JP2007226946A - 垂直磁気記録媒体の初期化方法、垂直磁気記録媒体、及び磁気記録装置 - Google Patents

垂直磁気記録媒体の初期化方法、垂直磁気記録媒体、及び磁気記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】垂直磁気記録媒体に、フォーマット情報等の磁気情報パターンを垂直磁気転写する前に実施される垂直磁気記録媒体の初期化(消磁)を良好に実施できる垂直磁気記録媒体の初期化方法、この初期化方法を経た後に垂直磁気転写された垂直磁気記録媒体、及びこの垂直磁気記録媒体を備えた磁気記録装置を提供する。
【解決手段】保持力Hcの磁性層40Bを有する垂直磁気記録媒体40に磁界強度Hexの磁界Gを印加して磁性層を初期化する垂直磁気記録媒体の初期化方法である。磁界の媒体表面に平行な方向の磁界強度HexPを、HexP>1.3×Hcとなるように制御する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、垂直磁気記録媒体の初期化方法、垂直磁気記録媒体、及び磁気記録装置に係り、特に、ハードディスク装置等に用いられる垂直磁気記録ディスクに、フォーマット情報等の磁気情報パターンを垂直磁気転写する前に実施される垂直磁気記録媒体の初期化方法、この初期化方法を経た後に垂直磁気転写された垂直磁気記録媒体、及びこの垂直磁気記録媒体を備えた磁気記録装置に関する。
近年、急速に普及しているハードディスクドライブに使用される磁気ディスク(ハードディスク)は、磁気ディスクメーカーよりドライブメーカーに納入された後、ドライブに組み込まれる前に、フォーマット情報やアドレス情報が書き込まれるのが一般的である。この書き込みは、磁気ヘッドにより行うこともできるが、これらのフォーマット情報やアドレス情報が書き込まれているマスターディスクより一括転写する方法が効率的であり、好ましい。
この磁気転写技術は、マスターディスクと被転写ディスク(スレーブディスク)とを密着させた状態で、片側又は両側に電磁石装置、永久磁石装置等の磁界生成手段を配設して転写用磁界を印加し、マスターディスクの有する情報(たとえばサーボ信号)に対応する磁化パターンの転写を行うものである。
ところで、磁気記録媒体としては、その磁性層の面内に磁化容易軸を有する面内磁気記録媒体、及び、磁性層の面に垂直な方向に磁化容易軸を有する垂直磁気記録媒体に分類されるが、従来は、一般的に面内磁気記録媒体が用いられていた。
その一方で、記録密度の大幅な向上(記憶容量の増大)が期待できる、垂直磁気記録媒体や垂直磁気記録方法の開発が進行しており、近未来において、市場への大規模な導入が叫ばれている。
したがって、上記の磁気転写も垂直磁気記録に対応した構成のものが求められる。すなわち、上述した磁気転写技術の開発は、専ら面内磁気記録媒体への磁気転写を主眼において進められており、垂直磁気記録に適用可能な磁気転写技術の開発が求められている。そして、このような磁気転写の前段階として欠かせない技術に垂直磁気記録媒体の初期化方法(外部磁界印加による全面消磁方法)が挙げられる。
このような事情を背景に、垂直磁気記録媒体の初期化方法に関する提案もなされている(たとえば、非特許文献1等。)。
上記の論文(非特許文献1)においては、外部磁界印加による全面一括の交流消磁方法とその特性結果が述べられている。
IEEE Transactions on magnetics, vol. 41 (2005) 3127."Bulk AC-Erasure Technique for Perpendicular Recording Media: Effect of Exchange Coupling" E. N. Abarra, Paramjit Gill, B. R. Acharya, J. Zhou, M. Zheng, G. Choe, and B. Demczyk
しかしながら、非特許文献1に記載の上記提案は、単に消磁方法とその特性結果を説明するのみであり、具体的な最適値、たとえば、印加磁界強度の規定や印加磁界に含まれる垂直磁界成分については何ら言及していないので、これのみで最適な垂直磁気記録媒体の初期化(消磁)を行うのは、非常に困難である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、垂直磁気記録媒体に、フォーマット情報等の磁気情報パターンを垂直磁気転写する前に実施される垂直磁気記録媒体の初期化(消磁)を良好に実施できる垂直磁気記録媒体の初期化方法、この初期化方法を経た後に垂直磁気転写された垂直磁気記録媒体、及びこの垂直磁気記録媒体を備えた磁気記録装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、保持力Hcの磁性層を有する垂直磁気記録媒体に磁界強度Hexの磁界を印加して前記磁性層を初期化する垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、前記磁界の媒体表面に平行な方向の磁界強度HexPを、HexP>1.3×Hcとなるように制御することを特徴とする垂直磁気記録媒体の初期化方法を提供する。
また、本発明は、保持力Hcの磁性層を有する垂直磁気記録媒体に磁界強度Hexの磁界を印加して前記磁性層を初期化する垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、前記磁界の媒体表面に垂直な方向の磁界強度HexVを、HexV<Hcとなるように制御することを特徴とする垂直磁気記録媒体の初期化方法を提供する。
また、本発明は、保持力Hcの磁性層を有する垂直磁気記録媒体に磁界強度Hexの磁界を印加して前記磁性層を初期化する垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、前記磁界の媒体表面に平行な方向の磁界強度HexPを、HexP>1.3×Hcとなるように制御し、かつ、前記磁界の媒体表面に垂直な方向の磁界強度HexVを、HexV<Hcとなるように制御することを特徴とする垂直磁気記録媒体の初期化方法を提供する。
本発明によれば、垂直磁気記録媒体の交流消磁を充分に達成するための外部印加磁界条件を上記のように具体的に規定したので、ヘッドライトにより消磁する方法よりもノイズが少ない交流消磁を短時間で行うことができる。
すなわち、垂直磁気記録媒体において直流消磁された領域に隣接するサーボ信号は、バイアスのかかった信号出力を示し、サーボフォロイングに悪影響を与える問題があるが、本発明のように交流消磁した垂直磁気記録媒体では上記問題は発生しない。したがって、本発明によれば、トラッキング精度を向上させることができる。
なお、本発明における外部印加磁界条件の詳細については後述する。
本発明において、磁界生成手段を設けるとともに、該磁界生成手段に対し前記垂直磁気記録媒体を相対移動させながら、該垂直磁気記録媒体の円周方向に磁界を印加して該垂直磁気記録媒体を円周方向に交流消磁させることが好ましい。垂直磁気記録媒体にこのように外部磁界を印加することにより、全面一括に交流消磁することができる。
また、本発明は、前記の垂直磁気記録媒体の初期化方法により初期化された垂直磁気記録媒体に対し、該垂直磁気記録媒体に転写すべき情報に応じた磁性層の配列からなるパターンが表面に形成された円盤状の基板である垂直磁気転写用マスターディスクを密着させながら転写磁界を印加して前記垂直磁気転写用マスターディスクの磁気パターンを前記垂直磁気記録媒体に転写させる磁気転写方法により磁気転写されたことを特徴とする垂直磁気記録媒体、及びこの垂直磁気記録媒体を備えたことを特徴とする磁気記録装置を提供する。
本発明によれば、垂直磁気記録媒体の交流消磁が充分に達成されるので、この後になされる磁気転写によって得られる垂直磁気記録媒体及びこれを組み込んだ磁気記録装置の性能も向上する。
以上説明したように、本発明によれば、垂直磁気記録媒体の初期化(消磁)を良好に実施でき、その結果、良好な垂直磁気転写を行うことができる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る垂直磁気記録媒体の初期化方法、垂直磁気記録媒体、及び磁気記録装置の好ましい実施の形態について詳説する。
先ず、本発明に適用される垂直磁気記録媒体(スレーブディスク)について説明する。垂直磁気記録媒体は、一般的に、この垂直磁気記録媒体に転写すべき情報に応じた磁性層の配列からなるパターンが表面に形成された円盤状の基板である垂直磁気転写用マスターディスクより磁気転写され、1枚のマスターディスクより複数枚が転写されるのでスレーブディスクと称呼されている。
図1は、スレーブディスク40の要部断面図である。このスレーブディスク40において、サブストレートの下面に磁気記録層40Bが形成されている。なお、この図は模式図であり、各部の寸法は実際とは異なる比率で示している。
スレーブディスク40は、両面又は片面に磁気記録層が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状磁気記録媒体であり、マスターディスク46に密着させる以前に、グライドヘッド、研磨体などにより表面の微小突起又は付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシィング等)が必要に応じて施される。また、スレーブディスク40には予め本発明の初期化(初期磁化)が施される。この詳細は後述する。
スレーブディスク40としては、ハードディスク、高密度フレキシブルディスク等の円盤状磁気記録媒体が使用できる。スレーブディスク40の磁気記録層には、塗布型磁気記録層、メッキ型磁気記録層、又は金属薄膜型磁気記録層が採用できる。
金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi)を用いることができる。これらは、磁束密度が大きいこと、磁界印加方向と同じ方向(垂直磁気記録の場合垂直方向)の磁気異方性を有していることより、明瞭な転写が行えるため好ましい。
そして磁性材料の下(支持体側)に必要な磁気異方性を付与するために、非磁性の下地層を設けることが好ましい。この下地層には、結晶構造と格子定数を磁性層に合わすことが必要である。そのためには、Ti、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru、Pd等を用いることが好ましい。
更に、磁気記録層の垂直磁化状態を安定化させ、また、記録再生時の感度を向上させるために、非磁性の下地層の下に、更に軟磁性層からなる裏打ち層を設けることが好ましい。
なお、磁気記録層の厚さは、10nm〜500nmであることが好ましく、20nm〜200nmであることが更に好ましい。また、非磁性層の厚さは、10nm〜150nmであることが好ましく、20nm〜80nmであることが更に好ましい。また、裏打ち層の厚さは、50nm〜2000nmであることが好ましく、80nm〜400nmであることが更に好ましい。
図1のスレーブディスク40において、磁気記録層40Bには矢印方向の垂直磁気パターンが記録されている。この上下に入り乱れている垂直磁気パターンが、後述する初期化(初期磁化)により交流消磁される。
次に、本発明に係る垂直磁気記録媒体の初期化方法に使用される装置について説明する。図2は、磁気消磁装置の要部斜視図である。図3は、消磁用磁界の印加方法を示す平面図である。
図2の磁気消磁装置10において、初期磁化時には、スレーブディスク40のスレーブ面(磁気記録層40Bの側)を上面とし、磁界生成手段30により消磁用磁界を印加して交流消磁することができるようになっている。
消磁用磁界を印加する磁界生成手段30は、回転駆動手段に保持されたスレーブディスク40の半径方向に延びるギャップ31を有するコア32にコイル33が巻き付けられた電磁石装置34が上側に配設されてなり、トラック40A方向と平行な磁力線G(図3参照)を有する消磁用磁界を印加できるようになっている。
磁界印加時には、スレーブディスク40を回転させつつ磁界生成手段30によって消磁用磁界を印加できるように回転手段が設けられている。なお、この構成以外に、磁界生成手段30を回転移動させるように設ける構成も採用できる。
次に、磁界生成手段30により印加する消磁用磁界(外部磁界)について説明する。図4は、磁気記録層40Bに対する消磁用磁界(磁力線)Gの方向を示す概念図である。なお、図4において消磁用磁界Gが磁気記録層40Bの上方に図示されているが、実際は磁気記録層40Bの内部に印加されているものとする。
図4において消磁用磁界Gは水平面(磁気記録層40Bの表面)に対して角度αをなしている。したがって、図示のように、平行な方向の磁界強度は、HexPとなり、垂直な方向の磁界強度は、HexVとなる。
この消磁用磁界Gの磁界強度は、スレーブディスク40の磁気記録層40Bの保持力Hcに対して、以下の1)〜3)のいずれかの関係にあることが求められる。
1)平行な方向の磁界強度HexPを、HexP>1.3×Hcとなるように制御すること。
2)垂直な方向の磁界強度HexVを、HexV<Hcとなるように制御すること。
3)平行な方向の磁界強度HexPを、HexP>1.3×Hcとなるように制御し、かつ、垂直な方向の磁界強度HexVを、HexV<Hcとなるように制御すること。
すなわち、本発明者らは、消磁用磁界Gの磁界強度を上記のように規定すれば、ヘッドライトにより消磁する方法よりもノイズが少ない交流消磁を短時間で行うことができることを見出した。
すなわち、垂直磁気記録媒体において直流消磁された領域に隣接するサーボ信号は、バイアスのかかった信号出力を示し、サーボフォロイングに悪影響を与える問題があるが、本発明のように交流消磁した垂直磁気記録媒体では上記問題は発生しない。したがって、本発明によれば、トラッキング精度を向上させることができる。
なお、消磁用磁界Gの磁界強度の詳細については実施例において後述する。
次に、本発明に係る垂直磁気記録媒体の初期化方法により交流消磁された垂直磁気記録媒体の磁気転写について説明する。
先ず、磁気転写に使用されるマスターディスク46について説明する。図5は、マスターディスクの平面図であり、図6は、マスターディスク46の表面の微細な突起状パターンを示す部分拡大斜視図である。なお、図6は模式図であり各部の寸法は実際とは異なる比率で示している。
図5に示されるように、マスターディスク46は円盤状に形成されており、マスターディスク46の径方向中周部分(マスターディスク46の内周部分46dと外周部分46eを除いた部分)には、円周方向に、ハッチングで示されるサーボ領域46bと非サーボ領域46c(非ハッチング部分)とが交互に形成されている。
サーボ領域46bは、磁気パターン(サーボ情報パターン)が形成されている領域であり、非サーボ領域46cは、磁気パターン(サーボ情報パターン)が形成されていない領域である。
このマスターディスク46は、内径を有する円環状(ドーナツ状)であるが、内径を有しない円盤状のものであってもよい。
図6は、サーボ領域46bの部分拡大図であり、基板47の片面に磁性層48による微細な突起状パターンが形成された転写情報担持面が形成されており、基板47の反対側の面が不図示の密着手段に保持されるようになっている。この微細な突起状パターンの形成は、後述するフォトファブリケーション法等によりなされる。このマスターディスク46の片面(転写情報担持面)は、スレーブディスク40と密着される面である。
微細な突起状パターンは、平面視で長方形であり、厚さtの磁性層48が形成された状態で、トラック方向(図中の太矢印方向)の長さbと、半径方向の長さlとよりなる。この長さbとlの最適値は、記録密度や記録信号波形等により異なるが、たとえば、長さbを80nmに、長さlを100nmにできる。
この微細な突起状パターンはサーボ信号の場合は、半径方向に長く形成される。この場合、たとえば、半径方向の長さlが0.05〜20μm、トラック方向(円周方向)の長さbが0.05〜5μmであることが好ましい。この範囲で半径方向の方が長いパターンを選ぶことが、サーボ信号の情報を担持するパターンとしては好ましい。
基板27表面の微細な突起状パターンの深さ(突起の高さ)は、80〜800nmの範囲が好ましく、100〜600nmの範囲がより好ましい。
マスターディスク46において、基板47がNi等を主体とした強磁性体の場合には、この基板47のみで磁気転写が可能であり、磁性層48は被覆しなくてもよいが、転写特性のよい磁性層48を設けることにより、より良好な磁気転写が行える。基板47が非磁性体の場合には、磁性層48を設けることが必要である。マスターディスク46の磁性層48は、保磁力Hcが48kA/m(≒600Oe)以下の軟磁性層であることが好ましい。
マスターディスク46の基板47としては、ニッケル、シリコン、石英ガラス等各種組成のガラス、アルミニウム、合金、各種組成のセラミックス、合成樹脂等が使用できる。ただし、合成樹脂の場合には、フォトファブリケーション法の際のリフトオフ工程でのレジスト剥離液で変質しない材質とするか、レジスト剥離液で変質しないような工夫(たとえば、保護コート)をする必要がある。
この基板47表面の凹凸パターンの形成は、フォトファブリケーション法や、フォトファブリケーション法等で形成した原盤によるスタンパー法等によって行える。
スタンパー法における原盤の形成は、たとえば、以下のように行える。表面が平滑なガラス板(又は石英ガラス板)の上にスピンコート法等によりフォトレジストの層を形成し、プレベーク後に、このガラス板を回転させながら、サーボ信号に対応して変調したレーザー光(又は電子ビーム)を照射し、フォトレジスト層の略全面に所定のパターン、たとえば各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号に相当するパターンを円周上の各フレームに対応する部分に露光する。
その後、フォトレジストの層を現像処理し、露光部分が除去されたフォトレジストの層により形成された凹凸形状を有するガラス原盤を得る。次いで、ガラス原盤の表面の凹凸パターンを基に、この表面にメッキ(電鋳)を施し所定厚さまで形成することにより、表面にポジ状の凹凸パターンを有するNi基板を作成する。そして、この基板をガラス原盤から剥離する。
この基板をそのままプレス原盤とするか、凹凸パターン上に必要に応じて軟磁性層、保護膜等を被覆してプレス原盤とする。
また、ガラス原盤にメッキを施して、電鋳により第2の原盤を作成し、この第2の原盤に更にメッキを施して、電鋳によりネガ状凹凸パターンを有する反転原盤を作成してもよい。更に、第2の原盤にメッキを施して電鋳を行うか、低粘度の樹脂を押し付けて硬化させるかした、第3の原盤を作成し、第3の原盤にメッキを施して電鋳を行い、ポジ状凹凸パターンを有する基板を作成してもよい。
一方、フォトファブリケーション法における原盤の形成は、たとえば、以下のように行える。平板状の基板の平滑な表面にスピンコート法等によりフォトレジストの層を形成し、プレベーク後に、この基板を回転させながら、サーボ信号に対応して変調したレーザー光(又は電子ビーム)を照射し、フォトレジスト層の略全面に所定のパターン、たとえば各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号に相当するパターンを円周上の各フレームに対応する部分に露光する。
その後、フォトレジストの層を現像処理し、露光部分が除去されたフォトレジストの層により形成された凹凸形状を有する基板を得る。現像処理後の基板をポストベークし、フォトレジストの層の基板への付着力を増大させる。
次いで、エッチング工程により、基板のエッチングを行い、凹凸パターンに相当する深さの穴を形成する。次いで、フォトレジストを除去し、表面を研磨して、バリがある場合には、これを取り除くとともに、表面を平滑化する。これにより、凹凸形状を有する原盤を得る。
次いで、原盤の表面の凹凸パターンを基に、この表面にメッキ(電鋳)を施し所定厚さまで形成することにより、表面にネガ状の凹凸パターンを有するNi基板を作成する。そして、この基板を原盤から剥離する。
基板や電鋳による原盤の材料としては、金属ではNi又はNi合金を使用することができる。この基板を作成するメッキ法としては、無電解メッキ、電鋳、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法等が適用できる。
次に、磁性層48の形成方法について説明する。図7は、磁性層48の形成フローを説明する基板47の断面図である。図7(A)は、未処理の基板47であり、既述の工程により基板47の表面に多数の微細な突起状パターン47A、47A…と、この突起状パターン47A、47A同士の間に形成される凹陥部47B、47B…とが交互に形成されている。
先ず、図7(B)に示されるように、基板47の表面にレジスト剤Rを塗布し、レジスト剤Rで突起状パターン47A、47A…の表面を覆うとともに、レジスト剤Rを凹陥部47B、47B…に略充填する。レジスト剤Rとしては、フォトレジストが一般的であるが、後述するリフトオフ工程を行えるものであれば、フォトレジストに限定される訳ではなく、他の各種材料が使用できる。
レジスト剤Rの塗布方法としては、公知の各種方法、たとえば、スピンコート、ダイコート、ロールコート、ディップコート、スクリーン印刷等の各種塗布方法等が採用できる。なお、凹陥部47B、47B…のサイズが微小な場合には、所定粘度以上のレジスト剤Rでは、凹陥部47B、47B…に略充填するのが困難な場合があるが、そのときは、希釈等によりレジスト剤Rの粘度を低下させればよい。
また、減圧雰囲気で(たとえば、デシケータの中に基板47を入れ、ロータリー真空ポンプ等によりデシケータ内部を真空引きし)基板47の表面にレジスト剤Rを塗布し、その後に大気圧に解放する方法も、微小なサイズの凹陥部47B、47B…にレジスト剤Rを充填するのに有効である。
同様に、たとえば、デシケータの中に基板47を入れ、大気圧解放状態で基板47の表面にレジスト剤Rを塗布し、その後にロータリー真空ポンプ等によりデシケータ内部を真空引きする方法も、微小なサイズの凹陥部47B、47B…にレジスト剤Rを充填するのに有効である。この場合、真空引きにより、凹陥部47B、47B…より気泡がレジスト剤R内部に発生し、レジスト剤Rの表面より消失する。
次いで、図7(B)の状態で、レジスト剤Rを硬化させる。レジスト剤Rがネガタイプのフォトレジスト(たとえば、環化ゴムタイプ)の場合には、紫外線等を照射して架橋重合させればよい。レジスト剤Rがポジタイプのフォトレジストの場合には、ベーク処理(ポストベーク)を行って架橋重合させればよい。
次いで、図7(C)に示されるように、アッシングにより、突起状パターン47A、47A…の表面を覆ったレジスト剤Rを完全に除去するとともに、凹陥部47B、47B…に略充填されたレジスト剤Rを一部除去する。
すなわち、突起状パターン47A、47A…の表面を覆うレジスト剤Rの厚さと、凹陥部47B、47B…に充填されたレジスト剤Rの厚さは異なるので、突起状パターン47A、47A…の表面を覆ったレジスト剤Rを完全に除去した時点において、凹陥部47B、47B…に充填されたレジスト剤Rは残存しており、凹陥部47B、47B…の底面を覆っている。
次いで、図7(D)に示されるように、基板47の表面に磁性膜を形成し、レジスト剤Rが完全に除去された突起状パターン47A、47A…の表面、及び凹陥部47B、47B…内に残存しているレジスト剤Rの表面に磁性層48を形成する。
磁性層48(軟磁性層)の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などにより成膜する。磁性層48の磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)を用いることができる。特に、FeCo、FeCoNiを好ましく用いることができる。
磁性層48の厚さtは、50nm〜10000nmの範囲が好ましく、100nm〜5000nmの範囲が更に好ましい。すなわち、磁性層48の厚さtと突起状パターンの幅(この場合は、図2のトラック方向の長さb)との比t/bを1以上とすることが好ましい。このような磁性層48の厚さtと突起状パターンの幅bとの比とすれば、磁性層48の磁化方向をディスク面に対して安定的に垂直に維持でき、垂直磁気転写用のマスターディスク46として好ましい。
なお、磁性層48の上にダイヤモンドライクカーボン等の保護膜を設けることが好ましく、保護膜の上に更に潤滑剤層を設けてもよい。この場合、保護膜として厚さが5〜30nmのダイヤモンドライクカーボン膜と潤滑剤層とする構成が好ましい。また、磁性層48と保護膜との間に、Si等の密着強化層を設けてもよい。潤滑剤は、スレーブディスク40との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などの耐久性の劣化を改善する効果を有する。
次いで、凹陥部47B、47B…内のレジスト剤Rを除去する。これにより、レジスト剤R表面の磁性層48も同時に除去され、その結果、図7(E)に示されるように、突起状パターン47A、47A…の表面にのみ磁性層48が形成された垂直磁気転写用のマスターディスク46が得られる。すなわち、凹陥部47B、47B…の磁性層48を選択的に除去するリフトオフ工程がなされる。
凹陥部47B、47B…内のレジスト剤Rを除去する方法としては、レジスト剤Rがフォトレジストである場合には、専用の剥離液を使用するのが一般的である。この場合、レジスト剤Rの表面が磁性層48で覆われているので、剥離液がレジスト剤Rに作用しにくいようにも思えるが、実際は、磁性層48のピンホール等より剥離液が浸透して、レジスト剤Rに作用する。
また、剥離液の作用を促進させるべく、超音波振動を印加したり、剥離液の温度管理(加熱)を施したりする方法も好ましく採用できる。
更に、剥離液を使用せずに、磁性層48を変質させない加熱雰囲気(たとえばオーブン)に所定時間放置し、レジスト剤Rを焼成により分解させる方法をも採用できる。フォトレジストは、有機物なので、加熱雰囲気(たとえば、百数十°Cの含酸素雰囲気)に放置することにより、COとHOになって消失するからである。
次に、マスターディスク46の磁性層パターンを被転写用ディスクであるスレーブディスク40に転写する磁気転写方法について説明する。図8は、マスターディスク46を使用して磁気転写を実施するための磁気転写装置100の要部斜視図である。
磁気転写装置100において、磁気転写時には、スレーブディスク40のスレーブ面(磁気記録面)を、マスターディスク46の情報担持面に接触させ、所定の押圧力で密着させることができるようになっている。そして、このスレーブディスク40とマスターディスク46との密着状態で、磁界生成手段である磁気転写ヘッド130により転写用磁界を印加してサーボ信号等の磁化パターンを転写記録することができるようになっている。
マスターディスク46による磁気転写は、図8に示されるように、スレーブディスク40の片面にマスターディスク46を密着させて片面に逐次転写を行う場合と、スレーブディスク40の両面にそれぞれマスターディスク46、46を密着させて両面で同時転写を行う場合とがある。なお、マスターディスク46には、スレーブディスク40と密着させる前に、付着した塵埃を除去するクリーニング処理が必要に応じて施される。
転写用磁界を印加する磁界生成手段133は、密着手段に保持されたスレーブディスク40及びマスターディスク46の半径方向に延びるギャップ131を有するコア132にコイル133が巻き付けられた電磁石装置134が上側に配設されてなり、トラック方向と平行な磁力線Gを有する転写用磁界を印加できるようになっている。
すなわち、図8において、磁気転写ヘッド130は、強磁性材料よりなる磁気コア132によりリング型に構成され、かつ巻線133を具備してなる電磁石よりなる構成のものである。
磁界印加時には、スレーブディスク40及びマスターディスク46を一体に回転させつつ、すなわち、磁気転写ヘッド130に対して矢印方向に相対移動させつつ、磁気転写ヘッド130によって転写用磁界TGを印加し、マスターディスク46の転写情報をスレーブディスク40のスレーブ面に磁気的に転写記録できるように回転手段が設けられている。なお、この構成以外に、磁界生成手段である磁気転写ヘッド130を回転移動させるように設ける構成も採用できる。
図9は、この磁気転写の基本工程を説明するための断面図である。このうち、図9(A)は、交流消磁されたスレーブディスク40を示し、(B)は、マスターディスク46とスレーブディスク40とを密着させて磁界を印加する工程を示し、(C)は磁気転写後のスレーブディスク40をそれぞれ示す。なお、(A)及び(C)において、スレーブディスク40についてはその下側の磁気記録層40Bのみを示している。また、各図は模式図であり各部の寸法は実際とは異なる比率で示している。
磁気転写は、既述の図8 に示されるように、スレーブディスク40の磁気記録層40B側の面とマスターディスク46の表面の磁性層48側の面とを密着させ、スレーブディスク40のトラック面に、転写用磁界TGを印加して磁気転写を行う。
この転写用磁界TGの方向は、スレーブディスク40の磁気記録層40の膜面に平行な方向と一致している。図9(B)に示されるように、転写用磁界TGの印加によってマスターディスク46の表面には、磁性層48の形状パターンに対応した漏れ磁束gを発生する。
この漏れ磁束gは、本質的に磁性層48の膜面と平行な方向成分を多く含有するものであるが、磁性層48の形状パターンの両端近傍においては、比較的大きな垂直方向成分を有している。したがって、漏れ磁束gの垂直方向成分磁界によってスレーブディスク40には、磁性層48の形状パターンに対応した記録磁化パターンが図9(C)に示されるように記録される。
なお、図9(C)において、記録磁化パターンの向きが反転する境界に示されるハッチング部分は、磁化遷移領域を示す。
以上の結果、図9に示されるように、スレーブディスク40の磁気記録層40Bにはマスターディスク46の突起状パターン47A、47A…(図7(A)参照)に応じた情報(たとえばサーボ信号)が磁気的に転写記録される。
なお、図9の説明では、スレーブディスク40の下側の磁気記録層40Bへの、下側のマスターディスク46による磁気転写について説明したが、スレーブディスク40の上側の磁気記録層についても、スレーブディスク40の上側にマスターディスク46を密着させて、下側の磁気記録層と同様にして、下側の磁気記録層と同時に磁気転写を行うこともできる。
磁気転写されたスレーブディスク40は、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)に組み込んで好適に使用できる。これに使用されるハードディスクドライブとしては、各ドライブメーカーより販売されている公知の各種装置を使用すればよい。
以上、本発明に係る垂直磁気記録媒体の初期化方法、垂直磁気記録媒体、及び磁気記録装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本実施形態においては、マスターディスク46は、図6に示されるように、非磁性基体である基板47の片面の突起状パターン上に磁性層48によるパターンが形成されているが、これに代えて、非磁性基体である平坦な基板の片面に磁性層48による突起状パターンが形成されている構成も採用できる。
同様に、図6に構成に代えて、非磁性基体である平坦な基板の表層部に強磁性薄膜よりなるパターン形状が埋め込まれて配列され、基板表面に凹凸のない構成も採用できる。
更に、図6においては、磁性層48の平面形状はすべて長方形としているが、実際にはこれに限られたものではなく、用途に応じて様々な形状をとることが可能である。
また、本実施形態においては、磁界生成手段130において、電磁石装置134がスレーブディスク40の上側に配設されているが、これに代えて、磁石装置(棒磁石)を2個スレーブディスク40の上側に間隔を設けて配して磁界を印加させる構成であってもよい。更に、磁石装置は、電磁石でも永久磁石でもよい。
[スレーブディスクの作製]
以下に説明する条件でスレーブディスク40を作製し、垂直磁気記録により所定の信号を記録した。その後、図2の磁気消磁装置10を使用して交流消磁を行い、スレーブディスク40の転写信号の評価を行った。
スレーブディスク40は、薄膜のガラスハードディスクとした。真空成膜装置を使用して、室温下で1.33×10−5Pa(10−7Torr)まで減圧した後に、アルゴンガスを導入して0.4Pa(3×10−3Torr)とした条件下で、ガラス板を200°Cに加熱し、CoCrPtの膜厚が25nm、磁束密度Msが5.7T(4500Gauss)、保磁力Hcが199kA/m(2500Oe)の磁性層を有する外径95mm(3.5インチ型)のハードディスクを作製した。
転写信号の評価は、以下の方法により行った。
[転写信号の評価]
電磁変換特性測定装置(協同電子製、型番:LS−90)によりスレーブディスク40の磁化状態の評価を行った。ヘッドには、ヘッドギャップ0.06μm、トラック幅0.14μmであるGMRヘッドを使用した。
読み込んだ信号をスペクトロアナライザーで周波数分解し、1次信号のピーク強度Cと外挿したノイズNの差(C/N)を測定した。
交流消磁前後のC/N比(単位:dB)の差分を外部印加磁界強度に対して後述する図10及び図11にプロットした。
[交流消磁の条件:実験1]
外部印加磁界強度を変化させ交流消磁を行った。そして、外部印加磁界の平行成分強度HexPとスレーブディスク40の保磁力Hcとの比を横軸に、交流消磁前後のC/N比(単位:dB)の差分を縦軸にプロットした。結果を図10に示す。
図10によれば、HexP>1.3×Hcとなるように制御することにより、ヘッドライトにより消磁する方法よりもノイズが少ない交流消磁を短時間で行うことができることが解る。
[交流消磁の条件:実験2]
外部印加磁界強度を変化させ交流消磁を行った。そして、外部印加磁界の垂直成分強度HexVとスレーブディスク40の保磁力Hcとの比を横軸に、交流消磁前後のC/N比(単位:dB)の差分を縦軸にプロットした。結果を図11に示す。
図11によれば、HexV<Hcとなるように制御することにより、ヘッドライトにより消磁する方法よりもノイズが少ない交流消磁を短時間で行うことができることが解る。
スレーブディスクの要部断面図 磁気消磁装置の要部斜視図 消磁用磁界の印加方法を示す平面図 磁気記録層に対する消磁用磁界の方向を示す概念図 マスターディスクの平面図 マスターディスクの表面の微細凹凸パターンを示す部分拡大斜視図 磁性層の形成フローを説明する基板の断面図 磁気転写装置の要部斜視図 磁気転写の基本工程を説明するための断面図 実施例の結果を示すグラフ 実施例の結果を示すグラフ
符号の説明
10…磁気転写装置、30…磁気転写ヘッド(磁界生成手段)、31…ギャップ、32…第1の磁気コア、33…コイル、34…第2の磁気コア、40…スレーブディスク(被転写用ディスク)、40B…磁気記録層、46…マスターディスク、46b…サーボ領域、46c…非サーボ領域、47…基板、48…磁性層、G…磁力線、g…漏れ磁束

Claims (6)

  1. 保持力Hcの磁性層を有する垂直磁気記録媒体に磁界強度Hexの磁界を印加して前記磁性層を初期化する垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、
    前記磁界の媒体表面に平行な方向の磁界強度HexPを、HexP>1.3×Hcとなるように制御することを特徴とする垂直磁気記録媒体の初期化方法。
  2. 保持力Hcの磁性層を有する垂直磁気記録媒体に磁界強度Hexの磁界を印加して前記磁性層を初期化する垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、
    前記磁界の媒体表面に垂直な方向の磁界強度HexVを、HexV<Hcとなるように制御することを特徴とする垂直磁気記録媒体の初期化方法。
  3. 保持力Hcの磁性層を有する垂直磁気記録媒体に磁界強度Hexの磁界を印加して前記磁性層を初期化する垂直磁気記録媒体の初期化方法であって、
    前記磁界の媒体表面に平行な方向の磁界強度HexPを、HexP>1.3×Hcとなるように制御し、かつ、前記磁界の媒体表面に垂直な方向の磁界強度HexVを、HexV<Hcとなるように制御することを特徴とする垂直磁気記録媒体の初期化方法。
  4. 磁界生成手段を設けるとともに、該磁界生成手段に対し前記垂直磁気記録媒体を相対移動させながら、該垂直磁気記録媒体の円周方向に磁界を印加して該垂直磁気記録媒体を円周方向に交流消磁させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体の初期化方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体の初期化方法により初期化された垂直磁気記録媒体に対し、該垂直磁気記録媒体に転写すべき情報に応じた磁性層の配列からなるパターンが表面に形成された円盤状の基板である垂直磁気転写用マスターディスクを密着させながら転写磁界を印加して前記垂直磁気転写用マスターディスクの磁気パターンを前記垂直磁気記録媒体に転写させる磁気転写方法により磁気転写されたことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  6. 請求項5に記載の垂直磁気記録媒体を備えたことを特徴とする磁気記録装置。
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