合、SiH4処理の温度が400℃以下でCuシリサイドの析出は起こらず、シリコン含有Cu膜を形成できた。そして、425℃以上ではCu配線上面で部分的にCuシリサイド析出物が発生し、450℃ではCuシリサイド析出物が2000個以上発生してしまった。したがって、BTAを用いる場合には、シラン系ガスにCu膜を曝すときの温度は400℃以下が好ましい。
一方、BTAを形成しなかった場合、SiH4処理の温度が250℃でもCuシリサイドが析出してしまった。そのため、酸化防止層をCu膜の上に形成しなければ、SiH4処理の温度が250℃以上でCuシリサイドが形成されることがわかった。
図5(b)は、Cu膜上にBTAが形成されたサンプルに熱処理をかけながら、API−MS法によりBTAに相当する質量数119の昇温脱離スペクトルを測定した結果を示すグラフである。グラフの横軸は処理温度であり、縦軸は脱離強度を示す。
図5(b)に示すように、処理温度を上げていくと、BTAの脱離は180℃から始まり、250℃で脱離強度が最大となるピークを持ち、270℃以上でそのピークが下がり始める。この結果からBTAの脱離が始まる180℃以上のSiH4処理でCu膜中にシリコンが拡散するか否かを確認したので、以下に説明する。
図5(c)はCu膜中のシリコン含有の有無を示す表である。図5(c)に示すように、図5(b)に示したAPI−MS(Atomospheric Pressure Ion−Mass Spectroscopy)法による測定結果にほぼ対応して、処理温度200℃と225℃ではCu膜中でのシリコンの含有を確認できなかったが、250℃以上でCu膜中のシリコンの含有を確認できた。
上述の実験結果から、温度250℃以上の熱処理であればBTAを充分に脱離させることができ、温度250℃以上400℃以下のSiH4処理であればCuシリサイドが析出せずに、シリコンをCu膜中に拡散させることが可能である。
したがって、酸化防止層にBTAを用いた場合、好ましくは、特開2000−150517号公報の上記(a)〜(c)の工程の後、(d)’Cu膜の表面にBTA層を形成する工程と、(e)’CVD装置のチャンバー内で温度250℃以上400℃以下で熱処理を行って酸化防止層を除去する工程と、(f)’酸化防止層除去工程と同じ温度で酸化雰囲気に曝さずに減圧状態でシラン系ガス雰囲気中で半導体基板に熱処理を施すことにより、Cu膜をシリコン含有Cu膜にする工程とを有する。そして、(e)’と(f)’の工程の温度を等しくすれば、温度条件が異なる場合に必要な、温度安定までの待機時間を低減でき、酸化層除去からシリコン拡散までのスループットが向上する。
なお、ここではデータとして示さなかったがBTAを用いた場合、SiH4処理前に還元性ガスを用いたプラズマ処理を行うと、プラズマにより加熱された配線表面のみがシリコンと反応して、よりCuシリサイド異常析出が形成されてしまい好ましくない。また、SiH4ガス処理後に還元性ガスを用いたプラズマ処理をすることはCuシリサイド析出とは関係がないので問題はない。
図3に示した製造工程手順において、シリコン含有Cu配線8形成後、シリコン含有Cu配線8およびSiO2絶縁膜2の表面に析出したSiをプラズマ処理により窒化しているが、HeガスまたはArガスを用いたプラズマ処理により表面をエッチングしてSiの析出を除去するSiエッチングを行ってもよく、Siの析出がなければ上記窒化処理および上記Siエッチング処理を省略してもよい。
また、Cu拡散防止膜としてSiCN膜9を用いたが、SiC膜、または有機膜でも良い。有機膜は、例えば、プラズマCVD法により形成可能なテフロン系有機高分子膜およびアモルファスカーボン膜である。
また、シリコン含有Cu配線8に酸化防止効果もあるため、Cu拡散防止膜として、SiC膜およびSiCN膜の代わりにSiOC膜などのOを含む絶縁膜を用いても良い。
また、Cu配線7表面のBTA層11を除去するための熱処理をN2ガス雰囲気で行っているが、反応ガスにNH3、H2、He、ArおよびSiH4のうち少なくとも一つのガスを含み、かつO2ガスを含まない雰囲気による熱処理であればよい。さらに、いずれのガスも流さずに真空下における熱処理でもよい。この熱処理の際、温度250℃以上400℃以下、圧力20Torr以下であれば、BTA層11を除去可能である。
本実施例では、Cu配線7上のCu酸化層露出面に酸化防止層を形成した後、密閉された処理室で、酸化防止層の除去からCu拡散防止膜形成までの処理を行っており、Cu配線およびシリコン含有Cu配線を酸素にさらすことがないため、Cu配線およびシリコン含有Cu配線の上面に酸化層が形成されることがない。そのため、シリコン含有Cu配線8とCu拡散防止膜の密着性がよくなり、シリコン含有Cu配線8中のCu粒子が移動するのを防ぎ、エレクトロマイグレーション耐性が向上する。また、上層に形成される保護膜などの応力によるシリコン含有Cu配線8の断線を防ぎ、ストレスマイグレーションの耐性が向上する。したがって、配線寿命の長い配線を形成できる。
なお、上記Cu層6は水素含有のCu層である方が好ましい。それは、Cu層へのCMP処理であるCu−CMP処理の後に、バリア絶縁膜となるSiCN膜9の成膜前のSiH4ガスの曝露中に水素がCu配線中から脱離することが望ましいからである。その理由について、詳細に説明する。
SiCN膜9の成膜装置であるプラズマCVD装置内に微量の残留酸素があると、Cu配線中のグレイン界面で酸化が進み、Cu−CMP処理後にSiH4ガスに曝露する際、Cu配線表面に不均一に形成された金属酸化物がCuシリサイドの析出物を発生させやすくしてしまう。これに対して、Cu層が水素を含有していれば、Cu−CMP処理後のSiCN膜成膜前のBTA除去やSiH4処理で、プラズマCVD装置中に微量の残留酸素があっても、Cu配線から水素が脱離するためCu配線中のグレイン界面の酸化が進行せず、Cu配線表面状態が均一になり、Cuシリサイドの析出物が発生せず、シリコン含有Cu配線が形成される。このことは、水素を含有するCu層に限らず、水素含有Cu合金層であっても同様である。Cu層中における水素の含有については、TDS(昇温脱離ガス法)により質量数2のガスの脱離として確認できた。また、SIMS(二次イオン質量分析)によりCu層中の水素を分析すると、バックグランドレベルよりも2桁以上大きいカウント数を確認した。
また、厳密にいえば、Cu層6の埋設性向上のため、Cu層6形成の際に有機成分を添加(100ppm以下)したCuめっき液を使用している。そのため、Cu層6中には微量の炭素が含有されており、上記Cu層6は炭素含有Cu層であってもよい。
(第2実施例)
本発明の第2実施例は、VF法によるデュアルダマシン構造の二層配線にシリコン含有銅配線を適用し、その配線層間絶縁膜に低誘電率層間絶縁膜を適用したことを特徴とする。
第2実施例の構成について説明する。
図6は本実施例の半導体装置の構造を示す断面図である。
図6に示すように、本実施例の半導体装置は、第1のシリコン含有銅配線210がビアプラグを介して第2のシリコン含有銅配線223に接続された構成である。
第1のシリコン含有銅配線210は積層膜に形成された溝部に設けられている。その溝部は、半導体基板(不図示)上に成膜された下地絶縁膜201、SiCN膜202、梯子型の水素化シロキサン(Hydrogen Siloxane)であるLadder Oxide膜203およびSiO2膜204からなる積層膜に形成されている。第1のシリコン含有銅配線210の側面と底面はTa/TaN膜208に覆われている。なお、以下では、Ladder OxideをL−Ox(NECエレクトロニクス株式会社の商標(出願中))と称する。
ビアプラグは、SiO2膜204上のSiCN膜211およびSiO2膜212からなる積層膜に形成された孔部に設けられている。その孔部の側面と底面はTa/TaN膜220に覆われ、その中がシリコン含有銅で埋め込まれている。
第2のシリコン含有銅配線223は積層膜に形成された溝部に設けられている。その溝部は、SiO2膜212、SiCN膜213、L−Ox膜216およびSiO2膜217からなる積層膜に形成されている。第2のシリコン含有銅配線223の側面はTa/TaN膜220に覆われ、第2のシリコン含有銅配線223の上面にはSiCN膜222が形成されている。
なお、第1のシリコン含有銅配線210、ビアプラグおよび第2のシリコン含有銅配線223の他、不図示のトランジスタ、ダイオード、抵抗、およびキャパシタなどから半導体装置が構成される。
次に、本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。
図7〜図10は第2実施例の半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、第1実施例と同様な工程については、その詳細な説明は省略する。
本実施例の半導体装置の製造方法では、半導体素子を有する基板上に成膜された下地絶縁膜201上に、第1溝配線の溝部形成のためのエッチングストッパー膜としてSiCN膜202をプラズマCVD法により50nm成膜する。次に、第1の銅溝配線の層間絶縁膜として低誘電率層間絶縁膜であるL−Ox膜203を塗布法により300nm成膜し、400℃の焼成をN2雰囲気で30分行う。次に、SiO2膜204をプラズマCVD法により100nm成膜する。次に、成膜したSiO2膜204上に第1溝配線用レジストパターン206を形成する(図7(a))。
さらに、ドライエッチング技術により第1溝配線用レジストパターンからSiO2膜204とL−Ox膜203をエッチングして、第1溝配線パターン207を形成する。その後、O2ドライアッシングによりフォトレジスト205と反射防止膜225を除去する(図7(b))。
次に、ドライエッチングによりエッチングストッパー膜であるSiCN膜202のエッチバックを行い、下地半導体素子との導通面を開口し、エッチング残渣除去のためのウェット剥離を行い、第1溝配線パターン207を形成する。次に、バリアメタルとしてTa/TaN膜208を30nmスパッタリング法により成膜し、続いて、Ta/TaN膜208の上にCu膜209を膜厚100nmでスパッタリング法により成膜する。その後、電解メッキ法によりCu膜209を700nm成膜し、第1溝配線パターン207を埋め込んでから、結晶化のためにN2雰囲気で400℃、30分の熱処理を行う(図7(c))。
次に、SiO2膜204上のCu膜209およびTa/TaN膜208をCMP法により除去し、さらにBTA溶液による表面処理を行うことによりCu表面がBTA層で酸化防止処理された第1の銅溝配線を形成する(図7(d))。
次に、第1の銅溝配線上のBTA層を熱分解により除去するため、第1実施例と同様にして、プラズマCVD装置内で、処理温度250〜400℃、N2ガス流量100〜5000sccm、処理圧力20Torr以下の条件で2分間、熱処理を行う。さらに、BTA層除去後、第1の銅溝配線を酸素にさらすことなく、SiH4ガス流量10〜500sccm、N2ガス流量100〜5000sccm、処理圧力20Torr以下の条件で第1の銅溝配線に240秒間熱処理を行い、第1のシリコン含有銅配線210を形成し、Cu拡散防止膜としてSiCN膜211を膜厚50nm成膜する。
なお、ここで、第1のシリコン含有銅配線210におけるシリコン濃度の測定結果を示す。図11は第1のシリコン含有銅配線210における深さ方向のシリコン濃度を示すグラフである。図11に示すように、シリコン濃度は、配線の表面で最も高く、底面方向に深くなるにつれて低くなっている。
次に、異層間絶縁膜としてSiO2膜212を400nm、エッチングストッパー膜としてSiCN膜213を50nm成膜する。その上に第2溝配線の層間絶縁膜としてL−Ox膜216を300nm塗布・焼成し、その上にSiO2膜217を100nm成膜する。次に、反射防止膜225とフォトレジスト214を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて、フォトレジストにビア用レジストパターン215を形成する(図8(e))。
次に、ドライエッチング技術により、ビア用レジストパターン215から、層間絶縁膜および異層間絶縁膜までをエッチングして、第1のシリコン含有銅配線210上のSiCN膜211上で止める(図8(f))。このとき、SiCN膜211でエッチングが止まったビアも存在すれば、SiCN膜211でエッチングが止まらずに、ビア底で第1のシリコン含有銅配線210がむき出しになるビアも存在した。
その後、O2ドライアッシングとウェット剥離により反射防止膜225、フォトレジスト214、およびレジスト残査を除去する。このとき、SiCN膜211が抜けてしまったビアでは、ビア底の第1のシリコン含有銅配線210が酸化もしくは腐食されてしまうが、シリコン含有銅配線の場合、電気陰性度の違いから、シリコンが先に酸化され、安定なSiO2膜224が自己整合的に形成されるので、銅の酸化および腐食は防止される。
次に、反射防止膜225を塗布・焼成し、フォトレジスト218を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて、フォトレジストに第2溝配線用レジストパターン219を形成する(図9(g))。
続いて、ドライエッチング技術により、第2溝配線用レジストパターン219から、SiO2膜217、L−Ox膜216、および反射防止膜225をエッチングストッパー膜となるSiCN膜213までエッチングする。その後、O2ドライアッシングを行い、第2溝配線用のフォトレジスト218および反射防止膜225を除去し、エッチバックを行い、ビア底のSiCN膜211を除去する。次に、ウェット剥離によりエッチング残渣を除去する(図9(h))。このとき、ビアエッチング工程でSiCN膜211が抜けてしまったビアでは、ビア底の第1のシリコン含有銅配線210がさらに酸化もしくは腐食されてしまうが、上述したように、シリコン含有銅配線の場合、電気陰性度の違いから、シリコンが先に酸化され、安定なSiO2が自己整合的に形成されるので、銅の酸化および腐食は防止される。
その後、ビア底の自己整合的に形成されたSiO2をバリアスパッタ前のRFエッチング処理により除去し、大気に曝さずに、スパッタリング法により、Ta/TaN膜220を30nm成膜し、Ta/TaN膜220の上にシード用のCu膜221を100nm成膜する。しかる後に、電解メッキ法によりCu膜221を700nm成膜する(図9(i))。次に、図10(j)に示すように、CMP法により、第2の銅溝配線とビアプラグを形成する。
次に、第1の銅溝配線と同様にして、BTA層を除去しSiH4を照射することにより第2のシリコン含有銅配線223を形成し、Cu拡散防止膜としてSiCN膜222を膜厚50nm成膜した(図10(k))。この際、上述したように、シリコン濃度は、配線の表面で最も高く、底面方向に深くなるにつれて低くなっている。
上述のように、本実施例にて形成されたシリコン含有銅配線は、電気陰性度の違いから、シリコンが先に酸化され、安定なSiO2が自己整合的に形成されるので、エッチング工程における銅の酸化および腐食が防止できる。さらに、Cuシリサイドを形成した場合と比較すると膜中にシリコンを拡散させているため、配線表面がエッチングされても、銅の酸化防止効果が高い。
次に、本実施例による半導体装置のビアチェーン歩留まりの評価結果について説明する。
図12は二層配線によるビアチェーン歩留まりの評価結果を示すグラフである。
図12に示すグラフから、Cuシリサイドが形成された銅配線(以下、シリサイド銅配線と称する)と同様に、純銅(pure Cu)配線よりも良好な歩留まりが得られたことがわかる。なお、シリサイド銅配線として、例えば、米国特許USP6211084に開示されているものがある。
次に、エレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションの耐性の評価結果について説明する。
図13はエレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションの耐性を評価した結果を示すグラフである。
図13に示すグラフから、シリコン含有銅配線は、純銅配線およびシリサイド銅配線に比べて、エレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションの耐性が1桁高いことがわかる。
上述の評価結果に示されるように、本実施例にて形成されたシリコン含有銅配線は、配線全体にシリコンを拡散させシリコン含有金属配線を形成することにより、最表面のみにシリサイド層を形成する場合よりも、金属配線の金属粒子の移動を抑制する効果が向上する。
ここで、上記L−Oxの物性について説明する。
同じ層の配線同士を絶縁するための配線層間絶縁膜や、下層配線および上層配線の間の異層間絶縁膜として、様々な低誘電率材料を用いることができるが、配線遅延防止の観点から、誘電率は2.9以下が望ましく、また、膜密度は低いものが望ましい。例えば、膜密度が1.50g/cm3以上1.58g/cm3以下、633nmの波長の屈折率が1.38以上1.40以下であることが望ましい。こうした絶縁膜材料の具体例として、上述のL−Oxを挙げることができる。
図14はL−Oxの物性データを示す表である。
図14に示すように、L−Oxの誘電率は2.9で、屈折率は1.39である。このことから、L−Oxは配線層間絶縁膜および異層間絶縁膜として好ましい材料であることがわかる。なお、絶縁膜として、L−Oxを単体で用いるだけでなく、SiO2膜等との積層膜であってもよい。SiO2膜は窒化膜に比べて誘電率が低いからである。
次に、梯子型水素化シロキサンの構造について説明する。
図15は梯子型水素化シロキサン構造を有するL−Oxの構造を示す模式図である。図15に示すnは1以上の正の数である。
L−Oxは図15に示すような梯子型の分子構造を有するポリマーである。このように、L−Oxが図15に示す構造を有することについて、物質の同定および定性分析を行うFT−IRの観測結果で説明する。
図16はFT−IRの観測結果を示すグラフである。
図16に示すチャートで特徴的なのは、波数約830cm-1に現れるシャープなSi−H結合のスペクトルである。このスペクトルの急峻さが、L−Oxが2次元構造を有することを示唆している。また、この急峻なスペクトルの高波数側となる波数870cm-1付近にもう一つのSi−H結合のピークと想定されるものがあるが、このスペクトルは極端に小さい。このことも測定対象物質が2次元構造を有していることを示すと考えられる。
次に、L−Oxの物性の焼成温度条件依存性について説明する。
図17は焼成条件の変化に伴う物性の変動を示すグラフである。図17中に黒丸印で示すR.I.は633nmの波長での屈折率を示し、白四角印は密度を示す。実験は、窒素等の不活性ガス雰囲気、温度200℃以上450℃以下で焼成した。
屈折率は誘電率に直接影響するパラメータであり、1.38〜1.40の間で推移する。屈折率は、200℃未満の温度および400℃よりも高い温度では1.40を超える値を示した。
密度は、200℃以上400℃以下で焼成したL−Oxは1.50〜1.58g/cm3を示した。400℃を超える温度では、1.60g/cm3を超える値を示した。400℃を超える焼成温度では、密度の上昇が顕著となる。
なお、200℃未満では測定できなかった。200℃未満では、図に示さないFT−IRのチャートから、波数約3650cm-1に現れるSi−OH(シラノール)と想定される結合のスペクトルが観測されており、Si−OH(シラノール)が物性に影響を与えていると考えられる。
以上のことから、L−Oxを含む絶縁膜の成膜の際、200℃以上400℃以下の雰囲気温度で焼成することにより、低誘電率の優れた特性のL−Oxを安定して得られることがわかる。
次に、従来知られている3次元的な構造をもつ水素化シルセスオキサン構造のHSQ(Hydrogen Silsesquioxane。以下、HSQと称する。)とL−Oxとの構造の違いについて説明する。
図18はHSQの分子骨格を示す模式図である(「semiconductor technology outlook 1998年:p.431−435」より引用)。
上記二つの構造の材料は、製造プロセスにおける膜安定性が大きく相違し、L−Oxの方が顕著に優れた膜安定性を示す。これは、HSQに比べてL−Oxの方がSi−H減少量が少ないことによるものと考えられる。また、絶縁膜中の水素原子の結合の態様が異なることも原因となっているものと考えられる。すなわち、HSQにおいては、その立方体構造の角部分に水素原子が結合しているのに対し、L−Oxでは、梯子構造の側面に水素原子が結合している。したがって、HSQの方が水素原子の周りの密度が低く、HSQの水素結合はL−Oxに比較し反応性に富む構造となっているものと考えられる。
次に、L−OxとHSQの膜安定性の相違について説明する。
L−OxおよびHSQを用いて2種類の配線構造を作製し、SiH4照射によるシリコン添加プロセスを実施したところ、膜質の耐性が大きく相違することを確認した。以下、実験データに基づいて説明する。
なお、SiH4照射はプラズマCVD装置のチャンバー内で行い、照射条件は、処理温度250〜400℃、処理圧力20Torr以下、ガス流量SiH4=10〜500sccm、N2=100〜5000sccmである。実験で用いたHSQおよびL−Oxは、塗布後、約200℃のホットプレートでベークし、さらに、拡散炉で窒素雰囲気中350℃、30minで焼成したのもので、それぞれ300nmの膜厚のブランクウエハーを使用した。膜厚、屈折率の測定は分光エリプソメータで行った。誘電率は、水銀プローブ装置にて測定したキャパシタの値、および上記分光エリプソメータで測定した膜厚の値を用いて計算した。
図19(a)はSiH4照射時間に対する膜厚収縮率変化量を示すグラフ、(b)はSiH4照射時間に対する屈折率変化量を示すグラフ、(c)はSiH4照射時間に対する誘電率変化量を示すグラフである。
膜厚収縮率については、図19(a)に示すように、L−Oxの膜厚は、0sから120sまでのSiH4照射時間に依存せず、初期値に対して99%でほぼ変化がなかった。一方、HSQの膜厚は、SiH4照射時間が長くなるにつれて減少し、照射時間120sでは初期値の約80%まで減少した。
屈折率変化については、図19(b)に示すように、波長633nmによる測定で、HSQでは、120s照射すると、屈折率が初期値の1.39から1.42まで変化した。これに対して、L−Oxでは、照射時間0sから120sまで、屈折率が初期値の1.39から変化しなかった。
誘電率の変化については、図19(c)に示すように、HSQは、SiH4照射処理を行うと、初期値の2.9から、120s照射で3.4まで上昇してしまう。一方、L−Oxは、120s照射しても初期値の2.9から変化しなかった。
上述の結果から、膜厚、屈折率、および誘電率のいずれについても、SiH4照射に対する耐性はL−Oxの方が優れていることが明らかになった。こうしたSiH4照射処理耐性の違いは、上述した水素結合の反応性の違いによるものと考えられる。
以上のことから、SiH4照射処理を行う場合、層間膜としてHSQよりもL−Oxが好ましい。また、このL−Oxをポーラスにした、誘電率2.5のポーラスL−OxでもSiH4照射処理の耐性はL−Oxと同様であることが確認された。
さらに、L−OxとHSQの薬液耐性について比較実験をしたので、その結果について説明する。
図20(a)は一定量エッチングした後の膜厚を示す表であり、(b)はウエハ中の測定位置を示す模式図である。実験は、弗化アンモニウムおよび希釈されたHFからなるエッチング液にウエハを一定時間浸漬した後、図20(b)に示す5点(1)〜(5)の位置のエッチング量を測定した。表中の数値の単位はオングストローム(×10-8cm)である。
図20に示すように、弗化アンモニウムおよび希釈されたHFに対するエッチング速度を比較すると、L−Oxの方がHSQに比べてエッチング速度が大きいことが分かった。
次に、HSQ膜およびL−Ox膜を実際のダマシン配線構造の配線層間絶縁膜に適用して、SiH4照射処理をした結果について説明する。
配線密度の高い場所では、CMP処理の研磨速度が大きいため、CMP処理後、マスクSiO2膜が無くなっているか、または薄くなっていた。そのため、配線にSiH4照射処理をすると、プラズマSiO2膜の下層のHSQ膜およびL−Ox膜にもSiH4照射処理をすることになる。ライン/スペース=0.2/0.2マイクロメートルの配線構造にSiH4照射処理をした場合の配線間容量を比較すると、HSQではSiO2に対して2〜3%しか低下しないのに対し、L−OxではSiO2に対して8〜12%の十分な低減が確認された。さらに、ポーラスL−Ox(k=2.5)の場合では、SiO2膜に対して15〜20%程度の低減が確認された。
上述のことから、実際の配線構造においても、HSQに比べ、L−OxまたはポーラスL−Oxの方が好ましいことが確認された。
また、その他の、炭素を含有している材料であるMSQ(Methyl Silsesquioxane)、および炭素が主構造となっているOrganic Polymerについても、実際のダマシン構造を用いてL−Ox膜およびポーラスL−Ox膜と比較した。MSQおよびOrganic Polymerのように、炭素を含有している材料を用いた場合のダマシン構造では、銅配線と、キャップ膜であるSiCN膜界面で、薄い酸化銅膜が確認されたのに対し、L−Ox膜層間またはポーラスL−Oxでは酸化銅膜は確認されなかった。この理由として、SiCN膜の成膜前のチャンバー内の熱によりL−Oxから微量の水素が脱離し、この水素がもともとCMP後に存在していた酸化銅層を還元したと考えられる。
また、炭素を含有した膜は、SiCN膜の成膜前のチャンバー内の熱では、L−Oxに比較して水素単独のガス量は少なく、炭化水素ガスのデガス量が多いことにより、酸化銅層を十分還元できなかったと予想される。さらに、酸化銅が膜中に存在する場合、これが原因で、エレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションなどの耐性が悪くなることが予想される。すなわち、炭素含有絶縁膜よりも、L−Ox膜またはポーラスL−Ox膜を層間膜に使用することが好ましい。
(第3実施例)
本発明の第3実施例は、MF法によるデュアルダマシン構造の二層配線にシリコン含有銅配線を適用し、その配線層間絶縁膜に低誘電率層間絶縁膜を適用したことを特徴とする。なお、本実施例の半導体装置の構成については、第2実施例と同様なため、その詳細な説明を省略する。
本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。
図21〜図23は第3実施例の半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、第1実施例および第2実施例と同様な工程については、その詳細な説明は省略する。
本実施例の半導体装置の製造方法では、まず第2実施例と同様にして第1のシリコン含有銅配線210まで形成する。この際、シリコン濃度は、配線表面で最も高く、底面方向に深くなるにつれて低くなっている。次に、第2実施例と同様にしてSiCN膜211、異層間絶縁膜であるSiO2膜212までを順に形成する。さらに、その上に第2のエッチングストッパー膜としてSiCN膜213を50nm形成する(図21(a))。
次に、その第2のエッチングストッパー膜であるSiCN膜213のみビアのパターンにエッチングするため、フォトレジスト214を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて、フォトレジスト214にビア用レジストパターン215を形成する(図21(b))。
次に、そのフォトレジスト214をマスクにして、ドライエッチング技術によりSiCN膜213をエッチングする。その後、O2ドライアッシングおよびウェット剥離を行い、フォトレジスト214およびエッチング残渣を除去する。次に、第2溝配線の層間絶縁膜としてL−Ox膜216を300nm塗布・焼成し、その上にSiO2膜217を100nm成膜する(図21(c))。次に、フォトレジスト218を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて、フォトレジスト218に第2溝配線用レジストパターン219を形成する(図22(d))。
次に、ドライエッチング技術により、フォトレジスト218をマスクにして、第2溝配線の層間絶縁膜であるSiO2膜217とL−Ox膜216、そして、ビア形状のパターンが形成された第2のエッチングストッパー膜であるSiCN膜213をエッチングマスクにして、異層間絶縁膜のSiO2膜212をエッチングし、第1のシリコン含有銅配線210上のSiCN膜211上で止めた。その後、O2ドライアッシングによりフォトレジスト218を除去したのち、エッチバックを行い、第1のシリコン含有銅配線210上のSiCN膜211および第2のエッチングストッパー膜のSiCN膜213を除去する。その後、ウェット剥離を行いエッチング残渣の除去を行った(図22(e))。
このとき、ビア底部では第2実施例で述べたのと同様に、SiO2膜212のエッチング工程でSiCN膜211が抜けてしまったビアでは、ビア底の銅配線がさらに酸化もしくは腐食されてしまうが、シリコン含有銅配線の場合、電気陰性度の違いから、シリコンが先に酸化され、安定なSiO2膜が自己整合的に形成されるので、銅の酸化および腐食は防止される。
その後、ビア底の自己整合的に形成されたSiO2膜をバリアスパッタ前のRFエッチング処理により除去し、大気に曝さずに、スパッタリング法により、Ta/TaN膜220を30nm成膜し、Ta/TaN膜220の上にシード用のCu膜221を100nm成膜する。しかる後に、電解メッキ法によりCu膜221を700nm成膜する(図22(f))。次に、図23(g)に示すように、CMP法により、第2の銅溝配線とビアプラグを形成する。
次に、第1の銅溝配線と同様にして、BTA層を除去しSiH4を照射することにより第2のシリコン含有銅配線223を形成し、Cu拡散防止膜としてSiCN膜222を膜厚50nm成膜した(図23(h))。この際、シリコン濃度は、配線表面で最も高く、底面方向に深くなるにつれて低くなっている。
なお、本実施例によるMF法の場合、エッチングストッパー膜であるSiCN膜にフォトリソグラフィー工程を行う必要があるが、SiCN膜は表面が疎水性であるため塗布膜である反射防止膜の濡れ性が悪く塗布ムラが発生しやすいこと、SiCN膜上の反射防止膜を除去する際にSiCN膜がエッチングのダメージを受けることなどから反射防止膜を使用できない。また、第2溝配線のフォトリソグラフィー工程において、エッチングストッパー膜のエッチング段差部に反射防止膜が厚く堆積されて、ドライエッチング工程で支障をきたすことから、第2溝配線のフォトリソグラフィー工程でも反射防止膜を使用できない。このため、従来の銅配線では、下層からのCu膜の反射を抑えられず、ビアの焦点深度(DOF:Depth of Focus)の低下を招き、問題となっていた。しかし、本実施例にて形成されたシリコン含有銅配線は、従来の銅配線と比較してフォトリソグラフィー工程における反射防止効果が高いことから、MF法におけるエッチングストッパー膜のフォトリソグラフィー工程を改善し、製品歩留まり、信頼性を向上できる。
ここで、シリコン含有量と反射率との関係について説明する。
図24はシリコン含有濃度と反射率との関係を示すグラフである。なお、反射率測定には、標準サンプルとしてシリコンを含有しないCu膜を用い、シリコンを含有させたサンプルとして種々の膜厚のCu膜に同じ量のシリコンを含有させたものを用いた。測定は、波長260nmのレーザーを照射した際に得られる反射率を分光光度計を用いて行った。
図24に示すグラフから、シリコンを含有しない銅表面の反射率は32%であるが、シリコン含有率の上昇と共に反射率は低下し、シリコン含有率0.05%程度では反射率は2%まで低下した。また、それ以上シリコンを含有させても反射率はほとんど変化しなかった。この結果から、シリコン含有率が0.05%以上あれば、効果があることが分かった。
なお、上記第2実施例および本実施例において、溝の形成方法として層間絶縁膜のドライエッチング後、O2ドライアッシングによるレジスト除去を行ってからSiCN膜のエッチバックを行い、それからウェット剥離によるエッチング残渣除去を行っているが、層間絶縁膜のドライエッチング後、O2ドライアッシングとウェット剥離によるレジスト除去とエッチング残渣除去を行ってから、SiCN膜をエッチバックしてもよい。
(第4実施例)
本発明の第4実施例は、TF法によるデュアルダマシン構造の二層配線にシリコン含有銅配線を適用し、その配線層間絶縁膜に低誘電率層間絶縁膜を適用したことを特徴とする。なお、本実施例の半導体装置の構成については、第2実施例と同様なため、その詳細な説明を省略する。
本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。
図25〜図27は第4実施例の半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、第1乃至3実施例と同様な工程については、その詳細な説明は省略する。
本実施例の半導体装置の製造方法では、まず第2実施例と同様にして第1のシリコン含有銅配線210まで形成する。この際、シリコン濃度は、配線表面で最も高く、底面方向に深くなるにつれて低くなっている。次に、第2実施例と同様にしてSiCN膜211、異層間絶縁膜であるSiO2膜212までを順に形成する。さらに、その上に第2のエッチングストッパー膜としてSiCN膜213を50nm形成する。
次に、その上に第2溝配線の層間絶縁膜としてL−Ox膜216を300nm塗布・焼成し、その上にSiO2膜217を100nm成膜する。次に、反射防止膜225とフォトレジスト218を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて、フォトレジスト218に第2溝配線用レジストパターン219を形成する(図25(a))。
次に、ドライエッチング技術により、フォトレジスト218をマスクにして、第2溝配線の層間絶縁膜であるSiO2膜217とL−Ox膜216をエッチングする。次に、O2ドライアッシングとウェット剥離によりフォトレジスト218、反射防止膜225、およびエッチング残渣を除去する(図25(b))。次に、全面エッチバックにより、第2のエッチングストッパー膜のSiCN膜213を除去する(図25(c))。
次に、フォトレジスト214を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて、フォトレジスト214にビア用レジストパターン215を形成する(図26(d))。
次に、ドライエッチング技術により、フォトレジスト214をマスクにして、異層間絶縁膜のSiO2膜212をエッチングし、第1のシリコン含有銅配線210上のSiCN膜211上で止めた。その後、O2ドライアッシングによりフォトレジストを除去する(図26(e))。次に、第1のシリコン含有銅配線210上のSiCN膜211をエッチバックした。その後、ウェット剥離を行い、エッチング残渣の除去を行った(図26(f))。
このとき、ビア底部では第3実施例で述べたのと同様に、SiO2膜212のエッチング工程でSiCN膜211が抜けてしまったビアでは、ビア底の銅配線がさらに酸化または腐食されてしまうが、シリコン含有銅配線の場合、電気陰性度の違いから、シリコンが先に酸化され、安定なSiO2膜224が自己整合的に形成されるので、銅の酸化および腐食は防止される。
その後、ビア底の自己整合的に形成されたSiO2膜224をバリアスパッタ前のRFエッチング処理により除去し、大気に曝さずに、スパッタリング法により、Ta/TaN膜220を30nm成膜し、Ta/TaN膜220の上にシード用のCu膜221を100nm成膜する。しかる後に、電解メッキ法によりCu膜221を700nm成膜する(図27(g))。次に、図27(h)に示すように、CMP法により、第2の銅溝配線とビアプラグを形成する。
次に、第1の銅溝配線と同様にして、BTA層を除去しSiH4を照射することにより第2のシリコン含有銅配線223を形成し、Cu拡散防止膜としてSiCN膜222を膜厚50nm成膜した(図27(i))。この際、シリコン濃度は、配線表面で最も高く、底面方向に深くなるにつれて低くなっている。
なお、本実施例によるTF法の場合、第2溝配線の溝部を形成した後、ビアのフォトリソグラフィー工程を行う必要があるが、反射防止膜を用いると配線溝部分が反射防止膜により埋め込まれ、下層の異層間絶縁膜であるSiO2膜がエッチングできなくなるため反射防止膜を使用できない。このため、従来の銅配線では、下層からのCu膜の反射を抑えられず、ビアのDOFの低下を招き、問題となっていた。しかし、本実施例にて形成されたシリコン含有銅配線は、従来の銅配線と比較してリソグラフィー工程における反射防止効果が高いことから、TF法におけるビアのリソグラフィー工程を改善し、製品歩留まり、信頼性を向上することができる。
また、上記第2実施例から本実施例までについて、エッチングストッパー膜を用いているが、エッチングストッパー膜の上層膜のエッチング工程で、下層膜までエッチングしないように処理時間を制御することで、エッチングストッパー膜を省略しても良い。エッチングストッパー膜を省略することにより、配線間容量を低減することができる。
(第5実施例)
本発明の第5実施例は、シングルダマシン構造の二層配線にシリコン含有銅配線を適用し、その配線層間絶縁膜に低誘電率層間絶縁膜を適用したことを特徴とする。
第5実施例の構成について説明する。
図28は本実施例の半導体装置の構造を示す断面図である。
図28に示すように、本実施例の半導体装置は、第1のシリコン含有銅配線210がシリコン含有銅プラグ228を介して第2のシリコン含有銅配線223に接続された構成である。
第1のシリコン含有銅配線210は積層膜に形成された溝部に設けられている。その溝部は、半導体基板(不図示)上に成膜された下地絶縁膜201、SiCN膜202、L−Ox膜203およびSiO2膜204からなる積層膜に形成されている。第1のシリコン含有銅配線210の側面と底面はTa/TaN膜208に覆われている。
シリコン含有銅プラグ228は、SiO2膜204上のSiCN膜211およびSiO2膜212からなる積層膜に形成された孔部に設けられている。その孔部の側面と底面はTa/TaN膜226に覆われている。
第2のシリコン含有銅配線223は積層膜に形成された溝部に設けられている。その溝部は、SiCN膜213、L−Ox膜216およびSiO2膜217からなる積層膜に形成されている。第2のシリコン含有銅配線223の側面と底面はTa/TaN膜220に覆われ、第2のシリコン含有銅配線223の上面にはSiCN膜222が形成されている。
なお、第1のシリコン含有銅配線210、シリコン含有銅プラグ228および第2のシリコン含有銅配線223の他、不図示のトランジスタ、ダイオード、抵抗、およびキャパシタなどから半導体装置が構成される。
次に、本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。
図29〜図32は第5実施例の半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、第1乃至4実施例と同様な工程については、その詳細な説明は省略する。
本実施例の半導体装置の製造方法では、まず第2実施例と同様にして第1のシリコン含有銅配線210まで形成する。この際、シリコン濃度は、配線表面で最も高く、底面方向に深くなるにつれて低くなっている。
次に、第2実施例と同様にしてSiCN膜211、異層間絶縁膜であるSiO2膜212までを順に形成する(図29(a))。
次に、成膜したSiO2膜212上に反射防止膜225とフォトレジスト214を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて、ビア用レジストパターン215を形成する(図29(b))。
さらに、ドライエッチング技術によりビア用レジストパターンからSiO2膜212をエッチングして、ビア用パターンを形成する。その後、O2ドライアッシングを行い、フォトレジスト214と反射防止膜225を除去する(図29(c))。次に、ビア底のSiCN膜211をエッチバックする。次に、ウェット剥離によりエッチング残渣を除去する(図29(d))。
このとき、ビアエッチング工程ではSiCN膜211が抜けてしまったビア底の銅配線がさらに酸化もしくは腐食されてしまうが、シリコン含有銅配線の場合、電気陰性度の違いから、シリコンが先に酸化され、安定なSiO2膜224が自己整合的に形成されるので、銅の酸化および腐食は防止される。
その後、ビア底の自己整合的に形成されたSiO2膜224をバリアスパッタ前のRFエッチング処理により除去し、大気に曝さずに、スパッタリング法により、Ta/TaN膜226を30nm成膜し、Ta/TaN膜226の上にシード用のCu膜227を100nm成膜する。その後、電解メッキ法によりCu膜227を700nm成膜し、ビアパターンに埋め込んでから、結晶化のために400℃の熱処理を行う(図30(e))。
次に、SiO2膜212上のCu膜227およびTa/TaN膜226をCMP法により除去し、さらにBTA溶液による表面処理を行うことによりCu表面がBTA層で酸化防止処理された銅ビアプラグを形成した(図30(f))。
次に、第2実施例で第1のシリコン含有銅配線210を形成した際と同じ工程によりシリコン含有銅プラグ228を形成し、第2のCu拡散防止膜としてSiCN膜213を50nm成膜する(図30(g))。
次に、第2の層間絶縁膜としてL−Ox膜216を300nm塗布・焼成し、その上にSiO2膜217を100nm成膜する。次に、反射防止膜225とフォトレジスト218を塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いて、フォトレジスト218に第2溝配線用レジストパターン219を形成する(図31(h))。
次に、ドライエッチング技術により、フォトレジスト218をマスクにして、第2溝配線の層間絶縁膜であるSiO2膜217とL−Ox膜216をエッチングする。次に、O2ドライアッシングによりフォトレジスト218と反射防止膜225を除去する。次に、全面エッチバックにより、第2のCu拡散防止膜のSiCN膜213を除去する。次に、ウェット剥離によりエッチング残渣を除去する(図31(i))。
このとき、第2溝配線の底部ではビアエッチング工程と同様に、ドライエッチング工程でSiCN膜が抜けてしまいビアプラグが露出していると、酸化もしくは腐食されてしまうが、シリコン含有銅プラグの場合、電気陰性度の違いから、シリコンが先に酸化され、安定なSiO2膜が自己整合的に形成されるので、銅の酸化および腐食は防止される。
その後、ビアプラグ上面に自己整合的に形成されたSiO2膜をバリアスパッタ前のRFエッチング処理により除去し、大気に曝さずに、スパッタリング法により、Ta/TaN膜220を30nm成膜し、Ta/TaN膜220の上にシード用のCu膜221を100nm成膜する。次に、電解メッキ法によりCu膜221を700nm成膜する(図31(j))。次に、CMP法により、第2の銅溝配線を形成し、BTA溶液による表面処理を行った(図32(k))。
次に、第1のシリコン含有銅配線210およびシリコン含有銅プラグ228と同様にして、BTA層を除去し、SiH4を照射することにより第2のシリコン含有銅配線223を形成し、Cu拡散防止膜としてSiCN膜222を膜厚50nm成膜する(図32(l))。この際、シリコン濃度は、配線表面で最も高く、底面方向に深くなるにつれて低くなっている。
上述のように、本実施例にて形成された配線は、配線全体にシリコンを拡散させ、シリコン含有金属配線を形成することにより、最表面のみにシリサイド層を形成する場合よりも、金属配線の金属粒子の移動を抑制する効果が向上できる。
また、本実施例にて形成されたシリコン含有銅配線は、電気陰性度の違いから、シリコンが先に酸化され、安定なSiO2が自己整合的に形成されるので、エッチング工程における銅の酸化および腐食が防止できるため、純銅配線よりも製品歩留まりが向上できる。
さらに、本実施例では、シングルダマシン構造により、第1溝配線、第2溝配線およびビアプラグのそれぞれの上面でシリコン濃度が高いシリコン含有銅配線を形成しているため、デュアルダマシン構造でシリコン含有銅配線を形成した場合より、ビア内部でのシリコン濃度を高くできる。
ここで、エレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションの耐性評価の結果を説明する。
図33はエレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションの耐性を評価した結果を示すグラフである。
図33に示すように、本実施例によるシリコン含有銅配線は、デュアルダマシン構造で形成されたシリコン含有銅配線よりも、エレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションの耐性がさらに向上している。
なお、上記第4実施例および本実施例において、溝およびビアの形成方法として層間絶縁膜のドライエッチング後、O2ドライアッシングによるレジスト除去を行ってからSiCN膜のエッチバックを行い、それからウェット剥離によるエッチング残渣除去を行っているが、層間絶縁膜のドライエッチング後、O2ドライアッシングとウェット剥離によるレジスト除去とエッチング残渣除去を行ってから、SiCN膜をエッチバックしてもよい。
上記第2実施例から本実施例までについて、異層間絶縁膜にSiO2膜を用いているが、溝配線層間絶縁膜と同様にL−Ox膜とSiO2膜の積層構造を用いてもよい。また、L−Ox膜のマスク絶縁膜としてSiO2膜を用いているが、L−Oxとのエッチング選択性に優れ、O2ドライアッシングおよびウェット剥離液に対する耐性が優れていれば、SiC膜、SiCN膜、およびSiOC膜などの絶縁膜を用いても良い。さらに、低誘電率層間絶縁膜としてL−Oxを用いているが、SiOF膜、SiOC膜、および有機膜などの、SiO2膜より比誘電率が低い絶縁膜であればよい。
上記第1実施例から第5実施例について銅配線を用いたが、配線中にAl、Ag(銀)、W(タングステン)、Mg(マグネシウム)、Be(ベリリウム)、Zn(亜鉛)、Pd(パラジウム)、Cd(カドミウム)、Au(金)、Hg(水銀)、Pt(白金)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Sn(スズ)、Ni(ニッケル)およびFe(鉄)といった異種元素のうち少なくとも一つと合金を形成した銅の合金を含有する金属配線のような、銅に他の金属を含有する配線でもよく、また他の金属の配線にも適用可能である。この場合においても、金属配線におけるエレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションの耐性を低減させることはない。
上記第1実施例から第5実施例についてバリアメタルにTa/TaN膜を用いたが、バリアメタルは、Ti、TiN、TiSiN、Ta、TaN、およびTaSiNのうち少なくとも一つ有する構成であればよい。この場合においても、金属配線におけるエレクトロマイグレーションおよびストレスマイグレーションの耐性を低減させることはない。
また、配線表面に酸化防止膜を形成するためにBTAを用いているが、BTAより溶解度の高いBTA誘導体であってもよい。
また、本発明の半導体装置は、銅配線を有する半導体装置であるが、トランジスタ、ダイオード、抵抗およびキャパシタなどを有していなくてもよい。