JP2007227329A - メタルハライドランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】
封着金属箔を埋設した封止部におけるクラックリークの発生を、封着金属箔の粗面化の
態様を改良して抑制した水銀フリーランプに好適なメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】
メタルハライドランプMHLは、内部に放電空間1cを有する包囲部1aおよび包囲部に連接した封止部1bを備えている石英ガラス製の透光性気密容器1と、透光性気密容器の放電空間内に封装された電極2と、少なくとも発光金属のハロゲン化物および希ガスを含み透光性気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と、電極の基端部が接続して透光性気密容器の封止部内に気密に埋設され、少なくとも電極接続部近傍の表面に形成された電極の軸方向に長い溝Gからなる粗面RSを備えた封着金属箔3とを具備している。
【選択図】
図1

Description

本発明は、自動車の前照灯などに用いられるメタルハライドランプに関する。
メタルハライドランプは、内部に一対の電極を封装した透光性気密容器の内部に発光金属のハロゲン化物を含む放電媒体を封入している。透光性気密容器の構成材料には、石英ガラスまたは透光性セラミックスが用いられている。石英ガラス製の透光性気密容器は、比較的安価であるのに加えて直線透過率が高いために、前照灯やプロジェクション用などのメタルハライドランプを中心に多用されている。石英ガラス製の透光性気密容器においては、放電空間が形成されている包囲部を封止するために包囲部に連接した封止部が包囲部と一体に形成されている。
透光性気密容器を上記封止部によって封止するには、封止部の内部に封着金属箔を気密に埋設することにより行うのが一般的である。そして、封着金属箔の包囲部側の一端部に電極の基端を溶接し、他端には外部リード線を溶接することで、封着金属箔を経由して電極を給電行う。
そうして、石英ガラス製の透光性気密容器においては、封止部の内部に気密に埋設された封着金属箔とそれを包囲する石英ガラスとがメタルハライドランプの点灯中を通じて良好な接合を形成することで、透光性気密容器の内部が所期の気密状態に維持される。封着金属箔を用いて封止部を形成する場合に、封着金属箔の表裏両面にサンドブラストや電気化学的方法によって梨地加工を施すことにより、封着金属箔の外周の長さを微細な凹凸により大きくして、封止部に生じるリークを抑制しようとすることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、水銀を本質的に封入しないいわゆる水銀フリーのメタルハライドランプ(以下、便宜上「水銀フリーランプ」という。)は知られている(特許文献2参照。)。水銀フリーランプは、ランプ電圧形成用の緩衝物質として封入されていた水銀に代えて亜鉛(Zn)などの蒸気圧が比較的高くて可視域に発光しにくい金属のハロゲン化物を第2のハロゲン化物として封入しているのが一般的である。
水銀フリーランプは、特に環境負荷物質の使用を全廃しようとしている自動車の前照灯用のメタルハライドランプとして期待され、開発が行われ、かつ実用されだしている。このメタルハライドランプの場合、規格により立ち上がり4秒後に定格光束の80%の光束を発生する必要がある(非特許文献1参照。)。ところが、水銀フリーランプは、水銀発光が得られないこと、および点灯直後から水銀の高い蒸気圧が得られないことにより、金属ハロゲン化物の蒸発が遅くなるために、一般に上記規格の条件を満足させることが困難である。
そこで、上記規格の条件を満足させるために、始動直後に水銀入りランプにおけるのより大きなランプ電力を水銀入りランプにおけるのより長時間にわたり投入している。また、水銀フリーランプは、第2のハロゲン化物の封入によりランプ電圧が水銀入りランプのそれとほぼ同等になったとはいえ、数値的にはまだ低いので、同一のランプ電力を投入するためには大きなランプ電流を流す必要がある。
特許第3150918号公報 特開平11−238488号公報 日本電球工業会規格 JEL 215「自動車前照灯HID光源」
しかし、水銀フリーランプの場合、特許文献1のような、封止部と封着金属箔との密着性を高める構成にしたとしても、クラックリークが発生してしまうことが分かった。
上記クラックリークについて本発明者らが検討した結果、特願2005−273243に開示のように、水銀フリー化に伴う発光管内部の希ガスの圧力の上昇や封止部の温度上昇によりハロゲン化物が封止部方向に移動しやすくなったことが原因であることが分かった。そこで、課題改善の努力の結果、封着金属箔表面の模様を特定の模様にすることで上記課題を解決することを見出し、本発明をなすに至った。
本発明は、封着金属箔を埋設した封止部におけるクラックリークを封着金属箔の粗面化の態様を改良して抑制した水銀フリーランプに好適なメタルハライドランプを提供することを目的とする。
本発明のメタルハライドランプは、内部に放電空間を有する包囲部および包囲部に連接した封止部を備えている石英ガラス製の透光性気密容器と;透光性気密容器の放電空間内に封装され電極と;少なくとも発光金属のハロゲン化物および希ガスを含み透光性気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;電極の基端部が接続して透光性気密容器の封止部内に気密に埋設され、電極の軸方向に溝が形成された封着金属箔と;を具備していることを特徴としている。
本発明によれば、封着金属箔の表面に電極の軸方向に溝を形成したことにより、封着金属箔と石英ガラスとの密着性が向上するとともに、ハロゲン化物が封着金属箔の周縁部方向への進行することによるクラックリークの発生を抑制したメタルハライドランプを提供することができる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
図1ないし図4は、本発明のメタルハライドランプを実施するための第1の形態としての自動車前照灯用メタルハライドランプを示し、図1は側面図、図2は封着金属箔部分の拡大正面図、図3は封着金属箔の拡大断面図、図4はレーザ加工によって形成された溝の断面形状を拡大して示す模式的拡大断面図である。
本形態において、メタルハライドランプMHLは、発光管IT、絶縁チューブT、外管OTおよび口金Bを具備している。
〔発光管ITについて〕 発光管ITは、透光性気密容器1、電極2、封着金属箔3、外部リード線4A、4Bおよび放電媒体を備えている。
(透光性気密容器1について) 透光性気密容器1は、石英ガラス製で、透光性で耐火性を有しているとともに、内部に放電空間1cが形成される包囲部1aおよび封止部1bを備えている。包囲部1aは中空で、その中空部が放電空間1cとなる。放電空間1cの内容積は、メタルハライドランプの用途に応じて適宜設定することができるが、本発明を適用するのに好適な小形のメタルハライドランプとしては一般的に0.1cc以下である。また、前照灯用の場合、好適には0.05cc以下である。
上記放電空間1cは、その形状がほぼ円柱状、球形または楕円球形など任意の形状にすることができる。前照灯用の場合、好適にはほぼ円柱状をなしている。これに対して、透光性気密容器1の包囲部1aの外面は、楕円球状や紡錘状などの回転2次曲面形状をなしている。そのため、包囲部1aの肉厚は、一般的には管軸方向の中央部が最も大きく、両端方向に順次小さくなっている。
また、自動車前照灯用のメタルハライドランプMHLとしての透光性気密容器1における包囲部1aおよびその内部に形成される放電空間1cの好ましいサイズは、以下のとおりである。すなわち、包囲部1aの管軸方向の長さは7.4〜8.2mm、放電空間1cの内径は2.2〜2.9mm、外径は5.6〜6.9mm、肉厚は1.7〜2.5mm、放電空間1cの内容積は20〜35μlである。
さらに、透光性気密容器1が「透光性で耐火性を有している」とは、少なくとも包囲部1aの外部へ発光を導出しようとする部位である導光部分が透光性であって、かつメタルハライドランプMHLの通常の作動温度に十分耐える程度の耐熱性を少なくとも備えているという意味である。なお、必要に応じて、透光性気密容器1の包囲部1aの内面に耐ハロゲン性または耐ハロゲン化物性の透明性被膜を形成するか、透光性気密容器1の内面を改質することが許容される。
封止部1bは、包囲部1aに隣接して包囲部1aと一体的に形成されている。本形態において、封止部1bは、これを包囲部1aの管軸方向の両端に延在するようにその一対を形成することができる。また、封止部1bは、包囲部1aを封止するとともに、後述する電極2の基端部がここに埋設される。これを実現するために、封止部1bには後述する封着金属箔3が埋設されている。また、一対の封止部1b、1bは、包囲部1aの両端から管軸方向に沿って一体に延在している。
(電極2について) 電極2は、その先端側の主要部が透光性気密容器1の包囲部1a内の所定位置に封装される。このために電極2の中間部は、封止部1bに緩く支持され、かつ基端が封着金属箔3に溶接などにより接続される。包囲部1aの内部に一対の電極1b、1bを離間対向して封装する場合、一対の封止部1b、1bを包囲部1aの両端に配設する。
また、電極2は、その軸部の直径が一般的には0.25〜0.45mmの範囲内で適当な値に設定されるのがよい。
さらに、電極2は、本形態においてタングステン(W)、ドープドタングステン、トリウムタングステン、レニウム(Re)およびタングステン−レニウム合金(W−Re)などのグループから選択された耐火金属により形成することができる。
さらにまた、電極2の先端部を軸部より径大の例えば円柱状、ほぼ球状などにすることもできる。その場合、軸部は直径0.25〜0.30mm、先端部は0.30〜0.40mmとするのがよい。
なお、封止部1b内に支持された電極2の軸部に、例えばタングステンからなるコイルを巻装する仕様であってもよい。通常、電極軸にコイルを巻装した場合、電極軸と石英ガラスとで発生するクラックに対しては効果的であるが、当該コイルによりハロゲンの侵入路が形成されやすくなるために、封着金属箔でのクラックリークが発生しやすい。しかしながら、本発明を適用すれば、上記コイルを巻装した場合であっても封着金属箔でのクラックリークを抑制することができる。
(封着金属箔3について) 封着金属箔3は、包囲部1aを封止するために封止部1b内に気密に埋設される。また、図示しない好ましくは電子化された点灯回路から電極2へ給電するために、封着金属箔3の包囲部1a側の一端に電極2の基端部が接続され、他端に後述する外部導入線4A、4Bが接続される。なお、封着金属箔3の肉厚は、本発明において特段限定されないが、一般的には50μm以下である。
本発明において、封着金属箔3は、最も特徴的な構成部分であり、図2、図3に示すように、封着金属箔3の表面には軸方向に溝Gが複数平行して形成されている。また、この溝Gは、表面に凹凸を発生させるため、封着金属箔3の表面に粗面RSを形成させる。この溝Gの形成方法の一例としてはレーザを用いる方法がある。なお、本発明における溝Gは、レーザ加工によって形成するのみならず、機械的研削や薬品による溶融、例えば化学的エッチングなど、形成方法は特段限定されない。
レーザ加工により溝Gを形成する場合は、以下のように行うことができる。すなわち、封着金属箔3表面にレーザを1回照射することにより、当該表面の被照射部に点状の溶融痕であるレーザスポットが1つ形成される。このレーザスポットは、レーザの焦点の合わせ方や入力の制御によって、その断面の形状などを制御できる。例えば、図4の(a)や(b)のような断面形状が逆三角形や逆台形のものを得ることができる。そして、先に形成されたレーザスポットの一部に重なるように、再びレーザをパルス状に照射しながら照射位置を移動していくことによって、図5に示すようにレーザスポットの連打により構成された溝Gを得ることができる。なお、図5において、溝の長さ方向に沿って隣接するレーザスポット間のスポットピッチP2は、単一のレーザスポットの直径Rに対して5R/6である。溝Gの深さDはレーザの電流値を変化することにより、またレーザスポットの直径Rはレーザビームの焦点やレーザ照射ユニットから照射位置までの距離を変化することにより、それぞれ自由に制御することが可能である。
また、粗面RSを形成する領域は、封着金属箔3の両面のほぼ全面である場合が最も高い密着性が得られるので好ましい。ただし、溝Gを形成する際に、当該溝が封着金属箔3の側縁部側へ延在しないよう形成するのが望ましい。そうすれば、ハロゲン化物が電極2の基端部から溝Gを伝わって封着金属箔3の面に沿って放射状に拡散すなわち進行し、封着金属箔3と石英ガラスとの封着を破壊する現象が生じにくくなるという作用、効果が得られる。また、上記の作用、効果を得る目的であれば、溝Gは、封着金属箔3に接続した電極2の接続部近傍に少なくとも設けるだけでもよい。なお、上記近傍とは、電極2の接続位置および当該位置からさらに封着金属箔3の中心部側へ若干進んだ位置、ならびに封着金属箔3の両側縁部側へ離れた位置を含む概念である。自動車前照灯用のメタルハライドランプの場合、封着金属箔3における電極2の基端部接続側の端部から管軸方向の他端側へ3mm、または電極2の基端部の端部から管軸方向の他端側へ1mmの位置までを電極2の基端部の接続部近傍ということができる。
レーザ加工によって形成された溝Gの一例としては、図2に示す本形態のように、封着金属箔3の両面に、電極軸方向の溝Gを複数並べたものが挙げられる。このような溝を形成すると、封着金属箔3とガラスの密着性の向上と封着金属箔3の側縁部へのハロゲン化物の拡散抑制の両効果が得られるため、効果的である。
図3は、図2の拡大断面図である。管軸方向に長く延在したレーザ加工によって形成された封着金属箔3は、断面形状では、ほぼ等間隔、かつほぼ同じ深さの複数の溝Gで構成されている。なお、封着金属箔3は、当該箔と石英ガラスとの密着性をより高めるために、その側縁部が次第に薄くなるナイフエッジ形状になっている。このような形状の封着金属箔3について、レーザ加工によって粗面を形成する場合は、溝の形成位置を当該箔の側縁部が溝Gによって貫通したり、破壊されたりしないような位置までとして、側縁部のナイフエッジ部分には溝Gが形成されないように構成するのが効果的である。なお、図2に示す例において、電極2の軸方向に長く延在して形成された溝Gは、図3に示すようにほぼ等間隔で、かつほぼ等しい深さの複数の長く延在した溝に形成されている。
しかし、本発明において、電極2の軸方向の溝Gは、電極2の軸方向に平行で、かつ直線状に長く延在しているのが好ましいが、これに限定されるものではなく、所望により例えば後述するような屈曲または湾曲など非直線であって全体として軸方向に長い溝であればよい。
また、封着金属箔3の表面に形成される電極2の軸方向の溝Gの長さおよび溝Gの数は、特段限定されないので、所望により数本の溝Gを電極2の基端部を接続した方の面の両側にそれぞれ形成しただけでもよいし、場合によっては1本づつを形成したものであってもよい。
次に、電極2の軸方向の溝Gにおける好適な深さD、幅Wおよび隣接する溝G間のピッチP1について説明する。
まず、溝Gの深さDについて説明する。すなわち、上記溝Gの好適な深さDは1μm以上である。より一層好適には2μm程度である。なお、上記溝Gの深さDには上限が設定されていないが、その理由は次のとおりである。すなわち、本発明において、上記溝Gの深さDは、その数値が大きいほど効果的である。しかし、封着金属箔3には肉厚があり、上記溝Gの深さDが肉厚を超えるようでは封着金属箔3の機能が阻害されるので、溝Gが封着金属箔3を肉厚方向に貫通しない深さである必要がある。また、封着金属箔3の機能を充分に活かす目安としては、凡そ肉厚の半分までの溝Gの深さであるのが望ましい。これらの事情を勘案すれば、自ずと上限が存在してしまうからである。
次に、溝Gの幅Wについて説明する。すなわち、上記溝Gの好適な幅Wは100μm以下である。より一層好適には50μm以下である。
さらに、隣接する溝G間のピッチP1について説明する。すなわち、上記溝G間の好適なピッチは、200μm以下である。より一層好適には100μm以下である。なお、上記溝G間のピッチP1は、隣接する一対の溝の中央部間の距離である。
以上、溝Gの深さD、幅W、ピッチP1の好適寸法について説明したが、本発明では、封着金属箔3の表面に電極2の軸方向の溝Gを複数並べて形成することにより、ハロゲン化物が封着金属箔の側縁部へ進行するのを抑制できるのであり、上述の好適範囲に限らず、適宜の深さD、幅WおよびピッチP1を調節して所望の表面距離を形成することができる。
次に、粗面RSにおける電極2の軸方向の溝Gを、レーザスポットを連打することにより構成する場合について説明する。電極の軸方向に連続して形成される隣接するレーザスポット間のスポットピッチP2は、レーザスポットの直径をRとしたとき、数式:R/2≦P2<Rを満足する範囲内であるのがよい。その理由は以下のとおりである。
すなわち、スポットピッチP2がR/2未満の場合、図6(スポットピッチP2=R/6)が例示しているように、見た目においても溝らしくないばかりか、溝としての機能もあまり得られない。この場合、レーザ加工によって溝を形成すると、レーザスポットの周辺には加工の影響により、盛り上がりができるが、この盛り上がり部分の高さが箔の未加工面の高さに近くなる。そのため、図7(b)に示す図6の溝の断面模式図が例示しているように、軸方向に盛り上がり部が近接してしまい、溝としての機能が低くなってしまう。なお、図7(b)は図6のY−Y´線に沿う溝の断面を拡大した断面模式図である。
他方、スポットピッチP2がレーザスポットの直径Rより大きくなると、溝がレーザスポットごとに分断されてしまい、軸方向に長く連続した溝Gを形成することができなくなる。
これに対して、図7(a)に示す図5の溝の断面模式図が例示しているように、数式:R/2≦P2<Rを満足する範囲内であれば、所望の溝を得ることができる。なお、図7(a)は図5のX−X´線に沿う溝の断面を拡大した断面模式図である。
さらに、封着金属箔3の材質としては特段限定されないが、例えばモリブデン(Mo)またはレニウム−タングステン合金(Re−W)などを用いることができる。
さらにまた、封着金属箔3を封止部1bに埋設する方法は、特段限定されないが、例えば減圧封止法、ピンチシール法などを単独で、または組み合わせて採用することができる。包囲部1aの内容積が0.1cc以下の小形でキセノン(Xe)などの希ガスを室温で5気圧以上封入する前照灯などに用いるメタルハライドランプの場合は、後者が好適である。
ところで、図1において、左方の封止部1bを形成した後に、封止管1dが切除されないで封止部1bの外側端部から一体に延長していて、後述する口金B内へ延在している。
(外部リード線4A、4Bについて) 本形態において、外部リード線4A、4Bは、その先端が透光性気密容器1の両端の封止部1b内において封着金属箔3の他端に溶接され、基端側が外部へ導出されている。図1において発光管ITから右方へ導出された外部リード線4Aは、中間部が後述する外管OTに沿って折り返されて後述する口金B内に導入されて図示しない口金端子の一方t1に接続している。図1において発光管ITから左方へ導出された外部リード線4Bは、封止管1d内を管軸に沿って延在して口金B内に導入されて口金端子の他方(図示されていない。)に接続している。
(放電媒体について) 放電媒体は、少なくとも金属ハロゲン化物および希ガスを含む。なお、水銀は、含んでもよいし、含まなくてもよい。しかし、本発明によれば、封着金属箔が電極2の軸方向に長い溝Gからなる粗面RSを備えているために、封止部1bの石英ガラスとの密着性が顕著に優れているとともに、ハロゲン化物が封着金属箔の周縁部に向かって進行するのを効果的に抑制するので、水銀フリーランプであってもクラックリークが効果的に抑制されて寿命特性の良好なメタルハライドランプを得ることができる。水銀フリーランプに好適であれば、それより内圧および封着金属箔の温度が低い水銀入りランプにも全く問題がなく適応することはいうまでもない。
金属ハロゲン化物は、少なくとも発光金属を含む金属のハロゲン化物である。しかし、具体的な金属のハロゲン化物は、特段限定されない。例えば、前照灯用の水銀フリーランプとしての好適な構成としては、スカンジウム(Sc)、ナトリウム(Na)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)および希土類金属のグループから選択された複数の金属のハロゲン化物を含んでいる。この態様において、放電媒体は、上記グループに属する金属のハロゲン化物のみからなる構成に加えて、補助的にグループ以外の金属のハロゲン化物を含有することが許容される。例えば、主発光物質としてタリウム(Tl)のハロゲン化物を添加することにより、発光効率を一層高めることができる。
また、上記態様において、亜鉛(Zn)のハロゲン化物は、相対的に蒸気圧が高くて、かつ可視域の発光が少ないので、主としてランプ電圧形成に寄与する。しかし、ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物としては、所望により亜鉛とほぼ同様の作用、効果を有しているために、亜鉛に代えるかまたはこれに加えて次のグループからなる金属のハロゲン化物を用いることができる。すなわち、マグネシウム(Mg)、コバルト(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、アンチモン(Sb)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)のグループから選択された一種または複数種の金属のハロゲン化物を封入することにより、ランプ電圧を所望の値に高めることができる。上記のグループの金属は、いずれも蒸気圧が高くて可視域に発光しないか、または発光が比較的少ない金属すなわち光束を稼ぐ発光金属としては期待されないが、主としてランプ電圧を形成するのに好適な金属である。
希ガスは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用し、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)などの一種または複数種を用いることができる。また、自動車前照灯用のメタルハライドランプMHLとしては、光束立ち上がりを早めるためおよび始動直後から白色光を発光させるために、キセノンを5気圧以上、好ましくは7〜18気圧の範囲、より一層好ましくは8〜13気圧の範囲で封入するか、あるいは点灯時の内部空間内の圧力が50気圧以上になるように封入するものとする。これにより、始動直後の発光金属の蒸気圧が低いときに、立ち上がり時の光束としてXeの白色発光を寄与させることができる。
(水銀について) 水銀フリーランプとしての態様の場合、本質的に水銀を含まない。この態様においては、水銀(Hg)を全く封入していないだけでなく、透光性気密容器1の内容積1cc当たり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀が存在していることを許容する。
しかし、水銀を全く封入しないことは環境上望ましいことである。従来のように水銀蒸気によって放電ランプのランプ電圧を所要に高くする場合、短アーク形においては気密容器の内容積1cm当たり20〜40mg、さらに場合によっては50mg以上封入していたことからすれば、水銀量が実質的に頗る少ないといえる。
(ハロゲンの種類について) ハロゲン化物を構成するハロゲンの種類としては、反応性に関してハロゲンの中でヨウ素が最も適当であり、少なくとも上記主発光金属は、主としてヨウ化物として封入される。しかし、要すれば、ヨウ化物および臭化物のように異なるハロゲンの化合物を併用することもできる。
〔絶縁チューブTについて〕 絶縁チューブTは、セラミックスからなり、絶縁チューブTは、外部リード線4Aを被覆している。
〔外管OTについて〕 本発明において、メタルハライドランプMHLは、所望により外管OTを具備していることが許容される。外管OTは、石英ガラスまたはハイシリケートガラスなどからなり、その内部に発光管ITの少なくとも主要部を収納する手段である。そして、発光管ITから外部へ放射される紫外線を遮断し、機械的に保護し、かつ発光管ITの透光性気密容器1を手で触れることで人の指紋や脂肪が付いて失透の原因とならないようにしたり、あるいは透光性気密容器1を保温したりする。
また、外管OTの内部は、その目的に応じて外気に対して気密に封止してもよいし、不活性ガスが封入されていてもよい。本形態では、窒素を0.1気圧封入している。
さらに、外管OTの外面または内面に遮光膜を配設することもできる。
図示の形態においては、外管OTを形成する際に、その両端を透光性気密容器1の両端から管軸方向に延在する封止部にガラス溶着させることによって外管OTを透光性気密容器1で支持するように構成することができる。外管OTは、紫外線カット性能を備えており、内部に発光管ITを収納していて、両端の縮径部5が発光管ITの封止部1bにガラス溶着している。しかし、内部は気密ではなく、外気に連通している。
〔口金Bについて〕 本発明において、メタルハライドランプMHLは、所望により口金Bを具備していることが許容される。口金Bは、メタルハライドランプMHLを図示しない点灯回路に接続したり、加えて機械的に支持したりするのに機能する手段であって、図示の形態においては、自動車前照灯用として規格化されているもので、発光管ITおよび外管OTを中心軸に沿って植立して支持していて、自動車前照灯の背面に着脱可能に装着されるように構成されている。
次に、封着金属箔3の粗面RSの実施例を示せば次のとおりである。
電極2の軸方向の溝Gの深さD:2μm、幅W;30μm、隣接する溝間のピッチP1:50μm、スポットピッチP2:25μm、スポット重なり5μm
なお、上記実施例において、溝Gの形成には18A、スポット径30μmのYAGレーザを用いた。
さらに、粗面RSの電極2の軸方向の溝Gの深さD、幅Wおよび隣接する溝間のピッチP1を変化させた封着金属箔3を用いて製作したメタルハライドランプについてEU定格モード点灯におけるリーク発生率およびリーク発生時間を試験した結果を、表1、表2、図8および図9を参照して説明する。なお、試験に供したメタルハライドランプは水銀フリーであり、その主な仕様は、次のとおりである。電極の基端部の直径:0.3mm、電極間距離4.2mm、封着金属箔:長さ7.0mm、幅1.5mm、厚さ20μmである。また、粗面RSの表面粗さRaは、封着金属箔3の表面の50μmの面積内を測定して求めた。
Figure 2007227329
表1から理解できるように、電極2の軸方向に長い溝Gの深さDが1μm以上であれば、EU定格モードで2000時間の間リークが発生しないメタルハライドランプを得ることができる。
また、図8は表1のメタルハライドランプ各12灯についてEUモードの試験を行ったときに、そのうちのいずれか1灯にクラックリークが発生したときの点灯時間を示すグラフであるが、図8から理解できるように、電極2の軸方向に長い溝Gの深さDが1μm以上であれば、EU定格モードで2000時間までリークが発生しないメタルハライドランプを得ることができる。また、溝Gの深さDが3.0μm以上であれば、2300時間までリークが発生しないメタルハライドランプを得ることができる。
Figure 2007227329
表2は、溝GのピッチP1が異なるメタルハライドランプ各12灯についてEUモードの試験を行ったときのリーク発生率を示す。表2から理解できるように、溝GのピッチP1が200μm以下であれば、EU定格モードで2000時間までリークが発生しないメタルハライドランプを得ることができる。
図9は、溝GのピッチP1が異なるメタルハライドランプ各12灯についてEUモードの試験を行ったときのリーク発生率を示す。図9から理解できるように、溝GのピッチP1が200μm以下であれば、EU定格モードで2000時間までリークが発生しないメタルハライドランプを得ることができる。また、電極2の軸方向の溝GのピッチP1が100μm以下であれば、2500時間までリークが発生しないメタルハライドランプを得ることができる。
以下、図10および図11を参照して本発明のメタルハライドランプを実施するための他の形態について説明する。なお、各図において、図2と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
図10は、本発明のメタルハライドランプを実施するための第2の形態における封着金属箔の表面に形成した電極の軸方向に長い溝の表面パターンを示す正面図である。本形態においては、電極の軸方向に長い溝Gからなる粗面RSの表面パターンが細かい湾曲が連続的に形成された波状に形成されている。
図11は、本発明のメタルハライドランプを実施するための第3の形態における封着金属箔の表面に形成した電極の軸方向に長い溝の表面パターンを示す正面図である。本形態においては、電極の軸方向に長い溝Gからなる粗面RSの表面パターンが短い直線が屈曲して連続的に形成された波状に形成されている。
本発明のメタルハライドランプを実施するための第1の形態としての自動車前照灯用メタルハライドランプを示す側面図 同じく封着金属箔部分の拡大正面図 同じく封着金属箔の拡大断面図 同じくレーザ加工によって形成された溝の形状を拡大して示す模式的拡大断面図 同じくレーザ加工により形成された溝を拡大して示す封着金属箔表面の顕微鏡写真 レーザ加工により形成されたスポットピッチP2がR/2未満の粗面を拡大して示す封着金属箔表面の顕微鏡写真 (a)が図5の溝の断面模式図、(b)が図6の溝の断面模式図 本発明のメタルハライドランプを実施するための第1の形態における電極の軸方向に長い溝の深さDとリーク発生時間の関係を示すグラフ 本発明のメタルハライドランプを実施するための第2の形態における電極の軸方向に長い溝のピッチP1とリーク発生時間の関係を示すグラフ 本発明のメタルハライドランプを実施するための第2の形態における封着金属箔の表面に形成した電極の軸方向に長い溝の表面パターンを示す正面図 本発明のメタルハライドランプを実施するための第3の形態における封着金属箔の表面に形成した電極の軸方向に長い溝の表面パターンを示す正面図
符号の説明
1…透光性気密容器、1a…包囲部、1b…封止部、1c…内部空間、2…電極、3…封着金属箔、4A、4B…外部リード線、5…縮径部、G…電極の軸方向に長い溝、IT…発光管、MHL…メタルハライドランプ、OT…外管、RS…粗面

Claims (6)

  1. 内部に放電空間を有する包囲部および包囲部に連接した封止部を備えている透光性気密容器と;
    透光性気密容器の放電空間内に封装され電極と;
    少なくとも発光金属のハロゲン化物および希ガスを含み透光性気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;
    電極の基端部が接続して透光性気密容器の封止部内に気密に埋設され、電極の軸方向に溝が形成された封着金属箔と;
    を具備していることを特徴とするメタルハライドランプ。
  2. 封着金属箔は、その溝の深さDが1μm以上であることを特徴とする請求項1記載のメタルハライドランプ。
  3. 封着金属箔は、その溝の幅Wが100μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のメタルハライドランプ。
  4. 封着金属箔は、隣接する溝間のピッチP1が200μm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載のメタルハライドランプ。
  5. 前記封着金属箔の前記溝は、レーザスポットの連打により構成されたものであり、前記溝の長さ方向のスポットピッチP2がレーザスポットの直径をRとしたとき、数式R/2≦P2<Rを満足することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載のメタルハライドランプ。
  6. 放電媒体は、水銀を本質的に含んでいないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載のメタルハライドランプ。
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